説明

車両用ドアミラー

【課題】ミラーハウジングに対するカメラのねじ止め数を少なくして確実な固定の実現を図る。
【解決手段】カメラ10をロアハウジング1Lの開窓部3とレンズ配設部12との嵌挿部分を中心に一方向に回動すると、フック機構部20が相互に落ち込み係合する。一方、その過程で締結固定部21の取付片15と取付座5の合わせ面相互が摺接,照合され、この部分をねじ部材17により締結固定することにより、カメラ10のロアハウジング1Lに対するねじ止め固定を1つにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアミラー、とりわけ、ドアミラー下方の車両側部周りを撮影可能なカメラを付設した車両用ドアミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアミラーとして、例えば、特許文献1に示されているように、ドアミラー下方の車両側部周りを撮影可能なカメラを付設したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−44514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開示技術では、カメラの取付け手段として、ミラーハウジングの内側に複数のボス部を突設して、該ボス部の頂面にカメラ側のブラケット片をねじ部材により締結固定するようにしている。
【0005】
このため、ねじ部材本数と組付工数が嵩んでコスト的に不利になってしまうばかりでなく、重量的にも不利となってしまうことは否めない。
【0006】
また、ミラーハウジング内部は狭隘なため、複数のボス部を突設するためのレイアウトが難しく、しかも、ボス部が複数となることからハウジング外面のヒケ発生の懸念もそれだけ多くなる問題がある。
【0007】
そこで、本発明はミラーハウジングに対するカメラのねじ止め数を可及的に少なくして確実な固定を実現できる車両用ドアミラーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用ドアミラーにあっては、開窓部を形成したミラーハウジング内に、カメラをそのレンズ配設部を前記開窓部に嵌挿して配設し、該カメラをこれら開窓部とレンズ配設部との嵌挿部分を中心として回動可能としてある。
【0009】
そして、前記カメラは、側方に張り出す複数の取付片を備える一方、前記ミラーハウジングは、前記取付片に対応した複数の取付座を備え、対をなす1つの取付片と取付座とを、前記レンズ配設部を開窓部に嵌挿した状態でカメラを一方向に回動した際に、相互に係合するフック機構部として構成し、他の対をなす取付片と取付座とを、前記フック機構部の係合過程で合わせ面相互が摺接,照合されて、ねじ止めにより固定される締結固定部として構成したことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カメラをミラーハウジングの開窓部とレンズ配設部との嵌挿部分を中心として一方向に回動すると、フック機構部が相互に係合する。一方、その過程で締結固定部の取付片と取付座の合わせ面相互が摺接,照合されるから、これをねじ部材で締結固定することによってカメラをしっかりとミラーハウジングに取付けることができる。
【0011】
従って、カメラ固定のためのねじ止め数を1つとすることができて、ねじ部材本数およびねじ止め工数を削減してコスト的に有利に得ることができる。
【0012】
そして、締結固定部では取付座を円柱ブロック状のボス部として形成してねじ締結に耐える強度・剛性を確保する必要があるが、フック機構部では取付座をフック係着が可能な櫓構造として構成することが可能となる。これにより、ボス部の設定数を1つとすることができて、レイアウトを容易にすることができると共に、ミラーハウジングの表面ヒケの発生を抑制して外観を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両用ドアミラーのカメラ配設部周りの構造を示す斜視図。
【図2】図1の分解斜視図。
【図3】図1のA矢視図。
【図4】図1のB範囲部の拡大図。
【図5】位置決め手段を示す平面説明図。
【図6】カメラの取付け工順を(A),(B)にて示す平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に詳述する。
【0015】
図1,図2に示す実施形態の車両用ドアミラーは、ミラーハウジング1の内部に、ミラーユニット2の他にカメラ10を備えて、該カメラ10によりドアミラー下方の車両側部周りの状況を撮影して視認可能としている。
【0016】
ミラーハウジング1は、ドア側部に折り畳んだ格納位置と、ドア側方に張り出した使用位置とに回動可能となっている。そして、カメラ10は、ドアミラー下方の撮影に支障のないように、このミラーハウジング1の自由端側の底部に、ミラーユニット2と干渉することのないように配設してある。
【0017】
図示する例では、ミラーハウジング1を、ミラーユニット2を配設したアッパーハウジング1Uと、該アッパーハウジング1Uに結合されるロアハウジング1Lとに分割構成してあり、カメラ10をこのロアハウジング1Lに装着してある。
【0018】
ロアハウジング1Lの自由端側の底部には開窓部3を形成してあり、カメラ10はその下側先端のレンズ配設部(レンズホルダー部)12を、この開窓部3に嵌挿して配設してある。
【0019】
開窓部3およびレンズ配設部12は、何れも円形に形成してあって、カメラ10は、これら開窓部3とレンズ配設部12とを嵌挿した状態で回動可能としている。
【0020】
カメラ10は、側方へ張り出す複数、例えば、2つの取付片14,15を備えている一方、ロアハウジング1Lは、取付片14,15に対応した2つの取付座4,5を備えている。
【0021】
そして、一方の一対の取付片14と取付座4とを、レンズ配設部12を開窓部3に嵌挿した状態でカメラ10を一方向に回動した際に、相互に係合するフック機構部20としている。
【0022】
また、他方の一対の取付片15と取付座5とを、このフック機構部20の係合過程で合わせ面相互が摺接,照合されて、ねじ止めにより固定される締結固定部21として構成している。
【0023】
カメラ10は、下側先端にレンズ配設部12を突出して設けたカメラ本体11と、該カメラ本体11の上端部に外嵌して装着したキャップ型のブラケット13と、で構成している。
【0024】
カメラ本体11およびブラケット13は、平面正四角形に形成してあり、何れも各辺の連接隅部は丸みをもって面取りした形状としてある。
【0025】
そして、ブラケット13の一方の対角隅部に前述の取付片14,15を側方に向けて一体に突出成形してあり、他方の対角隅部の頂面で該ブラケット13をカメラ本体11にねじ部材16により締結固定してある。
【0026】
取付片14,15は何れも下面側周縁をリブ補強してあり、フック機構部20を構成する一方の取付片14の端部上面にフック爪14aを一体に突出成形してある(図4参照)。締結固定部21を構成する他方の取付片15の端部には、ねじ部材17の挿通孔15aを形成してある。
【0027】
取付座4,5は、前記取付片14,15に対応した位置に突設してあり、フック機構部20を構成する一方の取付座4は、図4,図3にも示すように平坦な座壁4aとその支持壁4bとで櫓状に形成してある。座壁4aは、その下面に取付片14の上面が摺接する高さに形成して、該取付片14の上面に突設したフック爪14aが落ち込み係合可能な係止孔4cを形成してある。座壁4aの下方には、取付片14を押さえ込むためのリブ壁6を設けてある。支持壁4bは、例えば、カメラ10を図6(A)の矢印aに示す時計方向に回動した際に、座壁4a下面への取付片14の進入を許容する部分周壁として形成してある。従って、取付片14の上面のフック爪14aは、このカメラ10の時計方向の回動方向側部にくぐり抜け用の傾斜ガイド縁を持つフック形状としてある。
【0028】
締結固定部21を構成する他方の取付座5は、取付片15をねじ部材17でねじ止め固定するための円柱状のボス部として形成してあり、その頂面にねじ孔5aを形成してある。このボス部5は、カメラ10を図6(A)の矢印aに示す時計方向に回動した際に、ボス部頂面が取付片15の下面に摺接する高さに突設してある。また、このボス部5は、図3にも示すように一側が開放したボックス状のスタンド5bの頂面に形成して、ロアハウジング1Lの外側表面にヒケが発生しないようにしている。
【0029】
また、図3に示す例では、取付片15の下面には、カメラ10の前記時計方向の回動で、ボス部5の頂面をくぐり抜けて、該ボス部5の側縁に係止可能なフック爪15bを形成してある。
【0030】
カメラ10は、カメラ本体11の上面に設けられてブラケット13を貫通して突出する端子ボックス18を備え、該端子ボックス18にコネクタ19a付きのハーネス19を接続してある。
【0031】
ロアハウジング1Lの開窓部3の周囲には、同心的にリブ壁7を配置して、該リブ壁7とカメラ本体11とに、カメラ10を前述のように回動して取付ける際に、相互に係合してカメラセット位置を確定する位置決め手段22を設けてある。
【0032】
図5に示す例では、位置決め手段22を、カメラ本体11の周壁の面取りした隅部11Rと、リブ壁7の内周面7aと、で構成している。内周面7aはカメラ本体11の隅部11Rの回動軌跡とほぼ同じ径の円弧状として形成し、隅部11Rが内周面7aに摺接係合するようにしている。
【0033】
位置決め手段22は、カメラ10の支持バランスを考慮して複数、例えば、2つ設けている。即ちリブ壁7は、図5に示すようにカメラ本体11の周方向に隣り合う2つの隅部11Rにそれぞれ対応した位置で、該隅部11Rの回動軌跡に沿って開窓部3と同心円の円弧状に形成してある。
【0034】
本実施形態では、図5に示すように各リブ壁7を、車両の右ハンドル仕様と左ハンドル仕様とで実線および鎖線で示すように、カメラセット位置が異なる2つのセット角度にも十分に対応できる長さに形成している。
【0035】
以上の構成からなる本実施形態の車両用ドアミラーによれば、カメラ10のロアハウジング1Lへの組付けは次のようにして行われる。
【0036】
先ず、図6(A)に示すようにカメラ10の取付片14,15を、対応する取付座4,5から反時計方向にずらして、レンズ配設部12をロアハウジング1Lの開窓部3に嵌挿する。
【0037】
この嵌挿状態でカメラ10を同図の矢印aに示すように時計方向に回動すると、フック機構部20側の取付片14が取付座4の座壁4aの下面とリブ壁6の上縁との間に進入し、フック爪14aが座壁4aの端縁をくぐり抜けて係止孔4cに落ち込み係合する。
【0038】
締結固定部21側では、このフック機構部20の落ち込み係合過程で、取付片15の下面のフック爪15bがボス部(取付座)5の頂面を乗り越えて、該ボス部5の側縁部に落ち込んで係合し、取付片15とボス部5の合わせ面相互が摺接して、ねじ挿通孔15aとねじ孔5aとが照合する。
【0039】
これらフック機構部20の落ち込み係合と、締結固定部21におけるフック爪15bとボス部5との係合と、によってカメラ10の反時計方向の回り止めが行われる。
【0040】
一方、位置決め手段22側では、上述のカメラ10の時計方向の回動過程で、カメラ本体11の隅部11Rが対応するリブ壁7の内周面7aを摺動し、所定のセット角度位置では、隅部11Rと内周面7aとのフリクションによってカメラ本体11の時計方向のずれ動きを阻止して、カメラセット位置が確定する。
【0041】
従って、キャップ状のブラケット13は、右ハンドル仕様と、左ハンドル仕様との2種類が選択的に用いられる。即ち、隅部11Rが図5の実線または破線位置でリブ壁7の内 周面7aに摺接係合したカメラセット位置で、取付片14,15が取付座4,5に対応するようにそれぞれ突設角度を変えた2種類のブラケット13が選択使用される。
【0042】
このようにしてカメラ10のセット位置を確定した後、締結固定部21の取付片15とボス部5とを、ねじ部材17によりねじ止め固定する。
【0043】
これにより、カメラ10はフック機構部20と締結固定部21とでロアハウジング1Lにしっかりと固定して取付けられる。
【0044】
従って、ロアハウジング1Lに対するカメラ固定のためのねじ止め数を1つとすることができて、ねじ止め本数およびねじ止め工数を削減してコスト的に有利に得ることができる。
【0045】
そして、締結固定部21では取付座5を円柱ブロック状のボス部として形成してねじ締結に耐える強度・剛性を確保する必要があるが、フック機構部20では取付座4をフック係着が可能な座壁4aとその支持壁4bからなる櫓構造とすることが可能となる。これにより、ボス部5の設定数を1つとすることができて、レイアウトを容易にすることができると共に、ロアハウジング1Lの表面ヒケの発生を抑制して外観を向上することができる。
【0046】
ここで、本実施形態ではカメラ10をカメラ本体11と、取付片14,15を備えてカメラ本体11に着脱可能なキャップ型のブラケット13とで構成しているため、右ハンドル仕様と左ハンドル仕様とでカメラ10の回動方向のセット角度が異なっても、ブラケット13のみを交換して、ミラーハウジング1およびカメラ本体11を共用することができる。
【0047】
また、ロアハウジング1Lに開窓部3と同心的に設けたリブ壁7と、カメラ本体11とに、カメラ10を一方向に回動して取付ける際に相互に係合してカメラセット位置を確定する位置決め手段22を備えているので、カメラ10を簡単に適正なセット位置に組付けることができる。
【0048】
しかも、この位置決め手段22は、右ハンドル仕様と左ハンドル仕様とで、カメラセット位置が異なる2つのセット角度位置に設けてあるため、上述のミラーハウジング1の共用化に些かも支障を来すことがない。
【0049】
なお、位置決め手段22は、所定のカメラセット位置でカメラ本体11の隅部11Rが落ち込み係合する凹溝を前述のリブ壁7の内周面7aに設けて構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…ミラーハウジング
3…開窓部
4,5…取付座
10…カメラ
11…カメラ本体
12…レンズ配設部
13…ブラケット
14,15…取付片
20…フック機構部
21…締結固定部
22…位置決め手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開窓部を形成したミラーハウジング内に、カメラをそのレンズ配設部を前記開窓部に嵌挿して配設し、該カメラをこれら開窓部とレンズ配設部との嵌挿部分を中心として回動可能とした構造であって、
前記カメラは、側方に張り出す複数の取付片を備える一方、前記ミラーハウジングは、前記取付片に対応した複数の取付座を備え、
対をなす1つの取付片と取付座とを、前記レンズ配設部を開窓部に嵌挿した状態でカメラを一方向に回動した際に、相互に係合するフック機構部として構成し、
他の対をなす取付片と取付座とを、前記フック機構部の係合過程で合わせ面相互が摺接,照合されて、ねじ止めにより固定される締結固定部として構成したことを特徴とする車両用ドアミラー。
【請求項2】
前記カメラは、カメラ本体と、前記複数の取付片を備えて前記カメラ本体に装着された着脱可能なブラケットと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアミラー。
【請求項3】
前記ミラーハウジングは、前記開窓部の周囲に同心的に配置したリブ壁を備え、該リブ壁とカメラ本体とに、前記カメラを一方向に回動して取付ける際に、相互に落ち込み係合してカメラセット位置を確定する位置決め手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアミラー。
【請求項4】
前記位置決め手段を、右ハンドル仕様と左ハンドル仕様とで、カメラセット位置が異なる2つのセット角度位置に設けたことを特徴とする請求項3に記載の車両用ドアミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100012(P2013−100012A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244658(P2011−244658)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】