説明

車両用パンタグラフの舟体水平保持機構

【課題】常に架線とすり板の接触を水平状態に保つ機構を有する鉄道車両用パンタグラフを提供する。
【解決手段】鉄道車両用シングルアーム形パンタグラフの枠組を構成する上枠の頂部と舟支え4の平衡状態を保持する平衡リンク7との間に、舟支え回転自在部5を設ける。また、パンタグラフの舟支え部に、回転作用を働かせるねじりゴムばね機構5−cを取り付けることで、舟体3が傾いた場合でも、動作に対する緩衝作用を有しつつ復元力を発生させ、架線1とすり板2の接触状態を水平な状態に戻す。さらに復元力による過剰な動作を制限するために、舟支え部にストッパ5−eを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用パンタグラフに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用パンタグラフは、架線とすり板が接触することにより集電を行っているため、架線とすり板を常に水平状態で接触させる必要がある。
【0003】
しかし、すり板および舟体に作用する外力により舟体が傾斜し、架線とすり板が偏った接触状態となる場合がある。
【0004】
架線とすり板が偏った状態で接触している場合、すり板の偏摩耗等、車両用パンタグラフの集電性能を低下させる原因となり得る事象が発生する可能性がある。そのため、舟体が傾斜した場合、すり板と架線の接触を水平に近い状態で集電させる必要がある。
【0005】
従来の車両用パンタグラフの中では、平衡リンクと舟支えの結合部を長穴形状とし、舟体が架線変動に連動し、架線との接触状態を一定に保持する機構を用いているものが存在するが、舟体傾斜に対する復元力がないため、すり板および舟体に外力が作用した場合、偏った接触状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−322409号公報
【特許文献2】特開平8−331702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すり板と架線の接触を常に水平に保つよう動作する機構はすでにあるが、動作に対して復元力を有する鉄道車両用パンタグラフを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、シングルアーム形パンタグラフの枠組を構成する上枠の頂部と舟支えの平衡状態を保持する平衡リンクとの間に、舟支え回転自在部を設けることを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、前記の回転自在部にねじりゴムばね機構を使用することを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、前記の回転自在部において、舟支えの傾きを制限するストッパを設けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、常にすり板と架線の接触を水平に近い状態に保つことが可能となり、すり板の偏摩耗、集電性能の低下などの問題を解決できる。
【0012】
回転自在部は、舟体と架線の間の寸法関係が変動しても、すり板上面が架線に対して常に水平状態となるよう、上枠頂部を中心に舟支えを自在に回転させることができる。
【0013】
ゴムばね機構は、回転自在部に復元力を発生させ、舟の傾きに対し、復元力により、舟をすり板上面と架線が水平に接触することができる状態を維持することができる。
【0014】
ストッパは、舟支えの回転自在部に回転の範囲を限定する機構と、回転動作に対し緩衝作用がはたらくことになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】通常時の本発明の構成を示す図である。
【図2】舟体傾斜時の本発明の動作前の図である。
【図3】従来技術の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の構成を示す図である。
【実施例1】
【0017】
図1は通常時の、本発明の構成を示す図である。
すり板2及び舟体3が傾斜しても、架線1とすり板2が水平に接触する状態を維持できるよう上枠6の頂部と平衡リンク7との間に舟支え回転自在部5を設け、傾斜時に上枠6の頂部を中心として発生する回転力への復元力を得るため、舟支え4と回転支持部(5-b)の間に、ねじりゴムばね機構(5-a),(5-c)を取り付ける。
回転自在部5には、過剰な回転動作を防止するために、回転範囲を限定できるよう、回転部(5-a)にストッパボルト(5-d)を、回転支持部(5-b)にゴムストッパ(5-e)を設ける。回転支持部にはゴム(5-c)を挿入する。
【0018】
図2は、舟が傾斜している状態で片側の舟体がすり板と接触した状態での本発明を示す図である。
舟体の傾斜時には、舟支え4と平衡リンク7間が、ねじりゴムばね機構(5-a),(5-c)を介して、くの字の状態となる。その際、回転部(5-a)がゴム(5-c)に力を加えている状態となり、ゴム(5-c)の反発力により、回転力に対する復元力が発生し、図1の状態に戻す。
回転時にストッパボルト(5-d)とゴムストッパ(5-e)が接触することで、動作の範囲を限定する。
【0019】
図3は、従来技術の鉄道車両用シングルアームパンタグラフの全体図を示す。
【符号の説明】
【0020】
1 架線
2 すり板
3 舟体
4 舟支え
5 舟支え回転自在部
5−a 〃 回転部(ねじりゴムばね機構)
5−b 〃 回転支持部
5−c 〃 ゴム(ねじりゴムばね機構)
5−d 〃 ストッパボルト(ストッパ)
5−e 〃 ゴムストッパ(ストッパ)
6 上枠
7 平衡リンク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルアーム形パンタグラフの枠組を構成する上枠の頂部と舟支えの平衡状態を保持する平衡リンクとの間に、舟支え回転自在部を設けることを特徴とする鉄道車両用パンタグラフ。
【請求項2】
前記の回転自在部にねじりゴムばね機構を使用することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用パンタグラフ。
【請求項3】
前記の回転自在部において、舟支えの傾きを制限するストッパを設けることを特徴とする請求項2記載の鉄道車両用パンタグラフ。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−90369(P2013−90369A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226383(P2011−226383)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】