説明

車両用ミラー及びこの車両用ミラーを備えた車両

【課題】車両用ミラーに映る物体の並びの方向と車両の前後方向とを人間の感覚的な認識順序に極力対応させることが可能な車両用ミラーを提供する。
【解決手段】本発明の車両用ミラー1は、所定方向に延びる反射面2を有し、この反射面2は直交面Hに対して直交する直交面内での断面形状が凸曲面3とされている。また、この反射面2は、直交面Vに対して直交する所定平面内での断面形状が凹曲面4とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサイド側の死角を視認することが可能な車両用ミラー及びこの車両用ミラーを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のサイド側の死角を視認することが可能な車両用ミラーを、サブピラー近傍の三角形状の窓部であってかつ車室内に設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−55316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その特許文献1に開示の車両用ミラーによれば、車両走行時の空気抵抗の減少を図りつつ、車両のサイド側の死角を視認することが可能である。
【0005】
ところで、この種の車両用ミラーでは、図1に示す車両用ミラー1の近傍に存在する物体Aは、図2に模式的に示すように、物体Aの虚像A’が車両ミラー1に関して物体Aと対称位置に存在するため、ドライバーにとっては、物体Aが車両用ミラー1の下方部位A”に見え、車両用ミラー1から遠くに存在する物体Bは、物体Bの虚像B’が車両ミラー1に関して物体Bと対称位置に存在するため、ドライバーにとっては、物体Bが車両用ミラー1の上方部位B”に見える。
【0006】
このため、車両用ミラー1に上から下に向かって映っている物体A、Bの並びの向きが、通常、上方が前方に対応しかつ下方が後方に対応するという人間の感覚的な認識順序と異なることになる。このため、車両の前方の方向と車両用ミラー1に映っている物体の並びの方向とが一致せず、ドライバーは、感覚的な違和感を生じる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、車両用ミラーに映る物体の並びの方向と車両の前後方向とを人間の感覚的な認識順序に極力対応させることが可能な車両用ミラー及びこの車両用ミラーを備えた車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用ミラーは、所定方向に延びる反射面を有し、所定平面に対して直交する直交面内での断面形状が凸曲面とされ、かつ、直交面に対して直交する所定平面内での断面形状が凹曲面とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両用ミラーを、車両の前方から車両の後方をドライバーが視認できるようにしてかつ車両の前方がドライバーに近い側の反射面上部位に写り込み、車両の後方がドライバーから遠い側の反射面下部位に写り込むようにして、車両の三角窓形状の近傍に設ければ、車両用ミラーに映る物体の並びの方向と車両の前後方向とを人間の感覚的な認識順序に極力対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は従来の車両用ミラーが取り付けられている車両の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は従来の車両用ミラーの不具合の一例を説明するための模式図である。
【図3】図3は本発明の実施例に係る車両用ミラーが取り付けられている車両の一例を示す斜視図である。
【図4】図4は本発明の実施例に係る車両用ミラーの一例を拡大して示す斜視図である。
【図5】図5は図4に示す直交面で断面した車両用ミラーの断面図である。
【図6】図6は図4に示す直交面に対して直交する所定平面で断面した車両用ミラーの断面図である。
【図7】図7は図3に示す車両用ミラーへの物体の写り込み状態を説明するための図である。
【図8】図8は図3に示す車両用ミラーの車両への取付け状態を示す平面図である。
【図9】図9は反射面が凸面の車両用ミラーの物体の写り込み状態を説明するための模式図である。
【図10】図10は本発明の実施例に係る車両用ミラーの物体の写り込み状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
図3は本発明の実施例に係る車両用ミラーが取り付けられている車両の一例を示す斜視図であり、図4は本発明の実施例に係る車両用ミラーの一例を拡大して示す斜視図である。この車両用ミラーに従来例と同様の符号1を付して以下に説明する。
【0012】
車両用ミラー1は、図4に示すように所定方向(例えば、水平方向)に延びる反射面2を有する。この反射面2は所定平面(例えば、水平面)Hに対して直交する直交面(例えば、垂直面)V内での断面形状が図5に示すように凸曲面3とされている。かつ、この反射面2は直交面Vに対して直交する所定平面H内での断面形状が図6に示すように凹曲面4とされている。
【0013】
すなわち、この車両用ミラー1は、非球面の反射面2を有する。その凸曲面3及びその凹曲面4の曲率半径ρは80ミリメートルから200ミリメートルまでの範囲内に存在することが望ましい。なお、その図5、図6において、符号Rは鏡軸O上に存在する曲率中心を示している。
【0014】
その車両用ミラー1を取り付けるための取付け具6が、図7、図8に示すように、車両の三角窓5の近傍部位7のインストルメントパネル部分に設けられている。この車両用ミラー1は、取付け具6に図7、図8に示すように、車両の前方から車両の後方をドライバーが視認できるようにしてかつ車両の前方がドライバーに近い側の反射面上部位に写り込み、車両の後方がドライバーから遠い側の反射面下部位に写り込むようにして取り付けられる。
【0015】
なお、その図3において、C1、C2、C3は車両サイドの近傍に存在する回避対象物を模式的に説明するためのポールである。このポールC1、C2、C3は車両の前方から後方に向かって並んでいるものとする。また、その図7、図8において、符号8はフロントウインドウを示している。
【0016】
反射面2が平面や凸面の車両用ミラー1によれば、例えば、図9に示す凸面の反射面2のような場合、反射面下方部位1aに車両前方に存在するポールC1が写り込み、ついで、ポールC2が反射面中部部位1bに写り込み、反射面上方部位1cに車両後方に存在するポールC3が写り込む。
【0017】
このため、車両用ミラー1に映る物体の並びの方向と車両の前後方向とを人間の感覚的な認識順序とが一致せず、ドライバーを幻惑して、ドライバーが回避対象物に対する位置認識を誤るおそれがある
【0018】
これに対して、この車両用ミラー1によれば、図10に模式的に示すように、車両後方に存在するポールC3からの矢印X1で示す光束は反射面下方部位1aにおいて反射されてドライバーの目が存在する方向に向かい、車両前方に存在するポールC1からの矢印X2で示す光束は反射面上方部位1cにおいて反射されてドライバーの目が存在する方向に向かうこととなる。
【0019】
従って、この車両用ミラー1によれば、図7に示すように、反射面下方部位1aには車両後方に存在するポールC3が写り込み、反射面上方部位1cには車両前方に存在するポールC1が写り込むことになり、車両用ミラー1に映る物体としてのポールC1、C2、C3の並びの方向と車両の前後方向とを人間の感覚的な認識順序に極力対応させることができる。
【0020】
この場合に、車両用ミラー1の取付け位置、取付け角度を工夫すれば、物体が車両用ミラー1に前から後ろに向かって写っている方向と車両の前後方向とをより一層一致させることができる。
例えば、図7において、車両用ミラー1全体を鏡軸O(図4参照)を中心として、反時計方向に傾けると、車両の前後の方向と物体の並びの方向とが一致し、従って、ドライバーが物体の並びの方向をより一層理解し易いものとなる。
【0021】
また、上下方向に関して反射面2を凸曲面3により構成しているので、上下が逆さまに映ることも防止できる。
なお、ドライバーの目の高さや運転席の前後方向の位置を変えることにより、車両用ミラー1に写っている物体の見える範囲が変わる。
【0022】
以上、実施例の車両用ミラー1においては、所定方向に延びる反射面2の凹曲面4の曲率半径ρを80ミリメートルないし200ミリメートルとしたが、本発明は、これに限られるものではなく、その車両用ミラー1を車両の三角窓5の近傍部位7に取り付けた際に、車両外側となる凸曲面3の曲率半径ρを部分的に例えば500ミリメートルに設計すると共に車両内側に向かうに伴ってその曲率半径ρが連続的に200ミリメートル〜80ミリメートルに変化するように設計する。
凸曲面3の曲率半径ρが一定の場合には、車両用ミラー1の車両外側となる部位に写る物体が車両後方に存在するため、車両内側となる部位に写る物体よりも小さく写ることになるが、このように、車両内側から車両外側に向かって凸曲面3の曲率半径ρを連続的に大きく設計すると、車両用ミラー1に映る車両の後方の死角に存在する物体の像を凸曲面3の曲率半径ρが一定の場合に較べて大きくドライバーに提示できる。
【符号の説明】
【0023】
1…車両用ミラー
2…反射面
3…凸曲面
4…凹曲面
H…所定平面
V…直交面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びる反射面を有し、所定平面に対して直交する直交面内での断面形状が凸曲面とされ、かつ、直交面に対して直交する所定平面内での断面形状が凹曲面とされている車両用ミラー。
【請求項2】
前記凸曲面及び前記凹曲面の曲率半径が80ミリメートルから200ミリメートルまでの範囲内に存在することを特徴とする請求項1に記載の車両用ミラー。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用ミラーが、車両の前方から車両の後方をドライバーが視認できるようにしてかつ車両の前方がドライバーに近い側の反射面上部位に写り込み、車両の後方がドライバーから遠い側の反射面下部位に写り込むようにして、車両の三角窓形状の近傍に設けられていることを特徴とする車両用ミラー。
【請求項4】
前記車両用ミラーが取付け具を介して前記三角窓形状の近傍に設けられていることを特徴とする車両用ミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−28217(P2013−28217A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164196(P2011−164196)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)