説明

車両用内装構造

【課題】車体パネルに衝撃を受けても、その衝撃は内装部材にそのまま伝導されることのない構成とした車両用内装構造を提供する。
【解決手段】車体パネル(10)と、該車体パネル(10)の車室側を覆い該車体パネル(10)と間隙を有して配置される内装部材(20)と、前記間隙に配置されて車体パネル(10)と内装部材(20)を支持するブラケット(30)とから構成される車両用内装構造である。内装部材(20)とブラケット(30)の固定は、内装部材(20)とブラケット(30)のうち一方に形成された固定具挿入口(40)に挿入された固定具(35)が内装部材(20)とブラケット(30)のうち他方に形成された固定具挿入孔(36)に挿入されることによってなされ、固定具挿入口(40)は車室側に開放端を有する切り欠きによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用内装構造に係り、特に、車体パネルとこの車体パネルの車室側を覆い該車体パネルと間隙を有して配置される内装部材とを備える車両用内装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用内装構造として、たとえば、内装部材と車体パネルの間隙にブラケットが配置され、このブラケットの一端は車体パネルにネジ止めされ、他端は内装部材に装着されるプルハンドルの底面にネジ止めされたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
このように内装部材と車体パネルの間隙に上述したブラケットを取り付けることにより、内装部材を車室側に引っ張っても、内装部材は車体パネルに確実に支持される構成とできるようになっている。
【0004】
なお、下記特許文献1には、前記ブラケットに、折れ曲がることができるような屈曲部を複数設け、二次衝突による衝撃エネルギーを吸収する機能をもたせた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-143359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した車両用内装構造において、ブラケットは、内装部材および車体パネルに、ネジ止めによって強固に固定された構造としたものである。
【0007】
このため、車両の衝突時に、車体パネルに衝撃が加わった場合、その衝撃はブラケットを介して内装部材にそのまま伝導されるようになる。なお、上記特許文献1には、ブラケットは衝撃エネルギーを吸収する機能をもたせる構成となっているが、その機能が充分に発揮される前に、車体パネルに加わった衝撃がブラケットを介して内装部材に伝導されてしまう場合もある。
【0008】
このような場合、内装部材は車室側に押し出され、車室に着座している乗員は該内装部材によって衝撃を受けることになる。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車体パネルに衝撃を受けても、その衝撃は内装部材にそのまま伝導されることがなく、乗員に加わる衝撃を低減可能な構成とした車両用内装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車体パネルに衝撃が加わった場合、車体パネルと内装部材を連結するブラケットの該内装部材との固定が速やかに解除される構成とするようにしたものである。
【0011】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明による車両用内装構造は、車体パネルの車室側を覆い前記車体パネルと間隙を有して配置される内装部材と、前記間隙に配置されて前記車体パネルと前記内装部材を支持するブラケットとから構成される車両用内装構造であって、 前記内装部材と前記ブラケットの固定は、前記内装部材と前記ブラケットのうち一方に形成された固定具挿入口に挿入された固定具が前記内装部材と前記ブラケットのうち他方に形成された固定具挿入孔に挿入されることによってなされ、前記固定具挿入口は車室側に開放端を有する切り欠きによって構成されていることを特徴とする。
(2)本発明による車両用内装構造は、(1)の構成において、前記内装部材はプルハンドルを備え、前記ブラケットの固定は前記プルハンドルの凹部の底面においてなされていることを特徴とする。
(3)本発明による車両用内装構造は、(2)の構成において、前記プルハンドルの凹部の底面に、車室側に開放端を有する切り欠きからなる固定具挿入口が形成され、前記固定具挿入口に挿入される固定具は、前記ブラケットに形成された固定具挿入孔に挿入されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このような車両用内装構造によれば、車体パネルに衝撃を受けても、その衝撃は内装部材にそのまま伝導されることがなく、乗員に加わる衝撃を低減可能な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の車両用内装構造の要部を示す構成図で、(a)は、プルハンドルの凹陥部を開口側から観た平面図、(b)は、(a)のb−b線側から観た側面図である。
【図2】本発明の車両用内装構造を示す斜視図で、ドアインナパネルにドアトリムを取り付ける前の状態を示した分解図である。
【図3】図2に示したプルハンドルとブラケットを抜き出して示した斜視図である。
【図4】(a)は、ドアインナパネルに対してブラケットを介してドアトリムを取り付けた断面図で、(b)は、(a)の一部を拡大して示した拡大図である。
【図5】図4(b)と対応する図で、ドアインナパネルに衝撃Fが加わった場合の内装構造の変形を示す図である。
【図6】図1(a)に対応する図で、ネジを取り外しネジ挿入口の形状を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施態様1)
図2は、本発明の車両用内装構造を示す斜視図で、ドアインナパネル10にドアトリム20を取り付ける前の状態を示した分解図である。図中に示すx、y、z方向は、それぞれ、車両の前方方向、車両の下方方向、車両の車室方向に対応づけて示している。
【0015】
図2において、ドアインナパネル10があり、このドアインナパネル10の車室側にはドアトリム20が配置されている。ドアトリム20は、ドアインナパネル10の車室側を覆いドアインナパネル10と若干の間隙(図4(a)において符号Gで示す)を有して配置されるようになっている。
【0016】
ドアインナパネル10とドアトリム20は、それらの間隙Gに配置されるブラケット30を介して互いに固定されるようになっている。このようにドアトリム20とドアインナパネル10の間隙Gにブラケット30を取り付けることにより、ドアトリム20を車室側に引っ張っても、ドアトリム20はドアインナパネル10に確実に支持される構成とできるようになっている。ブラケット30は、ほぼ水平に配置される板状の部材からなり、図2では、そのドアインナパネル10の側の一端部においてたとえば2個のネジ34によって該ドアインナパネル10に固定されていることを示している。ブラケット30の構成およびブラケット30のドアトリム20との固定については後に詳述する。
【0017】
ドアトリム20は、車室側のほぼ中央においてアームレスト21が形成されている。このアームレスト21は乗員の肘掛けとなるもので、図中x方向に延在する突出部によって形成されている。そして、このアームレスト21の上面の水平部には、プルハンドル22が装着されるようなっている。プルハンドル22は、乗員の手を挿入できる凹陥部23とこの凹陥部23の開口の周縁から外方に延在されるフランジ部24とで構成されている。
【0018】
プルハンドル22のアームレスト21への装着は、アームレスト21の上面に形成された開口(図4(a)において符号21aで示す)にプルハンドル22の凹陥部23を挿入し、プルハンドル22のフランジ部24と凹陥部23の外壁面に形成された爪(図4(b)において符号23aで示す)によって、アームレスト21に形成された前記開口21aの周辺を挟持することによってなされている。また、プルハンドル22のフランジ部24の一部にはたとえばドアに取り付けられる窓の開閉等を行う各種スイッチ25等が配設されるようになっている。
【0019】
なお、図2には、ドアトリム20のアームレスト21の下方にはポケット26が配置され、このポケット26に隣接してオーデオ用のスピーカ27が配置されていることを示している。
【0020】
図3は、図2に示したプルハンドル22とブラケット30を抜き出して示した斜視図である。図3に示すように、ブラケット30は、そのドアトリム20の側の他端部33において、プルハンドル22の凹陥部23の底面とたとえば1個のネジ(固定具)35によって固定されるようになっている。すなわち、該ネジ35は、プルハンドル22の凹陥部23の底面に形成されたネジ挿入口(固定具挿入口)(図1(a)において符号40で示す)を通して挿入され、ブラケット30の他端部33に形成されたネジ螺入孔(固定具挿入孔)36に螺入されるようになっている。
【0021】
なお、図3において、ブラケット30は、たとえば上側に凹面となるようなたとえば2個の屈曲部37が形成されている。これにより、ブラケット30は、ドアインナパネル10との固定部となる一端部31と、ドアトリム20との固定部となる他端部33と、これら一端部と他端部の間に配置される中間部32とからなる3個の平面部を有するように形成されている。このように構成されたブラケット30は、該屈曲部37によって、二次衝突による衝撃エネルギーを吸収する機能をもたせるように構成されている。
【0022】
図1(a)は、プルハンドル22の凹陥部23を開口側から観た平面図、図1(b)は、図1(a)のb−b線側から観た側面図を示している。図1(a)、(b)において、プルハンドル22の凹陥部23に形成された前記ネジ35のネジ挿入口40の周辺はいわゆる段下がり部50として形成されている。すなわち、凹陥部23の開口側から観た底面(内側底面)において、ネジ挿入口40の周辺はそれ以外の他の周辺に対して段差を有する凹部51として形成され、該凹部51の外側の底面(外側底面)において、該凹部51の形成によって反映される凸部52が形成されるようになっている。このように、プルハンドル22の凹陥部23に形成されたネジ挿入口40の周辺を段下がり部50として形成することによって、前記ネジ35を該段下がり部50に埋設させた状態で螺入させることができるようになっている。
【0023】
そして、ネジ挿入口40は、一方に開放端を有する切り欠きとして形成され、この切り欠きの開放端は車室側(ドアトリム20側)に指向されるように構成されている。図6は、図1(a)に対応させて描いた図で、ネジ35を取り外した図として示すことで、ネジ挿入口40が車室側(図中z方向)に開放端を有する切り欠きとして形成されていることを示している。この場合、切り欠きの幅wは、ネジ35の頭部の直径よりも小さく、該ネジ35の螺溝が形成された軸部の直径よりも若干大きく形成されている。そして、ネジ挿入口40である切り欠きは、その延在端が段下がり部の側壁面53にまで至り、この側壁面53に形成された孔54に連続されるようにして形成されている。この場合、該孔54は、その幅Wがネジ35の頭部の直径よりも大きく形成されている。段下がり部50の側壁面53の孔54の大きさをこのように設定したのは、後述で明かとなるように、ネジ35が螺入されているブラケット30が車室側に移動した場合、プルハンドル22の凹陥部23に挿入されたネジ35が、段下がり部50の側壁面53の孔54から外れて、プルハンドル22とブラケット30との固定を解除させるためである。
【0024】
図4(a)は、ドアインナパネル10にブラケット30を介してドアトリム20を取り付けた図で、前記ネジ35の中心軸を含んだ面内における断面図である。また、図4(b)は、図4(a)のうち、ネジ35によるプルハンドル22の凹陥部23とブラケット30の他端部33との固定部を拡大して示した図である。
【0025】
図4(b)に示すように、プルハンドル22の凹陥部23の底面において、ネジ35は段下がり部50に形成したネジ挿入口40に挿入され、ブラケット30の他端部33に形成されたネジ螺入孔36に螺入されることによって、プルハンドル22とブラケット30の固定がなされるようになっている。ここで、ドアトリム20はプルハンドル22に形成されたフランジ部24と爪23aによって固定されており、また、ブラケット30はネジ34によってドアインナパネル10に固定されていることから、ドアインナパネル10とドアトリム20はブラケット30を介して互いに支持されるようになっている。この場合、プルハンドル22とブラケット30のネジ35による締結は強固となっており、ドアトリム20を車室側に引っ張る程度の力では、ネジ35はプルハンドル22の凹陥部23に形成した切り欠きからなるネジ挿入口40から外れることなく、ドアトリム20はドアインナパネル10に充分に支持されるようになっている。
【0026】
図5は、図4(b)と対応づけて描いた図で、ドアインナパネル10に衝撃Fが加わった場合の内装構造の変形を示す図である。ドアインナパネル10からの衝撃Fによってブラケット30にはネジ35とともに車室側に極めて大きな力が働き、ネジ35はプルハンドル22の凹陥部23に形成した切り欠きからなるネジ挿入口40に沿って車室側に移動し、段下がり部50の側壁面53に形成された孔54を通して、プルハンドル22から外れるようになる。これにより、ドアインナパネル10からの衝撃Fは、プルハンドル22、ひいてはドアトリム20へそのまま伝導されることはなく、ドアトリム20の車室側への押し出されが低減でき、乗員へのドアトリム20による衝撃を確実に低減できるようになる。
【0027】
この場合、ネジ35は段下がり部50に埋設されており、該段下がり部50の径が比較的小さいことにともなって前記ネジ挿入口40を構成する切り欠きの長さを小さくできることから、ドアインナパネル10に衝撃が加わった場合に、極めて短時間にプルハンドル22とブラケット30との固定解除がなされるという効果を奏する。
【0028】
以上説明したように、上記実施態様に示した車両用内装構造によれば、ドアインナパネル10に衝撃を受けても、その衝撃はドアトリム20にそのまま伝導されることがなく、乗員に加わる衝撃を低減可能な構成とすることができるようになる。このため、乗員の安全を確保することができる。
【0029】
上記実施態様では、ブラケット30に屈曲部37を複数設け、これら屈曲部37によって、二次衝突による衝撃エネルギーを吸収する機能をもたせるようにしたものとなっている。しかし、ブラケット30は、このようなものに限定されることはなく、上述した機能を有していなくてもよいことはもちろんである。
【0030】
上記実施態様では、車体パネルとしてドアインナパネル10を、また、内装部材としてドアトリム20を例に挙げて説明したものである。しかし、これに限定されないことはもちろんである。
【0031】
以上説明したように、本発明の車両用内装構造によれば、車体パネルに衝撃を受けても、その衝撃は内装部材にそのまま伝導されることがなく、乗員に加わる衝撃を低減可能な構成とすることができるようになる。このため、乗員の安全を確保することができる。
【0032】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0033】
10・・・ドアインナパネル、20・・・ドアトリム、21・・・アームレスト、21a・・・開口、22・・・プルハンドル、23・・・凹陥部、23a・・・爪、24・・・フランジ部、25・・・スイッチ、26・・・ポケット、27・・・スピーカ、30・・・ブラケット、31・・・一端部、32・・・中間部、33・・・他端部、34、35・・・ネジ、36・・・ネジ螺入孔、37・・・屈曲部、40・・・ネジ挿入口、50・・・段下がり部、51・・・凹部、52・・・凸部、53・・・側壁面、54・・・孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルの車室側を覆い前記車体パネルと間隙を有して配置される内装部材と、前記間隙に配置されて前記車体パネルと前記内装部材を支持するブラケットとから構成される車両用内装構造であって、
前記内装部材と前記ブラケットの固定は、前記内装部材と前記ブラケットのうち一方に形成された固定具挿入口に挿入された固定具が前記内装部材と前記ブラケットのうち他方に形成された固定具挿入孔に挿入されることによってなされ、
前記固定具挿入口は車室側に開放端を有する切り欠きによって構成されていることを特徴とする車両用内装構造。
【請求項2】
前記内装部材はプルハンドルを備え、前記ブラケットの固定は前記プルハンドルの凹部の底面においてなされていることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装構造。
【請求項3】
前記プルハンドルの凹部の底面に、車室側に開放端を有する切り欠きからなる固定具挿入口が形成され、前記固定具挿入口に挿入される固定具は、前記ブラケットに形成された固定具挿入孔に挿入されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用内装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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