説明

車両用冷却収納装置

【課題】車両に搭載される収納庫の冷却効率を向上させることができる車両用冷却収納装置を提供すること。
【解決手段】車両に搭載され、かつ自身に形成された開口部12が扉体13により開閉される断熱構造の収納庫10を備え、冷却ユニット20により冷却された冷却空気によって該収納庫10の内部を所定温度に冷却するようにした車両用冷却収納装置において、開口部12が扉体13により閉成されている場合に、該開口部12近傍に冷却空気を送風することで収納庫10の内部を補助的に冷却する送風機14及び制御手段を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却収納装置に関し、より詳細には、例えば冷凍車等の車両に搭載され、かつ自身に形成された開口部が扉体により開閉される断熱構造の収納庫を備え、冷却ユニットにより冷却された冷却空気によって該収納庫の内部を所定温度に冷却するようにした車両用冷却収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば冷凍車等の車両に適用される車両用冷却収納装置として、収納庫と、蒸発器と、送風手段とを備えたものが知られている。収納庫は、車両に搭載された断熱構造を有する箱体であり、自身に形成された開口部が扉体により開閉されるものである。蒸発器は、収納庫の内部に連通する蒸発器収容庫に配設されており、該蒸発器収容庫の外部に配設された圧縮機、凝縮器等と冷媒配管で接続されて冷媒回路を構成しており、自身の周囲を通過する内部空気を冷却する冷却ユニットを形成するものである。
【0003】
送風手段は、収納庫の内部に配設されている。この送風手段は、収納庫の開口部が扉体により閉成されている場合にのみ駆動して、冷却ユニットにより冷却された冷却空気を開口部近傍に送風するものである。
【0004】
このような車両用冷却収納装置では、冷却ユニットにより冷却された冷却空気によって該収納庫の内部を所定温度に冷却するようにしており、開口部が扉体により開成されている場合には送風手段が冷却空気を開口部近傍に送風することでエアカーテンを形成し、収納庫外部の熱の進入を遮断するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−213053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1に提案されている車両用冷却収納装置では、開口部が扉体により開成されている場合にのみ送風手段が駆動して開口部近傍にエアカーテンを形成するようにしていたために、次のような問題があった。
【0007】
収納庫の開口部は、扉体により開閉されるものであり、パッキン等が扉体の周縁部等に適宜設けられてある程度の気密性等が確保されているが、収納庫の他の部位に比べて断熱性能が劣るという特性を有している。そのため、開口部が扉体が閉成されている場合でも、収納庫外部からの熱が最も進入しやすく、冷却効率の低下を招来する虞れがあった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、車両に搭載される収納庫の冷却効率を向上させることができる車両用冷却収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用冷却収納装置は、車両に搭載され、かつ自身に形成された開口部が扉体により開閉される断熱構造の収納庫を備え、冷却ユニットにより冷却された冷却空気によって該収納庫の内部を所定温度に冷却するようにした車両用冷却収納装置において、前記開口部が前記扉体により閉成されている場合に、該開口部近傍に冷却空気を送風することで前記収納庫の内部を補助的に冷却する補助冷却手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る車両用冷却収納装置は、上述した請求項1において、前記補助冷却手段は、前記開口部が前記扉体により開成されている場合にも、該開口部近傍に冷却空気を送風することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に係る車両用冷却収納装置は、上述した請求項2において、前記補助冷却手段は、前記開口部が前記扉体により閉成されている場合の冷却空気の送風量を、前記開口部が前記扉体により開成されている場合の冷却空気の送風量よりも小さくすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4に係る車両用冷却収納装置は、上述した請求項3において、前記補助冷却手段は、前記開口部が前記扉体により閉成されている場合において、前記車両が走行しているときの冷却空気の送風量よりも前記車両が停止しているときの冷却空気の送風量を小さくすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5に係る車両用冷却収納装置は、上述した請求項1において、前記冷却補助手段は、手動操作にて冷却空気の送風量を調整することを許容することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、補助冷却手段が、開口部が扉体により閉成されている場合に、該開口部近傍に冷却空気を送風することで収納庫の内部を補助的に冷却するので、収納庫の外部からの熱の進入を効果的に抑制することができ、これにより車両に搭載される収納庫の冷却効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である車両用冷却収納装置の模式図である。
【図2】図2は、冷却ユニットを構成する冷媒回路を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態である車両用冷却収納装置の特徴的な制御系を模式的に示すブロック図である。
【図4】図4は、図3に示した制御手段が所定のタイムスケジュールにしたがって実施する送風量調整処理の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る車両用冷却収納装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態である車両用冷却収納装置の模式図である。ここで例示する車両用冷却収納装置は、例えば冷凍車のような車両に適用されるものであり、収納庫10と、冷却ユニット20と、送風機14とを備えて構成してある。
【0018】
収納庫10は、平板状の断熱パネル11を適宜組み合わせることによって後面に開口部12が形成された直方状を成しており、断熱構造を有するものである。この収納庫10の開口部12は、扉体13により開閉されるものである。
【0019】
冷却ユニット20は、冷媒回路20aを備えて構成している。冷媒回路20aは、内部に冷媒が封入してあり、図2に示すように、蒸発器21と、圧縮機22と、凝縮器23と、膨張機構24とを冷媒配管25にて順次接続することにより構成されるものである。
【0020】
蒸発器21は、収納庫10を構成する前面側断熱パネル11の上部側前面に取り付けられた筐体30の内部に配設されており、より詳細には、収納庫10の内部と吹出口31及び吸込口32を通じて連通する断熱構造の蒸発器収容庫33の内部に配設されている。この蒸発器21は、供給された冷媒を蒸発させるものである。
【0021】
圧縮機22は、筐体30の外部であって車両の下部に配設されており、蒸発器21で蒸発した冷媒を吸引して圧縮するものである。
【0022】
凝縮器23は、筐体30の内部であって蒸発器収容庫33の前方側に配設されており、圧縮機22で圧縮された冷媒を凝縮させるものである。この凝縮器23の近傍には、凝縮器用送風ファン23Fが配設されている。この凝縮器用送風ファン23Fは、駆動することにより凝縮器23の周囲に外気を通過させるものである。
【0023】
膨張機構24は、例えば温度膨張弁やキャピラリーチューブのようなものであり、筐体30の内部に配設されている。この膨張機構24は、凝縮器23で凝縮した冷媒を断熱膨張させるもので、断熱膨張させた冷媒を蒸発器21に供給するものである。
【0024】
このような冷却ユニット20においては、冷媒回路20aで冷媒を循環させることにより、蒸発器21の周囲空気、すなわち蒸発器収容庫33の内部空気が冷却される。そして、蒸発器21の近傍に配設された蒸発器用送風ファン21Fが駆動することにより、吸込口32を通じて収納庫10の内部空気を蒸発器収容庫33に吸い込み、かつ吹出口31を通じて蒸発器収容庫33の内部空気を収納庫10の内部に吹き出すことで、収納庫10と蒸発器収容庫33との間で互いの内部空気を循環させる結果、収納庫10の内部を冷却することができる。
【0025】
送風機14は、収納庫10の内部における後方側上部に配設されている。送風機14は、冷却ユニット20から供給された冷却空気の一部、すなわち蒸発器21で冷却されて吹出口31より収納庫10の内部に吹き出された空気の一部を、収納庫10の開口部12近傍において上方から下方に向けて送風するものである。
【0026】
図3は、本発明の実施の形態である車両用冷却収納装置の特徴的な制御系を模式的に示すブロック図である。この図3に示すように、車両用冷却収納装置は、開口部検出センサS1、走行検出センサS2、制御手段40を備えている。
【0027】
開口部検出センサS1は、収納庫10の開口部12の所定部位に配設されている。この開口部検出センサS1は、開口部12が閉成されている場合にはオフ状態となる一方、扉体13が開移動して開口部12が開成された場合にはオン状態となってオン信号を制御手段40に与えるもので、開口部12の開閉を検出するものである。
【0028】
走行検出センサS2は、車両の所定個所に配設されている。この走行検出センサS2は、車両が停止しているときにはオフ状態となる一方、車両が走行する場合には、オン状態となってオン信号を制御手段40に与えるもので、車両が走行状態にあるか否かを検出するものである。
【0029】
制御手段40は、メモリ45に予め記憶されているプログラムやデータにしたがって送風機14の駆動を制御するものであり、入力処理部41と送風量調整処理部42とを備えている。尚、この制御手段40は、冷却ユニット20を制御する制御系から独立して構成されるものであっても良いし、該制御系に組み込まれて構成されるものであっても構わない。
【0030】
入力処理部41は、開口部検出センサS1及び走行検出センサS2のそれぞれから与えられるオン信号を入力処理するものである。送風量調整処理部42は、送風機14に対して駆動指令を与えることで送風量を予め設定された大、中、小の3段階のいずれかに調整するものである。より詳細に説明すると、送風量調整処理部42は、入力処理部41を通じて開口部検出センサS1からのオン信号を入力した場合には、送風量を大とする駆動指令を送風機14に与え、入力処理部41を通じて開口部検出センサS1からのオン信号を入力しないで走行検出センサS2からのオン信号を入力した場合には、送風量を中とする駆動指令を送風機14に与え、入力処理部41通じて開口部検出センサS1及び走行検出センサS2からのオン信号を入力しない場合には、送風量を小とする駆動指令を送風機14に与えるものである。
【0031】
図4は、図3に示した制御手段40が所定のタイムスケジュールにしたがって実施する送風量調整処理の処理内容を示すフローチャートである。この送風量調整処理を説明することにより車両用冷却収納装置の動作について説明する。
【0032】
制御手段40は、入力処理部41を通じて開口部検出センサS1からのオン信号を入力した場合(ステップS101:Yes)には、収納庫10の開口部12が扉体13により開成されているものとして、送風量調整処理部42を通じて送風量を大とする駆動指令を送風機14に与え(ステップS102)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0033】
これによれば、送風機14により送風される冷却空気は、開口部12近傍を上方から下方に向けて通過することでエアカーテンを形成し、開成する開口部12からの収納庫10外部の熱の進入を遮断することができる。
【0034】
一方、制御手段40は、入力処理部41を通じて開口部検出センサS1からのオン信号を入力せずに走行検出センサS2からのオン信号を入力した場合(ステップS101:No,ステップS103:Yes)には、収納庫10を搭載する車両が走行中であるとして、送風量調整処理部42を通じて送風量を中とする駆動指令を送風機14に与え(ステップS104)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0035】
これによれば、送風機14により送風される冷却空気は、開口部12近傍を上方から下方に向けて通過することで開口部12近傍を補助的に冷却することができる。
【0036】
制御手段40は、入力処理部41を通じて開口部検出センサS1及び走行検出センサS2のそれぞれからオン信号を入力しない場合(ステップS101:No,ステップS103:No)には、収納庫10の開口部12が閉成された状態で車両が停止中であるとして、送風量調整処理部42を通じて送風量を小とする駆動指令を送風機14に与え(ステップS105)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0037】
これによれば、送風機14により送風される冷却空気は、開口部12近傍を上方から下方に向けて通過することで開口部12近傍を補助的に冷却することができる。ここで、収納庫10の開口部12が閉成されている場合において、車両が走行中のときよりも停止中のときの送風量を小とするのは、走行中のときよりも開口部12と扉体13との隙間から進入する外気が少ないからである。
【0038】
このように本実施の形態である車両用冷却収納装置においては、送風機14及び制御手段40が、収納庫10の開口部12が扉体13により閉成されている場合に、該開口部12近傍に冷却空気を送風することで収納庫10の内部を補助的に冷却する補助冷却手段を構成している。
【0039】
そして、本実施の形態である車両用冷却収納装置では、収納庫10の開口部12が扉体13により閉成されている場合においても、該開口部12近傍に冷却空気を送風することで収納庫10の内部を補助的に冷却するので、収納庫10の外部からの熱の進入を効果的に抑制することができ、これにより車両に搭載される収納庫10の冷却効率を向上させることができる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されずに種々の変更を行うことができる。すなわち、本発明においては、補助冷却手段を構成する部材(例えば送風機14等)が手動操作にて冷却空気の送風量を調整することを許容するものであっても良い。これによっても車両に搭載される収納庫の冷却効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 収納庫
11 断熱パネル
12 開口部
13 扉体
14 送風機
20 冷却ユニット
20a 冷媒回路
21 蒸発器
21F 蒸発器用送風ファン
22 圧縮機
23 凝縮器
23F 凝縮器用送風ファン
24 膨張機構
25 冷媒配管
30 筐体
31 吹出口
32 吸込口
33 蒸発器収容庫
40 制御手段
41 入力処理部
42 送風量調整処理部
45 メモリ
S1 開口部検出センサ
S2 走行検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、かつ自身に形成された開口部が扉体により開閉される断熱構造の収納庫を備え、
冷却ユニットにより冷却された冷却空気によって該収納庫の内部を所定温度に冷却するようにした車両用冷却収納装置において、
前記開口部が前記扉体により閉成されている場合に、該開口部近傍に冷却空気を送風することで前記収納庫の内部を補助的に冷却する補助冷却手段を備えたことを特徴とする車両用冷却収納装置。
【請求項2】
前記補助冷却手段は、前記開口部が前記扉体により開成されている場合にも、該開口部近傍に冷却空気を送風することを特徴とする請求項1に記載の車両用冷却収納装置。
【請求項3】
前記補助冷却手段は、前記開口部が前記扉体により閉成されている場合の冷却空気の送風量を、前記開口部が前記扉体により開成されている場合の冷却空気の送風量よりも小さくすることを特徴とする請求項2に記載の車両用冷却収納装置。
【請求項4】
前記補助冷却手段は、前記開口部が前記扉体により閉成されている場合において、前記車両が走行しているときの冷却空気の送風量よりも前記車両が停止しているときの冷却空気の送風量を小さくすることを特徴とする請求項3に記載の車両用冷却収納装置。
【請求項5】
前記冷却補助手段は、手動操作にて冷却空気の送風量を調整することを許容することを特徴とする請求項1に記載の車両用冷却収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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