説明

車両用前照灯

【課題】従来の車両用前照灯では、部品点数が増し、組付工程が増し、製造コストが高価となる。
【解決手段】この発明は、ランプハウジング2と、ランプレンズ3と、光源4と、リフレクタ5と、ピボット機構6と、光軸調整機構7と、振動抑制機構9と、を備える。ピボット機構6は、ピボット16と、ボス部17と、ピボットホルダ18と、から構成されている。振動抑制機構9は、リブ24と、弾性当接部25と、から構成されている。この結果、この発明は、部品点数や組付工程を軽減して、製造コストを安価にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光軸調整機構を備える車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用前照灯について説明する。従来の車両用前照灯は、車体ブラケットと、バルブと、リフレクタと、調心軸受部と、上下エーミング調整部および左右エーミング調整部と、支承部と、を備えるものである。支承部は、車体ブラケットに固定された支持部材と、リフレクタに固定されていて、前記支持部材に支持されている支脚部材と、から構成されている。従来の車両用前照灯は、支承部を介して、リフレクタが車体ブラケットに支持されているので、リフレクタの振動が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−67414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の車両用前照灯は、支承部の支持部材および支脚部材が車体ブラケットおよびリフレクタと別個の部材からなるので、部品点数が増し、組付工程が増し、製造コストが高価となる。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、従来の車両用前照灯では、部品点数が増し、組付工程が増し、製造コストが高価となる、という点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、灯室を画成するランプハウジングおよびランプレンズと、その灯室内に配置されている光源と、灯室内に配置されていて光源からの光をランプレンズ側に反射させる反射面を有するリフレクタと、リフレクタをランプハウジングに回転可能に支持するピボット機構と、リフレクタの反射面の光軸を調整する光軸調整機構と、リフレクタの振動を抑制する振動抑制機構と、を備え、ピボット機構が、ランプハウジングに固定されていて球部を有するピボットと、リフレクタのうち反射面と反対側の箇所に設けられていて取付孔を有するボス部と、ボス部の取付孔の壁に固定されていてピボットの球部を回転可能に支持するピボットホルダと、から構成されていて、振動抑制機構が、ボス部に設けられているリブと、ランプハウジングに設けられていてリブに弾性当接する弾性当接部と、から構成されている、ことを特徴とする。
【0007】
この発明(請求項2にかかる発明)は、リブがボス部の補強用リブと兼用する、ことを特徴とする。
【0008】
この発明(請求項3にかかる発明)は、反射面が複数のセグメントからなり、リブが隣り合うセグメントとセグメントとの間の境界線に沿って設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、リブがリフレクタのボス部に設けられていてリフレクタのボス部と一体であり、かつ、弾性当接部がランプハウジングに設けられていてランプハウジングと一体であるので、従来の車両用前照灯と比較して、部品点数や組付工程を軽減することができ、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0010】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、リフレクタのボス部のリブにランプハウジングの弾性当接部を弾性当接させることにより、ピボットホルダをリフレクタのボス部の取付孔の壁に確実に固定することができ、かつ、ランプハウジングに固定されているピボットの球部をピボットホルダに確実に支持することができる。このピボット機構および振動抑制機構により、リフレクタの振動を確実に抑制することができる。
【0011】
この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯は、ボス部に設けたリブがボス部の補強用リブと兼用するので、部品点数を増やさずに、ボス部の強度(剛性)を向上させることができる。これにより、部品点数を増やさずに、ボス部のピボットホルダの固定がさらに確実となり、かつ、ピボットホルダのピボットの球部の支持がさらに確実となり、その結果、リフレクタの振動をさらに確実に抑制することができる。
【0012】
この発明(請求項3にかかる発明)の車両用前照灯は、リブがリフレクタの反射面の隣り合うセグメントとセグメントとの間の境界線に沿って設けられているので、リフレクタおよびボス部およびリブが集まる箇所に成形時のひけが多少発生したとしても、そのひけの影響がリフレクタの反射面の隣り合うセグメントとセグメントとの間の境界線上に発生するだけである。この結果、反射面におけるひけの影響を極力小さく抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態を示す縦断面図(垂直断面図)である。
【図2】図2は、要部を示す一部拡大縦断面図(一部拡大垂直断面図)である。
【図3】図3は、弾性当接部を示すランプハウジングの一部斜視図である。
【図4】図4は、図3におけるIV矢視図である。
【図5】図5は、図3におけるV矢視図である。
【図6】図6は、反射面およびボス部およびリブを示すリフレクタの一部斜視図である。
【図7】図7は、図6におけるVII矢視図である。
【図8】図8は、図6におけるVIII矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態(実施例)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
(構成の説明)
以下、この実施形態における車両用前照灯の構成について説明する。図中、符号1は、この実施形態における車両用前照灯(たとえば、ヘッドランプやフォグランプなど)である。
【0016】
前記車両用前照灯1は、図1に示すように、ランプハウジング2と、ランプレンズ3と、光源4と、リフレクタ5と、ピボット機構6と、上下用の光軸調整機構7および左右用の光軸調整機構(図示せず)と、振動抑制機構9と、を備えるものである。
【0017】
前記ランプハウジング2および前記ランプレンズ3は、灯室13を画成する。前記灯室13内には、前記光源4および前記リフレクタ5および前記ピボット機構6および前記光軸調整機構7および前記振動抑制機構9が配置されている。前記ランプハウジング2は、弾性を有する樹脂部材、たとえば、PP(ポリプロピレン)などの樹脂部材からなる。
【0018】
前記光源4は、この例では、メタルハライドランプなどの高圧金属蒸気放電灯、高輝度放電灯(HID)などの放電灯である。前記光源4は、前記リフレクタ5にソケット10および取付スプリング30を介して着脱可能に取り付けられている。なお、前記光源4は、前記の放電灯以外に、ハロゲン電球、白熱電球、LEDなどの半導体型光源を使用しても良い。
【0019】
前記リフレクタ5は、耐熱性の樹脂部材、たとえば、BMC(バルク状成形材料のガラス繊維強化熱硬化性プラスチック)からなる。前記リフレクタ5は、前側(前記車両用前照灯1の光の照射方向側)が開口し、かつ、後側が閉塞した中空の凹形状をなす。前記リフレクタ5の内凹面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていて、反射面11が形成されている。
【0020】
前記反射面11は、前記光源4から放射される光を前記ランプレンズ3側に反射させるものである。前記反射面11は、自由曲面(NURBS曲面)の反射面である。前記反射面11は、複数個のセグメント14から構成されている。隣り合う前記セグメント14と前記セグメント14との間には、境界線15が形成されている。前記境界線15は、この例では、垂直方向V−Vに対してθ°傾いている。前記リフレクタ5の後側の閉塞部のうち、前記反射面11の光軸Z−Zが交差する箇所には、透孔12が設けられている。
【0021】
前記ピボット機構6は、図1、図2に示すように、ピボット16と、ボス部17と、ピボットホルダ18と、から構成されている。
【0022】
前記ピボット16は、一体構造の球部19とねじ部20と鍔部26とを有する。一方、前記ランプハウジング2には、中空状の固定筒部27と短筒部28が一体に設けられている。前記ねじ部20が前記ランプハウジング2の前記固定筒部27の孔の壁(内面壁)にタッピング作用によりねじ込まれている。前記ピボット16の前記鍔部26が前記ランプハウジング2の前記固定筒部27の孔の縁部に当接する。この結果、前記ピボット16は、前記ランプハウジング2に固定されている。
【0023】
前記ボス部17は、前記リフレクタ5のうち前記反射面11と反対側の箇所であって、かつ、前記境界線15に対応する箇所に一体に設けられている。前記ボス部17は、断面円形の取付孔21を有する円筒形状をなす。
【0024】
前記ピボットホルダ18は、一体構造の球凹部22と固定部23とから構成されている。前記固定部23は、前記ボス部17の前記取付孔21の壁(内面壁)に金属ワッシャ(図示せず)などを介して固定されている。前記ピボットホルダ18の前記球凹部22中には、前記ピボット16の前記球部19が全方向(360°の方向)に回転可能に嵌合して支持されている。
【0025】
前記振動抑制機構9は、リブ24と、弾性当接部25と、から構成されている。前記リブ24は、前記ボス部17の外面に、前記ボス部17の軸方向(前後方向、前記光軸Z−Zと平行な方向)に一体に設けられている。前記リブ24は、前記ボス部17の補強用リブと兼用する。前記リブ24は、前記境界線15に沿って設けられている。
【0026】
前記弾性当接部25は、前記ランプハウジング2の前記短筒部28の外側に一体に、かつ、前記リブ24と対応してすなわち前記リブ24を設けた方向に対してほぼ直交する方向に設けられている。前記弾性当接部25は、弾性を有する板形状をなす。前記弾性当接部25は、前記リブ24に弾性当接する。前記リブ24と前記弾性当接部25とは、寸法R分ラップしている。この結果、前記弾性当接部25は、寸法R分弾性変形している。
【0027】
前記振動抑制機構9の前記リブ24および前記弾性当接部25は、前記ボス部17から前記境界線方向15に2個ずつ設けられている。
【0028】
前記上下用の光軸調整機構7は、上下用のアジャストスクリュー8と、上下用のスクリューマウンティング29と、から構成されている。前記上下用のアジャストスクリュー8は、前記ランプハウジング2に回転可能にかつ軸方向に移動不可能に取り付けられている。前記上下用のスクリューマウンティング29は、前記リフレクタ5に固定されている。前記上下用のアジャストスクリュー8は、前記上下用のスクリューマウンティング29にねじ込まれている。なお、図示していない前記左右用の光軸調整機構は、前記上下用の光軸調整機構7とほぼ同様の構成からなるので、説明を省略する。
【0029】
前記灯室13内であって、前記ランプレンズ3と前記リフレクタ5の前側の開口部の周囲との間には、インナーパネル31が配置されている。前記インナーパネル31は、前記車両用前照灯1の外部から前記ランプレンズ3を通して前記灯室13内を見た際に、前記ピボット機構6および前記上下用の光軸調整機構7および左右用の光軸調整機構期などの他の部品が見えないように見栄え向上のために覆い隠すものである。
【0030】
前記ランプハウジング2の後部には、前記光源4の交換用の挿通孔32が設けられている。前記ランプハウジング2の前記挿通孔32の周縁には、キャップ33が着脱可能に取り付けられている。
【0031】
(作用の説明)
この実施形態における車両用前照灯1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0032】
光源4を点灯する。すると、光源4から放射される光は、リフレクタ5の反射面11の各セグメント14でランプレンズ3側に反射される。この反射光は、所定の配光パターンとしてランプレンズ3を透過して車両の前方に照射される。
【0033】
上下用のアジャストスクリュー8を回転させると、上下用のスクリューマウンティング29がねじ送り作用で上下用のアジャストスクリュー8に沿って前進後退する。この結果、リフレクタ5は、ピボット機構6と左右用のアジャストスクリューおよび左右用のスクリューマウンティングとを結ぶ水平線(図示せず)周りに上下方向に傾動する。
【0034】
左右用のアジャストスクリューを回転させると、左右用のスクリューマウンティングがねじ送り作用で左右用のアジャストスクリューに沿って前進後退する。この結果、リフレクタ5は、ピボット機構6と上下用のアジャストスクリュー8および上下用のスクリューマウンティング29とを結ぶ垂直線(図示せず)周りに左右方向に傾動する。
【0035】
このようにして、リフレクタ5の反射面11の光軸Z−Zは、調整される。この光軸調整は、手動により、あるいは、自動により、行われる。
【0036】
ここで、ランプハウジング2の振動抑制機構9の弾性当接部25がリフレクタ5のボス部17の振動抑制機構9のリブ24に弾性当接している。このために、この実施形態における車両用前照灯1に車両の振動が伝わったとしても、リブ24と弾性当接部25とからなる振動抑制機構9により、リフレクタ5の振動が抑制される。
【0037】
(効果の説明)
この実施形態における車両用前照灯1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0038】
この実施形態における車両用前照灯1は、リブ24がリフレクタ5のボス部17に設けられていてリフレクタ5のボス部17と一体であり、かつ、弾性当接部25がランプハウジング2に設けられていてランプハウジング2と一体である。この結果、従来の車両用前照灯と比較して、部品点数や組付工程を軽減することができ、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0039】
この実施形態における車両用前照灯1は、リフレクタ5のボス部17のリブ24にランプハウジング2の弾性当接部25を弾性当接させることにより、ピボットホルダ18をリフレクタ5のボス部17の取付孔21の壁に確実に固定することができ、かつ、ランプハウジング2に固定されているピボット16の球部19をピボットホルダ18に確実に支持することができる。このピボット機構6および振動抑制機構9により、リフレクタ5の振動を確実に抑制することができる。
【0040】
この実施形態における車両用前照灯1は、ボス部17に設けたリブ24がボス部17の補強用リブと兼用するので、部品点数を増やさずに、ボス部17の強度(剛性)を向上させることができる。これにより、部品点数を増やさずに、ボス部17のピボットホルダ18の固定がさらに確実となり、かつ、ピボットホルダ18のピボット16の球部19の支持がさらに確実となる。その結果、リフレクタ5の振動をさらに確実に抑制することができる。
【0041】
この実施形態における車両用前照灯1は、リブ24がリフレクタ5の反射面11の隣り合うセグメント14とセグメント14との間の境界線15に沿って設けられているので、リフレクタ5およびボス部17およびリブ24が集まる箇所に成形時のひけが多少発生したとしても、そのひけの影響がリフレクタ5の反射面11の隣り合うセグメント14とセグメント14との間の境界線15上に発生するだけである。この結果、反射面11の各セグメント14におけるひけの影響を極力小さく抑制することができる。
【0042】
(実施形態以外の例の説明)
なお、前記の実施形態においては、振動抑制機構9のリブ24および弾性当接部25を2個ずつ設けたものである。ところが、この発明においては、振動抑制機構9のリブ24および弾性当接部25を1個もしくは3個以上の複数個設けても良い。
【0043】
また、前記の実施形態においては、振動抑制機構9のリブ24および弾性当接部25を反射面11の隣り合うセグメント14とセグメント14との間の境界線15に沿って設けるものである。ところが、この発明においては、振動抑制機構9のリブ24および弾性当接部25の設ける方向や位置が任意である。
【符号の説明】
【0044】
1 車両用前照灯
2 ランプハウジング
3 ランプレンズ
4 光源
5 リフレクタ
6 ピボット機構
7 上下用の光軸調整機構
8 上下用のアジャストスクリュー
9 振動抑制機構
10 ソケット
11 反射面
12 透孔
13 灯室
14 セグメント
15 境界線
16 ピボット
17 ボス部
18 ピボットホルダ
19 球部
20 ねじ部
21 取付孔
22 球凹部
23 固定部
24 リブ
25 弾性当接部
26 鍔部
27 固定筒部
28 短筒部
29 上下用のスクリューマウンティング
30 取付スプリング
31 インナーパネル
32 挿通孔
33 キャップ
R ラップ分の寸法
V−V 垂直方向
Z−Z 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯室を画成するランプハウジングおよびランプレンズと、
前記灯室内に配置されている光源と、
前記灯室内に配置されていて、前記光源からの光を前記ランプレンズ側に反射させる反射面を有するリフレクタと、
前記リフレクタを前記ランプハウジングに回転可能に支持するピボット機構と、
前記リフレクタの前記反射面の光軸を調整する光軸調整機構と、
前記リフレクタの振動を抑制する振動抑制機構と、
を備え、
前記ピボット機構は、前記ランプハウジングに固定されていて、球部を有するピボットと、前記リフレクタのうち前記反射面と反対側の箇所に設けられていて、取付孔を有するボス部と、前記ボス部の前記取付孔の壁に固定されていて、前記ピボットの前記球部を回転可能に支持するピボットホルダと、から構成されていて、
前記振動抑制機構は、前記ボス部に設けられているリブと、前記ランプハウジングに設けられていて、前記リブに弾性当接する弾性当接部と、から構成されている、
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記リブは、前記ボス部の補強用リブと兼用する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記反射面は、複数のセグメントからなり、
前記リブは、隣り合う前記セグメントと前記セグメントとの間の境界線に沿って設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−89410(P2013−89410A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227942(P2011−227942)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】