説明

車両用灯具の異常検出回路

【課題】電源電圧が変化しても誤動作してしまうことのない車両用灯具の異常検出回路を提供する。
【解決手段】複数の発光素子LED1〜LED3が直列接続された直列回路11の一方の端子が電源ラインL1に接続され、この直列回路11の他方の端子の端子電圧Vsと予め設定された基準電圧Vrとを比較するコンパレータ12と、このコンパレータ12が直列回路11の端子電圧Vsが基準電圧Vrを越えたことを検知したとき、発光素子LED1〜LED3が異常であることを警告する発光ダイオード13とを備えた車両用灯具の異常検出回路10であって、抵抗R21とツエナーダイオードZD1を接続した直列回路20の一方の端子を電源ラインL1に接続し、その他方の端子をアースラインに接続し、抵抗R21とツエナーダイオードZD1との接続点の電圧Vrを基準電圧とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の発光素子を備えた車両用灯具の異常を検出する車両用灯具の異常検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の発光素子を備えた車両用灯具が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる車両用灯具は、複数の発光素子を直列接続して直列回路を形成し、この直列回路の両端を電源の両電極にスイッチを介して接続したものである。
【0004】
ところで、このような車両用灯具にあっては、複数の発光素子うち1つがショートして発光しなくなっても分からない場合がある。そこで、図5に示す異常検出回路が提案されている。
【0005】
かかる異常検出回路は、複数の発光ダイオード(発光素子)LED1〜LED3の直列回路の電圧Vsと抵抗Ra,Rbによって分圧された基準電圧Vwaとを比較する比較器1と、この比較器1から出力されるHレベルの信号によってオンするスイッチ素子2と、このスイッチ素子2のオンによって発光する発光ダイオード3とを備えている。
【0006】
発光ダイオードLED1〜LED3のうち例えば1つがショートすると、直列回路の電圧Vsが上昇し、この上昇した電圧Vsが基準電圧Vwaを越えて比較器1からHレベルの信号が出力され、このHレベルの信号によりスイッチ素子2がオンして発光ダイオード3に電流が流れ、発光ダイオード3が発光する。これにより、発光ダイオードLED1〜LED3に異常が発生したことが分かることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−94228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような異常検出回路にあっては、基準電圧Vwaが抵抗Ra,Rbの分圧比によって決定され、電源電圧Vccの変化によって図6に示すように大きく変化するが、電圧Vsは発光ダイオードの特性によりその変化は小さい。このため、電源電圧VccがVc1に低下すると、発光ダイオードLED1〜LED3に異常がなくても、電圧Vsが基準電圧Vwaを越えてしまい、誤動作してしまうという問題があった。
【0009】
この発明は、電源電圧が変化しても誤動作してしまうことのない車両用灯具の異常検出回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、複数の発光素子が直列接続された直列回路の一方の端子が電源ラインに接続され、この直列回路の他方の端子の端子電圧と予め設定された基準電圧とを比較するコンパレータと、このコンパレータが前記直列回路の端子電圧が基準電圧を越えたことを検知したとき、発光素子が異常であることを警告する警告手段とを備えた車両用灯具の異常検出回路であって、
抵抗とツエナーダイオードを接続した直列回路の一方の端子を前記電源ラインに接続し、その他方の端子をアースラインに接続し、
前記抵抗とツエナーダイオードとの接続点の電圧を前記基準電圧としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、電源電圧の変動によって誤動作してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明に係る車両用灯具の異常検出回路の構成を示した回路図である。
【図2】電源電圧の変化に対する基準電圧と検出電圧の変化を示したグラフである。
【図3】第2実施例の構成を示した回路図である。
【図4】第2実施例の電源電圧の変化に対する基準電圧と検出電圧の変化を示したグラフである。
【図5】従来の異常検出回路の構成を示した回路図である。
【図6】従来の異常検出回路における電源電圧の変化に対する基準電圧と検出電圧の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明に係る車両用灯具の異常検出回路の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0014】
[第1実施例]
図1に示す異常検出回路10は、複数の発光ダイオード(発光素子)LED1〜LED3を直列した直列回路11に直列接続された抵抗R11と、基準電圧(閾値電圧)Vrを出力する基準電圧出力回路20と、基準電圧出力回路20が出力する基準電圧Vrと、抵抗R11と直列回路11との接続点S1の検出電圧Vsとを比較するコンパレータ12と、コンパレータ12から出力されるHレベルの信号によってオンするスイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q1のオンによって発光する発光ダイオード(警告手段)13などとを備えている。
【0015】
直列回路11の発光ダイオードLED1のカソード(直列回路11の一方の端子)は電源ラインL1に接続され、発光ダイオードLED3のアノード(直列回路11の他方の端子)は抵抗R11を介してアースライン(図示せず)に接続されている。
【0016】
基準電圧出力回路20は、直列接続された抵抗R21とツエナーダイオードZD1とを有し、抵抗R21の一方の端子が電源ラインL1に接続され、抵抗R21の他方の端子がツエナーダイオードZD1のアノードに接続され、ツエナーダイオードZD1のカソードがアースラインに接続されている。
【0017】
コンパレータ12の非反転入力端子が直列回路11と抵抗R11の接続点S1に接続され、コンパレータ12の反転入力端子が抵抗R21とツエナーダイオードZD1との接続点S2に接続されている。コンパレータ12の出力端子はスイッチ素子Q1のベースに接続されるとともに抵抗R12を介して電源ラインL1に接続されている。
【0018】
発光ダイオードLED1〜LED3が正常(ショートせず)に点灯している場合、接続点S1の検出電圧Vsが基準電圧出力回路20の基準電圧Vr以下となるように、また、複数の発光ダイオードLED1〜LED3のうち少なくとも1つがショートした場合、検出電圧Vsが基準電圧Vrを越えるように抵抗R11,R21等の値が設定されている。
【0019】
スイッチ素子Q1のコレクタは発光ダイオード13のアノードに接続され、発光ダイオード13のカソードは抵抗R13を介して電源ラインL1に接続されている。スイッチ素子Q1のエミッタはアースラインに接続されている。
【0020】
なお、電源ラインL1は図示しないスイッチ回路を介して車両に搭載されているバッテリ(図示せず)の陽極に接続され、アースラインはバッテリの陰極に接続されている。
[動 作]
次に、上記のように構成される車両用灯具の異常検出回路10の動作について説明する。
【0021】
いま、スイッチ回路(図示せず)がオンして直列回路11に電流が流れて、各発光ダイオードLED1〜LED3が正常に発光している場合、直列回路11と抵抗R11の接続点S1の検出電圧Vsが基準電圧Vr以下となる。このため、コンパレータ12の出力端子はLレベルの信号を出力し、スイッチ素子Q1はオフのままであり、発光ダイオード13は消灯した状態となっている。
【0022】
電源電圧Vccが変化した場合、図2に示すように、基準電圧Vrは電源電圧Vccの変化に拘わらずほぼ一定の状態を保つ。これはツエナーダイオードZD1により接続点S2の電圧が一定に保たれることよる。このため、電源電圧Vccが低下してこの電源電圧VccがVc1以下となっても検出電圧Vsが基準電圧Vrを越えることがない。
【0023】
このため、電源電圧Vccが低下しても異常検出回路10が誤動作してしまうことがない。
【0024】
複数の発光ダイオードLED1〜LED3のうち少なくとも1つがショートした場合、検出電圧Vsが基準電圧Vrを越える。これにより、コンパレータ12の出力端子はHレベルとなってスイッチ素子Q1はオンする。スイッチ素子Q1のオンにより、発光ダイオード13に電流が流れて発光ダイオード13が発光し、発光ダイオードLED1〜LED3が異常であることを警告することになる。
[第2実施例]
図3は第2実施例の異常検出回路100の構成を示す回路図である。図3において、120は基準発生回路で、抵抗21とツエナーダイオードZD1を有し、抵抗R21とツエナーダイオードZD1の配置位置を第1実施例とは逆にしたものである。112はコンパレータで、非反転入力端子が抵抗R21とツエナーダイオードZDとの接続点S2に接続され、反転入力端子が直列回路11と抵抗R11の接続点S1に接続されている。
【0025】
コンパレータ112は、検出電圧Vsが基準電圧Vrを越えるとLレベルの信号を出力し、検出電圧Vsが基準電圧Vr以下のときHレベル信号を出力する。
【0026】
スイッチ素子Q2は、PNP型トランジスタであり、コンパレータ112からLレベルの信号が出力されるとオンする。
【0027】
この第2実施例も第1実施例と同様に基準電圧Vrは電源電圧Vccの変化に拘わらずほぼ一定の状態を保たれることになり、図4に示すように、電源電圧Vccの低下により電源電圧VccがVc1以下となっても検出電圧Vsが基準電圧Vrを越えることがない。
【0028】
このため、電源電圧Vccの低下により異常検出回路10が誤動作してしまうことがない。
【0029】
上記実施例は、いずれも3つの発光ダイオードLED1〜LED3を直列接続したものについて説明しているが、直列接続する発光ダイオードの数はいくつであってもよい。
【0030】
この発明は、上記実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0031】
10 異常検出回路
11 直列回路
12 コンパレータ
13 発光ダイオード(警告手段)
LED1 発光ダイオード(発光素子)
LED2 発光ダイオード(発光素子)
LED3 発光ダイオード(発光素子)
Q1 スイッチ素子
R21 抵抗
ZD1 ツエナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が直列接続された直列回路の一方の端子が電源ラインに接続され、この直列回路の他方の端子の端子電圧と予め設定された基準電圧とを比較するコンパレータと、このコンパレータが前記直列回路の端子電圧が基準電圧を越えたことを検知したとき、発光素子が異常であることを警告する警告手段とを備えた車両用灯具の異常検出回路であって、
抵抗とツエナーダイオードを接続した直列回路の一方の端子を前記電源ラインに接続し、その他方の端子をアースラインに接続し、
前記抵抗とツエナーダイオードとの接続点の電圧を前記基準電圧としたことを特徴とする車両用灯具の異常検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−240627(P2012−240627A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115451(P2011−115451)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)