説明

車両用灯具

【課題】ハウジングの薄肉化にも拘わらず、レンズとの結合がなされるシール溝の変形を大幅に抑制できる車両用灯具を提供する。
【解決手段】 光源10を内蔵するハウジング20およびレンズ30は接合部40を介して接合される。ハウジング20の接合部40側の周辺部は、周辺部から分岐され周辺部に対向して配置される外壁部25Bを有する屈曲部25が形成され、周辺部と外壁部との間にシール溝26を備えて構成されている。レンズ30の接合部40側の周辺部は、ハウジング20のシール溝26に挿入されるように構成されている。ハウジング20とレンズ30の接合は、シール溝26内に塗布されたシール材50によってなされている。外壁部25Bのハウジング20の周辺部と対向する表面と反対側の第1表面25Bfは、外壁部の周方向に沿って山と谷が連続した表面として構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に係り、特に、光源を内蔵するハウジングおよびレンズの接合部に改良を施した車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
光源を内蔵するハウジングおよびレンズは、その結合部において気密性を保持する工夫がなされている。
【0003】
たとえば、下記特許文献1には、ハウジングの開口部の周縁に一対の縦壁と底面とで断面がほぼコ字状とするシール溝を設け、このシール溝にレンズの脚部を挿入するとともに、シール溝内に塗布された熱溶融性のシール材に接着させる構成のものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-201207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された車両用灯具は、ハウジングのシール溝を、ハウジングの開口部の周縁から分岐され該周縁に対向して配置される外壁部を有する屈曲部を形成することによって構成されたものとなっている。このため、前記外壁部は、その先端がハウジングの開口部の周縁から大きく離間されるような変形がなされる構造となっていることが否めない。
【0006】
したがって、ハウジングのシール溝に熱溶融性のシール材を塗布する場合に、シール材の熱によって、前記外壁部に上述した変形が生じ、ハウジングとレンズとの気密性が損なわれてしまう不都合を生じていた。また、シール材の塗布時ばかりでなく、ハウジングとレンズとの結合の後において、太陽光の照射による温度の上昇、あるいは内蔵される光源の熱による温度の上昇によっても上述した不都合を生じていた。
【0007】
このような不都合は、軽量化等を図るため、たとえば樹脂からなるハウジングを薄肉化させた場合に、顕著となっていた。
【0008】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、ハウジングの薄肉化にも拘わらず、レンズとの結合がなされるシール溝の変形を大幅に抑制できる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成させるために、本発明は、ハウジングのシール溝を構成する外壁部に周方向に沿った山と谷を連続して形成することによって剛性を向上させ、これにより、該外壁部がその先端においてハウジングの開口部の周縁から大きく離間するような変形をしてしまうのを回避する構成としたものである。
【0010】
本発明の車両用灯具は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の車両用灯具は、光源を内蔵するハウジングおよびレンズは接合部を介して接合され、前記ハウジングの前記接合部側の周辺部は、前記周辺部から分岐され前記周辺部に対向して配置される外壁部を有する屈曲部が形成され、前記周辺部と前記外壁部との間にシール溝を備えて構成されているとともに、前記レンズの前記接合部側の周辺部は、前記ハウジングの前記シール溝に挿入されるように構成され、前記ハウジングと前記レンズの接合は、前記シール溝内に塗布されたシール材によってなされている車両用灯具であって、前記外壁部の前記ハウジングの前記周辺部と対向する表面と反対側の第1表面は、前記外壁部の周方向に沿って山と谷が連続した表面として構成されていることを特徴とする。
(2)本発明の車両用灯具は、(1)の構成において、前記外壁部はそれ自体が周方向にそって波状に屈曲されて構成され、前記外壁部の前記ハウジングの前記周辺部と対向する第2面は、前記第1面の前記山および前記谷の形成にそれぞれ反映された谷および山が形成されていることを特徴とする。
(3)本発明の車両用灯具は、(1)の構成において、前記外壁部の前記ハウジングの前記周辺部と対向する第2面は、平坦な面として形成されていることを特徴とする。
(4)本発明の車両用灯具は、(1)の構成において、前記レンズは、前記レンズと前記ハウジングの前記外壁部との間の前記シール溝を被う突起部が備えられ、前記突起部の端辺は前記突起部の周方向に沿って山と谷が連続した形状をなすとともに、前記突起部の端辺の側壁面は、前記ハウジングの前記外壁部の前記第1表面と面一に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように構成した車両用灯具によれば、ハウジングの薄肉化にも拘わらず、レンズとの結合がなされるシール溝の変形を大幅に抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の車両用灯具の実施態様1を示し、ハウジングと前面レンズの接合部の断面を斜視的に示した拡大図である。
【図2】本発明の車両用灯具の全体の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の車両用灯具の実施態様1を示し、(a)はハウジングの接合部を上方から観た平面図を、(b)は(a)のb−b線における断面図である。
【図4】本発明の車両用灯具の実施態様1を示し、ハウジングと前面レンズの接合部を上方から観た平面図である。
【図5】本発明の車両用灯具の実施態様2を示し、(a)はハウジングの接合部を上方から観た平面図を、(b)は(a)のb−b線における断面図である。
【図6】本発明の車両用灯具の実施態様3を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施態様1)
〈全体の構成〉
図2は、本発明の車両用灯具の全体の構成を示す断面図である。図2では、たとえば自動車のリヤコンビネーションランプを示している。
【0014】
図2において、光源10A、10B、10Cがあり、これら光源10A、10B、10Cは、たとえば上下方向に並列されてハウジング20に固定されるようになっている。ハウジング20は、光源10A、10B、10Cの光照射方向(図中左側方向)に開口部20Pを有するとともに、それぞれの光源10A、10B、10Cの周囲は、光源10A、10B、10Cからの光を開口部20P側へ反射させるリフレクタ21を有するように構成されている。また、前面レンズ30がハウジング20の開口部20Pを被うようにして配置されている。この前面レンズ30は、その周辺部とハウジング20の開口部20Pの周辺部に形成された接合部40を介して接合されるようになっている。この接合部40では、後の説明で明らかとなるように、たとえばホットメルトからなるシール材(図1において符号50で示す)によってハウジング20と前面レンズ30の気密性ある接合が確保されるようになっている。なお、結合部40は、ハウジング20において、その周辺部24に屈曲部25を備え、前面レンズ30において、その周辺部30Aに突起部32を備えて構成されている。また、ハウジング20、前面レンズ30は、それぞれ、たとえば樹脂の一体成形によって構成されるようになっている。
〈ハウジングとレンズの接合部〉
図1は、ハウジング20と前面レンズ30の接合部40の断面を斜視的に示した拡大図である。なお、図1では、ハウジング20がその開口部20Pを図面の上方に指向させた状態で描画されている。
【0015】
図1において、まず、ハウジング20の接合部40側の周辺部24は、該周辺部24からハウジング30の外側へ分岐された屈曲部25が形成されている。この屈曲部25は前記周辺部24とほぼ直交して配置される保持部25Aと前記周辺部24と平行に対向して配置される外壁部25Bとによって構成されている。これにより、ハウジング20の接合部40側の周辺部24は、該周辺部24と外壁部25Bとの間に前記保持部25を底面とするシール溝26が形成されるようになっている。
【0016】
そして、外壁部25Bはそれ自体が周方向に沿って波状に屈曲されて構成されている。図3(a)はハウジング20の接合部40を上方から観た平面図を、図3(b)は図3(a)のb−b線における断面図を示している。図3(a)、(b)に示すように、波状に屈曲された外壁部25Bは、ハウジング20の周辺部24と対向する側と反対の表面(第1表面)25Bfが外壁部25Bの周方向に沿って山と谷が滑らかに連続した曲面として構成されるとともに、ハウジング20の周辺部24と対向する裏面(第2表面)25Bsには表面(第1表面)25Bfに形成された山および谷にそれぞれ反映された谷および山が形成され、これら谷および山も滑らかに連続した曲面として構成されている。このように構成された外壁部25Bは、それ自体がたとえば凹凸のない平板状のものと比較した場合に、剛性を大幅に強化することができ、その先端においてハウジングの周辺部から大きく離間するような変形を回避できる構成とすることができる。このことは、図1、図3に示すように、たとえ、屈曲部25を構成する保持部25Aおよび外壁部25Bの厚さをハウジング20の周辺部4の厚さよりも薄く構成しても、該屈曲部25の変形を回避できる効果を奏することができるようになる。なお、図3(a)、(b)では、シール溝26に挿入される前面レンズ30の周辺部30Aを図中点線で示している。
【0017】
また、図1に示すように、前面レンズ30の接合部40側は屈曲された周辺部30Aを有して構成され、ハウジング20のシール溝26に挿入されるように構成されている。シール溝26には予めたとえばホットメルトからなるシール材50が塗布されており、シール溝26に挿入された前面レンズ30の周辺部30Aはこのシール材50を介してハウジング20との接合がなされるようになっている。ホットメルトは、たとえば、熱可塑性の合成樹脂またはゴムをベースとした100%の固形分、無溶剤形の接着剤からなり、熱で溶解塗付でき、急速な温度の低下によって短時間に固化接着できる性質を有するようになっている。この場合、ハウジング20の外壁部25Bは、上述したように剛性を向上させた構成としていることから、シール溝26にたとえばホットメルトを塗布する場合に、ホットメルトの熱によって、外壁部25Bがその先端においてハウジング20の周辺部30Aから大きく離間してしまうような変形を回避でき、ハウジング20と前面レンズ30との気密性が損なわれてしまうのを防止できる効果を奏するようになる。
【0018】
なお、前面レンズ30の周辺部30Aには突起部32が設けられ、この突起部32は、前面レンズ30の周辺部30Aがハウジング20のシール溝26に挿入された状態で、端辺部32Aがハウジング20の外壁部25Bの上端に当接され、前面レンズ30の周辺部30Aの先端がシール溝26の底面である保持部25Aに僅かな隙間を確保できるようになっている。これにより、前面レンズ30の周辺部30Aとシール溝26を構成する内壁面との間には確実にシール材50が介在されることになり信頼性ある接着を確保することができるようになる。また、突起部32は前面レンズ30とハウジング20の外壁部25Bとの間のシール溝26を被うようになっており、これにより、シール溝26に塗布されているシール材50の目視を回避させ、あるいはシール材50への不純物の侵入を防ぐようになっている。また、図4は、ハウジング20と前面レンズ30の接合部40を上方から観た平面図である。図4に示すように、突起部32の端辺部32Aは突起部32の周方向に沿って山と谷が連続した形状をなし、前面レンズ30の周辺部30Aがハウジング20のシール溝26に挿入された状態で、突起部32の端辺部32Aがハウジング20の外壁部25Bの表面(第1表面)25Bfと面一になるように形成されている。ハウジング20の外壁部25Bを波状に屈曲させて構成したことにともない、前面レンズ30の突起部32の端辺部32Aもそれに合わせた形状とすることによって、外観の見栄えを良好なものとしている。
【0019】
以上説明したことから明らかとなるように、本発明による車両用灯具によれば、ハウジング20の薄肉化にも拘わらず、前面レンズ30との結合がなされるシール溝26の変形を大幅に抑制できるようになる。
(実施態様2)
実施態様1に示したハウジング20の外壁部25Bは、それ自体を周方向にそって波状に屈曲させて構成し、その表裏面のいずれにも周方向に沿って山と谷を連続して形成したものである。しかし、これに限定されることはなく、図3と対応づけて描いた図5に示すように、外壁部25Bの表面(第1表面)25Bfは連続した山と谷が形成された面とし、裏面(第2表面)25Bsは凹凸のない平坦な面として形成するようにしてもよい。このようにした場合にも、外壁部25Bの剛性を向上させることができ、外壁部25Bがその先端においてハウジングの周辺部から大きく離間してしまうような変形を回避することができるようになる。この場合、外壁部25Bの山の部分の厚さをハウジング20の周辺部24の厚さよりも薄く構成するようにしても、該外壁部25Bの変形を回避できる効果を奏することができるようになる。さらに、このようにした場合、ハウジング20のシール溝26にシール材50を塗布した状態で、前面レンズ30の周辺部30Aを挿入する際に、外壁部25Bの裏面(第2表面)25Bs側に拡がったシール材50は、平坦面となっている外壁部25Bの裏面(第2表面)25Bsにおいて均一な付着がなされるようになる。これにより、前面レンズ30のハウジング20との信頼性ある結合を実現できる効果を奏する。
(実施態様3)
実施態様1および実施態様2では、外壁部25Bに連続して形成される山および谷は滑らかな曲面で連結された波形状として形成したものである。しかし、図6に示すように、これら山および谷は、段差によって高さの異なる平坦部を有する波形状として形成してもよいことはもちろんである。
【0020】
すなわち、図6は、図3(a)に対応づけて描いた図で、外壁部25Bの表面(第1面)25Bfに形成される山および谷は段差によって高さの異なる平坦部が連続して形成されているととともに、裏面(第2表面)25Bsには表面(第1表面)25Bfに形成された山および谷にそれぞれ反映された谷および山が形成された面として構成され、これらの谷および山も段差によって高さの異なる平坦部が連続して形成されるようになっている。この場合、裏面(第2表面)25Bsに形成される谷には、図6に示すように、その角部において湾曲状に構成するようにしてもよい。このようにした場合、ホットメルトが谷の角部においても充分に侵入して塗布され、前面レンズ30の周辺部30Aとの接続の信頼性を向上させることができるようになる。
(実施態様4)
実施態様1で示した車両用灯具は、光源10A、10B、10Cの光照射方向に前面レンズ30を備えたものを示したものである。しかし、光源10A、10B、10Cと前面レンズ30との間に他のレンズ(インナーレンズ)を配置した構成のものについても本発明が適用できることはいうまでもない。
【0021】
また、実施態様1で示した車両用灯具は、3個の光源10A、10B、10Cを内蔵するものであるが、これに限定されることはなく、1個、あるいは4個以上の光源が内蔵されたものであってもよいことはいうまでもない。
【0022】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0023】
10A、10B、10C……光源、20……ハウジング、20P……開口部、24……周辺部(ハウジングの)、25……屈曲部、25A……保持部、25B……外壁部、26……シール溝、30……前面レンズ、30A……周辺部(前面レンズの)、40……接合部、50……シール材、32……突起部、32A……端辺部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を内蔵するハウジングおよびレンズは接合部を介して接合され、
前記ハウジングの前記接合部側の周辺部は、前記周辺部から分岐され前記周辺部に対向して配置される外壁部を有する屈曲部が形成され、前記周辺部と前記外壁部との間にシール溝を備えて構成されているとともに、前記レンズの前記接合部側の周辺部は、前記ハウジングの前記シール溝に挿入されるように構成され、
前記ハウジングと前記レンズの接合は、前記シール溝内に塗布されたシール材によってなされている車両用灯具であって、
前記外壁部の前記ハウジングの前記周辺部と対向する表面と反対側の第1表面は、前記外壁部の周方向に沿って山と谷が連続した表面として構成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記外壁部はそれ自体が周方向にそって波状に屈曲されて構成され、前記外壁部の前記ハウジングの前記周辺部と対向する第2面は、前記第1面の前記山および前記谷の形成にそれぞれ反映された谷および山が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記外壁部の前記ハウジングの前記周辺部と対向する第2面は、平坦な面として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記レンズは、前記レンズと前記ハウジングの前記外壁部との間の前記シール溝を被う突起部が備えられ、前記突起部の端辺は前記突起部の周方向に沿って山と谷が連続した形状をなすとともに、前記突起部の端辺の側壁面は、前記ハウジングの前記外壁部の前記第1表面と面一に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−243506(P2012−243506A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111386(P2011−111386)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】