説明

車両用灯具

【課題】リフレクタ支持部分での振動吸収効果を高められ、かつ、ホルダ部材の構造を簡素化可能な車両用灯具の提供を図る。
【解決手段】車両の走行時振動に伴ってリフレクタ4が振動すると、その振動荷重はホルダ部材10のピン32を介して灯具ハウジング2の板ばね部31に伝達され、板ばね部31が撓み変形することで吸収される。振動吸収部30は、これら板ばね部31とピン32とによって構成され、板ばね部31の板厚,長さ,面積等の調整によりばね定数を任意に設定でき、振動吸収効果を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のヘッドランプに代表される車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドランプ等の車両用灯具にあっては、リフレクタを灯具ハウジングに傾動可能に支持して、光軸調整機能を付与することによって、該リフレクタを上下方向あるいは左右方向に傾動調整して光軸を適正に設定できるようにしている。
【0003】
このようなリフレクタの支持構造の中でも、特許文献1には、リフレクタ側のホルダ部材に対して、灯具ハウジング側の傾動用アクチュエータの出力軸の球状端部を連結した構造が示されている。上述のホルダ部材は、灯具ハウジングの内面に接触する弾性変形可能な接触部を備え、該接触部によって振動吸収機能と、リフレクタ荷重の分散負担機能とを持たせようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−42288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の開示技術では、リフレクタに装着固定するホルダ部材に可撓構造の接触部を構成するのであるが、ホルダ部材が配設されるのは、リフレクタと灯具ハウジングとが近接する狭小な部分となるため、ホルダ部材自体が小さく、従って、接触部も小さく規制される。このため、接触部の撓み変形量を大きく確保するのは難しく、大きな振動に対しては吸収機能を十分に発揮できなくなってしまう。
【0006】
また、接触部が撓み変形して振動吸収する構造上、ホルダ部材自体が振動負荷に耐える構成とする必要があり、構造,造形が複雑となって成形コストが嵩んでしまうことは否めない。
【0007】
そこで、本発明はリフレクタ支持部分での振動吸収効果を高められると共に、連結用のホルダ部材を簡単な構造とすることができる車両用灯具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用灯具は、リフレクタ側のホルダ部材に対して、灯具ハウジング側の軸部材の端部を連結して、リフレクタを灯具ハウジングに傾動可能に支持した構造としている。
【0009】
そして、前記灯具ハウジングに、前記ホルダ部材と前記軸部材の端部との連結部分の下方に張り出す板ばね部を形成する一方、前記ホルダ部材に、前記板ばね部に端部が当接するピンを突設し、これら板ばね部とピンとにより、振動吸収部を構成したことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
車両の走行時振動に伴ってリフレクタが振動する傾向となるが、該リフレクタの振動荷重はホルダ部材のピンを介して灯具ハウジングの板ばね部に伝達され、該板ばね部が撓み変形することによって吸収される。
【0011】
振動吸収部は、これら板ばね部とピンとによって構成され、板ばね部は灯具ハウジングに形成されていて、板厚,長さ,面積等の調整によりばね定数を任意に設定することが可能であり、従って、振動吸収効果を高めることができる。
【0012】
また、板ばね部は狭小な部分でも撓み変形可能に設けることができるため、成形上の規制を大きく受けることはなく、灯具ハウジングの成形性を損なうことはない。
【0013】
一方、ホルダ部材は、ピンによってリフレクタの振動荷重を板ばね部に伝達するだけで振動負荷を大きく受けることはない。従って、リフレクタと軸部材との連結機能のみを重視して設計すればよい。このため、ホルダ部材の構造を簡素化できて、成形性を高められ、コスト的に有利に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の対象とする車両用灯具の正面説明図。
【図2】本発明の要部を示す図1のA−A線に沿う断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に詳述する。
【0016】
図1に示す本実施形態の車両用灯具1は、前側が開放した灯具ハウジング2と、該灯具ハウジング2の前側開放部に密封・装着したアウターレンズ3と、これら灯具ハウジング2とアウターレンズ3とで構成された灯室内に配設したリフレクタ4と、を備えている。
【0017】
リフレクタ4の内面は、アルミ蒸着等によって反射面が形成され、バルブ5の出射光をアウターレンズ3に向けて反射させ、灯具前方へ照射するようにしている。
【0018】
リフレクタ4はその背面側において、図1に示す下部の左右両側部と、上部の左側隅部の3点P1,P2,P3で、灯具ハウジング2に傾動可能に支持されている。
【0019】
本実施形態では、図1の下部の左側部の支持点P1と、上部の左側隅部の支持点P2とは垂直線上に設けてあって、支持点P1を傾動支点とし、支持点P2を上下方向の光軸調整入力点としている。そして、下部の右側部の支持点P3を左右方向の光軸調整入力点としている。
【0020】
即ち、支持点P2に前後方向(図1の紙面方向)に光軸調整入力が作用することにより、リフレクタ4が支持点P1とP3とを結ぶ線分Oを回転中心として上下方向に傾動して、上下方向の光軸調整が行われる。また、支持点P3に前後方向(図1の紙面方向)に光軸調整入力が作用することにより、リフレクタ4が支持点P1とP2とを結ぶ線分Oを回転中心として左右方向に傾動して、左右方向の光軸調整が行われる。
【0021】
支持点P1は、灯具ハウジング2とリフレクタ4の相互を連結するボール軸とボール軸受とからなる汎用のボールジョイント構造として構成することができる。
【0022】
一方、支持点P2,P3は、図2に示すようにリフレクタ側のホルダ部材10と、灯具ハウジング側の軸部材20との連結構造が採用され、軸部材20を前後方向に進退移動させることによって、リフレクタ4の光軸調整入力とすることができる。
【0023】
リフレクタ4は合成樹脂もしくはアルミ等の軽量金属で構成され、上述の支持点P2,P3に対応する位置には、リフレクタ4の背面に後方に向けて突出するホルダ固定部6を一体成形してある。
【0024】
ホルダ固定部6は、その後端に開口するホルダ嵌着孔6aを備え、該ホルダ嵌着孔6aにホルダ部材10を嵌着固定してある。
【0025】
ホルダ部材10は適宜の合成樹脂材で構成され、例えば、図2に示す例では略前半部に圧入部10aと、略後半部に連結部10bと、を形成してある。
【0026】
圧入部10aは、その外周に前記ホルダ嵌着孔6aよりも若干大径に形成した複数の係合フィン11を軸方向に多段に形成してあり、該圧入部10aをホルダ嵌着孔6aに圧入することによって、係合フィン11がホルダ嵌着孔6aの内周面に弾性変形して密着し、しっかりと抜け止め固定されるようにしている。
【0027】
連結部10bは、軸部材20の端部の球状のジョイント頭部21を挿入係着するソケット部として構成され、ソケット部にはジョイント頭部21の抜け止めを行う折り返し片12を備えている。
【0028】
軸部材20は、灯具ハウジング2の後壁に配設したアジャストスクリューが用いられ、該アジャストスクリュー20を手動により、あるいはアクチュエータにより前後方向に進退移動させることにより、リフレクタ4の光軸調整入力を発生させる。
【0029】
ここで、本実施形態にあっては、図2に示すように上述の支持点P3部分、即ち、リフレクタ4の底部近傍の支持点部分に、車両の走行時振動に伴ってリフレクタ4に振動が発生した場合に、これを吸収する振動吸収部30を構成している。
【0030】
振動吸収部30は、灯具ハウジング2に一体成形された板ばね部31と、ホルダ部材10に下向きに突設されて、下端がこの板ばね部31面上に当接(弾接)するピン32と、で構成している。
【0031】
板ばね部31は、灯具ハウジング2の底壁から所要寸法上方に離間して、ホルダ部材10と軸部材20の端部との連結部分の下方に略水平に張り出して配置してある。
【0032】
一方、ピン32は、ホルダ部材10の連結部10b(ソケット部)の下面に略垂直に突設してある。
【0033】
また、板ばね部31は、軸部材20の進退移動による光軸調整の際に、ピン32を十分に弾性支持し得る張り出し長さと幅とに形成されることは勿論である。
【0034】
以上の構成からなる本実施形態の車両用灯具1によれば、車両の走行時振動に伴ってリフレクタ4が振動すると、この振動は振動吸収部30によって吸収される。
【0035】
これにより、リフレクタ4の振動を抑制して光軸の振れが回避され、照明効果を高めることができる。
【0036】
具体的には、リフレクタ4の振動荷重はホルダ部材10のピン32を介して灯具ハウジング2の板ばね部31に伝達され、該板ばね部31が撓み変形することによって吸収される。
【0037】
また、このようなリフレクタ4の振動抑制効果とは別に、リフレクタ4の荷重を前記ピン32,板ばね部31を経由して灯具ハウジング2に分散負担させることができる。これにより、支持点P1,P2,P3に掛かる荷重負担を軽減して、これら支持点P1,P2,P3の強度,剛性を十分に確保することができる。
【0038】
ここで、特に振動吸収部30は、灯具ハウジング2に一体成形した板ばね部31と、ホルダ部材10に一体成形したピン32とによって構成しているので、この板ばね部31の板厚,長さ,面積等の調整によりばね定数を任意に設定することが可能である。従って、振動吸収部30によるリフレクタ4の振動吸収効果を高めることができる。
【0039】
また、板ばね部31は狭小な部分でも撓み変形可能に設けることができるため、成形上の規制を大きく受けることはなく、灯具ハウジング2の成形性を損なうことはない。
【0040】
特に、本実施形態ではリフレクタ4の底部近傍の支持点P3に振動吸収部30を設定してあるが、このようなリフレクタ4と灯具ハウジング2の底壁との間の間隔が非常に狭くなる部分であっても、板ばね部31の設定を容易に行うことができる。従って、設計の自由度を拡大できて、構造上、最も振動吸収性,リフレクタ荷重の分散性が望ましいリフレクタ底部近傍に振動吸収部30を設計上無理なく設定できるので、より一層リフレクタ4の振動吸収効果を高めることができる。
【0041】
一方、ホルダ部材10は、ピン32によってリフレクタ4の振動荷重を板ばね部31に伝達するだけで振動負荷を大きく受けることはない。従って、リフレクタ4と軸部材(アジャストスクリュー)20との連結機能のみを重視して設計すればよい。このため、ホルダ部材10の構造を簡素化できて、成形性を高められ、コスト的に有利に得ることができる。
【0042】
なお、前記実施形態では振動吸収部30をリフレクタ4の底部近傍の支持点P3に設けた例を示したが、リフレクタ4の上部近傍の支持点P2に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…車両用灯具
2…灯具ハウジング
3…アウターレンズ
4…リフレクタ
5…バルブ
6…ホルダ固定部
10…ホルダ部材
20…軸部材
30…振動吸収部
31…板ばね部
32…ピン
P1,P2,P3…支持点(支持部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフレクタ側のホルダ部材に対して、灯具ハウジング側の軸部材の端部を連結して、リフレクタを灯具ハウジングに傾動可能に支持した構造であって、
前記灯具ハウジングに、前記ホルダ部材と前記軸部材の端部との連結部分の下方に張り出す板ばね部を形成する一方、
前記ホルダ部材に、前記板ばね部に端部が当接するピンを突設し、
これら板ばね部とピンとにより、振動吸収部を構成したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記ホルダ部材と前記軸部材とによる支持部分が、前記リフレクタの底部近傍に設定され、前記振動吸収部をこの底部近傍の支持部分に配設したことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−16332(P2013−16332A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147858(P2011−147858)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】