説明

車両用灯具

【課題】下側のインナーパネル面での反射による上方有害光の発生を抑制可能な車両用灯具の提供を図る。
【解決手段】光源バルブ10の直射光が、リフレクタ11の前側上部に存在するレンズフレーム14の有段成形部16の内面に設けたプリズム部17に入射すると、この直射光はプリズム部17により拡散され、有段成形部16の内面で反射して前方斜め下方に指向する反射光成分が低減される。この結果、投影レンズ12の下側前方に存在する下側のインナーパネル3の面上で斜め上向きに反射する上方有害光の発生を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のヘッドランプやフォグランプ等に用いられる車両用灯具、とりわけ、光源バルブの直射光およびリフレクタによる反射光を投影レンズで集光して、車両前方に照射するプロジェクタタイプの車両用灯具に用いて好適な車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のプロジェクタタイプの車両用灯具を示すもので、プロジェクタ型のランプユニット1と、ランプハウジングの前側に設けたアウターレンズ2と、ランプユニット1の前側周囲とアウターレンズ2との間に設けた装飾用(ぼろ隠し用)のインナーパネル(エクステンション)3と、を備えている。
【0003】
ランプユニット1は、光源バルブ10と、光源バルブ10の出射光の一部を灯具前方に向けて反射するリフレクタ11と、光源バルブ10の直射光およびリフレクタ11による反射光を集光して灯具前方に照射する投影レンズ12と、所定の配光パターンを形成するシェード13と、を備えている。
【0004】
リフレクタ11は凹型の反射面を有し、この反射面はレンズ中心軸線を中心軸とする回転楕円面または楕円を基本とする自由曲面に形成され、反射面の第1焦点またはその近傍に光源バルブ10の発光部が設けられる。
【0005】
投影レンズ12は、略筒状のレンズフレーム14の前端部分に抱持固定してあり、リフレクタ11は、その前端の複数ヶ所を該レンズフレーム14の後端にビス等の止着部材により取り付けるようにしている。
【0006】
シェード13は、このレンズフレーム14の略下半部に構成され、図示する例では、固定シェード13aと、アクチュエータ15によりロービーム形成,ハイビーム形成に応じて上下方向に移動制御される可動シェード13bと、を備え、該可動シェード13bはリフレクタ11の反射面の第2焦点に配置されている。
【0007】
レンズフレーム14は、その後端部の上側中央部分の周壁を径外方向に有段成形してある。これにより、レンズフレーム14の後端部上側中央の有段成形部16とリフレクタ11の前端部との間の開放部分から、ランプユニット1内の熱気をユニット外へ放出可能としている。
【0008】
この類似構造は、例えば、特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−228025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光源バルブ10の直射光が、例えば図4に示すようにレンズフレーム14の有段成形部16の内面に入射して、その反射光は矢印Laに示すように投影レンズ12を斜め下方に透過して下向きに屈折する。この反射光Laが下側のインナーパネル3面に入射すると、ここで前方斜め上向きに反射して、グレア光等の上方有害光の原因となってしまう。
【0011】
一方、特許文献1の開示技術では、上述の下側のインナーパネル3面上に、リフレクタからの反射光を灯具上方に向けて反射させる鋸歯状の突起を形成している。しかし、このような構成でも、投影レンズを透過してインナーパネル3面に入射した反射光は灯具上方に向けて反射するため、上方有害光の抑制効果が十分とは云えない。
【0012】
そこで、本発明はレンズフレームの内面で反射する直射光による有害光の発生を抑制することができる車両用灯具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の車両用灯具にあっては、光源バルブと、光源バルブからの光を前方に反射する反射面を有するリフレクタと、リフレクタによって反射された光を前方に照射する投影レンズと、投影レンズとリフレクタとを保持するフレーム部材と、を備えた車両用前照灯であって、前記フレーム部材には、光源バルブからの直射光のうち、投影レンズとリフレクタとの間に照射される光を拡散するプリズム部を設けたことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
光源バルブからの直射光のうち、投影レンズとリフレクタとの間に照射される光はフレーム部材の内面に設けたプリズム部によって拡散される。
【0015】
これにより、投影レンズを斜め方向に透過する反射光成分による有害光の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示す略示的断面説明図。
【図2】レンズフレームを後方斜め下方から見た斜視図。
【図3】図2のA範囲部の拡大断面図。
【図4】従来の構造を示す略示的断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に詳述する。
【0018】
図1は、本発明の対象としているプロジェクタタイプの車両用灯具を示しており、図4に示した従来の構造と同一部分に同一符号を付して詳述する。
【0019】
このプロジェクタタイプの車両用灯具は、プロジェクタ型のランプユニット1と、ランプハウジングの前側に設けたアウターレンズ2と、ランプユニット1の前側周囲とアウターレンズ2との間に設けた装飾用のインナーパネル3と、を備えている。
【0020】
ランプユニット1は、光源バルブ10と、光源バルブ10の出射光の一部を灯具前方に向けて反射するリフレクタ11と、光源バルブ10の直射光およびリフレクタ11による反射光を集光して灯具前方に照射する投影レンズ12と、所定の配光パターンを形成するシェード13と、を備えている。
【0021】
リフレクタ11は凹型の反射面を有し、この反射面はレンズ中心軸線を中心軸とする回転楕円面または楕円を基本とする自由曲面に形成され、反射面の第1焦点またはその近傍に光源バルブ10の発光部が設けられる。
【0022】
投影レンズ12は、略筒状のレンズフレーム(フレーム部材)14の前端部分に抱持固定してあり、リフレクタ11は、その前端の複数ヶ所を該レンズフレーム14の後端にビス等の止着部材により取り付けるようにしている。
【0023】
シェード13は、このレンズフレーム14の略下半部に構成され、図示する例では、固定シェード13aと、アクチュエータ15によりロービーム形成,ハイビーム形成に応じて上下方向に移動制御される可動シェード13bと、を備え、該可動シェード13bはリフレクタ11の反射面の第2焦点に配置されている。
【0024】
レンズフレーム14は、その後端部の上側中央部分の周壁を径外方向に有段成形してある。これにより、レンズフレーム14の後端部上側中央の有段成形部16とリフレクタ11の前端部との間の開放部分から、ランプユニット1内の熱気をユニット外へ放出可能としている。
【0025】
レンズフレーム14の内面には、光源バルブ10からの直射光のうち、投影レンズ12とリフレクタ11との間に照射される光を拡散するプリズム部17を設けている。
【0026】
本実施形態では、レンズフレーム14の後端部上側中央の有段成形部16の内面に、図2,図3に示すようなプリズム部17を設けてある。
【0027】
プリズム部17は、本実施形態では、ランプユニット1の光軸方向に延在する断面かまぼこ型(略半球状)の突条17aが、有段成形部16の内面の周方向に複数連設した形状に構成してある。
【0028】
以上の構成からなる本実施形態の車両用灯具によれば、光源バルブ10の直射光のうち、リフレクタ11の前側上部に存在するレンズフレーム14の有段成形部16の内面に設けたプリズム部17に入射した直射光は、図1の矢印Lbで示すようにプリズム部17により拡散される。これにより、有段成形部16の内面で反射して前方斜め下方に指向する反射光成分が低減される。
【0029】
この結果、投影レンズ12の下側前方に存在する下側のインナーパネル3の面上で斜め上向きに反射する上方有害光の発生を抑制することができる。
【0030】
特に、本実施形態では、プリズム部17を、ランプユニット1の光軸方向に延在する断面かまぼこ型の突条17aが、有段成形部16の内面の周方向に複数連設した形状としているので、当該周方向(左右方向)への拡散効果が高く、前記前方斜め下方に指向する反射光成分の低減効果をより一層高めることができる。
【0031】
また、このように有段成形部16の内面の周方向に突条17aが複数連設したプリズム部17を構成することにより、該有段成形部16の下方からランプユニット1外へ抜ける熱気の熱拡散作用を良好にすることができる。
【0032】
なお、レンズフレーム14の内面のプリズム部17は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、プリズム部17は、有段成形部16を含む所要領域に拡大して設けてもよいし、あるいは側部内周面に設けてもよい。また、プリズム部17の断面形状は、光源バルブ10の直射光を拡散反射できる形状であればよく、前記断面かまぼこ型の連設形状に限るものではない。
【符号の説明】
【0033】
1…ランプユニット
2…アウターレンズ
3…インナーパネル
10…光源バルブ
11…リフレクタ
12…投影レンズ
13…シェード
14…レンズフレーム(リフレクタ前部の構造物)
16…有段成形部
17…プリズム部
17a…突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源バルブと、光源バルブからの光を前方に反射する反射面を有するリフレクタと、リフレクタによって反射された光を前方に照射する投影レンズと、投影レンズとリフレクタとを保持するフレーム部材と、を備えた車両用前照灯であって、
前記フレーム部材には、光源バルブからの直射光のうち、投影レンズとリフレクタとの間に照射される光を拡散するプリズム部を設けたことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記プリズム部を、光軸方向に延在する断面かまぼこ型の突条からなり、該突条が前記フレーム部材の内面周方向に複数連設した形状に構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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