説明

車両用照明装置

【課題】ホルダを共用することによりコストダウンを図るとともに、部品間違いを防止することのできる車両用照明装置を提供する。
【解決手段】光源であるバルブ20を、ホルダ40を介してリフレクタ30に取り付ける。この際、リフレクタ30に取り付けるホルダ40の表裏を選択することにより、異なった種類のバルブ20を取り付けることができるようにした。これにより、異なるバルブ20に対して同じホルダ40を用いることができ、コストダウンを図ることができる。また、ホルダ40の選択ミスを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源であるバルブから発せられた光を、リフレクタにより所定方向へ反射して照射する車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バルブをリフレクタに取り付けて、バルブからの光をリフレクタにより所定方向へ反射して、例えば前方を照明する車両用照明装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
図5に示すように、特許文献1に記載の車両用照明装置100は、光源であるバルブ101と、バルブ101の光を所定の方向へ反射するリフレクタ102を有する。リフレクタ102の後端部に設けられているバルブ挿着孔103には、バルブ101を装着するための板ばね104およびホルダ105が、ねじ106によって取り付けられている。
【0003】
バルブ101に設けられている口金110には、複数の位置決め用舌片107が外側に突出して設けられている。一方、ホルダ105には、位置決め用舌片107を挿入するために複数の切欠き108が設けられている。また、板ばね104には、ホルダ105の切欠き108に対応して切欠き109が設けられている。
従って、バルブ101をリフレクタ102に取り付ける際には、複数のバルブ101の位置決め用舌片107を、複数のホルダ105の切欠き108および板ばね104の切欠き109から挿入し、バルブ101を回転させる。これにより、バルブ101の位置決め用舌片107は、板ばね104によりリフレクタ102のバルブ挿着孔103側に付勢されて固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−135603号公報(第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したような車両用照明装置100においては、バルブ101の規格によって位置決め用舌片107の配置が異なるため、バルブ101の規格に応じたホルダ105を用いなければならない。このため、ホルダ105の種類が増加し、製造コストが増加するとともに、部品間違いを生じるおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、ホルダを共用することによりコストダウンを図るとともに、部品間違いを防止することのできる車両用照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用照明装置は、光源であるバルブと、前記バルブの光を所定方向へ反射するリフレクタと、前記リフレクタのバルブ用開口に取り付けられ前記バルブを取り付けるためのホルダと、を有する車両用照明装置であって、前記ホルダが、前記リフレクタに対して表裏の取付け方向を選択することにより、異なった種類の前記バルブを取付け可能な構成を有している。
【0008】
この構成により、リフレクタに取り付けるホルダの表裏を選択することにより、異なった種類のバルブを取り付けることができるので、異なるバルブに対して同じホルダを用いることができ、コストダウンを図ることができる。また、ホルダの選択ミスを防止できる。
【0009】
また、本発明の車両用照明装置は、ホルダの表裏両面の同じ位置に、前記バルブの爪部を係止して回転位置決めする係止部を有している。
【0010】
この構成により、ホルダの表裏両面の同じ位置に、バルブの爪部を係止して回転位置決めする係止部を有するので、異なるバルブに対して同じ係止部を使用することができ、ホルダの形状を簡潔にして、コンパクト化を図ることができる。
【0011】
また、本発明の車両用照明装置は、前記係止部が、前記ホルダを切り欠いて、当該ホルダの表裏両方向に突出可能に設けられたばね部の先端に設けられた構成を有している。
【0012】
この構成により、ホルダ自身を切り欠いてホルダの表裏両方向に突出可能なばね部を設けたので、別途ばね部材を設ける必要がなく、部品点数を減少させ、装置のコンパクト化および省スペース化を図って、コストダウンを図ることができる。
また、ばね部は、表裏いずれの方向にも弾性変形可能なので、ホルダは表裏いずれの側でも使用できる。
さらに、ばね部の先端に係止部を設けたので、ホルダの表裏いずれの面を用いた場合でも、係止部によりバルブの回転位置決めを行うことができる。
【0013】
さらに、本発明の車両用照明装置は、前記係止部が、前記ばね部の先端から基端部に向かって前記ホルダの表面および裏面から離れる側へ傾斜した傾斜面と、前記傾斜面の頂部から前記ばね部に向かう係止面と、を有する構成を有している。
【0014】
この構成により、係止部が、ばね部の先端から基端部に向かってホルダの表面および裏面から離れる側へ傾斜した傾斜面を有するので、バルブをホルダに挿嵌して回転させることにより、ばね部を押圧・変形させて傾斜面を乗り越えることができる。
そして、傾斜面の頂部からばね部に向かう係止面がバルブの爪部を係止するので、バルブの回転位置決めを行うとともに、脱落を防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、リフレクタに取り付けるホルダの表裏を選択することにより、異なった種類のバルブを取り付けることができるので、異なるバルブに対して同じホルダを用いることができ、コストダウンを図ることができるという効果を有する車両用照明装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる車両用照明装置の分解側面図
【図2】(A)はバルブの側面図であり、(B)は(A)中B方向から見たバルブの底面図
【図3】(A)はホルダの表面を示す平面図であり、(B)はホルダの裏面を示す平面図であり、(C)は(B)中C−C位置の断面図であり、(D)は(B)中D−D位置の断面図
【図4】(A)はリフレクタの断面図であり、(B)は(A)中B方向から見たリフレクタの端面図
【図5】従来の車両用照明装置の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の車両用照明装置について、図面を用いて説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態にかかる車両用照明装置10は、光源であるバルブ20と、例えば放物面状の反射面32を有しバルブ20の光を所定方向へ反射するリフレクタ30と、リフレクタ30のバルブ用開口31に取り付けられバルブ20を取り付けるためのホルダ40と、を有する。
【0018】
図2に示すように、バルブ20は、例えばハロゲンガスを封入する円筒形状のガラス管21と、ガラス管21の中心軸上に位置するフィラメント22と、を有している。なお、以下において、バルブ20として、第1のバルブであるHB3バルブと、第2のバルブであるHB4バルブを対象とすることとする。
ガラス管21は、ベース部材23に固定されている。ベース部材23の後方(図2において下方)には、口金24が設けられている。口金24の外周縁部には、複数(ここでは3個)の爪部25が形成されている。爪部25として、3個の爪部25A、25B、25Cが設けられており、爪部25Cの幅B2は、他の爪部25A、25Bの幅B1よりも小さくなっている。
【0019】
3個の爪部25A、25B、25Cは、所定の中心角度θで設けられている。爪部25Aと爪部25Bとの間は中心角度θ1、爪部25Bと爪部25Cとの間は中心角度θ3、爪部25Cと爪部25Aとの間は中心角度θ2となっている。ここで、爪部25Aと爪部25Bとは、同じ大きさおよび同じ形状である。
なお、図2(B)では、HB3型のバルブ20の口金24が示されているが、HB4型のバルブ20では、口金24を表裏反転させた形状となる。
また、中心角θ1、θ2、θ3は、全て異なる角度に設定するのが望ましい。
【0020】
図3(A)および(B)に示すように、ホルダ40は円環状の薄板部材であり、図3(A)に示すホルダ40の表面40Aは第1のホルダであるHB3用であり、図3(B)に示すホルダ40の裏面40Bは第2のホルダであるHB4用である。
ホルダ40の中心部には、バルブ20を取り付けるための中心開口41が設けられている。中心開口41は略円形状を呈しており、中心開口41に連続して、3個の爪部挿入口42A、42B、42Cが設けられている。爪部挿入口42A、42B、42Cの配置は、バルブ20の口金24の爪部25A、25B、25Cの配置に対応しており、かつ、爪部25が通過可能な大きさおよび形状となっている。
ここで、爪部25Aと爪部25Bとは、同じ大きさおよび同じ形状であるので、爪部挿入口42Aと爪部挿入口42Bとは、同じ大きさおよび同じ形状となっている。また、爪部25Cは小さいので、爪部挿入口42Cは、他の爪部挿入口42A、42Bに比して、小さくなっている。
また、隣接する爪部挿入口42A、42B、42Cの中心角度θは、爪部25A、25B、25Cとの間の中心角度θに対応しており、爪部挿入口42Aと爪部挿入口42Bとの間は中心角度θ1、爪部挿入口42Bと爪部挿入口42Cとの間は中心角度θ3、爪部挿入口42Cと爪部挿入口42Aとの間は中心角度θ2となっている。
【0021】
図3(A)および(B)に示すように、ホルダ40には、周方向に複数個(ここでは、3個)のねじ孔43A、43B、43Cが設けられている。隣接するねじ孔43の中心角度φは、ねじ孔43Aとねじ孔43Bとの間は中心角度φ1、ねじ孔43Bとねじ孔43Cとの間は中心角度φ3、ねじ孔43Cとねじ孔43Aとの間は中心角度φ2となっている。
なお、中心角φ1、φ2、φ3は、全て異なる角度に設定するのが望ましい。
【0022】
図3(A)および(B)に示すように、ホルダ40の一部を切り欠いて(スリット46)ばね部44を形成している。すなわち、ばね部44は、基端部441のみがホルダ40に接続されており、基端部441を支点として、ホルダ40の表裏いずれの方向にも弾性変形可能となっている。
また、図3(C)に示すように、ばね部44の先端には、係止部45が設けられている。係止部45は、ばね部44の先端から基端部441に向かって、ホルダ40の表面40Aおよび裏面40Bから離れる側へ傾斜した一対の傾斜面451、451と、この各傾斜面451、451の頂部からばね部44に向かう一対の係止面452、452と、を有する。
従って、係止部45は、ホルダ40の表面40Aおよび裏面40Bから、一部が突出しており、係止面452、452はホルダ40において同じ位置に位置する。
【0023】
図4に示すように、リフレクタ30の端面33には、ホルダ40を固定するための第1のねじ孔群34、35が設けられている。
ここで、第1のねじ孔群34は、第1のバルブであるHB3バルブを取り付ける際のホルダ40のねじ孔43に対応し、第2のねじ孔群35は、第2のバルブであるHB4バルブを取り付ける際のホルダ40のねじ孔43に対応する。
従って、リフレクタ30に第1のバルブであるHB3バルブを取り付ける際と、第2のバルブであるHB4バルブを取り付ける際とでは、使用するねじ孔群34,35が異なる。これにより、リフレクタ30に取り付けるホルダ40の表裏を間違わないようにしている。
【0024】
次に、リフレクタ30にバルブ20を取り付ける手順について説明する。
バルブ20として、第1のバルブであるHB3バルブを取り付ける際には、リフレクタ30端面33に設けられている第1のねじ孔群34を用いる。また、ホルダ40は、HB3バルブ用として、ホルダ40の表面40Aを外側にして取り付ける。
すなわち、ホルダ40の裏面40Bをリフレクタ30の端面33に当接させて、ホルダ40のねじ孔43を、リフレクタ30の第1のねじ孔群34に合わせて、ねじ47で固定する(図1参照)。
このとき、ホルダ40の表裏を間違って選択すると、ホルダ40のねじ孔43は、リフレクタ30のねじ孔群34に1個しか合わないので、容易に間違いを認識できる。また、ホルダ40の表裏を間違って選択するとともに、ねじ孔群35を選択すると、ホルダ40がリフレクタ30に取り付けられるが、後述するようにバルブ20を装着する際に、装着できないので、容易に間違いを認識できる。
【0025】
そして、バルブ20をホルダ40の中心開口41に挿入し、バルブ20の口金24の爪部25を、ホルダ40の爪部挿入口42に挿入する。このとき、バルブ20の口金24は、小さな爪部25Cをホルダ40の小さな爪部挿入口42Cに挿入する。大きな爪部25A、25Bは、小さな爪部挿入口42Cに挿入できないので、間違うことはない。
次いで、バルブ20を回転させる。このときの、バルブ20の回転方向は、爪部25Bがばね部44の係止部45の傾斜面451を乗り越える方向へ回転させる。そして、爪部25Bが係止部45の傾斜面451を乗り越えて、ばね部44のばね力により係止部45の係止面452が爪部25Bを係止したら、バルブ20の装着が完了する。
【0026】
なお、バルブ20として、第2のバルブであるHB4バルブを用いる場合には、ホルダ40の表裏を反転させて、ホルダ40の表面40Aをリフレクタ30の端面33に当接させ、ホルダ40のねじ孔43を、リフレクタ30の第2のねじ孔群35に合わせて、ねじ止めする。
これにより、前述した手順と同様にして、HB4バルブをリフレクタ30に取り付けることができる。
【0027】
以上、説明した本発明にかかる車両用照明装置10によれば、リフレクタ30に取り付けるホルダ40の表裏を選択することにより、異なった種類のバルブ20を取り付けることができるので、異なるバルブ20に対して同じホルダ40を用いることができ、コストダウンを図ることができる。また、ホルダ40の選択ミスを防止できる。
【0028】
また、ホルダ40の表裏両面の同じ位置に、バルブ20の爪部25を係止して回転位置決めする係止部45を有するので、異なるバルブ20に対して同じ係止部45を使用することができ、ホルダ40の形状を簡潔にして、コンパクト化を図ることができる。
【0029】
また、ホルダ40自身を切り欠いてホルダ40の表裏両方向に突出可能なばね部44を設けたので、別途ばね部材を設ける必要がなく、部品点数を減少させ、装置のコンパクト化および省スペース化を図って、コストダウンを図ることができる。また、ばね部44は、表裏いずれの方向にも付勢できるので、ホルダ40は表裏いずれの側でも使用できる。さらに、ばね部44の先端の表裏両側に係止部45を設けたので、ホルダ40の表裏いずれの面を用いた場合でも、係止部45によりバルブ20の回転位置決めを行うことができる。
【0030】
さらに、係止部45が、ばね部44の先端から基端部441に向かってホルダ40の表面40Aおよび裏面40Bから離れる側へ傾斜した傾斜面451を有するので、バルブ20をホルダ40に挿嵌して回転させることにより、ばね部44を押圧・変形させて傾斜面451を乗り越えることができる。
そして、傾斜面451の頂部からばね部44に向かう係止面452がバルブ20の爪部25を係止するので、バルブ20の回転位置決めを行うとともに、脱落を防止できる。
【0031】
なお、本発明の車両用照明装置10は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した実施形態においては、バルブ20として、HB3バルブおよびHB4バルブを用いる場合を例示したが、本発明の車両用照明装置10は、その他のバルブにも適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 車両用照明装置
20 バルブ
25 爪部
30 リフレクタ
31 バルブ用開口
40 ホルダ
40A 表面
40B 裏面
44 ばね部
45 係止部
451 傾斜面
452 係止面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源であるバルブと、
前記バルブの光を所定方向へ反射するリフレクタと、
前記リフレクタのバルブ用開口に取り付けられ前記バルブを取り付けるためのホルダと、を有する車両用照明装置であって、
前記ホルダが、前記リフレクタに対して表裏の取付け方向を選択することにより、異なった種類の前記バルブを取付け可能なことを特徴とする車両用照明装置。
【請求項2】
前記ホルダの表裏両面の同じ位置に、前記バルブの爪部を係止して回転位置決めする係止部を有することを特徴とする請求項1記載の車両用照明装置。
【請求項3】
前記係止部が、前記ホルダを切り欠いて、当該ホルダの表裏両方向に突出可能に設けられたばね部の先端に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用照明装置。
【請求項4】
前記係止部が、前記ばね部の先端から基端部に向かって前記ホルダの表面および裏面から離れる側へ傾斜した傾斜面と、前記傾斜面の頂部から前記ばね部に向かう係止面と、を有することを特徴とする請求項3に記載の車両用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−216383(P2012−216383A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80224(P2011−80224)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】