車両用空気調和システム、及び、その運転制御方法

【課題】エンジン始動に必要な蓄電量を確保する。
【解決手段】バッテリー3からの電源で動作し、車室内の温度を調整するエアコン(室内機ユニット1及び室外機ユニット2)と、エアコンの運転開始や運転停止時に操作され、運転開始や運転停止を示す信号を出力するON/OFFスイッチと、このON/OFFスイッチからの運転開始を示す信号の受信から判断時間が経過するまで、バッテリー3の電源電圧が基準電圧以上であるか否かを判断し、基準電圧以上の電圧を維持した場合にエアコンの運転を開始させ、エアコンの運転中にバッテリーの電源電圧を監視し、エンジン始動に必要な電圧以上であることを条件に空気調和機の運転を継続させる一方、この電圧未満の場合に空気調和機の運転を停止させる制御部16aとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空気調和システム、及び、その運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の車両内で睡眠をとる場合には、エアコン(空気調和機)の運転が長時間に亘って行われる。また、荷物の積みおろし作業後、直ちに快適な温度環境で運転を行うため、作業時間に亘ってエアコンを運転させることもある。そして、エアコン運転時に車両のエンジンを運転させてしまうと、排気ガスが長時間に亘って排出されることとなり、環境に悪影響を及ぼす虞がある。また、アイドリングのエンジン音が長い時間に亘って発せられることとなり、騒音の問題も生じる。
【0003】
そこで、車載のバッテリーでエアコンを動作させることが行われているが、バッテリーに蓄えられたエネルギーをエアコンの動作に使い果たしてしまうと、その後、エンジンの始動ができないという問題が生じる。このような問題を解決すべく、特許文献1には、複数のバッテリーを搭載し、電源電圧が規定値以下になった場合に1つのバッテリーを電気系統から切り離すシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−120381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたシステムは、エアコンの運転中にバッテリーの電源電圧を取得して制御を行うものであるが、エアコン始動時の電源電圧については考慮されていなかった。このため、バッテリーに十分な量の電荷が蓄えられていなくてもエアコンが始動され、蓄えられた電荷が無駄に消費されてしまう虞があった。
【0006】
ここで、バッテリーの電源電圧をエアコンの始動直前に取得し、電圧値が規定値未満であれば始動させないように制御することが考えられる。しかし、車両に搭載されているバッテリーの電源電圧は、少ない蓄電量であっても、流れ出る電流の量が少なければ規定値以上になる。このため、単に電源電圧を測定しただけでは、バッテリーの蓄電量を正確に把握することが困難となる。そして、蓄えられた電荷の量が少ないときにエアコンを始動させてしまうと、エンジンの始動に必要な量の電荷までも消費されてしまう虞がある。この場合、エアコンの運転終了後に、エンジンを始動できなくなってしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジン始動に必要な蓄電量を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の空気調和システムは、バッテリーを電源として動作し、車室内の温度を調整する空気調和機と、前記空気調和機の運転開始や運転停止時に操作され、運転開始や運転停止を示す信号を出力するスイッチと、前記スイッチからの運転開始を示す信号の受信から判断時間が経過するまで、前記バッテリーの電源電圧が基準電圧以上であるか否かを判断し、前記基準電圧以上の電圧を維持した場合に前記空気調和機の運転を開始させ、前記空気調和機の運転中に前記バッテリーの電源電圧を監視し、前記電源電圧が車両のエンジン始動に必要な電圧以上であることを条件に前記空気調和機の運転を継続させる一方、前記電源電圧が車両のエンジン始動に必要な電圧未満の場合に前記空気調和機の運転を停止させる制御部とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の空気調和システムによれば、判断時間に亘って電源電圧が基準電圧以上に維持されていることで、バッテリーに十分な量の電荷が蓄えられていることを確認できる。このため、空気調和機の始動により、バッテリーに蓄えられた電荷が不足してしまうことを抑制でき、エンジン始動に必要な量の電荷を確保できる。また、空気調和機の運転中もバッテリーの電源電圧が監視されるので、空気調和機の運転によってバッテリーに蓄えられた電荷が不足してしまうことを抑制できる。
【0010】
かかる空気調和システムにおいて、外部の商用交流電源から直流電源を生成し、前記空気調和機に電力を供給する構成とすれば、空気調和機の運転に外部の商用交流電源を使用できるので、使い勝手の向上が図れる。
【0011】
また、前記目的を達成するため、本発明は、バッテリーを電源として動作し、車室内の温度を調整する空気調和機と、前記空気調和機の運転開始や運転停止時に操作され、運転開始や運転停止を示す信号を出力するスイッチと、前記スイッチからの信号に基づいて前記空気調和機を制御する制御部とを有する車両用空気調和システムの運転制御方法であって、前記スイッチからの運転開始を示す信号の受信から判断時間が経過するまで、前記バッテリーの電源電圧が基準電圧以上であるか否かを判断し、前記基準電圧以上の電圧を維持した場合に前記空気調和機の運転を開始させ、前記空気調和機の運転中に前記バッテリーの電源電圧を監視し、前記電源電圧が車両のエンジン始動に必要な電圧以上であることを条件に前記空気調和機の運転を継続させる一方、前記電源電圧が車両のエンジン始動に必要な電圧未満の場合に前記空気調和機の運転を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンジン始動に必要な蓄電量を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両用空気調和システムの構成を説明する図である。
【図2】車両用空気調和システムのブロック図である。
【図3】動作を説明するフローチャートである。
【図4】設定温度と停止温度及び再開温度を説明する図である。
【図5】圧縮機回転数と時間の関係を説明する図である。
【図6】PI制御の内容を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<システムの構成について>
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2(a)に示すように、車両用空気調和システムは、室内機ユニット1と、室外機ユニット2と、バッテリー3と、DC/DCコンバータ4とを有する。なお、室内機ユニット1と室外機ユニット2の組は、エアコン(空気調和機)に相当する。
【0015】
室内機ユニット1は、キャブ5の内部空間(車室内)の温度を調整する部分であり、バックウィンド51に取り付けられる。この室内機ユニット1は、蒸発器11と、クロスフローファン12と、第1温度センサ13と、表示基板14と、スイッチ群15と、第1制御基板16とを有している。
【0016】
蒸発器11は、室外機ユニット2からの冷媒と車室内の空気とを熱交換をすることで、冷媒を蒸発させるとともに空気を冷却する。クロスフローファン12は、ファンモータ(図示せず)によって回転され、蒸発器11で冷却された空気をキャブ5内に送出する。第1温度センサ13は、車室内の温度を検出し、検出温度に応じた信号を出力する。表示基板14は表示器を備えた基板であり、例えば、現在のバッテリー電圧、エアコンの設定温度、タイマー設定時間、クロスフローファン12による風速を表示する。スイッチ群15は、例えば、運転開始や運転停止を指示するON/OFFスイッチ、タイマー時間を設定するためのタイマースイッチ、風速を調整するためのファンスイッチ、及び温度を調整するための温度調整スイッチといった各種のスイッチによって構成されている。
【0017】
第1制御基板16は、室内機ユニット1における各種の制御を行う。例えば、表示基板14を制御して各種の情報を表示したり、第1温度センサ13からの検出信号に基づき、検出温度を認識したり、クロスフローファン12用のファンモータを制御したりする。そして、この第1制御基板16には、車両のキースイッチ6が電気的に接続されており、キースイッチ6のポジションに応じてバッテリー3からの電源がシステムに供給される。また、図2(b)に示すように、第1制御基板16には、CPU16bとメモリ16cとインタフェース(I/F)16dとを有する制御部16aが実装されている。この制御部16aでは、メモリ16cに記憶されたプログラムに従ってCPU16bが動作することにより、各種の制御が行われる。また、インタフェース16dが有するA/D変換ポート(図示せず)には、電圧値を取得するためにバッテリー3からの正側電源線が接続されている。さらに、メモリ16cには、プログラムの他、時間や温度といった各種の設定値も記憶されている。
【0018】
室外機ユニット2は、キャブ5の外部(室外)で冷媒の熱交換や圧縮をする部分であり、キャブ5の上面に、エアーディフレクタ7にて囲まれた状態で取り付けられる。この室外機ユニット2は、アキュムレータ21と、圧縮機22と、凝縮器23と、プロペラファン24と、キャピラリーチューブ25と、第2温度センサ26と、駆動基板27と、第2制御基板28とを有している。
【0019】
アキュムレータ21は、冷媒の液溜まりとして機能し、気体状の冷媒を圧縮機22に戻す。圧縮機22は、気体状の冷媒を圧縮して高温高圧の半液体状にする。凝縮器23は、高温高圧の冷媒と外気とを熱交換し、冷媒を液体状にする。プロペラファン24は、ファンモータ(図示せず)によって回転され、外気を流して凝縮器23との間で熱交換を行わせる。キャピラリーチューブ25は、凝縮器23からの冷媒を減圧し、冷媒の液状化を促進する。第2温度センサ26は、圧縮機22の温度を検出する。駆動基板27は、第2制御基板28からの制御信号に基づいて圧縮機22の駆動制御を行う。第2制御基板28は、室外機ユニット2における各種の制御を行う。例えば、駆動基板27に対して圧縮機22の動作を制御するための制御信号を出力したり、プロペラファン24用のファンモータを制御したりする。また、第2制御基板28は、室内機ユニット1の第1制御基板16と通信可能に構成されており、必要な情報を第1制御基板16との間で送受信している。
【0020】
バッテリー3は、この空気調和システムの動作用電源として機能する。本実施形態のバッテリー3は、車両に搭載されたエンジンの始動時にも電力を供給するものであり、DC24Vの電源電圧に定められている。そして、前述のプロペラファン24用のファンモータは、DC24Vの電源で動作をする。なお、前述の第1制御基板16には、リレー回路及び整流回路が組み込まれている(いずれも図示せず)。このため、商用交流電源が電源プラグを介して供給された場合、空気調和システムの大部分の電力を必要とする圧縮機22に電力が供給され、バッテリー3への負荷を大幅に軽減することができる。
【0021】
DC/DCコンバータ4は、バッテリー3からのDC24V電源を圧縮機22等の動作に適した電圧まで昇圧する。本実施形態では、DC24VをDC300Vまで昇圧する。そして、昇圧されたDC300Vは、室外機ユニット2の圧縮機22やクロスフローファン12用のファンモータに用いられる。
【0022】
<動作について>
次に、空気調和システムの動作について説明する。ここで、この空気調和システムは、始動時における動作に特徴を有している。すなわち、ON/OFFスイッチがオン操作された場合、バッテリー3の電圧が予め定められた判断時間に亘って基準電圧以上であることを条件に運転を開始する。以下、この点を中心に、動作を説明する。
【0023】
図3に示すように、この空気調和システムでは、運転者によるキースイッチ6の操作によって電源が供給される(S1)。すなわち、キーポジションがACCであればシステムに電源が供給されてステップS2へ移行する。一方、それ以外のポジションであればステップS12へ移行し、エアコンの停止状態を維持する。ステップS2において、第1制御基板16の制御部16aは、ON/OFFスイッチがON状態になっているか否かを確認する。ここで、ON/OFFスイッチがON状態であればステップS3に移行し、そうでなければステップS12へ移行してエアコンの停止状態を維持する。
【0024】
ステップS3において制御部16aは、バッテリー3の電源電圧が所定の電圧範囲内であるか否かを判断する。すなわち、制御部16aは、A/D変換ポートを通じてバッテリー3からの電源電圧をデジタル値で取得し、メモリ16cに記憶された基準電圧情報(基準電圧の値を示す情報)と比較する。本実施形態の低圧側の基準電圧は、バッテリー3の電源電圧と等しい24Vに設定されている。また、高圧側の基準電圧は、システムの動作に支障を来す動作として低圧側の基準電圧よりも8V高い32Vに設定されている。そして、電源電圧が低圧側の基準電圧以上と判断された場合にはステップS4に移行し、そうでない(低圧側の基準電圧未満)と判断された場合にはステップS12へ移行してエアコンの停止状態を維持する。同様に、電源電圧が高圧側の基準電圧を越えたと判断された場合にもステップS12へ移行してエアコンの停止状態を維持する。
【0025】
ステップS4において制御部16aは、最初にバッテリー3の電圧を検出してから所定時間(第1判断時間)が経過したか否かを判断する。この判断は、例えばメモリ16cに記憶された第1判断時間情報を用いて行われる。すなわち、メモリ16cの一部領域をカウンタとして用い、制御部16aが、第1判断時間情報に対応するカウント値まで計数を終えたか否かで判断される。そして、第1判断時間が経過していない場合には、ステップS3に移行してバッテリー3の電源電圧が判断される。一方、第1判断時間が経過した場合にはステップS5に移行する。ここで、第1判断時間が経過する前にバッテリー3の電源電圧が低圧側の基準電圧未満になるか高圧側の基準電圧を越えると、ステップS12に移行してエアコンの停止状態を維持する。従って、ステップS5に移行するためには、第1判断時間に亘ってバッテリー3の電源電圧が所定の電圧範囲に維持されていることが必要となる。本実施形態において第1判断時間は3秒とされている。従って、バッテリー3の電源電圧が24V以上32V以下の状態を3秒に亘って維持した場合に、ステップS5以降の処理が行われる。
【0026】
ステップS5において制御部16aは、冷房運転を行うか否かを判断する。この判断は、図4に示すように、設定温度を示す設定温度情報、冷房運転の動作停止温度を示すユニット停止温度情報、及び第1温度センサ13からの検出温度を示す第1検出温度情報に基づいて行われる。
【0027】
例えば、設定温度が17℃のとき、ユニット停止温度情報で示される停止温度は16℃である。このため、制御部16aは、第1温度センサ13からの検出温度と停止温度である16℃とを比較し、検出温度の方が停止温度よりも高い場合には冷房運転を行うと判断してステップS6に移行する。一方、検出温度が停止温度以下の場合には、冷房運転は行わないと判断してステップS9にて送風運転を行う。具体的には、圧縮機22を3分間に亘って運転し、その間も検出温度が停止温度以下である場合には、室外機ユニット2のプロペラファン24のみをさらに3分間回転させる。そして、プロペラファン24を3分間回転させてもなお検出温度が停止温度以下である場合に、冷房運転は行わないと判断する。また、設定温度が24℃のとき、ユニット停止温度情報で示される停止温度は23℃である。このため、制御部16aは、検出温度が23℃を越えていればステップS6に移行し、23℃以下の場合には上述の手順によってステップS9に移行する。
【0028】
制御部16aは、ステップS6にてエアコンを起動し、その後ステップS7にてPI制御を行う。具体的には図5に示すように、このシステムでは、エアコンの起動直後や運転再開直後において所定期間の油戻し運転を行っており、その後にPI制御を行っている。このPI制御は、圧縮器の目標回転数を定める制御であり、次式(1)で表すことができる。
【0029】
PI(圧縮機目標回転数)=P(回転数)+I(回転数) ・・・ (1)
【0030】
ここで、Pとは、室内機ユニット1で冷却する空気の目標温度と現在の温度(第1温度センサ13によって検出される温度)との差に基づいて計算される回転数であり、例えば図6(a)に示すように温度差が大きいほど速い回転数に定められる。この例におけるP回転数は、温度差が0.0℃のとき15rpsに定められ、温度差が2.0℃のとき25rpsに定められる。また、温度差が4.0℃のとき50rpsに定められる。そして、本実施得形態では、このP回転数を1分ごとに計算している。
【0031】
一方、Iとは、圧縮機22における所定時間前の回転数と現在の温度差を考慮して計算される回転数であり、次式(2)で表すことができる。
【0032】
現在のI回転数=前回のI回転数+I回転修正値 ・・・ (2)
【0033】
本実施形態では、前回のI回転数を3分前の回転数とし、I回転修正値を、室内機ユニット1で冷却する空気の目標温度と現在の温度との差に基づいて定めている。このI回転修正値に関し、具体的には図6(b)に示す値に定められる。例えば、空気の目標温度が24℃であって現在の温度が30℃であれば、温度差は+1.5℃以上であるため、I回転修正値として3rpsが設定されて、前回のI回転数に加算される。
【0034】
なお、PI制御開始時点では前回のI回転数が存在しないため、温度差に基づくI回転修正値がそのまま用いられる。従って、この場合における現在のI回転数は3rpsとなる。その後、3分が経過して現在の温度が27℃であれば、依然として温度差は+1.5℃以上であるため、I回転修正値として3rpsが設定される。これにより、現在のI回転数は6rpsとなる。
【0035】
ステップS7でPI制御を行ったならば、制御部16aは、ステップS8にて冷房運転を行うかを判断する。ここでの判断では、先に説明した設定温度情報、停止温度情報、及び第1検出温度情報に加え、再開温度情報も用いられる(図4を参照)。この再開温度情報は、冷房運転の再開温度を示す。すなわち、室内温度が十分に下がってエアコンが送風運転になった後、室内温度が再開温度まで上昇した場合に冷房運転が再開される。
【0036】
例えば、設定温度が17℃のとき、停止温度は16℃であり、再開温度は19℃である。このため、制御部16aは、冷房運転中において、第1温度センサ13からの検出温度と停止温度である16℃とを比較し、検出温度が16℃よりも高い場合には冷房運転を継続すると判断し、ステップS10に移行する。一方、検出温度が16℃以下の場合には、冷房運転は行わないと判断してステップS9にて送風運転を行う。また、送風運転中において検出温度が19℃未満の場合には、制御部16aは、ステップS9に移行して送風運転を継続する。一方、検出温度が19℃以上になったら、制御部16aは冷房運転を行うと判断してエアコンを起動し、ステップS10に移行する。
【0037】
ステップS10において制御部16aは、バッテリー3の電源電圧が22.5V以上であるか否かを判断する。なお、22.5Vは、エアコンの運転中におけるエンジン始動に必要な電圧として定められた値である。ここで、電源電圧が22.5V以上であれば、エンジン始動に必要な電荷がバッテリー3に蓄えられているとして、ステップS7に移行する。そして、PI制御以降の処理を繰り返し行う。一方、電源電圧が22.5V未満であれば、ステップS11にて、電源電圧が22.5V未満になったことを最初に検出してから3秒(第2判断時間)が経過したか否かを判断する。この判断もまた、メモリ16cに記憶された第2判断時間情報を用いて行われる。そして、3秒の経過前であれば、エンジン始動に必要な電荷がバッテリー3に蓄えられているものとして、ステップS7に移行する。一方、3秒の期間に亘ってバッテリー3の電源電圧が22.5V未満であれば、エアコンの運転をこれ以上継続すると電荷が不足してエンジン始動に支障が生じる虞があるとして、エアコンを停止させる(S12)。
【0038】
<まとめ>
このように、本実施形態の車両用空気調和システムによれば、バッテリー3からの電源で動作し、車室内の温度を調整するエアコン(室内機ユニット1及び室外機ユニット2)と、エアコンの運転開始や運転停止時に操作され、運転開始や運転停止を示す信号を出力するON/OFFスイッチと、このON/OFFスイッチからの運転開始を示す信号の受信から判断時間(第1判断期間)が経過するまで、バッテリー3の電源電圧が低圧側の基準電圧以上であるか否かを判断し(S2〜S4)、この基準電圧以上の電圧を維持した場合にエアコンの運転を開始させる(S6)制御部16aとを有する。
【0039】
このため、判断時間に亘って電源電圧が低圧側の基準電圧以上に維持されていることで、制御部16aは、バッテリー3に十分な量の電荷が蓄えられていることを認識できる。これにより、エアコンの始動によってバッテリー3の蓄電量が不足してしまう不具合を抑制でき、エンジン始動に必要な蓄電量を確保できる。
【0040】
また、制御部16aは、電源電圧が高圧側の基準電圧を越えた場合には直ちにエアコンを停止させるので(S3,S12)、電源電圧が過度に高くなってもエアコンを確実に保護できる。
【0041】
また、制御部16aは、エアコンの運転中にバッテリー3の電源電圧を監視し、この電源電圧が車両のエンジン始動に必要な電圧以上であることを条件に、空気調和機の運転を継続させている(S10,S11)。このように、制御部16aは、エアコンの運転中もバッテリー3の電源電圧を監視するので、エアコンの運転によってバッテリー3の蓄電量が不足してしまう不具合を抑制できる。
【0042】
また、制御部16aは、エアコンの運転中において、バッテリー3の電源電圧が車両のエンジン始動に必要な電圧よりも低い状態が、他の判断時間(第2判断期間)に亘って継続した場合に、エアコンの運転を停止させている(S11,S12)。これにより、バッテリー3の蓄電量が過度に少なくなってしまう不具合を確実に抑制できる。また、エンジン始動に十分な蓄電量であるにもかかわらず、エアコンの運転を停止させてしまう不具合も抑制できる。
【0043】
また、このシステムでは、外部の商用交流電源から駆動電圧の直流電源を生成し、エアコンに供給する整流回路を設けているので、外部の商用交流電源を使用でき、使い勝手の向上が図れる。
【0044】
<変形例>
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、その均等物も含まれる。
【0045】
まず、駆動電圧についてDC300Vに限られない。すなわち、エアコンの仕様に応じた電圧に調整される。
【0046】
また、エアコン始動時の判断に用いられる低圧側の基準電圧に関し、本実施形態ではバッテリー3の電源電圧と等しい24Vとしたが、この電圧に限定されない。例えば、23.5Vに設定してもよい。要するに、エアコンの運転が開始されていない状態において、エンジンの始動に十分な電荷が蓄えられていると判断できる電圧値に定められる。
【0047】
同様に、エアコン運転中の判断に用いられる他の基準電圧に関し、本実施形態ではバッテリー3の電源電圧よりも1.5V低い22.5Vとしたが、この電圧に限定されない。例えば、22Vとしてもよい。要するに、エアコンの運転中において、エンジンの始動に十分な電荷が蓄えられていると判断できる電圧値に定められる。
【0048】
さらに、エアコン始動時や運転中の判断に用いられる判断時間に関し、本実施形態ではそれぞれ3秒としたがこの時間に限定されない。これらの判断時間もエンジンの始動に十分な電荷が蓄えられていると判断できる時間に定められる。そして、ステップS11に示す経過時間の判断については、必ずしも行わなくてもよい。例えば、ステップS10にてバッテリー電圧が22.5V未満になったことを条件に、ステップ12へ移行してエアコンを停止させてもよい。
【0049】
また、PI制御時における更新時間に関し、P回転数を1分毎に更新し、I回転数を3分毎に更新していたがこれらの時間に限定されない。例えば、P回転数を30秒毎に更新し、I回転数を1分半毎に更新してもよい。ここで、P回転数は、I回転数よりも温度変化に与える影響が大きいので、I回転数よりも短い周期で更新されることが好ましい。そして、P回転数の更新周期は、圧縮機22における回転数の変化が車室内の温度変化として表れる時間に応じて定めればよい。
【0050】
また、以上は冷房運転時の制御について説明したが、暖房運転時にも同様の制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 室内機ユニット,2 室外機ユニット,3 バッテリー,4 DC/DCコンバータ,5 キャブ,6 キースイッチ,7 エアーディフレクタ,11 蒸発器,12 クロスフローファン,13 第1温度センサ,14 表示基板,15 スイッチ群,16 第1制御基板,16a 制御部,16b CPU,16c メモリ,16d インタフェース,21 アキュムレータ,22 圧縮機,23 凝縮器,24 プロペラファン,25 キャピラリーチューブ,26 第2温度センサ,27 駆動基板,28 第2制御基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーを電源として動作し、車室内の温度を調整する空気調和機と、
前記空気調和機の運転開始や運転停止時に操作され、運転開始や運転停止を示す信号を出力するスイッチと、
前記スイッチからの運転開始を示す信号の受信から判断時間が経過するまで、前記バッテリーの電源電圧が基準電圧以上であるか否かを判断し、前記基準電圧以上の電圧を維持した場合に前記空気調和機の運転を開始させ、前記空気調和機の運転中に前記バッテリーの電源電圧を監視し、前記電源電圧が車両のエンジン始動に必要な電圧以上であることを条件に前記空気調和機の運転を継続させる一方、前記電源電圧が車両のエンジン始動に必要な電圧未満の場合に前記空気調和機の運転を停止させる制御部と
を有することを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項2】
外部の商用交流電源から直流電源を生成し、前記空気調和機に電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和システム。
【請求項3】
バッテリーを電源として動作し、車室内の温度を調整する空気調和機と、
前記空気調和機の運転開始や運転停止時に操作され、運転開始や運転停止を示す信号を出力するスイッチと、
前記スイッチからの信号に基づいて前記空気調和機を制御する制御部とを有する車両用空気調和システムの運転制御方法であって、
前記スイッチからの運転開始を示す信号の受信から判断時間が経過するまで、前記バッテリーの電源電圧が基準電圧以上であるか否かを判断し、前記基準電圧以上の電圧を維持した場合に前記空気調和機の運転を開始させ、前記空気調和機の運転中に前記バッテリーの電源電圧を監視し、前記電源電圧が車両のエンジン始動に必要な電圧以上であることを条件に前記空気調和機の運転を継続させる一方、前記電源電圧が車両のエンジン始動に必要な電圧未満の場合に前記空気調和機の運転を停止させることを特徴とする車両用空気調和システムの運転制御方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−148427(P2011−148427A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12005(P2010−12005)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(596076986)株式会社アイ・シー・エル (3)
【出願人】(000000147)伊藤忠商事株式会社 (43)
【Fターム(参考)】