説明

車両用音楽選曲再生システム

【課題】 車両搭載機器を大型化または高性能化することなく、走行状況とユーザの嗜好を反映させた最適な楽曲を、自動的に選曲、再生し、継続してサービスを提供する。
【解決手段】 車両側端末装置1は、自車または自車の周辺状況およびユーザの状況を表すパラメタ情報を入力するパラメタ入力部11と、入力されたパラメタ情報を送信し楽曲のデータを受信する送受信制御部12、13と、配信される楽曲のデータを一時的に記憶する一時記憶部16と、一時記憶された楽曲の再生を制御する楽曲再生制御部14を備え、車外に設置される楽曲選曲配信装置2は、楽曲ごとに作成される曲属性データと音源データを有する楽曲データを記憶する記憶部26と、パラメタ情報と曲属性データに基づき現在の状況に適した楽曲を選択する楽曲選曲部25と、車両側端末装置1と通信してパラメタ情報を受信し楽曲のデータを送信する送受信制御部21、22を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて走行状況や目的に応じた音楽を自動的に選曲、再生するシステムに関するものであり、特に豊富な楽曲データから乗員の嗜好に応じた最適な楽曲を継続して提供可能な車両用音楽選曲再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用オーディオ装置の一つとして、自車の地図上での位置を認識できるカーナビゲーション装置の情報を利用し、走行時の状況に適応した楽曲を再生して快適な車両空間を実現させるシステムがある。例えば、特許文献1に開示されるナビゲーションシステムは、予め利用者が出発地から目的地までの経路上または任意の地点において、どの媒体のどの音楽を再生するかといったオーディオ装置の動作を登録しておく。そして、車両が登録された地点の付近に到達した際に、オーディオ装置に登録された動作を指示することによって、ドライブの進行に応じた音楽の再生を実現する構成になっている。
【0003】
また、ルートに合わせて設定した音楽を再生する方法とは異なり、自車及び自車の周辺の状況に関連付けた楽曲を自動的に再生するオーディオ装置を備えた車載用ナビゲーションシステムが提案されている。例えば、特許文献2には、各楽曲に対してキーワードを設定する一方、自車の位置や天候、車速といった状況要素に対して複数のキーワードを設定し、現在の状況要素を認識してキーワードが一致する楽曲を自動的に検索再生するナビゲーション装置が開示されている。
【0004】
さらに、本発明者等は、搭乗者の好みや気分を音楽選曲に反映させることのできる音楽選曲再生方法を提案した(特許文献3)。特許文献3の方法は、自車の状況を表すパラメタ及び自車の周辺状況を表すパラメタ並びにリスナーの状況を表すパラメタを設定し、パラメタ毎に対応付けした複数の選択値の有無を、曲属性値データとして有する楽曲データを作成しておく。選曲は、現在の状況を示す情報を取得して、各パラメタ毎のキーワードを選定し、楽曲データの曲属性値とキーワードとの一致度から採点を行って求めたパラメタ点数の高い順に、音源データをオーディオ装置に送って再生する。
【0005】
図9に、特許文献3の音楽選曲再生方法において使用される装置構成を示す。図中、パラメタ入力部101のGPS、センサからの情報およびタッチパネルにて選択された情報は、パラメタ入力制御部102を介して、楽曲検索部103へ入力される。一方、楽曲データは、外部記憶メディアリーダー104、デジタルラジオチューナ105から外部記憶取込み部106、楽曲データ抽出部107を介して記憶部構成制御部108に入力され、初期設定データを作成した後、記憶部109に送られる。
【0006】
楽曲検索部103は、パラメタ情報に基づいて、記憶されている楽曲データの中から走行状況や目的地、気分、好み等に合った最適な楽曲を選択し、楽曲再生制御部111が音源データを出力部112のオーディオ装置に順に送って再生する。パラメタ入力部101のタッチパネルで選択された情報および再生される楽曲の情報は、表示制御部110から出力部112に送られ表示装置の画面に表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−30526号公報
【特許文献2】特開2001−324335号公報
【特許文献3】特開2008−176851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
車内での快適さを向上させる上で、オーディオ装置は重要な役割を果たしており、自動的に音楽を再生してくれるシステムへの期待は高い。ところが、特許文献1の方法は、搭乗者が予め走行ルートに応じて再生する楽曲や音源を設定しておくものであり、CD等の音源は自身で用意する必要があって、再生できる楽曲が限られる。音源をラジオチューナーに設定することもできるが、その場合は、走行状況や乗員(リスナー)の好みに応じた楽曲が再生されるとは限らない。また、予め楽曲や音源を登録する手間がかかり、受動的なリスナーであるユーザには向かない。
【0009】
特許文献2の方法は、自車の位置情報の他、天候、日時、車速といった状況要素を考慮して、自動的に選曲を行うことができる。ただし、選曲のためのキーワードを記憶しておく必要があることから、音源はナビゲーション装置に予め記憶された範囲に限られる。このため、走行状況が変化しない場合は同じ楽曲が繰り返し再生される可能性があり、また、選曲にリスナーの好みが反映させるシステムとなっておらず、快適さの向上に限界がある。
【0010】
これに対して特許文献3の方法は、リスナーの状況を表すパラメタを導入し、快、不快といった気分を選曲に反映させたり、再生中の楽曲の好き、嫌いを入力可能として次回の選曲に反映させたりすることを可能にしている。さらに、最終再生日時が近い楽曲を選曲対象から外すことや、楽曲データを例えばデジタルラジオ放送からダウンロードして蓄積することで、ユーザの嗜好と一致する新しい楽曲を常に提供可能としている。
【0011】
しかしながら、特許文献3の方法では、パラメタが多くなるほど選曲結果がユーザの嗜好と一致する可能性が高まるが、各パラメタの選択値を細かく設定して点数化するために、選曲処理の手順が複雑になる。また、楽曲データを追加可能とするために、楽曲データを蓄積するための記憶部が大容量化し、外部から楽曲データを読み込む外部記憶メディアリーダーやデジタルラジオチューナを備えるために大型化する。さらに、取り込んだデータを処理して楽曲検索に対応した楽曲データとして記憶する必要があるなど、高性能な制御処理装置が必要で、高価格となりやすい。
【0012】
そこで、本発明の目的は、車両搭載機器の大型化や高性能化によるコスト増を回避しながら、走行状況とユーザの嗜好を反映させた楽曲を、自動的に選曲、再生すること、しかも楽曲データの追加更新が容易で、常に最適な楽曲を継続して提供可能な車両用音楽選曲再生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願請求項1の発明は、車外に設置される楽曲選曲配信装置と、この楽曲選曲配信装置と通信可能に設けられ、楽曲要求に応じて送信される楽曲を出力部にて再生する車両側端末装置を備える車両用音楽選曲再生システムであって、
上記車両側端末装置は、自車の状況または自車の周辺状況を表すパラメタおよびユーザの状況を表すパラメタを取得するためのパラメタ情報を入力するパラメタ入力部と、上記楽曲選曲配信装置と通信を行って入力されたパラメタ情報を送信し選択された楽曲のデータを受信する送受信制御部と、上記楽曲選曲配信装置から配信される楽曲のデータを一時的に記憶する一時記憶部と、一時記憶された楽曲の再生を制御する楽曲再生制御部とを備え、
上記楽曲選曲配信装置は、楽曲ごとに上記パラメタに対応付けした複数の選択値を用いて作成される曲属性データおよび音源データを有する楽曲データを記憶する記憶部と、上記車両側端末装置からのパラメタ情報と上記記憶部に記憶される楽曲データの曲属性データに基づいて現在の状況に適した楽曲を選択する楽曲選曲部と、上記車両側端末装置と通信を行ってパラメタ情報を受信し選択された楽曲のデータを送信する送受信制御部とを備えていることを特徴とする。
【0014】
本願請求項2の発明において、上記車両側端末装置のパラメタ入力部は、上記パラメタ情報を、車両に搭載されたセンサまたは装置を利用して自動的に取得し、または表示される選択肢からユーザ自身が選択して入力することにより取得する。
【0015】
本願請求項3の発明において、上記車両側端末装置の上記パラメタ入力部は、自車の状況または自車の周辺状況を表すパラメタを取得するためのパラメタ情報として、少なくとも自車の位置情報を入力する。
【0016】
本願請求項4の発明において、上記楽曲選曲配信装置の上記楽曲選曲部は、上記パラメタ情報から自車の状況または自車の周辺状況を表すパラメタおよびユーザの状況を表すパラメタを取得し、これらパラメタと、各楽曲の曲属性データの選択値が一致するかしないかを基に、各楽曲の採点を行い、採点結果の上位から予め決められた曲数を選択する。
【0017】
本願請求項5の発明において、上記車両側端末装置の上記楽曲再生制御部は、上記送受信制御部がパラメタ情報を送信後、楽曲の音源データの受信を開始してから上記一時記憶部に一曲以上の音源データを保持していることを確認するまでは、上記車両側端末装置の記憶部に予め記憶している音源データを再生する。
【0018】
本願請求項6の発明において、上記楽曲選曲配信装置は、上記楽曲選曲部にて、パラメタ情報に基づいて選択された楽曲の再生順序を示す再生リストを作成し、この再生リストと各楽曲の音源データを上記送受信制御部から上記楽曲のデータとして送信するものであり、上記車両側端末装置の上記楽曲再生制御部は、上記再生リストに従って上記一時記憶部に保持された音源データを再生した後、再生した音源データを削除する。
【0019】
本願請求項7の発明において、上記楽曲選曲配信装置の上記送受信制御部は、上記再生リストを送信した後、上記車両側端末装置からの楽曲送信要求に従って、各楽曲の音源データを順次送信し、上記車両側端末装置の上記楽曲再生制御部は、上記一時記憶部に保持された音源データが一定曲数に達したら、楽曲送信要求を一時停止する請求項6記載の車両用音楽選曲再生システム。
【0020】
本願請求項8の発明において、上記車両側端末装置の上記パラメタ入力部は、ユーザの状況を表すパラメタとして、楽曲を推薦する選曲者を表す選曲者パラメタを用いる。
【0021】
本願請求項9の発明において、上記楽曲選曲配信装置は、上記記憶部に記憶される楽曲の選曲者を追加または変更する手段を有し、上記車両側端末装置は、起動時に上記楽曲選曲配信装置の更新情報を受信して、上記パラメタ入力部の表示に反映させる手段を有する。
【0022】
本願請求項10の発明において、上記車両側端末装置の上記パラメタ入力部は、ユーザの状況を表すパラメタとして、再生されている楽曲に対する好みの度合いを選択する好み度パラメタを有し、上記楽曲選曲配信装置は、入力された好み度を各楽曲の曲属性データに追加して、上記楽曲選曲部による次回以降の上記再生リストの作成に反映させる。
【0023】
本願請求項11の発明において、上記車両側端末装置の上記送受信制御部は、上記楽曲選曲配信装置からのデータ受信時に、予め設定した一定時間内に受信完了しない時は、通信異常と判断してデータ再受信要求を送信する手段を有する。
【発明の効果】
【0024】
本願請求項1の発明は、車両側端末装置においてパラメタ入力のみを行い、取得したパラメタ情報に基づく楽曲選択を、車外に設置した楽曲選曲配信装置にて行う。したがって、車両側端末装置に高性能な制御部や大容量の記憶部が不要となり、配信される楽曲を一時記憶して順次再生するだけでよいので、構成が簡易にできる。しかも車外の楽曲選曲配信装置において、楽曲の追加、更新等を行い、ユーザ情報等を記憶することができるので、常にユーザの嗜好を反映させた最適な楽曲検索が可能となる。よって、車両側端末装置をコンパクトで安価な装置とすることができ、最小限の操作で、快適な車内環境を実現できる。
【0025】
本願請求項2の発明によれば、例えば、位置や速度といった自車または自車の周辺状況を表すパラメタは、車両に搭載されたセンサまたは装置を利用して自動的に取得し、ユーザの嗜好を表すパラメタを、表示される選択肢からユーザ自身が選択して入力すればよい。したがって、パラメタ情報を容易に取得することができ、しかも取得時点の状況に応じた最適な楽曲を選択することができる。
【0026】
本願請求項3の発明によれば、車両側端末装置のパラメタ入力部で入力された自車の位置情報から、自車が走行している場所や走行状況、さらに外部サーバ等を利用することで天気や道路情報等を知ることができるので、渋滞の発生状況や晴や雨といった周囲の環境に適した楽曲を選択し、ユーザに提供することができる。
【0027】
本願請求項4の発明によれば、楽曲選曲配信装置の楽曲選曲部は、具体的には、入力されたパラメタ情報に基づいて各パラメタの選択値を決定し、各楽曲の曲属性値との一致度を採点することにより、その楽曲が状況に合う度合いを点数化したスコア値を求めることができる。したがって、採点結果の順に選曲することで、ユーザの嗜好に合った楽曲を容易に選択できる。
【0028】
本願請求項5の発明によれば、楽曲選曲配信装置からのダウンロードが完了してから再生することで、通信不良等により再生中に音楽が停止することを回避できる。また、車両側端末装置の楽曲再生制御部は、パラメタ情報を送信すると、予め保存している楽曲を再生するので、楽曲が再生されない時間をなくし快適さを向上させる。
【0029】
本願請求項6の発明によれば、楽曲選曲配信装置は、まず楽曲選曲部で作成した再生リストを送信するので、車両側端末装置は、この再生リストに基づき、順に楽曲要求を行って再生することができる。また、再生した音源データを削除することで、一時記憶部の容量を確保し、容量に応じた楽曲要求を行って、一時記憶部に一定数の楽曲を保持することができる。
【0030】
本願請求項7の発明によれば、楽曲選曲配信装置の送受信制御部は、再生リストを送信した後は、楽曲要求に応じて音源データを順に送信するだけでよく、処理が容易である。また、車両側端末装置の楽曲再生制御部は、一時記憶部に一定数の楽曲をダウンロードしたら、楽曲要求を停止することで、容量以上の楽曲が配信されることがなく、楽曲の管理、再生が容易にできる。
【0031】
本願請求項8の発明によれば、特に、ユーザの状況を表すパラメタとして、楽曲の推薦人である選曲者パラメタを用いるので、ユーザが楽曲のジャンルや年代といった複数のパラメタを細かく設定する必要がなく、選曲者を決定するだけでユーザの嗜好に合った楽曲を自動的に提供することが可能となる。
【0032】
本願請求項9の発明によれば、車外に設置される楽曲選曲配信装置には、サービス提供者により楽曲の選曲者を容易に更新することができるので、この更新情報を、車両側端末装置の起動時に送信し、パラメタ入力部に表示させることで、常に新しい選曲者情報に基づく楽曲選曲を提供することができる。
【0033】
本願請求項10の発明によれば、車両側端末装置のパラメタ入力部は、ユーザが再生中の楽曲に対する好み度を入力可能であり、その結果を反映させることで、よりユーザの嗜好に合った楽曲選曲が可能となる。
【0034】
本願請求項11の発明によれば、車両側端末装置の送受信制御部は、データ受信が一定時間内に受信完了しない時は、データの再受信を要求するので、一時的な通常不良が生じても連続した送受信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用音楽選曲再生システムの基本構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、車両用音楽選曲再生システムの具体的構成の一例を示す模式的な図、(b)、(c)は、車両側端末装置の表示画面の一例を示す図である。
【図3】車両用音楽選曲再生システムの基本概念を示すブロック図である。。
【図4】(a)は、車両用音楽選曲再生システムを用いた楽曲再生方法を説明するための図であり、(b)は、音楽選曲再生装置における音楽選曲手順を示すフローチャートである。
【図5】(a)、(b)は、音楽選曲再生システムにおける再生リストの更新手順を説明するための図である。
【図6】端末側受信制御部と楽曲再生制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】車両側端末装置の表示画面の遷移を示す図である。
【図8】車両側端末装置の楽曲再生制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】従来の車両用音楽選曲再生装置の全体概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(第1実施形態)
以下に、図面に基づいて本発明の車両用音楽選曲再生システムの第1実施形態について説明する。図1は、車両用音楽選曲再生システムの基本構成を示すブロック図であり、図2に具体的構成の一例を示す。図1、2において、車両用音楽選曲再生システムは、ユーザが乗車する自動車の車室内に設置される車両側端末装置1と、車外に設置される楽曲選曲配信装置(サーバ(群))2とを備えている。図1に示すように、本実施形態では、車載端末装置1を、音楽再生機能を備える自動車のカーナビゲーションシステムSに組み込み、入出力部を共有させた構成としている。
【0037】
図1において、車両側端末装置(以下適時、端末と称する)1は、パラメタ入力部11と、送受信制御部となる端末側送信制御部12および端末側受信制御部13と、楽曲再生制御部14および表示制御部15と、一時記憶部16および記憶部17と、出力部18を有している。楽曲選曲配信装置(以下適時、サーバと称する)2は、送受信制御部となるサーバ側送信制御部21およびサーバ側受信制御部22と、楽曲選曲部25となるパラメタ入力制御部23および楽曲検索部24と、記憶部26と、記憶構成制御部27および配信部28を有している。図2(a)〜(c)に示すように、車両側端末装置1は、例えば、正面に配置されるディスプレイ画面Dが、パラメタ入力部11のタッチパネル1cと出力部18の表示装置1eを兼ねており、楽曲選曲配信装置2は、例えば、楽曲選曲サーバ、配信サーバ、外部サーバといったサーバ群で構成することができる。
【0038】
車両側端末装置1の端末側送信制御部12および端末側受信制御部13と、楽曲選曲配信装置2のサーバ側送信制御部21およびサーバ側受信制御部22は、通信手段3を介して接続され、相互に情報を送信および受信可能に構成されている。通信手段3は、例えばインターネットその他の情報通信ネットワークであり、カーナビゲーションシステムSがインターネット接続可能な構成であれば、その機能を利用することができる。
【0039】
車両側端末装置1のパラメタ入力部11には、楽曲検索に必要となる自車の状況または自車の周辺状況を表すパラメタ、およびリスナーとなるユーザの状況を表すパラメタとを取得するための基本情報となる、パラメタ情報を入力する。本実施形態のパラメタ入力部11は、GPS(Global Positioning System)1a、センサ1b、タッチパネル1cを少なくとも有しており、自車の状況を表すパラメタ情報および自車の周辺状況を表すパラメタ情報は、GPS1aまたはセンサ1bからの情報として、ユーザの状況を表すパラメタ情報は、タッチパネル1cから入力されるユーザの情報(指示)として得ることができる。入力されるパラメタ情報は、ユーザIDを含むデータとして、端末側送信制御部12およびサーバ側受信制御部21を介して、楽曲選曲配信装置2のパラメタ入力制御部23へ送られる。
【0040】
カーナビゲーションシステムSは、ユーザとなるドライバに、GPS1aにより取得した自車の位置を、ディスプレイを介して教え、目的地まで円滑に走行できる経路を見つけて、ドライバを誘導かつ案内する支援システムである。本実施形態のようにカーナビゲーションシステムSを利用できる場合は、車両側車載端末装置1のディスプレイ表示面D、パラメタ入力部11および出力部18をカーナビゲーションシステムSと共通化し、パラメタ入力制御部23へは、カーナビゲーションシステムSから変換済みのデータとしてパラメタ情報を入力することができる。
【0041】
楽曲検索に用いられるパラメタは、車内外の現在の環境に合わせてユーザの嗜好に一致する楽曲を提供するために設定される。好適には、自車の状況、自車の周辺状況、ユーザの状況について、それぞれ1つないしそれ以上のパラメタが選択される。これらパラメタの種類は任意に設定することができ、本実施形態では、例えば、自車の状況を表すパラメタとして、場所(現在位置)パラメタ、走行状況パラメタを、自車の周辺状況を表すパラメタとして、日時パラメタ(季節、曜日、時間帯)、天気パラメタ、等を用いる。また、ユーザの状況を表すパラメタとして、ユーザに楽曲を推薦する選曲者、推薦人を選択するの嗜好を反映可能な選曲者パラメタ、好み度パラメタを用いる。
【0042】
パラメタ入力部11に入力されるパラメタ情報は、これらパラメタに直接的に対応するデータであっても、パラメタを取得するための基本データであってもよく、装置起動時または起動後に随時入力される。カーナビゲーションシステムS等からのデータ入力は、定期的に入力されるように設定することができ、さらに、ユーザが手動により任意にパラメタの選択値を変更することにより、状況の変化に応じた楽曲選択を行なうことができる。例えば、ユーザの状況を表すパラメタである選曲者は、ユーザが楽曲を推薦する選曲者を指示することで、ユーザの嗜好を反映可能とするものであり、好み度は、楽曲選曲部25によって選択された楽曲に対して、再生中にその好き嫌いを指示することにより、次回の選曲に反映させるものである。また、ユーザの状況を表すパラメタは、ユーザの楽曲に対する嗜好や移動の目的を反映させるものであればよく、ユーザの状況を表すパラメタとして、目的地、気分、等を用いることもできる。このうち目的地は、例えばカーナビゲーションシステムSに入力される目的地情報等を利用することもできる。
【0043】
これらパラメタには、それぞれに複数の選択値が対応付けられている。本実施形態において、自車の状況または自車の周辺状況を表すパラメタに設定された複数の選択値は、以下の通りである。ユーザの状況を表すパラメタである選択者、好み度については、後述する。
場所パラメタ:都市、郊外、海辺および山間部
走行状況パラメタ:一般道渋滞(〜30km/時未満)、一般道(30〜70km/時未満)、高速道路渋滞(〜70km/時)、および高速道路(70km/時〜)
季節パラメタ:春(3〜5月)、夏(6〜8月)、秋(9〜11月)および冬(12〜2月)
曜日パラメタ:週初め(月曜)、週中(火〜木曜)、週末(金曜)および休日(土、日曜)
時間帯パラメタ:朝(4〜10時前)、昼(10〜16時前)、夕方(16〜19時前)、夜(19〜22時前)および深夜(22〜4時前)
天気パラメタ:晴れ、曇り、雨および荒天
目的地パラメタ:都市、郊外、海辺および山間部
【0044】
これらパラメタの選択値は、楽曲選曲部25のパラメタ入力制御部23において、GPS1aまたはセンサ1bからの情報を解析することにより、あるいは、外部サーバと情報をやり取りすることにより、その1つを自車の現在の状況を表すパラメタ値に決定することができる。GPS(全地球測位システム)1aは、複数の周回衛星からの電波を図示しないアンテナで受信して、日付時刻、および自車が走行している位置の緯度、経度を特定することができる。センサ1bとしては、自動車に搭載されている図示しない各種のセンサ、例えば、自車の走行速度を検出する車速センサ、温度および湿度を測定する温湿度センサ、フロントガラスの水滴を除去するワイパーの動作形態(停止、低速動作、高速動作等)を検出するワイパー動作センサ等が用いられる。
【0045】
例えば、GPS1aにより取得した自車の位置情報、日付時刻の情報から、自車が走行している地域を示す場所パラメタのパラメタ値、日時パラメタ(季節、曜日、時間帯)のパラメタ値を特定することができる。また、センサ1bにより検出される車両速度から、自車の走行している道路や渋滞等の走行状況を示す走行状況パラメタのパラメタ値を特定することができる。あるいは、GPS1aにより自車位置を連続的に取得し、解析することで走行速度を算出し、走行状況パラメタのパラメタ値を決定することもできる。さらに、自車の移動方向から目的地を推定することも可能である。
【0046】
また、自車の周辺状況を表すパラメタを、楽曲選曲配信装置2側で取得することができる場合には、必ずしもパラメタ入力部11に対応するパラメタ情報を入力する必要はない。例えば、自車の周辺状況を表すパラメタのうち、天気パラメタは、センサ1bの情報だけでなく、GPS1aの位置情報から、図2(a)のように外部サーバを利用してその地域の天候情報を取得することもできる。このように、GPS1aを利用すると、パラメタ情報として自車位置データを入力するだけで、自車の状況および自車の周辺状況を表すパラメタの両方について、複数のパラメタ値を取得することが可能になる。なお、自車に搭載している温湿度センサやワイパ動作センサ等からのデータをパラメタ情報として入力し、さらに詳細な天候パラメタを取得することもできる。さらに外部サーバを利用して渋滞の発生状況等の道路情報を取得することもできる。
【0047】
タッチパネル1cは、出力部18の表示装置1eの表示面(図2のディスプレイ表示面D)に内蔵されているものであり、ディスプレイ表示面Dへの接触を表示面座標として入力することができる構造になっている。ディスプレイ表示面には、ユーザの状況を表すパラメタの選択画面の他、出力部18のオーディオ装置1dにて再生される楽曲の情報等が表示される。オーディオ装置1dにおける楽曲の再生は、楽曲再生制御部14によって制御され、表示装置1eのディスプレイ表示は、表示制御部15によって制御される。また、これら楽曲データや表示データは、一次記憶部16または記憶部17に保存される。
【0048】
楽曲選曲配信装置2の楽曲選曲部25は、パラメタ入力制御部23に入力されるデータ(パラメタ情報)を変換することによって、それらを楽曲検索部24における独自の選曲アルゴリズムのパラメタとする。各パラメタは、上述したように、それぞれに対応付けされた複数の選択値を有し、パラメタ入力制御部23は、自車の状況または自車の周辺状況およびユーザの状況を表す入力データに基づいて、複数の選択値のうち1つを選択することで、現時点の状況を示すパラメタ値を決定する。一方、各楽曲は、予め、選曲者によって各パラメタの複数の選択値からいずれか1つ以上が選択されて曲属性値が決定されている。各楽曲のデータは、パラメタ毎の曲属性値を記した曲属性データと音源データによって構成されており、記憶部構成制御部27で処理された後、曲属性データと音源データに分けて記憶される。
【0049】
楽曲選曲部25の楽曲検索部24は、現在の自車または周辺の状況およびユーザの状況を表す各パラメタのパラメタ値と、各楽曲の曲属性データとして記憶される曲属性値を比較することによって、推奨する楽曲のリスト(再生リスト)を作成し、配信部28は、楽曲要求に応じてその音源データを配信する。これら再生リストと音源データは、楽曲選曲配信装置2のサーバ側送信制御部22から、車両側端末装置1の端末側受信制御部13を介して、一次記憶部16に一時的に保存される。車両側端末装置1の楽曲再生制御部14は、この再生リストに基づいて音源データを順にオーディオ装置1dに送り、再生する。一方、表示制御部15は、再生中の楽曲の曲名や演奏者名等のデータを一次記憶部16から受け取り、楽曲情報として表示装置1eに表示する。
【0050】
次に、図3、図4を参照しながら、本発明の車両用音楽選曲再生システムを用いた音楽選曲再生手順について説明する。図3は車両側端末装置(端末)1、楽曲選曲配信装置(サーバ)2の各部の詳細構成または各部において実施される処理等を、具体的に示したものであり、図4は、ユーザの操作手順と、ユーザ操作に対して車両側端末装置1および楽曲選曲配信装置2において実行される処理を、それぞれ関連付けて、時系列で示したものである。図4(a)において、まず、ユーザが車両側端末装置1を起動すると、車両側端末装置1は、楽曲選曲配信装置2に、選曲者の更新の有無を確認するよう要求する(更新確認)。
【0051】
更新確認は、ユーザの状況を表すパラメタである選曲者パラメタについて、対応する複数の選択値、すなわちユーザが選択可能な選曲者名が、前回から追加または変更されているかどうかを確認するために行なわれる。これに対して楽曲選曲配信装置2の配信部28は、図3に示す記憶部26の選曲者データベース(DB)に照会し、保存されている更新情報を配信する(更新情報)。表1は、記憶部26に保存される各種データベースとその機能を示すものである。記憶部26には、それ以外のデータベースとして、各楽曲の音源データを保存する楽曲データベースが設けられる。
【0052】
【表1】

【0053】
車両側端末装置1は、更新情報を記憶部17に保存し、更新された選曲者を、表示装置1eに出力して画面に一覧表示する(選択者一覧表示)。次いで、ユーザがパラメタ入力部11のタッチパネル1cにて、画面上の選曲者を選択すると、車載端末装置1は、その選曲者情報を、楽曲選曲配信装置2へ送信する(選曲者選択)。具体的には、図2(b)に示すように、例えばディスプレイ表示面Dに6人の選曲者名が表示され、ユーザが選曲者名ボタンに触れることで、楽曲選曲部25のパラメタ入力制御部24に入力されるタッチパネル1cの入力座標位置から、ユーザの状況を表す選曲者パラメタのパラメタ値として、ある選曲者が特定される。ディスプレイ表示面Dにおいて、他の選曲者ボタンに触れることで画面を切り替え、別の6人の選曲者名を表示させることもできる。あるいは、その他ボタンにより、選曲者以外の選択肢、例えば楽曲のジャンルを選択するボタンを表示させるようにしてもよい。
【0054】
また、車両側端末装置1は、選曲者の選択から楽曲の配信までの待機中に再生するために、予め記憶部17に記憶してあるプリセット音楽を再生する(待機中音楽再生)。図2(c)に示すように、音楽再生中には、ディスプレイ表示面Dの表示部18が切り替わり、例えば、楽曲タイトル、アーティスト名等の楽曲情報1〜3が表示される。また、パラメタ入力部11として、選曲者ボタンの他、再生中の楽曲の好みを入力するためのfavoriteボタン、skipボタン等が追加される。
【0055】
一方、車両側端末装置1は、起動とともに、自車の状況または自車周辺の状況を表すパラメタを取得するためのパラメタ情報として、GPS1aから取得される位置情報と、センサ1bの1つである車速センサから取得される速度情報を、楽曲選曲配信装置2に送信する(位置等情報)。楽曲選曲部25のパラメタ入力制御部は、入力された緯度経度情報を、記憶部26の位置データベースに照会して、自車位置を判定し、場所パラメタのパラメタ値を特定する。さらに、入力された緯度経度情報を基に、図2(a)の外部サーバを利用して自車が走行中の地域の天気を照会し、天気判定を行う。また、入力された速度情報から、走行状況を判定し、楽曲選曲配信装置2が内蔵する時計やカレンダー情報から、日時を判定する。
【0056】
これら判定結果から、場所、走行状況、季節、曜日、時間帯、天気の各パラメタの選択値のうち1つが選択され、パラメタ値が決定される。楽曲選曲部25のパラメタ入力制御部は、これらを現時点の自車および周辺状況を表すパラメタ値と、ユーザの嗜好を表す選曲者パラメタのパラメタ値を用い、楽曲選曲部25の楽曲検索部24にて楽曲選曲を行う(レコメンデーション)。
【0057】
ここで、楽曲検索のパラメタとなる選曲者は、本発明の車両用音楽選曲再生システムにおいて、再生する楽曲を選択してリスナーに推奨する人物、例えば、アーティストや音楽評論家、ラジオパーソナリティ、演奏家、等である。選曲者は、楽曲選曲配信装置2の管理者であるサービス提供者が、例えばN人を選択し、N人の選曲者がそれぞれ推奨する複数の楽曲を選定するとともに、各楽曲のパラメタ毎に曲属性値を1以上選択する。選曲者が曲属性値を特定せず、ALL(全て)とすることもできる。したがって、例えば、ある楽曲が、選択者1と選択者Nによって選択される場合であっても、場所、走行状況、季節、曜日、時間帯、天気の各パラメタについて、選択者1と選択者Nの選択が異なれば、選択者以外の曲属性データも異なり、異なる状況で選曲、再生される。つまり、ユーザは、その時々の好みの選曲者を選択するだけで、特定の選曲者が選んだ楽曲の集合1〜Nの中から、さらに自車やその周辺状況に応じて推奨される楽曲の再生リストおよび音源データが配信され、自動的に再生されることになる。
【0058】
具体的には、各選択者によって選択された楽曲は、曲属性データと音源データとして、記憶部構成制御部27に入力され、記憶部構成制御部27は、曲属性データに基づく曲属性リストと、スコアデータリストを作成して、記憶部26のフィーリングデータベース、嗜好データベースにそれぞれ格納する。曲属性リストは、選曲者によって推奨される1曲分を1レコードとして曲属性レコードを保持するもので、曲属性レコード内の項目としては、例えば、楽曲の選曲者を示す選曲者番号、楽曲の識別番号を示す曲ID、楽曲のフィーリングを表すデータである曲フィーリング、楽曲のタイトルを示す曲タイトル、楽曲を演奏しているアーティスト名、楽曲の音源データを表す音源インデックスの各項目がある。この曲フィーリング項目には、曲属性データとして既に説明した各パラメタの選択値の1つ以上が曲属性値として格納されている。表2は、記憶部26のフィーリングデータベースに保存される曲属性リストの一例であり、ここでは、曲属性項目として、選曲者番号、曲ID、曲フィーリングの各情報を含むフィーリングリストとして構成したものを示している。この場合は、楽曲のタイトル等の楽曲情報を含む楽曲リストを別に作成して保存する。
【0059】
【表2】

【0060】
スコアデータリストは、1曲分を1レコードとしてスコアデータレコードを保持するもので、スコアデータレコード内の項目としては、例えば、楽曲の識別番号を示す曲ID、現時点のキーワードで採点された曲スコア値、リスナーが楽曲の再生時に指定する好み度、最後に楽曲が最後に再生された時の日時を示す最終再生日時の各項目等がある。楽曲が新規に取得された時点では、スコア値、好み度、最終再生日時の各項目は空欄になっている。
【0061】
次に、図4(b)のフローチャートを参照しながら、パラメタ値を用いた音楽選曲(レコメンド)手順を説明する。まず、ステップS1において、楽曲選曲部25の楽曲検索部24は、記憶部26のフィーリングデータベースに格納される曲属性リストから、ユーザの選択した選曲者をパラメタとして有する楽曲を抽出する。そして、ステップS2において、抽出された全楽曲について、選曲者以外の現時点のパラメタ値と、曲属性レコードの各パラメタの曲属性値との一致度から採点を行い、スコア値を算出する。例えば、パラメタ値と曲属性値が一致していればファクタ値2、曲属性値がALL(全て)であればファクタ値1、不一致であればファクタ値0とする。この時、パラメタ入力制御部23で決定された、現時点の走行状況パラメタのパラメタ値が一般道、季節パラメタのパラメタ値が夏、曜日パラメタのパラメタ値が週初めであり、ある楽曲について、選曲者の決定した曲属性値が、それぞれ、高速道路(ファクタ値0)、夏(ファクタ値2)、ALL(ファクタ値1)であれば、3つのパラメタについての合計スコアは3となる。これを全てのパラメタについて行い、算出した値を補正してスコア値とする。
【0062】
ファクタ重み値は、選曲時の採点への影響を、あるパラメタでは大きく、または小さくすることで、各パラメタに重み付けをする点数である。予め設定したファクタ重み値は、初期設定データとして記憶部26に保存されており、例えば、走行状況パラメタは15、季節パラメタは23、曜日パラメタは7といった重み付けがなされる。
【0063】
さらに最低限一致属性、例えば、季節が一致しない楽曲を除くフィルタリング機能を持たせることもできる。ステップS3では、スコア値の補正に先立って、予め設定したフィルタ条件を用いて特定の楽曲を除外する(フィルタリング機能)。フィルタ条件は、任意に設定することができ、例えば、季節を最低限一致の条件とする場合には、季節が不一致の楽曲は選択候補から外れることになる。このフィルタリングにより、他のパラメタの一致によりスコア値が高い楽曲であっても、季節が一致しないものが選曲されないようにすることができる。
【0064】
ステップS4では、好み度を加算し、スコア値の補正を行う。ユーザは、楽曲再生時にタッチパネル1cを使用して、好み度を入力することが可能であり、楽曲選択の採点に反映させることができる(テイスティング機能)。図2(c)のように、音楽再生中には、車両側端末装置1のディスプレイ表示面Dに、好み度を表すfavorite(好き)、skip(嫌い)の選択ボタンを配置し、音楽を聴きながらタッチ操作でいずれかを選択すると、好み度を入力することができる。その楽曲の再生終了までに好き、嫌いのいずれかを選択しない場合は、好み度は変化せず、普通とされる。これら入力データは、例えば、スコアデータリストのスコアデータレコードに、好き(ファクタ値2)、普通(ファクタ値1)、嫌い(ファクタ値0)として追加される。そこで、前回以前に入力されたファクタ値を、算出したスコア値に加算し、よりユーザの嗜好に合った楽曲を選曲可能とする。
【0065】
ステップS5〜7で、楽曲検索部24は、このようにして算出されたスコア値が、最も上位のものから順に楽曲を並べ、要求曲数を満たす順位、例えばT番目のものまでを選択し、再生リストを作成する。再生リストに載せる楽曲数Tは、車両側端末装置1の一時記憶部16の容量等に応じて、予め設定されている。この時、抽出した楽曲にランダム値を割り当てて並べ替えてもよい。楽曲検索部24から再生リストが送信されると、車両側端末装置1は一時記憶部16に再生リストを保存し、その最上位から楽曲のダウンロードを要求する(楽曲要求)。楽曲選曲再生配信装置2の配信部28は、楽曲要求に応じて、記憶部26の楽曲データベースに蓄積された音源データを要求順に配信し、再生日時を再生履歴データベースに保存する。
【0066】
車両側端末装置1の楽曲再生制御部14は、配信された音源データを一次記憶部16に一時的に保存し、再生リストの順にオーディオ装置1dにて再生する。一方、表示制御部15は、再生中の楽曲の曲名や演奏者名等のデータを一次記憶部16から受け取り、表示装置1eに表示する。
【0067】
図5(a)のように、ユーザは、状況に応じて、選曲者を変更することができる。車両側端末装置1は、タッチパネル1cの選曲者ボタンが押されたことを感知すると、待機中のプリセット音楽を再生し、位置等のパラメタ情報を新たに取得して、選曲者情報とともに、楽曲選曲配信装置2に送信する。これに伴い、楽曲選曲配信装置2の楽曲選曲部25は、上述した手順により新たな再生リストを作成して、車載端末装置1に送信する。
【0068】
図5(b)のように、選曲者を変更することなく、再生リストの楽曲が全て再生された場合には、車両側端末装置1は、再度、位置等のパラメタ情報を取得して、楽曲選曲配信装置2に送信し、同様の手順で、新たな再生リストを取得して、楽曲の再生を継続する。これにより、ユーザは特に操作をすることなく、連続して好みに合った音楽を聞き続けることができる。
【0069】
このように、本発明では、ユーザは、車両側端末装置1のパラメタ入力部で選曲者を選択するだけでよく、極めて簡単な操作で自動的に、連続して楽曲再生がなされる。そして、車両側端末装置1ではデータ入力のみを行い、取得したデータの処理、さらに得られたパラメタ情報に基づく楽曲選択を、自車外部に設置した楽曲選曲配信装置2において行うので、車両側端末装置1に高性能なプロセッサが不要である。また、選曲者や楽曲の追加、更新を、楽曲選曲配信装置2側において行うので、車両側端末装置1側に外部記憶メディアリーダや大容量の記憶部が不要であり、装置がコンパクトになる上、ユーザが楽曲の追加等の操作を行う手間も不要となるといった利点がある。
【0070】
図6は、車両側端末装置1の受信制御部13と、楽曲再生制御部14の動作を示すフローチャートである。まず、楽曲選曲配信装置2への楽曲要求により、配信部28から、再生リストの順に音源データが配信される。受信制御部13は、図6のステップS11において、一曲目のダウンロードが完了すると、ステップS12において、楽曲再生制御部14に再生開始信号を送信する。受信制御部13は、続くステップS13において、二曲目のダウンロードを実行し、次いで、ステップS14において、予め決められた一定曲数以上、楽曲が一時記憶部16に保存されているか否かを判定する。ここで、否定判定された場合には、ステップS13に戻って三曲め以降の楽曲をダウンロードすることを繰り返す。ステップS14が肯定判定された場合には、ステップS15へ進み、楽曲再生制御部14からの通知が来るまで待機する。
【0071】
一方、楽曲再生制御部14は、ステップS21において、再生開始信号を受信すると一曲目の再生開始とする。この時、まず、ステップS22において、一時記憶部16に一曲以上の音源データが一時保存されているか否かを判定し、肯定判定されると、ステップS23に進んで音源データを再生する。再生が終了すると、ステップS24へ進んで、再生済の音源データを削除し、ダウンロード再開信号を受信制御部13に出力する。これにより、受信制御部13は、ステップS15の待機状態を解除し、ダウンロードを再開する。
【0072】
楽曲再生制御部14は、ダウンロード再開信号の出力後、ステップS22に戻って、一曲以上の音源データが一時保存されていることを確認してから、音楽再生することを繰り返す。ステップS22において、一曲以上の音源データが一時保存されていないと判断された場合には、通信異常と判断してエラー信号を出力する。これを受けて、表示装置1eが予め決められたエラーメッセージを表示することで、通信異常を知らせることができる。
【0073】
このように、本発明では、車両側端末装置1の受信制御部13において、一時記憶部16に常に一定曲数の楽曲が保存され、かつ保存可能な曲数を超えないように、ダウンロードが制御される。また、楽曲再生制御部14は、再生可能な楽曲データを保存していることを確認してから、音楽再生を行い、しかも再生後は楽曲データを直ちに削除するので、不要な楽曲データが保存されず、一時記憶部16の容量を最大限に活用することができる。さらに、一曲以上の保存がない場合には、通信異常が生じたと判断されるため、エラーメッセージを出力することで、速やかに異常発生をユーザに通知することが可能となる。
【0074】
図7、8は、車両側端末装置1の起動時の表示部1eにおける画面表示の例と、送信制御部12の動作の例を示すものである。図2(b)、(c)に示したディスプレイ表示面Dは、タッチパネル1cの選択ボタン例を説明するための一例であり、実際には、システム起動から楽曲再生までに、随時、画面表示を切り替えることが望ましい。例えば、図7において、まず車両側端末装置1を起動すると、表示装置1eは、選曲者の更新情報を要求して選択者の更新が終了するまでの間、準備中であることを表示して、待機を促す(起動画面)。ここで、何らかのエラーが生じた場合には、エラー表示する画面に切り替える(エラー画面)。
【0075】
例えば、図8において、送信制御部12は、まず車両側端末装置1を起動すると同時に、ステップS31において、選曲者の更新要求を送信する。次に、ステップS32に進み、選曲者の更新が、予め設定した一定時間以内に完了したか否かを判定する。ステップS32が肯定判定された場合には、何らかの通信異常と判断し、ステップS35に進んで通信異常であることを通知して、図7の表示装置1eにエラー画面を表示させ、終了を促す。ステップS32が否定判定された場合には、ステップS33において、更新情報を基に選択者の選択を行う。
【0076】
この時、図7の表示装置1eには、更新された選曲者情報から、4〜6名程度の選曲者を画面表示する。この4名は前回までのユーザ選択の上位を表示するか、またはシステムが選んだ選択者順位とする(選曲者選択画面;図2(b)に相当)。この画面には、同時に他の選曲者を選択するためのボタンを配置し、ユーザがボタンに接触すると、選曲者を変更する画面に切り替える(選曲者変更画面)。この画面には、他の4名程度の選択者が表示され、さらに画面変更を行って、選曲者の変更を繰り返し行うことができる。また、終了ボタンを配置することで、選曲者の変更をせずに楽曲再生を終了することができる。
【0077】
図8のステップS33では、選択者の選択に引き続き、プリセット音楽を再生しながら、配信される楽曲をダウンロードする。この時、ステップS34において、ダウンロードが一定時間内に完了しない場合には、通信不良と判断されるので、ステップS36に進み、表示装置1eのエラー画面に、通信不良により十分なサービスが提供できない旨を表示する。ユーザがエラー画面にて終了ボタンを押した場合には、システムを終了させ、操作がなされない場合には、ステップS37にて、引き続き、通信不良により十分なサービスが提供できない旨を表示する。同時に、ステップS38で、プリセット曲または一時保存した楽曲を再生し、ステップS39で、ダウンロードを継続する。
【0078】
音楽再生がなされた場合は、図7の表示装置1eにおける画面表示を、再生中であることを示す画面に切り替える(再生画面;図2(c)に相当)。この表示画面は、曲名等の楽曲情報を表示する画面であり、選択者を変更するための選択ボタンや、音楽の停止/再開を行うためのボタン、サービスを終了するためのボタン等が表示される。終了ボタンが押された場合には、画面表示をシステムを起動する前の画面に切り替える。図7のステップS40では、再生完了時にダウンロードが完了していないか否かを、再度確認し、肯定判定された場合には、ステップS36に戻る。否定判定された場合には、ステップS38、39へ戻り、以降の工程を繰り返す。
【0079】
このように、本発明は、選択者の更新情報、楽曲データのダウンロードを、通信により行うので、通信状態が良好でない場合には、更新情報の表示や楽曲の再生に不具合が生じるおそれがある。これに対して、図7、8のように、適時、通信状態を判断する処理を行うことで、速やかに通信異常や通信不良を画面表示し、ユーザに通知することができる。
【0080】
上記実施形態では、車両側端末装置1を、カーナビゲーションシステムSと一体に設けた例について説明したが、本発明では、車両側端末装置1を、カーナビゲーションシステムSを利用しない専用端末装置として構成することもできる。車両側端末装置1がカーナビゲーションシステムSを利用しない専用端末装置である場合には、通信手段3として、楽曲選曲配信装置2と通信するためのネットワーク接続機能を内蔵し、また位置情報取得のためのGPS機能を備える構成とすることが望ましい。あるいは、携帯電話機等のインターネット接続可能な機器を経由してネットワークに接続しデータを送受信する構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の楽曲選曲配信システムは、例えば、車両に搭載されるカーナビゲーションシステムと一体化することにより、簡易な構成で高性能な楽曲選曲を行い、ユーザの嗜好に一致した快適な音楽環境を車内に形成することができる。あるいは、携帯電話その他のネットワーク接続可能な機器を利用することもでき、楽曲選曲配信装置を車外に設置することで、コンパクトで操作性の良い端末装置となるので、産業上の利用価値が極めて高い。
【符号の説明】
【0082】
S カーナビゲーションシステム
1 車両側端末装置
1a GPS
1b センサ
1c タッチパネル
1d オーディオ装置
1e 表示装置
11 パラメタ入力部
12 端末側送信制御部
13 端末側受信制御部
14 楽曲再生制御部
15 表示制御部
16 一時記憶部
17 記憶部
18 出力部
2 楽曲選曲配信装置
21 サーバ側受信制御部
22 サーバ側送信制御部
23 パラメタ入力制御部
24 楽曲検索部
25 楽曲選曲部
26 記憶部
27 記憶部構成制御部
28 配信部
3 通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外に設置される楽曲選曲配信装置と、この楽曲選曲配信装置と通信可能に設けられ、楽曲要求に応じて送信される楽曲を出力部にて再生する車両側端末装置を備える車両用音楽選曲再生システムであって、
上記車両側端末装置は、自車の状況または自車の周辺状況を表すパラメタおよびユーザの状況を表すパラメタを取得するためのパラメタ情報を入力するパラメタ入力部と、上記楽曲選曲配信装置と通信を行い入力されたパラメタ情報を送信し選曲された楽曲のデータを受信する送受信制御部と、上記楽曲選曲配信装置から配信される楽曲のデータを一時的に記憶する一時記憶部と、一時記憶された楽曲の再生を制御する楽曲再生制御部とを備え、
上記楽曲選曲配信装置は、楽曲ごとに上記パラメタに対応付けした複数の選択値を用いて作成される曲属性データおよび音源データを有する楽曲データを記憶する記憶部と、上記車両側端末装置からのパラメタ情報と上記記憶部に記憶される楽曲データの曲属性データに基づいて現在の状況に適した楽曲を選択する楽曲選曲部と、上記車両側端末装置と通信を行ってパラメタ情報を受信し選択された楽曲のデータを送信する送受信制御部とを備えていることを特徴とする車両用音楽選曲再生システム。
【請求項2】
上記車両側端末装置の上記パラメタ入力部は、上記パラメタ情報を、車両に搭載されたセンサまたは装置を利用して自動的に取得し、または表示される選択肢からユーザ自身が選択して入力することにより取得する請求項1記載の車両用音楽選曲再生システム。
【請求項3】
上記車両側端末装置の上記パラメタ入力部は、自車の状況または自車の周辺状況を表すパラメタを取得するためのパラメタ情報として、少なくとも自車の位置情報を入力する請求項1または2記載の車両用音楽選曲再生システム。
【請求項4】
上記楽曲選曲配信装置の上記楽曲選曲部は、上記パラメタ情報から自車の状況または自車の周辺状況を表すパラメタおよびユーザの状況を表すパラメタを取得し、これらパラメタと、各楽曲の曲属性データの選択値が一致するかしないかを基に、各楽曲の採点を行い、採点結果の上位から予め決められた曲数を選択する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用音楽選曲再生システム。
【請求項5】
上記車両側端末装置の上記楽曲再生制御部は、上記送受信制御部がパラメタ情報を送信後、楽曲の音源データの受信を開始してから上記一時記憶部に一曲以上の音源データを保持していることを確認するまでは、上記車載端末装置の記憶部に予め記憶している音源データを再生する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両用音楽選曲再生システム。
【請求項6】
上記楽曲選曲配信装置の上記楽曲選曲部は、上記パラメタ情報に基づいて選択された楽曲の再生順序を示す再生リストを作成し、この再生リストと各楽曲の音源データを上記送受信制御部から上記楽曲のデータとして送信するものであり、上記車両側端末装置の上記楽曲再生制御部は、上記再生リストに従って上記一時記憶部に保持された音源データを再生した後、再生した音源データを削除する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用音楽選曲再生システム。
【請求項7】
上記楽曲選曲配信装置の上記送受信制御部は、上記再生リストを送信した後、上記車両側端末装置からの楽曲送信要求に従って、各楽曲の音源データを順次送信し、上記車両側端末装置の上記楽曲再生制御部は、上記一時記憶部に保持された音源データが一定曲数に達したら、楽曲送信要求を一時停止する請求項6記載の車両用音楽選曲再生システム。
【請求項8】
上記車両側端末装置の上記パラメタ入力部は、ユーザの状況を表すパラメタとして、楽曲を推薦する選曲者を表す選曲者パラメタを用いる請求項1ないし7のいずれか1項に記載の車両用音楽選曲再生システム。
【請求項9】
上記楽曲選曲配信装置は、上記記憶部に記憶される楽曲の選曲者を追加または変更する手段を有し、上記車両側端末装置は、起動時に上記楽曲選曲配信装置の更新情報を受信して、上記パラメタ入力部の表示に反映させる手段を有する請求項8記載の車両用音楽選曲再生システム。
【請求項10】
上記車両側端末装置の上記パラメタ入力部は、ユーザの状況を表すパラメタとして、再生されている楽曲に対する好みの度合いを選択する好み度パラメタを有し、上記楽曲選曲配信装置は、入力された好み度を各楽曲の曲属性データに追加して、上記楽曲選曲部による次回以降の上記再生リストの作成に反映させる請求項1ないし9のいずれか1項に記載の車両用音楽選曲再生システム。
【請求項11】
上記車両側端末装置の上記送受信制御部は、上記楽曲選曲配信装置からのデータ受信時に、予め設定した一定時間内に受信完了しない時は、通信異常と判断してデータ再受信要求を送信する手段を有する請求項1ないし10のいずれか1項に記載の車両用音楽選曲再生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−203974(P2012−203974A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70092(P2011−70092)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(509178736)株式会社豊通エレクトロニクス (2)
【出願人】(000100997)株式会社アキタ電子システムズ (41)
【出願人】(501306140)株式会社イーライセンス (3)
【Fターム(参考)】