説明

車両駆動装置

【課題】変速時のトルク抜けをなくしてドライバビリティを向上させることができる車両駆動装置を提供すること。
【解決手段】回転動力を出力する第1モータジェネレータ2と、第1モータジェネレータ2から出力された回転動力を変速して出力するとともに変速比の切り換えが可能な変速機4と、変速機4から出力された回転動力により2つの車輪6a、6bを差動可能に駆動する差動装置5と、変速機4を介して差動装置5に向けて回転動力を出力する第2モータジェネレータ3と、を備え、変速機4は、第1モータジェネレータ2から出力された回転動力の変速比を切り換えているときに、第2モータジェネレータ3から出力された回転動力を差動装置5に伝達するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの駆動力により変速機を介して駆動輪を駆動する車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを動力源とする車両においては、電動モータと駆動輪との間の動力伝達経路において、変速段の切換可能な変速機(減速機)を有する車両駆動装置を備えるものがある。
【0003】
例えば、特許文献1、2に記載の装置では、電動モータを動力源とし、変速機を2段の切換可能な構成とし、電動モータの出力軸と同軸上に第1シャフトを設け、第1シャフトに平行に第2シャフトを設け、第1シャフトを外側回転軸と内側回転軸とで形成し、その内側回転軸と第2シャフトとの間に第1減速ギヤ列を設け、外側回転軸と第2シャフトとの間に第2減速ギヤ列を設け、第1変速切換アクチュエータの作動により出力軸と内側回転軸を締結する第1摩擦クラッチと、第2変速切換アクチュエータの作動により出力軸と外側回転軸とを締結する第2摩擦クラッチを設けて、変速段の切り換えを行ようにしている。
【0004】
また、特許文献3、4に記載の装置では、電動モータを動力源とし、変速機を2段の切換可能な構成とし、電動モータによって回転駆動される第1シャフトと第2シャフトとの間に第1減速ギヤ列と第2減速ギヤ列を設け、第1減速ギヤ列の第1出力ギヤと第2シャフトとの間および第2減速ギヤ列の第2出力ギヤと第2シャフトとの間のそれぞれに2ウェイローラクラッチを組込み、2ウェイローラクラッチの係合および解除を変速比切換機構により制御することで、変速段の切り換えを行うようにしている。
【0005】
さらに、特許文献5に記載の装置では、モータを動力源とし、減速機を2段の切換可能な構成とし、電動機(40)の出力軸と中空軸(100)とを接続する切換(96)と、電動機(40)の出力軸の回転動力を第1ギヤセット(82)介して減速して出力する第2ギヤセット(86)と中空軸(100)とを接続する切換(94)とを有するシフトクラッチ切換部(78)を制御することで、変速段の切り換えを行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−89632号公報
【特許文献2】特開2011−33071号公報
【特許文献3】特開2011−58534号公報
【特許文献4】特開2011−57030号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0211824号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下の分析は、本願発明者により与えられる。
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に記載の装置では、動力源が電動モータ1つのみであるため、変速時の第1摩擦クラッチと第2摩擦クラッチとの切り換えの際に動力の断接が必要となり、断状態となったときにトルク抜けが発生(車両が空走状態)し、ドライバビリティが悪い。
【0009】
また、特許文献3、4に記載の装置では、動力源が電動モータ1つのみであるため、変速時に2ウェイローラクラッチの保持器の回転を制御する際に動力の断接が必要となり、断状態となったときにトルク抜けが発生(車両として空走状態)し、ドライバビリティが悪い。
【0010】
さらに、特許文献5に記載の装置では、動力源がモータ1つのみであるため、変速時にシフトクラッチ切替部で動力の断接が必要となり、断状態となったときにトルク抜けが発生(車両として空走状態)し、ドライバビリティが悪い。
【0011】
本発明の主な課題は、変速時のトルク抜けをなくしてドライバビリティを向上させることができる車両駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一視点においては、車両駆動装置において、回転動力を出力する第1モータジェネレータと、前記第1モータジェネレータから出力された回転動力を変速して出力するとともに変速比の切り換えが可能な変速機と、前記変速機から出力された回転動力により2つの車輪を差動可能に駆動する差動装置と、前記変速機を介して前記差動装置に向けて回転動力を出力する第2モータジェネレータと、を備え、前記変速機は、前記第1モータジェネレータから出力された回転動力の変速比を切り換えているときに、前記第2モータジェネレータから出力された回転動力を前記差動装置に伝達するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、変速時の第2モータジェネレータの駆動力によりトルク抜けが防止され、ドライバビリティを向上させることができ、加速時の第2モータジェネレータの駆動アシストにより、燃費(効率)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係る車両駆動装置の構成を模式的に示したブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【図3】本発明の実施例1に係る車両駆動装置の変速時の第1モータジェネレータ及び第2モータジェネレータ並びに車輪の回転数の変化を模式的に示したタイムチャート図である。
【図4】本発明の実施例1に係る車両駆動装置の加速アシスト時の第1モータジェネレータ及び第2モータジェネレータの出力トルクを決定する過程を説明するための模式図である。
【図5】本発明の実施例1に係る車両駆動装置の各走行パターンの動作状態を模式的に示した表である。
【図6】本発明の実施例2に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【図7】本発明の実施例2に係る車両駆動装置の各走行パターンの動作状態を模式的に示した表である。
【図8】本発明の実施例3に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【図9】本発明の実施例3に係る車両駆動装置の各走行パターンの動作状態を模式的に示した表である。
【図10】本発明の実施例4に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【図11】本発明の実施例5に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【図12】本発明の実施例6に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【図13】本発明の実施例7に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【図14】本発明の実施例8に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【図15】本発明の実施例9に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る車両駆動装置では、回転動力を出力する第1モータジェネレータ(図2の2)と、前記第1モータジェネレータから出力された回転動力を変速して出力するとともに変速比の切り換えが可能な変速機(図2の4)と、前記変速機から出力された回転動力により2つの車輪(図2の6a、6b)を差動可能に駆動する差動装置(図2の5)と、前記変速機を介して前記差動装置に向けて回転動力を出力する第2モータジェネレータ(図2の3)と、を備え、前記変速機は、前記第1モータジェネレータから出力された回転動力の変速比を切り換えているときに、前記第2モータジェネレータから出力された回転動力を前記差動装置に伝達するように構成されている。
【0016】
本発明の前記車両駆動装置において、前記変速機は、前記第1モータジェネレータから出力された回転動力を変速して出力しているときに、前記第2モータジェネレータから出力された回転動力を前記差動装置に伝達するように構成されていることが好ましい。
【0017】
本発明の前記車両駆動装置において、前記変速機は、前記第2モータジェネレータから前記差動装置までの動力伝達経路において前記第2モータジェネレータから出力された回転動力を伝達する状態と伝達しない状態に切り換えることが可能な切換機構を備えることが好ましい。
【0018】
本発明の前記車両駆動装置において、前記変速機は、前記第2モータジェネレータから前記差動装置までの動力伝達経路において前記第2モータジェネレータから出力された回転動力を一方向の回転のみ許容するワンウェイクラッチを備えることが好ましい。
【0019】
本発明の前記車両駆動装置において、前記変速機は、前記第2モータジェネレータから出力された回転動力を前記差動装置に常時伝達するように構成されることが好ましい。
【0020】
本発明の前記車両駆動装置において、前記第2モータジェネレータは、誘導モータであることが好ましい。
【0021】
本発明の前記車両駆動装置において、前記変速機は、前記第1モータジェネレータから出力された回転動力が入力される第1シャフトと、前記第1シャフトに対して平行に配されるとともに前記差動装置に向けて回転動力を出力する第2シャフトと、前記第1シャフトから前記第2シャフトに伝達される回転動力の変速比を切り換える他の切換機構と、前記第1シャフトに対して平行に配されるとともに、前記第2モータジェネレータから出力された回転動力が入力され、かつ、前記第2シャフト又は前記差動装置に向けて回転動力を出力する第3シャフトと、を備えることが好ましい。
【0022】
本発明の前記車両駆動装置において、前記第3シャフトは、前記第1シャフトと同軸に配されるとともに、前記第2シャフトに向けて回転動力を出力することが好ましい。
【0023】
本発明の前記車両駆動装置において、前記第3シャフトは、前記第2シャフトと同軸に配されるとともに、前記第2シャフトに向けて回転動力を出力することが好ましい。
【0024】
本発明の前記車両駆動装置において、前記第1シャフト、及び、前記第1モータジェネレータの出力軸は、中空軸であり、前記差動装置から片側の前記車輪に回転動力を伝達する車軸は、前記中空軸の内側に挿通されていることが好ましい。
【0025】
本発明の前記車両駆動装置において、前記第1シャフトに対して平行に配されるとともに前記第2シャフトに向けて回転動力を出力する第4シャフトを備え、前記第3シャフトは、前記第4シャフトと同軸に配されるとともに前記第4シャフトを介して前記第2シャフトに向けて回転動力を出力することが好ましい。
【0026】
本発明の前記車両駆動装置において、前記第1シャフトに対して平行に配されるとともに前記差動装置に向けて回転動力を出力する第4シャフトを備え、前記第3シャフトは、前記第4シャフトと同軸に配されるとともに前記第4シャフトを介して前記差動装置に向けて回転動力を出力することが好ましい。
【0027】
なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0028】
本発明の実施例1に係る車両駆動装置について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1に係る車両駆動装置の構成を模式的に示したブロック図である。
【0029】
図1を参照すると、車両駆動装置1は、車両を駆動する装置である。車両駆動装置1は、2つの動力源(モータジェネレータ2、3)を有する電気自動車に搭載される。車両駆動装置1は、第1モータジェネレータ2を主動力源として変速段を切り換えるときに発生するトルク抜けを防止するために、変速段の切り換え時に作動する第2モータジェネレータ3を副動力源として搭載している。車両駆動装置1は、主な構成部として、第1モータジェネレータ2と、第2モータジェネレータ3と、変速機4と、差動装置5と、車輪6a、6bと、第1インバータ7と、第2インバータ8と、バッテリ9と、変速機制御装置10と、第1モータジェネレータ制御装置11と、第2モータジェネレータ制御装置12と、バッテリ制御装置13と、メイン制御装置14と、センサ16と、を有する。
【0030】
第1モータジェネレータ2は、電動機として駆動するとともに発電機としても駆動する同期発電電動機(誘導型でも可)である。第1モータジェネレータ2の回転動力は、変速機4に伝達される。第1モータジェネレータ2は、第1インバータ7(昇降圧コンバータを含む)を介してバッテリ9と電力のやり取りを行なう。第1モータジェネレータ2は、第1インバータ7を介して第1モータジェネレータ制御装置11と電気的に接続されており、第1モータジェネレータ制御装置11によって動作(駆動、発電、回生等)が制御される。第1モータジェネレータ2は、変速機4からの回転動力を用いて回生してバッテリ9を充電したり、バッテリ9からの電力を用いて回転動力を変速機4に出力できる。なお、第1モータジェネレータ2と変速機4との関係については、後述する。
【0031】
第2モータジェネレータ3は、電動機として駆動するとともに発電機としても駆動する同期発電電動機(誘導型でも可)である。第2モータジェネレータ3は、第1モータジェネレータ2よりも出力が小さいものを用いることができる。第2モータジェネレータ3の回転動力は、変速機4を介して差動装置5に伝達される。第2モータジェネレータ3は、第2インバータ8(昇降圧コンバータを含む)を介してバッテリ9と電力のやり取りを行なう。第2モータジェネレータ3は、第2インバータ8を介して第2モータジェネレータ制御装置12と電気的に接続されており、第2モータジェネレータ制御装置12によって動作(駆動、発電、回生等)が制御される。第2モータジェネレータ3は、変速機4からの回転動力を用いて回生してバッテリ9を充電したり、バッテリ9からの電力を用いて回転動力を変速機4に出力できる。なお、第2モータジェネレータ3と変速機4との関係については、後述する。
【0032】
変速機4は、モータジェネレータ2、3のいずれかから出力された回転動力を変速して差動装置5に伝達する機構である。変速機4は、変速比の切換が可能な構成となっている。変速機4は、モータジェネレータ2、3のいずれかから出力された回転動力が歯車機構(2軸歯車機構)に入力され、歯車機構で変速されて差動装置5に出力される。変速機4は、変速段の切換が可能な構成となっており、歯車機構における所定の回転要素間の断接状態を切り換える切換機構を有し、当該切換機構を操作するアクチュエータ(図2の24、33に相当)を有する。変速機4は、所定の回転要素の回転速度を検出するセンサ(図示せず)を有する。変速機4は、アクチュエータ及びセンサが変速機制御装置10に電気的に接続されており、変速機制御装置10によってアクチュエータの動作が制御される。なお、変速機4の詳細な構成については、後述する。
【0033】
差動装置5は、変速機4からの回転動力により車輪6a、6bを差動可能に駆動する装置である。なお、差動装置5の詳細な構成については、後述する。
【0034】
車輪6aは、車両の左右の一方に配された車輪であり、差動装置5からの回転動力が伝達される。車輪6bは、車両の左右の他方に配された車輪であり、差動装置5からの回転動力が伝達される。
【0035】
第1インバータ7は、第1モータジェネレータ制御装置11からの制御信号に応じて、第1モータジェネレータ2の動作(駆動、発電、回生等)を制御する装置である。第1インバータ7は、第1モータジェネレータ制御装置11、第1モータジェネレータ2、及びバッテリ9と電気的に接続されている。第1インバータ7は、バッテリ9からの電圧を昇圧して第1モータジェネレータ2に供給可能であり、第1モータジェネレータ2で発電又は回生された電圧を降圧してバッテリ9に供給可能である。
【0036】
第2インバータ8は、第2モータジェネレータ制御装置12からの制御信号に応じて、第2モータジェネレータ3の動作(駆動、発電、回生等)を制御する装置である。第2インバータ8は、第2モータジェネレータ制御装置12、第2モータジェネレータ3、及びバッテリ9と電気的に接続されている。第2インバータ8は、バッテリ9からの電圧を昇圧して第2モータジェネレータ3に供給可能であり、第2モータジェネレータ3で発電又は回生された電圧を降圧してバッテリ9に供給可能である。
【0037】
バッテリ9は、放電及び蓄電可能な2次電池である。バッテリ9は、第1インバータ7、第2インバータ8、及びバッテリ制御装置13と電気的に接続されている。バッテリ9は、第1インバータ7及び第2インバータ8に対して電力を供給することが可能であり、第1インバータ7及び第2インバータ8からの電力によって蓄電することが可能である。バッテリ9は、バッテリ制御装置13によって蓄電された電力が監視されている。
【0038】
変速機制御装置10は、変速機4におけるアクチュエータ(図2の24、33)の動作を制御するコンピュータ(電子制御装置)である。変速機制御装置10は、アクチュエータ(図2の24、33)、各種センサ(図示せず;例えば、回転センサ等)、及びメイン制御装置14と電気的に接続されている。変速機制御装置10は、メイン制御装置14からの制御信号に応じて、所定のプログラム(データベース、マップ等を含む)に基づいて制御処理を行う。
【0039】
第1モータジェネレータ制御装置11は、第1インバータ7を介して第1モータジェネレータ2の動作を制御するコンピュータ(電子制御装置)である。第1モータジェネレータ制御装置11は、第1インバータ7、各種センサ(図示せず;例えば、回転センサ等)、及びメイン制御装置14と電気的に接続されている。第1モータジェネレータ制御装置11は、メイン制御装置14からの制御信号に応じて、所定のプログラム(データベース、マップ等を含む)に基づいて制御処理を行う。
【0040】
第2モータジェネレータ制御装置12は、第2インバータ8を介して第2モータジェネレータ3の動作を制御するコンピュータ(電子制御装置)である。第2モータジェネレータ制御装置12は、第2インバータ8、各種センサ(図示せず;例えば、回転センサ等)、及びメイン制御装置14と電気的に接続されている。第2モータジェネレータ制御装置12は、メイン制御装置14からの制御信号に応じて、所定のプログラム(データベース、マップ等を含む)に基づいて制御処理を行う。
【0041】
バッテリ制御装置13は、バッテリ9を制御するコンピュータ(電子制御装置)である。バッテリ制御装置13は、バッテリ9及びメイン制御装置14と電気的に接続されている。バッテリ制御装置13は、バッテリ9で蓄電された電力を監視しており、検出された電力に関する情報をメイン制御装置14に対して提供する。
【0042】
メイン制御装置14は、変速機制御装置10、第1モータジェネレータ制御装置11、第2モータジェネレータ制御装置12、及びバッテリ制御装置13を介して第1モータジェネレータ2、第2モータジェネレータ3、変速機4、及びバッテリ9の動作を制御するコンピュータ(電子制御装置)である。メイン制御装置14は、各種センサ16(車速、アクセル関度、ブレーキ信号、車輪回転数、シフトポジション等)からの入力信号(車両の所定の状態)に応じて、所定のプログラム(データベース、マップ等を含む)に基づいて制御処理を行う。メイン制御装置14は、各種センサ16からの入力信号に基づいて、走行パターン(図5参照)を決定し、決定した走行パターンに応じて、変速機制御装置10、第1モータジェネレータ制御装置11、第2モータジェネレータ制御装置12、及びバッテリ制御装置13に対して制御信号を出力する。
【0043】
センサ16は、車両の所定の状態を検出する装置である。センサ16には、例えば、車速、アクセル開度、ブレーキ信号、車輪回転数、シフトポジション等の車両の所定の状態を検出するセンサを用いることができる。
【0044】
次に、本発明の実施例1に係る車両駆動装置における変速機の構成の詳細について図面を用いて説明する。図2は、本発明の実施例1に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【0045】
車両駆動装置(図1の2)の駆動系では、第1モータジェネレータ2から車輪6a、6bまでに平行3軸構造のギヤユニットを有する構造となっており、第1軸目で第1モータジェネレータ2の回転動力が入力され、第3軸目で車輪6a、6bに向けて回転動力が出力される。車両駆動装置(図1の2)の駆動系では、2つのモータジェネレータ2、3と、変速機4と、差動装置5と、車輪6a、6bとを有する。
【0046】
第1モータジェネレータ2は、固定子となるステータ2cと、ステータ2cの内側に配されたロータ2bと、ロータ2bと一体に回転する出力軸2aと、を有する。出力軸2aは、変速機4の第1シャフト20に連結されており、第1シャフト20と一体に回転する。第1モータジェネレータ2のケース部分は、変速機4のハウジング34に固定されている。第1モータジェネレータ2は、第1インバータ(図1の7)を介して第1モータジェネレータ制御装置(図1の11)と電気的に接続されている。
【0047】
第2モータジェネレータ3は、固定子となるステータ3cと、ステータ3cの内側に配されたロータ3bと、ロータ3bと一体に回転する出力軸3aと、を有する。出力軸3aは、変速機4の第3シャフト30に連結されており、第3シャフト30と一体に回転する。第2モータジェネレータ3のケース部分は、変速機4のハウジング34に固定されている。第2モータジェネレータ3は、第2インバータ(図1の8)を介して第2モータジェネレータ制御装置(図1の12)と電気的に接続されている。
【0048】
変速機4は、第1シャフト20と、ドライブギヤ21と、ドライブギヤ22と、切換機構23と、アクチュエータ24と、第2シャフト25と、ドリブンギヤ26と、ドリブンギヤ27と、ドリブンギヤ28と、ドライブギヤ29と、第3シャフト30と、ドライブギヤ31と、切換機構32と、アクチュエータ33と、ハウジング34と、を有する。
【0049】
第1シャフト20は、第1モータジェネレータ2の出力軸2aの回転動力を入力するためのシャフトである。第1シャフト20は、回転可能にハウジング34に支持されている。第1シャフト20は、第1モータジェネレータ2の出力軸2aと連結されており、出力軸2aと一体に回転する。第1シャフト20は、ドライブギヤ21及びドライブギヤ22を回転可能に支持する。第1シャフト20の回転動力は、切換機構23の選択によりドライブギヤ21又はドライブギヤ22に伝達される。第1シャフト20は、第3シャフト30と同軸に配されており、第3シャフト30とは連結されていない。
【0050】
ドライブギヤ21は、ドリブンギヤ26を回転駆動するためのギヤである。ドライブギヤ21は、回転可能に第1シャフト20に支持されている。ドライブギヤ21は、切換機構23の選択により第1シャフト20と連結可能である。ドライブギヤ21は、ドリブンギヤ26と噛合っている。ドライブギヤ21は、ドライブギヤ22よりも径が小さく、変速段がLO側のドライブギヤとなる。
【0051】
ドライブギヤ22は、ドリブンギヤ27を回転駆動するためのギヤである。ドライブギヤ22は、回転可能に第1シャフト20に支持されている。ドライブギヤ22は、切換機構23の選択により第1シャフト20と連結可能である。ドライブギヤ22は、ドリブンギヤ27と噛合っている。ドライブギヤ22は、ドライブギヤ21よりも径が大きく、変速段がHI側のドライブギヤとなる。
【0052】
切換機構23は、第1シャフト20とドライブギヤ21又はドライブギヤ22との連結を切り換えるための機構である。切換機構23の切換操作は、アクチュエータ24によって行われる。
【0053】
アクチュエータ24は、切換機構23を操作する装置である。アクチュエータ24は、変速機制御装置(図1の10)に電気的に接続されており、変速機制御装置(図1の10)によって動作が制御される。
【0054】
第2シャフト25は、第1シャフト20と平行に配されたシャフトである。第2シャフト25は、回転可能にハウジング34に支持されている。第2シャフト25は、ドリブンギヤ26、ドリブンギヤ27、ドリブンギヤ28、及び、ドライブギヤ29と一体に回転する。
【0055】
ドリブンギヤ26は、ドライブギヤ21によって回転駆動されるギヤである。ドリブンギヤ26は、第2シャフト25と一体に回転する。ドリブンギヤ26は、ドライブギヤ21と噛合っている。ドリブンギヤ26は、ドリブンギヤ27よりも径が大きく、変速段がLO側のドリブンギヤとなる。
【0056】
ドリブンギヤ27は、ドライブギヤ22によって回転駆動されるギヤである。ドリブンギヤ27は、第2シャフト25と一体に回転する。ドリブンギヤ27は、ドライブギヤ22と噛合っている。ドリブンギヤ27は、ドリブンギヤ26よりも径が小さく、変速段がHI側のドリブンギヤとなる。
【0057】
ドリブンギヤ28は、ドライブギヤ31によって回転駆動されるギヤである。ドリブンギヤ28は、第2シャフト25と一体に回転する。ドリブンギヤ28は、ドライブギヤ31と噛合っている。ドリブンギヤ28は、変速時のトルク抜けを防止するために用いられ、加速アシスト時に用いられる。
【0058】
ドライブギヤ29は、差動装置5のリングギヤ5aを回転駆動するためのギヤである。ドライブギヤ29は、第2シャフト25と一体に回転する。ドライブギヤ29は、差動装置5のリングギヤ5aと噛合っている。
【0059】
第3シャフト30は、第2モータジェネレータ3の出力軸3aの回転動力を入力するためのシャフトである。第3シャフト30は、回転可能にハウジング34に支持されている。第3シャフト30は、第2モータジェネレータ3の出力軸3aと連結されており、出力軸3aと一体に回転する。第3シャフト30は、ドライブギヤ31を回転可能に支持する。第3シャフト30の回転動力は、切換機構32の選択によりドライブギヤ31に伝達される。第3シャフト30は、第1シャフト20と同軸に配されており、第1シャフト20とは連結されていない。
【0060】
ドライブギヤ31は、ドリブンギヤ28を回転駆動するためのギヤである。ドライブギヤ31は、回転可能に第3シャフト30に支持されている。ドライブギヤ31は、切換機構32の選択により第3シャフト30と連結可能である。ドライブギヤ31は、ドリブンギヤ28と噛合っている。
【0061】
切換機構32は、第3シャフト30とドライブギヤ31との連結を切り換えるための機構である。切換機構32の切換操作は、アクチュエータ33によって行われる。
【0062】
アクチュエータ33は、切換機構32を操作する装置である。アクチュエータ33は、変速機制御装置(図1の10)に電気的に接続されており、変速機制御装置(図1の10)によって動作が制御される。
【0063】
ハウジング34は、変速機4のギヤユニットを収納する。ハウジング34には、モータジェネレータ2、3が固定されている。ハウジング34は、差動装置5のギヤユニットも収納する。
【0064】
差動装置5は、変速機4のドライブギヤ29からの回転動力により車輪6a、6bを差動可能に駆動する。差動装置5は、ドライブギヤ29と噛合うリングギヤ5aを有する。差動装置5は、リングギヤ5aから入力された回転動力を差動可能に車軸5b、5cを介して車輪6a、6bに伝達する。
【0065】
以上のような車両駆動装置(図1の1)の駆動系では、第1モータジェネレータ2の出力軸2aの回転動力は、第1シャフト20、切換機構23、ドライブギヤ21又は22、ドリブンギヤ26又は27、第2シャフト25、ドライブギヤ29、及び、差動装置5を介して車輪6a、6bに伝達される。なお、高トルク要求時はLOギヤ(ドライブギヤ21、ドリブンギヤ26)が選択され、高回転数要求時はHIギヤ(ドライブギヤ22、ドリブンギヤ27)が選択される。また、第1モータジェネレータ2はHI/LOギヤ効率が良くなる点で動かす。
【0066】
また、第2モータジェネレータ3の出力軸3aの回転動力は、第3シャフト30、切換機構32、ドライブギヤ31、ドリブンギヤ28、第2シャフト25、ドライブギヤ29、及び、差動装置5を介して車輪6a、6bに伝達される。変速時のトルク抜けを防止するときは第2モータジェネレータ3の回転動力を使用する。また、加速アシスト時は第1モータジェネレータ2の回転動力と第2モータジェネレータ3の回転動力とが平行3軸構造の第2軸目の第2シャフト25で合流する。
【0067】
次に、本発明の実施例1に係る車両駆動装置の動作について図面を用いて説明する。図3は、本発明の実施例1に係る車両駆動装置の変速時の第1モータジェネレータ及び第2モータジェネレータ並びに車輪の回転数の変化を模式的に示したタイムチャート図である。図4は、本発明の実施例1に係る車両駆動装置の加速アシスト時の第1モータジェネレータ及び第2モータジェネレータの出力トルクを決定する過程を説明するための模式図である。図5は、本発明の実施例1に係る車両駆動装置の各走行パターンの動作状態を模式的に示した表である。
【0068】
[トルク抜け防止機能]
まず、変速時のトルク抜け防止機能について説明する。図3を参照すると、変速中の第1モータジェネレータ(MG1;図2の2)のOFFによるトルク抜けによる車輪回転数の減少(T1−T2間の比較例に係る車輪回転数参照)を防ぐために、第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)のトルクにより車輪回転数を落さず(回転数上昇又は維持;T1−T2間の実施例1に係る車輪回転数参照)滑らかに変速することにより、ドライバビリティが向上する。
【0069】
[加速アシスト機能]
図4を参照すると、要求モータトルクに対し、第1モータジェネレータ(MG1;図2の2)を単独で動かすか、第1モータジェネレータ(MG1;図2の2)と第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)の両方を動かすかを決定する。MG1単独で動かすときよりMG1とMG2の両方を動かすときの方が燃費(効率)がよくなる時のみ、MG2でアシス卜するようにする。なお、MGはHI/LOギヤの効率が良くなる点で動かす。
【0070】
[走行パターン]
図5を参照すると、走行パターン1では、車速が加速・定常時の低速域(停止からV1の間)において、第1モータジェネレータ(MG1;図2の2)をON(力行)とし、切換機構(図2の23)でLO側(図2の第1シャフト20とドライブギヤ21とを連結)を選択し、第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)をOFFとし、切換機構(図2の32)でOFF(断)とする。なお、加速アシストが必要なときは、MG2及び断接状態をON(力行・接)とする。
【0071】
走行パターン2では、加速・定常時の変速時において、第1モータジェネレータ(MG1;図2の2)をOFFとし、切換機構(図2の23)を切換中(ニュートラル)とし、第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)をON(力行)とし、切換機構(図2の32)をON(接)とする。
【0072】
走行パターン3では、車速が加速・定常時の高速域(V1からV2の間)において、第1モータジェネレータ(MG1;図2の2)をON(力行)とし、切換機構(図2の23)でHI側(図2の第1シャフト20とドライブギヤ22とを連結)を選択し、第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)をOFFとし、切換機構(図2の32)でOFF(断)とする。なお、加速アシストが必要なときは、MG2及び断接状態をON(力行・接)とする。
【0073】
走行パターン4では、車速が減速時の高速域(V2からV1´の間)において、第1モータジェネレータ(MG1;図2の2)をON(回生)とし、切換機構(図2の23)でHI側(図2の第1シャフト20とドライブギヤ22とを連結)を選択し、第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)をON(回生)とし、切換機構(図2の32)でON(接)とする。
【0074】
走行パターン5では、減速時の変速時において、第1モータジェネレータ(MG1;図2の2)をOFFとし、切換機構(図2の23)を切換中(ニュートラル)とし、第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)をON(回生)とし、切換機構(図2の32)をON(接)とする。
【0075】
走行パターン6では、車速が減速時の低速域(V1´から停止の間)において、第1モータジェネレータ(MG1;図2の2)をON(回生)とし、切換機構(図2の23)でLO側(図2の第1シャフト20とドライブギヤ21とを連結)を選択し、第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)をON(回生)とし、切換機構(図2の32)でON(接)とする。
【0076】
なお、走行パターン1、3では、第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)がOFFとなっているが、切換機構(図2の32)でOFF(断)としているので、MG2による引き摺りが発生しない。
【0077】
実施例1によれば、変速時の第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)の駆動力によりトルク抜けが防止され、ドライバビリティを向上させることができる。変速時にLOギヤ/HIギヤの両方の噛合いが一時なくなるため(HIギヤとLOギヤが両方噛合うとブレーキとなる)、第1モータジェネレータ(MG1;図2の2)しか動力源がないと、トルク伝達が無くなり、トルク抜けが発生するが、第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)により、変速時のトルクを補うことで、トルク抜けを無くすことができ、ドライバビリティを向上させることができる。
【0078】
また、実施例1によれば、加速時の第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)の駆動アシストにより、燃費(効率)を向上させることができる。第1モータジェネレータ(MG1;図2の2)しか動力源がないと、効率が悪い点(領域)で駆動してしまい燃費悪化となるが、MG1の効率が悪い点で駆動している時に、MG2を駆動させることで、MG1をよりよい効率で駆動させることができ、燃費(効率)を向上させることができる。
【0079】
さらに、実施例1によれば、変速機4において第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)の回転動力を切り離し可能にする切換機構(図2の32)を設けることで、MG2がOFFのときの引き摺りをなくすことができ、アシスト駆動及び回生による燃費を向上させることができる。
【実施例2】
【0080】
本発明の実施例2に係る車両駆動装置について図面を用いて説明する。図6は、本発明の実施例2に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。図7は、本発明の実施例2に係る車両駆動装置の各走行パターンの動作状態を模式的に示した表である。
【0081】
実施例2は、実施例1の変形例であり、変速機4において第2モータジェネレータ3の回転動力を切り離し可能にする切換機構(図2の32)を用いるのをやめ、その代わりにワンウェイクラッチ36を用いたものである。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0082】
ワンウェイクラッチ36は、第3シャフト30に対してドライブギヤ31を一方向の回転のみ許容するクラッチである。ワンウェイクラッチ36は、第2モータジェネレータ3を駆動した前進アシスト時に第3シャフト30の回転動力をドライブギヤ31に伝達し、第2モータジェネレータ3で回生した前進回生時にドライブギヤ31の回転動力を第3シャフト30に伝達する。ワンウェイクラッチ36は、前進時で第2モータジェネレータ3がOFFのときにドライブギヤ31と第3シャフト30との間の動力の伝達を行わず、第2モータジェネレータ3が不要な時の第2モータジェネレータ3の引き摺りをなくすことが可能となる。
【0083】
以上のような構成の車両駆動装置は、以下のように動作する。
【0084】
図7を参照すると、走行パターン1では、車速が加速時の低速域(停止からV1の間)において、第1モータジェネレータ(MG1;図6の2)をON(力行)とし、切換機構(図6の23)でLO側(図6の第1シャフト20とドライブギヤ21とを連結)を選択し、第2モータジェネレータ(MG2;図6の3)をOFFとし、ワンウェイクラッチ(図6の36)が自動的にOFF(断)となる。なお、加速アシストが必要なときは、MG2をON(力行)とし、ワンウェイクラッチ(図6の36)が自動的にON(接)となる。
【0085】
走行パターン2では、加速時の変速時において、第1モータジェネレータ(MG1;図6の2)をOFFとし、切換機構(図6の23)を切換中(ニュートラル)とし、第2モータジェネレータ(MG2;図6の3)をON(力行)とし、ワンウェイクラッチ(図6の36)が自動的にON(接)となる。
【0086】
走行パターン3では、車速が加速時の高速域(V1からV2の間)において、第1モータジェネレータ(MG1;図6の2)をON(力行)とし、切換機構(図6の23)でHI側(図6の第1シャフト20とドライブギヤ22とを連結)を選択し、第2モータジェネレータ(MG2;図6の3)をOFFとし、ワンウェイクラッチ(図6の36)が自動的にOFF(断)となる。なお、加速アシストが必要なときは、MG2をON(力行)とし、ワンウェイクラッチ(図6の36)が自動的にON(接)となる。
【0087】
走行パターン4では、車速が減速時の高速域(V2からV1´の間)において、第1モータジェネレータ(MG1;図6の2)をON(回生)とし、切換機構(図6の23)でHI側(図6の第1シャフト20とドライブギヤ22とを連結)を選択し、第2モータジェネレータ(MG2;図6の3)をOFFとし、ワンウェイクラッチ(図6の36)が自動的にOFF(断)となる。
【0088】
走行パターン5では、減速時の変速時において、第1モータジェネレータ(MG1;図6の2)をOFFとし、切換機構(図6の23)を切換中(ニュートラル)とし、第2モータジェネレータ(MG2;図6の3)をON(回生)とし、ワンウェイクラッチ(図6の36)が自動的にON(接)となる。
【0089】
走行パターン6では、車速が減速時の低速域(V1´から停止の間)において、第1モータジェネレータ(MG1;図6の2)をON(回生)とし、切換機構(図6の23)でLO側(図6の第1シャフト20とドライブギヤ21とを連結)を選択し、第2モータジェネレータ(MG2;図6の3)をOFFとし、ワンウェイクラッチ(図6の36)が自動的にOFF(断)となる。
【0090】
なお、走行パターン1、3、4、6では、第2モータジェネレータ(MG2;図6の3)がOFFとなっているが、ワンウェイクラッチ(図6の36)が自動的にOFF(断)となるので、MG2による引き摺りが発生しない。
【0091】
実施例2によれば、実施例1と同様に、変速時の第2モータジェネレータ(MG2;図6の3)の駆動力によりトルク抜けが防止され、ドライバビリティを向上させることができ、加速時の第2モータジェネレータ(MG2;図6の3)の駆動アシストにより、燃費(効率)を向上させることができる。また、実施例2によれば、変速機4において第2モータジェネレータ(MG2;図6の3)の回転動力を切り離し可能にするワンウェイクラッチ(図6の36)を設けることで、MG2がOFFのときの引き摺りをなくすことができ、アシスト駆動及び回生による燃費を向上させることができる。
【実施例3】
【0092】
本発明の実施例3に係る車両駆動装置について図面を用いて説明する。図8は、本発明の実施例3に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。図9は、本発明の実施例3に係る車両駆動装置の各走行パターンの動作状態を模式的に示した表である。
【0093】
実施例3は、実施例1の変形例であり、第2モータジェネレータ(図2の3)の代わりに誘導モータ15を用い、変速機4において切換機構(図2の32)を用いるのをやめて、ドライブギヤ31を第3シャフト30と一体回転するようにしたものである。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0094】
誘導モータ15は、ステータ15c(固定子)の作る回転磁界により、電気伝導体のロータ15b(回転子)に誘導電流が発生し、滑りに対応した回転トルクが発生するモータである。誘導モータ15は、ロータ15bと一体に回転する出力軸15aと、を有する。出力軸15aは、変速機4の第3シャフト30に連結されており、第3シャフト30と一体に回転する。誘導モータ15のケース部分は、変速機4のハウジング34に固定されている。誘導モータ15は、第2インバータ(図1の8)を介して第2モータジェネレータ制御装置(図1の12)と電気的に接続されている。
【0095】
以上のような構成の車両駆動装置は、以下のように動作する。
【0096】
図9を参照すると、走行パターン1では、車速が加速時の低速域(停止からV1の間)において、第1モータジェネレータ(MG1;図8の2)をON(力行)とし、切換機構(図8の23)でLO側(図8の第1シャフト20とドライブギヤ21とを連結)を選択し、誘導モータ(IM;図8の15)をOFFとする。なお、加速アシストが必要なときは、IMをON(力行)とする。
【0097】
走行パターン2では、加速時の変速時において、第1モータジェネレータ(MG1;図8の2)をOFFとし、切換機構(図8の23)を切換中(ニュートラル)とし、誘導モータ(IM;図8の15)をON(力行)とする。
【0098】
走行パターン3では、車速が加速時の高速域(V1からV2の間)において、第1モータジェネレータ(MG1;図8の2)をON(力行)とし、切換機構(図8の23)でHI側(図8の第1シャフト20とドライブギヤ22とを連結)を選択し、誘導モータ(IM;図8の15)をOFFとする。なお、加速アシストが必要なときは、IMをON(力行)とする。
【0099】
走行パターン4では、車速が減速時の高速域(V2からV1´の間)において、第1モータジェネレータ(MG1;図8の2)をON(回生)とし、切換機構(図8の23)でHI側(図8の第1シャフト20とドライブギヤ22とを連結)を選択し、誘導モータ(IM;図8の15)をON(回生)とする。
【0100】
走行パターン5では、減速時の変速時において、第1モータジェネレータ(MG1;図8の2)をOFFとし、切換機構(図8の23)を切換中(ニュートラル)とし、誘導モータ(IM;図8の15)をON(回生)とする。
【0101】
走行パターン6では、車速が減速時の低速域(V1´から停止の間)において、第1モータジェネレータ(MG1;図8の2)をON(回生)とし、切換機構(図8の23)でLO側(図8の第1シャフト20とドライブギヤ21とを連結)を選択し、誘導モータ(IM;図8の15)をON(回生)とする。
【0102】
なお、走行パターン1、3では、誘導モータ(IM;図8の15)がOFFとなっているが、誘導モータを用いているため引き摺りが発生しない。
【0103】
実施例3によれば、実施例1と同様に、変速時のトルク抜けが防止され、ドライバビリティを向上させることができ、加速時の誘導モータ(IM;図8の15)の駆動アシストにより、燃費(効率)を向上させることができる。また、実施例3によれば、第2モータジェネレータ(MG2;図2の3)の代わりに誘導モータ(IM;図8の15)を用いることで、変速機4においてIMの回転動力を切り離す機構を設けなくても、IMがOFFのときの引き摺りをなくすことができ、アシスト駆動及び回生による燃費を向上させることができる。
【実施例4】
【0104】
本発明の実施例4に係る車両駆動装置について図面を用いて説明する。図10は、本発明の実施例4に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【0105】
実施例4は、実施例1の変形例であり、第2モータジェネレータ3の出力軸3aと連結される第3シャフト30を、第1シャフト20と同軸に配置するのをやめ、第2シャフト25と同軸かつ第2シャフト25の右側に配置し、第3シャフト30と第2シャフト25とを切換機構32により連結可能にしたものである。これに伴い、実施例1におけるドライブギヤ(図2の31)及びドリブンギヤ(図2の28)を廃止した。その他の構成・動作は、実施例1と同様である。また、実施例4は、実施例2、3のように変形することも可能である。
【0106】
実施例4によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、実施例1におけるドライブギヤ(図2の31)及びドリブンギヤ(図2の28)を廃止したことにより変速機4の構成がシンプルになり、実施例1よりもコストを低減させることができる。
【実施例5】
【0107】
本発明の実施例5に係る車両駆動装置について図面を用いて説明する。図11は、本発明の実施例5に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【0108】
実施例5は、実施例1の変形例であり、第2モータジェネレータ3の出力軸3aと連結される第3シャフト30を、第1シャフト20と同軸に配置するのをやめ、第2シャフト25と同軸かつ第2シャフト25の左側に配置し、第3シャフト30と第2シャフト25とを切換機構32により連結可能にしたものである。これに伴い、実施例1におけるドライブギヤ(図2の31)及びドリブンギヤ(図2の28)を廃止した。その他の構成・動作は、実施例1と同様である。また、実施例5は、実施例2、3のように変形することも可能である。
【0109】
実施例5によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、実施例1におけるドライブギヤ(図2の31)及びドリブンギヤ(図2の28)を廃止したことにより変速機4の構成がシンプルになり、実施例1よりもコストを低減させることができる。
【実施例6】
【0110】
本発明の実施例6に係る車両駆動装置について図面を用いて説明する。図12は、本発明の実施例6に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【0111】
実施例6は、実施例1の変形例であり、変速機4及び差動装置5の構成を3軸構成とするのをやめ、2軸構成とし、差動装置5の車軸5b、5cを変速機4の第1シャフト20と同軸に配し、中空の第1シャフト20及び出力軸2aの内側に車軸5bを挿通し、第2モータジェネレータ3の出力軸3aと連結される第3シャフト30を第2シャフト25と同軸かつ第2シャフト25の左側に配置し、第3シャフト30と第2シャフト25とを切換機構32により連結可能にしたものである。これに伴い、実施例1におけるドライブギヤ(図2の31)及びドリブンギヤ(図2の28)を廃止した。その他の構成・動作は、実施例1と同様である。また、実施例6は、実施例2、3のように変形することも可能である。
【0112】
実施例6によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、差動装置5の車軸5b、5cを変速機4の第1シャフト20と同軸に配し、中空の第1シャフト20及び出力軸2aの内側に車軸5bを挿通することで、変速機4及び差動装置5の構成を2軸構成とすることができ、変速機4及び差動装置5の構成を実施例1よりも小さくすることができる。
【実施例7】
【0113】
本発明の実施例7に係る車両駆動装置について図面を用いて説明する。図13は、本発明の実施例7に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【0114】
(構成)
実施例7は、実施例6の変形例であり、第2モータジェネレータ3の出力軸3aと連結される第3シャフト30を第2シャフト25と同軸かつ第2シャフト25の右側に配置し、第3シャフト30と第2シャフト25とを切換機構32により連結可能にしたものである。その他の構成は、実施例6と同様である。
【0115】
実施例7によれば、実施例6と同様な効果を奏する。
【実施例8】
【0116】
本発明の実施例8に係る車両駆動装置について図面を用いて説明する。図14は、本発明の実施例8に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【0117】
実施例8は、実施例6の変形例であり、第1シャフト20及び第2シャフト25に平行な第4シャフト38を追加し、ドリブンギヤ26(27、28でも可)と噛合うドライブギヤ39を追加し、ドライブギヤ39を第4シャフト38と一体回転するようにし、第2モータジェネレータ3の出力軸3aと連結される第3シャフト30を第4シャフト38と同軸かつ第4シャフト38の左側(右側でも可)に配置し、第3シャフト30と第4シャフト38とを切換機構32により連結可能にしたものである。その他の構成は、実施例6と同様である。
【0118】
実施例8によれば、実施例6(引用する実施例1)と同様に、変速時のトルク抜けが防止され、ドライバビリティを向上させることができ、加速時の第2モータジェネレータ3の駆動アシストにより、燃費(効率)を向上させることができる。
【実施例9】
【0119】
本発明の実施例9に係る車両駆動装置について図面を用いて説明する。図15は、本発明の実施例9に係る車両駆動装置の駆動系の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【0120】
実施例9は、実施例6の変形例であり、第1シャフト20及び第2シャフト25に平行な第4シャフト38を追加し、差動装置5のリングギヤ5a(ドライブギヤ21、22でも可)と噛合うドライブギヤ39を追加し、ドライブギヤ39を第4シャフト38と一体回転するようにし、第2モータジェネレータ3の出力軸3aと連結される第3シャフト30を第4シャフト38と同軸かつ第4シャフト38の右側(左側でも可)に配置し、第3シャフト30と第4シャフト38とを切換機構32により連結可能にしたものである。その他の構成は、実施例6と同様である。
【0121】
実施例9によれば、実施例6(引用する実施例1)と同様に、変速時のトルク抜けが防止され、ドライバビリティを向上させることができ、加速時の第2モータジェネレータ3の駆動アシストにより、燃費(効率)を向上させることができる。
【0122】
なお、本発明の全開示(請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0123】
1 車両駆動装置
2 第1モータジェネレータ
2a 出力軸
2b ロータ
2c ステータ
3 第2モータジェネレータ
3a 出力軸
3b ロータ
3c ステータ
4 変速機
5 差動装置
5a リングギヤ
5b、5c 車軸
6a、6b 車輪
7 第1インバータ
8 第2インバータ
9 バッテリ
10 変速機制御装置
11 第1モータジェネレータ制御装置
12 第2モータジェネレータ制御装置
13 バッテリ制御装置
14 メイン制御装置
15 誘導モータ
15a 出力軸
15b ロータ
15c ステータ
16 センサ
20 第1シャフト
21 ドライブギヤ
22 ドライブギヤ
23 切換機構
24 アクチュエータ
25 第2シャフト
26 ドリブンギヤ
27 ドリブンギヤ
28 ドリブンギヤ
29 ドライブギヤ
30 第3シャフト
31 ドライブギヤ
32 切換機構
33 アクチュエータ
34 ハウジング
36 ワンウェイクラッチ
38 第4シャフト
39 ドライブギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転動力を出力する第1モータジェネレータと、
前記第1モータジェネレータから出力された回転動力を変速して出力するとともに変速比の切り換えが可能な変速機と、
前記変速機から出力された回転動力により2つの車輪を差動可能に駆動する差動装置と、
前記変速機を介して前記差動装置に向けて回転動力を出力する第2モータジェネレータと、
を備え、
前記変速機は、前記第1モータジェネレータから出力された回転動力の変速比を切り換えているときに、前記第2モータジェネレータから出力された回転動力を前記差動装置に伝達するように構成されていることを特徴とする車両駆動装置。
【請求項2】
前記変速機は、前記第1モータジェネレータから出力された回転動力を変速して出力しているときに、前記第2モータジェネレータから出力された回転動力を前記差動装置に伝達するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両駆動装置。
【請求項3】
前記変速機は、前記第2モータジェネレータから前記差動装置までの動力伝達経路において前記第2モータジェネレータから出力された回転動力を伝達する状態と伝達しない状態に切り換えることが可能な切換機構を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の車両駆動装置。
【請求項4】
前記変速機は、前記第2モータジェネレータから前記差動装置までの動力伝達経路において前記第2モータジェネレータから出力された回転動力を一方向の回転のみ許容するワンウェイクラッチを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の車両駆動装置。
【請求項5】
前記変速機は、前記第2モータジェネレータから出力された回転動力を前記差動装置に常時伝達するように構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の車両駆動装置。
【請求項6】
前記第2モータジェネレータは、誘導モータであることを特徴とする請求項5記載の車両駆動装置。
【請求項7】
前記変速機は、
前記第1モータジェネレータから出力された回転動力が入力される第1シャフトと、
前記第1シャフトに対して平行に配されるとともに前記差動装置に向けて回転動力を出力する第2シャフトと、
前記第1シャフトから前記第2シャフトに伝達される回転動力の変速比を切り換える他の切換機構と、
前記第1シャフトに対して平行に配されるとともに、前記第2モータジェネレータから出力された回転動力が入力され、かつ、前記第2シャフト又は前記差動装置に向けて回転動力を出力する第3シャフトと、
を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の車両駆動装置。
【請求項8】
前記第3シャフトは、前記第1シャフトと同軸に配されるとともに、前記第2シャフトに向けて回転動力を出力することを特徴とする請求項7記載の車両駆動装置。
【請求項9】
前記第3シャフトは、前記第2シャフトと同軸に配されるとともに、前記第2シャフトに向けて回転動力を出力することを特徴とする請求項7記載の車両駆動装置。
【請求項10】
前記第1シャフト、及び、前記第1モータジェネレータの出力軸は、中空軸であり、
前記差動装置から片側の前記車輪に回転動力を伝達する車軸は、前記中空軸の内側に挿通されていることを特徴とする請求項7又は9記載の車両駆動装置。
【請求項11】
前記第1シャフトに対して平行に配されるとともに前記第2シャフトに向けて回転動力を出力する第4シャフトを備え、
前記第3シャフトは、前記第4シャフトと同軸に配されるとともに前記第4シャフトを介して前記第2シャフトに向けて回転動力を出力することを特徴とする請求項10記載の車両駆動装置。
【請求項12】
前記第1シャフトに対して平行に配されるとともに前記差動装置に向けて回転動力を出力する第4シャフトを備え、
前記第3シャフトは、前記第4シャフトと同軸に配されるとともに前記第4シャフトを介して前記差動装置に向けて回転動力を出力することを特徴とする請求項10記載の車両駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−108604(P2013−108604A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255997(P2011−255997)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】