説明

車椅子搭乗者用防寒着

【課題】車椅子使用者が着装しやすい全身の保温が可能な防寒着であり、着装が容易で安全な移動が可能で着装の負担を軽減できる車椅子使用者用防寒着を提供する。
【解決手段】マント構造2の前見頃部3の略中央部は、分離部6により分離された左右前見頃部4,5で構成されており、一方、マント構造2の後見頃部20の略中央部に於ける、当該首廻り縁部10とその近傍部26は、分離された構造は有さず、それ以下の部位Bからマント構造2の下端縁部10に向けて分離された左右後見頃部21,22で構成されている車椅子搭乗者用防寒着1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として歩行が困難で車椅子を使用する状態の人が着て好ましい防寒着に関するものである。
特に詳しくは、本発明に係る車椅子搭乗者用の防寒着は、当該防寒具の後身頃が、車椅子に搭乗している着用者の尻の下に挟み込まれないように形成された構成を有する処に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
処で、従来の車椅子使用者の防寒着の形状に関して特許検索を行うと、以下の特許文献1〜7が存在することが判明した。
即ち、特開平8−92805号公報(特許文献1)には、車椅子用の、防寒コート、レインコート等を提供する事によって、車椅子の着用者は一人でコートを着脱でき、コートを簡易に使用できることが開示されている。
当該特許文献1に開示されたコートの構成は、着用者の肩から臑部分までを被覆可能な長さで形成する。着用者の肩から腰部分までを被覆可能な長さとし、後身頃を着用者の尻の下に挟み込まないように形成する。
また、この着用状態は、コートの背中部分に引っ張りが生じる事がなく、着用時の不快感を防止できる。
【0003】
又、特開2004−27391号公報(特許文献2)には、車椅子に座ったままで簡単に着脱でき、構造が簡単で一枚のシートから容易に作成することが可能で、腕を自由に動かせる車椅子用コートが示されており、当該車椅子を利用している者が、一人でコートを着脱でき、コートを簡易に使用できることが開示されている。
【0004】
一方、特開2010−59584号公報(特許文献3)には、ファッション性を考慮して、車椅子や車椅子に装着する座位保持具に付いているベルトを外側から見せないようにすることで、利用者が見た目を気にせずおしゃれを楽しめると共に、周りからの視線を感じることなく、積極的に外出がしたくなる車椅子利用者用上着が示されている。
【0005】
更に、特開2011−144489号公報(特許文献4)には、ケープにフード・前身頃をとりつけ一体化する。座った状態で前身頃・ケープをかぶり、前身頃の部分を足首までおろして車椅子のパイプに止める構成を有する被服が示されている。係る衣服の場合には、自走の場合1人で着脱可能であり、車輪への絡まりを阻止することができる。介護を受ける場合は車椅子に腰かけたまま着脱することが楽にでき、介護者も傘をさし掛ける人手等が減り1人でも移送しやすくなる。
【0006】
又、特開2011−168940号公報(特許文献5)には、介護用前から被せるレインコ−トにおいて、本体は仰臥位の身体全体を包み込むための前身頃を中心に形成し、後身頃は背の中心を開口部とし裾から背中心にかけて曲線をえがき余剰部分を省き、袖付け部分は幅を広げ身頃と袖を一体化させた形状とし、フ−ドは前身頃側から縫合し顔にあたる部分は、柔軟で張りのある透明シ−トで半楕円形にして、口のあたる部分には小さい穴を数箇所開け、フ−ド後方には頭頂部分より半円状の持ち出部を形成し、本体裾から背の開口部、フ−ド持ち出し部にかけて共通したゴム紐を挿入したことを特徴とする介護用前から被せるレインコ−トである。
【0007】
一方、公開実用昭和56−53717号公報(特許文献6)には病人用パジャマで、前中心明きの衿ぐり下部から左右それぞれ袖下のやや上部に袖く知に達する切り替え明きを形成して前中心明きと切り替え明きとに適当な留め具を設け開閉自在な病人用パジャマである。
【0008】
更に、公開実用昭和61−125116号公報(特許文献7)には患者用寝衣で、肩線及び両脇縁に重ね代を連設しこれらの周縁に面ファスナーなどの留め具を敷設した袖後身付き又は袖なしの一枚布からなる後布見頃布体と、上記後布見頃布体に重ね合わせ周縁に付設したファスナーなどの留め具を介して着脱自在に係止する前見頃布体とからなる患者用寝衣である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−92805号公報
【特許文献2】特開2004−27391号公報
【特許文献3】特開2010−59584号公報
【特許文献4】特開2011−144489号公報
【特許文献5】特開2011−168940号公報
【特許文献6】公開実用昭和56−53717号公報
【特許文献7】公開実用昭和61−125116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、以上の技術によれば、袖通し作業が必要であったり、被覆衣料の大きさが大きく、重量があり、運搬や収納に問題がある等の多くの欠点が存在している為、車いすを使用する着用者や、その着用を助ける介助者にとってもスピーディーな着装及び安全な移動がし難いものであり、更には、デザイン上の問題や、外観の美しさや華やかさに欠ける為、或いは着用の乱れ等が頻発することから、着用者の人格を尊守する事に欠けると言う問題も頻発していた。
更には、従来に於ける当該車椅子搭乗者様の防寒具等では、前見頃部と後見頃部とを分割構成し適宜の着脱自在具、例えば、マグネットボタン等を使用して、接合して着用する構造や、左側前後見頃と右側前後見頃とを分割構成し適宜の着脱自在具、例えば、マグネットボタン等を使用して、接合して着用する構造のものも見受けられるが、係る構造の防寒具では、施設等で洗濯や、保管管理する工程でその一方が紛失してしまう様な事故が多発しており、望まし防寒具の構造ではないという欠点がある。
【0011】
従って本発明の目的は、上記した従来技術の欠陥を改良し、車椅子を使用する着用者自ら、或いは当該車椅子使用者の介助者が当該防寒具を着用する際或いは着用させる場合に、衣服を着装する際の負担が掛らず、且つスピーディーに着装出来、外観上は普通のマントと変わらず違和感なく着用できる様に構成した事を特徴とする車椅子搭乗者用防寒着を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記のような目的を達成するため、基本的には、以下に示す様な技術構成を採用するものである。
即ち、本発明に係る車椅子搭乗者用防寒着1は、釣鐘型の袖がなく、身頃のみからなる形状を基本とするマント構造を有する衣服(以下単に「マント構造」と称する)であって、当該マントの前見頃部の略中央部は、首廻り縁部から当該マン構造トの下端縁部に向けて分離された左右前見頃部で構成されており、且つ当該左右前見頃部の各縦縁部は相互に重畳する様に構成され、当該左右前見頃部の各縦縁部近傍には、複数個の着脱自在接合部材が当該各前見頃の縦縁部に沿ってその両面に配置されており、一方、当該マント構造の後見頃部の略中央部に於ける、当該首廻り縁部とその近傍部は、当該マント構造の下端縁部に向けて分離された構造は有さず、当該マントの後見頃部の略中央部に於ける、当該首廻り縁部から予め定められた所定の長さだけ下降した部位から当該マント構造の下端縁部に向けて分離された左右後見頃部で構成されており、且つ当該左右後見頃部の各縦縁部は相互に重畳する様に構成され、当該左右後見頃部の各縦縁部近傍には、複数個の着脱自在接合部材が当該各後見頃の縦縁部に沿ってその両面に配置されており、更に、当該マント構造はリバーシブル構造を有し、その一方の面は、撥水性或いは防水性を有する素材からなる布帛で構成されると共に、その他方の面は、防寒性或いは保温性を有する素材からなる布帛で構成されている事を特徴とする車椅子搭乗者用防寒着である。
【0013】
本発明は、上記した様な構成を採用することによって、特に寒い時期の車椅子を使用する使用者が、当該車椅子に座ったままで、スピーディーに着脱や着脱介助できる防寒着が提供されることである。
近年、高齢化が進み、高齢者施設や在宅介護の人が増えてきた。
高齢者といえども、自尊心を保てる装いが必要である。健常なときには、苦労なく着脱できていたコートも、車いすに座ったまま腰を上げないままでの着脱はできない。
介護施設等に入居する人が、緊急に医療機関に行く時や、在宅介護の車いす使用者がデイサービスに出かける時、暖かくスピーディーに着られる防寒着が無く、止むを得ず毛布や上着を羽織るだけで、寒そうに外出していた。
本発明は、係る従来の問題点を解決するものであって、体を動かしにくいためコートを着られない車椅子の使用者であっても、前開きのほか、後ろにも開きを設け、きわめて容易に着脱介助をすることが出来ると共に、腕の上げ下げ等運動がし易い構造を有するマント構造を基礎とする防寒具が提供される。
【発明の効果】
【0014】
上記した構成を有する本発明の車椅子搭乗者用防寒着は、前身頃は、前開きで、後身頃は、首廻りの下端縁近傍部が接続された状態に保持したまま、その下方部を後ろ開きの状態に分離開放しているので、車椅子搭乗者は、自ら車椅子に座ったままで、容易に当該防寒具を着用することが可能となると共に、介護者としても、車椅子に座ったままの着装者に当該防寒具を後ろから介助者に掛ける事が可能であるので、車椅子に座ったままの着装者や介助者の負担が少なくスピーディーに着装できる効果を奏するばかりでなく、従来のコートのように前開きでもあるので、見た目も良好で着用者にも違和感が無い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(A)及び図1(B)は、本発明に係る車椅子搭乗者用防寒着の一具体例の構成の概略を示す斜視図及び部分断面図である。
【図2】図2(A)及び図2(B)は、本発明に係る車椅子搭乗者用防寒着を着用した状態を示す斜視図及び側面図である。
【図3】図3は、本発明に係る車椅子搭乗者用防寒着の一具体例の構成に於ける後身頃部の構成の概略を示す斜視図である。
【図4】図4(A)及び図4(B)は、本発明に係る車椅子搭乗者用防寒着を着用した状態を背面から見た場合を示す図である。
【図5】図5(A)及び図5(B)は、本発明に係る車椅子搭乗者用防寒着に於ける裾上げ構造の一具体例を示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明に係る車椅子搭乗者用防寒着に於ける袖部を形成した場合の構成を示す斜視図である。
【図7】図7は、本発明に係る車椅子搭乗者用防寒着に於けるポケット部の構造の一具体例の構成を示す斜視図である。
【図8】図8は、本発明に係る車椅子搭乗者用防寒着に於ける他の具体例の構成を示す斜視図である。
【図9】図9(A)及び図9(B)は、本発明に係る車椅子搭乗者用防寒着に於けるフード付き前垂れ布部の一具体例の構成の概略を示す平面図及び斜視図であり、図9(C)は、当該フード付き前垂れ布部の使用状態を示す側面図である。
【図10】図10(A)及び図10(B)は、本発明に係る車椅子搭乗者用防寒着を着用した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明に係る車椅子搭乗者用防寒着の第1の態様の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
即ち、図1(A)は、本発明に於ける当該車椅子搭乗者用防寒着1の一具体例を示す図であって、図中、釣鐘型の袖がなく、身頃のみからなる形状を基本とするマント構造2を有する衣服(以下単に「マント構造」と称する)であって、当該マント構造2の前見頃部3の略中央部は、首廻り部7の当該首廻り縁部8から当該マント構造2の下端縁部10に向けて形成された分離部6により分離された左右前見頃部4,5で構成されており、且つ当該左右前見頃部4,5の各縦縁部17、17’は相互に重畳する様に構成され、当該左右前見頃部4,5の各縦縁部17、17’の近傍には、複数個の着脱自在接合部材9が当該各前見頃3の縦縁部17、17’に沿ってその両面に配置されており、一方、当該マント構造2の後見頃部20の略中央部に於ける、当該首廻り縁部10とその近傍部26は、当該マント構造2の下端縁部10に向けて分離された構造は有さず、当該マント構造2の後見頃部20の略中央部Aに於ける、当該首廻り縁部8から予め定められた所定の長さ27だけ下降した部位Bから当該マント構造2の下端縁部10に向けて分離された左右後見頃部21,22で構成されており、且つ当該左右後見頃部21,22の各縦縁部24,25は相互に重畳する様に構成され、当該左右後見頃部21,22の各縦縁部24,25近傍には、複数個の着脱自在接合部材9が当該各後見頃21,22に沿ってその両面に配置されており、更に、当該マント構造2はリバーシブル構造を有し、その一方の面は、撥水性或いは防水性を有する素材からなる布帛で構成されると共に、その他方の面は、防寒性或いは保温性を有する素材からなる布帛で構成されている事を特徴とする車椅子搭乗者用防寒着1が示されている。
【0018】
即ち、本発明に係る当該車椅子搭乗者用防寒着1は、従来公知のマント構造2を基本的な構成とするものであって、当該マント構造は、一枚の生地から打ち抜いて形成されたものであっても良く、或いは、前身頃部と後身頃部とを別々に一枚の生地から切り抜いて、その双方の端縁部同士を仮想接合線11に沿って、縫着するか、適宜の接合手段、例えば、面圧式ファスナー、ボタン機構、チャック、接着、溶融接合等の公知の技術を使用して一体化したものであっても良い。
【0019】
本発明に於ける当該マント部2の大きさや形状は特に限定されるものではなく、着用者の身体状況を勘案して決定する事が出来る。
本発明の当該防寒具に於いて、マント構造の縦方向の長さは、車椅子搭乗者が当該車椅子に着座した際に腰部側面を被覆する程度の長さに設定する事が望ましい。
係るディメンジョンを採用することによって、該車椅子搭乗者が当該車椅子に着座した際に、当該車椅子搭乗者の尻部と当該当該車椅子の座席面との間に当該防寒具の一部が鋏込まれて、当該車椅子搭乗者の運動、動作に制約を与える事も無く、又、介護者にとっても、介護操作を容易にする事が可能となる。
【0020】
又、本発明に於ける当該マント部2の首廻り部に形成される襟部7の形状や構造も特に限定されるものではなく、着用者の身体状況を勘案や、後述するフード102や、前垂れ布100等を巻き込み式或いは折り畳み状態でその内部に収納出来る様な大きさや形状とする事が望ましい。
図1(A)に示す本発明に係る当該車椅子搭乗者用防寒着1に於いては、当該前身頃部3は、襟部7を含めて、当該前身頃3の略中央部で、略垂直方向に形成される分離線6に沿って分割された右前身頃部4と左前身頃部5で構成されており、且つ図1(B)に示す様に、当該左右前見頃部5,4の各縦縁部17、17’は相互に重畳する様に構成され、当該左右前見頃部5,4の各縦縁部17、17’の近傍には、複数個の着脱自在接合部材9が当該各前見頃の縦縁部17、17’に沿ってその両面に配置されている。
即ち、図1(B)に示す様に、左前身頃部4の縦縁部17の表面には、当該着脱自在接合部材9が配置され、その裏面には、当該着脱自在接合部材9’が配置されおり、一方、右前身頃部5の縦縁部17’の表面には、当該着脱自在接合部材9”配置され、その裏面には、当該着脱自在接合部材9’”が配置されている。
本発明に於ける当該着脱自在接合部材9の構造は、特に限定されるものではないが、例えば、マグネットボタン、面圧接合部材等が使用可能である。
【0021】
一方、本発明に於ける当該車椅子搭乗者用防寒着1に於けるマント構造2の後身頃20は、前身頃部の様に完全に左右後身頃部21、22に分割された構成を有するものではなく、当該後身頃20の略中央部で、当該首廻り縁部10の部位Aと,当該部位Aから所定の距離27だけ当該マント構造2の下端縁部10に向けて降下した部位B迄の間の近傍部26は、当該左右後身頃部が分離されておらず、当該部位Bから当該マント構造2の下端縁部10に向けた部分では、分離線6に沿った分離され、左右後見頃部21,22が形成されている。
当該左右後見頃部21,22の各縦縁部24,25は、図1(B)に示すと同じ様に、相互に重畳する様に構成され、当該左右後見頃部21,22の各縦縁部24,25近傍には、複数個の着脱自在接合部材9が当該各後見頃21,22に沿ってその両面に配置されており、必要によって、当該左右後身頃部21,22の各縦縁部24,25の間に所望の空間部23を形成する事が出来、それによって、当該車椅子搭乗者が車椅子に着座した際に当該車椅子の背部と当該車椅子搭乗者の背中部との間に当該防寒具が挟み込まれる事を有効に防止できるので、当該車椅子搭乗者の運動、動作に制約を与える事も無く、又、介護者にとっても、介護操作を容易にする事が可能となる。
【0022】
当該着脱自在接合部材9は、上記した前身頃部で使用される着脱自在接合部材9と同じものを使用する事が出来る。
一方、当該後身頃部20に於ける当該所定の距離27の長さは、特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜に決定する事が可能である。
その為、本発明に於いては、所定の距離27の長さを、適宜の長さに設定出来る様に、当該長さ調整機構29を併用する事も好ましい具体例である。
当該調整機構29の構造は、特に特定されるものではないが、例えば、スライドファスナー、面圧式ファスナー、マグネットボタンを含むボタン機構等のグループから選択された一つの機構で構成されている事が望ましい。
より具体的には、例えば、後身頃部の背中心のA〜Bまでを縫い、B〜Cまでは開閉できるように縫わないことにより、介助者がマントの中に手を入れて車椅子のハンドルを掴みやすく安全であるとともに、着装がスピーディーになる。
更に、マント部2の前後中心の開閉部分には、マグネットのボタン9をつけることにより、着装がスピーディーになる。
又、マント部2の前中心後中心の開閉部分に付けたマグネットボタンの開閉がしやすいように、掴みやすい大きめの平たい飾りボタンをつける事も望ましい。
【0023】
一方、本発明に於ける当該防寒具1は、リバーシブル構造を有している事が必要であり、具体的には、当該マント構造2の一方の面は、撥水性或いは防水性を有する素材からなる布帛で構成されると共に、その他方の面は、パイル、ボア、発泡性樹脂、キルト構造等の構成を有する防寒性或いは保温性を有する素材からなる布帛で構成されている事が望ましい。
係る構成を有する事によって、冬季、当該車椅子搭乗者が、外出中に雨或いは雪等に見舞われた場合に、容易に防水性を有する面を表面に顕して着用して雨、雪を防ぐ事が可能となる。
又、本発明に係る当該車椅子搭乗者用防寒着1に於いては、当該マント部2の左右前身頃部4,5の少なくとも一方の少なくとも一部に、ポケット部32を設ける事も望ましい具体例である。
当該ポケット部32の大きさは特に限定されるものではないが、透明性を有する素材を使用すれば、当該ポケット内に収納された、個人情報や薬の処方箋、病名、行き先等の情報を第三者が容易に確認する事が可能となる他、図7に示す様に、当該ポケット部の相互に対向する内面60、61のそれぞれ対応した複数の部位35,36に、相互に着脱自在な接合部材63を配置して、当該複数個の当該接合部材63を選択的に接合させることによって、分別収納を可能にするポケット部を設ける事も望ましい具体例である。
【0024】
即ち、図7に於いて、当該複数個の接合部材63を選択的に接合して、挿入口の大きさがそれぞれ異なる複数個のサブポケットを形成し、筆記具、カード、財布等を分別して収納出来る様に構成することによって、それらの取りだし操作を極めて容易にする事が出来る。
た事を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の車椅子搭乗者用防寒着。
一方、本発明に於いては、当該マント構造2の前身頃部3をその略中央で縦方向に設定された分離部6とは異なり、図8に示す様に、当該左右前見頃の当該分離部6’を当該前見頃の中心線に形成された当該分離部6から徐徐に乖離する様に斜めに形成するとともに、当該左右前見頃4,5の内、前見頃面積の広い方の右前見頃4の表面にポケット部32を設ける事も可能であり、係る具体例ででは、当該ポケット部の大きさを更に大きくする事が出来る。
次に、本発明に於ける当該車椅子搭乗者用防寒着1に於いては、当該当該車椅子搭乗者が、当該防寒具1を着用して当該車椅子に着座した際、当該車椅子のサイズ、構造によっては、当該車椅子の車輪の縁が当該防寒具1の表面生地と接触し、その摩擦によって、当該防寒具1が摩耗、破壊される可能性が高いと言う問題があり、係る問題点を解消する為に、本発明の別の具体例としては、例えば、当該マント部2に於ける下端縁部10であって、当該マント部2の前見頃3と後見頃20との境界線11に対応する部位14での表裏何れかの面に、適宜の相互に着脱自在である一対の接合部材9の一方の部材12を配置すると共に、当該マント部2の前見頃と後見頃との境界線11に沿って、当該マント部2に於ける下端縁部10から所定の距離だけ上方にある部位14’に、当該一対の接合部材9の他方の部材13を配置した構造を有する車椅子搭乗者用防寒着1である。
【0025】
係る構成を採用する事によって、図5に示す様に、当該マント構造2の前後身頃部3、20の境界線11に対応する下端縁部10上の部位14に配置された当該接合部材9の一方の部材12を持ち上げて、当該マント構造2の前後身頃部3、20の境界線11上で、当該マント部2に於ける下端縁部10から所定の距離だけ上方にある部位14’に配置されている当該一対の接合部材9の他方の部材13と嵌合させることにより、図に示す様に、当該マント構造2の側面の下端縁部10とその近傍の布帛部が持ち上がり、当該車輪との接触を防止する事が出来る。
本発明に於ける当該マント構造2の前後身頃部3、20の境界線11に対応する下端縁部10上の部位14に配置された当該接合部材9の一方の部材12を持ち上げる方向は、図5(B)に示す様に、内面側の表面布帛を表側に顕在させる様に、持ち上げる方法と、逆に、表面側の表面布帛を内側に隠す様に持ち上げる方法とが使用可能である。
【0026】
更に、本発明に於いては、特に、車椅子搭乗者の人格を尊重する防寒着を提供する事もその大きな目的の一つである事から、図6に示す様な構成を有する防寒具1を提供するものである。
即ち、当該更なる具体例では、図1(A)に示す通り、当該マント部2の表面であって、当該マント部2に於ける下端縁部10で、当該マント部2の前見頃部3と後見頃部20との境界線11から当該下端縁部10に平行する方向に、且つ左右方向に相互に同じ長さだけ離れた2か所の部位15、16に、適宜の相互に着脱自在である一対の接合部材9の一方の部材65と他方の部材66とをそれぞれ個別に配置すると共に、少なくとも一個の別の当該一対の接合部材9’の一方の部材65’と他方の部材66’とを当該マント部2の表面で、当該境界線11上で且つ当該下端縁部10から所定の距離だけ上方に離れた部位で且つ当該下端縁部10と略平行して、相互に同じ長さだけ離れた2か所の部位15’と16’のそれぞれに個別に配置した車椅子搭乗者用防寒着1が提供される。
本具体例に於いて、更に第3及び第4の部位15”’と16”’及び15””と16””のそれぞれに、一個の更に別の当該一対の接合部材9’”の一方の部材65’”と他方の部材66’”とをそれぞれに個別に配置する事も可能である。
【0027】
本発明の係る更に別の具体例では、上記した複数個所に配置された何れか或いは全ての当該一対の接合部材9、9’、9”・・・の一方の部材65と他方の部材66とを選択的に相互接合することによって、図6に示す様に、当該マント部2に見かけ上の袖部80が形成されるので、車椅子搭乗者は、係る見かけ上の袖部80に腕を通すことによって、外観上、通常の袖付防寒具を着用している様に見られるので、車椅子搭乗者の人格は保護されることになる。
本発明に於ける更に異なる具体例としては、当該マント部2の首廻縁部8に形成されている襟部7の内部に収納されている前垂れ布100であって、当該前垂れ布100の当該首廻り縁部8に近接した部分には、車椅子搭乗者の頭部103が通過するに十分な大きさを有する開口部101が形成されていると共に、当該開口部101の周縁部104にその下端縁部105が接合されているフード部102が設けられており、且つ当該前垂れ布100は、当該左右前見頃4,5の重畳部130を被覆するに十分な幅と長さを有しており、且つ当該前垂れ布100の表面にポケット部32が設けられている車椅子搭乗者用防寒着1である。
係る構成によって、当該フード部102は、リバーシブルを活用した何れの態様のばあいであっても、当該前垂れ布100の何れの面上に当該フード部102を膨出させる事が可能となる。
【0028】
即ち、本発明に於ける更に別の具体例では、当該防寒具1に於ける首廻りには衿部7のほか、着用・収納自在なフード102を付けることにより、頭や首回りの保温効果を高める事が可能である。
上記具体例の一構成例としては、例えば、図9に示す様に、当該マント部2の襟部7の内部に収納可能であって、必要により外部に展開出来る前垂れ布部100を使用するものであり、当該前垂れ布部100は、薄くて軽量な布帛で構成され、その幅及び長さは特に限定されるものではないが、その幅は、当該車椅子搭乗者の頭部103が容易に通過しえる様な大きさの開口部101を形成するに十分な幅であって、且つ当該マント部2の前身頃の分離部を覆い、外気が当該マント部2内部に流入するのを防止しえるに十分な幅を有している事が好ましい。
【0029】
一方、当該前垂れ布部100の長さは、少なくとも、当該マント部2の首廻り部下縁部8から当該マント部2の下端縁部10迄の長さを有している事が好ましい。
当該前垂れ布部100は、未使用時には、ロール状に巻きあげる、折り畳み状態に縮小して、二重構造に形成された当該襟部7の側部に形成された開口部110から当該襟部7の内部に収納される。
当該襟部7の内側部と外側部のそれぞれの側面部106に形成された開口部110には、適宜の開閉部材、例えばファスナー、チャック111等が設けられている事が望ましい。
そして、当該車椅子搭乗者が当該フード102を使用したい場合には、当該襟部7の側面部106に形成された開口部110に設けられた開閉部材111を介して、当該開口部110から当該襟部7内に内蔵されている当該前垂れ布部100を引き出し、当該前垂れ布部100に設けられた当該開口部101に、当該車椅子搭乗者の頭部103を潜らせることにより自然に当該フード部102内に当該頭部を挿入させる事ができると共に、当該前垂れ布部100を当該マント部2の当該縦分割線6の上に被せることにより操作を終了する事になる。
【0030】
尚、本発明に係る当該車椅子搭乗者用防寒着1と併せて、図2或いは図10に示す様に、当該車椅子に座ったままの着装者に、腹部や腰から足元まで覆えるひざ掛け的下半身カバー52を併用する事は好ましい。
つまり、当該ひざ掛け的下半身カバー52は、ウエストベルトの左右に延びたベルトをウエストや車椅子に留め付けられるので、着装者の腹部や腰から足元まで暖かく、着装介助者の負担も少なくまた、ずり落ちることも無く安全である。
そして、当該下半身カバー52をウエストに留め付ける方法として、ウエストベルトの両サイドにスナップテープを付け、ウエストに巻き付けたり車椅子のパイプに巻き付け留める様にする事も可能である。
或いは、当該マント部2が風であおられないように下半身カバー部52に重なるマント部2の裏面に、凸型のマジックテープ(登録商標)を付け、下半身カバー部52の膝上位置に凹型のマジックテープ(登録商標)を付け、上下を一体化する事も可能である。またはマジックテープ(登録商標)の代わりにマグネットボタンでの接続も可能である。

【0031】
この実施形態によれば、車椅子に座ったままの着装者にマントを前から介助者が掛け、車いすの後ろで留められるので、着装者や介助者の負担が少なくスピーディーに着装できる。尚、従来のコートのように前開きでもあるので、見た目も着用者にも違和感が無い。
【0032】
本発明に於いては、後身頃部の背中心のA〜Bまでを縫い、B〜Cまでは開閉できるように縫わないことにより、介助者が車椅子のハンドルを掴みやすく安全であるとともに、着装がスピーディーになる。マントの前後中心の開閉部分には、マグネットのボタンをつけることにより、着装がスピーディーになる。マントの前中心後中心の開閉部分にマグネットボタンを付けることにより開閉がしやすくなる。
また、大きめの平たい飾りボタンをつけるので、掴みやすくなる。車椅子の種類により車輪の大きさが異なっても脇裾を折り上げ随時留められる構造とするので、脇裾が車輪に掛らなく安全となる。首回りには衿のほか付け外しが可能なフードを付けることにより、頭や首回りの保温効果が高まる。車椅子に座ったままの着装者に、腹部や腰から足元まで覆えるひざ掛け的下半身カバーを掛け、ウエストベルトの左右に延びたベルトをウエストや車椅子に留め付けられるので、着装者の腹部や腰から足元まで暖かく、着装介助者の負担も少なくまた、ずり落ちることも無く安全となる。
更に、当該下半身カバー52をウエストに留め付け、ウエストベルトの両サイドにスナップテープを付け、ウエストに巻き付けたり車椅子のパイプに巻き付け留めることにより、下半身カバー52がずり落ちること無く安全で、保温性を確保できる。また、下半身カバーに重なるマントの裏に、凸型のマジックテープを付け、下半身カバーの膝上位置に凹型のマジックテープやマグネットボタンを付け、上下を一体化することにより、マントが風であおられなくなる。
【符号の説明】
【0033】
1…車椅子搭乗者用防寒着
2…マント構造
3…前見頃部
4…右前見頃部
5…左前見頃部
6…分離部
7…襟部、首廻り部
8…首廻り下端縁部
9…着脱自在接合部材
10…首廻り縁部
11…前見頃と後見頃との境界線
12…接合部材の一方の部材
17、17’ …縦縁部
13…接合部材の他方の部材
14…マント部の下端縁部で境界線に対応する部位
14’ …マント部の下端縁部から所定の距離だけ上方にある部位
15、16…境界線から下端縁部に平行する方向で、且つ左右方向に相互に同じ長さだけ離れた2か所の部位
15’、16’ …境界線から下端縁部に平行する方向で、且つ左右方向に相互に同じ長さだけ離れた2か所の部位で、15、16とは異なる部位
65、65’…接合部材の一方の部材
66、66’…接合部材の他方の部材
20…後見頃部
21…右後見頃部
22…左後見頃部
23…空間部
24…縦縁部
25…縦縁部
26…近傍部
27…予め定められた所定の長さ
29…長さ調整機構
32…ポケット部
33車椅子用防寒着本体
35、36…複数の部位
50…車椅子
51…車椅子用車輪
52…下半身カバー部
60、61…ポケット部の相互に対向する内面
63…接合部材
80…袖部
100…前垂れ布部
101…開口部
102…フード部
103…頭部
104…開口部の周縁部
105…フード部の下端縁部
106…襟部の側面部
110…開口部
111…開閉部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣鐘型の袖がなく、身頃のみからなる形状を基本とするマント構造を有する衣服(以下単に「マント」と称する)であって、当該マントの前見頃部の略中央部は、首廻り縁部から当該マントの下端縁部に向けて分離された左右前見頃部で構成されており、且つ当該左右前見頃部の各縦縁部は相互に重畳する様に構成され、当該左右前見頃部の各縦縁部近傍には、複数個の着脱自在接合部材が当該各前見頃の縦縁部に沿ってその両面に配置されており、一方、当該マントの後見頃部の略中央部に於ける、当該首廻り縁部とその近傍部は、当該マントの下端縁部に向けて分離された構造は有さず、当該マントの後見頃部の略中央部に於ける、当該首廻り縁部から予め定められた所定の長さだけ下降した部位から当該マントの下端縁部に向けて分離された左右後見頃部で構成されており、且つ当該左右後見頃部の各縦縁部は相互に重畳する様に構成され、当該左右後見頃部の各縦縁部近傍には、複数個の着脱自在接合部材が当該各後見頃の縦縁部に沿ってその両面に配置されており、更に、当該マントはリバーシブル構造を有し、その一方の面は、撥水性或いは防水性を有する素材からなる布帛で構成されると共に、その他方の面は、防寒性或いは保温性を有する素材からなる布帛で構成されている事を特徴とする車椅子搭乗者用防寒着。
【請求項2】
当該マントの後見頃部の略中央部に於ける、当該分離部が形成されていない当該首回り縁部から予め定められた所定の長さだけ下降した部位の位置は、適宜の長さ調整機構を利用して調節可能である事を特徴とする請求項1に記載の車椅子搭乗者用防寒着。
【請求項3】
当該長さ調整機構は、スライドファスナー、面圧式ファスナー、マグネットボタンを含むボタン機構等のグループから選択された一つの機構で構成されている事を特徴とする請求項1に記載の車椅子搭乗者用防寒着。
【請求項4】
当該左右前見頃の少なくとも一方の表面に、ポケット部を設けると共に、当該ポケット部の相互に対向する内面のそれぞれ対応した複数の部位に、相互に着脱自在な接合部材を配置して、当該複数個の当該接合部材を選択的に接合させることによって、分別収納を可能にするポケット部を設けた事を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の車椅子搭乗者用防寒着。
【請求項5】
当該左右前見頃の当該分離部を形成する当該縦縁部を当該前見頃の中心線から乖離する様に斜めに形成するとともに、当該左右前見頃の内、前見頃面積の広い方の前見頃の表面にポケット部が設けられている事を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の車椅子搭乗者用防寒着。
【請求項6】
当該マントに於ける下端縁部であって、当該マントの前見頃と後見頃との境界線に相当する部位の表裏何れかの面に、適宜の相互に着脱自在である一対の接合部材の一方の部材を配置すると共に、当該マントの前見頃と後見頃との境界線に沿って、当該マントに於ける下端縁部から所定の距離にある部位に、当該一対の接合部材の他方の部材を配置した事を特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の車椅子搭乗者用防寒着。
【請求項7】
当該マントの表面であって、当該マントに於ける下端縁部で、当該マントの前見頃と後見頃との境界線から相互に同じ長さだけ離れた2か所の部位に、適宜の相互に着脱自在である一対の接合部材の一方の部材と他方の部材とをそれぞれ個別に配置すると共に、少なくとも一個の別の一対の接合部材の一方の部材と他方の部材とを当該マントの表面で、当該境界線から当該下端縁部と略平行して、相互に同じ長さだけ離れた2か所の部位のそれぞれに個別に配置した事を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の車椅子搭乗者用防寒着。
【請求項8】
当該マントの首廻り部に形成されている襟部内部に収納されている前垂れ布であって、当該前垂れ布の当該首廻り部に近接した部分には、車椅子搭乗者の頭部が通過するに十分な大きさを有する開口部が形成されていると共に、当該開口部の周縁部にその下端縁部が接合されているフード部が設けられており、且つ当該前垂れ布は、当該左右前見頃の重畳部を被覆するに十分な幅と長さを有しており、且つ当該前垂れ布の表面にポケット部が設けられている事を特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の車椅子搭乗者用防寒着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−79458(P2013−79458A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218995(P2011−218995)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(597062890)
【Fターム(参考)】