説明

車椅子

【課題】後輪を取り外して車幅を小さくしたときの移動方向を容易に変更できるようにした車椅子を提供することにある。
【解決手段】座部及び背部を有する車体フレーム1と、車体フレームの前端部の下部に設けられた自在キャスタからなる前輪14と、車体フレームの後端部の幅方向両側に着脱可能に設けられた一対の後輪6と、車体フレームの後端部の下部に昇降機構28によって接地位置と非接地位置との間で昇降可能に設けられ接地位置にある下降状態で前輪とによって車体フレームを移動可能支持する自在キャスタからなるリフトアップ車輪29を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は後輪を着脱して車幅を変えることができる構造の車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の車椅子は座部と背部が設けられた車体フレームを有し、この車体フレームの前端部の下部には前輪が設けられ、後端部両側には上記前輪に比べてサイズの大きな後輪が設けられている。この後輪の外側には、上記座部に着座した利用者が上記後輪を手動で回転させることができるよう上記後輪よりもわずかに小径の手動輪(ハンドリム)が設けられている。
【0003】
上記車体フレームの幅方向の外方に上記手動輪を有する後輪が設けられると、車椅子の車幅が大きくなるため、たとえば室内や列車内での狭い場所では走行し難いということが生じる。
【0004】
そこで、上記後輪を上記車体フレームに着脱可能に設け、さらに車体フレームの後端部の下部にはリフトアップ車輪を昇降可能に設ける。そして、上記後輪を使用する場合には上記リフトアップ車輪が接地しないよう上昇させておき、上記後輪を取り外して車幅を小さくして使用する場合には上記リフトアップ車輪を下降させて接地するようにする。
【0005】
それによって、室内や列車内などの狭い場所を走行する場合には、上記後輪を取り外すことで車幅を小さくするとともに、上記リフトアップ車輪を下降させることで、上記車体フレームを上記前輪とリフトアップ車輪とによって走行可能に支持するようにしている。
【0006】
従来、上記構成の車椅子では、上記背部に設けられた手押しハンドルを押して走行させるとき、車体を容易に方向変換させることができるようにするため、上記前輪には水平軸だけでなく、垂直軸に対しても回転可能な自在キャスタが用いられていた。しかしながら、上記リフトアップ車輪には上記後輪と同様、水平軸と垂直軸のうち、水平軸に対してだけ回転する固定キャスタが用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3818699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記前輪に自在キャスタを用いれば、車椅子を単に前進方向に走行させるだけであれば、上記前輪によって比較的容易に方向変換できるため、大きな支承はない。しかしながら、たとえば車椅子の利用者をベッドに移すため、後輪を取り外した状態で、車椅子を前進方向に移動させてから、横方向に移動させてベッドの側方に近接させるような場合、前輪だけが自在キャスタであって、上記リフトアップ車輪が固定キャスタであると、車椅子の後端側が横方向に移動させ難いため、車椅子をベッドの側方に容易に接近させることができないということがあった。
【0009】
この発明は、前進方向だけでなく、横方向への移動も容易に行うことができるようにした車椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、座部及び背部を有する車体フレームと、
この車体フレームの前端部の下部に設けられた自在キャスタからなる前輪と、
上記車体フレームの後端部の幅方向両側に着脱可能に設けられた一対の後輪と、
上記車体フレームの後端部の下部に昇降機構によって接地位置と非接地位置との間で昇降可能に設けられ接地位置にある下降状態で上記前輪とによって上記車体フレームを移動可能支持する自在キャスタからなるリフトアップ車輪と
を具備したことを特徴とする車椅子にある。
【0011】
上記昇降機構は、
上記車体フレームの前後方向の中途部に一端が枢着され後端側に位置する他端に上記リフトアップ車輪が設けられた支持アームと、
この支持アームの他端に一端が枢着された第1のリンクと、
この第1のリンクの他端に一端が枢着され中途部が上記車体フレームに枢着された第2のリンクと、
一端に操作ハンドルが設けられ他端が上記第2のリンクの中途部に枢着された操作レバーと、
上記第2のリンクに上下方向に所定間隔で設けられ上記操作レバーの上昇方向への回動するのを制限する上部ストッパ部材及び下降方向への回動を制限する下部ストッパ部材を備え、
上記操作レバーを、上記上部ストッパ部材に当接する位置からさらに上昇方向に回動させると、上記第2のリンク及び上記第1のリンクが作動して上記リフトアップ車輪を非接地位置から接地位置に下降するよう上記支持アームを回動させ、
上記リフトアップ車輪が接地位置に下降した状態から上記操作レバーを、上記下部ストッパに当接する中立位置まで回動させると、上記第2のリンク及び上記第1のリンクを作動させずに上記操作ハンドルが設けられた一端部が上記座部よりも低い位置に下降し、
上記操作レバーを、上記下部ストッパに当接した上記中立位置からさらに下降方向へ回動させると、上記第2のリンク及び上記第1のリンクを作動させて上記リフトアップ車輪が接地位置から非接地位置に上昇するよう上記支持アームを回動させる構成であることが好ましい。
【0012】
上記支持アームの中途部と上記第2のリンクの中途部とには、上記操作レバーを下降方向に回動させて上記リフトアップ車輪を接地位置から非接地位置に上昇させるとき、上記第2のリンクの動作に上記支持アームを弾性的に追従させる弾性部材が張設されていることが好ましい。
【0013】
一端が上記第2のリンクの中途部とともに上記車体フレームに枢着され他端が上記第1のリンクの他端に上記第2のリンクの一端とともに枢着されたと、このの中途部に設けられ踏み込むことで上記第1のリンクと第2のリンクを作動させて上記リフトアップ車輪が非接地位置から接地位置に下降するよう上記支持アームを回動させるペダルとをさらに備えていることが好ましい。
【0014】
上記座部の幅方向両側には、肘掛け体が上記座部の幅方向両側から退避可能に設けられていることが好ましい。
【0015】
上記車体フレームの後端部の下部には、上記後輪を上記車体フレームから取り外して上記リフトアップ車輪を非接地位置に上昇させたときに接地する補助脚が設けられていることが好ましい。
【0016】
上記車体フレームの前端側には上記座部に着座した利用者が足を載せるフットレストを有する足載せユニットが着脱可能に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、前輪だけでなく、リフトアップ車輪にも自在キャスタを用いるようにした。
【0018】
そのため、後輪を取り外して車椅子を前輪とリフトアップ車輪とによって走行させる場合、前進方向の移動とともに横方向へも移動させ易くなるから、たとえば車椅子の利用者をベッドへ移す場合など、車椅子をベッドの側方へ容易に接近させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施の形態を示す後輪が取付けられた車椅子の側面図。
【図2】後輪が取付けられた車椅子の背面図。
【図3】後輪が取外された車椅子の側面図。
【図4】後輪が取外された車椅子の背面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1乃至図4に示す車椅子Vは車体フレーム1を備えている。この車体フレーム1は図2と図4に示すように左右一対の側部フレーム2を有する。一対の側部フレーム2は前端側と後端側がそれぞれ中途部が回動可能に連結された一対の連結リンク3によって折り畳み可能に連結されている。
【0022】
図1と図3に示すように、上記側部フレーム2は上部材2a,下部材2b,前部材2c及び後部材2dによって矩形枠状に形成されている。上記下部材2bは上記上部材2aよりも後端側に突出するよう長く形成され、上記後部材2dは前部材2cよりも上方へ突出するよう長く形成されている。
【0023】
上記後部材2dの上端には手押しハンドル5が連結部4によって後方へ折り畳み可能に設けられ、中途部には外面側に手動輪6a(図2に示す)を有する後輪6の取付け部材7が設けられている。上記取付け部材7には上記後輪6が着脱可能に取付けられるようになっていて、上記手押しハンドル5には上記取付け部材7に取付けられた上記後輪6の回転を手動で制動するブレーキハンドル8が設けられている。
【0024】
左右一対の側部フレーム2には、上記上部材2aと後部材2dとにわたって袋状のシート11が張設されていて、一対の上記上部材2a間に座部12を形成し、上記一対の後部材2d間に背部13を形成している。
【0025】
各側部フレーム2の前部材2cの下端には自在キャスタからなる前輪14が設けられている。つまり、上記前部材2cの下端には垂直軸を中心にして回転可能に設けられた取付け部15を有し、この取付け部15に上記前輪14が水平軸を中心にして回転可能に設けられている。したがって、自在キャスタからなる上記前輪14は、垂直方向と水平方向との2軸方向に対して回転可能となっている。
【0026】
なお、上記前輪14と上記取付け部材7に取付けられた上記後輪6とは、下端が同じ高さになるよう設定されている。つまり、上記後輪6と上記前輪14は図1にRで示す走行面に接地する高さに設定されている。
【0027】
上記一対の側部フレーム2の前部材2cには、図1と図3に示すようにそれぞれ足載せユニット16が着脱可能に設けられている。なお、各図には一方の足載せユニット16だけが示されている。
【0028】
上記足載せユニット16は下端にフットレスト17が車体フレーム1の車幅方向に回動可能かつ車幅方向内方へ倒した状態でほぼ水平に保持可能に設けられたほぼ逆J字状の取付けパイプ18を有する。
【0029】
上記取付けパイプ18の中途部には、上記前部材2cに着脱可能に固定される取付け具19が設けられている。そして、上記足載せユニット16は、取付けパイプ18の上端を上記前部材2cの上端に当接させた状態で、上記取付け具19を上記前部材2cの高さ方向中途部に装着固定して着脱可能に取付けられている。
【0030】
上記足載せユニット16を上記側部フレーム2の前部材2cに着脱可能に取付けたことで、上記足載せユニット16を車体フレーム1から取り外すことができるため、車体フレーム1の前面をたとえばベッド(図示せず)の側面に接近させることができる。それによって、ベッド上の利用者を後向きの状態で、上記車椅子Vの車体フレーム1の座部12上に移動させ易くなるということがある。
【0031】
上記一対の側部フレーム2の上端、つまり上記座部12の幅方向両側には肘掛け体21が設けられている。この肘掛け体21は図1に示すように肘掛けフレーム22を有し、この肘掛けフレーム22の前後方向の中途部には筒状の支持体23が立設されている。この支持体23には肘掛け部材24が調整ノブ24aによって高さ調整可能に取付けられている。
【0032】
上記肘掛けフレーム22の後端には下端が上記座部12よりも下方に延出された延出部25が設けられ、この延出部25は上記側部フレーム2の後部材2dの中途部にヒンジ26によって回動可能に連結されている。
【0033】
それによって、上記肘掛け体21は、その肘掛けフレーム22が上記側部フレーム2の上部材2a上に位置する使用状態から、上記ヒンジ26を支点として図1に矢印で示すように上記側部フレーム2の後方へ回動させることができるようになっている。つまり、上記肘掛け体21を上記座部12の幅方向両側から退避させることができるようになっている。
【0034】
なお、上記肘掛け体21を上記側部フレーム2に対して着脱可能に連結し、上記側部フレーム2から取り外すことで、上記座部12の幅方向両側から退避させる構成としても差し支えない。
【0035】
上記車体フレーム1の下部後端部には昇降機構28によってリフトアップ車輪29が上下方向に変位可能に設けられている。すなわち、上記昇降機構28は一端を上記側部フレーム2の下部材2bの中途部に第1の支軸30によって回動可能に連結した支持アーム31を有する。この支持アーム31の他端には上記前輪14と同様、自在キャスタからなる上記リフトアップ車輪29が設けられている。
【0036】
すなわち、上記支持アーム31の他端には取付け部32が垂直軸を中心にして回転可能に設けられ、この取付け部材32に上記リフトアップ車輪29が水平軸を中心にして回転可能に設けられている。したがって、上記リフトアップ車輪29は垂直方向及び水平方向に回転可能となっている。
【0037】
上記支持アーム31の他端の幅方向両側には、図2に示すように2つで対をなす直杆状の第1のリンク33の一端が第2の支軸34によって回動可能に連結されている。この第1のリンク33の他端には、空間部を有する菱形状の2つで対をなす第2のリンク35の一端である、上記菱形の1つの角部が第3の支軸36によって枢着されている。
【0038】
上記第2のリンク35の上記1つの角部の上方に位置する角部である、前後方向の中途部は第4の支軸37によって上記側部フレーム2の後部材2dの上下方向中途部に回動可能に連結されている。
【0039】
上記第4の支軸37の近傍である、上記第2のリンク35の前後方向の中途部には、一端に操作ハンドル38が設けられた操作レバー39の他端が第5の支軸41によって回動可能に連結されている。上記操作レバー39は上下方向にクランク状に屈曲していて、上端側に上記操作ハンドル38が設けられ、下端が上記第2のリンク35に回動可能に枢着されている。
【0040】
上記第2のリンク35の残りの2つの角部のうち、上方の角部には軸状の上部ストッパ部材43が設けられ、下方の可動部には軸状の下部ストッパ部材44が設けられている。それによって、上記操作レバー39は、上記第2のリンク35に第5の支軸41によって枢着された他端部側が上記上部ストッパ部材43当たる上昇位置と、上記下部ストッパ部材44に当たる下降位置との間で上下方向に自由に回転できるようになっている。
【0041】
上記第2のリンク35の下辺側の中途部と、上記支持アーム31の中途部との間には、この支持アーム31の上記リフトアップ車輪29が設けられた他端側を上昇方向に弾性的に付勢する弾性部材としての引張りばね45が張設されている。
【0042】
後述するように、上記操作レバー39を図3に示す上昇位置から下方へ回動させて上記支持アーム31の上記リフトアップ車輪29が設けられた他端側が上昇する方向に回動させるとき、上記引張りばね45はその復元力によって上記操作レバー39を上昇方向へ弾性的に付勢する。それによって、上記リフトアップ車輪29を上記支持アーム31とともに確実に上昇させることができるようになっている。
【0043】
上記側部フレーム2の下部材2bの中途部で、上記操作レバー39の屈曲部39aに対応する部分にはパイプ材をコ字状に屈曲した取付け部材46が固着されている。この取付け部材46の一方の角部にはストッパ47が取付けられている。
【0044】
上記ストッパ47は上記操作レバー39を後述するように下降方向へ回動させたとき、上記屈曲部39aが当接して上記操作レバー39がそれ以上下降方向へ回動するのを阻止するようになっている。
【0045】
図1に示すように、上記屈曲部39aが上記ストッパ47に当接したとき、上記操作レバー39の上記操作ハンドル38が設けられた一端部は上記座部12よりも低い位置、つまり上記側部フレーム2の上端よりも低い位置に下降している。
【0046】
上記取付け部材46には、上記ストッパ47の他に、車椅子Vを停止させたときに後輪6が回転するのを阻止する駐車ブレーキ用レバー48が設けられている。
【0047】
さらに、上記側部フレーム2の下部材2bの中途部には補助脚49が下方に向かって設けられている。この補助脚49の下端は、図1に示すように上記後輪6の下端よりも高く設定され、後述するように上昇位置に変位させられた上記リフトアップ車輪29の下端よりも低い位置に設定されている。
【0048】
したがって、上記車体フレーム1から上記後輪6を取外して上記リフトアップ車輪29を上昇させると、上記補助脚49が接地するから、後輪6を取外して上記リフトアップ車輪29を上昇させたときに、車椅子Vが動くのを阻止できるようになっている。
【0049】
上記第1のリンク33の他端と第2のリンク35の一端を連結した第3の支軸36と、上記第2のリンク35を上記車体フレーム1に連結した第4の支軸37には、側面形状がT字状のペダル部材51の一端と他端が連結されている。すなわち、上記ペダル部材51は菱形の上記第2のリンク35の一辺に一体的に設けられている。
【0050】
なお、上記第2のリンク35を菱形とせず、菱形の一辺を上記ペダル部材51によって形成するようにしてもよい。
【0051】
上記ペダル部材51の中途部には突出部52が設けられ、この突出部52にはペダル53が設けられている。図1に示すように上昇位置にある上記ペダル53を踏み込んで図3に示すよう下降方向へ変位させると、上記ペダル部材51が上記第4の支軸37を支点として下降方向に回動する。
【0052】
上記ペダル部材51が回動すると、上記第1のリンク33と第2のリンク35が図1に示す状態から図3に示すように連動して回動するから、上記支持アーム31が一端をしてとして他端が下降する方向に回動する。それによって、上記支持アーム31の他端に設けられたリフトアップ車輪29が上昇位置から下降位置に変位するようになっている。
【0053】
つぎに、上記構成の車椅子Vの利用形態について説明する。
図1は車椅子Vを後輪6と前輪14とで走行させるようにした状態であって、この場合、操作レバー39は操作ハンドル38が座部12よりも下方に位置する下降位置に回動している。それによって、リフトアップ車輪29は走行面Rから上昇した非接地位置R1にある。
【0054】
上記車体フレーム1から上記後輪6を取り外して図4に示すように車幅を小さくして利用する場合、上記リフトアップ車輪29を、上記非接地位置R1から図3に示す走行面Rよりもわずかに下方の接地位置R2に下降させる。すなわち、車椅子Vの利用者或いは介護者が図1に示すように下降位置にある上記操作レバー39の操作ハンドル38を把持し、この操作レバー39を上昇方向へ回動させる。なお、上記リフトアップ車輪29の接地位置R2は走行面Rと同じ高さであってもよい。
【0055】
下降位置にある上記操作レバー39を上昇方向へ回動させると、この操作レバー39の第2のリンク35に連結された一端部がこの第2のリンク35に設けられた上部ストッパ部材43に当たるから、上記操作レバー39の上昇方向への回動に上記第2のリンク35が連動する。つまり、第2のリンク35は第4の支軸37を支点として図1に矢印で示す方向へ引張りばね45を復元力に抗して引き伸ばしながら回動する。
【0056】
上記第2のリンク35が回動すると、この回動に第1のリンク33が連動し、第3の支軸36を支点として図1に矢印で示す方向へ回動する。それによって、上記第1のリンク33は下方へ変位しながら起立してくるから、上記第1のリンク33のリンクの一端が枢着された支持アーム31が図1に示すように側部フレーム2の下部材2bに枢着された一端の第1の支軸30を支点としてリフトアップ車輪29が設けられた他端が下降する方向へ回動する。
【0057】
それによって、上記リフトアップ車輪29は図3にR2で示す接地位置まで下降する。この接地位置R2は後輪6が接地する走行面Rよりもわずかに低い位置にある。したがって、リフトアップ車輪29を接地位置R2まで下降させることで、上記後輪6が走行面Rから浮くから、この後輪6を車体フレーム1の取付け部7から容易に取り外すことができる。
【0058】
上記リフトアップ車輪29を接地位置R2まで下降させたとき、上記操作レバー39は図3に実線で示す上昇位置にある。しかしながら、上記操作レバー39は上記第2のリンク35に第5の支軸41によって回転下降に連結されている。
【0059】
そのため、上記リフトアップ車輪29を接地位置R2まで下降させた後、上記操作レバー39から手を離せば、この操作レバー39は図3に鎖線で示すように一端部が上記第2のリンク35に設けられた下部ストッパ部材44に当たるまで下降し、操作ハンドル38が設けられた他端部が座部12よりも上方に突出しない高さ位置になる。操作ハンドル38の鎖線で示す位置を中立位置とする。
なお、このときの操作ハンドル38の高さは座部12よりも低い位置或いはほぼ同じ高さであってもよい。
【0060】
上記操作ハンドル38が図3に鎖線で示す中立位置にあるとき、この操作ハンドル38の屈曲部39aは側部フレーム2の下部材2bに設けられたストッパ47に当たらず、このストッパ47と所定の間隔で離間している。つまり、上記操作ハンドル38は中立位置から上記屈曲部39aと上記ストッパ47との間隔分だけさらに下方へ回動させることができる状態にある。
【0061】
このように、リフトアップ車輪29を接地位置R2まで下降させた後、上記後輪6を車体フレーム1の取付け部7から取り外せば、車椅子Vの車幅を小さくできるから、列車内や家屋内の狭い空間部であっても、上記車椅子Vを容易に移動させることが可能となる。
【0062】
上記後輪6が取り外された車椅子Vは、自在キャスタからなる前輪14と、同じく自在キャスタからなるリフトアップ車輪29とによって移動可能となっている。自在キャスタからなる前輪14とリフトアップ車輪29は垂直軸と水平軸とを中心にして回転するようになっている。
【0063】
したがって、上記前輪14とリフトアップ車輪29は、介護者が車体フレーム1に加える力によって走行方向を容易に変更するよう回転する。たとえば、車椅子Vに着座した利用者をベッドに移したい場合、車椅子Vをベッドの側方まで直進させた後、横方向へ押すことで、上記ベッドの側方に横付けすることができる。
【0064】
したがって、車椅子Vをベッドの側面に横付けした後、ベッド側の一方の肘掛け体21をヒンジ26を支点として図3に矢印で示すように車体フレーム1の後方へ回動させて座部12の側方から退避させれば、車椅子Vに着座した利用者をベッドに容易に移動させることができる。
【0065】
このとき、上記操作レバー39の操作ハンドル38が設けられた他端部は座部12から上方に突出しない高さにあるから、上記操作レバー39やその操作ハンドル38が利用者の移動の邪魔になることもない。
【0066】
一方、図3に示すように接地位置R2に下降させたリフトアップ車輪29を非接地位置R1まで上昇させたい場合、同図に鎖線で示すように中立位置にある上記操作レバー39を下方へ押圧して上記ストッパ47に当たるまで回動させる。
【0067】
それによって、上記操作レバー39の一端部によって第2のリンク35に設けられた下部ストッパ部材44が下方へ押圧されるから、上記第2のリンク35が第4の支軸37を支点として第1のリンク33が連結された一端部が図3に矢印で示す方向へ回動するから、それまでほぼ直線状態にあった第2のリンク35の一辺と第1のリンク33とが逆くの字状に屈曲する。
【0068】
第2のリンク35の一辺と第1のリンク33とが逆くの字状に屈曲すると、上記第1のリンク33の一端が第2の支軸34を支点として支持アーム31に作用した引張りばね45の復元力により上記第2のリンク35の一辺に対してさらに大きく屈曲する方向へ回動し、この回動に第2のリンク35も連動し、第1のリンク33が連結された一端が上昇する方向に回動する。
【0069】
その結果、第1のリンク33、第2のリンク35及び操作レバー39は図1に実線で示す状態になる。つまり、上記第2のリンク35が回動することで、この第2のリンク35に設けられた上部ストッパ部材43に操作レバー39の一端部が当たり、操作レバー39の屈曲部39aが側部フレーム2の下部材2bに設けられたストッパ47に当たる状態になる。このときの上記操作レバー39の回転位置を下降位置とする。下降位置にある上記操作レバー39を上昇方向へ回動させれば、上述したように非接地位置R1にあるリフトアップ車輪29を接地位置R2に下降させることができる。
【0070】
このようにして、リフトアップ車輪29を図3に示す接地位置R2から図1に示す非接地位置R1に上昇させると、側部フレーム2に設けられた補助脚49が走行面Rに接地するから、車体フレーム1は前輪14と上記補助脚49とで移動不能に支持されることになる。
【0071】
なお、図1では後輪6が設けられているため、上記補助脚49は走行面Rから浮いているが、後輪6が取り外された状態では上記補助脚49は走行面Rに接地することになる。
【0072】
したがって、後輪6が外された状態で、接地位置R2に下降したリフトアップ車輪29を非接地位置R1に上昇させても、車体フレーム1は前輪14と補助脚49とによって支持されるから、車体フレーム1が不安定な状態になるのを防止することができる。
【0073】
上記後輪6を車体フレーム1に取付けるには、上記リフトアップ車輪29が接地位置R2に下降した状態にあるとき、或いは車体フレーム1が前輪14と上記補助脚49とで移動不能に支持されている状態にあるときのいずれであってもよい。
【0074】
上記第2のリンク35の一辺にはペダル部材51が一端と他端とを上記第3の支軸36と第4の支軸37に連結して一体的に設けられ、このペダル部材51の中途部の突出部52にはペダル53が設けられている。
【0075】
そのため、図1に示すようにリフトアップ車輪29が非接地位置R1に上昇した状態で、操作レバー39を上昇方向へ回動させる代わりに、上記ペダル53を踏み込めば、上記突出部52が上記第4の支軸37を支点として下方へ回動する。
【0076】
それによって、上記突出部52の回動に第1のリンク33と第2のリンク35が連動するから、上記リフトアップ車輪29を非接地位置R1から接地位置R2に下降させることができる。つまり、上記リフトアップ車輪29は上記操作レバー39と上記ペダル53のどちらによっても、非接地位置R1から接地位置R2に下降させることができる。
【符号の説明】
【0077】
1…車体フレーム、6…側部フレーム、6…後輪、12…座部、13…背部、14…前輪、16…足載せユニット、21…肘掛け部、28…昇降機構、29…リフトアップ車輪、33…第1のリンク、35…第2のリンク、38…操作ハンドル、39…操作レバー、43…上部ストッパ部材、44…下部ストッパ部材、49…補助脚、51…ペダル部材、53…ペダル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部及び背部を有する車体フレームと、
この車体フレームの前端部の下部に設けられた自在キャスタからなる前輪と、
上記車体フレームの後端部の幅方向両側に着脱可能に設けられた一対の後輪と、
上記車体フレームの後端部の下部に昇降機構によって接地位置と非接地位置との間で昇降可能に設けられ接地位置にある下降状態で上記前輪とによって上記車体フレームを移動可能支持する自在キャスタからなるリフトアップ車輪と
を具備したことを特徴とする車椅子。
【請求項2】
上記昇降機構は、
上記車体フレームの前後方向の中途部に一端が枢着され後端側に位置する他端に上記リフトアップ車輪が設けられた支持アームと、
この支持アームの他端に一端が枢着された第1のリンクと、
この第1のリンクの他端に一端が枢着され中途部が上記車体フレームに枢着された第2のリンクと、
一端に操作ハンドルが設けられ他端が上記第2のリンクの中途部に枢着された操作レバーと、
上記第2のリンクに上下方向に所定間隔で設けられ上記操作レバーの上昇方向への回動するのを制限する上部ストッパ部材及び下降方向への回動を制限する下部ストッパ部材を備え、
上記操作レバーを、上記上部ストッパ部材に当接する位置からさらに上昇方向に回動させると、上記第2のリンク及び上記第1のリンクが作動して上記リフトアップ車輪を非接地位置から接地位置に下降するよう上記支持アームを回動させ、
上記リフトアップ車輪が接地位置に下降した状態から上記操作レバーを、上記下部ストッパに当接する中立位置まで回動させると、上記第2のリンク及び上記第1のリンクを作動させずに上記操作ハンドルが設けられた一端部が上記座部よりも低い位置に下降し、
上記操作レバーを、上記下部ストッパに当接した上記中立位置からさらに下降方向へ回動させると、上記第2のリンク及び上記第1のリンクを作動させて上記リフトアップ車輪が接地位置から非接地位置に上昇するよう上記支持アームを回動させる構成であることを特徴とする請求項1記載の車椅子。
【請求項3】
上記支持アームの中途部と上記第2のリンクの中途部とには、上記操作レバーを下降方向に回動させて上記リフトアップ車輪を接地位置から非接地位置に上昇させるとき、上記第2のリンクの動作に上記支持アームを弾性的に追従させる弾性部材が張設されていることを特徴とする請求項2記載の車椅子。
【請求項4】
一端が上記第2のリンクの中途部とともに上記車体フレームに枢着され他端が上記第1のリンクの他端に上記第2のリンクの一端とともに枢着されたペダル部材と、このペダル部材の中途部に設けられ踏み込むことで上記第1のリンクと第2のリンクを作動させて上記リフトアップ車輪が非接地位置から接地位置に下降するよう上記支持アームを回動させるペダルとをさらに備えていることを特徴とする請求項2記載の車椅子。
【請求項5】
上記座部の幅方向両側には、肘掛け体が上記座部の幅方向両側から退避可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車椅子。
【請求項6】
上記車体フレームの後端部の下部には、上記後輪を上記車体フレームから取り外して上記リフトアップ車輪を非接地位置に上昇させたときに接地する補助脚が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車椅子。
【請求項7】
上記車体フレームの前端側には上記座部に着座した利用者が足を載せるフットレストを有する足載せユニットが着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の車椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−70871(P2013−70871A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213057(P2011−213057)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000010032)フランスベッド株式会社 (95)