説明

車載用電子機器のヒンジ機構

【課題】高トルクを維持することができるとともに小型化を図ることができる車載用電子機器のヒンジ機構を提供する。
【解決手段】ヒンジ機構1は、第1の筐体と第2の筐体との回動中心となって第1の筐体に回転不可に取り付けられるヒンジ軸39と、このヒンジ軸39に回転可能に貫装され、両面に位相をずらした駆動側噛合い部52,55が形成され、第2の筐体側に回動を拘束される両面噛合い部材34とを備え、駆動側噛合い部52,55に噛合う固定側噛合い部47,59が形成され、各々が同位相で回転不可で且つ軸方向に移動可能なように両面噛合い部材34の両側に配置される一対の片面噛み合い部材33,35を備えている。また、一対の固定側噛み合い部47,59と駆動側噛合い部52,55とを弾性的に押圧可能な弾性部材36を備えている。そして、一対の固定側噛合い部47,59の一方と他方とが、駆動側噛合い部52,55に対して交互に噛合う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車内に載置され、表示部の表示角度を調整自在な車載用電子機器のヒンジ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車内に載置される車載用電子機器においては、表示パネルの角度を運転者や同乗者が見やすいように調整するために、表示パネルを複数の表示角度に段階的に調節できる車載用電子機器のヒンジ機構が用いられている。
【0003】
このような車載用電子機器のヒンジ機構では、相対的に回転する2つの回転部材の摺動面に、互いに噛み合う凹凸をそれぞれ形成して、噛み合い位置が変更されることで、任意の角度調節を行うようにしていた。
【0004】
しかし、細かく角度調節するために、凹凸のピッチを細かくすると、自動車の走行中の大きな振動によって凹凸の凸部が潰れてしまい、凹凸の噛み合いが緩んで角度が勝手に変わってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題点を解決するために、図15に示すように、第1アーム101に凹凸102を形成し、この第1アーム101に対して柔軟性のある材料からなる別ピース103が結合された第2アーム104を組み付けた車載用電子機器のヒンジ機構100が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
上記特許文献1に開示された車載用電子機器のヒンジ機構100は、別ピース103が回転不可に結合された第2アーム104にボルト105が挿通され、第1アーム101の裏側で、ボルト105にナット106がねじ込まれることで組み立てられる。
【0007】
【特許文献1】特開平8−74834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献1に開示された車載用電子機器のヒンジ機構100では、噛み合いを行わずに、係合を凹凸102と別ピース103との摩擦に頼っているため、自動車の走行中の振動等によって、凹凸102と別ピース103とが摺動してしまい、角度が勝手に変わってしまう虞があった。特に、このような車載用電子機器は、最近の傾向で小型化になってきているため、ヒンジ機構100も小型化が望まれており、凹凸102と別ピース103との組み合わせを小型化しようとすると、角度を保持するための所望のトルクが得られないという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高トルクを維持することができるとともに、小型化を図ることができる車載用電子機器のヒンジ機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る車載用電子機器のヒンジ機構は、自動車等の車内に載置され、表示部の表示角度を調整自在な車載用電子機器に適用される車載用電子機器のヒンジ機構であって、第1の筐体と第2の筐体の回動中心であり、該第1の筐体に回転不可に取り付けられるヒンジ軸と、該ヒンジ軸に回転自在に貫装され、両側面に位相をずらして駆動側噛み合い部が形成されるとともに、前記第2の筐体側に回動を拘束される両面噛み合い部材と、前記駆動側噛み合い部に噛み合う固定側噛み合い部が形成されるとともに、それぞれが同位相で前記ヒンジ軸に回転不可で、且つ当該ヒンジ軸の軸方向に移動可能に前記両面噛み合い部材の両側に配置される一対の片面噛み合い部材と、前記一対の固定側噛み合い部と前記駆動側噛み合い部とを弾性的に押圧可能な弾性部材と、を備え、前記一対の固定側噛み合い部が、前記駆動側噛み合い部に対して交互に噛み合うことを特徴としている。
【0011】
このような構成の車載用電子機器のヒンジ機構によれば、第2の筐体が押圧されて第1の筐体に対して回動を始めると、両面噛み合い部材が、ヒンジ軸に回転不可な一対の片面噛み合い部材に相対的に回動される。このとき、両面噛み合い部材において位相のずれている駆動側噛み合い部が、一対の片面噛み合い部材において同位相の固定側噛み合い部の一方に噛み合うことで、この位置で第2の筐体が固定される。そして、この位置から第2の筐体がさらに押圧されると、駆動側噛み合い部が固定側噛み合い部の他方に噛み合うことで、次の位置で第2の筐体が固定される。これにより、駆動側噛み合い部の位相差によって固定側噛み合い部に順次噛み合わせることができ、従来のものと比べて、噛み合い構造とすることで、高トルクを維持することができるとともに小型化を図ることができる。
【0012】
また、本発明に係る車載用電子機器のヒンジ機構は、一方の前記片面噛み合い部材が、前記ヒンジ軸の軸方向への移動を制限され、前記弾性部材が他方の前記片面噛み合い部材を前記一方の片面噛み合い部材側に向けて押圧することが好ましい。
【0013】
このような構成の車載用電子機器のヒンジ機構によれば、ヒンジ軸の軸方向への移動を制限されている一方の片面噛み合い部材に対して、弾性部材が他方の片面噛み合い部材を押圧することで、噛み合い時の係合トルクを大きくすることができるため、振動等の外乱に対して十分に抗することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車載用電子機器のヒンジ機構によれば、表示部の表示角度を調整自在な車載用電子機器に適用される車載用電子機器のヒンジ機構において、高トルクを維持することができるとともに、小型化を図ることができる車載用電子機器のヒンジ機構を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0016】
図1〜図14は本発明に係る車載用電子機器のヒンジ機構の一実施形態を示すもので、図1は本発明の一実施形態に係る車載用電子機器のヒンジ機構を適用した車載用電子機器の外観斜視図、図2は図1の車載用電子機器における第1の筐体の分解外観斜視図、図3は図1の車載用電子機器における第2の筐体の分解図を含む外観斜視図、図4は図1のヒンジ機構の分解斜視図、図5は図4のヒンジ機構の組立後の外観斜視図である。
【0017】
また、図6(A)は図1のヒンジ機構に適用される片面噛み合い部材の平面図、図6(B)は図6(A)の正面図、図7(A)は図1のヒンジ機構に適用される両面噛み合い部材の平面図、図7(B)は図7(A)の正面図、図7(C)は図7(A)の底面図、図8は図1のヒンジ機構に適用される一対の片面噛み合い部材と両面噛み合い部材の展開図、図9は図1のヒンジ機構の作用を説明する第1の位置での外観斜視図、図10は図9の内部構造の平面図、図11は図9の第1の位置から第2の位置に回動する途中の内部構造を平面図、図12は図1のヒンジ機構の作用を説明する第2の位置での外観斜視図、図13は図12の内部構造の平面図、図14(A),(B),(C),(D),(E)は図1のヒンジ機構の作用を説明する第1の位置から第2の位置までのそれぞれ噛み合い展開図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る車載用電子機器のヒンジ機構が適用される車載用電子機器10は、第1の筐体11と、一対のヒンジカバー12,13を回動基端側に有して第1の筐体11に回動自在に連結された第2の筐体14とを備えている折り畳み式信号表示器である。
【0019】
車載用電子機器10は、自動車等の車両内に配置されることで、例えば大型トラックのタイヤ空気圧を第2の筐体14の表示部15に表示して、タイヤの空気圧状態を運転者や同乗者に知らせる。この表示部15では、大型トラックのトレーラヘッドのタイヤ空気圧が4個のタイヤマーク16にそれぞれ表示され、トレーラのタイヤ空気圧が8個のタイヤマーク17にそれぞれ表示される。
【0020】
図2に示すように、車載用電子機器10の第1の筐体11は、ロアケース18と、このロアケース18に組み付けられるアッパーケース19とを備えている。さらに、ロアケース18にはライトガイド18aを備え、アッパーケース19にはスイッチプレート19aを備えている。
【0021】
ロアケース18には、回路基板20がねじ21等によって固定され、回路基板20上の不図示のプリント配線に電気的に接続された接続電線22が後方に向けて引き出されている。ハーネス22は、車体に搭載されている不図示の制御回路に接続されている。そして、アッパーケース19の後端部にヒンジ機構1,2の一部を構成する固定ブロック23,24が、予め定められた間隔でそれぞれ固定されている。
【0022】
図3に示すように、第2の筐体14は、フロントケース25と、このフロントケース25に組み付けられるリアケース26とを備えている。
【0023】
フロントケース25は、表示部15の裏側に液晶パネル27がねじ21によって固定されるようになっている。液晶パネル27は、テープ電線(FPC)28の一端部が電気的に接続されている。テープ電線28の他端部は、第1の筐体11内の回路基板20(図2参照)に電気的に接続されている。
【0024】
また、フロントケース25には、回動基端側に一対のヒンジケース固定部29,30が、予め定められた間隔で形成されている。そして、第1の筐体11の一対のヒンジカバー12,13にヒンジ機構1,2がそれぞれ組み付けられている。
【0025】
図4、図5に示すように、ヒンジ機構1は、固定ブロック23と、軸受部材31と、クレビスピン32と、一方の片面噛み合い部材33と、両面噛み合い部材34と、他方の片面噛み合い部材35と、弾性部材である付勢ばね36と、間隙部材であるワッシャ37と、ヒンジケース38と、ヒンジ軸であるシャフト39とから構成されている。なお、他方のヒンジ機構2は、この一方のヒンジ機構1と同一の部品構成を有するため、以下の説明では同様の符号を付して説明することとする。
【0026】
固定ブロック23は、基端部に角孔形状の軸受部材拘束孔40を有し、先端部に軸状のロアケース固定部41を有している。
【0027】
軸受部材31は、外形が固定ブロック23の軸受部材拘束孔40に挿入される略直方体状に形成されている。軸受部材31の中央部には、断面が長円形になるように円柱の側部を切り欠いたシャフト39の軸部65が回転不能に挿入されるように、軸部65の断面長円形よりも若干大きな長円形に形成される軸受部材側シャフト拘束孔42を有している。また、軸受部材31には、その側部にクレビスピン挿入孔43が軸受部材側シャフト拘束孔42に貫通して形成されている。また、クレビスピン32は、丸い軸形状に形成されている。
【0028】
一方の片面噛み合い部材33は、ジュラコン等の樹脂材料を用いて略円筒形状に形成されており、中央部に軸受部材31の軸受部材側シャフト拘束孔42と同一の長円形に形成される片面噛み合い部材側シャフト拘束孔44を有している。また、一方の片面噛み合い部材33は、両面噛み合い部材34側にテーパ面付きの山部45と谷部46とを周方向に連続的に形成した固定側噛み合い部47を有している。
【0029】
両面噛み合い部材34は、一方の片面噛み合い部材33と同様のジュラコン等の樹脂材料を用いて板形状に形成され、前記一方の片面噛み合い部材33の円筒と直径を一辺とする正方形の半分を円弧にした形状に形成されている。両面噛み合い部材34は、前記円弧が前記一方の片面噛み合い部材33の円筒の半円と略同一に形成され、この円弧の対向する外周面にヒンジケース拘束面48を有し、略中央部にシャフト39が回転自在に挿通される円形のシャフト孔49を有している。また、両面噛み合い部材34は、その一方の片面噛み合い部材33側にテーパ面付きの山部50と谷部51とを周方向に連続的に形成した一方の駆動側噛み合い部52を有している。また、その他方の片面噛み合い部材35側にテーパ面付きの山部53と谷部54とを周方向に連続的に形成した他方の駆動側噛み合い部55を有している。
【0030】
他方の片面噛み合い部材35は、一方の片面噛み合い部材33と同様のジュラコン等の樹脂材料を用いて一方の片面噛み合い部材33と同形状の略円筒形状に形成されており、中央部に軸受部材31の軸受部材側シャフト拘束孔42と同一の長円形に形成される片面噛み合い部材側シャフト拘束孔56を有している。また、他方の片面噛み合い部材35は、両面噛み合い部材34側にテーパ面付きの山部57と谷部58とを周方向に連続的に形成した固定側噛み合い部59を有している。
【0031】
付勢ばね36は、ねじりコイルばねである。また、ワッシャ37は、中央部にシャフト39に拘束されるシャフト拘束孔60を有するため、付勢ばね36がヒンジケース38に接触しないようにする機能を有している。
【0032】
ヒンジケース38は、亜鉛ダイキャスト製であり、筒部61内に両面噛み合い部材34を拘束挿入するために両面噛み合い部材34の外形よりも若干小さな断面形状を有する両面噛み合い部材拘束孔62を有し、固定孔63を有するフランジ部64が筒部61側面から突設されている。また、ヒンジケース38は、両面噛み合い部材拘束孔62の一方を塞ぐための側壁61a(図9参照)が設けられ、側壁61aの中央部に、両面噛み合い部材34のシャフト孔49と同径でシャフト39が回転自在に挿通される円形のシャフト孔(不図示)が形成されている。ここで、シャフト39は、金属製であり、クレビスピン32が挿通されるクレビスピン挿入孔67を先端近傍に有する軸部65と、後端に頭部66を有している。
【0033】
ヒンジケース38のシャフト孔(不図示)にシャフト39の軸部65を挿入し、ワッシャ37、付勢ばね36、他方の片面噛み合い部材35および両面噛み合い部材34が軸部65に順次挿通されると同時に、ヒンジケース38の両面噛み合い部材拘束孔62に挿入される。さらに、軸部65に、一方の片面噛み合い部材33および軸受部材31が順次挿通され、軸受部材31のクレビスピン挿入孔43およびシャフト39のクレビスピン挿入孔67にクレビスピン32が挿入される。これにより、一方の片面噛み合い部材33は、シャフト39の軸方向への移動が制限され、他方の片面噛み合い部材35は、弾性変形されている付勢ばね36によって一方の片面噛み合い部材33の方向に押圧され、一方の片面噛み合い部材33、両面噛み合い部材34および他方の片面噛み合い部材35が互いに弾性的に係合する。
【0034】
そして、軸受部材31が固定ブロック23の軸受部材拘束孔40に挿入されることで、軸受部材31が固定ブロック23に拘束される。このとき、軸受部材31の軸受部材側シャフト拘束孔42に拘束されるシャフト39の軸部65に、片面噛み合い部材33,35およびワッシャ37が拘束される。
【0035】
また、両面噛み合い部材34がヒンジケース38の両面噛み合い部材拘束孔62内に挿入されることで、両面噛み合い部材34のヒンジケース拘束面48がヒンジケース38内に拘束される。
【0036】
図6(A),(B)に示すように、一方の片面噛み合い部材33の固定側噛み合い部47は、山部45と谷部46とが、それぞれ60度のピッチに設定されており、6個の山部45と6個の谷部46とを有している。なお、他方の片面噛み合い部材35の固定側噛み合い部59は、一方の片面噛み合い部材33の固定側噛み合い部47と同一構成のため説明は省略する。
【0037】
図7(A),(B),(C)に示すように、両面噛み合い部材34の一方の駆動側噛み合い部52は、山部50と谷部51とが、それぞれ60度のピッチに設定されており、6個の山部50と6個の谷部51とを有している。
【0038】
また、両面噛み合い部材34の他方の駆動側噛み合い部55は、山部53と谷部54とが、それぞれ60度のピッチに設定されており、6個の山部53と6個の谷部54とを有している。この他方の駆動側噛み合い部55の山部53と谷部54は、前述した一方の駆動側噛み合い部52の山部50と谷部51に対して30度の位相差を有している。
【0039】
図8に示すように、一方の片面噛み合い部材33の固定側噛み合い部47および他方の片面噛み合い部材35の固定側噛み合い部59は、それぞれの山部45,57の仰角α1が、例えば120度に、高さ寸法L1が、例えば0.5mmに設定されている。また、それぞれの谷部46,58の幅寸法L2が、例えば0.7mmに設定されている。
【0040】
両面噛み合い部材34は、一方の駆動側噛み合い部52および他方の駆動側噛み合い部55において、山部50,53の仰角α2が、例えば130度に、高さ寸法L3が、例えば0.3mmに設定されている。また、それぞれの片面噛み合い部材33,35および両面噛み合い部材34の外周長さ寸法L4は、例えば14mmを有している。
【0041】
次に、図9〜図14を参照して、ヒンジ機構1,2の動作について説明する。
図9に示すように、一方のヒンジ機構1は、固定ブロック23がアッパーケース19の後端部の一方のヒンジカバー12内に収容され、ロアケース固定部41がロアケース18に固定される(図2参照)。また、同時的に、他方のヒンジ機構2は、固定ブロック24が、アッパーケース19の後端部の他方のヒンジカバー13内に収容され、ロアケース固定部41がロアケース18に固定される(図2参照)。
【0042】
また、一方のヒンジ機構1は、軸受部材31が固定ブロック23の軸受部材拘束孔40に一方側から挿入され、他方のヒンジ機構2は、軸受部材31が固定ブロック24の軸受部材拘束孔40に他方側から挿入される。これによって、両軸受部材31が両固定ブロック23,24に拘束されて取り付けられることで、シャフト39を介して、一方の片面噛み合い部材33および他方の片面噛み合い部材35が回転を拘束される。
【0043】
そして、一方のヒンジ機構1は、ヒンジケース38のフランジ部64が、フロントケース25の一方のヒンジケース固定部29にねじ固定され、他方のヒンジ機構2は、ヒンジケース38のフランジ部64が、フロントケース25の他方のヒンジケース固定部30にねじ固定される(図3参照)。
【0044】
図9に示す第2の筐体14の閉塞時には、各ヒンジケース38の各フランジ部64が第1の位置A1にある。そのため、図10および図14(A)に示すように、両面噛み合い部材34は、一方の駆動側噛み合い部52の山部50が、一方の片面噛み合い部材33の固定側噛み合い部47の山部45に乗り上げて係合されていない。しかし、他方の駆動側噛み合い部55の山部53が他方の片面噛み合い部材35の固定側噛み合い部59の谷部58に係合され、他方の駆動側噛み合い部55の谷部54が他方の片面噛み合い部材35の固定側噛み合い部59の山部57に係合されている。そのため、付勢ばね36により両面噛み合い部材34に向けて押圧されている他方の片面噛み合い部材35に与えられている押圧力によって、大きな拘束トルクが発生している。
【0045】
次に、第2の筐体14が第1の筐体11から離れるように回動されると、各ヒンジケース38の各フランジ部64が回動を始める。
【0046】
すると、図11に示すように、シャフト39を介して回転が拘束されている一方の片面噛み合い部材33および他方の片面噛み合い部材35に対して、両面噛み合い部材34が、図14(A)中の矢印方向へ回動を始める。このとき、付勢ばね36によって一方の片面噛み合い部材33に向けて押圧されている他方の片面噛み合い部材35は、付勢ばね36の付勢力に抗してシャフト39の軸方向(図11中左方向)に移動するため、両面噛み合い部材34は、他方の片面噛み合い部材35に押圧されながら回動する。
【0047】
これにより、図14(B)、図14(C)、図14(D)に示すように、両面噛み合い部材34は、一方の駆動側噛み合い部52の山部50が、一方の片面噛み合い部材33の固定側噛み合い部47の谷部46に入り始める。そして、他方の駆動側噛み合い部55の山部53が、他方の片面噛み合い部材35の固定側噛み合い部59の谷部58から外れて固定側噛み合い部59の次の山部57に乗り上げ始める。同時に、他方の駆動側噛み合い部55の谷部54が他方の片面噛み合い部材35の固定側噛み合い部59の山部57から外れ始める。このときの開閉トルクは、例えば1.2kgf・cm(50N・mm)が発生している。
【0048】
その後、図13、図14(E)に示すように、両面噛み合い部材34は、一方の駆動側噛み合い部52の山部50が、一方の片面噛み合い部材33の固定側噛み合い部47の谷部46に係合される。そして、他方の駆動側噛み合い部55の山部53が、他方の片面噛み合い部材35の固定側噛み合い部59の次の山部57に乗り上げる。
【0049】
これにより、図12に示すように、各ヒンジケース38の各フランジ部64が、第1位置A1から30度の回動ストロークを経た後の第2の位置A2に係合されて第2の筐体14がロックされる(図1参照)。このとき、付勢ばね36により両面噛み合い部材34に向けて押圧されている他方の片面噛み合い部材35に与えられている押圧力によって、大きな拘束トルク、例えば0.4kgf・cm(40N・mm)が発生して、強固な拘束が行われることになる。
【0050】
以後、第2の筐体14が第2位置A2からさらに押圧された際に、30度毎のストロークでロックを繰り返す。また、逆方向に押圧された場合も同様にロックを繰り返すことになる。
【0051】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る車載用電子機器のヒンジ機構によれば、第2の筐体14が押圧されて第1の筐体11に対して回動を始めると、両面噛み合い部材34が、シャフト39に回転不可な一対の片面噛み合い部材33,35に相対的に回動される。このとき、両面噛み合い部材34の位相のずれている駆動側噛み合い部52,55が、一対の片面噛み合い部材33,35の同位相の固定側噛み合い部47,59の一方に噛み合うことで、この位置で第2の筐体14がロックされる。そして、この位置から第2の筐体14がさらに押圧されると、駆動側噛み合い部52,55が、固定側噛み合い部47,59の他方に噛み合うことで、次の位置で第2の筐体14がロックされる。
【0052】
すなわち、第2の筐体14は、第1の筐体11に対して、各噛み合い部材33,34,35の山部及び谷部のピッチの半分の30度毎に回転がロックされる。これにより、噛み合い部材の山部及び谷部のピッチは、ヒンジ機構の回転ピッチの2倍のピッチで形成することができる。仮に、噛み合い部材の山部と谷部とを30度のピッチで形成した場合、山部及び谷部が破損することがないように形成すると、山部の高さ(又は谷部の深さ)は低い(又は浅い)ものとなり、トルクが低くなってしまう。これに対して本発明は、山部と谷部とを30度の2倍の60度のピッチで形成することができるため、山部及び谷部が破損することがないように形成しても、山部の高さ(又は谷部の深さ)を高く(又は深く)することができる。したがって、従来のものと比べて、高トルクを維持することができる。また、従来のものでも大型化すれば高トルクは得られるが、本発明は大型化することなく高トルクを維持することができる。
【0053】
また、本発明の一実施形態に係る車載用電子機器のヒンジ機構によれば、シャフト39の軸方向への移動が制限されている一方の片面噛み合い部材33に対して、付勢ばね36が他方の片面噛み合い部材35を押圧することで、噛み合い時の係合トルクを大きくすることができる。これにより、振動等の外乱に対して十分に抗することができる。
【0054】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載用電子機器のヒンジ機構を適用した車載用電子機器の外観斜視図である。
【図2】図1の車載用電子機器における第1の筐体の分解外観斜視図である。
【図3】図1の車載用電子機器における第2の筐体の分解図を含む外観斜視図である。
【図4】図1のヒンジ機構の分解斜視図である。
【図5】図4のヒンジ機構の組立後の外観斜視図である。
【図6】(A)は図1のヒンジ機構に適用される片面噛み合い部材の平面図、(B)は(A)の正面図である。
【図7】(A)は図1のヒンジ機構に適用される両面噛み合い部材の平面図、(B)は(A)の正面図、(C)は(A)の底面図である。
【図8】図1のヒンジ機構に適用される一対の片面噛み合い部材と両面噛み合い部材の展開図である。
【図9】図1のヒンジ機構の作用を説明する第1の位置での外観斜視図である。
【図10】図9の内部構造の平面図である。
【図11】図9の第1の位置から第2の位置に回動する途中の内部構造を平面図である。
【図12】図1のヒンジ機構の作用を説明する第2の位置での外観斜視図である。
【図13】図12の内部構造の平面図である。
【図14】(A),(B),(C),(D),(E)は図1のヒンジ機構の作用を説明する第1の位置から第2の位置までのそれぞれ噛み合い展開図である。
【図15】従来の車載用電子機器のヒンジ機構の概略図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ヒンジ機構
2 ヒンジ機構
10 車載用電子機器
11 第1の筐体
14 第2の筐体
15 表示部
33 一方の片面噛み合い部材(片面噛み合い部材)
34 両面噛み合い部材
35 他方の片面噛み合い部材(片面噛み合い部材)
36 付勢ばね(弾性部材)
39 シャフト(ヒンジ軸)
47 一方の固定側噛み合い部(固定側噛み合い部)
52 一方の駆動側噛み合い部(駆動側噛み合い部)
55 他方の駆動側噛み合い部(駆動側噛み合い部)
59 他方の固定側噛み合い部(固定側噛み合い部)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車等の車内に載置され、表示部の表示角度を調整自在な車載用電子機器に適用される車載用電子機器のヒンジ機構であって、
第1の筐体と第2の筐体の回動中心であり、該第1の筐体に回転不可に取り付けられるヒンジ軸と、
該ヒンジ軸に回転自在に貫装され、両側面に位相をずらして駆動側噛み合い部が形成されるとともに、前記第2の筐体側に回動を拘束される両面噛み合い部材と、
前記駆動側噛み合い部に噛み合う固定側噛み合い部が形成されるとともに、それぞれが同位相で前記ヒンジ軸に回転不可で、且つ当該ヒンジ軸の軸方向に移動可能に前記両面噛み合い部材の両側に配置される一対の片面噛み合い部材と、
前記一対の固定側噛み合い部と前記駆動側噛み合い部とを弾性的に押圧可能な弾性部材と、を備え、
前記一対の固定側噛み合い部が、前記駆動側噛み合い部に対して交互に噛み合うことを特徴とする車載用電子機器のヒンジ機構。
【請求項2】
一方の前記片面噛み合い部材が、前記ヒンジ軸の軸方向への移動を制限され、前記弾性部材が他方の前記片面噛み合い部材を前記一方の片面噛み合い部材側に向けて押圧することを特徴とする請求項1記載の車載用電子機器のヒンジ機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−269548(P2009−269548A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123641(P2008−123641)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】