説明

車輪

【課題】本発明は、交換時期が明瞭な車輪を提供することを課題とする。
【解決手段】ホイール21Aにおけるリム部50の外周面には、周方向に沿って突起51Aが複数設けられている。該突起51Aは、タイヤ22と異なる色に着色され、かつ該タイヤ22より硬い材料とされ、該突起51Aを被覆するようにタイヤ22が該リム部50の外周面に被着されている。前記タイヤ22が使用により摩耗してくると、該突起51Aの先端52Aが表面に露出した状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば老人や身障者が利用する歩行補助車やベビーカーのような手押し車に用いられる車輪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば老人や身障者が利用する歩行補助者やベビーカーのような手押し車には、車輪が取り付けられており、該車輪は、ホイールと該ホイールに配設されたタイヤとで構成されていることが一般的である。また、該車輪にあっては、使用によりタイヤが摩耗してくるが、一定以上摩耗するとタイヤが劣化したり亀裂を生じたりする可能性がある。更には、上記劣化や亀裂等によって車輪のブレーキの効きが悪くなったりタイヤがホイールから外れてしまったりする不具合が生じる。上記手押し車は上述のように老人等が使用するため、上記不具合に敏感に反応して対処することが非常に困難な場合が多い。したがって、適正時期に車輪ごとあるいは該タイヤを新しいものに交換する必要がある。
【0003】
そこで、タイヤの摩耗をその外観から直に認識することができるように、タイヤの外周部が摩耗したときに該タイヤと異なる色に着色されたマーク部材が該タイヤの外周に露出するようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−290628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来構成には、次のような問題がある。すなわち、タイヤ表面に多数の傷や汚れがあると前記マーク部材が視認しにくくなる問題がある。特に視力が低下している老人や身障者等では、色の相違だけで適格にタイヤの摩耗状態を判断することは極めて困難である。
そこで、本発明は、老人や身障者等であっても交換時期の判断が容易で確実となる車輪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、リム部を備えたホイールと、該リム部の外周に配設されたタイヤとからなる車輪において、該リム部の外周面には、凸部が設けられ、該凸部を被覆した状態でタイヤが該リム部の外周面に被着され、さらに該凸部は、該タイヤより硬質の材料からなり、かつ、該凸部の先端の色は前記タイヤと異なる色に設定され、使用により該タイヤが摩耗してくると、前記凸部の先端がタイヤ表面に露出した状態となることを特徴とする車輪である。
【0007】
上記構成にあっては、使用によりタイヤが摩耗してくると、当初タイヤにより被覆されていた前記凸部の先端がタイヤ表面に露出する。このように凸部がタイヤ表面に露出すると、該凸部先端はタイヤと色が異なるため使用者によって視認されることとなる。さらに、車輪が使用時に転がる過程で該凸部が地面と接触するようになるところ、該凸部はタイヤより硬質な材料からなるため、該凸部がタイヤで被覆されている正常状態に比して高齢者等にも聞きやすい高い音あるいは大きい音が生じるようになり、使用者の聴覚でも容易に該交換時期を知ることができる。また、上記材料からなる凸部が地面と接触するときには前記正常状態に比して強い振動が使用者の手に伝わるようになり、使用者が手から感じる振動によっても該交換時期を知ることができる。なお、前記凸部の高さや、前記凸部を被覆するタイヤ部分の厚さ等を適宜設定することにより、該凸部の先端が露出するタイミング、すなわち前記車輪の交換時期を製造者側で適宜設定することができる。
【0008】
さらに、前記リム部における左右一対の周縁に、それぞれ該リム部の外周面に対して略垂直に立ち上がるフランジ部を該ホイールの外周に沿って連続状に設け、該一対のフランジ部間に前記タイヤの一部が介在する構成が望ましい。
【0009】
かかる構成とすると、前記タイヤが前記一対のフランジ部によって左右両側から支持されることとなり、該リム部に対するタイヤの位置ずれが防止でき、タイヤがホイールから外れにくくなる。
【0010】
また、前記凸部は、該リム部の外周面に設けられた突起であり、該突起が該リム部の周方向に間隔をおいて複数設けられている構成が好ましい。
【0011】
かかる構成とすると、地面に突起の先端が接触する度に生ずる断続的な音及び振動の変化が使用者に交換時期をより適格に知らせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車輪は、使用者、特に老人や身障者等がその交換時期の判断を容易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】手押し車の外観斜視図
【図2】実施例1にかかる車輪の正面図であって、左側が外観正面図、右側がタイヤを図示しない正面図
【図3】図2のA−A線断面図
【図4】使用状態を示す車輪の断面図
【図5】実施例2にかかる車輪の正面図であって、左側が外観正面図、右側がタイヤを図示しない正面図
【図6】図5のB−B線断面図
【図7】ホイールの断面図
【図8】使用状態を示す車輪の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を、添付図面に従って説明する。
図1に示す手押し車1は、老人や身障者用の歩行補助車であり、手押し車1のフレーム2は左右一対の主フレーム3,3と、左右一対の副フレーム4,4とを具備している。
【0015】
前記主フレーム3は、起立した背もたれ部31と、該背もたれ部31の下端から斜め前方に延設された主体部32と、該主体部32の下端から下方に向けて屈曲延設された前脚部33とからなる。また、副フレーム4は、主フレーム3の主体部32に回動可能に接続された主体部41と、該主体部41の下端から下方に向けて屈曲延設された後脚部42とからなる。
【0016】
また、前記左右一対の背もたれ部31,31であって、その上端間は、把持杆5が差し渡されて連続しており、更にその下側には、背もたれ6が差し渡されている。また、左右の前脚部33,33間には、横梁34が差し渡されている。更に、該前脚部33の下端部には、前側の車輪7,7が左右首振り可能に枢着されている。これに対し、前記後脚部42の下端部には、後側の車輪7,7が枢着されている。
【0017】
また、前記主フレーム3の主体部32と、前記副フレーム4の主体部41との間には、物入れ9を有する座部10が懸架されており、該座部10は左右の主フレーム3における主体部32の根端から水平に差し出されている座部支持フレーム11によって支持されている。
【0018】
また、前記主フレーム3における背もたれ部31の上端部には、ブレーキハンドル12が前後動可能に取り付けられている。そして、該ブレーキハンドル12には、ブレーキワイヤ14の一端が接続されており、該ブレーキワイヤ14の他端が、後側の車輪7に当接するブレーキ手段15に接続されている。
【0019】
かかる構成にあって、使用者が該手押し車1を把持杆5を持って押すと、車輪7が転動して前進し、ブレーキハンドル12を手前に引くと、前記ブレーキ手段15が車輪7に当接し、該車輪7の転がりが阻止されてブレーキがかかる。
【0020】
以下、上記車輪7の詳細な構造について説明する。
【0021】
〈実施例1〉
図2に示すように実施例1の車輪7Aは、ホイール21Aと、該ホイール21Aに配設されるタイヤ22とで構成されている。該ホイール21Aは、中心に車軸取付部25が配された主板部23と、該主板部23の外周に設けられたリム部50とを備えている。なお、図2における主板部23は、その表面の具体的形状を省略して示している。
【0022】
さらに、図2〜4に示すように、前記リム部50の外周面には凸部が設けられている。具体的に該凸部は、リム部50の外周面に設けられた突起51Aであり、該突起51Aは、該リム部50の周方向に間隔をおいて複数設けられている。なお、本実施例において、ホイール最大径(突起先端52A含む)L1は120mmとされ、リム部50の車軸方向CLの巾L2は33mmとされ、突起51Aの周方向の巾L3は8mmとされ、突起51Aの車軸方向CLの巾L4は5mmとされ、突起高さL5は11.5mmとされている。また、突起51Aは、ホイール21A周りに45度おきに配置され、単一のホイール21Aに対して全8個とされている。
【0023】
また、前記リム部50には、該リム部50における左右一対の周縁から外周面に対して略垂直に立ち上がるフランジ部53,53が設けられている。該フランジ部53は、リム部50の外周に沿って連続状に設けられている。なお、本実施例において、該フランジ部53におけるリム部外周面からの高さL7は5mmとされている。
【0024】
そしてさらに、該リム部50の外周面には、前記突起51Aを被覆するようにしてタイヤ22が被着されている。このようにタイヤ22がリム部50に配設された状態にあっては、前記左右一対のフランジ部53,53間に該タイヤ22の一部が介在した状態となる(図3参照)ため、該タイヤ22は該ホイール21Aから外れにくい。なお、前記突起51A上のタイヤ部分の厚さL6は5mmとされている。
【0025】
前記突起51Aを含むホイール21Aは、ポリプロピレン製(硬度100:JIS K 7202−2におけるRスケールのロックウエル硬度)とされ、前記タイヤ22は、低発泡エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)製(硬度75度:JIS K 6253タイプEデュロメータ)とされ、該突起51Aは該タイヤ22より硬い材料で構成されている。さらに、該突起51Aは、タイヤ22と異なる色に着色されている。
【0026】
上記手押し車1に取り付けられた前記車輪7Aにあって、前記タイヤ22が使用により摩耗してくると、図4に示すように、タイヤ22の方が突起51Aよりも柔らかいため、摩耗による減りが早く、ついには前記突起51Aの先端52Aがタイヤ22表面に露出した状態となる。かかる状態にあっては、タイヤ22と異なる色の該先端52Aが該タイヤ22の中央に出現して目印となるため、使用者は該先端52Aを容易に視認することができる。さらに、該突起51Aはタイヤ22に比して硬いため、車輪7Aが転動して該突起51Aの先端52Aが地面と接触する度に、タイヤ22によって該突起51Aが被覆されている正常状態に比して高いあるいは大きい音が鳴る。また、タイヤ22より硬い該突起51Aの先端52Aが地面と接触する度に、該正常状態に比して強い振動が使用者の手に伝わることとなる。
かくして、使用者は、視覚、聴覚、及び手に伝わる振動によって前記突起51Aの先端52Aがタイヤ表面に露出したことを知り、タイヤ22または車輪7Aの交換時期であることを認識する。
【0027】
〈実施例2〉
実施例2の車輪7Bの構造について、図5〜8に従って説明する。実施例1と同様の部分は説明を省略する。
ホイール21Bにおけるリム部50の外周面には、該ホイール21Bの周方向に沿って凸部としての凸条51Bが連続状に設けられている。該凸条51Bは、図7等に示すように、リム部50の外周面に対してほぼ垂直に起立しており、先端縁52Bと、該凸条51Bの中間部に左右方向に張り出した張り出し部54とを有している。さらに、該凸条51Bの基端部には、車軸方向CLに貫通した貫通孔55が複数設けられている。そして、該凸条51Bを被覆するようにタイヤ22が該リム部50の外周面に被着されている(図6参照)。
【0028】
次に、上記車輪7Bの製造方法を説明する。
車輪7Bは、成形済みの前記ホイール21Bを金型内にインサートし、それからリム部50の外周にタイヤ22を射出成形して製造する。
さらに詳述すると、前記ホイール21Bは、前記凸条51Bを含めて一体成形されるものであり、材料としてポリプロピレンが選択される。また、前記タイヤ22は、材料としてエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が選択される。そして、前記タイヤ22が射出成形される際には、流動状態にあるタイヤの一部が、金型内にインサートされているホイール21Bの貫通孔55に充填されながら成形されることとなる(図6参照)。このように、貫通孔55内にタイヤ22が充填された構成であると、貫通孔55内におけるタイヤ22の一部を介して、該タイヤ22と該ホイール21Bとが強固に結合することとなり、タイヤ22とホイール21Bとの密着強度が向上する。また、上述のように、該凸条51Bには、張り出し部54が設けられており、該張り出し部54の周囲にタイヤ22が融着するため、タイヤ22がリム部50の外周から剥離してしまうことが防止される。
【0029】
本実施例において、ホイール直径L8(先端縁52B含む)は120mmとされ、リム部50の車軸方向CLの巾L9は10mmとされ、凸条高さL10は8.2mmとされ、張り出し部54からの先端縁高さL11は1.5mmとされ、先端縁52Bの車軸方向CLの巾L12は2mmとされ、先端縁52B上のタイヤ部分の厚さL13は3.5mmとされている。また、該凸条51Bはタイヤ22より硬い材料で構成され、かつ該タイヤ22と異なる色に着色されている。
【0030】
上記車輪7Bにあって、前記タイヤ22が使用により摩耗してくると、図8に示すように、前記凸条51Bの先端縁52Bが表面に露出した状態となる。そして実施例1と同様の効果が得られる。
【0031】
本実施例は、本発明の範囲内で適宜変更であることは勿論である。なお、上述した車輪7(7A,7B)は、手押し車1における前側及び/又は後側の車輪7として採用できる。また、前記凸部(突起51A又は凸条51B)とタイヤ22は、上記に挙げた以外の材料を各々選定しても勿論よい。なお、前記凸部(突起51A又は凸条51B)とタイヤ22の硬度は、JIS K 6253に準拠したタイプAの計測器で測定することが提案される。また、凸部(突起51A又は凸条51B)とタイヤ22は、異なる色とされるが、例えばタイヤを非蛍光色、突起を蛍光色にするなどして、明暗差を付けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、手押し車に利用することができる車輪であり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
7,7A,7B 車輪
21A,21B ホイール
22 タイヤ
50 リム部
51A 突起(凸部)
52A 先端
53 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム部を備えたホイールと、該リム部の外周に配設されたタイヤとからなる車輪において、
該リム部の外周面には、凸部が設けられ、該凸部を被覆した状態でタイヤが該リム部の外周面に被着され、さらに該凸部は、該タイヤより硬質の材料からなり、かつ、該凸部の先端の色は前記タイヤと異なる色に設定され、使用により該タイヤが摩耗してくると、前記凸部の先端がタイヤ表面に露出した状態となることを特徴とする車輪。
【請求項2】
前記リム部における左右一対の周縁に、それぞれ該リム部の外周面に対して略垂直に立ち上がるフランジ部を該ホイールの外周に沿って連続状に設け、該一対のフランジ部間に前記タイヤの一部が介在する請求項1記載の車輪。
【請求項3】
前記凸部は、該リム部の外周面に設けられた突起であり、該突起が該リム部の周方向に間隔をおいて複数設けられている請求項1又は請求項2記載の車輪。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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