軌道消雪装置
【課題】散水スプリンクラー方式の軌道消雪装置において、配管に伸縮が生じても継手の破損や屈曲等が生じず、また伸縮が原因で漏れなどが生じることのない軽量で配管施工がやり易い軌道消雪装置を提供すること。
【解決手段】分岐継手21を介して樹脂管からなる散水管22同士を電気融着により接続し、分岐継手21の開口接続部21aに散水スプリンクラー23を接続して構成したスプリンクラー配管ユニット2を、エルボ管222を介して送水管部1の第2管継手12に電気融着により接続すると共に、支持部3で軸方向に摺動自在に支持する。このように構成して、スプリンクラー配管ユニット2の上流端が固定端Kとなり、一方、下流端が何ら拘束されていないことで自由端Jとなって、スプリンクラー配管ユニット2に気温変化による熱伸縮が生じても、自由端J側がその熱伸縮に応じて移動する。
【解決手段】分岐継手21を介して樹脂管からなる散水管22同士を電気融着により接続し、分岐継手21の開口接続部21aに散水スプリンクラー23を接続して構成したスプリンクラー配管ユニット2を、エルボ管222を介して送水管部1の第2管継手12に電気融着により接続すると共に、支持部3で軸方向に摺動自在に支持する。このように構成して、スプリンクラー配管ユニット2の上流端が固定端Kとなり、一方、下流端が何ら拘束されていないことで自由端Jとなって、スプリンクラー配管ユニット2に気温変化による熱伸縮が生じても、自由端J側がその熱伸縮に応じて移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道や高速道路などの軌道上への積雪を防止する軌道消雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地の鉄道路線等において、軌道上に舞い降りる雪を排除、消雪するための消雪システムが提案され実用化されている。この消雪システムにはスプリンクラーによる散水方式や、水を熱媒体とした放熱板を用いその放熱板に舞い降りた雪を溶かす消雪パネルユニット方式などがある。
【0003】
例えば、前者の散水方式を採用した配管ユニットは、コンクリート製等のブロック状基体と、これに並設された送水管に接続されて前記基体内部に配置される配管と、この配管に所定間隔で設けられた散水ノズルとからなり、高架橋の軌道スラブの中央部に設けた凹部状のユニット設置部に前記ブロック状基体を嵌入させることにより軌道上に連続して設置される。但し、ここで用いているスプリンクラーは大気中に散布する方式ではなく、軌道上に水を流す散水ノズル方式である(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかし、何れにしてもこのような配管ユニットは、数kmに及んで凹部状のユニット設置部が設けられるため、さらにこの中に配管を設置することは、手間と労力を要する。
【0005】
後者の消雪パネルユニット方式としては、消雪用放熱器がある(例えば特許文献2参照)。
【0006】
一方、新幹線の高架路線等で特に積雪の多い地域には、散水スプリンクラー方式がとられることが多い。この方式を採用した軌道消雪装置は、鉄道軌道に沿って散水用配管と送水用配管が並行して設けられる。このうち、散水用配管は通常5〜6m毎に配設した鋼管を分岐継手を介して接続し、この分岐継手にヘッド回転式のスプリンクラーを設置し、送水管から供給される10〜20℃程度の水を空気中に散布するようになっている(例えば特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平11−280035号公報(第1頁、図1、図2)
【特許文献2】特公平6−76681号公報(第1頁、図1)
【特許文献3】特開2005−155705号公報(第1頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した軌道消雪装置は鋼管を用いていることから、全体ではかなりの重量物となる。その結果、分岐継手部分及び鋼管部分に全体の質量を支える相応の支持部材を取り付けなければならない。また、熱効率の点から保温材を巻き付ける必要がある。このようなことから施工性を向上させるために改良すべき課題があった。
【0009】
また、軌道消雪装置を構成する鋼管は冬季と夏季の外気温の変化に起因して熱伸縮(以下、伸縮という)するが、この伸縮を吸収できなければ、極端な場合、配管が屈曲する、または継手が破損することが予想される。このことから、鋼管と分岐継手の接続構造には伸縮吸収機能が与えられる。
すなわち、従来のこの伸縮吸収機能は、分岐継手と鋼管との接続を合成ゴム製のパッキン材でシールすると共に、この部分で分岐継手と鋼管とを摺動可能に接続することにより伸縮を吸収している。
【0010】
しかし、このような伸縮吸収機能を持たせることは、それだけ可動部分が増えるので、ゴムパッキン等のシール部材の劣化が発生すると鋼管を流れる水が外部に漏れる可能性が生じる。
さらに、軌道上の環境は苛酷であることから、合成ゴムなどの経年劣化する部材の使用は極力避けた方がよい。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、散水スプリンクラー方式の軌道消雪装置において、配管に伸縮が生じても継手の破損や屈曲等が生じず、また伸縮が原因で散水すべき水の漏れなどが生じることがなく、軽量で、配管施工がし易く、また省エネルギー効果のある軌道消雪装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記技術課題を解決するために、本発明にかかる軌道消雪装置は下記の技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1にかかる軌道消雪装置は、軌道に沿って配設される送水管同士が管継手を介して接続されてなる送水管部と、この送水管部に並列して配置される散水管同士が上部に開口部を有する分岐継手を介して接続されると共に、前記開口部に散水スプリンクラーが接続されてなるスプリンクラー配管ユニットとを備え、前記スプリンクラー配管ユニットは、その一端が前記送水管部に接続されて固定端とされると共に、他端が自由端とされ、前記固定端を基点として軸方向に摺動自在に構造体に支持されていることを特徴とする。本発明において軌道とは、鉄道等の軌道の他に高速道路を含む道路等の路面を示す。軌道に沿って配設されるとは実質的に軌道との間に一定範囲の距離を保って配置されることを言い、軌道の状況に応じて直線状に、または曲線状に配設されることを意味する。散水管が送水管部に並列するとは、散水管が送水管部に平行に、またはそれに近い状態で配列することを意味する。
【0013】
従来は支持部材によって分岐継手を固定し、鋼管の伸縮は継手部分で吸収する構造であったのに対し、請求項1にかかる技術的手段によれば、スプリンクラー配管ユニットの一端を固定した固定端とし、他端を自由端となし、且つ伸縮自在に支持したので、ユニット全体が軸方向に移動可能となり、温度変化による伸縮をユニット全体の移動で吸収することが可能である。
【0014】
これによって、散水管と分岐継手との接続部のシール構造に係る問題が解消される。ここで、散水管を樹脂製とすれば、スプリンクラー配管ユニットの軽量化が図られる。また散水管と分岐継手の接続も接着や融着等の手段により一体化すれば施工が簡易で、散水する水の外部漏れなどの心配が皆無となり、保温材等も必要でなくなり、軽量化と施工の簡易化によりコストメリットも大きい。
【0015】
請求項2にかかる軌道消雪装置は請求項1において、前記散水管及び/又は前記送水管の少なくとも接続部分が熱可塑性樹脂を含み、前記分岐継手及び/又は前記管継手と前記散水管及び/又は前記送水管とが電気融着されてなることを特徴とする。散水管に接続される分岐継手と、送水管に接続される管継手の内、電気融着される継手は樹脂で成型された継手から構成される。
【0016】
請求項2にかかる技術的手段によれば、送水管部を構成する送水管及び/又はスプリンクラー配管ユニットを構成する散水管を熱可塑性樹脂製とし、管継手及び/又は分岐継手と送水管部を構成する送水管及び/又はスプリンクラー配管ユニットを構成する散水管とが電気融着されることにより、軌道消雪装置の主体を樹脂部材で構成できるので質量の軽減化、散水管に対する支持部材の削減効果及び保温性向上による省エネルギー効果が高い。
【0017】
なお、本発明に係る軌道消雪装置では、一つの送水管部の長さが数Kmにも及び、その上流側には温水装置やポンプ装置等の温水供給手段が接続される。そして、その送水管部に対し約百数十m程度のスプリンクラー配管ユニットが複数配設される。スプリンクラー配管ユニットには所定間隔(例えば6m間隔)で散水スプリンクラーが配置されているので、散水を安定して行うためには、比較的大口径の送水管が必要となる。これに対し、従来の金属製送水管と金属製管継手に代えて樹脂製送水管と電気融着式継手で構成することにより、軌道消雪装置の質量の軽減効果と、施工の簡易化が図られる。
【0018】
また送水管は通常、側溝中に納められ、コンクリート蓋で閉塞させられることから、湿度が高く、腐食性の高い環境下に置かれるが、従来の金属製送水管と金属製管継手に代えて樹脂製送水管と電気融着式継手で構成することにより、金属の腐蝕による散水管を流れる水の漏れの不安が解消される。
【0019】
請求項3にかかる軌道消雪装置は請求項1又は2において、前記散水管及び/又は前記送水管は、少なくとも外周面が熱可塑性樹脂からなる管本体の肉厚方向の一部に管状の金属板が介在してなる複合樹脂管であることを特徴とする。このとき、複数の孔が設けられた金属板を用いることが好ましい。
【0020】
樹脂管は熱膨張係数が鋼管より一桁大きい(鋼管:1.2×10−5/℃、樹脂管:1.3×10−4/℃)ので、伸縮量は大きいが、請求項3にかかる技術的手段によれば、管本体間に管状の金属板を介在させることにより、外気温の変化による伸縮量が鋼管と樹脂管の中間的な大きさに低減される。さらに管状の複数の孔がある金属板を、管本体内に内層と外層の樹脂がこの孔を介して一体化されるように介在させることにより、外気温の変化による収縮量が鋼管並に低減される。特に配管ユニットの散水管にこの複合樹脂管を用いることで散水スプリンクラーの位置ずれが抑えられる。また、管状の金属板に複数の孔があることにより、散水管の内層と外層の樹脂がこの孔を介して一体化されているので、管状の金属板と樹脂管の樹脂部との剥離が生じない。このため長期間の耐久性が確保できる。
【0021】
請求項4にかかる軌道消雪装置は請求項1〜3の何れかにおいて、前記散水管の中途部に配設され、前記スプリンクラー配管ユニットを保持させる支持部材を備え、前記支持部材が、前記散水管への過締付けを防止する過締付け防止手段を具備していることを特徴とする。すなわち、スプリンクラー配管ユニットを保持する支持部材を樹脂管からなる散水管の中途部に設けると共に、支持部材に、散水管への過度な締付けを防止する過締付け防止手段を具備させる。
【0022】
過締付け防止手段は支持部材と散水管の外周面との接触部分にできるだけ圧力(摩擦力)が作用しないようにする働きをする。この過締付け防止手段は例えば金属製Uバンド(Uボルト)のような支持部材の所定部位にストッパ片を溶接することにより形成される。
【0023】
従来の軌道消雪装置は質量が大きいことから、これらを支える支持部材を分岐継手部分に設けることが必須であり、さらに鋼管の中途に設けられることもあった。しかも振動を吸収する為にゴム材などの緩衝部材を介在させることがあるため、配管ユニット全体が外気温の変化等により軸方向に伸縮した場合、緩衝部材や支持部材に応力が集中して破損が生じる危険がある。
【0024】
この点、本発明によれば、配管ユニットの軽量化により継手部分における支持部材が不要になり、緩衝用のゴム部材も不要になる。支持部材の設置は散水管部分だけで足りる。さらに、支持部材においては過締付け防止手段を設けているので、散水管の自由端方向への摺動が許容される。
【0025】
請求項5にかかる軌道消雪装置は請求項1〜4の何れかにおいて、前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットに、本線部とその本線部に対して偏心した迂回部とを有していることを特徴とする。
【0026】
請求項5にかかる技術的手段によれば、送水管部及び/又はスプリンクラー配管ユニットに本線部に対して偏心した迂回部を有することにより、迂回部において伸縮を吸収することが可能になる。配管ユニットの伸縮は迂回部を構成する屈曲部が本線部の伸縮に対して変位することにより吸収される。迂回部は本線部に対して偏心していれば良く、例えば4個の屈曲部から構成される場合には、湾曲するように配管されたり、伸縮可能なベローズ管(樹脂製が好適である)を使用してもよい。
【0027】
請求項6にかかる軌道消雪装置は請求項5において、前記迂回部の前記本線部に平行若しくは平行に近い部分で前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットが構造体に支持されていることを特徴とする。
【0028】
請求項6にかかる技術的手段によれば、前記迂回部において、本線部に平行若しくは平行に近い部分で、前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットが構造体に支持されていることにより、これら配管の軸方向摺動が容易になる。また、迂回部を本線部の軸の回りに回転させようとする力に対して効果的に抵抗させることができるため、これら配管の回転が防止される。配管ユニット全体の回転は、迂回部を本線部の軸の回りに回転させようとするモーメントに抵抗するモーメントが偏心している分、大きくなることから、効果的に防止される。
【0029】
請求項7にかかる軌道消雪装置は請求項5又は6において、前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットに、軸方向の伸縮の一部を吸収し得る屈曲部を備えていることを特徴とする。
【0030】
請求項7にかかる技術的手段によれば、送水管部または/およびスプリンクラー配管ユニットの一部に屈曲部を設けることにより、屈曲部においても伸縮が吸収される。軌道上は直線状であることが多いが、障害物の存在等により直線状に配置できない状況があり、配管を湾曲させるか、屈曲させざるを得ないこともある。このような状況に対し、屈曲部を配置するか、屈曲部をベローズ管(樹脂製が好適である)で構成することで、対応可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、スプリンクラー配管ユニットを、その一端を送水管部に接続して固定端とし、他端を自由端とし、固定端を基点として軸方向に摺動自在に支持したため、スプリンクラー配管ユニットに伸縮が生じても、継手の破損や管の屈曲等が生じず、伸縮が原因で漏れなどが生じる事態を回避することができる。また配管の少なくとも一部に樹脂を使用した場合には、軽量で、配管施工がやり易く、保温性が良く、省エネルギー効果の高い軌道消雪装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明にかかる軌道消雪装置Aの実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1〜図6は実施の形態1を示す。図1は軌道消雪装置Aの一部の平面を、図2は図1の側面を示す。図3は分岐継手21と散水スプリンクラー23の正面を、図4及び図5は支持部の概略を示す。図6は分岐継手21の具体(詳細)例を示す。図7は実施の形態2としての軌道消雪装置Aの一部を示す。
【0033】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる軌道消雪装置Aは図1に示すように温水を供給する送水管部1と、送水管部1から分岐するスプリンクラー配管ユニット2と、スプリンクラー配管ユニット2を支持する支持部3とを備える。送水管部1は送水管13と、送水管13、13を接続する第1管継手11と、送水管13にスプリンクラー配管ユニット2を接続する第2管継手12とを備える。
【0034】
本実施の形態1では第1管継手11は主としてポリエチレン等の熱可塑性樹脂で構成され、その外観形状が略筒状に形成された電気融着式管継手からなる。この第1管継手11は通常のソケット型の電気融着式管継手でよく、例えば略筒状の本体内周面に電熱線(図示せず)が螺旋状に設けられる一方、本体外周面に、その電熱線と接続された金属端子(図示せず)が設けられ、樹脂管からなる送水管13同士を接続する。
【0035】
第1管継手11と送水管13との接続は、第1管継手11に送水管13の端部を挿入して金属端子と通電装置(図示せず)とを接続し、電圧を印加して電流を流し、ジュール熱により電熱線を発熱させ、熱可塑性樹脂同士で構成された管継手と送水管13とを相互に電気融着させることにより行われる。
【0036】
第2管継手12は主にポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる電気融着式管継手である。この第2管継手12は、筒状の本体の中途部にスプリンクラー配管ユニット2を接続する分岐部12aが形成された、ティーズ型電気融着式管継手を構成する。第2管継手12は第1管継手11と同様に、本体内周面に電熱線(図示せず)が螺旋状に設けられる一方、本体外周面に、その電熱線と接続された金属端子(図示せず)が設けられ、樹脂管からなる送水管13同士、及びスプリンクラー配管ユニット2の上流側端部に配設されたエルボ管222(樹脂製からなる)の一端部とを接続する。
【0037】
なお、樹脂管からなる送水管13同士、及びスプリンクラー配管ユニット2の上流側端部に配設されたエルボ管222(樹脂製からなる)との接続手順は、上記した第1管継手11と送水管13との接続と同様に電気融着により接続する。
【0038】
送水管13は例えばポリエチレン等の熱可塑性樹脂で構成され、管継手と係合可能な所要の径及び所要長さの樹脂管からなる。樹脂管は保温性に優れるので、送水管13を含む送水管部1に保温材を巻き付ける必要がなく、接続手順は簡略化される。
【0039】
このように構成された送水管部1は電気融着式管継手からなる第1管継手11または第2管継手12と送水管13とが電気融着されて構成され、図2に示すように軌道6に沿うように設けられた構造体としての側溝5内に配設される。送水管部1とスプリンクラー配管ユニット2を支持する構造体は軌道6に並設されればよく、必ずしも側溝5には限られない。例えば、側溝5の他に、軌道6に並設された枠体や支持部材等を利用することができる。
【0040】
側溝5を構造体とした場合、送水管部1は平常時には側溝5上部に載置されるコンクリート蓋によって覆われている。なお、送水管と管継手との接続は必ずしも電気融着に限るものではなく、接着やバット融着による接続でも良い。
軌道6は基礎61上に敷設、もしくは構築された軌道スラブ62とその上に敷設されたレール63からなり、軌道スラブ62の天端(上面)は、側溝5の底板より高くなっている。
【0041】
この送水管部1の上流側(図1において左方)には、温水装置やポンプ装置等の温水供給手段(図示せず)が接続されており、この温水供給手段と送水管部1とで構成されたユニットが軌道6に沿って例えば2〜3km毎に1ユニットのように複数組、配設される。
【0042】
スプリンクラー配管ユニット2は、散水管22と、散水管22、22を接続する分岐継手21と、分岐継手21に接続される散水スプリンクラー23と、第2管継手12に接続された散水管22の一部に接続される減圧弁24と、散水管22の末端に接続される排水弁25とを備える。
【0043】
分岐継手21は主としてポリエチレン等の熱可塑性樹脂で構成され、図3に示すようにその外観形状が略筒状に形成される。筒部の中途部からは散水スプリンクラー23が接続される開口接続部21aが形成される。この分岐継手21はその筒内周面に螺旋状に設けられた電熱線と、その電熱線と接続され外面に設けられた金属端子とを備えている。分岐継手21の実施例については後述する。
【0044】
散水管22はポリエチレン等の熱可塑性樹脂で構成されたストレート管221と、前記減圧弁24と前記第2管継手12に接続されるエルボ管222とからなり、ストレート管221とエルボ管222は共に、分岐継手21及び減圧弁24、排水弁25と係合可能な所要の径及び所要長さを持つ。
なお、分岐継手21と樹脂管との接続手順は、上記した第1管継手11と送水管13との接続と同じである。また減圧弁24と排水弁25が樹脂製であれば、散水管22の接続は電気融着による接続手順となるが、金属製であれば、従来のメカニカル接続構造となる。
【0045】
上記したエルボ管222は第2管継手12の配設位置に対応した側溝5の壁面に形成された孔を挿通しており、図1に示すように段違いで配設される送水管13とストレート管221を接続させる。ここで、側溝5の壁面に形成された孔にエルボ管222が挿通して係合することで、送水管部1に接続されているこの部分がスプリンクラー配管ユニット2の固定端Kとなる。
【0046】
散水スプリンクラー23は図3に示すように吐水孔が設けられたヘッド部231と、そのヘッド部231を回転可能に支持したロッド部232とを備え、ロッド部232の基部が分岐継手21の開口接続部21aに接続されている。
【0047】
散水スプリンクラー23はヘッド部231から軌道6の上方に向かって散水することで、軌道6上への積雪を防止する働きをする。後述するように散水スプリンクラー23の軌道6に対する位置、すなわち各レール63との距離、レール63に対する高さは最大の消雪効果が得られるように予め設定されるので、散水管22の伸縮が繰り返されても、その伸縮をスプリンクラー配管ユニット2の自由端Jが吸収することでその位置や角度の変化は生じない。
【0048】
減圧弁24は第2管継手12の分岐部12aに一端が接続されたエルボ管222の他端に接続されており、送水管部1内の水圧が所要の大きさを維持するように調整する。
【0049】
排水弁25はスプリンクラー配管ユニット2の下流端に配設された散水管22の末端に接続されており、送水管1内の水圧が所定の大きさ以上のときに弁が閉塞し、所定の大きさ未満になったときに弁が開放し、スプリンクラー配管ユニット2内の残余した水を排出する。
【0050】
すなわち、ヘッド部231から軌道6上に散水しているときは、スプリンクラー配管ユニット2内の水圧は所定の圧力を維持しているために排水弁25が閉塞しており、終電の運行後等、軌道6上に散水をしないときは、送水管部1への送水が行われないため、スプリンクラー配管ユニット2内の水圧が下がって排水弁25が開放する。これにより、散水をしないときに、スプリンクラー配管ユニット2内の残余した水が排出されることでスプリンクラー配管ユニット2内に残余した水の凍結が防止される。
【0051】
軌道消雪装置Aの支持部3は図4に示すように側溝5に固定される支持ステー31と、支持ステー31に対して着脱自在に接続され、支持ステー31と共に散水管22を保持する支持部材32とを備える。
【0052】
支持ステー31は側溝5の外壁面に軌道スラブ62側へ突出して固着された略L字状の金具であり、散水管22の中途部に位置するように所定間隔をおいて複数個配設される。支持部材32は例えば散水管22が遊挿可能な間隔を有するUボルト等、U字形をした部材であり、散水管22が軌道6に沿って配設されるよう、支持ステー31の上面側に接続される。支持部材32としてUボルトを使用した場合には、Uボルトの両先端が支持ステー31を貫通し、その下面に突出した部分にナットが螺合することにより支持ステー31に接続される。支持部材32の支持ステー31への接続手段はナットに限られない。
【0053】
支持ステー31上に載置され、支持部材32によって遊挿状態で保持された散水管22は支持部材32によりその長手方向(軸方向)の移動を拘束されないことで、軸方向に摺動でき、スプリンクラー配管ユニット2全体が伸縮することが可能になる。但し、散水管22が支持部材32によって過度に締付けされた場合には、軸方向の摺動が阻害されることがある。そこで、散水管22の摺動を自由に生じさせるために、支持部材32には、ナットの締付け量を制限する過締付け防止手段34が具備されることが好ましい。
【0054】
過締付け防止手段34として、図4では支持部材32の支持ステー31上面側にストッパ片35を溶接して固定した例を示している。ストッパ片35はナットの締付けに伴い、支持ステー31の上面に係止することで、ナットの所定量以上の締付けを防止する。また、ストッパ片35は散水管22を締め付け支持した後には支持部材32が軸方向に倒れこむことも防止している。過締付け防止手段34は前記の接続手段の支持部材32への接続により散水管22を過度に締付けない機能を有すればよく、ストッパ片35には限定されない。例えば図5は、ストッパ片35の代わりにナットが支持ステー31に溶接されている場合を示す。
【0055】
図4では過締付け防止手段34を支持部材32に付加した上で、散水管22の摺動をより生じ易くするために、低摩擦性に優れたナイロン樹脂やフッ素樹脂などの樹脂系の低摩擦部材33を、Uボルトの内周面及び/又は支持ステー31の上面に貼着している。なお、実施例では貼着の替わりにコーティング331を施している。
【0056】
前記のとおり、スプリンクラー配管ユニット2に設けた散水スプリンクラー23の位置は予め設計された位置にあるので、スプリンクラー配管ユニット2全体が伸縮したら再び元の位置まで戻るようにする必要があり、その意味で、低摩擦部材33を介して摺動し易く支持することもある。
【0057】
さらに散水管22がその軸方向を中心にして、またはスプリンクラー配管ユニット2が回転しても散水スプリンクラー23の位置が変化してしまうので、この回転を防止することも必要とされる。そこで、例えば支持部材(Uボルト)32の内周面に突起あるいは溝等の管回転防止手段を設けることもある。
このように支持部3は過締付け防止手段34を備えることで、支持ステー31と支持部材32との間に配置されたスプリンクラー配管ユニット2を軸方向に摺動自在に支持することができる。
【0058】
以上のように、実施の形態1にかかる軌道消雪装置Aは、図1に示すように分岐継手21を介して散水管22同士を電気融着により接続し、分岐継手21の開口接続部21aに散水スプリンクラー23を接続して構成したスプリンクラー配管ユニット2を、エルボ管222を介して送水管部1の第2管継手12に電気融着により接続すると共に、支持部3で軸方向に摺動自在に支持することより構成される。なお、このスプリンクラー配管ユニット2の長さLは、約百数十mに及ぶ。
【0059】
このような構成により、スプリンクラー配管ユニット2の上流端が固定端Kとなる一方、下流端が何ら拘束されていないことで自由端Jとなり、スプリンクラー配管ユニット2に外気温の温度変化による熱伸縮が生じようとしたときに、自由端側がその伸縮量に応じて移動する。
【0060】
したがって、従来のスプリンクラー配管ユニット2との対比では、実施の形態1にかかる軌道消雪装置Aは、スプリンクラー配管ユニット2を構成する継手の破損や管の屈曲等が生じず、また伸縮が原因で散水する水の漏れなどが生じることのない軽量で、配管施工をし易い軌道消雪装置を提供できる。
【0061】
なお、スプリンクラー配管ユニット2が伸縮移動する際の抵抗を低くする上では、散水管22の軸方向にある支持ステー31の幅は可能な限り、小さい方がよい。支持ステー31の上面に樹脂系の低摩擦部材33を貼着する場合は、同様にこの低摩擦部材33の幅も可能な限り、小さくされる。このように散水管22と支持ステー31、あるいは散水管22と低摩擦部材33との接触を点接触に近づけることが好ましく、結果として部材の軽量化にも繋がる。
【0062】
さらに、本実施の形態では低摩擦部材33をいわば、すべり軸受けとしているが、ころがり軸受けとしても良い。例えば支持ステー31に回動可能に支持された円柱状のローラの上にスプリンクラー配管ユニット2を載置したり、あるいは円柱状のローラが介在されて構成されたリニアガイドの上にスプリンクラー配管ユニット2を載置しても良い。この場合も、散水管22の径方向の移動規制をするための支持部材32を備えることが好ましく、上記したUボルトやガイド杆(散水管22の径方向に棒状部材を立設させる)が好適である。
【0063】
なお、実施の形態1にかかる軌道消雪装置Aの散水プロセスは以下の通りである。送水管部1内にはその上流側に配設された温水供給手段からの温水が所定の圧力で送り込まれ、減圧弁24で減圧された状態で夫々のスプリンクラー配管ユニット2に流れ込む。そして、個々の散水スプリンクラー23から軌道6の上方へ向かって温水が散水され、軌道6上への積雪を防止する。送水を停止したときには、夫々のスプリンクラー配管ユニット2内の水圧が下がることで、排水弁25が開放し、スプリンクラー配管ユニット2内の残余した水が排出される。残余水の排出によりその凍結が防止される。実施の形態1にかかる軌道消雪装置Aでは、送水管部1とスプリンクラー配管ユニット2が樹脂で構成されていることで保温材を施工することなく保温効果を有するので、温水供給手段の負荷が少ない。また散水スプリンクラー23に到達するまで温水の温度が保たれるため、消雪効果が向上し、その結果散水量が節減される。
【0064】
ここで、電気融着式の分岐継手21の他の実施例について図6を参照して説明する。ここに示す分岐継手21の継手本体71はポリエチレン等の所要長さの丸パイプを利用して形成されている。直管である継手本体71の軸方向中間部には貫通孔71aが穿孔され、貫通孔71aを除いた両側の内周面に軸方向に亘って螺旋溝71bが形成され、この螺旋溝71bに波線で示す電熱線73が配設されている。電熱線73は樹脂被覆されることもある。継手本体71の両端には、電熱線73の両端と溶接等で接続された金属端子72が継手本体71両側の外面に露出するように埋設されている。電熱線73は貫通孔71aを挟んだ継手本体71両側の両端側が密となるように螺旋溝71bに嵌め込まれることにより配設される。露出した金属端子72に所定の電流が印加されることにより、電熱線73が加熱され、継手本体71と樹脂管Bが融着接続する。
【0065】
上述した例では螺旋溝71bに電熱線73を嵌め込む構造の電気融着継手を用いているが、この構造に限定されることはない。例えば射出成形によって予め成形した内筒部材に電熱線73を巻回し、両端に金属端子を溶接等で接続し、この内筒部材を金型内に設置した状態で、これに継手本体71を構成する外筒部材を一体的に成形してなる電気融着式管継手を製造し、これの本体に貫通孔71aを穿設して分岐継手21としてもよい。
【0066】
ここで用いた樹脂管Bは、複数の孔b2が設けられた管状の金属板b1を熱可塑性樹脂からなる管本体b3の外周面と内周面の間に介在させて一体化した複合樹脂管であり、電熱線による融着が可能であると共に、機械的強度も高めつつ熱膨張を抑制することができる。なお、複数の孔b2が設けられた管状の金属板b1には主にパンチングメタルや網状に組み込んだ鋼板が使用されるが、特に限定されない。また樹脂管B(複合樹脂管)は継手本体71との融着上は少なくとも外周面側のみが熱可塑性樹脂で構成されていれば良いので、複数の孔b2が設けられた管状の金属板b1との2層構造や、内周面側を他の構成材料で3層構造としても良い。
【0067】
孔b2の大きさや密度(開口率)の大小、または金属板b1の肉厚により管強度や内外層接合強度を調節することも可能である。例えば開口率を大きくとると内外層の樹脂の結び付きは強くなるが、反面、管強度は低くなり、樹脂管の方が金属管よりも熱膨張係数が大きいため、熱膨張による伸びも大きくなる。逆に開口率が小さいと内外層の樹脂の結び付きは低いが、管強度は高くなり、伸びは小さくなる。一方、金属板b1の肉厚を厚くすれば管の強度は高くなり伸びは小さくなるが、管の重量が重くなる。これらを総合的に判断した上で、孔b2の開口率や金属板b1の肉厚が決められる。
この樹脂管Bが継手本体71と融着している末端部分では金属板b1と水が接触し、さらに管本体b3と電熱線73との間に水や粉塵が入り込むことがあり得る。これにより、金属板b1の腐食や電気融着強度不良が発生する危険性が生じる。そこで、例えば図6に示すように樹脂や腐食しない他の材料で形成したリング状部材b4を樹脂管Bの末端に接合、または嵌合により固着することが好適である。
【0068】
継手本体71の貫通孔71aの位置に形成される分岐部81は分岐パイプ82と、分岐パイプ82を継手本体71に固定する固定具83と、継手本体71と分岐パイプ82との間の間隔を確保するスペーサ部材84aと、継手本体71と分岐パイプ82との間の水密性を確保するシール手段84とを備える。分岐パイプ82は流路孔の内周面に沿うように金属製の板状部材を継手本体71の内周面に係合するよう湾曲形成された平面視略矩形状の鍔部82aと、その鍔部82aの中心から鉛直方向等、半径方向に立設された所要長さの中空金属パイプからなる筒部82bとが一体化して形成されている。この鍔部82aと筒部82bはステンレス鋼、黄銅、青銅など錆び難い金属からなり、製造にあたっては両者を溶接して一体にするか、あるいは鋳造や鍛造などで一体成形することもできる。またこの筒部82bの外周には軸方向中途部から上端へかけて固定具83が螺合するオネジ82cが形成されており、中途部から下端までの間には貫通孔71aの内周面に密着するシール手段84としてのOリングが嵌装されている。
【0069】
このように形成された分岐パイプ82は継手本体71の端部流路から挿入され、筒部82bが貫通孔71aから外部に突出するように嵌入し、鍔部82aが流路の内周面71dに沿って係止することにより継手本体71に装着される。
分岐パイプ82は鍔部82aにおいて流路孔の内周面71dに軸回りに回転不能に係止しているので、分岐パイプ82を安定して立設状態におくことができ、回転力や振動など外力に対して強い構造となっている。
【0070】
固定具83は略環状の金属部材であり、その内周面に、筒部82bに形成されたオネジ82cと螺合するメネジ83bが、中途部から下端までに亘って形成されている。他方、中途部から上端に亘る内周面には、散水スプリンクラー23を接続するメネジの分岐接続部83aが形成されている。
【0071】
この固定具83をスペーサ部材84aとシール手段84としてのOリングを介して、筒部82bのオネジ82cに捩じ込み、貫通孔71aの周辺部を鍔部82aと固定具83とで挟持することにより、樹脂管Bの軸に対して直交方向に分岐パイプ82を立設させ、支持している。なお、分岐接続部83aの構造は接続する散水スプリンクラー23や装置に応じて適宜変更される。例えばスペーサ部材84aとOリングに代えてリング状のパッキンを装着する構造でも良いし、接続部はねじ接合に限定されることもない。係止ピンを挿嵌して回転に強い固定構造としても良い。
【0072】
(試験例)
次に実施の形態1にかかる軌道消雪装置の試験例について説明する。
実施の形態1にかかるスプリンクラー配管ユニット2につき以下の条件で熱膨張試験を行った。試験目的は複合樹脂管のスプリンクラー配管ユニット2への使用の可否の確認であって、具体的には金属強化ポリエチレン管(SSPE)による屋内モデル配管で熱膨張による軸方向の伸び、たわみ、ひねりを確認すること、及び試験結果に基づく金属強化ポリエチレン管(SSPE)の線膨張係数を確認することである。
【0073】
本試験のモデル配管模式図を図10に示す。散水管22の配管長さを36mとし、スプリンクラー配管ユニット2の散水管22と分岐継手21として金属強化ポリエチレン管(SSPE)を使用した。配管支持条件は両端を拘束せず、防振ゴムの効果を確認するために3m間隔でUバンドでのみ支持した場合と、Uバンド+防振ゴムで支持した場合の2条件で行った。なお防振ゴムは、支持ステー31と散水管22の接する部分に敷設した。
金属強化ポリエチレン管(SSPE)の仕様は以下であった。
外径:110mm
肉厚:6mm
管状金属体の材質:熱間圧延軟鋼板(SPHC)
管状金属体の厚さ:1.2mm
【0074】
金属強化ポリエチレン管(SSPE)に対しては図10に示すように配管の端部と中途部から熱風を送り、管内面から常温の空気を加熱して、管表面温度が常温から約60℃変化するようにした。配管3m毎に振り下げを取付け、温度変化時の振り下げの移動量を計測することにより伸び量と上下方向のたわみ量と横方向のたわみ量とを測定した。ひねりについては、配管6m毎の分岐継手にスタンションを立て、温度変化時のスタンションの角度変化から測定した。
なお、上記の伸び量とは、配管の長手方向の伸び量をいい、たわみ量とは、配管の長手方向のたわみ量を上下方向たわみ量といい、短手方向のたわみ量を横方向たわみ量という。また、ひねりとは、配管の周方向の回転角をいう。
試験結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
試験結果より、以下の事項が確認された。
(1)管表面温度変化約60℃において試験に用いられた金属強化ポリエチレン管の伸縮量に対する線膨張係数は鋼管の線膨張係数(1.2X10-5K-1)とほぼ同等の値であることが確認された。
(2)ひねりは0.3°以下の極めて微小な値であることが確認された。
(3)防振ゴムの有無による大きな差異は認められないことが確認された。
したがって、金属強化層なしのポリエチレン管を使用して熱膨張試験を行った場合に発生する顕著なたわみや伸びが発生せず、鋼管使用時とほぼ同じ伸びとたわみであることが確認された。よって金属強化ポリエチレン管(SSPE)を使用することは、金属強化層なしのポリエチレン管に比べ、伸びとたわみを減少させる効果があり、複合樹脂管のスプリンクラー配管ユニット2への使用は十分可能であることが確認された。
【0076】
また従来の金属製のスプリンクラー配管ユニット2と比較して、実施の形態1にかかる軌道消雪装置は大幅に質量が軽減したことで、施工性が大幅に向上し、施工コストを大幅に下げることができる。例えば金属強化ポリエチレン管の質量は鋼管と比較して約1/3に軽減し、ユニット当たりの質量は合成樹脂製分岐継手を用いることにより更に軽減することが可能である
【0077】
更に、送水管部1を電気融着式管継手からなる第1管継手11及び第2管継手12と樹脂管からなる送水管13とで構成したことにより、スプリンクラー配管ユニット2を備えた軌道消雪装置Aの質量の軽減効果は一層高くなり、さらに軽量で、配管施工がやり易くなる。
【0078】
送水管部1は通常、側溝5中に納められ、コンクリート蓋で閉塞させられる(コンクリート蓋は図示せず)ため、湿度が高く、腐食性の高い環境下にあるが、従来の金属製送水管と金属製管継手に代えて、樹脂管からなる送水管13と電気融着式継手からなる第1管継手11及び第2管継手12で構成することにより、腐蝕による漏れの不安が解消される。
【0079】
(実施の形態2)
続いて本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2にかかる軌道消雪装置Aは、実施の形態1における軌道消雪装置の送水管部1とスプリンクラー配管ユニット2の一部に屈曲部4を設けた上で、直線状配管等からなる本線部9に対して偏心した迂回部10を設けた例であり、その他の構成は実施の形態1と同じであるため、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0080】
屈曲部4は図7に示すように、送水管部1を構成するストレートタイプの第1管継手11に代えて所要の角度で形成されたエルボタイプの電気融着式管継手からなる第3管継手41を用い、ストレートタイプの送水管13を電気融着により接続することにより湾曲した形で形成される。またはスプリンクラー配管ユニット2を構成する分岐継手21、21間に上記と同じ第3管継手41を介在させ、ストレートタイプの散水管22を電気融着により接続することで形成される。
【0081】
屈曲部4は任意の個所に設けられるが、主に軌道施設等の設置により側溝5が湾曲する必要がある場所を積極的に利用して設けられる。屈曲部4を設けることで、送水管部1やスプリンクラー配管ユニット2に、気温変化による熱伸縮が生じても、この屈曲部4が変位することにより全体の伸縮が吸収される。特に送水管部1の全長はスプリンクラー配管ユニット2の全長よりも大きいので、ユニット2全体を伸縮させることが困難になる場合がある。そこで送水管部1の一部に屈曲部4を設けることによって伸縮を吸収する構造の方が適切な場合がある。
なお、本実施の形態では、湾曲するように配管することで屈曲部4としているが、送水管13や散水管22の一部をベローズ管(樹脂製が好適である)にして屈曲部4としても良い。
【0082】
図7において、迂回部10は直線状の配管部である本線部9と偏心する形で本線部9と平行な直線部101と、本線部9と直線部101をつなぐ連結部102とを有する。図7では第3管継手41を4個使用した屈曲部4から迂回部10を構成しているが、本線部9に対して偏心する形態であれば、迂回部10の形態は任意である。例えば迂回部10をベローズ管のみで構成することもある。
【0083】
図8(a)は、スプリンクラー配管ユニット2を構成する分岐継手21、21間に第3管継手41を介在させ、ストレートタイプの散水管22を電気融着により接続することで形成した単純な山形形状をなす屈曲部4を示す。このような屈曲構造を採用することにより、スプリンクラー配管ユニット2に、気温変化による熱伸縮が生じても、この屈曲部4が変位することにより全体の伸縮が吸収される。
具体的には、例えば曲げ角度30°の第3管継手41本体が35°の曲げ角度に変形することでスプリンクラー配管ユニット2の伸び量が吸収される。伸縮量を第3管継手41の曲げで吸収するか、若しくはスプリンクラー配管ユニット2全体の移動で吸収するかは、散水管22の移動を阻害する支持部3での摩擦力と、屈曲部4を構成する第3管継手41の剛性のバランスで決まる。散水管22が短く、スプリンクラー配管ユニット2全体の移動を阻害する力が小さい場合には、屈曲部4での伸縮の吸収は起こらない。
【0084】
図8(b)は、スプリンクラー配管ユニット2の屈曲部4の一形態である迂回部10を示す。迂回部10は図示されていない本線部9に平行若しくは平行に近い部分である直線部101のみで、支持部3により支持されている。前記スプリンクラー配管ユニット2の気温変化による熱伸縮が生じて、迂回部10での吸収が発生した場合には、第3管継手41の角度変化と同時に迂回部10が軌道6側にせり出してくる変形が発生する。この対策として、
図9に示すように、この支持部3の支持ステー31の上面には長穴36が設けられている。この長穴36を支持部材32の先端が貫通し、その下面に突出した部分にナット等が螺合することにより支持部材32が支持ステー31に接続される。このことにより、支持部材32は長穴の長手方向に長さ分だけスライド移動が可能となる。よって、支持ステー31上に載置された散水管22は、その短手水平方向(径方向)に長穴の長さ分はスライド移動が可能になる。
この結果、上記スプリンクラー配管ユニット2の気温変化による熱伸縮が生じて、第3管継手41の角度変化と同時に直線部101の散水管22が軌道6側にせりだしてきても、当該支持部3によりその変形を吸収できる。この可能スライド量以上の伸びに対しては、迂回部10での吸収は不可能であり、軸方向で伸縮を吸収することになる。このように、伸縮量の一部を迂回部10で吸収することにより、スプリンクラー配管ユニット2全体の移動量を小さく抑えることが可能となる。なお、本願発明においては、屈曲部4の突出方向は水平方向に構成している。
また、配管の支持部分を配管方向と平行な部分のみとしたことにより、配管部の軸方向摺動が容易になる共に、迂回部10を本線部9の軸の回りに回転させようとする力に対して効果的に抵抗させることができるため、回転(ひねり)の発生を防止する効果が発揮される。
【0085】
(試験例1)
ここで、実施の形態2にかかる軌道消雪装置Aの試験例について説明する。
実施の形態2にかかる軌道消雪装置Aにつき以下の条件で熱膨張試験を行った。試験目的は迂回部を含む屋外モデル配管での配管挙動を確認することである。
【0086】
本試験のモデル配管模式図を図11に示す。散水管22の配管の全長を145mとし、48m毎に迂回部10を設けた。配管支持条件として、配管の片側のみ拘束し、2m間隔でUバンドでのみ支持した場合と、Uバンド+防振ゴムで支持した場合の2条件で行った。試験は図11の試験配管を組み外気温度及び日射の影響による配管温度変化による伸び、ひねりを測定することにより行った。
配管支持部に測定目標(SUSバンド)を取付け、温度変化時の配管移動量から伸びを測定した。ひねりの測定については、配管6m毎の分岐継手にスタンションを立て温度変化時のスタンションの角度変化から測定した。また、配管の上面部及び下面部の温度についても測定した。試験結果を表2及び図12、13に示す。なお、図12は迂回部及び直線部の配管位置と各位置における熱膨張量との関係を示すグラフである。また図13は6m間隔の配管位置と各位置における角度変化量との関係を示すグラフである。
【0087】
【表2】
試験結果より、以下の事項が確認された。
(1) 試験実施日3月29日の角度測定値を基準として、軸方向、周方向の角度変化は図13に示すように±0.4°以下であった。測定誤差を考慮すると、配管の傾きは発生していないことが確認された。
(2) 伸びについては、図12に示すように迂回部の形成が有効に熱膨張を吸収していることが確認された。
(3) 図13は防振ゴム有りの試験結果を示すが、防振ゴムなしの場合も同様の結果であることが確認された。
表2に示すように配管全体の伸びの累計は51.3mmであるところ、図12から明らかなように迂回部10を設けたことにより、迂回部10において熱膨張が吸収されているため、結果的に端部の伸びが21.5mmに抑えられることが確認された。
【0088】
(試験例2)
実施の形態2にかかる軌道消雪装置Aに対しては耐伸縮性確認を目的とする迂回部の繰返し伸縮試験も行った。本試験の試料寸法と固定方法の模式図を図14に示す。迂回部は、図14に示すように直管部と直管部を30°の角度で電気融着により接続する第3管継手2個と3本の直線複合樹脂管とで形成されている。迂回部の一端側の配管を完全固定し固定側とし、可動側については、Uバンドのみで構造体等に支持することにより、配管の軸方向に伸縮自在としている。迂回部の他端側の配管を図示していない伸縮試験機に接続し、F方向の往復繰返し伸縮試験を行った。
繰返し伸縮試の試験条件を表3に示す。
【0089】
【表3】
ここで、繰返し回数は、いずれも18250回であって、これは365日×50年の回数に該当する。
1日変位量は10mmとした。これは熱膨張量測定における夏季の測定値に該当する。これを条件1とした(表3参照)。
季節変動量を考慮した試験条件を条件2及び条件3とした。つまり夏条件を70℃、冬条件をー10℃(ΔT=80℃)とし、複合樹脂管の線膨張係数を1.2×10−5/℃とすると、迂回部間隔48mの膨張量は46mmであるため、50mm変位を与えた後に、更に変位量10mmを発生させる繰返し伸縮試験を行った。
条件2は夏季に施工された場合を想定したものであって、冬季にー50mm移動しその状態から1日の気温変化により10mm移動する。
条件3は条件2の逆であり、冬季に施工された場合を想定したものであって、夏季に+50mm移動し、その状態から1日の気温変化により10mm移動する。
繰返し伸縮試験終了後には、管内空気圧力を2.5MPaまで加圧して、2分間の耐圧試験により迂回部10の漏れ発生の有無を確認した。
試験結果を表4に示す。
【0090】
【表4】
いずれの条件においても、繰返し伸縮試験終了後の耐圧試験に合格している。
また、配管表面のこすれも軽微であり、迂回部の配管強度、表面の耐磨耗性共に問題ないことが確認された。
【0091】
以上、本実施の形態にかかる軌道消雪装置Aを説明したが、上述した実施の形態は本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【0092】
例えば、本実施の形態にかかる軌道消雪装置Aの送水管部1は、送水管と継手を樹脂製としているが、従来のようにかかる構成部は金属製としても良い。すなわち、少なくともスプリンクラー配管ユニット2のみ樹脂で構成されていれば良い。またスプリンクラー配管ユニットの分岐継手21と散水管22との接続は電気融着に限るものではなく、接着剤を用いた接合の他、バット融着機を用いたバット融着による接続でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施の形態1にかかる軌道消雪装置の平面図である。
【図2】図1の要部断面図である。
【図3】分岐継手部分の拡大正面図である。
【図4】支持部の要部拡大断面図である。
【図5】別の形態における支持部の要部拡大断面図である。
【図6】樹脂分岐継手の他の実施例を示す斜視断面図である。
【図7】実施の形態2にかかる軌道消雪装置の平面図である。
【図8】スプリンクラー配管ユニットの平面図であって、(a)は単純な屈曲構造の平面図、(b)は迂回部の平面図である。
【図9】別の形態における支持部の図であって、(a)は支持部の平面図、(b)は支持部の要部拡大断面図である。
【図10】熱膨張試験のモデル配管の側面図である。
【図11】熱膨張試験の屋外モデル配管模式図であって、(a)は全体平面図、(b)は迂回部(破線円部分)の拡大平面図である。
【図12】熱膨張試験の配管膨張時の変化量を示すグラフであって、(a)は配管位置と各位置の熱膨張量との関係を示すグラフ、(b)は試験のモデルを示す模式図である。
【図13】熱膨張試験の配管膨張時の変化量を示すグラフであって、(a)は配管位置と各位置の軸方向角度変化量との関係を示すグラフ、(b)は配管位置と各位置の周方向角度変化量との関係を示すグラフである。
【図14】迂回部繰返し伸縮試験のモデル配管の側面図である。
【符号の説明】
【0094】
1:送水管部 10:迂回部 11:第1管継手 12:第2管継手 12a:分岐部 13:送水管 2:スプリンクラー配管ユニット 21:分岐継手 21a:開口接続部 22:散水管 221:ストレート管 222:エルボ管 23:散水スプリンクラー 231:ヘッド部 232:ロッド部 24:減圧弁 25:排水弁 3:支持部 31:支持ステー 32:支持部材 33:低摩擦部材 34:過締付け防止手段 35:ストッパ片 36:長穴 4:屈曲部 41:第3管継手 5:側溝 6:軌道 61:基礎 62:軌道スラブ 63:レール 71:継手本体 71a:貫通孔 71b:螺旋溝 72:金属端子 73:電熱線 81:分岐部 82:分岐パイプ 82a:鍔部 82b:筒部 82c:オネジ 83:固定具 84:シール手段 84a:スペーサ部材 9:本線部 10:迂回部 101:直線部 102:連結部 A:軌道消雪装置 B:樹脂管 b1:金属板 b2:孔 b3:管本体 K:固定端 J:自由端
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道や高速道路などの軌道上への積雪を防止する軌道消雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地の鉄道路線等において、軌道上に舞い降りる雪を排除、消雪するための消雪システムが提案され実用化されている。この消雪システムにはスプリンクラーによる散水方式や、水を熱媒体とした放熱板を用いその放熱板に舞い降りた雪を溶かす消雪パネルユニット方式などがある。
【0003】
例えば、前者の散水方式を採用した配管ユニットは、コンクリート製等のブロック状基体と、これに並設された送水管に接続されて前記基体内部に配置される配管と、この配管に所定間隔で設けられた散水ノズルとからなり、高架橋の軌道スラブの中央部に設けた凹部状のユニット設置部に前記ブロック状基体を嵌入させることにより軌道上に連続して設置される。但し、ここで用いているスプリンクラーは大気中に散布する方式ではなく、軌道上に水を流す散水ノズル方式である(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかし、何れにしてもこのような配管ユニットは、数kmに及んで凹部状のユニット設置部が設けられるため、さらにこの中に配管を設置することは、手間と労力を要する。
【0005】
後者の消雪パネルユニット方式としては、消雪用放熱器がある(例えば特許文献2参照)。
【0006】
一方、新幹線の高架路線等で特に積雪の多い地域には、散水スプリンクラー方式がとられることが多い。この方式を採用した軌道消雪装置は、鉄道軌道に沿って散水用配管と送水用配管が並行して設けられる。このうち、散水用配管は通常5〜6m毎に配設した鋼管を分岐継手を介して接続し、この分岐継手にヘッド回転式のスプリンクラーを設置し、送水管から供給される10〜20℃程度の水を空気中に散布するようになっている(例えば特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平11−280035号公報(第1頁、図1、図2)
【特許文献2】特公平6−76681号公報(第1頁、図1)
【特許文献3】特開2005−155705号公報(第1頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した軌道消雪装置は鋼管を用いていることから、全体ではかなりの重量物となる。その結果、分岐継手部分及び鋼管部分に全体の質量を支える相応の支持部材を取り付けなければならない。また、熱効率の点から保温材を巻き付ける必要がある。このようなことから施工性を向上させるために改良すべき課題があった。
【0009】
また、軌道消雪装置を構成する鋼管は冬季と夏季の外気温の変化に起因して熱伸縮(以下、伸縮という)するが、この伸縮を吸収できなければ、極端な場合、配管が屈曲する、または継手が破損することが予想される。このことから、鋼管と分岐継手の接続構造には伸縮吸収機能が与えられる。
すなわち、従来のこの伸縮吸収機能は、分岐継手と鋼管との接続を合成ゴム製のパッキン材でシールすると共に、この部分で分岐継手と鋼管とを摺動可能に接続することにより伸縮を吸収している。
【0010】
しかし、このような伸縮吸収機能を持たせることは、それだけ可動部分が増えるので、ゴムパッキン等のシール部材の劣化が発生すると鋼管を流れる水が外部に漏れる可能性が生じる。
さらに、軌道上の環境は苛酷であることから、合成ゴムなどの経年劣化する部材の使用は極力避けた方がよい。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、散水スプリンクラー方式の軌道消雪装置において、配管に伸縮が生じても継手の破損や屈曲等が生じず、また伸縮が原因で散水すべき水の漏れなどが生じることがなく、軽量で、配管施工がし易く、また省エネルギー効果のある軌道消雪装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記技術課題を解決するために、本発明にかかる軌道消雪装置は下記の技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1にかかる軌道消雪装置は、軌道に沿って配設される送水管同士が管継手を介して接続されてなる送水管部と、この送水管部に並列して配置される散水管同士が上部に開口部を有する分岐継手を介して接続されると共に、前記開口部に散水スプリンクラーが接続されてなるスプリンクラー配管ユニットとを備え、前記スプリンクラー配管ユニットは、その一端が前記送水管部に接続されて固定端とされると共に、他端が自由端とされ、前記固定端を基点として軸方向に摺動自在に構造体に支持されていることを特徴とする。本発明において軌道とは、鉄道等の軌道の他に高速道路を含む道路等の路面を示す。軌道に沿って配設されるとは実質的に軌道との間に一定範囲の距離を保って配置されることを言い、軌道の状況に応じて直線状に、または曲線状に配設されることを意味する。散水管が送水管部に並列するとは、散水管が送水管部に平行に、またはそれに近い状態で配列することを意味する。
【0013】
従来は支持部材によって分岐継手を固定し、鋼管の伸縮は継手部分で吸収する構造であったのに対し、請求項1にかかる技術的手段によれば、スプリンクラー配管ユニットの一端を固定した固定端とし、他端を自由端となし、且つ伸縮自在に支持したので、ユニット全体が軸方向に移動可能となり、温度変化による伸縮をユニット全体の移動で吸収することが可能である。
【0014】
これによって、散水管と分岐継手との接続部のシール構造に係る問題が解消される。ここで、散水管を樹脂製とすれば、スプリンクラー配管ユニットの軽量化が図られる。また散水管と分岐継手の接続も接着や融着等の手段により一体化すれば施工が簡易で、散水する水の外部漏れなどの心配が皆無となり、保温材等も必要でなくなり、軽量化と施工の簡易化によりコストメリットも大きい。
【0015】
請求項2にかかる軌道消雪装置は請求項1において、前記散水管及び/又は前記送水管の少なくとも接続部分が熱可塑性樹脂を含み、前記分岐継手及び/又は前記管継手と前記散水管及び/又は前記送水管とが電気融着されてなることを特徴とする。散水管に接続される分岐継手と、送水管に接続される管継手の内、電気融着される継手は樹脂で成型された継手から構成される。
【0016】
請求項2にかかる技術的手段によれば、送水管部を構成する送水管及び/又はスプリンクラー配管ユニットを構成する散水管を熱可塑性樹脂製とし、管継手及び/又は分岐継手と送水管部を構成する送水管及び/又はスプリンクラー配管ユニットを構成する散水管とが電気融着されることにより、軌道消雪装置の主体を樹脂部材で構成できるので質量の軽減化、散水管に対する支持部材の削減効果及び保温性向上による省エネルギー効果が高い。
【0017】
なお、本発明に係る軌道消雪装置では、一つの送水管部の長さが数Kmにも及び、その上流側には温水装置やポンプ装置等の温水供給手段が接続される。そして、その送水管部に対し約百数十m程度のスプリンクラー配管ユニットが複数配設される。スプリンクラー配管ユニットには所定間隔(例えば6m間隔)で散水スプリンクラーが配置されているので、散水を安定して行うためには、比較的大口径の送水管が必要となる。これに対し、従来の金属製送水管と金属製管継手に代えて樹脂製送水管と電気融着式継手で構成することにより、軌道消雪装置の質量の軽減効果と、施工の簡易化が図られる。
【0018】
また送水管は通常、側溝中に納められ、コンクリート蓋で閉塞させられることから、湿度が高く、腐食性の高い環境下に置かれるが、従来の金属製送水管と金属製管継手に代えて樹脂製送水管と電気融着式継手で構成することにより、金属の腐蝕による散水管を流れる水の漏れの不安が解消される。
【0019】
請求項3にかかる軌道消雪装置は請求項1又は2において、前記散水管及び/又は前記送水管は、少なくとも外周面が熱可塑性樹脂からなる管本体の肉厚方向の一部に管状の金属板が介在してなる複合樹脂管であることを特徴とする。このとき、複数の孔が設けられた金属板を用いることが好ましい。
【0020】
樹脂管は熱膨張係数が鋼管より一桁大きい(鋼管:1.2×10−5/℃、樹脂管:1.3×10−4/℃)ので、伸縮量は大きいが、請求項3にかかる技術的手段によれば、管本体間に管状の金属板を介在させることにより、外気温の変化による伸縮量が鋼管と樹脂管の中間的な大きさに低減される。さらに管状の複数の孔がある金属板を、管本体内に内層と外層の樹脂がこの孔を介して一体化されるように介在させることにより、外気温の変化による収縮量が鋼管並に低減される。特に配管ユニットの散水管にこの複合樹脂管を用いることで散水スプリンクラーの位置ずれが抑えられる。また、管状の金属板に複数の孔があることにより、散水管の内層と外層の樹脂がこの孔を介して一体化されているので、管状の金属板と樹脂管の樹脂部との剥離が生じない。このため長期間の耐久性が確保できる。
【0021】
請求項4にかかる軌道消雪装置は請求項1〜3の何れかにおいて、前記散水管の中途部に配設され、前記スプリンクラー配管ユニットを保持させる支持部材を備え、前記支持部材が、前記散水管への過締付けを防止する過締付け防止手段を具備していることを特徴とする。すなわち、スプリンクラー配管ユニットを保持する支持部材を樹脂管からなる散水管の中途部に設けると共に、支持部材に、散水管への過度な締付けを防止する過締付け防止手段を具備させる。
【0022】
過締付け防止手段は支持部材と散水管の外周面との接触部分にできるだけ圧力(摩擦力)が作用しないようにする働きをする。この過締付け防止手段は例えば金属製Uバンド(Uボルト)のような支持部材の所定部位にストッパ片を溶接することにより形成される。
【0023】
従来の軌道消雪装置は質量が大きいことから、これらを支える支持部材を分岐継手部分に設けることが必須であり、さらに鋼管の中途に設けられることもあった。しかも振動を吸収する為にゴム材などの緩衝部材を介在させることがあるため、配管ユニット全体が外気温の変化等により軸方向に伸縮した場合、緩衝部材や支持部材に応力が集中して破損が生じる危険がある。
【0024】
この点、本発明によれば、配管ユニットの軽量化により継手部分における支持部材が不要になり、緩衝用のゴム部材も不要になる。支持部材の設置は散水管部分だけで足りる。さらに、支持部材においては過締付け防止手段を設けているので、散水管の自由端方向への摺動が許容される。
【0025】
請求項5にかかる軌道消雪装置は請求項1〜4の何れかにおいて、前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットに、本線部とその本線部に対して偏心した迂回部とを有していることを特徴とする。
【0026】
請求項5にかかる技術的手段によれば、送水管部及び/又はスプリンクラー配管ユニットに本線部に対して偏心した迂回部を有することにより、迂回部において伸縮を吸収することが可能になる。配管ユニットの伸縮は迂回部を構成する屈曲部が本線部の伸縮に対して変位することにより吸収される。迂回部は本線部に対して偏心していれば良く、例えば4個の屈曲部から構成される場合には、湾曲するように配管されたり、伸縮可能なベローズ管(樹脂製が好適である)を使用してもよい。
【0027】
請求項6にかかる軌道消雪装置は請求項5において、前記迂回部の前記本線部に平行若しくは平行に近い部分で前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットが構造体に支持されていることを特徴とする。
【0028】
請求項6にかかる技術的手段によれば、前記迂回部において、本線部に平行若しくは平行に近い部分で、前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットが構造体に支持されていることにより、これら配管の軸方向摺動が容易になる。また、迂回部を本線部の軸の回りに回転させようとする力に対して効果的に抵抗させることができるため、これら配管の回転が防止される。配管ユニット全体の回転は、迂回部を本線部の軸の回りに回転させようとするモーメントに抵抗するモーメントが偏心している分、大きくなることから、効果的に防止される。
【0029】
請求項7にかかる軌道消雪装置は請求項5又は6において、前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットに、軸方向の伸縮の一部を吸収し得る屈曲部を備えていることを特徴とする。
【0030】
請求項7にかかる技術的手段によれば、送水管部または/およびスプリンクラー配管ユニットの一部に屈曲部を設けることにより、屈曲部においても伸縮が吸収される。軌道上は直線状であることが多いが、障害物の存在等により直線状に配置できない状況があり、配管を湾曲させるか、屈曲させざるを得ないこともある。このような状況に対し、屈曲部を配置するか、屈曲部をベローズ管(樹脂製が好適である)で構成することで、対応可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、スプリンクラー配管ユニットを、その一端を送水管部に接続して固定端とし、他端を自由端とし、固定端を基点として軸方向に摺動自在に支持したため、スプリンクラー配管ユニットに伸縮が生じても、継手の破損や管の屈曲等が生じず、伸縮が原因で漏れなどが生じる事態を回避することができる。また配管の少なくとも一部に樹脂を使用した場合には、軽量で、配管施工がやり易く、保温性が良く、省エネルギー効果の高い軌道消雪装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明にかかる軌道消雪装置Aの実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1〜図6は実施の形態1を示す。図1は軌道消雪装置Aの一部の平面を、図2は図1の側面を示す。図3は分岐継手21と散水スプリンクラー23の正面を、図4及び図5は支持部の概略を示す。図6は分岐継手21の具体(詳細)例を示す。図7は実施の形態2としての軌道消雪装置Aの一部を示す。
【0033】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる軌道消雪装置Aは図1に示すように温水を供給する送水管部1と、送水管部1から分岐するスプリンクラー配管ユニット2と、スプリンクラー配管ユニット2を支持する支持部3とを備える。送水管部1は送水管13と、送水管13、13を接続する第1管継手11と、送水管13にスプリンクラー配管ユニット2を接続する第2管継手12とを備える。
【0034】
本実施の形態1では第1管継手11は主としてポリエチレン等の熱可塑性樹脂で構成され、その外観形状が略筒状に形成された電気融着式管継手からなる。この第1管継手11は通常のソケット型の電気融着式管継手でよく、例えば略筒状の本体内周面に電熱線(図示せず)が螺旋状に設けられる一方、本体外周面に、その電熱線と接続された金属端子(図示せず)が設けられ、樹脂管からなる送水管13同士を接続する。
【0035】
第1管継手11と送水管13との接続は、第1管継手11に送水管13の端部を挿入して金属端子と通電装置(図示せず)とを接続し、電圧を印加して電流を流し、ジュール熱により電熱線を発熱させ、熱可塑性樹脂同士で構成された管継手と送水管13とを相互に電気融着させることにより行われる。
【0036】
第2管継手12は主にポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる電気融着式管継手である。この第2管継手12は、筒状の本体の中途部にスプリンクラー配管ユニット2を接続する分岐部12aが形成された、ティーズ型電気融着式管継手を構成する。第2管継手12は第1管継手11と同様に、本体内周面に電熱線(図示せず)が螺旋状に設けられる一方、本体外周面に、その電熱線と接続された金属端子(図示せず)が設けられ、樹脂管からなる送水管13同士、及びスプリンクラー配管ユニット2の上流側端部に配設されたエルボ管222(樹脂製からなる)の一端部とを接続する。
【0037】
なお、樹脂管からなる送水管13同士、及びスプリンクラー配管ユニット2の上流側端部に配設されたエルボ管222(樹脂製からなる)との接続手順は、上記した第1管継手11と送水管13との接続と同様に電気融着により接続する。
【0038】
送水管13は例えばポリエチレン等の熱可塑性樹脂で構成され、管継手と係合可能な所要の径及び所要長さの樹脂管からなる。樹脂管は保温性に優れるので、送水管13を含む送水管部1に保温材を巻き付ける必要がなく、接続手順は簡略化される。
【0039】
このように構成された送水管部1は電気融着式管継手からなる第1管継手11または第2管継手12と送水管13とが電気融着されて構成され、図2に示すように軌道6に沿うように設けられた構造体としての側溝5内に配設される。送水管部1とスプリンクラー配管ユニット2を支持する構造体は軌道6に並設されればよく、必ずしも側溝5には限られない。例えば、側溝5の他に、軌道6に並設された枠体や支持部材等を利用することができる。
【0040】
側溝5を構造体とした場合、送水管部1は平常時には側溝5上部に載置されるコンクリート蓋によって覆われている。なお、送水管と管継手との接続は必ずしも電気融着に限るものではなく、接着やバット融着による接続でも良い。
軌道6は基礎61上に敷設、もしくは構築された軌道スラブ62とその上に敷設されたレール63からなり、軌道スラブ62の天端(上面)は、側溝5の底板より高くなっている。
【0041】
この送水管部1の上流側(図1において左方)には、温水装置やポンプ装置等の温水供給手段(図示せず)が接続されており、この温水供給手段と送水管部1とで構成されたユニットが軌道6に沿って例えば2〜3km毎に1ユニットのように複数組、配設される。
【0042】
スプリンクラー配管ユニット2は、散水管22と、散水管22、22を接続する分岐継手21と、分岐継手21に接続される散水スプリンクラー23と、第2管継手12に接続された散水管22の一部に接続される減圧弁24と、散水管22の末端に接続される排水弁25とを備える。
【0043】
分岐継手21は主としてポリエチレン等の熱可塑性樹脂で構成され、図3に示すようにその外観形状が略筒状に形成される。筒部の中途部からは散水スプリンクラー23が接続される開口接続部21aが形成される。この分岐継手21はその筒内周面に螺旋状に設けられた電熱線と、その電熱線と接続され外面に設けられた金属端子とを備えている。分岐継手21の実施例については後述する。
【0044】
散水管22はポリエチレン等の熱可塑性樹脂で構成されたストレート管221と、前記減圧弁24と前記第2管継手12に接続されるエルボ管222とからなり、ストレート管221とエルボ管222は共に、分岐継手21及び減圧弁24、排水弁25と係合可能な所要の径及び所要長さを持つ。
なお、分岐継手21と樹脂管との接続手順は、上記した第1管継手11と送水管13との接続と同じである。また減圧弁24と排水弁25が樹脂製であれば、散水管22の接続は電気融着による接続手順となるが、金属製であれば、従来のメカニカル接続構造となる。
【0045】
上記したエルボ管222は第2管継手12の配設位置に対応した側溝5の壁面に形成された孔を挿通しており、図1に示すように段違いで配設される送水管13とストレート管221を接続させる。ここで、側溝5の壁面に形成された孔にエルボ管222が挿通して係合することで、送水管部1に接続されているこの部分がスプリンクラー配管ユニット2の固定端Kとなる。
【0046】
散水スプリンクラー23は図3に示すように吐水孔が設けられたヘッド部231と、そのヘッド部231を回転可能に支持したロッド部232とを備え、ロッド部232の基部が分岐継手21の開口接続部21aに接続されている。
【0047】
散水スプリンクラー23はヘッド部231から軌道6の上方に向かって散水することで、軌道6上への積雪を防止する働きをする。後述するように散水スプリンクラー23の軌道6に対する位置、すなわち各レール63との距離、レール63に対する高さは最大の消雪効果が得られるように予め設定されるので、散水管22の伸縮が繰り返されても、その伸縮をスプリンクラー配管ユニット2の自由端Jが吸収することでその位置や角度の変化は生じない。
【0048】
減圧弁24は第2管継手12の分岐部12aに一端が接続されたエルボ管222の他端に接続されており、送水管部1内の水圧が所要の大きさを維持するように調整する。
【0049】
排水弁25はスプリンクラー配管ユニット2の下流端に配設された散水管22の末端に接続されており、送水管1内の水圧が所定の大きさ以上のときに弁が閉塞し、所定の大きさ未満になったときに弁が開放し、スプリンクラー配管ユニット2内の残余した水を排出する。
【0050】
すなわち、ヘッド部231から軌道6上に散水しているときは、スプリンクラー配管ユニット2内の水圧は所定の圧力を維持しているために排水弁25が閉塞しており、終電の運行後等、軌道6上に散水をしないときは、送水管部1への送水が行われないため、スプリンクラー配管ユニット2内の水圧が下がって排水弁25が開放する。これにより、散水をしないときに、スプリンクラー配管ユニット2内の残余した水が排出されることでスプリンクラー配管ユニット2内に残余した水の凍結が防止される。
【0051】
軌道消雪装置Aの支持部3は図4に示すように側溝5に固定される支持ステー31と、支持ステー31に対して着脱自在に接続され、支持ステー31と共に散水管22を保持する支持部材32とを備える。
【0052】
支持ステー31は側溝5の外壁面に軌道スラブ62側へ突出して固着された略L字状の金具であり、散水管22の中途部に位置するように所定間隔をおいて複数個配設される。支持部材32は例えば散水管22が遊挿可能な間隔を有するUボルト等、U字形をした部材であり、散水管22が軌道6に沿って配設されるよう、支持ステー31の上面側に接続される。支持部材32としてUボルトを使用した場合には、Uボルトの両先端が支持ステー31を貫通し、その下面に突出した部分にナットが螺合することにより支持ステー31に接続される。支持部材32の支持ステー31への接続手段はナットに限られない。
【0053】
支持ステー31上に載置され、支持部材32によって遊挿状態で保持された散水管22は支持部材32によりその長手方向(軸方向)の移動を拘束されないことで、軸方向に摺動でき、スプリンクラー配管ユニット2全体が伸縮することが可能になる。但し、散水管22が支持部材32によって過度に締付けされた場合には、軸方向の摺動が阻害されることがある。そこで、散水管22の摺動を自由に生じさせるために、支持部材32には、ナットの締付け量を制限する過締付け防止手段34が具備されることが好ましい。
【0054】
過締付け防止手段34として、図4では支持部材32の支持ステー31上面側にストッパ片35を溶接して固定した例を示している。ストッパ片35はナットの締付けに伴い、支持ステー31の上面に係止することで、ナットの所定量以上の締付けを防止する。また、ストッパ片35は散水管22を締め付け支持した後には支持部材32が軸方向に倒れこむことも防止している。過締付け防止手段34は前記の接続手段の支持部材32への接続により散水管22を過度に締付けない機能を有すればよく、ストッパ片35には限定されない。例えば図5は、ストッパ片35の代わりにナットが支持ステー31に溶接されている場合を示す。
【0055】
図4では過締付け防止手段34を支持部材32に付加した上で、散水管22の摺動をより生じ易くするために、低摩擦性に優れたナイロン樹脂やフッ素樹脂などの樹脂系の低摩擦部材33を、Uボルトの内周面及び/又は支持ステー31の上面に貼着している。なお、実施例では貼着の替わりにコーティング331を施している。
【0056】
前記のとおり、スプリンクラー配管ユニット2に設けた散水スプリンクラー23の位置は予め設計された位置にあるので、スプリンクラー配管ユニット2全体が伸縮したら再び元の位置まで戻るようにする必要があり、その意味で、低摩擦部材33を介して摺動し易く支持することもある。
【0057】
さらに散水管22がその軸方向を中心にして、またはスプリンクラー配管ユニット2が回転しても散水スプリンクラー23の位置が変化してしまうので、この回転を防止することも必要とされる。そこで、例えば支持部材(Uボルト)32の内周面に突起あるいは溝等の管回転防止手段を設けることもある。
このように支持部3は過締付け防止手段34を備えることで、支持ステー31と支持部材32との間に配置されたスプリンクラー配管ユニット2を軸方向に摺動自在に支持することができる。
【0058】
以上のように、実施の形態1にかかる軌道消雪装置Aは、図1に示すように分岐継手21を介して散水管22同士を電気融着により接続し、分岐継手21の開口接続部21aに散水スプリンクラー23を接続して構成したスプリンクラー配管ユニット2を、エルボ管222を介して送水管部1の第2管継手12に電気融着により接続すると共に、支持部3で軸方向に摺動自在に支持することより構成される。なお、このスプリンクラー配管ユニット2の長さLは、約百数十mに及ぶ。
【0059】
このような構成により、スプリンクラー配管ユニット2の上流端が固定端Kとなる一方、下流端が何ら拘束されていないことで自由端Jとなり、スプリンクラー配管ユニット2に外気温の温度変化による熱伸縮が生じようとしたときに、自由端側がその伸縮量に応じて移動する。
【0060】
したがって、従来のスプリンクラー配管ユニット2との対比では、実施の形態1にかかる軌道消雪装置Aは、スプリンクラー配管ユニット2を構成する継手の破損や管の屈曲等が生じず、また伸縮が原因で散水する水の漏れなどが生じることのない軽量で、配管施工をし易い軌道消雪装置を提供できる。
【0061】
なお、スプリンクラー配管ユニット2が伸縮移動する際の抵抗を低くする上では、散水管22の軸方向にある支持ステー31の幅は可能な限り、小さい方がよい。支持ステー31の上面に樹脂系の低摩擦部材33を貼着する場合は、同様にこの低摩擦部材33の幅も可能な限り、小さくされる。このように散水管22と支持ステー31、あるいは散水管22と低摩擦部材33との接触を点接触に近づけることが好ましく、結果として部材の軽量化にも繋がる。
【0062】
さらに、本実施の形態では低摩擦部材33をいわば、すべり軸受けとしているが、ころがり軸受けとしても良い。例えば支持ステー31に回動可能に支持された円柱状のローラの上にスプリンクラー配管ユニット2を載置したり、あるいは円柱状のローラが介在されて構成されたリニアガイドの上にスプリンクラー配管ユニット2を載置しても良い。この場合も、散水管22の径方向の移動規制をするための支持部材32を備えることが好ましく、上記したUボルトやガイド杆(散水管22の径方向に棒状部材を立設させる)が好適である。
【0063】
なお、実施の形態1にかかる軌道消雪装置Aの散水プロセスは以下の通りである。送水管部1内にはその上流側に配設された温水供給手段からの温水が所定の圧力で送り込まれ、減圧弁24で減圧された状態で夫々のスプリンクラー配管ユニット2に流れ込む。そして、個々の散水スプリンクラー23から軌道6の上方へ向かって温水が散水され、軌道6上への積雪を防止する。送水を停止したときには、夫々のスプリンクラー配管ユニット2内の水圧が下がることで、排水弁25が開放し、スプリンクラー配管ユニット2内の残余した水が排出される。残余水の排出によりその凍結が防止される。実施の形態1にかかる軌道消雪装置Aでは、送水管部1とスプリンクラー配管ユニット2が樹脂で構成されていることで保温材を施工することなく保温効果を有するので、温水供給手段の負荷が少ない。また散水スプリンクラー23に到達するまで温水の温度が保たれるため、消雪効果が向上し、その結果散水量が節減される。
【0064】
ここで、電気融着式の分岐継手21の他の実施例について図6を参照して説明する。ここに示す分岐継手21の継手本体71はポリエチレン等の所要長さの丸パイプを利用して形成されている。直管である継手本体71の軸方向中間部には貫通孔71aが穿孔され、貫通孔71aを除いた両側の内周面に軸方向に亘って螺旋溝71bが形成され、この螺旋溝71bに波線で示す電熱線73が配設されている。電熱線73は樹脂被覆されることもある。継手本体71の両端には、電熱線73の両端と溶接等で接続された金属端子72が継手本体71両側の外面に露出するように埋設されている。電熱線73は貫通孔71aを挟んだ継手本体71両側の両端側が密となるように螺旋溝71bに嵌め込まれることにより配設される。露出した金属端子72に所定の電流が印加されることにより、電熱線73が加熱され、継手本体71と樹脂管Bが融着接続する。
【0065】
上述した例では螺旋溝71bに電熱線73を嵌め込む構造の電気融着継手を用いているが、この構造に限定されることはない。例えば射出成形によって予め成形した内筒部材に電熱線73を巻回し、両端に金属端子を溶接等で接続し、この内筒部材を金型内に設置した状態で、これに継手本体71を構成する外筒部材を一体的に成形してなる電気融着式管継手を製造し、これの本体に貫通孔71aを穿設して分岐継手21としてもよい。
【0066】
ここで用いた樹脂管Bは、複数の孔b2が設けられた管状の金属板b1を熱可塑性樹脂からなる管本体b3の外周面と内周面の間に介在させて一体化した複合樹脂管であり、電熱線による融着が可能であると共に、機械的強度も高めつつ熱膨張を抑制することができる。なお、複数の孔b2が設けられた管状の金属板b1には主にパンチングメタルや網状に組み込んだ鋼板が使用されるが、特に限定されない。また樹脂管B(複合樹脂管)は継手本体71との融着上は少なくとも外周面側のみが熱可塑性樹脂で構成されていれば良いので、複数の孔b2が設けられた管状の金属板b1との2層構造や、内周面側を他の構成材料で3層構造としても良い。
【0067】
孔b2の大きさや密度(開口率)の大小、または金属板b1の肉厚により管強度や内外層接合強度を調節することも可能である。例えば開口率を大きくとると内外層の樹脂の結び付きは強くなるが、反面、管強度は低くなり、樹脂管の方が金属管よりも熱膨張係数が大きいため、熱膨張による伸びも大きくなる。逆に開口率が小さいと内外層の樹脂の結び付きは低いが、管強度は高くなり、伸びは小さくなる。一方、金属板b1の肉厚を厚くすれば管の強度は高くなり伸びは小さくなるが、管の重量が重くなる。これらを総合的に判断した上で、孔b2の開口率や金属板b1の肉厚が決められる。
この樹脂管Bが継手本体71と融着している末端部分では金属板b1と水が接触し、さらに管本体b3と電熱線73との間に水や粉塵が入り込むことがあり得る。これにより、金属板b1の腐食や電気融着強度不良が発生する危険性が生じる。そこで、例えば図6に示すように樹脂や腐食しない他の材料で形成したリング状部材b4を樹脂管Bの末端に接合、または嵌合により固着することが好適である。
【0068】
継手本体71の貫通孔71aの位置に形成される分岐部81は分岐パイプ82と、分岐パイプ82を継手本体71に固定する固定具83と、継手本体71と分岐パイプ82との間の間隔を確保するスペーサ部材84aと、継手本体71と分岐パイプ82との間の水密性を確保するシール手段84とを備える。分岐パイプ82は流路孔の内周面に沿うように金属製の板状部材を継手本体71の内周面に係合するよう湾曲形成された平面視略矩形状の鍔部82aと、その鍔部82aの中心から鉛直方向等、半径方向に立設された所要長さの中空金属パイプからなる筒部82bとが一体化して形成されている。この鍔部82aと筒部82bはステンレス鋼、黄銅、青銅など錆び難い金属からなり、製造にあたっては両者を溶接して一体にするか、あるいは鋳造や鍛造などで一体成形することもできる。またこの筒部82bの外周には軸方向中途部から上端へかけて固定具83が螺合するオネジ82cが形成されており、中途部から下端までの間には貫通孔71aの内周面に密着するシール手段84としてのOリングが嵌装されている。
【0069】
このように形成された分岐パイプ82は継手本体71の端部流路から挿入され、筒部82bが貫通孔71aから外部に突出するように嵌入し、鍔部82aが流路の内周面71dに沿って係止することにより継手本体71に装着される。
分岐パイプ82は鍔部82aにおいて流路孔の内周面71dに軸回りに回転不能に係止しているので、分岐パイプ82を安定して立設状態におくことができ、回転力や振動など外力に対して強い構造となっている。
【0070】
固定具83は略環状の金属部材であり、その内周面に、筒部82bに形成されたオネジ82cと螺合するメネジ83bが、中途部から下端までに亘って形成されている。他方、中途部から上端に亘る内周面には、散水スプリンクラー23を接続するメネジの分岐接続部83aが形成されている。
【0071】
この固定具83をスペーサ部材84aとシール手段84としてのOリングを介して、筒部82bのオネジ82cに捩じ込み、貫通孔71aの周辺部を鍔部82aと固定具83とで挟持することにより、樹脂管Bの軸に対して直交方向に分岐パイプ82を立設させ、支持している。なお、分岐接続部83aの構造は接続する散水スプリンクラー23や装置に応じて適宜変更される。例えばスペーサ部材84aとOリングに代えてリング状のパッキンを装着する構造でも良いし、接続部はねじ接合に限定されることもない。係止ピンを挿嵌して回転に強い固定構造としても良い。
【0072】
(試験例)
次に実施の形態1にかかる軌道消雪装置の試験例について説明する。
実施の形態1にかかるスプリンクラー配管ユニット2につき以下の条件で熱膨張試験を行った。試験目的は複合樹脂管のスプリンクラー配管ユニット2への使用の可否の確認であって、具体的には金属強化ポリエチレン管(SSPE)による屋内モデル配管で熱膨張による軸方向の伸び、たわみ、ひねりを確認すること、及び試験結果に基づく金属強化ポリエチレン管(SSPE)の線膨張係数を確認することである。
【0073】
本試験のモデル配管模式図を図10に示す。散水管22の配管長さを36mとし、スプリンクラー配管ユニット2の散水管22と分岐継手21として金属強化ポリエチレン管(SSPE)を使用した。配管支持条件は両端を拘束せず、防振ゴムの効果を確認するために3m間隔でUバンドでのみ支持した場合と、Uバンド+防振ゴムで支持した場合の2条件で行った。なお防振ゴムは、支持ステー31と散水管22の接する部分に敷設した。
金属強化ポリエチレン管(SSPE)の仕様は以下であった。
外径:110mm
肉厚:6mm
管状金属体の材質:熱間圧延軟鋼板(SPHC)
管状金属体の厚さ:1.2mm
【0074】
金属強化ポリエチレン管(SSPE)に対しては図10に示すように配管の端部と中途部から熱風を送り、管内面から常温の空気を加熱して、管表面温度が常温から約60℃変化するようにした。配管3m毎に振り下げを取付け、温度変化時の振り下げの移動量を計測することにより伸び量と上下方向のたわみ量と横方向のたわみ量とを測定した。ひねりについては、配管6m毎の分岐継手にスタンションを立て、温度変化時のスタンションの角度変化から測定した。
なお、上記の伸び量とは、配管の長手方向の伸び量をいい、たわみ量とは、配管の長手方向のたわみ量を上下方向たわみ量といい、短手方向のたわみ量を横方向たわみ量という。また、ひねりとは、配管の周方向の回転角をいう。
試験結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
試験結果より、以下の事項が確認された。
(1)管表面温度変化約60℃において試験に用いられた金属強化ポリエチレン管の伸縮量に対する線膨張係数は鋼管の線膨張係数(1.2X10-5K-1)とほぼ同等の値であることが確認された。
(2)ひねりは0.3°以下の極めて微小な値であることが確認された。
(3)防振ゴムの有無による大きな差異は認められないことが確認された。
したがって、金属強化層なしのポリエチレン管を使用して熱膨張試験を行った場合に発生する顕著なたわみや伸びが発生せず、鋼管使用時とほぼ同じ伸びとたわみであることが確認された。よって金属強化ポリエチレン管(SSPE)を使用することは、金属強化層なしのポリエチレン管に比べ、伸びとたわみを減少させる効果があり、複合樹脂管のスプリンクラー配管ユニット2への使用は十分可能であることが確認された。
【0076】
また従来の金属製のスプリンクラー配管ユニット2と比較して、実施の形態1にかかる軌道消雪装置は大幅に質量が軽減したことで、施工性が大幅に向上し、施工コストを大幅に下げることができる。例えば金属強化ポリエチレン管の質量は鋼管と比較して約1/3に軽減し、ユニット当たりの質量は合成樹脂製分岐継手を用いることにより更に軽減することが可能である
【0077】
更に、送水管部1を電気融着式管継手からなる第1管継手11及び第2管継手12と樹脂管からなる送水管13とで構成したことにより、スプリンクラー配管ユニット2を備えた軌道消雪装置Aの質量の軽減効果は一層高くなり、さらに軽量で、配管施工がやり易くなる。
【0078】
送水管部1は通常、側溝5中に納められ、コンクリート蓋で閉塞させられる(コンクリート蓋は図示せず)ため、湿度が高く、腐食性の高い環境下にあるが、従来の金属製送水管と金属製管継手に代えて、樹脂管からなる送水管13と電気融着式継手からなる第1管継手11及び第2管継手12で構成することにより、腐蝕による漏れの不安が解消される。
【0079】
(実施の形態2)
続いて本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2にかかる軌道消雪装置Aは、実施の形態1における軌道消雪装置の送水管部1とスプリンクラー配管ユニット2の一部に屈曲部4を設けた上で、直線状配管等からなる本線部9に対して偏心した迂回部10を設けた例であり、その他の構成は実施の形態1と同じであるため、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0080】
屈曲部4は図7に示すように、送水管部1を構成するストレートタイプの第1管継手11に代えて所要の角度で形成されたエルボタイプの電気融着式管継手からなる第3管継手41を用い、ストレートタイプの送水管13を電気融着により接続することにより湾曲した形で形成される。またはスプリンクラー配管ユニット2を構成する分岐継手21、21間に上記と同じ第3管継手41を介在させ、ストレートタイプの散水管22を電気融着により接続することで形成される。
【0081】
屈曲部4は任意の個所に設けられるが、主に軌道施設等の設置により側溝5が湾曲する必要がある場所を積極的に利用して設けられる。屈曲部4を設けることで、送水管部1やスプリンクラー配管ユニット2に、気温変化による熱伸縮が生じても、この屈曲部4が変位することにより全体の伸縮が吸収される。特に送水管部1の全長はスプリンクラー配管ユニット2の全長よりも大きいので、ユニット2全体を伸縮させることが困難になる場合がある。そこで送水管部1の一部に屈曲部4を設けることによって伸縮を吸収する構造の方が適切な場合がある。
なお、本実施の形態では、湾曲するように配管することで屈曲部4としているが、送水管13や散水管22の一部をベローズ管(樹脂製が好適である)にして屈曲部4としても良い。
【0082】
図7において、迂回部10は直線状の配管部である本線部9と偏心する形で本線部9と平行な直線部101と、本線部9と直線部101をつなぐ連結部102とを有する。図7では第3管継手41を4個使用した屈曲部4から迂回部10を構成しているが、本線部9に対して偏心する形態であれば、迂回部10の形態は任意である。例えば迂回部10をベローズ管のみで構成することもある。
【0083】
図8(a)は、スプリンクラー配管ユニット2を構成する分岐継手21、21間に第3管継手41を介在させ、ストレートタイプの散水管22を電気融着により接続することで形成した単純な山形形状をなす屈曲部4を示す。このような屈曲構造を採用することにより、スプリンクラー配管ユニット2に、気温変化による熱伸縮が生じても、この屈曲部4が変位することにより全体の伸縮が吸収される。
具体的には、例えば曲げ角度30°の第3管継手41本体が35°の曲げ角度に変形することでスプリンクラー配管ユニット2の伸び量が吸収される。伸縮量を第3管継手41の曲げで吸収するか、若しくはスプリンクラー配管ユニット2全体の移動で吸収するかは、散水管22の移動を阻害する支持部3での摩擦力と、屈曲部4を構成する第3管継手41の剛性のバランスで決まる。散水管22が短く、スプリンクラー配管ユニット2全体の移動を阻害する力が小さい場合には、屈曲部4での伸縮の吸収は起こらない。
【0084】
図8(b)は、スプリンクラー配管ユニット2の屈曲部4の一形態である迂回部10を示す。迂回部10は図示されていない本線部9に平行若しくは平行に近い部分である直線部101のみで、支持部3により支持されている。前記スプリンクラー配管ユニット2の気温変化による熱伸縮が生じて、迂回部10での吸収が発生した場合には、第3管継手41の角度変化と同時に迂回部10が軌道6側にせり出してくる変形が発生する。この対策として、
図9に示すように、この支持部3の支持ステー31の上面には長穴36が設けられている。この長穴36を支持部材32の先端が貫通し、その下面に突出した部分にナット等が螺合することにより支持部材32が支持ステー31に接続される。このことにより、支持部材32は長穴の長手方向に長さ分だけスライド移動が可能となる。よって、支持ステー31上に載置された散水管22は、その短手水平方向(径方向)に長穴の長さ分はスライド移動が可能になる。
この結果、上記スプリンクラー配管ユニット2の気温変化による熱伸縮が生じて、第3管継手41の角度変化と同時に直線部101の散水管22が軌道6側にせりだしてきても、当該支持部3によりその変形を吸収できる。この可能スライド量以上の伸びに対しては、迂回部10での吸収は不可能であり、軸方向で伸縮を吸収することになる。このように、伸縮量の一部を迂回部10で吸収することにより、スプリンクラー配管ユニット2全体の移動量を小さく抑えることが可能となる。なお、本願発明においては、屈曲部4の突出方向は水平方向に構成している。
また、配管の支持部分を配管方向と平行な部分のみとしたことにより、配管部の軸方向摺動が容易になる共に、迂回部10を本線部9の軸の回りに回転させようとする力に対して効果的に抵抗させることができるため、回転(ひねり)の発生を防止する効果が発揮される。
【0085】
(試験例1)
ここで、実施の形態2にかかる軌道消雪装置Aの試験例について説明する。
実施の形態2にかかる軌道消雪装置Aにつき以下の条件で熱膨張試験を行った。試験目的は迂回部を含む屋外モデル配管での配管挙動を確認することである。
【0086】
本試験のモデル配管模式図を図11に示す。散水管22の配管の全長を145mとし、48m毎に迂回部10を設けた。配管支持条件として、配管の片側のみ拘束し、2m間隔でUバンドでのみ支持した場合と、Uバンド+防振ゴムで支持した場合の2条件で行った。試験は図11の試験配管を組み外気温度及び日射の影響による配管温度変化による伸び、ひねりを測定することにより行った。
配管支持部に測定目標(SUSバンド)を取付け、温度変化時の配管移動量から伸びを測定した。ひねりの測定については、配管6m毎の分岐継手にスタンションを立て温度変化時のスタンションの角度変化から測定した。また、配管の上面部及び下面部の温度についても測定した。試験結果を表2及び図12、13に示す。なお、図12は迂回部及び直線部の配管位置と各位置における熱膨張量との関係を示すグラフである。また図13は6m間隔の配管位置と各位置における角度変化量との関係を示すグラフである。
【0087】
【表2】
試験結果より、以下の事項が確認された。
(1) 試験実施日3月29日の角度測定値を基準として、軸方向、周方向の角度変化は図13に示すように±0.4°以下であった。測定誤差を考慮すると、配管の傾きは発生していないことが確認された。
(2) 伸びについては、図12に示すように迂回部の形成が有効に熱膨張を吸収していることが確認された。
(3) 図13は防振ゴム有りの試験結果を示すが、防振ゴムなしの場合も同様の結果であることが確認された。
表2に示すように配管全体の伸びの累計は51.3mmであるところ、図12から明らかなように迂回部10を設けたことにより、迂回部10において熱膨張が吸収されているため、結果的に端部の伸びが21.5mmに抑えられることが確認された。
【0088】
(試験例2)
実施の形態2にかかる軌道消雪装置Aに対しては耐伸縮性確認を目的とする迂回部の繰返し伸縮試験も行った。本試験の試料寸法と固定方法の模式図を図14に示す。迂回部は、図14に示すように直管部と直管部を30°の角度で電気融着により接続する第3管継手2個と3本の直線複合樹脂管とで形成されている。迂回部の一端側の配管を完全固定し固定側とし、可動側については、Uバンドのみで構造体等に支持することにより、配管の軸方向に伸縮自在としている。迂回部の他端側の配管を図示していない伸縮試験機に接続し、F方向の往復繰返し伸縮試験を行った。
繰返し伸縮試の試験条件を表3に示す。
【0089】
【表3】
ここで、繰返し回数は、いずれも18250回であって、これは365日×50年の回数に該当する。
1日変位量は10mmとした。これは熱膨張量測定における夏季の測定値に該当する。これを条件1とした(表3参照)。
季節変動量を考慮した試験条件を条件2及び条件3とした。つまり夏条件を70℃、冬条件をー10℃(ΔT=80℃)とし、複合樹脂管の線膨張係数を1.2×10−5/℃とすると、迂回部間隔48mの膨張量は46mmであるため、50mm変位を与えた後に、更に変位量10mmを発生させる繰返し伸縮試験を行った。
条件2は夏季に施工された場合を想定したものであって、冬季にー50mm移動しその状態から1日の気温変化により10mm移動する。
条件3は条件2の逆であり、冬季に施工された場合を想定したものであって、夏季に+50mm移動し、その状態から1日の気温変化により10mm移動する。
繰返し伸縮試験終了後には、管内空気圧力を2.5MPaまで加圧して、2分間の耐圧試験により迂回部10の漏れ発生の有無を確認した。
試験結果を表4に示す。
【0090】
【表4】
いずれの条件においても、繰返し伸縮試験終了後の耐圧試験に合格している。
また、配管表面のこすれも軽微であり、迂回部の配管強度、表面の耐磨耗性共に問題ないことが確認された。
【0091】
以上、本実施の形態にかかる軌道消雪装置Aを説明したが、上述した実施の形態は本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【0092】
例えば、本実施の形態にかかる軌道消雪装置Aの送水管部1は、送水管と継手を樹脂製としているが、従来のようにかかる構成部は金属製としても良い。すなわち、少なくともスプリンクラー配管ユニット2のみ樹脂で構成されていれば良い。またスプリンクラー配管ユニットの分岐継手21と散水管22との接続は電気融着に限るものではなく、接着剤を用いた接合の他、バット融着機を用いたバット融着による接続でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施の形態1にかかる軌道消雪装置の平面図である。
【図2】図1の要部断面図である。
【図3】分岐継手部分の拡大正面図である。
【図4】支持部の要部拡大断面図である。
【図5】別の形態における支持部の要部拡大断面図である。
【図6】樹脂分岐継手の他の実施例を示す斜視断面図である。
【図7】実施の形態2にかかる軌道消雪装置の平面図である。
【図8】スプリンクラー配管ユニットの平面図であって、(a)は単純な屈曲構造の平面図、(b)は迂回部の平面図である。
【図9】別の形態における支持部の図であって、(a)は支持部の平面図、(b)は支持部の要部拡大断面図である。
【図10】熱膨張試験のモデル配管の側面図である。
【図11】熱膨張試験の屋外モデル配管模式図であって、(a)は全体平面図、(b)は迂回部(破線円部分)の拡大平面図である。
【図12】熱膨張試験の配管膨張時の変化量を示すグラフであって、(a)は配管位置と各位置の熱膨張量との関係を示すグラフ、(b)は試験のモデルを示す模式図である。
【図13】熱膨張試験の配管膨張時の変化量を示すグラフであって、(a)は配管位置と各位置の軸方向角度変化量との関係を示すグラフ、(b)は配管位置と各位置の周方向角度変化量との関係を示すグラフである。
【図14】迂回部繰返し伸縮試験のモデル配管の側面図である。
【符号の説明】
【0094】
1:送水管部 10:迂回部 11:第1管継手 12:第2管継手 12a:分岐部 13:送水管 2:スプリンクラー配管ユニット 21:分岐継手 21a:開口接続部 22:散水管 221:ストレート管 222:エルボ管 23:散水スプリンクラー 231:ヘッド部 232:ロッド部 24:減圧弁 25:排水弁 3:支持部 31:支持ステー 32:支持部材 33:低摩擦部材 34:過締付け防止手段 35:ストッパ片 36:長穴 4:屈曲部 41:第3管継手 5:側溝 6:軌道 61:基礎 62:軌道スラブ 63:レール 71:継手本体 71a:貫通孔 71b:螺旋溝 72:金属端子 73:電熱線 81:分岐部 82:分岐パイプ 82a:鍔部 82b:筒部 82c:オネジ 83:固定具 84:シール手段 84a:スペーサ部材 9:本線部 10:迂回部 101:直線部 102:連結部 A:軌道消雪装置 B:樹脂管 b1:金属板 b2:孔 b3:管本体 K:固定端 J:自由端
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って配設される送水管同士が管継手を介して接続されてなる送水管部と、この送水管部に並列して配置される散水管同士が上部に開口部を有する分岐継手を介して接続されると共に、前記開口部に散水スプリンクラーが接続されてなるスプリンクラー配管ユニットとを備え、
前記スプリンクラー配管ユニットは、その一端が前記送水管部に接続されて固定端とされると共に、他端が自由端とされ、前記固定端を基点として軸方向に摺動自在に構造体に支持されていることを特徴とする軌道消雪装置。
【請求項2】
前記散水管及び/又は前記送水管の少なくとも接続部分は熱可塑性樹脂を含み、前記分岐継手及び/又は前記管継手と前記散水管及び/又は前記送水管とが電気融着されてなることを特徴とする請求項1記載の軌道消雪装置。
【請求項3】
前記散水管及び/又は前記送水管は、少なくとも外周面が熱可塑性樹脂からなる管本体の肉厚方向の一部に管状の金属板が介在してなる複合樹脂管であることを特徴とする請求項1又は2に記載の軌道消雪装置。
【請求項4】
前記散水管の中途部に配設され、前記スプリンクラー配管ユニットを保持する支持部材を備え、
前記支持部材は前記散水管への過締付けを防止する過締付け防止手段を具備していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の軌道消雪装置。
【請求項5】
前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットは本線部とその本線部に対して偏心した迂回部とを有していることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の軌道消雪装置。
【請求項6】
前記迂回部の前記本線部に平行若しくは平行に近い部分で前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットが構造体に支持されていることを特徴とする請求項5に記載の軌道消雪装置。
【請求項7】
前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットに、軸方向の伸縮の一部を吸収し得る屈曲部を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の軌道消雪装置。
【請求項1】
軌道に沿って配設される送水管同士が管継手を介して接続されてなる送水管部と、この送水管部に並列して配置される散水管同士が上部に開口部を有する分岐継手を介して接続されると共に、前記開口部に散水スプリンクラーが接続されてなるスプリンクラー配管ユニットとを備え、
前記スプリンクラー配管ユニットは、その一端が前記送水管部に接続されて固定端とされると共に、他端が自由端とされ、前記固定端を基点として軸方向に摺動自在に構造体に支持されていることを特徴とする軌道消雪装置。
【請求項2】
前記散水管及び/又は前記送水管の少なくとも接続部分は熱可塑性樹脂を含み、前記分岐継手及び/又は前記管継手と前記散水管及び/又は前記送水管とが電気融着されてなることを特徴とする請求項1記載の軌道消雪装置。
【請求項3】
前記散水管及び/又は前記送水管は、少なくとも外周面が熱可塑性樹脂からなる管本体の肉厚方向の一部に管状の金属板が介在してなる複合樹脂管であることを特徴とする請求項1又は2に記載の軌道消雪装置。
【請求項4】
前記散水管の中途部に配設され、前記スプリンクラー配管ユニットを保持する支持部材を備え、
前記支持部材は前記散水管への過締付けを防止する過締付け防止手段を具備していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の軌道消雪装置。
【請求項5】
前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットは本線部とその本線部に対して偏心した迂回部とを有していることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の軌道消雪装置。
【請求項6】
前記迂回部の前記本線部に平行若しくは平行に近い部分で前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットが構造体に支持されていることを特徴とする請求項5に記載の軌道消雪装置。
【請求項7】
前記送水管部及び/又は前記スプリンクラー配管ユニットに、軸方向の伸縮の一部を吸収し得る屈曲部を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の軌道消雪装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−31829(P2008−31829A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123552(P2007−123552)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(303059071)独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 (64)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(303059071)独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 (64)
【Fターム(参考)】
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