説明

軌道用作業機及び軌道用作業機の転倒防止方法

【課題】地盤からアウトリガーに反力を取らずとも軌道用作業機の転倒を防止する。
【解決手段】走行台車4の前部には、左右一対の車輪5と左右一対の車輪6が取り付けられ、走行台車4の後部には、左右一対の車輪7と左右一対の車輪8が取り付けられ、これら車輪5〜8により走行台車4がレール上を走行可能となっている。走行台車4の前端面には、2機のアウトリガー18が取り付けられている。走行台車4の前又は後ろから見て、一対のアウトリガー18の左右の位置が一対の車輪5の左右の位置に揃っている。アウトリガー18が下方に延び出ると、先端の接地足19がレール3に当たり、レール3から反力を取ることで軌道用作業機1の転倒が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のレール上を走行する軌道用作業機及びその転倒防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レールの交換、トンネルへのコンクリートの吹付け、地盤掘削等といった軌道用作業を行うために、レール上を走行する軌道用作業機が用いられている。軌道用作業機にはアーム、油圧装置等の作業に必要な重機が搭載されており、軌道用作業機がとても大きな重量を持つので、作業中の振動等によって転倒する虞がある。そのため、アウトリガーを軌道用作業機から横へ張り出すようにそのアウトリガーを軌道用作業機に取り付け、そのアウトリガーを地盤に当てて地盤から反力を取ることによって、軌道用作業機の転倒を防止することが行われている(特許文献1〜特許文献3参照。)。
【特許文献1】特許第2914459号公報
【特許文献2】特許第3579911号公報
【特許文献3】特許第3025138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、地盤が軟弱であると、アウトリガーが地盤に埋まってしまい、軌道用作業機の転倒防止の効果が半減してしまう。そのため、地盤の上に敷板を設置し、アウトリガーを敷板に当てて敷板から反力を取ることが行われている。しかしながら、敷板の設置作業に多大な労力と時間が必要となる。
【0004】
また、アウトリガーが軌道用作業機から横に張り出しているので、軌道用作業機の横にスペースを確保しなければならないが、トンネル内等ではそのようなスペースを確保することが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、地盤からアウトリガーに反力を取らずとも軌道用作業機の転倒を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明では、軌道用作業機が、走行台車と、前記走行台車に取り付けられたレール走行用の左右一対の車輪と、前記走行台車の前又は後ろから見て前記一対の車輪と左右の位置が揃うよう前記走行台車に取り付けられた左右一対のアウトリガーと、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、軌道用作業機の転倒防止方法は、左右一対のレール上を走行可能な軌道用作業機の走行台車の前又は後ろから見て左右一対のアウトリガーの左右の位置が前記一対のレールの左右の位置に揃うように前記一対のアウトリガーを前記走行台車に取り付け、前記一対のアウトリガーを下方に延び出させ、前記一対のアウトリガーを前記一対のレールに当てることで前記一対のレールから反力を取ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一対のアウトリガーの左右の位置が、一対のレールの左右の位置や、レール上を走行する一対の車輪の左右の位置に揃っているため、アウトリガーが延び出ると、アウトリガーがレールに当たりレールから反力を取ることができる。そのため、周囲の地盤が軟弱であっても、軌道用作業機の転倒防止を確実に行うことができる。
【0009】
また、敷板を周囲の地盤に設置する必要がなくなり、作業時間の短縮を図ることができる。
【0010】
また、一対のアウトリガーの左右の位置が、一対のレールの左右の位置や、レール上を走行する一対の車輪の左右の位置に揃っているため、アウトリガーが横に張り出していない。そのため、軌道用作業機の横にスペースを確保した状態で軌道用作業機の転倒を防止できたり、軌道用作業機の横にスペースがなくても軌道用作業機の転倒を防止できたりする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
図1は軌道用作業機1の側面図であり、図2は軌道用作業機1の正面図であり、図3は軌道用作業機1を斜め前から見た斜視図である。
【0013】
図1に示すように、トンネルといった作業現場には左右2本のレール3が敷設されており、レール3上を走行台車4が走行する。走行台車4の前部には、左右一対の車輪5が取り付けられ、走行台車4の前部であって車輪5の後方には、左右一対の車輪6が取り付けられている。走行台車4の後部には、左右一対の車輪8が取り付けられ、走行台車4の後部であって車輪8の前方には、左右一対の車輪7が取り付けられている。車輪5〜8がレール3に載置されて車輪5〜8が回転することにより、走行台車4がレール3上を走行する。
【0014】
走行台車4には、コンクリートポンプ9、配電盤10、ケーブルリール11、コンプレッサー12、コンプレッサー13、油圧ユニット14及び急結材添加装置15が搭載されている。走行台車4の前部には多節点アーム16が搭載されている。多節点アーム16の基端部が走行台車4の前部に連結され、多節点アーム16の先端部が走行台車4の前端よりも前方に延び出ている。この多節点アーム16は、上下に起伏するとともに、左右に旋回する。多節点アーム16の先端部には吹付ノズル17が取り付けられ、この吹付ノズル17は多節点アーム16の先端部を中心にして上下に回動するとともに左右に回動する。
【0015】
コンクリートポンプ9によってコンクリートが吹付ノズル17に送られ、コンクリートポンプ9により送られているコンクリートには急結材が急結材添加装置15によって添加され、急結材が添加されたコンクリートが吹付ノズル17から噴射される。
【0016】
走行台車4の前端面には、2機のアウトリガー18が取り付けられている。図2、図3に示すように、2機のアウトリガー18の左右の間隔は2輪の車輪5の左右の間隔と等しい。更に、図2に示すように走行台車4の前又は後ろから見て、一対のアウトリガー18の左右の位置は、一対の車輪5の左右の位置に揃っているとともに、一対のレール3の左右の位置に揃っている。また、2機のアウトリガー18の間隔は走行台車4の幅よりも狭くなっている。
【0017】
アウトリガー18は、油圧シリンダ方式のジャッキであり、油圧により上下に伸縮する。アウトリガー18への作動油の供給は油圧ユニット14によって行われ、アウトリガー18の油圧の調整が油圧ユニット14によって行われることでアウトリガー18のストローク(延び出し量)が調整される。アウトリガー18の先端には接地足19が取り付けられている。
【0018】
次に、この軌道用作業機1の動作を説明するとともに、この軌道用作業機1の転倒を防止する方法について説明する。
【0019】
アウトリガー18が引き込んだ状態では、接地足19がレール3や地面から離れているので、この状態で走行台車4が走行可能となる。走行台車4を走行させて、軌道用作業機1をトンネル内の作業現場まで移動させる。そして、油圧ユニット14によって両方のアウトリガー18に作動油を供給して、アウトリガー18の油圧を上昇させると、アウトリガー18が下方に延び出る。アウトリガー18が延び出ると、先端の接地足19がレール3に当たり、レール3から反力を取ることで軌道用作業機1の転倒が防止される。アウトリガー18が延び出てレール3から反力を取っている状態において、アウトリガー18の油圧が油圧ユニット14によって調整される。この時、前方の車輪5や車輪6がレール3から離れるようにアウトリガー18の油圧を上昇させても良いし、車輪5や車輪6がレール3から離れない程度にアウトリガー18の油圧を調整しても良い。
【0020】
アウトリガー18によって軌道用作業機1を支えた状態において、コンクリートポンプ9によってコンクリートを吹付ノズル17に送り、コンクリートを吹付ノズル17からトンネルの壁面へ吹き付ける。この時、多節点アーム16を旋回したり起伏させたりすることによって吹付ノズル17の位置を調整し、吹付ノズル17を上下左右に回転させることによって吹付ノズル17の吹付け方向を調整する。コンクリートの吹付け後、軌道用作業機1を移動させる場合には、アウトリガー18の油圧を解放し、アウトリガー18を上に引き込ませる。
【0021】
以上のように、本実施形態によれば、アウトリガー18の接地足19がレール3に接して、レール3から反力を取っているので、作業現場が軟弱な地盤であっても、軌道用作業機1を安定させることができ、軌道用作業機1の転倒防止を確実に行うことができる。
【0022】
また、レール3から反力を取っているので、敷板を軌道用作業機1の周囲の地盤に設置する必要がなくなり、作業時間の短縮を図ることができる。
【0023】
また、アウトリガー18が走行台車4の横に張り出していないので、走行台車4の横にスペースを確保することができ、更に、走行台車4の横にスペースがない場合でも、軌道用作業機1の転倒を防止することができる。
【0024】
また、多節点アーム16が走行台車4の前端から前方に延び出ていても、走行台車4の前端面にアウトリガー18が取り付けられているので、軌道用作業機1を安定させることができる。
【0025】
なお、以上の実施形態においては、トンネルの壁面にコンクリートを吹き付ける作業に使用する軌道用作業機1について説明したが、レールの上を走行可能な軌道用作業機であれば、その軌道用作業機の使用目的は特に限定されない。
【0026】
また、上記実施形態では、アウトリガー18が油圧シリンダ式のジャッキであったが、エアシリンダ式のジャッキであっても良い。アウトリガー18がエアシリンダ式のジャッキである場合には、コンプレッサー12又はコンプレッサー13によってアウトリガー18に空気が供給されるとともに空圧も調整される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】軌道用作業機の側面図である。
【図2】軌道用作業機の正面図である。
【図3】斜め前から見た軌道用作業機の斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 軌道用作業機
3 レール
4 走行台車
5〜8 車輪
18 アウトリガー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行台車と、
前記走行台車に取り付けられたレール走行用の左右一対の車輪と、
前記走行台車の前又は後ろから見て前記一対の車輪と左右の位置が揃うよう前記走行台車に取り付けられた左右一対のアウトリガーと、を備えることを特徴とする軌道用作業機。
【請求項2】
左右一対のレール上を走行可能な軌道用作業機の走行台車の前又は後ろから見て左右一対のアウトリガーの左右の位置が前記一対のレールの左右の位置に揃うように前記一対のアウトリガーを前記走行台車に取り付け、前記一対のアウトリガーを下方に延び出させ、前記一対のアウトリガーを前記一対のレールに当てることで前記一対のレールから反力を取ることを特徴とする軌道用作業機の転倒防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−253800(P2007−253800A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81095(P2006−81095)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】