説明

軟磁性合金およびこれを用いた磁性部品

【課題】 高飽和磁束密度で優れた軟磁気特性、特に優れた交流磁気特性を示す軟磁性合金を提供する。
【解決手段】 組成式:Fe100-x-y-zCuBSi(但し、原子%で、1<x<2、10≦y≦20、0<z≦9、10<y+z≦24)により表され、平均粒径60nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で30%以上分散した組織を有し、飽和磁束密度が1.7T以上、保磁力が8A/m未満である軟磁性合金であって、平均粒径30nm以下の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で3%以上30%未満で分散した組織を有するFe基合金を熱処理することにより得られる軟磁性合金である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種トランス、リアクトル・チョークコイル、ノイズ対策部品、レーザ電源や加速器などに用いられるパルスパワー磁性部品、通信用パルストランス、モータ磁心、発電機、磁気センサ、アンテナ磁心、電流センサ、磁気シールド、電磁波吸収シート、ヨーク材等に用いられるナノスケールの微細な結晶粒を含む高飽和磁束密度でかつ優れた軟磁気特性、特に優れた交流磁気特性を示す軟磁性合金およびこれを用いた磁性部品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種トランス、モータ、発電機、リアクトル・チョ−クコイル、ノイズ対策部品、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、各種センサ、磁気シールド、磁気回路用ヨーク等に用いられる軟磁性材料としては、珪素鋼、フェライト、非晶質合金やFeCuNbSiB系合金やFeZrB系合金に代表されるFe基ナノ結晶合金等が知られている。フェライト材料は飽和磁束密度が低くキュリー温度が低いため、動作磁束密度を大きく設計するハイパワーの用途の磁心などに使用した場合、磁心サイズが大きくなる問題や金属系軟磁性材料に比べて温度特性が悪くなる問題がある。珪素鋼は、材料が安価で磁束密度が高く低周波の用途では小型化の面で有利であるが、磁心損失が大きいという問題があり、特に高周波の用途では渦電流損失が増加するために磁心損失が著しく大きくなる問題がある。Fe基やCo基の非晶質合金(アモルファス合金)は、通常液相や気相から超急冷し製造され、結晶粒が存在しないために本質的に結晶磁気異方性が存在せず優れた軟磁気特性を示すことが知られている。非晶質合金は低損失で透磁率が高く電力用変圧器、チョークコイル、磁気ヘッドや電流センサなどの磁心材料として使用されている。また、通常板厚は5μm〜50μm程度であり、渦電流損失が低いため高周波の応用に適する。しかし、Fe基非晶質合金は磁歪が大きく騒音の問題や樹脂などで含浸した場合に樹脂含浸により発生する応力により磁気特性が劣化する問題がある。また、飽和磁束密度もCoなど高価な元素を添加しない場合、1.7T未満であり、不十分である。Co基非晶質合金は低磁歪で高透磁率であるが、飽和磁束密度が1T以下と低く、直流が重畳する用途や低周波の用途では磁心が大きくなってしまう問題や100℃を超えると経時変化が大きくなるという問題がある。また、Coが高価なため用途が限定される。
【0003】
Fe基ナノ結晶合金は、Co基非晶質合金に匹敵する優れた軟磁気特性とFe基非晶質合金に匹敵する高い飽和磁束密度を示すことが知られており、コモンモ−ドチョ−クコイルなどのノイズ対策部品、高周波トランス、パルストランス、電流センサ等の磁心に使用されている。代表的組成系は特公平4-4393号公報や特開平1−242755号公報に記載のFe−Cu−(Nb,Ti,Zr,Hf,Mo,W,Ta)−Si−B系合金やFe−Cu−(Nb,Ti,Zr,Hf,Mo,W,Ta)−B系合金等が知られている。これらのFe基ナノ結晶合金は、通常液相や気相から急冷し非晶質合金とした後、これを熱処理により微結晶化することにより作製されている。液相から急冷する方法としては単ロ−ル法、双ロ−ル法、遠心急冷法、回転液中紡糸法、アトマイズ法やキャビテーション法等が知られている。また、気相から急冷する方法としては、スパッタ法、蒸着法、イオンプレ−ティング法等が知られている。Fe基ナノ結晶合金はこれらの方法により作製した非晶質合金を微結晶化したもので、非晶質合金にみられるような熱的不安定性がほとんどなく、Fe系非晶質合金と同程度の高い飽和磁束密度と低磁歪で優れた軟磁気特性を示すことが知られている。更にナノ結晶合金は経時変化が小さく、温度特性にも優れていることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−4393号公報(第5頁右欄31行目〜43行目、図1)
【特許文献2】特開平1−242755号公報(第3頁左上欄15〜右上欄5行目)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、Fe基非晶質合金の飽和磁束密度Bsは、Coなどの高価な元素を添加しない場合、飽和磁束密度を上昇させるためにFe量を増加するとキュリー温度が低下してくるため、室温における飽和磁束密度Bsが1.7Tを超えるのは困難であり、Fe基非晶質合金はBsが珪素鋼よりもかなり低いため、電力用変圧器などの低周波の用途や優れた直流重畳特性が要求されるリアクトル(パワーチョーク)などの用途では、磁心体積が増加する課題がある。
珪素鋼板は、鉄損がFe基非晶質合金よりも大きいため、省エネルギーの観点から課題がある。また、珪素鋼板は高周波において渦電流損失が増加するため、従来の非晶質合金やナノ結晶軟磁性合金に比べ磁心損失の面で劣っている。
Fe−Cu−(Nb,Ti,Zr,Hf,Mo,W,Ta)−Si−B系合金やFe−Cu−(Nb,Ti,Zr,Hf,Mo,W,Ta)−B系合金に代表される従来のFe基ナノ結晶軟磁性合金は、Coを添加せず広幅材の製造が可能な合金では、Fe基非晶質合金と同様室温における飽和磁束密度が1.73T未満であり、磁心体積が増加するため、更なる高飽和磁束密度化が望まれている。従来のFe−Cu−(Nb,Ti,Zr,Hf,Mo,W,Ta)−Si−B系合金やFe−Cu−(Nb,Ti,Zr,Hf,Mo,W,Ta)−B系合金は、一旦できる限り全体が非晶質相である合金を製造した後、CuとNbなどの元素の複合効果によりナノ結晶化させることにより製造される。
Cuは、熱処理によりクラスタを形成し、これが体心立方構造の結晶相(bcc相)の不均一核形成サイトとなり、更にNbなどの元素が非晶質層を安定化させ、bcc相の結晶粒成長を抑え、ナノ結晶粒が分散したナノ結晶合金が実現するために、優れた軟磁気特性が得られると考えられている。しかし、飽和磁束密度を増加させるためにはFe量を増加しなければならず、非磁性元素であるNbなどの量を減らす必要がある。しかしながら、従来の非晶質化後熱処理によりナノ結晶化させる製造方法では、Nbなどを減らすと結晶粒が粗大になり、軟磁気特性が大幅に劣化する問題があった。熱処理前に生ずる結晶粒は、結晶粒径が大きく、熱処理後の軟磁気特性を劣化させるため、できる限り急冷後の熱処理前の合金中には結晶が存在せず、完全な非晶質状態を実現する方が望ましいことが知られていた。このため、単ロール法などの超急冷法で完全な非晶質合金を製造するためには、Fe量をあまり増加することはできず、高飽和磁束密度化と軟磁気特性の両立には限界があった。
Fe−BやFe−Si−B系に代表されるFe基非晶質合金を結晶化させると、飽和磁束密度は上昇するが、結晶粒が粗大化してしまい、軟磁性が著しく劣化する問題がある。
また、Fe−B系やFe−Si−B系でFe量を増加し、直接結晶材を製造すると、化合物相の形成や体心立方構造のFe相(bccFe相)の結晶粒が粗大化し、軟磁性が得られない問題がある。
【0006】
以上のように、従来のFe基ナノ結晶軟磁性合金やFe基非晶質合金は、飽和磁束密度は1.73T未満であり、超急冷法により製造された高Bsの結晶材料は軟磁性が著しく劣るという問題があり、従来のFe基ナノ結晶軟磁性合金やFe基非晶質合金よりも高飽和磁束密度で珪素鋼板よりも磁心損失が低く、高透磁率で優れた軟磁気特性を示す軟磁性合金の実現が強く望まれている。
そこで、本発明は高飽和磁束密度で優れた軟磁気特性、特に優れた交流磁気特性を示す軟磁性合金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、組成式:Fe100-x-yCuB(但し、原子%で、1<x<2、10≦y≦20)により表され、平均粒径60nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で30%以上分散した組織を有し、飽和磁束密度が1.7T以上、保磁力が8A/m未満である軟磁性合金であって、平均粒径30nm以下の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で3%以上30%未満で分散した組織を有するFe基合金を熱処理することにより得られる軟磁性合金である。
【0008】
また、本発明は、組成式:Fe100-x-y-zCuBSi(但し、原子%で、1<x<2、10≦y≦20、0<z≦9、10<y+z≦24)により表され、平均粒径60nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で30%以上分散した組織を有し、飽和磁束密度が1.7T以上、保磁力が8A/m未満である軟磁性合金であって、平均粒径30nm以下の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で3%以上30%未満で分散した組織を有するFe基合金を熱処理することにより得られる軟磁性合金である。
これらの軟磁性合金は、従来のナノ結晶軟磁性合金や非晶質合金よりも高飽和磁束密度で優れた軟磁気特性、特に優れた交流磁気特性を示す。
結晶粒の体積分率は、線分法、すなわち顕微鏡組織中に任意の直線を想定しそのテストラインの長さをLt、結晶相により占められる線の長さLcを測定し、結晶粒により占められる線の長さの割合LL=Lc/Ltを求めることにより求められる。
【0009】
合金溶湯を急冷した際、非晶質中に平均粒径30nm以下の結晶粒が非晶質中に体積分率で0%超30%未満で分散した組織のFe基合金を作製することにより、結晶粒が粗大化するFe量の多い組成において、その後熱処理を行っても結晶粒径の著しい増加が起こらず、従来のFe基ナノ結晶合金やFe基非晶質合金よりも高飽和磁束密度でありながら、優れた軟磁気特性を示すことを見出した。従来、完全な非晶質相からなる合金を熱処理し結晶化させた方が優れた軟磁性を示すと考えられていたが、鋭意検討の結果Fe量が多い合金においては、完全な非晶質合金を作製するのではなく、むしろ非晶質母相(マトリックス)中に微細な結晶粒が分散した合金を作製した後に熱処理を行い、結晶化を進めた方が熱処理後、より微細な結晶粒組織となり優れた軟磁気特性が実現できることを見出した。熱処理前の非晶質母相中に分散する結晶粒の平均粒径は30nm以下である必要がある。この理由は、熱処理前の状態で平均粒径がこの範囲を超えている場合、熱処理を行うと結晶粒が大きくなりすぎる、不均一な結晶粒組織となるなどが原因で軟磁性が劣化するためである。好ましくは、非晶質母相中に分散する結晶粒の平均粒径は20nm以下である。この範囲で、より優れた軟磁気特性を実現できる。また、平均結晶粒間距離(各結晶の重心と重心の距離)は通常50nm以下である。平均結晶粒間距離が大きいと熱処理後の結晶粒の結晶粒径分布が広くなる。また、熱処理後に非晶質母相中に分散する体心方構造の結晶粒は、平均粒径60nm以下、体積分率で30%以上分散している必要がある。結晶粒の平均粒径が60nmを超えると軟磁気特性が劣化し、結晶粒の体積分率が30%未満では、非晶質の割合が多く高飽和磁束密度が得にくいためである。より好ましい結晶粒の平均粒径は、30nm以下、より好ましい結晶粒の体積分率は50%以上である。この範囲で、より軟磁性が優れ、Fe基非晶質合金に比べて磁歪の低い合金を実現できる。
【0010】
本発明において、軟磁性合金が3原子%以下のCu、Auから選ばれた少なくとも1種の元素を含む場合、平均粒径30 nm以下の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で0%超30%未満で分散した組織を実現しやすい。Cu、Auから選ばれた少なくとも1種の元素を含む場合、急冷後の熱処理前の合金中にCuやAu濃度の高い非晶質状態のクラスタや面心立方構造(fcc構造)の結晶粒が存在する場合がある。特にCu、Auから選ばれた少なくとも1種の元素を1原子%超、2原子%未満の場合、優れた軟磁気特性が得られるためより好ましい結果が得られる。
【0011】
軟磁性合金が80原子%以上のFeを含む場合、高飽和磁束密度の軟磁性合金を製造可能であるため、より好ましい結果が得られる。
【0012】
軟磁性合金がB、Si、P、C、BeおよびGeから選ばれた少なくとも1種の半金属元素を含む場合、溶湯を急冷することにより非晶質化が可能であり、平均粒径30 nm以下の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で30%未満で分散した組織を実現できる。
【0013】
Bは高飽和磁束密度で優れた軟磁性を実現するのに有効な元素である。Bを12原子%以上20原子%以下含む場合、より優れた磁気特性が実現され、好ましい結果が得られる。
【0014】
また、Bの一部をBe, P, Ga, Ge, C,Be及びAlから選ばれた少なくとも一種の元素で置換することができる。
【0015】
また、Feの10原子%以下、をCo、Niから選ばれた少なくとも一種の元素で置換することができる。Co、Niを置換することにより誘導磁気異方性の大きさを制御することが可能である。高角形比のB-Hループや、より直線性の良いB-Hループを得ることができ、可飽和リアクトル用磁心や、電流センサ用磁心などにより適した特性を実現できる。
【0016】
また、飽和磁束密度の著しい低下が生じない範囲でFeの1.8原子%以下をTi, Zr,
Hf, V, Nb, Ta, Cr, Mo, W, Mn, Re, 白金族元素, Au, Ag, Zn,
In, Sn, As, Sb, Bi, S, Y, N, O及び希土類元素から選ばれた少なくとも一種の元素で置換することもできる。これらの元素を置換することにより、耐食性を改善する、あるいは電気抵抗率や磁気特性を調整・改善することができる。
また、本発明の製造方法により作製した軟磁性合金の体心立方構造の結晶相は、Feを主体としているが、合金組成によってはSi,B,Al,GeやZr等を固溶する場合がある。また、一部にCuやAuを含む面心立方構造の相(fcc相)も存在しても良い。
【0017】
上記軟磁性合金は、飽和磁束密度が1.7T以上、さらには1.73T以上で、かつ高飽和磁束密度で優れた軟磁性を示し、20kHz, 0.2Tにおける磁心損失が20W/Kg以下である低損失の軟磁性合金を実現できる。
また、保磁力Hcは200A/m以下、さらには100A/m以下の軟磁性合金を実現できる。また、交流比初透磁率μkが3000以上、さらには5000以上の軟磁性合金を実現できる。
【0018】
本発明の軟磁性合金においては、磁心損失は、化合物相が存在しない方が低くて望ましいが、化合物相を一部に含んでいても良い。
【0019】
本発明において、溶湯を急冷する方法としては、単ロール法、双ロール法、回転液中防止法、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法などがあり、薄帯や粉末を製造することができる。また、溶湯急冷時の溶湯温度は、合金の融点よりも50℃〜300℃程度高い温度とするのが望ましい。
単ロール法などの超急冷法は、活性な金属を含まない場合は大気中あるいは局所Arあるいは窒素ガスなどの雰囲気中で行うことが可能であるが、活性な金属を含む場合はAr、Heなどの不活性ガス中、窒素ガス中あるいは減圧中、あるいはノズル先端部のロール表面付近のガス雰囲気を制御し、CO2ガスをロールに吹き付ける方法や、COガスをノズル近傍のロール表面付近で燃焼させながら合金薄帯製造を行う。
単ロール法の場合の冷却ロール周速は、15m/sから50m/s程度の範囲が望ましく、冷却ロール材質は、熱伝導が良好な純銅やCu−Be、Cu−Cr、Cu−Zr、Cu−Zr−Crなどの銅合金が適している。大量に製造する場合、板厚が厚い薄帯や広幅薄帯を製造する場合は、冷却ロールは水冷構造とした方が好ましい。
【0020】
熱処理は通常アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウム等の不活性ガス中で行う。熱処理により体心立方構造のFeを主体とする結晶粒の体積分率が増加し、飽和磁束密度が上昇する。また、熱処理により磁歪も低減する。本発明の軟磁性合金は、磁界中熱処理を行うことにより、誘導磁気異方性を付与することができる。磁界中熱処理は、熱処理期間の少なくとも一部の期間合金が飽和するのに十分な強さの磁界を印加して行う。合金磁心の形状にも依存するが、一般には薄帯の幅方向(環状磁心の場合:磁心の高さ方向)に印加する場合は8kAm−1以上の磁界を、長手方向(環状磁心の場合は磁路方向)印加する場合は80Am−1以上の磁界を印加する。印加する磁界は、直流、交流、繰り返しのパルス磁界のいずれを用いても良い。磁界は200℃以上の温度領域で通常20分以上印加する。昇温中、一定温度に保持中および冷却中も印加した方が、良好な一軸の誘導磁気異方性が付与されるので、より望ましい直流あるいは交流ヒステリシスループ形状が実現される。磁界中熱処理の適用により高角形比あるいは低角形比の直流ヒステリシスループを示す合金が得られる。磁界中熱処理を適用しない場合、本発明合金は中程度の角形比の直流ヒステリシスループとなる。熱処理は、通常露点が−30℃以下の不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましく、露点が−60℃以下の不活性ガス雰囲気中で熱処理を行うと、ばらつきが更に小さくなり、より好ましい結果が得られる。熱処理の際の最高到達温度は、通常300℃から600℃の範囲である。一定温度に保持する熱処理パターンの場合は、一定温度での保持時間は通常は量産性の観点から100時間以下であり、好ましくは4時間以下である。熱処理の際の平均昇温速度は好ましくは0.1℃/minから200℃/min、より好ましくは0.1℃/minから100℃/min、平均冷却速度は好ましくは0.1℃/minから3000℃/min、より好ましくは0.1℃/minから100℃/minであり、この範囲で特に低磁心損失の合金が得られる。熱処理は1段ではなく多段の熱処理や複数回の熱処理を行うこともできる。更に、合金に直流、交流あるいはパルス電流を流して合金を発熱させ熱処理することもできる。また、熱処理の際に、張力や圧縮力をかけながら熱処理し、磁気特性を改善することができる。
【0021】
本発明の軟磁性合金は、平均粒径60nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で30%以上分散した組織からなり、1.73T以上の高飽和磁束密度と20kHz、0.2Tにおける磁心損失が20W/Kg以下の優れた交流磁気特性を示す。
【0022】
本発明の軟磁性合金において、より好ましい結晶粒の平均粒径は、30nm以下、より好ましい結晶粒の体積分率は50%以上である。この範囲で、より軟磁性が優れ、Fe基非晶質合金に比べて磁歪の低い合金を実現できる。
【0023】
本発明の軟磁性合金は、必要に応じてSiO、MgO、Al等の粉末あるいは膜で合金薄帯あるいは粉末表面を被覆する、化成処理により表面処理し絶縁層を形成する、アノード酸化処理により表面に酸化物絶縁層を形成する、あるいは有機樹脂層を形成し層間絶縁を行う等の処理を行うことができ、このような処理により更に高周波特性が改善されより好ましい結果が得られる。これは特に磁心を作製した際に、層間あるいは粒子間を渡る高周波における渦電流の影響を低減し、高周波における磁心損失を改善する効果があるためである。この効果は表面状態が良好でかつ広幅の薄帯から構成された磁心や粉末を固化した圧粉磁心に使用した場合に特に著しい。
本発明の軟磁性合金は、必要に応じて含浸やコーティング等を行うことも可能である。エポキシ樹脂やアクリル樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂により含浸する、あるいは合金を接着するなどして巻磁心カットコアや積層コアとして使用することができる。磁心は、一般的には樹脂ケースなどに入れる、あるいはコーティングして使用される。また、切断してカットコアとする場合もある。前記合金を粉砕して粉末やフレーク状にしたものを水ガラスや樹脂などで固めた圧粉磁心や前記合金から作られた粉末やフレークを樹脂などと混ぜてシート状にし使用される場合もある。
【0024】
もう一つの本発明は、前記軟磁性合金を用いた磁性部品である。この軟磁性合金は、商用周波数や比較的低い周波数においても低い磁心損失を示すため、変圧器用鉄心、モータ鉄心、リアクトル用鉄心などにも適しており、高性能な磁性部品を実現できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高飽和磁束密度でかつ優れた軟磁気特性、特に優れた交流磁気特性を示す軟磁性合金ならびに磁性部品を提供できる。その効果は著しいものがある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係わる合金溶湯を急冷した後の合金の透過電子顕微鏡(TEM)により観察された合金薄帯内部のミクロ組織の一例を示した図である。
【図2】本発明に係わる合金溶湯を急冷した後の合金薄帯内部のミクロ組織の模式図である。
【図3】本発明により製造した熱処理後の合金のX線回折パターンの一例を示した図である。
【図4】本発明により製造した熱処理後の合金の透過電子顕微鏡により観察したミクロ組織の一例を示した図である。
【図5】本発明により製造した熱処理後の合金の透過電子顕微鏡により観察したミクロ組織の一例を示した図である。
【図6】本発明合金からなる巻磁心および従来材料からなる磁心の50Hzにおける単位重量当たりの磁心損失(鉄損)PcmのBm依存性の一例を示した図である。
【図7】本発明合金からなる巻磁心および従来材料からなる磁心の0.2Tにおける単位重量当たりの磁心損失(鉄損)Pcmの周波数依存性の一例を示した図である。
【図8】本発明に係わる実施例と比較例の飽和磁束密度Bsの熱処理温度依存性の一例を示した図である。
【図9】本発明に係わる実施例と比較例の保磁力Hcの熱処理温度依存性の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施例にしたがって説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
合金組成がFebal.Cu1.35B14Si2(原子%)の1250℃に加熱された合金溶湯をスリット状のノズルから周速30m/sで回転する外径300mmのCu-Be合金ロールに噴出し、幅5mm、厚さ18μmの合金薄帯を作製した。作製した合金薄帯のX線回折と透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った結果、非晶質母相中に結晶粒が分布した組織からなることが確認された。図1に透過電子顕微鏡により観察した合金薄帯内部のミクロ組織を、図2に合金薄帯内部のミクロ組織の模式図を示す。電子顕微鏡観察によるミクロ組織から平均粒径5.5nm程度の微細な結晶粒が、非晶質母相(マトリックス)中に体積分率で4.8%含まれていることが確認された。
次に、作製した合金薄帯を外径19mm、内径15mmに巻き回し、巻磁心を作製した。この巻磁心を、窒素ガス雰囲気中の炉に挿入し、巻磁心の高さ方向に240KA/mの磁界を印加しながら室温から420℃まで7.5℃/minの昇温速度で加熱し、420℃で60分保持後平均冷却速度1.2℃/minで200℃まで冷却し、炉から取り出して室温まで冷却し磁界中熱処理を行った。熱処理後の試料の磁気特性を測定した。また、熱処理した試料のX線回折と透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った。図3に熱処理後の試料のX線回折パターン、図4に透過電子顕微鏡により観察した合金薄帯内部のミクロ組織を、図5に合金薄帯内部のミクロ組織の模式図を示す。観察したミクロ組織とX線回折から、平均粒径約14nm程度の微細な体心立方構造の結晶粒が非晶質母相中に分散しており、組織の60%を占めていることが確認された。また、結晶粒の組成を調査したところFeを主体とした体心立方構造(bcc構造)の結晶粒であることが確認された。
【0029】
表1に熱処理を行った後の飽和磁束密度Bs、保磁力Hc、1kHzにおける交流比初透磁率μ1k、20kHz,0.2Tにおける磁心損失Pcm、平均結晶粒径Dを示す。比較のために、合金溶湯を急冷した後の合金が完全な非晶質合金であったFebal.B14Si2(原子%)合金(比較例1)を熱処理し、結晶化させた後の磁気特性と平均結晶粒径D、従来から知られている非晶質合金を熱処理しナノ結晶化させ製造した代表的なナノ結晶軟磁性合金であるFebal.Cu1Nb3Si13.5B9(原子%)合金(比較例2)とFebal.Nb7B9(原子%)合金(比較例3)の磁気特性と平均結晶粒径、典型的なFe基非晶質合金であるFebal.B13Si9合金(原子%)(比較例4)と6.5mass%珪素鋼帯(50μm)(比較例5)の磁気特性を示す。
本発明例の軟磁性合金は、1.73T以上の高い飽和磁束密度Bsを示し、従来のFe基非晶質合金や従来のFe基ナノ結晶合金よりも高いBsを示す。また、完全な非晶質合金であったFebal.Si2B14(原子%)合金を熱処理し、結晶化させた場合は、軟磁性が著しく劣っており、特に20kHz, 0.2Tにおける磁心損失Pcmは大きすぎ、通常の装置では励磁できず測定できなかった。本発明例は従来の6.5mass%珪素鋼帯よりも1kHzにおける交流比初透磁率μ1kが高く、磁心損失Pcmが低いため、パワーチョークコイル、高周波トランスなどに適した特性を有している。
【0030】
【表1】

【0031】
また、本発明合金の飽和磁歪定数λsを測定した結果、λsは+14×10-6であった。磁歪をFe基非晶質合金の1/2以下に低減できることが分った。このため、含浸、接着などを行った場合、Fe基非晶質合金に比べて軟磁気特性の劣化を抑えることができ、パワーチョークコイル用カットコアやモータ鉄心材料に適することが分った。
次に、本発明合金を用いた、パワーチョークを試作し評価した結果、圧粉磁心やFe基アモルファス合金から作製されたチョークコイルよりも優れた直流重畳特性を示し、高性能なチョークコイルが実現できることが確認された。
【0032】
(実施例2)
実施例1に示した、本発明合金からなる巻磁心の50Hzにおける単位重量当たりの磁心損失(鉄損)PcmのBm依存性を測定した。その結果を図6に示す。比較のために、従来の方向性電磁鋼板、Fe基非晶質合金巻磁心の磁心損失PcmのBm依存性も示す。本発明合金からなる巻磁心は、Fe基非晶質合金からなる巻磁心に匹敵する低磁心損失を示し、高飽和磁束密度であるため、1.5T以上になると、Fe基非晶質合金よりも低い鉄心損失となり、1.65T程度の磁束密度まで磁心損失の急激な増加が起こらない。このため、トランスなどに使用する場合に設計磁束密度を従来のFe基非晶質合金よりも高くでき、トランスを小型化できる。また、高磁束密度領域まで方向性電磁鋼板よりも磁心損失が低いため、省エネの面でも優れた性能を有している。
【0033】
(実施例3)
実施例1に示した、本発明合金からなる巻磁心の0.2Tにおける単位重量当たりの磁心損失(鉄損)Pcmの周波数依存性を測定した。その結果を図7に示す。比較のために、従来の6.5mass%珪素鋼板、Fe基非晶質合金の磁心損失Pcmの周波数依存性も示す。本発明合金は、高飽和磁束密度材でありながら、従来のFe基材料よりも低い磁心損失を示すため、高周波で使用される、リアクトル・チョークコイル、トランスなどの磁心材料にも適していることが分る。また、交流比初透磁率を1kHzから100kHzまで測定したところ、100kHzまで6000以上の値が得られ、Fe基非晶質合金や6.5mass%珪素鋼板よりも高周波の透磁率も高いことが確認された。このため、コモンモードチョークなどの各種チョークコイル、パルストランスなどの各種トランス、磁気シールド材、アンテナ磁心などにも適することが分った。
【0034】
(実施例4)
表2に示す組成の1300℃に加熱した合金溶湯を周速32m/sで回転する外径300mmのCu-Be合金ロールに噴出し合金薄帯を作製した。作製した合金薄帯は幅5mm、厚さ約21μmである。X線回折および透過電子顕微鏡(TEM)観察の結果、非晶質母相中に体積分率で30%未満で分散した組織であることが確認された。
次に、これらの作製した合金薄帯を外径19mm、内径15mmに巻き回し巻磁心を作製した後、窒素ガス雰囲気中の炉に挿入し、室温から400℃まで8.5℃/minの昇温速度で加熱し、410℃で60分保持後室温まで空冷し冷却した。平均冷却速度は30℃/min以上であると見積もられた。次に熱処理後の試料の磁気特性を測定した。更に、熱処理した合金のX線回折と透過電子顕微鏡観察を行った。X線回折の結晶ピーク半価幅から平均結晶粒径Dを見積もった。また、透過電子顕微鏡によりミクロ構造を観察した結果、どの試料も粒径60nm以下の体心立方構造の微細な結晶粒が組織の30%以上を占めていることが確認された。
【0035】
表2に熱処理を行った後の合金試料の飽和磁束密度Bs、保磁力Hc、20kHz, 0.2Tにおける磁心損失Pcmを測定した。飽和磁束密度Bs、また、比較のために本発明とは異なる製造法により製造した合金の特性も比較して示す。Febal.B6合金は、Bsは高いが、熱処理前の段階で非晶質相は存在せず、結晶が100%を占めていた。また結晶粒径も100nmと見積もられた。Hcが非常に大きく、軟磁性が劣っているため、磁心損失Pcmが大きすぎ、測定磁束密度レベルまで励磁が困難でPcmの測定ができなかった。従来のナノ結晶軟磁性合金は一旦非晶質化した後に熱処理によりナノ結晶化したものであり、熱処理前の段階ではできるだけ完全な非晶質であることが望まれていた。典型的なナノ結晶軟磁性合金であるFebal.Cu1Nb3Si13.5B9合金はBsが1.24T、Febal.Nb7B9合金は1.52Tと本発明合金に比べて、Bsが低い。結晶粒の体積分率はそれぞれ75%と70%、平均結晶粒径はそれぞれ12nmと9nmであった。以上のように、本発明合金は、高Bsでありながら優れた軟磁性を実現できることが明らかとなった。
【0036】
【表2】

【0037】
(実施例5)
合金組成がFebal.Cu1.35Si2B14(原子%)の1250℃に加熱された合金溶湯をスリット状のノズルから周速30m/sで回転する外径300mmのCu-Be合金ロールに噴出し、幅5mm、厚さ18μmの合金薄帯を作製した。作製した合金薄帯のX線回折と透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った結果、非晶質母相中に結晶粒が分布した組織からなることが確認された。電子顕微鏡観察によるミクロ組織から平均粒径5.5nm程度の微細な結晶粒が、平均結晶粒間距離24nmで非晶質母相(マトリックス)中に分布していることが確認された。
次に、作製した合金薄帯を120mmに切断した。この試料を、あらかじめ昇温した窒素ガス雰囲気中の管状炉に挿入し、60分保持後炉から取り出し空冷し、磁気特性の熱処理温度依存性を検討した。熱処理の平均冷却速度は30℃/min以上とした。また、熱処理後の試料のX線回折と透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った。観察したミクロ組織とX線回折から、330℃以上の熱処理温度では、平均粒径60nm以下の微細な体心立方構造の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で30%以上分散した組織であることが確認された。また、結晶粒の組成を調査したところFeを主体とした体心立方構造(bc構造)の結晶粒であることが確認された。
また、比較のために本発明の製造方法とは異なる製造を行い比較した。合金組成がFebal.Si2B14(原子%)の1250℃に加熱された合金溶湯をスリット状のノズルから周速33m/sで回転する外径300mmのCu-Be合金ロールに噴出し、幅5mm、厚さ18μmの合金薄帯を作製した。作製した合金薄帯のX線回折と透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った結果、結晶粒は存在せず非晶質単相であることが確認された。次に、作製した合金薄帯を120mmに切断し、同様な熱処理を行い磁気特性の熱処理温度依存性を検討した。
図8に飽和磁束密度Bsの熱処理温度依存性を、図9に保磁力Hcの熱処理温度依存性を示す。本発明合金では、330℃を超えるとBsが上昇し、Hcの増加も起こらず、高Bsで優れた軟磁性を示す軟磁性合金が420℃を中心とする熱処理温度で実現する。これに対して、非晶質単相状態の合金を熱処理した場合は、結晶化により急激にHcが増加し、良好な軟磁性が得られないことが分る。
以上のように、非晶質母相中に平均粒径30nm以下の結晶粒が、体積分率で30%以下、平均結晶粒間距離で50nm以下に分布した組織を有する合金を熱処理し、平均粒径60nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で30%以上分散した組織とする本発明のFeを主体とする軟磁性合金は高Bsで優れた軟磁性を示すことが分った。
【0038】
(実施例6)
合金組成がFebal.Cu1.25Si2B14(原子%)の1250℃に加熱された合金溶湯をスリット状のノズルから回転する外径300mmのCu-Be合金ロールに噴出し、幅5mmで非晶質母相中の結晶粒の体積分率の異なる合金薄帯を作製し、結晶粒の体積分率を透過電子顕微鏡像より求めた。
次に、この合金薄帯を外径19mm、内径15mmに巻き回し巻磁心を作製し410℃で1時間の熱処理を行い、熱処理後の飽和磁束密度Bs、保磁力Hcを測定した。なお、熱処理後の合金の結晶粒の体積分率は30%以上であり、Bsは1.8T〜1.87Tを示した。
表3に熱処理後のHcを示す。熱処理前の合金中に結晶粒が存在しない合金を熱処理し熱処理後に非晶質母相中の結晶粒が60%になるように熱処理した場合、保磁力Hcは750A/mと著しく大きくなった。熱処理前における非晶質母相中の結晶粒の体積分率が30%未満の合金を熱処理した場合、熱処理後のHcは小さく、本発明製造方法により高Bsで軟磁性に優れた合金が実現できることが確認された。これに対して、熱処理前における非晶質母相中の結晶粒の体積分率が30%以上の合金を熱処理し残りの非晶質相を結晶化させた合金では、粗大化した結晶粒が存在するようになりHcが増加する傾向を示すことが分った。
以上のように、Fe量の多い高Bs材で熱処理前の急冷したままの状態で微細な結晶粒が0%超30%未満、特に3%以上30%未満で分散した組織の合金を熱処理し、更に結晶化を進めた合金の軟磁性は、完全な非晶質状態の合金や結晶粒が30%以上存在する合金よりも優れていることが分った。
【0039】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、高飽和磁束密度でかつ優れた軟磁気特性、特に優れた交流磁気特性を示す軟磁性合金ならびに磁性部品を提供できるためその効果は著しいものがある。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式:Fe100-x-yCuB(但し、原子%で、1<x<2、10≦y≦20)により表され、平均粒径60nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で30%以上分散した組織を有し、飽和磁束密度が1.7T以上、保磁力が8A/m未満である軟磁性合金であって、平均粒径30nm以下の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で3%以上30%未満で分散した組織を有するFe基合金を熱処理することにより得られることを特徴とする軟磁性合金。
【請求項2】
組成式:Fe100-x-y-zCuBSi(但し、原子%で、1<x<2、10≦y≦20、0<z≦9、10<y+z≦24)により表され、平均粒径60nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で30%以上分散した組織を有し、飽和磁束密度が1.7T以上、保磁力が8A/m未満である軟磁性合金であって、平均粒径30nm以下の結晶粒が非晶質母相中に体積分率で3%以上30%未満で分散した組織を有するFe基合金を熱処理することにより得られることを特徴とする軟磁性合金。
【請求項3】
Feを80原子%以上含み、飽和磁束密度が1.73T以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の軟磁性合金。
【請求項4】
20kHz, 0.2Tにおける磁心損失が20W/Kg以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の軟磁性合金。
【請求項5】
前記Fe基合金の結晶粒の平均粒径が20nm以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の軟磁性合金。
【請求項6】
前記Fe基合金の結晶粒の平均結晶粒間距離が50nm以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の軟磁性合金。
【請求項7】
Feの10原子%以下をCo, Niから選ばれた少なくとも一種の元素で置換したことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の軟磁性合金。
【請求項8】
Bの一部をBe, P, Ga, Ge, C,Be及びAlから選ばれた少なくとも一種の元素で置換したことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の軟磁性合金。
【請求項9】
Feの1.8原子%以下をTi, Zr,
Hf, V, Nb, Ta, Cr, Mo, W, Mn, Re, 白金族元素, Au, Ag, Zn,
In, Sn, As, Sb, Bi, S, Y, N, O及び希土類元素から選ばれた少なくとも一種の元素で置換したことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の軟磁性合金。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の軟磁性合金を用いたことを特徴とする磁性部品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−60665(P2013−60665A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−244151(P2012−244151)
【出願日】平成24年11月6日(2012.11.6)
【分割の表示】特願2006−242349(P2006−242349)の分割
【原出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】