説明

軟質ポリウレタンフォーム製マットレス用収納袋

【課題】 ファスナ部で開閉自在な収納袋に収納された軟質ポリウレタンフォーム製マットレスにおいて、ファスナ部に対応する箇所に筋状などの黄変が生じるのを防止する。
【解決手段】 軟質ポリウレタンフォーム製マットレスを収納し、且つファスナ部によって開閉自在な収納袋1において、ファスナ部4を通して大気中の窒素酸化物(NOx)が袋内に侵入することで、マットレスに筋状の黄変が生じるのを防止するため、ファスナ部4の隙間を被うことのできる1枚の被い部材6を第1ファスナ部4aに沿って設ける。またこの被い部材6の幅を、ファスナ幅cの2倍以上とし、長さをファスナ部4の長さと略同一にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォーム製のマットレス用の収納袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟質ポリウレタンフォーム(以下、フォームと示すこともある)は、太陽光線(紫外線)や大気中の窒素酸化物(NOx)によって黄色に変色(黄変)することが知られており、このような紫外線やNOxによる黄変防止のため、フォーム原料に紫外線吸収剤などを添加したり、黄変の原因物質である芳香族化合物を脂肪酸化合物に置き換えるなどの対策が採られることがある。或いは、フォーム原料に着色剤を添加して、フォーム自体に着色することで、黄変などの変色を目立たなくすることもされている。また、ウレタンフォーム原料には、フェノール系の安定剤が添加されており、この安定剤もNOxと反応して黄変する原因物質になりやすいともいわれている。
一方、布団類を収納する収納袋として、店頭等において見易く効果的に陳列できるような収納袋として、直方体もしくはそれに近い形状の袋内空間を形成しうる袋地に、折り畳んだ布団類を出し入れすることのできるファスナーを設け、袋の少なくとも正面部を透明素材により構成するような技術(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−42972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の軟質ポリウレタンフォーム製のマットレスを収納する収納袋の場合も、袋体の一部がファスナ部によって開閉自在にされていることが多く、このような収納袋の場合、収納されるマットレスのうち、ファスナ部に対応する部分のみが筋状に黄変することがあるという問題があった。この原因を探求したところ、フォーム中の安定剤と、ファスナ部の隙間から侵入した大気中のNOxとの反応の影響であると思われ、特に、NOxの排出量等が多い雰囲気下では黄変する度合いが高いことが判った。
【0005】
そこで本発明は、ファスナ部で開閉自在な収納袋に収納された軟質ポリウレタンフォーム製マットレス等において、ファスナ部に対応する箇所に筋状などの黄変が生じるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、軟質ポリウレタンフォーム製マットレスを収納するための気密性素材からなる収納袋であって、この収納袋は、一面に開口部を備えた略直方体形状の袋本体と、前記開口部を閉塞する略直方体形状の蓋体とが、ファスナ部によって開閉自在に連結されてなり、前記袋本体もしくは蓋体に設けられたファスナ部の上面側または下面側には、被い部材が設けられており、前記被い部材は、前記ファスナ部に沿って舌状に固定され、かつ前記ファスナ部全長にわたって連続した一枚片であり、前記被い部材の幅方向の長さが、ファスナ部の幅方向の長さの2倍以上であり、前記収納袋にマットレスを収納する場合に、前記ファスナ部が前記被い部材で被覆されるようにした。
【0007】
そして、合成樹脂フィルムなどの気密性素材からなる収納袋にマットレスを収納した場合に、この被い部材でファスナ部の空気が流通可能な隙間を遮断するようにし、大気中のNOxがフォーム中の安定剤と反応するのを抑制し、黄変防止を図る。
なお、ここでいう気密性に優れた被い部材としては、例えば合成樹脂フィルムや、不織布等が適用可能である。
この際、被い部材の幅方向の長さが、ファスナ部の幅方向の長さの2倍以上であり、長さをファスナ部の長さと略同一にすることで、ファスナ部の一部に通気性のある布地が使用されているような場合でも、すべてのファスナ部の隙間を効果的に遮断する効果が発揮され、黄変が抑制される。また、被い部材を一枚片の部材にすることで、隙間をより生じにくくすることができる。
【0008】
なお、このような被い部材は、ファスナ部の上面側(袋の外面側)を被うものでもよく、ファスナ部の下面側(袋の内面側)を被うものでもよいが、請求項2のように、被い部材を、袋本体に設けられたファスナ部の下面側に設ければ、被い部材の自由端部側を蓋体内部に収納することができ、自由端部側がめくれたりして遮断効果が薄れるような不具合がない。さらに、収納袋の製造作業や、マットレスの収納作業等を楽に行えるようになり、しかも、最終的に被い部材でファスナ部を被う状態にセットする作業が楽に行われる。
【発明の効果】
【0009】
軟質ポリウレタンフォーム製マットレスを収納するための収納袋として、一面に開口部を備えた略直方体形状の袋本体と、開口部を閉塞する略直方体形状の蓋体とを、ファスナ部によって開閉自在に連結し、袋本体もしくは蓋体に設けられたファスナ部の上面側または下面側には、所定幅で所定長の一枚片の被い部材をファスナ部に沿って設けることで、収納袋にマットレスを収納する際に、被い部材がファスナ部の隙間を遮断することができ、大気中のNOxとフォーム中の安定剤が反応するのを効果的に抑制でき黄変が生じるのを防止できる。
この際、被い部材を、袋本体に設けられたファスナ部の下面側に設ければ、被い部材の自由端部側を蓋体内部に収納することができ、自由端部側がめくれたりして遮断効果が薄れるような不具合がなく、収納袋の製造作業や、マットレスの収納作業等を楽に行えるようになり、ファスナ部を被う状態に被い部材をセットする作業を楽に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る収納袋のファスナ部を閉じた状態の説明図である。
【図2】本発明に係る収納袋のファスナ部を開いた状態の説明図である。
【図3】被い部材を袋本体の内面側に設ける場合の構成の一例を示し、(a)は被い部材をファスナ部自体に取り付ける例、(b)は被い部材をファスナ部近傍に取り付ける例、(c)は被い部材が袋本体を延出してなる例の説明図である。
【図4】被い部材を袋本体のファスナ部の外面側に設ける場合の一例を示す説明図である。
【図5】ファスナ幅の説明図である。
【図6】収納袋の作製要領の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る軟質ポリウレタンフォーム製マットレスを収納するためファスナ部で開閉自在にされる収納袋において、ファスナ部に対応する箇所に黄変が生じるのを抑制できるようにされ、例えば店頭における陳列時等に外観品質を悪化させることがないようにされている。
【0012】
すなわち、図1、図2に示すように、本収納袋1は、ポリプロピレンまたはポリエチレン等の合成樹脂製の気密性のある透明素材からなる袋本体2と、同質の気密性のある透明素材からなる蓋体3を備えており、前記袋本体2は、外観形状が略直方体で一端側が開口部2h(図2)として構成されており、この開口部2hの周囲四辺のうち三辺に亘って連続的に第1ファスナ部4aが設けられるとともに、前記蓋体3も、外観形状がやや小型の略直方体で一端側が開口部3h(図2)として構成され、前記袋本体2の開口部2hと蓋体3の開口部3hの形状は同一にされている。そして、蓋体3の開口部の周囲四辺のうち三辺に亘って前記第1ファスナ部4aに係脱自在な第2ファスナ部4bが連続的に設けられ、第1、第2ファスナ部4a、4bが設けられていない袋本体2と蓋体3の開口部の残り一辺は気密状に連接している。
【0013】
このため、第1、第2ファスナ部4a、4bを連結すると、図1に示すように、袋本体2と蓋体3の開口部2h、3hが閉じられ、第1、第2ファスナ部4a、4bの連結を解くと、図2に示すように開口部2h、3hが開いて、袋本体2内にマットレスを出し入れすることができるようにされている。
【0014】
このように、ファスナ部には、第1ファスナ部4aと第2ファスナ部4bを連結してなる、所謂線ファスナを用いている実施形態を述べたが、その他にも、面ファスナなど、袋本体2と蓋体3が開閉自在に接合できるものであれば、どれでも使用できる。なお、ファスナ部に隙間が生じ難くするためには、線ファスナが好適である。
【0015】
また、袋本体2の一方側の側面には、持ち運びを容易にするための把手5が設けられている。
【0016】
本発明では、このような収納袋において、ファスナ部4から大気中のNOxが侵入するのを防止するため、気密性素材からなる透明な被い部材6をファスナ部4またはその近傍に設け、ファスナ部4をほぼ完全に被うようにしている。
【0017】
そして、その遮断効果を高めるため、被い部材6の長さをファスナ部4の長さと略同一にし、また、被い部材6の幅を、第1、第2ファスナ部4a、4bを連結した状態のファスナ幅(図5のc)の2倍以上とし、ファスナ部4に沿って舌状に固定され、かつファスナ部全長にわたって連続した一枚片である。なお、舌状に固定されるとは、被い部材6の幅方向の一端部が、ファスナ部4またはその近傍に固定され、他端部(下記、自由端部と示す)は固定されないように設けられていることを意味している。
【0018】
そして、この被い部材6は、図3(a)に示すように、ファスナ部4といっしょに縫製等で固着してもよく、図3(b)に示すように、ファスナ部4近傍の袋本体2または蓋体3に溶着等で固着してもよい。
さらに、被い部材6は一枚片としているが、図3(c)に示すように、被い部材6が、袋本体から延出させた部分からなるようにする態様も含まれるものとする。そうすれば、別途被い部材を設ける工程が省け、製造工程が簡略化でき、好ましい。
【0019】
また、この被い部材6の取り付けは、図3に示すように、ファスナ部4の袋内部側に取り付けるようにしてもよいが、図4に示すように、ファスナ部4の袋外部側に取り付けるようにしてもよい。そして袋内部側に取り付ける場合は、被い部材6の自由端部側が袋の内部に入り込むため、マットレスを収納すれば、マットレスが押さえとなって、自由端部側の位置が規制されやすくなるという利点がある。
勿論、図4では、被い部材6をファスナ部4といっしょに固着するようにしているが、ファスナ部4近傍の袋本体2または蓋体3に固着するようにしてもよく、被い部材6を袋本体から延出させた部分からなるように設けてもよい。
【0020】
また、収納袋1の蓋体3が略直方体形状でなく単に平面形状である場合、ファスナ部4は必然的に略直方体の収納袋1の一端側開口面の周縁部またはその近傍に形成されることになるが、この場合に、一枚の被い部材6でファスナ部を被おうとしても角部等にシワが生じたり、重なり部分等が生じて隙間が生じやすくなる。一方、この場合に開口端周縁部の三辺に独立した三枚の舌片等を設けて各辺のファスナ部を被うようにすれば、シワ等が生じることはないが、それぞれの舌片等の間に隙間が生じやすくなる。そこで本発明では、蓋体3の形状を略直方体にすることで、一枚片の被い部材6で確実に全てのファスナ部4を被うことができるようにしている。
【0021】
このように、本発明の収納袋は、ファスナ部からNOxなどが収納袋内に侵入するのを防ぐことができるものである。そして、保管場所の環境によっては、収納袋表面が結露したり、或いは運搬時に雨に濡れるなど水に触れる虞があったとしても、本発明の収納袋のファスナ部は、被い部材によって確実に被われているので、ファスナ部から水滴などが侵入することも防ぐことができる。
【0022】
本発明の収納袋は、軟質ポリウレタンフォーム製のマットレス用である。
軟質ポリウレタンフォームは、一般的に、フォーム原料であるポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒などを混合し、発泡させて形成される。さらに、整泡剤や安定剤、難燃剤などの各種添加剤を必要に応じて添加することで、物性安定性に優れるフォームを得ることができる。特に、安定剤としては、フェノール系のものが使用されており、これが空気中のNOxと反応して黄変の原因物質となり得る。
このような安定剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やペンタエリトリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チオジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロプオネート〕などの所謂ヒンダードフェノール系酸化防止剤などが使用されている。なお、このような安定剤は、ウレタンフォームを形成する上で重要な添加剤であり、ほぼ全てのウレタンフォームに含まれるものである。
【実施例】
【0023】
図6に示すようなポリプロピレン樹脂等の透明素材からなる(a)(b)(c)の三枚のシートを準備し、(c)のシートのx部分周縁と第2ファスナ部4bを気密性のある装飾兼補強テープ7で包んで縫製一体化するとともに、(b)のシートのy部分周縁と第1ファスナ部4aと被い部材6とを装飾兼補強テープ7で包んで縫製一体化した。
【0024】
そして、(a)のシートの破線部分を折り曲げることで袋本体2の二面(図1の底面と左側面)と、蓋体3の開口部を除く二面(図1の蓋体3の底面と右側面(開口部3hに対向する一面))が形成されるようにするとともに、(b)のシートによって袋本体2の平面、正面、背面が、(c)のシートによって蓋本体3の平面、正面、背面が形成されるようにし、各シートの接合部を、装飾兼補強テープ7で包み込むように縁取り縫いすることで、図1に示すような袋本体2と蓋体3とが一体の収納袋1を作製した。
すなわち、本実施例の場合は、袋本体2と蓋体3の一面(図1の底面)が(a)の一枚のシートから構成されたものとされている。
【0025】
この際、第1ファスナ部4aと第2ファスナ部4bを連結した状態のファスナ幅c(図5)が2.5cm程度とした場合、被い部材6の幅は、その2倍以上の幅である7cm程度としており、また被い部材6の長さは、三辺に連なるファスナ部4の長さと略同一とすることで、連結したファスナ部4から空気が流通する可能性のある隙間を完全に被うことができるようにしている。
【0026】
また、収納袋1に軟質ポリウレタンフォーム製のマットレスを収納する際、袋本体2の開口部を上向きにし、この開口部から折り畳んだマットレスを収納した後、蓋体3を被せてファスナ部を閉めるような作業が行われるが、被い部材6を袋本体2側に取り付けているため、マットレスを袋本体2内に収納した後、被い部材6の全ての部分を上方に引っ張り上げ、蓋体3を閉めるだけで確実にファスナ部4を被い部材6で被うことができ、マットレスの収納作業も簡単である。また、被い部材6でファスナ部4を被う作業も確実で簡単である。
【0027】
そして、このような収納袋1に軟質ポリウレタンフォーム製マットレスを収納し、排気ガスにさらされやすい環境下でテストした結果、ファスナ部に対応する箇所の黄変は見られなかったが、同じ条件で被い部材6のない収納袋に収納した軟質ポリウレタンフォーム製マットレスには、ファスナ部に対応する箇所に筋状の黄変が認められた。この結果、本発明の有効性が立証された。
【0028】
なお本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
例えば、袋本体2や蓋体3に対する第1、第2ファスナ部4a、4bの取り付け要領等は例示であり、また、被い部材6でファスナ部4を被う際、袋の外側を被うようにすることも可能である。
また、袋本体2と蓋体3を独立して構成し、開口部2h、3hの一辺を気密状に連結するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
ウレタンフォーム製品を収納する収納袋として、ファスナ部に対応する箇所に生じやすい筋状の黄変等を抑制できるため、例えばNOxの影響が大きいような場所で陳列、保管等する収納袋として効果的である。
【符号の説明】
【0030】
1…収納袋、2…袋本体、2h…開口部、3…蓋体、3h…開口部、4…ファスナ部、4a…第1ファスナ部、4b…第2ファスナ部、6…被い部材、c…ファスナ幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質ポリウレタンフォーム製マットレスを収納するための気密性素材からなる収納袋であって、この収納袋は、一面に開口部を備えた略直方体形状の袋本体と、前記開口部を閉塞する略直方体形状の蓋体とが、ファスナ部によって開閉自在に連結されてなり、前記袋本体もしくは蓋体に設けられたファスナ部の上面側または下面側には、被い部材が設けられており、前記被い部材は、前記ファスナ部に沿って舌状に固定され、かつ前記ファスナ部全長にわたって連続した一枚片であり、前記被い部材の幅方向の長さが、ファスナ部の幅方向の長さの2倍以上であり、前記収納袋にマットレスを収納する場合に、前記ファスナ部が前記被い部材で被覆されることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム製マットレス用収納袋。
【請求項2】
前記被い部材は、前記袋本体に設けられたファスナ部の下面側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォーム製マットレス用収納袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−229627(P2011−229627A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101477(P2010−101477)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)