説明

転てつ機

【課題】転換過程において不必要なブレーキ力が働かないマグネットブレーキを備えた転てつ機を実現すること。
【解決手段】転換ギア132の上面に第1永久磁石302を設ける。また、筐体10に組み付け・固定された(又は一体に設けられた)ステータ兼カバー部306には、転換ギア132が定位鎖錠状態又は反位鎖錠状態にあるときに、第1永久磁石302と対向して磁気結合する位置に第2永久磁石304が固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用線路の分岐器を定位/反位に転換させる転てつ機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気転てつ機は、一般的に、駆動モータと、クラッチと、減速歯車群からなる減速機構と、転換鎖錠機構とを有する。駆動モータで発生した動力は、クラッチを経て減速機構に伝えられ、適切なトルクに変換されて転換鎖錠機構を作動させる。転換鎖錠機構の最終段階には、動作桿と、分岐器の2本の可動レールに接続された転てつ棒とが連結されており、駆動モータの駆動を制御することによって分岐器を転換させることができる。
【0003】
例えば、電気転てつ機の中には、マグネットクラッチをモータと直結させて高回転させることで必要なクラッチトルクを得るタイプがある。このタイプの電気転てつ機では、モータにマグネットクラッチが結合されたことによりロータの慣性が増えるため、モータ電源を切っても慣性力でモータが停止しにくくなる。そこで、当該タイプの電気転てつ機では、モータのロータ軸にマグネットブレーキを取り付けることで対応している(例えば、特許文献1の図6参照。同文献の永久磁石小輪板90と小径のヒステリシス磁化材板95がマグネットブレーキを構成。)。
【0004】
ただ、こうしたマグネットブレーキは常時ブレーキ力が働いている。そのため、手動転換する場合でもブレーキ力が作用するために手回し転換が重くなりやすい。そこで、近年では回転していない場合ではブレーキ力が小さく、回転数が増加するに伴ってブレーキ力が増加する特性のマグネットブレーキを用いるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−5401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、転てつ機の保守点検では、分岐器の負荷変動を数値管理するために、転てつ機の手回しハンドル挿入口にトルク測定器を挿入して手回しによるトルクを測定する方法が普及している。
【0007】
ところが、前述のようなマグネットクラッチをモータと直結させたタイプの電気転てつ機では、測定トルクにマグネットブレーキのブレーキ力が加わることになる。そのため、測定されたトルクからブレーキ力を差し引かなければならない。しかも、そのブレーキ力も、手回しの回転速度が変化すると変化してしまうので、測定者は予め一定の速度で回転させるための訓練をする必要があった。
【0008】
また、通常の使用条件においても、マグネットブレーキは常時ブレーキ力を働かせているので、マグネットブレーキが無い形態よりも電力を必要とする。そのため、マグネットクラッチをモータと直結させたタイプの電気転てつ機に交換する工事では、常時働くブレーキ力に抗する分の電力増加に対応するために電源や電源ケーブルも交換しなければならない問題もあった。
【0009】
本発明は、こうした事情を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、転換過程において不必要なブレーキ力が働かないマグネットブレーキを備えた転てつ機を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための第1の形態は、転換ギアに設けられた転換ローラと、動作桿のカム部とが係合することで動作桿を駆動する転てつ機であって、前記転換ギアの回転面上の所定位置に設けられ、前記転換ギアとともに回転移動する第1の磁性体(例えば、図2及び図3の第1永久磁石302)と、
前記第1の磁性体との対向時に磁気結合してブレーキ力を発生し、前記転換ローラが前記カム部の転換面と係合している間、前記第1の磁性体と対向しない位置に設けられた第2の磁性体(例えば、図2及び図3の第2永久磁石304)と、を備えた転てつ機である。
【0011】
第2の形態は、前記第2の磁性体が、前記動作桿の鎖錠時の前記転換ギアの回転位置において前記第1の磁性体と対向するように筐体内の所定位置に固定して設けられてなる第1の形態の転てつ機である。
【0012】
第3の形態は、前記第2の磁性体が、前記転換ローラと前記カム部との係合位置が前記カム部の転換面からエスケープ面に遷移して後、当該エスケープ面との係合が終了するのに前後して、前記第1の磁性体との対向が開始される形状を有する第1又は第2の形態の転てつ機である。
【0013】
第4の形態は、複数の前記第1の磁性体を、前記転換ギアの回転軸と前記転換ローラとを結ぶ線分に対して互いに対称位置に設けて構成した第1〜第3の何れかの形態の転てつ機である。
【0014】
第5の形態は、前記第1の磁性体が、定位鎖錠時に前記第2の磁性体と対向する位置と、反位鎖錠時に前記第2の磁性体と対向する位置とに設けて構成した第1〜第4の何れかの形態の転てつ機である。
【0015】
第6の形態は、前記第1の磁性体及び/又は前記第2の磁性体は、前記転換ギアの回転に伴って互いの対向が開始して後、徐々に対向面積が大きくなる形状を有する第1〜第5の何れかの形態の転てつ機である。
【0016】
第7の形態は、前記第1の磁性体の移動範囲と前記第2の磁性体の設置位置とを覆うカバー部(例えば、図2及び図3のステータ兼カバー部306)を備える第1〜第6の何れかの形態の転てつ機である。
【発明の効果】
【0017】
第1の形態によれば、第1の磁性体と第2の磁性体とが、対向時に磁気結合してブレーキ力を発生するが、転換ローラがカム部の転換面と係合している間は対向しない。つまり、ブレーキ力が不必要な転換中はブレーキ力が働かない。このことにより、負荷トルクの測定に影響しないので、転てつ機の保守点検にて正確な負荷トルクが測定できるようになり、測定者が予め一定の速度で回転させるための訓練をする必要もない。勿論、測定値からブレーキトルクを差し引く必要もなくなる。更に、転換中、ブレーキが働いていないので転換中にブレーキトルクに抗してモータを駆動させる必要がないので、電力消費を抑制し、省エネに寄与できる。
【0018】
第2の形態によれば、鎖錠時の転換ギアの回転位置において、第1の磁性体と第2の磁性体とが対向する。このため、ブレーキ力が必要となる転換終了時に、転換歯車が短時間に停止するように働くマグネットブレーキが実現される。
【0019】
第3の形態によれば、転換ローラとカム部のエスケープ面との係合が終了するのに前後して、第1の磁性体と第2の磁性体との対向が開始される。つまり、鎖錠動作が終了するのに合わせてブレーキ力が作用し始めるようにできる。
【0020】
第1の磁性体を単体とする場合、磁性体の面積を大きくしたり、磁性体の取付け位置を転換ギアの軸から遠ざけたりすることでブレーキ力を強くできる。しかし、転換課程において、ブレーキを働かせる領域が限定されてしまう。
そこで、第4の形態によれば、第1の磁性体を複数とすることで、ブレーキを働かせる領域を構成し易くなる。また、同一のブレーキ力を発生させるための磁性体のコストは、単体の場合よりも安価で済む。
【0021】
第5の形態によれば、第1の磁性体が、定位鎖錠時に第2の磁性体と対向する位置と反位鎖錠時に第2の磁性体と対向する位置とに設けられている。よって、転換に伴う転換ギアの回転角度に係わらず、第1〜第4の形態の何れかと同様の効果を発揮させることができる。
【0022】
第6の形態によれば、第1の磁性体及び/又は第2の磁性体は、互いの対向が開始して後、徐々に対向面積が大きくなる形状を有するため、転換中に働くブレーキ力を効率的に作用させることができる。
【0023】
第7の形態によれば、第1の磁性体の移動範囲と第2の磁性体の設置位置とがカバー部により覆われているので、第1〜第6の形態の何れかと同様の効果が得られるとともに、磁性体周りへの鉄粉の進入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】電気転てつ機の使用形態を説明するための鉄道線路用ポイントの周辺を示す平面図
【図2】電気転てつ機の内部機構の構成例を示す縦断面図。
【図3】第1実施形態におけるマグネットブレーキの構成例を示す図であって、(1)転換ギア周りの部分上面図、(2)カム部周りの拡大図。
【図4】第1実施形態におけるマグネットブレーキの動作について説明するための状態遷移図。
【図5】第2実施形態におけるマグネットブレーキの構成例を示す図。
【図6】第2実施形態におけるマグネットブレーキの動作について説明するための状態遷移図。
【図7】マグネットブレーキの変形例を示す図。
【図8】マグネットブレーキの変形例を示す図。
【図9】マグネットブレーキの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態における電気転てつ機の使用形態を説明するためのポイントの周辺を示す平面図である。本実施形態における電気転てつ機100は、ポイント2の分岐器4に対して所定位置に固定され、分岐器4に接続して使用される。
【0026】
分岐器4は、連結板8により一体に連結された可動レール10を、基本レール6の間で、枕木12に固定した床板14の上で枕木長手方向に横スライド自在に支持している。可動レール10の先端部付近の枕木は、通常の枕木12よりも長尺な転てつ機用枕木12Bとされ、基本レール6の外側に延びた部分には床板14に連結された鉄製の敷板18が設置されている。
【0027】
電気転てつ機100は、この敷板18に固定される。そして、動作桿102には転てつ棒16を介して連結板8が連結され、鎖錠桿104には接続桿20を介して可動レール10の先端部が連結される。そして、モータ250が発生させた回転動力を、内蔵する転換機構部でもって動作桿102の直線運動に変換して分岐器4を定位/反位に転換動作させるとともに、内蔵する鎖錠機構部によって固定することで可動レール10の定位/反位の状態を固定し、鉄道車両通過時の外力により分岐器4の状態が変わらないようにする。
【0028】
電気転てつ機100は、開閉式の筐体101内に、回路制御器110と、制御リレー112と、外部端子板114とを内蔵する。
【0029】
電源や外部装置(例えば連動装置等)との信号に必要なケーブル類は外部端子板114に集約された後、信号ケーブル束109として筐体101から纏めて引き出される。連動装置から転換指令信号を受信すると、制御リレー112からモータ250に電力が供給され、モータ250の回転力がクラッチ、減速歯車、転換機構と伝わり、転換機構によって電気転てつ機100の解錠、転換、鎖錠の一連動作が行われる。そして、転換終了付近で回路制御器110がモータ電源を遮断すると共に鎖錠機構部の鎖錠状態を確認し、転換完了信号を連動装置に送信する。
【0030】
図2は、本実施形態における電気転てつ機100の内部機構の構成例を示す縦断面図である。尚、内部機構の理解を容易にするために、回路制御器110、制御リレー112、外部端子板114等の図示を省略している。
【0031】
本実施形態の電気転てつ機100の筐体101は、上部筐体101Uと、ケース本体に相当する下部筐体101Lとを有する。減速機構部120及び転換鎖錠機構部140は下部筐体101L内に納められており、下部筐体101Lの外側面(図2に向かって左側面)にモータ250が固定されている。尚、このモータ250は、マグネットクラッチ(図示省略)を内蔵しているが、従来のようなロータ軸に直結されたマグネットブレーキは搭載していない。
【0032】
モータ250の駆動軸202は、筐体101の側部を貫通して、下部筐体101Lの内部に設けられた減速機構部120に接続され、モータ250で発生された回転動力は、減速機構部120で適切なトルクに変換されて、転換鎖錠機構部140に伝達される。
【0033】
減速機構部120は、例えばモータ250の駆動軸202に取り付けられたピニオンギア122と、これに噛み合うベベルギア124と、当該ベベルギア124の回転軸に設けられた第1減速ギア126と噛み合う中間ギア128と、当該中間ギア128の回転軸に設けられた第2減速ギア130と、この第2減速ギア130と噛み合う最終歯車である転換ギア132とを含んで構成される。
【0034】
転換鎖錠機構部140は、減速機構部120で減速された回転動力を動作桿102の直動運動に変換するとともに、鎖錠桿104の鎖錠/解除を行う機構部であって、公知の転てつ機と同様に実現できる。例えば、転換に関しては、転換ギア132の下面に突設された転換ローラ142と、動作桿102の動作方向と交差方向に向いて動作桿102に刻設されたカム部144との係合により実現される。尚、鎖錠に関しては図示省略しているが公知技術と同様に実現され、転換ローラ142がカム板等でなるロックピース駆動機構175,176と係合してロックピース155,156を移動させて動作桿102の位置を定位/反位で鎖錠する。
【0035】
[マグネットブレーキの構造の説明]
では、図2及び図3を参照しつつ、本実施形態におけるマグネットブレーキの構成について説明する。図3は、本実施形態におけるマグネットブレーキの構成例を示す図であって、(1)転換ギア周りの部分上面図、(2)カム部周りの拡大図である。
【0036】
本実施形態のマグネットブレーキ300は、転換ギア132の上面に設けられた第1永久磁石302(第1の磁性体)と、定位及び反位の状態(より詳しくは鎖錠状態)でこれと対向し磁気結合する位置に設けられた第2永久磁石304(第2の磁性体)と、ステータ兼カバー部306とを含む。
【0037】
第1永久磁石302と第2永久磁石304は互いに磁気結合するように異極で向き合う。
ステータ兼カバー部306は、下部筐体101Lの左右壁部(図2で言うところの図面手前側と奧側の壁部、図3で言うところの上下の壁部)を渡す固定梁に相当し、その下面には下向きに開口する円形凹部308が凹設され、その円中心には転換ギア132の軸134が設けられている。従って、ステータ兼カバー部306及び第2永久磁石304は、筐体101内の所定位置に固定的に設けられている。換言すると、筐体101と一体に設けられているとも言える。
【0038】
より具体的には、第1永久磁石302は、転換ギア132の軸134を中心とした所定幅の円弧状の形状(円弧帯形状)をなしており、転換ギア132の下面に凸設された転換ローラ142と軸対称位置に設置されている(図3参照)。
【0039】
第2永久磁石304は、軸134を中心とした円弧帯形状をなしており、円形凹部308の天井面に固定されている。そして、転換ギア132が定位/反位の状態(鎖錠状態)の時に、第1永久磁石302と所定の間隙をもって対向する位置に固定されており、転換ギア132の回転とは無関係に定位置に固定されている。
【0040】
円形凹部308の縁部は、転換ギア132の上面から僅かに離れる程度に近接しており(図2参照)、円形凹部308への外部から鉄粉等の塵の侵入を抑制している。好ましくは、図2中の部分拡大図に示すように、オーリング310やゴム製のフィンなどによって円形凹部308の縁と転換ギア132の上面との隙間を埋め、円形凹部308を略密閉すると好適である。また、ステータ兼カバー部306は、磁気遮蔽効果も生む。
【0041】
尚、第1永久磁石302と第2永久磁石304の磁力の強さ及び対向面積は、要求されるブレーキ力に応じて適宜設定することが可能である。また、ステータ兼カバー部306及び第2永久磁石304は、筐体101内の所定位置に固定的に設けられていれば良いので、図2、図3で示したようにステータ兼カバー部306を別部品として筐体101に組み付け・固定するとしても良いし、筐体101と一体成形(例えば、上部筐体101Uの裏面側に一体成形)して一体不可分に設けても良い。
【0042】
[マグネットブレーキの動作の説明]
図4は、本実施形態におけるマグネットブレーキ300の動作について説明するための状態遷移図であって、(1)〜(6)が定位鎖錠状態から反位鎖錠状態に至る(又はその逆)の転換過程の段階的状態を示している。尚、理解が容易となるように、転換ギア132・転換ローラ142・第1永久磁石302を透明体と見なし、本来であればそれらの下に隠れるであろう動作桿102の相対位置関係が理解し易いように図示している。
【0043】
図4(1)に示すように、定位鎖錠状態では、動作桿102は下部筐体101Lの所定側側壁(図4では図面上側)に寄っていて、第1永久磁石302と第2永久磁石304とは上下に重なり合うようにして対向状態にある。すなわち、これら永久磁石の引き合う力によってブレーキが作用した状態となっている。
【0044】
図4(2)に示すように、転換動作が始まると、第1永久磁石302は第2永久磁石304に対する真正面の対向位置からズレが生じ始め、転換ローラ142が動作桿102にさしかかるころには完全に対向が解除される。
【0045】
図4(3)に示すように、更に転換動作が進行して転換ギア132が回転すると、第1永久磁石302と第2永久磁石304とが互いに引き合う影響圏から抜け、ブレーキは完全に解除状態となる。そして、転換ローラ142が動作桿102のカム部144に近接し、ついにはカム部144のエスケープ面144sに接触して転換面144tに突入へ向かう(図3(2)参照)。この過程で、ロックピース156が動作桿102から離間し、ロックが解除される。
【0046】
更に転換動作が進行すると、図4(4)に示すように、転換ローラ142が転換面144tに突入するに至り、転換ギア132と動作桿102とが係合する。転換ギア132の回転に伴って動作桿102は反位側(図の上から下方向)へ移動する。
【0047】
図4(5)に示すように、やがて動作桿102が反位に達すると、転換ローラ142がカム部144の転換面144tからエスケープ面144sに抜け、それ以上動作桿102が移動しないようになる。そして、転換ローラ142がカム部144から抜けるころには、第1永久磁石302と第2永久磁石304とが近接し対向を始める。そして、図4(6)に示すように両者が真正面の対向位置関係になると、磁気結合が最大となりブレーキ力が最大となる。
【0048】
モータ250への通電は、図4(5)〜図4(6)の適当なタイミングでカットされるがロータの慣性により転換ギア132は更に回り続ける可能性がある。しかし、第1永久磁石302と第2永久磁石304の磁力及び対向する面積が適当に設定されることにより、モータ250のロータの慣性を打ち消すのに十分なブレーキ力が発揮される。尚、反位から定位への逆転換過程についても同様である。
【0049】
以上、本実施形態によれば、少なくとも動作桿102の鎖錠時の転換ギア132の回転位置において第1の永久磁石302と対向して磁気結合するように第2永久磁石304が転てつ機の筐体側に固定されている。そして、両者の配置位置及び形状は、少なくとも転換ローラ142がカム部144の転換面144tと係合している間は対向部分が生じないように設けられている。よって、転換中のブレーキ力がほとんど働かず、それでいて転換後の停止状態(定位鎖錠状態及び反位鎖錠状態)では確実にブレーキ力が働くマグネットブレーキを備えた転てつ機を実現することが可能となる。
【0050】
動作桿102が移動中はブレーキが働かず、転換後、鎖錠が完了次第、転換ギア132の回転が短時間に停止するようにブレーキが働くので、負荷トルクの測定に影響しない。よって、転てつ機の保守点検にて正確な負荷トルクが測定できる。また、測定者が予め一定の速度で回転させるための訓練をする必要もない。勿論、測定値からブレーキトルクを差し引く必要もない。また、転換中、ブレーキが働いていないので転換中にブレーキトルクに抗してモータ250を駆動させる必要がなく、電力消費を抑制し、省エネに寄与できる。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、基本的には第1実施形態と同様の構成を有するが、本実施形態では転換ギア132が定位/反位の転換に要する回転角度が360°未満であり、それに伴い第1実施形態における第1永久磁石302に相当する磁性体の数と配置位置とが変わっている。尚、第1実施形態と同様の構成については同じ符合を付与して説明を省略する。
【0052】
図5は、本実施形態におけるマグネットブレーキ300Bの構成例を示す図である。本実施形態のマグネットブレーキ300Bでは、第1永久磁石302と、第2永久磁石304と、第3永久磁石305とを含む。
【0053】
第3永久磁石305は、第1永久磁石302と同じ極性の向きを有する同形・同サイズの永久磁石である。第1永久磁石302と、第3永久磁石305は共に転換ギア132の上面に配置される。より具体的には、軸134と転換ローラ142の取り付け軸を結ぶギア直径に対して線対称位置に配置されている。第1永久磁石302と第3永久磁石305の軸134周りの相対角度(図中の鈍角θ)は、本実施形態における転換ギア132が転換に要する回転角度に同じである。
【0054】
図6は、本実施形態におけるマグネットブレーキ300Bの動作について説明するための状態遷移図であって、(1)〜(6)が定位鎖錠状態から反位鎖錠状態へ(又はその逆)の転換過程の段階的状態を示している。尚、理解が容易となるように、転換ギア132・転換ローラ142・第1永久磁石302・第3永久磁石305を透明体と見なし、本来であればそれらの下に隠れるであろう動作桿102の相対位置関係が理解し易いように図示している。
【0055】
基本的な動作は第1実施形態と同様である。但し、本実施形態における定位状態では、図6(1)に示すように、第1永久磁石302と第2永久磁石304とが対向状態となり磁気結合によりブレーキが働く。
【0056】
転換動作が進むと、図6(2)〜図6(4)に示すように、第1永久磁石302と第2永久磁石304との対向位置関係がズレ、転換動作中はブレーキが働かなくなる。
そして、図6(5)〜図6(6)に示すように、転換が終了に向かうにつれて、今度は第3永久磁石305と第2永久磁石304とが接近し、磁気結合して再びブレーキが働くようになる。
【0057】
〔変形例〕
以上、本発明を適用した実施形態について説明したが、本発明の適用形態はこれらに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない限りにおいて適宜構成要素の追加・省略
・変更を施すことができる。
【0058】
また、上記実施形態では永久磁石の形状を円弧帯形状としたが、形状や個数、配置位置は適宜変更設定できる。例えば、図7に示すように、三日月型とすることもできる。或いは円弧帯形状の両端を先細りにした形状でも良い。この場合永久磁石同士が近接或いは離隔する過程において磁力の影響が徐々に増加或いは減少して作用するようにできる。
【0059】
また例えば、図8に示すように半径方向に長い矩形としても良い。この場合既存形状の永久磁石を利用できるので調達コストを低減する効果が期待できる。また、調達コストを考慮するならば、一般的な磁石の形状である円板や円柱型を用いるのも良い。その場合、図9に示すように、第1永久磁石302や第2永久磁石304として複数個の円板や円柱型の小型磁石を密集配置した磁性体群で構成することもできる。この場合、転換ギア132の回転軸134と転換ローラ142とを結ぶ線分に対して線対称となるよに配置すると好適である。また、その配置パターンで永久磁石同士が近接或いは離隔する過程において磁力の影響度合を可変にすることとしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態や変形例で示したように、第1永久磁石302、第2永久磁石304、第3永久磁石305の形状は、同一であったり相似形にした形態に限らない。図3、図7、図8、図9で示した形状を適宜組み合わせた形態とすることも可能である。
【符号の説明】
【0061】
2…ポイント
4…分岐器
6…基本レール
8…連結板
10…可動レール
12…枕木
12B…転てつ機用枕木
14…床板
16…転てつ棒
18…敷板
20…接続桿
100…電気転てつ機
101…筐体
101U…上部筐体
101L…下部筐体
102…動作桿
103…メンテナンス空間
104…鎖錠桿
109…信号ケーブル束
110…回路制御器
112…制御リレー
114…外部端子板
120…減速機構部
122…ピニオンギア
124…ベベルギア
126…減速ギア
128…中間ギア
130…減速ギア
132…転換ギア
134…軸
140…転換鎖錠機構部
142…転換ローラ
144…カム部
144s…エスケープ面
144t…転換面
153…鎖錠プレート
154…鎖錠プレート
155、156…ロックピース
175、176…ロックピース駆動機構
202…駆動軸
250…モータ
300…マグネットブレーキ
302…第1永久磁石(第1の磁性体)
304…第2永久磁石(第2の磁性体)
305…第3永久磁石(第1の磁性体)
306…ステータ兼カバー部
310…オーリング(Oリング)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転換ギアに設けられた転換ローラと、動作桿のカム部とが係合することで動作桿を駆動する転てつ機であって、
前記転換ギアの回転面上の所定位置に設けられ、前記転換ギアとともに回転移動する第1の磁性体と、
前記第1の磁性体との対向時に磁気結合してブレーキ力を発生し、前記転換ローラが前記カム部の転換面と係合している間、前記第1の磁性体と対向しない位置に設けられた第2の磁性体と、
を備えた転てつ機。
【請求項2】
前記第2の磁性体は、前記動作桿の鎖錠時の前記転換ギアの回転位置において前記第1の磁性体と対向するように筐体内の所定位置に固定して設けられてなる
請求項1に記載の転てつ機。
【請求項3】
前記第2の磁性体は、前記転換ローラと前記カム部との係合位置が前記カム部の転換面からエスケープ面に遷移して後、当該エスケープ面との係合が終了するのに前後して、前記第1の磁性体との対向が開始される形状を有する
請求項1又は2に記載の転てつ機。
【請求項4】
複数の前記第1の磁性体を、前記転換ギアの回転軸と前記転換ローラとを結ぶ線分に対して互いに対称位置に設けて構成した
請求項1〜3の何れか一項に記載の転てつ機。
【請求項5】
前記第1の磁性体を、定位鎖錠時に前記第2の磁性体と対向する位置と、反位鎖錠時に前記第2の磁性体と対向する位置とに設けて構成した
請求項1〜4の何れか一項に記載の転てつ機。
【請求項6】
前記第1の磁性体及び/又は前記第2の磁性体は、前記転換ギアの回転に伴って互いの対向が開始して後、徐々に対向面積が大きくなる形状を有する
請求項1〜5の何れか一項に記載の転てつ機。
【請求項7】
前記第1の磁性体の移動範囲と前記第2の磁性体の設置位置とを覆うカバー部を備える
請求項1〜6の何れか一項に記載の転てつ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−104245(P2013−104245A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249533(P2011−249533)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】