説明

転写シート及びそれを用いた記録画像の形成方法

【課題】カッティング工程を円滑に行うことができる転写シートを提供する。
【解決手段】基材と、この基材に対して剥離可能な転写層とで構成されているシートであって、前記転写層が、離型剤を含む基材の上に形成され、かつヤング率210MPa以上(例えば、250〜1000MPa)であるとともに、前記基材を剥離した後の転写層の剥離面において、前記離型剤に対応する波長の吸光度が0.95以下(例えば、0.8〜0.9)である転写シートを調製する。前記転写層と基材との剥離強度は200〜750mN/25mmであってもよい。前記転写層は、基材の面に形成された接着層と、この接着層の上に形成された受像層とで構成されていてもよい。前記離型剤はシリコーン化合物であり、接着層がシリコーン化合物を溶解可能な溶媒を含む溶液又はエマルジョンにより形成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類などの各種被転写体に記録画像を形成するための転写シート及びこのシートを用いた記録画像の形成方法に関し、さらに詳しくは、インクジェット記録方式で画像を記録した後、カッティングプロッターなどでカットする用途に適した転写シート及びこのシートを用いた記録画像の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Tシャツなどの布地や、陶器、プラスチック製品などの表面へのマーク・ロゴや画像印刷は、通常、スクリーン印刷を主体とする各種印刷法により行われている。しかし、これらの印刷法では、高価な印刷用原版を作製する必要がある。そのため、少部数の印刷は、コストの点から不向きであるだけでなく、原版の作製に長時間を要するため、迅速に印刷することが困難である。これらの問題を解消するため、最近、インクジェットプリンターやカラー複写機などを用いて、予め、支持層及び転写層を有する転写シートに画像を記録し、この転写シートの記録画像を衣類などの被転写体へ熱転写する方法が知られている。
【0003】
例えば、特開2004−223802号公報(特許文献1)には、耐熱性基材上に剥離可能に設けられた保護膜層を有するラミネートフィルムにおいて、該保護膜は印画物の画像保護のために加熱圧着によって印画物の画像面上に剥離転写されるものであり、該ラミネートフィルムにおける保護膜層の耐熱性基材からの剥離強度Fが、耐熱性基材の保護膜層反対面から200℃の加熱処理を施した場合において、1〜50N/mであることを特徴とするラミネートフィルムが開示されている。
【0004】
しかし、このラミネートフィルムにおいては、剥離性が低い上に、保護膜層の柔軟性も低いため、インクジェットプリンターなどで画像を形成後に、カッティングプロッターで所望の大きさにカットしても、きれいにカッティングができない。また、カット後の熱転写においても、転写層に伸びや変形が発生する。
【0005】
また、特開2005−201989号公報(特許文献2)には、基材と、この基材に対して剥離可能な転写層とで構成された転写シートであって、転写層が、基材の面に形成された接着層と、この接着層の上に形成され、かつ隠蔽剤及び架橋性基を有していてもよいバインダー樹脂を含む隠蔽層とで構成されており、転写層の破断点伸度が30%以上である転写シートが開示されている。
【0006】
しかし、この転写シートにおいても、離型剤と剥離性との関係については記載も示唆もされておらず、剥離性が充分ではない。
【特許文献1】特開2004−223802号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2005−201989号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、カッティング工程を円滑に行うことができる転写シート及び記録画像の形成方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、カッティングプロッターなどでカットしても、基材と転写層との剥離や切り残しを抑制できるとともに、転写前の基材と転写層との剥離時においても伸びや変形を抑制できる転写シート及び記録画像の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定のヤング率を有する転写層を用いるとともに、剥離後の転写層表面における基材からの離型剤の移行量を調整することにより、カッティング工程を円滑に行うことができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の転写シートは、基材と、この基材に対して剥離可能な転写層とで構成されているシートであって、前記転写層が、離型剤を含む基材の上に形成され、かつヤング率210MPa以上であるとともに、前記基材を剥離した後の転写層の剥離面において、前記離型剤に対応する波長の吸光度が0.95以下である。前記離型剤に対応する波長の吸光度は0.8〜0.9程度であってもよい。転写層と基材との剥離強度は200〜750mN/25mm程度であってもよい。転写層のヤング率は250〜1000MPa程度であってもよい。前記転写層は、基材の面に形成された接着層と、この接着層の上に形成された受像層とで構成されていてもよい。前記離型剤はシリコーン化合物であってもよく、かつ接着層はシリコーン化合物を溶解可能な溶媒を含む溶液又はエマルジョンにより形成されていてもよい。前記受像層は、透明層及び非透明層から選択された少なくとも一種で構成されていてもよい。このような転写シートは、カッティング工程を必要とする用途に用いられてもよい。さらに、インクジェット記録方式で画像を形成するために用いられてもよい。
【0011】
本発明には、基材の上に転写層を構成する成分を含有するドープ液を塗布する塗布工程と、塗布したドープ液を乾燥する工程とを含む転写シートの製造方法であって、基材との剥離面を形成する転写層のドープ液を構成する溶媒の種類及び/又は前記ドープ液の乾燥温度を制御して前記転写シートを製造する方法も含まれる。この方法は、基材の面に接着層を形成した後、この接着層の上に受像層を形成する転写シートの製造方法であってもよい。この方法において、接着層のドープ液を構成する溶媒として離型剤を膨潤又は溶解可能な溶媒を用いるとともに、このドープ液を前記溶媒の沸点よりも0〜30℃低い温度で乾燥してもよい。
【0012】
また、本発明には、前記転写シートの転写層に画像を記録し、所望のサイズにカットした後、基材を転写層から剥離し、転写層と被転写体とを接触させて加熱して被転写体に転写し、記録画像を形成する方法も含まれる。
【0013】
さらに、本発明には、基材に含まれる離型剤を転写層に移行させることにより、前記転写シートの剥離特性を改善する方法も含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、転写層のヤング率と、転写層の剥離面における基材からの離型剤の移行量とを制御することにより、転写層が適度な弾性を有し、かつ基材と転写層とが適度な剥離強度を保持できるため、カッティング工程(特に、画像形成後のプロッターによるカッティング工程)を円滑に行うことができる。さらに、カッティングプロッターなどでカットしても、基材と転写層との剥離や切り残しを抑制できるとともに、転写前の基材と転写層との剥離時においても伸びや変形を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の転写シートは、基材とこの基材に対して剥離可能な転写層とで構成されている。
【0016】
[基材]
基材としては、離型剤を含み、転写層に対して剥離可能である限り、不透明、半透明、透明な基材が使用できる。このような離型性基材としては、例えば、離型処理紙(離型紙)、離型処理された合成紙、化学繊維紙、プラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0017】
離型処理紙(離型紙)を構成する紙類としては、例えば、紙(印刷用紙、包装用紙、薄葉紙など)が挙げられる。紙類は、ポリプロピレン、ポリスチレンなどによるラミネート加工や表面塗工などの各種加工が施されていてもよい。
【0018】
合成紙としては、ポリプロピレン、ポリスチレンなどを用いた各種合成紙などが挙げられる。
【0019】
化学繊維紙としては、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維などの化学繊維を原料とした各種化学繊維紙が挙げられる。
【0020】
プラスチックフィルムを構成するポリマーとしては、種々の樹脂(熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂)が使用でき、通常、熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレンなどのポリC2−4オレフィン系樹脂など)、セルロース誘導体(酢酸セルロースなどのセルロースエステルなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリアルキレンナフタレート、又はこれらのコポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド6/6など)、ビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)などが挙げられる。これらのフィルムのうち、通常、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが使用され、特に、機械的強度、耐熱性、作業性などの点からポリエステル(特にポリエチレンテレフタレートなど)が好ましい。
【0021】
基材の厚みは、用途に応じて選択でき、通常、10〜250μm、好ましくは15〜200μm、さらに好ましくは20〜150μm程度である。
【0022】
離型性は、慣用の方法、例えば、離型剤で基材を処理したり、基材に離型剤を含有させることにより付与できる。離型剤としては、例えば、シリコーン化合物、フッ素樹脂(フッ化ビニリデン系樹脂やフッ化エチレン−プロピレン系樹脂、フッ素系オリゴマーなど)、ワックス類(ワックス、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミドなど)などが例示できる。これらの離型剤のうち、シリコーン化合物が特に好ましく使用できる。
【0023】
シリコーン化合物としては、ポリオルガノシロキサンを含む化合物が挙げられる。ポリオルガノシロキサンは、Si−O結合(シロキサン結合)を有する直鎖状、分岐鎖状又は網目状の化合物であって、式:RSiO(4−a)/2で表される単位で構成されている。
【0024】
前記式において、Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのC1−10アルキル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化C1−10アルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基などのC2−10アルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのC6−20アリール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC3−10シクロアルキル基、ベンジル基、フェネチル基などのC6−12アリール−C1−4アルキル基などが挙げられる。好ましいRは、メチル基、フェニル基、アルケニル基(ビニル基など)、フルオロC1−6アルキル基である。係数aは0〜3の数である。
【0025】
ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、ポリジメチルシロキサンなどのポリジアルキルシロキサン(好ましくはポリジC1−10アルキルシロキサン)、ポリメチルビニルシロキサンなどのポリアルキルアルケニルシロキサン(好ましくはポリC1−10アルキルC2−10アルケニルシロキサン)、ポリメチルフェニルシロキサンなどのポリアルキルアリールシロキサン(好ましくはポリC1−10アルキルC6−20アリールシロキサン)、ポリジフェニルシロキサンなどのポリジアリールシロキサン(好ましくはポリジC6−20アリールシロキサン)、前記ポリオルガノシロキサン単位で構成された共重合体[ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体など]などが例示できる。
【0026】
シリコーン化合物は、その離型性を失わない程度に、分子末端や主鎖に、エポキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基又は置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)、エーテル基、(メタ)アクリロイル基等の置換基を有するポリオルガノシロキサンであってもよい。また、シリコーン化合物の両末端は、例えば、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、シラノール基、トリC1−2アルコキシシリル基などであってもよい。
【0027】
工業的に利用できるシリコーン化合物としては、具体的には、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂などが例示できる。
【0028】
シリコーンオイルは、主に低重合度の直鎖状重合体で構成された化合物であって、例えば、25℃での粘度が5〜1000000mPa・s、好ましくは10〜500000mPa・s、さらに好ましくは100〜100000mPa・s程度である。シリコーンオイルとしては、前記ポリオルガノシロキサンに対応するシリコーンオイル、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、環状ポリジメチルシロキサン、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、シリコーンポリエーテル共重合体、脂肪酸変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイルなどが例示できる。
【0029】
シリコーンゴムは、通常、高重合度の直鎖状重合体を加硫して得られる化合物である。シリコーンゴムとしては、例えば、メチルシリコーンゴム、ビニルシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フェニルビニルシリコーンゴム、フッ化シリコーンゴムなどが例示できる。
【0030】
シリコーン樹脂は、架橋された三次元構造を有している。シリコーン樹脂としては、例えば、シリコーンワニス、シリコーン変性ワニス(アルキド変性体、ポリエステル変性体、エポキシ変性体、アクリル変性体、ウレタン変性体など)、無機充填剤を含有するシリコーンモールディングコンパウドなどが例示できる。
【0031】
これらのシリコーン化合物のうち、離型性の点から、シリコーンオイルが好ましい。これらのシリコーン化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0032】
紙の場合は、例えば、目止め処理(例えば、クレイコートなど)をした後、離型剤(例えば、シリコーンオイルなど)で被覆することにより離型性を付与できる。
【0033】
[転写層]
転写層は、離型剤を含む基材の上に形成され、かつ基材に対して剥離可能であるとともに、ヤング率210MPa以上(例えば、225〜1200MPa程度)である。本発明では、転写層がこのようなヤング率を示すことにより、カッティング工程が円滑に行えるとともに、カットしても切り残しの発生が抑制される。ヤング率は、好ましくは250MPa以上(例えば、250〜1000MPa)、さらに好ましくは300MPa以上(例えば、300〜700MPa)、特に350〜500MPa程度である。ヤング率がこの範囲にあると、カッティング工程における効果(カッティング時の剥離やそれに起因する膜の切り残しの抑制など)だけでなく、カット後の熱転写における転写層の伸びや変形も抑制できる。
【0034】
本発明では、基材に含まれる離型剤が、転写層に適切な量で移行(移動又は浸透)していることが必要であり、このような離型剤の移行により、適切な剥離強度を保持できるため、カッティングプロッターによるカット後の切り残しが抑制できる。離型剤の移行は、基材を剥離した後の転写層の剥離面において、離型剤に対応する波長の吸光度を測定することにより評価できる。具体的に、この吸光度は0.95以下である必要があり、好ましくは0.1〜0.94(例えば、0.5〜0.93)、特に0.7〜0.92(特に0.8〜0.9)程度である。本発明において、離型剤の波長の測定は、赤外吸収スペクトルの測定により評価することでき、例えば、離型剤がシリコーン化合物の場合は、波長1500cm−1付近の吸光度を測定することにより評価できる。離型剤を適切に移行させる方法は、後述するように、転写層(例えば、接着層)を構成するための塗布液に離型剤を溶解可能な溶媒を含有させたり、転写層の製造条件を調整する方法などが挙げられる。
【0035】
転写層と基材との剥離強度は、100〜1000mN/25mm(例えば、130〜900mN/25mm)程度の範囲から選択できるが、基材から剥離した転写層の伸びや変形を抑制できる点から、好ましくは200〜750mN/25mm、さらに好ましくは300〜600mN/25mm(特に350〜550mN/25mm)程度である。
【0036】
具体的な態様として、転写層は、基材に対して剥離可能であれば特に限定されず、単層構造(例えば、ホットメルト接着性樹脂で構成され、被転写体と接着可能であるとともに、画像も形成可能である層など)であってもよく、積層構造であってもよい。さらに、転写層は、転写層の表面を被転写体に接触させてもよく、転写層の剥離面を被転写体に接触させてもよい。
【0037】
特に、転写層は、被転写体への接着性が高い点や、記録シートに予め形成された画像を熱転写し易い点から、基材の少なくとも一方の面(特に、基材の一方の面)に形成され、かつこの基材から剥離可能な接着層と、この接着層の上に形成された受像層とで構成されていてもよい。
【0038】
(接着層)
接着層は、基材に対して剥離可能であり、被転写体に転写可能な樹脂で構成されている。さらに、接着層は、転写層が前記ヤング率となるような軟質樹脂であれば、特に限定されず、例えば、少なくとも軟質ホットメルト接着性樹脂で構成されている。
【0039】
軟質ホットメルト接着性樹脂としては、熱接着性を有する樹脂である限り、特に制限されず、例えば、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが例示できる。
【0040】
(1)ウレタン系樹脂
熱接着性のウレタン系樹脂としては、例えば、ジイソシアネート成分と、ジオール成分との反応により得られる熱可塑性ウレタン系樹脂などが例示できる。
【0041】
ジイソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート(例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなど)、芳香脂肪族ジイソシアネート(例えば、キシリレンジイソシアネートなど)、脂環式ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネートなど)、脂肪族ジイソシアネート(例えば、プロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなど)などが例示できる。ジイソシアネート成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ジイソシアネート成分は、アダクト体であってもよく、必要によりトリフェニルメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート成分と併用してもよい。
【0042】
ジオール成分としては、例えば、脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオールなど)、脂環式ジオール(例えば、水添ビスフェノールA、水添キシリレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなど)、芳香族ジオール(例えば、ビスフェノールA、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、キシリレングリコールなど)などの低分子量ジオールの他、ポリエーテルジオール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリオキシC2−4アルキレングリコールなど)、ポリエステルジオール[前記ジオール成分又はポリエーテルジオールと、ジカルボン酸又はその反応性誘導体(低級アルキルエステル、酸無水物)との反応生成物や、ラクトンからの誘導体など]、ポリカーボネートジオール[例えば、前記低分子量ジオールとジアルキルカーボネート(ジメチルカーボネートなどのジC1−6アルキルカーボネートなど)との反応生成物など]などが例示できる。
【0043】
ポリエステルジオールにおいて、ジカルボン酸には、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸などのC4−14脂肪族ジカルボン酸など)、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸など)などが含まれる。これらのジカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ジカルボン酸は、必要により、トリメリット酸などの多価カルボン酸と併用してもよい。ラクトンには、例えば、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、ラウロラクトンなどが含まれる。これらのラクトンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0044】
これらのジオール成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ジオール成分は、必要により、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオールと併用してもよい。
【0045】
ウレタン系樹脂は、必要により多価アミン類などの鎖伸長剤又は架橋剤で、架橋又は変性されていてもよい。例えば、前記多価アミン類によって変性されたポリウレタン尿素樹脂であってもよく、前記多価アミン類を鎖伸長剤として使用して、ウレタン系樹脂を熱可塑性エラストマーとしてもよい。熱可塑性ウレタン系エラストマーとしては、例えば、脂肪族ポリエーテルやポリエステルをソフトセグメントとし、短鎖グリコールのポリウレタン単位をハードセグメントとするエラストマーなどが例示できる。
【0046】
多価アミン類としては、例えば、ヒドラジン、脂肪族ジアミン(例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなど)、芳香族ジアミン(例えば、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミンなど)、脂環族ジアミン[例えば、水添キシリレンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、イソホロンジアミンなど]などが挙げられる。これらの多価アミン類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0047】
これらのウレタン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0048】
ウレタン系樹脂としては、ポリエステル型ウレタン系樹脂、ポリカーボネート型ウレタン系樹脂、ポリエーテル型ウレタン系樹脂などのウレタン樹脂や、ポリウレタン尿素樹脂などが挙げられ、これらのウレタン系樹脂のうち、特に、黄変が少ない点から、ポリエステル型ウレタン系樹脂、ポリカーボネート型ウレタン系樹脂が好ましく、特に脂肪族ポリエステル型ウレタン系樹脂、脂肪族ポリカーボネート型ウレタン系樹脂、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0049】
さらに、柔軟性などの点から、脂肪族ポリエステルジオールを50重量%以上(例えば、75重量%以上)含むジオール成分を用いて得られたポリエステル型ウレタン系樹脂(例えば、1,4−ブタンジオールなどのC2−6アルカンジオールと、アジピン酸などのC4−12脂肪族ジカルボン酸、及びイソフタル酸又はフタル酸との反応により得られるポリエステルジオールや前記ラクトンから誘導されるポリエステルジオールを用い、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートと反応させたウレタン樹脂など)、これらのポリエステル型ウレタン系樹脂に対応するポリウレタン尿素樹脂が好ましい。
【0050】
これらの中でも、小さい引張強度で高い伸び率を発揮する点から、特に、ウレタン系樹脂(ポリエステル型ウレタン系樹脂、ポリカーボネート型ウレタン系樹脂など)が好ましい。
【0051】
ウレタン系樹脂は、有機溶媒溶液、水溶液、水性エマルジョンとして用いてもよい。ウレタン系樹脂の水溶液又は水性エマルジョンは、ウレタン系樹脂を、乳化剤を用いて、溶解又は乳化分散させて調製してもよく、ウレタン系樹脂の分子内に遊離のカルボキシル基や3級アミノ基などのイオン性官能基を導入し、アルカリや酸を用いて、ウレタン系樹脂を溶解又は分散させることにより調製してもよい。このような分子内に遊離のカルボキシル基や3級アミノ基が導入されたウレタン系樹脂は、ジイソシアネート成分と、遊離のカルボキシル基又は3級アミノ基を有するジオール(特に高分子ジオール)成分との反応により得られるウレタン系樹脂で構成される。なお、前記遊離のカルボキシル基を有するジオール(特に高分子ジオール)は、例えば、ジオール成分と、3以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸又はその無水物(例えば、無水ピロメリット酸などの4塩基酸無水物など)や、スルホン酸基を有する多価カルボン酸(スルホイソフタル酸など)との反応、開始剤としてジメチロールプロピオン酸などを用い、ラクトンを開環重合する方法などにより得られる。
【0052】
(2)ポリアミド系樹脂
熱接着性のポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ダイマー酸とジアミンとの反応により生成するポリアミド樹脂、ポリアミド系エラストマー(例えば、ポリオキシアルキレンジアミンをソフトセグメントとして用いたポリアミドなど)などが挙げられる。これらのポリアミド系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、好ましいポリアミド系樹脂には、ポリアミド11を構成する単位及びポリアミド12を構成する単位から選択された少なくとも一方の単位を有するポリアミド(例えば、ポリアミド11、ポリアミド12などのホモポリアミド、ポリアミド6/11、ポリアミド6/12、ポリアミド66/12、ダイマー酸とジアミンとラウロラクタム又はアミノウンデカン酸との共重合体などのコポリアミド)、ダイマー酸とジアミンとの反応により生成するポリアミド樹脂などが含まれる。
【0053】
(3)オレフィン系樹脂
熱接着性のオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン(特に、α−C2−10オレフィン)の単独又は共重合体、オレフィン系エラストマーが例示できる。
【0054】
α−オレフィンの単独又は共重合体としては、例えば、ポリオレフィン(低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、アタクチックポリプロピレンなど)、変性ポリオレフィン[エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−(4−メチルペンテン−1)共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアイオノマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリレート共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンなど]などが挙げられる。オレフィン系エラストマーとしては、ポリエチレンやポリプロピレンをハードセグメントとし、エチレン−プロピレンゴム(EPR)やエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)をソフトセグメントとするエラストマーなどが挙げられる。
【0055】
これらのオレフィン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのオレフィン系樹脂のうち、熱接着性の点から、変性ポリオレフィン、特に変性エチレン系樹脂(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン共重合体など)が好ましい。
【0056】
(4)ポリエステル系樹脂
熱接着性のポリエステル系樹脂としては、少なくとも脂肪族ジオール又は脂肪族ジカルボン酸を用いたホモポリエステル樹脂又はコポリエステル樹脂、ポリエステル系エラストマーが例示できる。
【0057】
前記ホモポリエステル樹脂には、例えば、脂肪族ジオール(前記ウレタン系樹脂の項で述べたC2−10アルカンジオール、ポリオキシC2−4アルキレングリコール)と、脂肪族ジカルボン酸(前記C4−14脂肪族ジカルボン酸など)と、必要によりラクトンとの反応により生成する飽和脂肪族ポリエステル樹脂が含まれる。
【0058】
前記コポリエステル樹脂には、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートの構成成分(ジオール及び/又はテレフタル酸)の一部を他のジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのC2−6アルキレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなど)又はジカルボン酸(前記脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸などの非対称型芳香族ジカルボン酸など)若しくはラクトン(ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、ラウロラクトンなど)で置換した飽和ポリエステル樹脂が含まれる。
【0059】
ポリエステル系エラストマーとしては、C2−4アルキレンアリレート(エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートなど)をハードセグメントとし、(ポリ)オキシアルキレングリコールなどをソフトセグメントとするエラストマーなどが例示できる。
【0060】
ポリエステル系樹脂としては、ウレタン結合を含むポリエステル樹脂、例えば、ポリエステル樹脂を前記ジイソシアネートで高分子量化した樹脂を使用してもよい。
【0061】
これらのポリエステル系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0062】
これらの軟質ホットメルト接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ホットメルト接着性樹脂は、通常、水不溶性である。ホットメルト接着性樹脂は、末端に反応性基(カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基、シリル基など)を有する反応性ホットメルト接着性樹脂であってもよい。
【0063】
これらの軟質ホットメルト接着性樹脂の軟化点は、例えば、70〜180℃、好ましくは80〜170℃、さらに好ましくは90〜160℃(特に90〜150℃)程度である。特に、被転写体や隠蔽層に対する充分な接着力を示すとともに、布帛などの被転写体への染み込みが抑制される点から、異なる軟化点を有する複数の樹脂を組み合わせるのが好ましく、例えば、軟化点70〜120℃(例えば、80〜110℃)程度の樹脂と、軟化点120℃を超えて180℃以下(例えば、130〜160℃)の樹脂とを組み合わせてもよい。
【0064】
軟質ホットメルト接着性樹脂の融点は、50〜250℃程度の範囲から選択でき、例えば、60〜200℃、好ましくは70〜150℃、さらに好ましくは70〜130℃(特に80〜120℃)程度であってもよい。
【0065】
これらの軟質ホットメルト接着性樹脂のうち、被転写体が衣類などの布帛である場合、接着性、柔軟性及び風合いの点から、ウレタン系樹脂(例えば、軟化点70〜180℃のウレタン系樹脂など)、ポリアミド系樹脂(例えば、融点70〜180℃のポリアミド系樹脂など)、オレフィン系樹脂[例えば、融点70〜120℃のオレフィン系樹脂(特にエチレン共重合体)など]、特にウレタン系樹脂(例えば、軟化点70〜180℃のポリエステル型ウレタン系樹脂など)が好ましい。特に、軟化点70〜180℃のウレタン系樹脂及び/又は融点70〜120℃のエチレン系樹脂を、接着層を構成する樹脂成分中50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上含有するのが好ましい。
【0066】
前記基材に含まれる離型剤が移行するために、接着層を製造するためのドープ液(塗布液)には、離型剤を膨潤又は溶解可能な溶媒が含まれているのが好ましい。ドープ液は、溶液でもエマルジョンでもいずれでもよい。ドープ液における樹脂成分の割合は、例えば、1〜90重量%、好ましくは5〜80重量%、さらに好ましくは10〜60重量%(特に20〜50重量%)程度である。溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ペンタン、ヘキサンなど)、脂環族炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレンなど)、エーテル類(1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノールなど)、アミド類(ホルムアミド、アセトアミドなどのアシルアミド類、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのモノ又はジC1−4アルキル−アシルアミド類)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなどのジアルキルスルホキシド)、ニトリル類(アセトニトリル、クロロアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルなどのアルキルニトリル、ベンゾニトリルなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、例えば、離型剤がシリコーン化合物の場合、イソプロパノールなどのアルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、又はこれらの混合溶媒が汎用される。
【0067】
接着層は、必要により種々の添加剤、例えば、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤など)、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、アンチブロッキング剤、充填剤、着色剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤などを含有していてもよい。
【0068】
接着層の厚みは、例えば、5〜300μm、好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは20〜100μm(特に20〜60μm)程度である。
【0069】
(受像層)
受像層は、画像を形成できるとともに、転写層が前記ヤング率を示すように、転写層の軟性を損なわなければ、特に限定されず、用途に応じて、透明層及び/又は非透明層(半透明層又は不透明層)で構成してもよく、特に、非透明層は隠蔽層であってもよい。
【0070】
透明層及び非透明層は、転写層に軟性を付与する点から、少なくとも軟質樹脂を含んでいてもよい。軟質樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂(塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂など)、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂などの熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらの軟質樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、硬質樹脂であってもゴム成分や可塑剤(鉱物オイルやパラフィンオイルなど)などと混合することにより、軟質樹脂組成物として使用できる。これらの軟質樹脂のうち、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂が好ましい。
【0071】
塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−C2−4オレフィン共重合体(塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体など)、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(塩化ビニル−メタクリル酸メチルなど)、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体やポリウレタンに塩化ビニルをグラフト重合した共重合体などが挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂は、慣用の可塑剤を含む軟質樹脂であってもよい。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤[ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)など]、リン酸エステル系可塑剤[リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリオクチル(TOP)など]、脂肪族多価カルボン酸エステル[アジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジオクチル(DOS)など]、エポキシ系可塑剤[アルキルエポキシステアレート、エポキシ化大豆油など]などが挙げられる。可塑剤の割合は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは3〜75重量部、さらに好ましくは5〜50重量部程度である。
【0072】
ポリエステル系樹脂としては、前記接着層の項で例示のポリエステル系樹脂などが挙げられる。前記ポリエステル系樹脂のうち、脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ウレタン結合を含むポリエステル樹脂などが好ましい。
【0073】
ウレタン系樹脂としては、前記接着層の項で例示されたウレタン系樹脂が使用できる。ウレタン系樹脂の中でも、ポリエステル型ウレタン系樹脂や、ポリカーボネート型ウレタン系樹脂(例えば、無黄変性の脂肪族ポリカーボネート型ウレタン系樹脂など)、特に、脂肪族ポリエステルジオールを50重量%以上含むジオール成分を用いて得られたポリエステル型ウレタン系樹脂が好ましい。
【0074】
軟質樹脂の軟化点は、70〜180℃の範囲から選択でき、例えば、70〜150℃、好ましくは70〜120℃、さらに好ましくは80〜110℃程度である。
【0075】
これらの軟質樹脂のうち、接着力や柔軟性の点から、ウレタン系樹脂が特に好ましい。
【0076】
隠蔽層を形成する場合には、前記軟質樹脂の中でも、接着力及び成膜性を有する軟質樹脂、例えば、架橋性基を有していてもよい軟質樹脂(例えば、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂など)であるのが好ましい。架橋性基としては、例えば、イソシアネート基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メチロール基、アルコキシシリル基などが挙げられる。隠蔽層においては、このような架橋性基を有していてもよい軟質樹脂をバインダー樹脂として、隠蔽剤と組み合わせて用いてもよい。これらのバインダー樹脂のうち、接着力や柔軟性の点から、イソシアネート基を有していてもよいウレタン系樹脂が好ましい。
【0077】
隠蔽剤(又は隠蔽性向上剤)は、被転写体を、白色化などにより隠蔽可能であればよく、少なくとも白色顔料、加熱膨張により白色化可能なマイクロカプセルなどの白色隠蔽剤などが例示できる。これらの隠蔽剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0078】
前記白色顔料は、白色顔料単独で構成された顔料に限定されず、白色顔料を含む樹脂粒子(例えば、バインダー樹脂で被覆された粒子や、バインダー樹脂粒子中に複数の白色顔料が分散した粒子など)で構成してもよい。
【0079】
白色顔料としては、チタン系白色顔料[酸化チタン(チタン白)など]、亜鉛系白色顔料(酸化亜鉛、硫化亜鉛など)、複合白色顔料(リトポンなど)、体質顔料[ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミニウム系体質顔料(アルミナ、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウムなど)、シリカ、マイカ、ベントナイトなど]などが例示できる。これらの白色顔料のうち、チタン系白色顔料、特に酸化チタンが好ましい。
【0080】
酸化チタンの結晶型は、アナターゼ型であってもよいが、屈折率が大きくて隠蔽力に優れる点から、ルチル型が好ましい。
【0081】
白色顔料の平均粒径は3μm以下が好ましく、例えば、0.01〜3μm、好ましくは0.05〜2μm(例えば、0.05〜1μm)、さらに好ましくは0.1〜1μm(例えば、0.1〜0.5μm)程度である。白色顔料の平均粒径が小さすぎると白色隠蔽力が充分でなく、大きすぎると風合いや接着性が損なわれる。
【0082】
マイクロカプセルは、芯物質として熱転写における加熱によって気化する低沸点の溶媒を含有しており、芯物質である溶媒の沸点は200℃以下、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは50〜150℃程度である。このような溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素(ペンタン、ヘキサンなど)、脂環族炭化水素(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレンなど)、エーテル(1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、特に炭化水素系溶媒(例えば、ヘキサンなど)が好ましい。
【0083】
マイクロカプセルを構成する壁材としては、ガスバリア性が高く、熱転写における加熱によって軟化する熱可塑性樹脂、例えば、塩化ビニリデン系重合体[例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン−(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニリデン−(メタ)アクリレート共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体など]、ポリアクリロニトリル系重合体、ビニルアルコール系重合体(例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、ポリアミド系樹脂(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12など)などが例示できる。
【0084】
マイクロカプセルの平均粒径は50μm以下が好ましく、例えば、0.1〜50μm、好ましくは0.5〜20μm、さらに好ましくは1〜10μm程度である。
【0085】
150℃で1分間加熱したとき、マイクロカプセルの体積は、3倍以上(例えば、5〜1000倍、好ましくは10〜100倍、さらに好ましくは10〜50倍程度)膨張するのが好ましい。
【0086】
これらの隠蔽剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの隠蔽剤のうち、酸化チタンなどの白色顔料が好ましい。
【0087】
なお、本発明では、隠蔽層の機械的強度の点から、酸化チタンなどの隠蔽剤が、隠蔽層中で充分に分散しているのが好ましい。すなわち、隠蔽剤は、凝集せずに一次粒子の状態で分散しているのが好ましい。また、凝集している場合でも、分散粒子の粒径(二次粒径)は小さいのが好ましく、例えば、二次粒径10μm以下(例えば、0.1〜10μm)、好ましくは0.1〜7μm、さらに好ましくは0.1〜5μm程度である。隠蔽剤を充分に分散させる方法としては、特に限定されないが、慣用の方法、例えば、ディスパー、ホモミキサー、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、コロイドミル、サンドミル、アトライター、ペイントコンディショナーなどの分散機を用いた方法などが挙げられる。
【0088】
さらに、隠蔽剤の分散性を向上させるために、隠蔽剤(特に白色顔料)を予め樹脂(例えば、バインダー樹脂と同系統の架橋性基を有してもよい樹脂など)又は樹脂溶液中に分散させて用いてもよい。予め分散させる隠蔽剤と樹脂との割合(重量比)は、例えば、50/50〜99/1、好ましくは60/40〜97/3、さらに好ましくは70/30〜95/5程度である。
【0089】
隠蔽剤とバインダー樹脂との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=30/70〜90/10、好ましくは35/65〜80/20、さらに好ましくは40/60〜75/25(特に45/55〜70/30)程度である。本発明では、伸び率や強度などの各種特性を低下させることなく、隠蔽剤の割合を高めることができるため、高い隠蔽性(特に白色隠蔽性)を有しているにもかかわらず、転写シートとしての取扱い性や、被転写体に転写された転写層の耐久性などにも優れる。なお、隠蔽層には、隠蔽剤として顔料成分を含有しているため、離型性に優れている。
【0090】
隠蔽層は、さらに架橋剤を含有してもよい。架橋剤は、バインダー樹脂の種類に応じて適宜選択することができ、バインダー樹脂の官能基に対して2以上の反応性官能基を有する化合物(例えば、前記架橋性基を有する多官能性化合物や多価金属イオンなど)であってもよい。具体的には、ポリイソシアネート、ポリアミン、多価カルボン酸、シランカップリング剤、ポリエチレンイミン、尿素樹脂、メラミン樹脂、マグネシウムイオン(マグネシウムイオンを生成可能な化合物)などが挙げられる。バインダー樹脂がウレタン系樹脂である場合には、架橋剤として、ポリイソシアネート(例えば、前記接着層の項で例示されたジイソシアネート成分やポリイソシアネート成分など)を用いるのが好ましい。架橋剤を用いることにより、強度や接着層との接着力などをさらに向上することができる。
【0091】
架橋剤の割合は、バインダー樹脂100重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部程度である。
【0092】
隠蔽層の厚みは、例えば、3〜500μm、好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは10〜100μm(特に15〜50μm)程度である。
【0093】
透明層及び非透明層は、必要により、種々の添加剤、例えば、染料定着剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤など)、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、アンチブロッキング剤、充填剤、着色剤、発色剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤などを含有していてもよい。
【0094】
透明層及び非透明層(特に隠蔽層)は、いずれも画像を形成するための層として用いることができる。両層は、それぞれ単独で用いてもよいが、組み合わせて用いてもよい。例えば、隠蔽層の上に、画像を形成するための層として、さらにインク受容層としての透明層を形成してもよい。
【0095】
このようなインク受容層としては、画像を形成可能である限り、特に制限されず、慣用のインク受容層、例えば、多孔質層(有機又は無機粒子及びバインダー樹脂で構成された層、多孔質有機又は無機粒子を含む層、良溶媒と貧溶媒とを用いて高分子をミクロ相分離させる相分離法によって得られる層など)や、インク定着性樹脂で構成された層などが使用できる。
【0096】
これらのインク受容層のうち、少なくとも有機又は無機粒子などの粒子成分及びバインダー樹脂で構成された受像層が好ましい。このような受像層は、インクジェット記録方式で画像を形成するのに適している。
【0097】
粒子成分としては、種々の有機又は無機粒子が使用できるが、シートの機械的特性や転写後の被転写体の風合いなどの点から、有機粒子が好ましく、耐水性や耐洗濯性と、画像鮮明性とを両立できる点から、前記接着層の項で例示のホットメルト接着性樹脂(ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂など)で構成された粒子が特に好ましい。これらのホットメルト接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのホットメルト接着性樹脂のうち、ウレタン系樹脂粒子(前記接着層の項で例示のウレタン系樹脂で構成された粒子など)及び/又はポリアミド系樹脂粒子(前記接着層の項で例示されたポリアミド系樹脂で構成された粒子など)、特にウレタン系樹脂粒子とポリアミド系樹脂粒子との組み合わせが好ましい。さらに、ホットメルト接着性粒子は多孔質粒子であってもよい。
【0098】
粒子成分の平均粒径は、例えば、0.2〜150μm、好ましくは1〜130μm、さらに好ましくは3〜120μm程度である。
【0099】
バインダー樹脂としては、成膜性を有する限り、特に制限されず、前記バインダー樹脂の他、親水性高分子(ポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール系樹脂や、ポリビニルアルコールなどのビニルアルコール系樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体など)などが使用できる。これらのバインダー樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂などが好ましい。また、バインダー樹脂は、樹脂の分子内に3級アミノ基又は4級アンモニウム塩が導入されたカチオン性樹脂であってもよい。
【0100】
粒子成分の割合は、固形分換算で、バインダー樹脂100重量部に対して10〜5000重量部程度の範囲から選択でき、好ましくは200〜5000重量部、さらに好ましくは300〜3000重量部(特に500〜2000重量部)程度である。
【0101】
インク受容層には、インクの定着性を向上させるために、染料定着剤(例えば、脂肪族4級アンモニウム塩や芳香族4級アンモニウム塩などのカチオン性化合物、ポリカチオン系化合物などの高分子染料固着剤など)が含まれていてもよい。染料定着剤の割合は、固形分換算で、バインダー樹脂100重量部に対して1〜200重量部、好ましくは5〜150重量部、さらに好ましくは10〜100重量部(特に10〜60重量部)程度である。
【0102】
インク受容層の厚みは、例えば、5〜150μm、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜80μm(特に20〜70μm)程度である。
【0103】
隠蔽層とインク受容層との間には、両層の接着力を向上させるために、さらに樹脂成分で構成されたアンカー層が形成されていてもよい。前記樹脂成分としては、種々の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が使用できるが、接着力を効果的に向上させる点から、隠蔽層及びインク受容層の双方に含まれる樹脂成分と同系統又は同種の樹脂(双方に含まれる樹脂成分に親和性を有する樹脂)を使用するのが好ましい。さらに、アンカー層は、インク受容層から滲出したインクを定着させる点から、3級アミノ基又は4級アンモニウム塩が導入されたカチオン性樹脂であるのが好ましい。例えば、隠蔽層のバインダー樹脂がウレタン系樹脂である場合、接着力及び柔軟性の点から、アンカー層を構成する樹脂成分としては、ウレタン系樹脂(例えば、前記熱可塑性ウレタン系樹脂)が好ましく、特に、層間の接着力を向上できると共に、インク受容層のインク定着性も補助的に向上できる点から、カチオン型熱可塑性ウレタン系樹脂が好ましい。
【0104】
ウレタン系樹脂としては、前記接着層の項で例示されたウレタン系樹脂が使用でき、例えば、少なくとも脂肪族ポリエステルジオールをジオール成分として用いた脂肪族ポリエステル型ウレタン系樹脂や、ポリカーボネート型ウレタン系樹脂(例えば、無黄変性脂肪族ポリカーボネート型ウレタン系樹脂など)などが好ましい。カチオン性樹脂としては、前記受像層の項で例示のカチオン性ウレタン系樹脂などが例示できる。
【0105】
アンカー層の厚みは、例えば、0.1〜30μm、好ましくは0.5〜20μm、さらに好ましくは1〜10μm(特に1〜5μm)程度である。
【0106】
さらに、透明層及び/又は非透明層の上には、必要により、ブロッキング防止層、滑性層、帯電防止層などを形成してもよい。
【0107】
転写層の厚みは、例えば、3〜1000μm、好ましくは5〜500μm、さらに好ましくは10〜300μm(特に15〜100μm)程度である。
【0108】
[転写シートの製造方法]
本発明の転写シートは、基材の面に、転写層を形成することにより製造できる。すなわち、転写層が複数の層で構成されている場合には、転写層を構成する各層を順次形成することにより製造できる。例えば、基材の離型性面に、この基材に対して剥離可能な接着層を形成した後、この接着層の上に隠蔽層を形成することにより製造できる。他の層などを形成する場合は、隠蔽層の上に、さらにインク受容層などを形成すればよい。
【0109】
具体的には、転写シートの層構造に応じて、基材の離型性面に、前記成分で構成された塗布剤を塗布することにより形成できる。塗布剤に含まれるバインダー樹脂や接着性樹脂は、通常、溶液又はエマルジョンの形態で使用できる。そのため、バインダー樹脂や接着性樹脂を含む溶液又はエマルジョンと、他の成分とを混合することにより、転写層用塗布剤を調製してもよい。溶液又はエマルジョンの溶媒は、水性の場合は、通常、水を含む溶媒が用いられ、水単独であってもよく、必要によりアルコール類などの親水性有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒の場合は、例えば、前記接着層の項で例示された溶媒などが使用できる。従って、各層用の塗布剤を塗布し、乾燥させた後、次の塗布剤を重ねて塗布してもよい。
【0110】
塗布剤は、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エヤナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビアコーターなどにより基材の少なくとも一方の面に塗布できる。塗膜を、50〜150℃(好ましくは80〜120℃)程度の温度で乾燥させることにより形成できる。
【0111】
ここで、本発明では、接着層の乾燥条件は、基材の離型剤を移行させるために、重要な意味を持つ。乾燥条件(温度や時間など)は、基材の離型剤の適切な量(前記吸光度の範囲)で接着層に移行できるように適宜選択すればよい。例えば、接着層のドープ液に含まれる溶媒の沸点などに応じて選択できる。例えば、溶媒の沸点近辺の温度、例えば、沸点よりも0〜30℃(特に0〜10℃)程度低い温度であってもよい。具体的には、ジメチルホルムアミドとメチルエチルケトンとの等量混合物の場合、乾燥温度は、例えば、90〜120℃、好ましくは100〜117℃、さらに好ましくは105〜115℃程度である。なお、接着層を形成した後、受像層などの他の層を形成する工程において、このような条件で乾燥などを行うことにより、基材の離型剤を接着層に移行してもよい。
【0112】
このようにして形成された転写層は、接着層を被転写体と接触させた状態で、適当な温度(例えば、140〜250℃、好ましくは140〜200℃程度)及び圧力(500〜50,000Pa程度)で適当な時間(例えば、5秒〜1分程度)加熱圧着することにより、熱転写することができる。具体的には、転写シートから基材を剥離した後、接着層の剥離面と被転写体とを接触させて加熱する。転写画像を含む転写体は必要により加熱して架橋させてもよい。加熱方法は、必要に応じて離型紙などを介して、転写層をアイロンなどの加熱摺動部材で加圧及び加温する方法であってもよい。
【0113】
転写層には、前記記録方式などにより画像を形成してもよい。具体的には、転写シートの転写層(例えば、隠蔽層やインク受容層など)に画像を記録した後、この転写シートから基材を剥離してもよいし、転写シートから基材を剥離した後、転写層(例えば、隠蔽層など)に画像を記録してもよい。これらの記録方法は、用途に応じて使い分けることができ、インクジェット記録方式や電子写真方式などの機器を用いる場合は、通常、転写前に画像を記録する。
【0114】
[画像形成方法]
本発明の転写シートを用いて画像を形成する場合には、転写シートから基材を剥離した後、転写層(例えば、受像層など)に画像を記録してもよいが、通常、転写層に画像を記録した後、この転写シートから基材を剥離する。
【0115】
従って、本発明の画像形成方法としては、例えば、前記転写シートの転写層に画像を記録し、所望のサイズにカットした後、基材を転写層から剥離し、転写層と被転写体とを接触させて加熱して被転写体に転写し、記録画像を形成する方法が挙げられる。
【0116】
転写層に画像を記録する方法としては、油性又は水性インキペンなどの筆記具によって転写層に画像を形成する方法の他、インクジェット記録方式(ノズルからシートにむけてインク小滴を飛翔させるインクジェット方式など)、熱溶融転写方式、昇華型熱転写方式、電子写真方式(カラー複写機やカラーレーザープリンターなど)などの記録方式によって、転写前の受像層に画像を形成する方法などが例示できる。隠蔽層に貼着するためのフィルムやシートに対しても、同様の方法で画像を形成することができる。これらのうち、画像鮮明性や簡便性などの点から、水性又は油性インク、溶剤インクを用いたインクジェット記録方式によって画像を形成するのが好ましい。
【0117】
所望の大きさにカットする方法としては、カッティングプロッターなどの機械的な方法、カッターやハサミを用いてカットする方法などが挙げられる。本発明では、転写層が、特定の弾性を有しかつ基材との間で適切な剥離特性を有しているため、カッティング工程(特に、カッティングプロッターなどの機械的な方法でカットをした場合)においても、基材と転写層との間で剥離が発生せず、切り残しの発生も抑制される。
【0118】
転写シートの転写層を被転写体に転写する方法は、転写層を接触面として被転写体に接触させて加熱した後、基材を剥離する方法であってもよいが、転写シートから基材を剥離した後、この転写層の剥離面(特に接着層)と被転写体とを接触させて加熱する方法が好ましい。転写層が、例えば、受像層と接着層とで構成されている場合には、前記剥離面は接着層となる。また、転写画像を含む転写体は必要により加熱して架橋させてもよい。加熱方法は、必要に応じて離型紙などを介して、転写層を加熱部材(例えば、アイロンなどの加熱摺動部材や、ヒートプレス機など)で加熱及び加圧する方法であってもよい。加熱温度は、転写層(例えば、接着層)を構成する樹脂の種類に応じて選択でき、例えば、80〜250℃、好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃程度である。加熱時間は、例えば、5秒〜1分、好ましくは10秒〜1分程度である。圧力は、例えば、0.05〜10N/cm、好ましくは0.1〜5N/cm程度である。本発明では、このように熱転写しても、カット後の転写層の伸びや変形が抑制できる。
【0119】
[被転写体]
本発明の転写シートは、柔軟性及び強度を併せ持つため、様々な被転写体に強固な接着力で転写することが可能である。被転写体としては、繊維、紙、木材、プラスチック、セラミックス、金属などの種々の材料で形成された二次元又は三次元構造物が利用できる。さらに、本発明の転写シートは、柔軟性に優れるため、布帛(例えば、Tシャツなど)、プラスチックフィルム・シート又は紙などを被転写体として利用してもよい。特に、隠蔽層を形成した転写シートは、隠蔽性(特に白色隠蔽性)に優れるため、被転写体の色の如何に拘わらず、隠蔽層の上に鮮明な画像を形成できる。従って、前記被転写体の中でも、濃色の被転写体に好ましく用いられる。濃色の被転写体としては、被転写体固有の色が濃色の被転写体でも、濃色に染色又は着色された被転写体でもどちらでもよい。濃色には、黒色、灰色、紺色、青色などの色(例えば、明度0〜5、好ましくは0〜3程度の色)が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、繊維、紙、木材、プラスチック、セラミックス、金属などの種々の材料で形成された二次元又は三次元構造物などの被転写体に転写する転写シートとして有効である。特に、本発明の転写シートは、カッティングプロッターなどによるカッティングを円滑に行うことができるため、カッティング工程を必要とする用途に適している。
【実施例】
【0121】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、文中、特に断わりのない限り、「部」は重量基準である。また、実施例及び比較例で得られた転写シートの各層の各成分の内容、及び転写シートの各種特性の評価法は次の通りである。
【0122】
[各成分の内容]
(基材)
シリコーンコート紙:リンテック(株)製、SGP85OKT−TP(LB)、坪量110g/m
(接着層)
ポリエステル系ウレタン樹脂溶液A:大日精化工業(株)製、レザミンUD1305、溶剤:ジメチルホルムアミド/メチルエチルケトン=40/60(重量比)、固形分50重量%、軟化温度95℃
ポリエステル系ウレタン樹脂溶液B:大日精化工業(株)製、レザミンME3119LP、溶剤:ジメチルホルムアミド/メチルエチルケトン=35/65(重量比)、固形分34重量%、軟化温度135℃
ジメチルホルムアミド:希釈溶剤。
【0123】
(隠蔽層)
ポリエステル系ウレタン樹脂溶液B:大日精化工業(株)製、レザミンME3119LP、溶剤:ジメチルホルムアミド/メチルエチルケトン=35/65(重量比)、固形分34重量%、軟化温度135℃
酸化チタン含有カーボネート系ウレタン樹脂溶液C:大日精化工業(株)製、セイカセブンBS012(S)ホワイト、酸化チタンの分散粒径0.2μm、ウレタン系樹脂/酸化チタン=9/1(重量比)、溶剤:ジメチルホルムアミド、固形分55重量%
(アンカー層)
カチオン性カーボネート系ウレタンエマルジョンD:第一工業製薬(株)製、F−8559D、固形分26重量%。
【0124】
(インク受容層)
ポリアミド12粒子E:ダイセル・デグサ(株)製、ベスタメルト430−P06、吸油量45ml/100g、融点110℃、平均粒径60μm
ポリアミド6/12粒子F:アトフィナジャパン(株)製、オルガソール3501EX D NAT−1、吸油量212ml/100g、融点142℃、平均粒径10μm
ポリアミド12粒子G:ダイセル・デグサ(株)製、ベスタメルト640−P1、融点76℃、平均粒径100μm
ポリウレタン系樹脂エマルジョンH:新中村化学(株)製、SPレジンME−307
ポリエチレングリコールI:三洋化成工業(株)製、PEG4000S
染料定着剤J:第一工業製薬(株)製、カチオゲンL
ポリウレタン樹脂粒子K:大日本インキ化学工業(株)製、バーノックCFB−100、ガラス転移温度−12℃、軟化点135℃、平均粒径20μm。
【0125】
[吸光度]
得られた転写シートを離型紙(基材)から剥離し、剥離した接着層の表面の赤外吸収光スペクトルを測定し、離型剤に対応する波長(1500cm−1)の吸光度を測定した。
【0126】
[剥離強度及びヤング率]
JIS K7161に準拠して、シートの剥離強度(シート25mm幅当りの強度)及びヤング率を、シートのMD方向(シートの流れ方向)において測定した。
【0127】
[膜の変形性]
転写シートを10mm幅×15cm長さにカットし、転写層の一部分(シートの一方の端から長さ方向に5cmまでの部分)を基材から剥離した。このシートの剥離部分における基材と転写層とを、それぞれ引張試験機の上下のクランプに挟み込んで固定し、一定速度(30cm/分)で引っ張って、T型剥離することにより、シートの未剥離部分(長さ10cm)についての基材と転写層とを剥離させた後、転写層の未剥離部分(10cm)の剥離後の長さを測定し、以下の基準で評価した。
【0128】
○:10cm以上10.5cm未満
△:10.5cm以上〜11cm未満
×:11cm以上。
【0129】
[切り残し]
転写シートをプロッター(ローランドDG社製、SP−300)にて、刃圧390mN/cm、速度10cm/秒で、5cmの正三角形をカットし、頂点部の切れ具合を目視確認する。
【0130】
○:頂点部3箇所とも切り残しなし
△:頂点部1箇所で切り残しあり
×:頂点部2箇所以上で切り残しあり。
【0131】
実施例1〜4及び比較例1〜5
シリコーンコート紙の上に、表1に示す接着層用塗布液(乾燥塗布量35g/m)を塗布し、表1に示す条件で乾燥し、接着層を有するシートを得た。次に、この接着層の上に、表1に示す隠蔽層用塗布液(乾燥塗布量40g/m)を塗布し、表1に示す条件で乾燥し、隠蔽層を形成した。得られた転写シートの評価結果も表1に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜4の転写シートは、膜の変形が抑制されている。特に、実施例2及び実施例4の転写シートは、プロッターでカット後の切り残しもない。これに対して、比較例1〜5の転写シートは、膜の変形が大きく、実用性が低い。
【0134】
実施例5
実施例2で得られた転写シートの隠蔽層の上に、以下のアンカー層塗布液(乾燥塗布量5g/m)を塗布し、110℃、3分間の条件で乾燥し、アンカー層を有するシートを得た。次に、このアンカー層の上に、以下のインク受容層塗布液(乾燥塗布量30g/m)を塗布し、100℃、3分間の条件で乾燥し、インク受容層を形成した。得られた転写シートについて、膜の変形性及び切り残しを評価した結果、いずれも良好であった。
【0135】
(アンカー層塗布液)
カチオン性カーボネート系ウレタンエマルジョンD:92部
イソプロパノール : 8部
(インク受容層塗布液)
ポリアミド12粒子E :36部
ポリアミド6/12粒子F :13部
ポリアミド12粒子G : 2部
ポリウレタン系樹脂エマルジョンH: 3部
ポリエチレングリコールI : 6部
染料定着剤J : 5部
ポリウレタン樹脂粒子K :35部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、この基材に対して剥離可能な転写層とで構成されているシートであって、前記転写層が、離型剤を含む基材の上に形成され、かつヤング率210MPa以上であるとともに、前記基材を剥離した後の転写層の剥離面において、前記離型剤に対応する波長の吸光度が0.95以下である転写シート。
【請求項2】
離型剤に対応する波長の吸光度が0.8〜0.9である請求項1記載の転写シート。
【請求項3】
転写層と基材との剥離強度が200〜750mN/25mmである請求項1記載の転写シート。
【請求項4】
転写層のヤング率が250〜1000MPaである請求項1記載の転写シート。
【請求項5】
転写層が、基材の面に形成された接着層と、この接着層の上に形成された受像層とで構成されている請求項1記載の転写シート。
【請求項6】
離型剤がシリコーン化合物であり、接着層がシリコーン化合物を溶解可能な溶媒を含む溶液又はエマルジョンにより形成された請求項5記載の転写シート。
【請求項7】
受像層が、透明層及び非透明層から選択された少なくとも一種で構成されている請求項5記載の転写シート。
【請求項8】
カッティング工程を必要とする用途に用いられる請求項1記載の転写シート。
【請求項9】
インクジェット記録方式で画像を形成するために用いられる請求項1記載の転写シート。
【請求項10】
基材の上に転写層を構成する成分を含有するドープ液を塗布する塗布工程と、塗布したドープ液を乾燥する工程とを含む転写シートの製造方法であって、基材との剥離面を形成する転写層のドープ液を構成する溶媒の種類及び/又は前記ドープ液の乾燥温度を制御して請求項1記載の転写シートを製造する方法。
【請求項11】
基材の面に接着層を形成した後、この接着層の上に受像層を形成する転写シートの製造方法であって、接着層のドープ液を構成する溶媒として離型剤を膨潤又は溶解可能な溶媒を用いるとともに、このドープ液を前記溶媒の沸点よりも0〜30℃低い温度で乾燥する請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1記載の転写シートの転写層に画像を記録し、所望のサイズにカットした後、基材を転写層から剥離し、転写層と被転写体とを接触させて加熱して被転写体に転写し、記録画像を形成する方法。
【請求項13】
基材に含まれる離型剤を転写層に移行させることにより、請求項1記載の転写シートの剥離特性を改善する方法。

【公開番号】特開2007−223291(P2007−223291A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50393(P2006−50393)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】