説明

転圧車両における液剤タンクの構造

【課題】簡易な構成で給水口キャップおよびドレン口キャップの紛失や破損を防止できる転圧車両における液剤タンクの構造を提供する。
【解決手段】転圧車両1に搭載され、転圧輪3に散布する液剤を貯留し、上部に給水口キャップ8を取り付けた給水口6が形成され、下部にドレン口キャップ9を取り付けたドレン口7が形成された液剤タンク5の構造であって、給水口キャップ8とドレン口キャップ9とを、液剤タンク5の内部において、各キャップの取り外しを可能とする余長分を有するチェーン10により連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転圧車両における液剤タンクの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路等をアスファルト舗装する際に、転圧車両の転圧輪で舗装面の転圧を行うとアスファルト合材が転圧輪に付着する場合があり、付着したまま転圧を続けるとその付着物が舗装面の平坦性および平滑性を損ねるおそれがある。そこで、通常、転圧作業中に連続的、或いは間欠的に水やアスファルト付着防止剤等の液剤を転圧輪に散布することによりアスファルト合材の付着防止を図っている。なお、転圧車両における散布装置の一従来例が特許文献1に記載されている。
【0003】
転圧車両には、散布用の水(アスファルト付着防止剤等も含めて以降では総称して水という)を貯留する液剤タンクが搭載される。液剤タンクの上部には給水口キャップを取り付けた給水口が形成されている。また、冬季における水の凍結等を防ぐため、液剤タンクの下部にはドレン口キャップを取り付けたドレン口が形成されている。
【特許文献1】特開2000−257016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、給水時や排水時にそれぞれのキャップを外した際、キャップの専用置き場が無いことから、作業者はキャップを転圧車両の他の場所(座席等)に置いたり、地面に置く傾向にあり、その場合、付け忘れによるキャップの紛失や破損を招きやすいという問題がある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するために創案されたものであり、簡易な構成で給水口キャップおよびドレン口キャップの紛失や破損を防止できる転圧車両における液剤タンクの構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、転圧車両に搭載され、転圧輪に散布する液剤を貯留し、上部に給水口キャップを取り付けた給水口が形成され、下部にドレン口キャップを取り付けたドレン口が形成された液剤タンクの構造であって、前記給水口キャップと前記ドレン口キャップとを、前記液剤タンクの内部において、各キャップの取り外しを可能とする余長分を有する条体により連結したことを特徴とする転圧車両における液剤タンクの構造とした。
【0007】
この構造によれば、いずれのキャップを外した場合であっても、その外したキャップは液剤タンク内から延びる条体によって連結されていることから、キャップの紛失のおそれがなくなり、破損も生じにくくなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成で給水口キャップおよびドレン口キャップの紛失や破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は転圧車両の外観斜視図である。転圧車両1は機体2の下方前後に転圧輪3を備える。機体2の上部後方には凹状に形成された液剤タンク5が搭載されており、運転席4がこの液剤タンク5の凹部内に位置するように設置されている。液剤タンク5に貯留された液剤は、転圧作業中、図示しない散水装置を介して転圧輪3の転圧面に向けて連続的、或いは間欠的に散布される。
【0010】
液剤としては、単なる水、又は、鉱油からなるアスファルト付着防止剤、乳化剤を用いて鉱油と水を混合させたアスファルト付着防止剤などであり、作業条件、環境条件により適宜に選択されるものである。
【0011】
図2は液剤タンク5周りの側断面説明図である。液剤タンク5は、ブロー成型等によって成形された樹脂製のタンクであって、その上部には、上面に給水口6を有する円筒部5aが形成され、下部には、下面にドレン口7を有する円筒部5bが形成されている。円筒部5aの外周面には雄ねじ5cが形成されており、この雄ねじ5cに給水口キャップ8が螺合される。同様に、円筒部5bの下端周りの外周面には雄ねじ5dが形成され、この雄ねじ5dにドレン口キャップ9が螺合される。給水口キャップ8、ドレン口キャップ9はともに樹脂製である。
【0012】
給水口キャップ8とドレン口キャップ9とは、液剤タンク5の内部においてチェーン10により連結されている。このチェーン10が請求項に記載の「条体」に相当する。チェーン10としては防錆の観点から樹脂製が好ましい。
【0013】
給水口キャップ8、ドレン口キャップ9は前記したようにねじ式であるため、各キャップとチェーン10との連結部は、各キャップの回転によってチェーン10が共回りしない構造となっている。図2では、給水口キャップ8、ドレン口キャップ9の各内底面に円柱状の係止部8a、9aを形成し、これら係止部8a、9aにチェーン10の端部を係止部8a、9a回りに回転可能となるように取り付けた場合を示している。
【0014】
チェーン10の長さは、給水口キャップ8、ドレン口キャップ9の取り外しを可能とする余長分を有する長さである。
【0015】
図3において、(a)は給水口キャップ8を取り外した状態、(b)はドレン口キャップ9を取り外した状態を示しており、それぞれ給水口6、ドレン口7から前記余長分だけチェーン10が液剤タンク5の外部に露出し、各キャップがチェーン10の端部で垂れた状態として保持される。余長分の寸法は、給水口キャップ8、ドレン口キャップ9の両方を同時に取り外し可能とする程度であることが好ましく、数十センチ程度が良い。
【0016】
以上のように、給水口キャップ8とドレン口キャップ9とを、液剤タンク5の内部において、各キャップの取り外しを可能とする余長分を有するチェーン10により連結する構成とすれば、給水時に給水口キャップ8を外した場合や排水時にドレン口キャップ9を外した場合、各キャップは液剤タンク5内から延びるチェーン10によって連結されていることから、各キャップの紛失のおそれがなくなり、破損も生じにくくなる。作業者は、従来のように外したキャップの置き場所について考慮する必要がなくなり、迅速に給水作業や排水作業を行える。
【0017】
ここで、外したキャップを保持する他の構造としては、各キャップを個別にチェーン等で液剤タンク5に連結する方法、たとえば円筒部5aの根元部と給水口キャップ8の外面側とをチェーンで連結し、同様に円筒部5bの根元部とドレン口キャップ9の外面側とをチェーンで連結しておく方法が考えられる。しかし、この方法では、各キャップが給水口6、ドレン口7に取り付けられている場合であってもチェーンが液剤タンク5の外部に露出することとなるので、作業時にチェーンが作業者等の外部の突起物に引っ掛かりやすいという問題がある。
【0018】
これに対して本発明によれば、各キャップを給水口6、ドレン口7に取り付けた際には、チェーン10が液剤タンク5の内部に収容されることとなるので、前記引っ掛かりの問題も起きない。また、チェーン10も1本のみで済み、組み付けも容易となる。また、ドレン口キャップ9を取り付ける際は、給水口キャップ8を外して垂らした状態で行えば、重量バランスの関係から給水口キャップ8の重みによりチェーン10が上に張られた状態となり、手で持ったドレン口キャップ9が、ドレン口7に引き込まれる方向に引っ張られて、大変作業がやりやすくなる。
【0019】
以上、本発明について最適な実施形態を説明した。両キャップを連結する条体としてはチェーンに限られず、十分な撓み性を有する長尺状の部材であれば特に限定されるものではない。その他、本発明は図面に記載したものに限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲内で適宜に設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】転圧車両の外観斜視図である。
【図2】液剤タンク周りの側断面説明図である。
【図3】本発明の作用説明図であり、(a)は給水口キャップを取り外した状態、(b)はドレン口キャップを取り外した状態を示す。
【符号の説明】
【0021】
1 転圧車両
3 転圧輪
5 液剤タンク
6 給水口
7 ドレン口
8 給水口キャップ
9 ドレン口キャップ
10 チェーン(条体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転圧車両に搭載され、転圧輪に散布する液剤を貯留し、上部に給水口キャップを取り付けた給水口が形成され、下部にドレン口キャップを取り付けたドレン口が形成された液剤タンクの構造であって、
前記給水口キャップと前記ドレン口キャップとを、前記液剤タンクの内部において、各キャップの取り外しを可能とする余長分を有する条体により連結したことを特徴とする転圧車両における液剤タンクの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−40043(P2007−40043A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227473(P2005−227473)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000182384)酒井重工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】