説明

軸封構造

【課題】 二輪車の前輪側において左右で一対となる各フロントフォークにおける懸架バネのバネ力調整を一箇所に設けた装置類に対する操作で実現可能にする。
【解決手段】 シリンダ体と、上記シリンダ体内に出没可能に挿通されたロッド体と、上記シリンダ体と上記ロッド体との間に設けたオイルシールとからなり、上記オイルシールが上記シリンダ体に保持された芯金と、上記芯金から延設されたダストリップとを有し、上記ダストリップが上記ロッド体に摺接してこのロッド体に外部から付着する異物を掻き落す軸封構造において、上記ダストリップに首振り抑制手段を設け、当該首振り抑制手段を上記ダストリップに埋設されるインサートプレートで構成し、このインサートプレートが環状に形成の基端部と、この基端部に連設されて外部側に延設される上端側部とを有し、この上端側部が環状櫛刃状に形成されてなることを特徴とする軸封構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸封構造に関し、特に、繰り返しの相対移動を伴う装置類における軸封部への具現化に向く軸封構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
繰り返しの相対移動を伴う装置類における軸封部への具現化に向く軸封構造としては、これまでに種々の提案があるが、その中で、たとえば、特許文献1には、車両に搭載される油圧緩衝器における軸封部を構成するオイルシールに具現化される軸封構造が開示されている。
【0003】
すなわち、この特許文献1に従来例として開示のオイルシールは、シリンダ体と、このシリンダ体内に出没可能に挿通されるロッド体との軸封部を構成するもので、ゴム材からなりロッド体の外周に摺接するダストリップ部およびオイルリップ部を有すると共に、このダストリップ部およびオイルリップ部を一体的に保持する金属材からなる芯金を有してなる。
【0004】
ちなみに、芯金は、座金状に形成されて内周側端部にほぼ筒状に一体形成されるダストリップ部およびオイルリップ部を保持し、外周側部がシリンダ体側に固定的に挟持される。
【0005】
それゆえ、このオイルシールにあっては、シリンダ体に対するロッド体の出没の際に、すなわち、シリンダ体とロッド体との間における相対移動の際に、シリンダ体内から突出するロッド体の外周に付着する潤滑油膜をオイルリップ部で掻き落してシリンダ体内に残し、ロッド体の外周に付着する外部からの異物たるダストをダストリップ部で掻き落してシリンダ体内への侵入を阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001‐165326公報(明細書中の段落0002乃至同0010,図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の提案にあっては、オイルシールにおける基本動作に何等の不具合はないが、油圧緩衝器などのダスト雰囲気にあることが多い装置類にあっては、ダストによる悪影響が完全には払拭されないと指摘される可能性がある。
【0008】
すなわち、図6は、上記したオイルシールにおけるダストリップ部の挙動を示すが、この図6(A)に示す静止時に、ロッド体2の外周に言わば設定通りの高さHで接触するオイルシール1におけるダストリップ部11は、ロッド体2が図示しないシリンダ体内から突出するとき、図6(B)に示すように、ロッド体2の動きに追随して、尖端部11aが上方に伸ばされ(H+α)ながら径方向に拡径するように変形する。
【0009】
そして、この上方に伸ばされながら径方向に拡径するように変形した尖端部11aは、ロッド体2が反転してシリンダ体内に没入するときに、図6(C)に示すように、同じくロッド体2の動きに追随して、下方に潰され(H−α)ながら縮径傾向に変形する。
【0010】
つまり、シリンダ体に対してロッド体2が出没を繰り返すときには、オイルシール1におけるダストリップ部11の尖端部11aが径方向に拡開されたり収縮されたりして、いわゆる首振り運動することが確認された。
【0011】
このことからすると、図6(B)中に示すように、拡開した尖端部11aとロッド体2との間に異物たるダストDが侵入する事態になると、このダストDは、ロッド体2がシリンダ体内に没入するときに、図6(C)に示すように尖端部11aとロッド体2との間に嵌まり込み、ダストリップ部11の内周面にいわゆる噛み込み、それゆえ、このダストリップ部11の内周面が痛められ、あるいは、ロッド体2の外周面が傷付けられ、軸封部における所定のシール性が低下される不具合を招く可能性がある。
【0012】
そこで、この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、たとえば、車両に搭載される油圧緩衝器におけるシリンダ体とロッド体との間の軸封部を構成するオイルシールに具現化され、その油圧緩衝器の汎用性の向上を期待するのに最適となる軸封構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するために、この発明による軸封構造の構成を、シリンダ体と、上記シリンダ体内に出没可能に挿通されたロッド体と、上記シリンダ体と上記ロッド体との間に設けたオイルシールとからなり、上記オイルシールが上記シリンダ体に保持された芯金と、上記芯金から延設されたダストリップとを有し、上記ダストリップが上記ロッド体に摺接してこのロッド体に外部から付着する異物を掻き落す軸封構造において、上記ダストリップに首振り抑制手段を設け、当該首振り抑制手段を上記ダストリップに埋設されるインサートプレートで構成し、このインサートプレートが環状に形成の基端部と、この基端部に連設されて外部側に延設される上端側部とを有し、この上端側部が環状櫛刃状に形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明の軸封構造にあっては、首振り抑制手段がピストン体とロッド体との間における相対移動時にロッド体に摺接するダストリップの尖端部における径方向の動きを抑制するから、ダストリップの尖端部がいたずらに径方向に拡開したり収縮したりしなくなる。
【0015】
その結果、ダストリップとロッド体との間に異物が侵入し難くなり、異物の侵入によるダストリップの傷付きやロッド体の傷付きが発現され難くなり、所定のシール性を低下させない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】参考例の発明による軸封構造を具現化するオイルシールの配設状態を示す部分縦断面図である。
【図2】図1のオイルシールを示す半截図で、(A)は、平面図、(B)は、(A)中のX‐X線位置で示す縦断面図である。
【図3】他の参考例によるオイルシールを図2(B)と同様に示す図である。
【図4】本発明の実施形態を示し、(A),(C)は、オイルシールを示す半截縦断面図で、(B)は、インサートプレートを示す平面図である。
【図5】他の参考例によるオイルシールを図3と同様に示す図である。
【図6】従来のオイルシールにおけるダストリップ部を拡大して示す部分縦断面図であって、(A)は、静止時状態を示し、(B)は、尖端部が拡径された状態を示し、(C)は、尖端部が縮径された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図示した参考例に基づいて、この発明を説明するが、図示するところでは、この発明による軸封構造が筒型に形成の油圧緩衝器におけるシリンダ体のヘッド端部に配設のオイルシールに具現化される。
【0018】
すなわち、先ず、油圧緩衝器は、たとえば、車両における四輪各部に配設されて下端部で懸架する車輪に入力される路面振動を吸収するもので、図1に示すところでは、下端側部材とされてこの発明に言う一方側とされるシリンダ体3内に上端側部材とされてこの発明に言う他方側とされるロッド体2が出没可能に挿通されて伸縮可能とされてなる。
【0019】
そして、この油圧緩衝器にあって、図示しないが、シリンダ体3は、たとえば、ナックルブラケットなどの連結部材を介して車輪を枢支する車両における車軸側に連結され、ロッド体2は、たとえば、インシュレーターなどの弾性連結機構の配在下に車両における車体側に連結されて、シリンダ体3に対して出没可能とされる。
【0020】
そしてまた、この油圧緩衝器にあっては、シリンダ体3に対してロッド体2が出没するとき、同じく図示しないが、たとえば、シリンダ体3内に収装されてロッド体2に連結されるピストン部が有する減衰手段で所定の減衰作用を発現して車両における乗り心地を改善する。
【0021】
ちなみに、油圧緩衝器は、この発明を具現化する上で、同じく図示しないが、シリンダ体3内に気液分離構造に形成されてエアバネ力を発揮する気室を有する単筒型に形成され、あるいは、シリンダ体3の外に外筒を配設して油面を境にする気室を形成するリザーバを有する複筒型に形成されるいずれであっても良い。
【0022】
一方、この発明による軸封構造を具現化するオイルシール1は、図1に示すように、一方側たるシリンダ体3に固定的に保持される基部たる金属材からなる芯金12と、この芯金12に保持されながら対向する他方側たるロッド体2に摺接してこのロッド体2に外部から付着する異物たるダストD(図6参照)を掻き落す外部側リップ部たるゴム材からなるダストリップ部11とを有してなる。
【0023】
このとき、このオイルシール1は、円筒体からなるシリンダ体3の内側に収装されて、軸芯部に丸棒からなるロッド体2を貫通させる概ね環状に形成されるから、基部たる芯金12も軸芯部に孔を有する座金状に形成される。
【0024】
そして、この座金状に形成の芯金12の外周側部がシリンダ体3の上端部たる折り曲げ端部3aと図示しない下方のロッドガイドとの間に挟持されて固定的に保持される。
【0025】
そしてまた、この芯金12の内周側端部に上記のダストリップ部11を有すると共に、同じくゴム材からなる下方の内部側リップ部たるオイルリップ部13を接着などで一体に有し、このダストリップ部11とオイルリップ部13とが一体となって筒状をなし、内側にロッド体2を摺動可能に貫通させる。
【0026】
さらに、オイルリップ部13は、ダストリップ部11における尖端11aに相当してロッド体2の外周に摺接する尖端部13aを有し、この尖端部13aは、シリンダ体3内からロッド体2が抜け出るようになって突出するとき、このロッド体2の外周に付着する潤滑油膜(図示せず)を掻き落してシリンダ体3内に残留させる、すなわち、シリンダ体3の外部に漏出させない機能を果す。
【0027】
ちなみに、オイルリップ部13の外周には、多くの場合に、ガータースプリングSが巻装されて、このオイルリップ部13におけるロッド体2に対する締め代が保障されるが、このガータースプリングSについては、これがダストリップ部11の外周にも巻装されて、ダストリップ部11におけるロッド体2に対する締め代が保障されることもある。
【0028】
また、上記のダストリップ部11およびオイルリップ部13の成形の際には、基部12の外周側端部に外周シール部14が、また、基部12の図中で下面となる裏面にチェック弁部15が併せて一体に形成される。
【0029】
そして、外周シール部14は、このオイルシール1とシリンダ体3との間におけるいわゆる漏れを阻止し、チェック弁部15は、図示しないロッドガイドの上端に下端を接触させていわゆるリザーバからの作動流体たる作動油がシリンダ体3内に逆流することを阻止する所定のチェック弁機能を発揮する。
【0030】
一方、ダストリップ部11における尖端部11aは、前記したところでもあるが、シリンダ体3内にロッド体2が没入する際に、シリンダ体3内から突出しているロッド体2の外周に付着するダストDを掻き落してこのダストリップ部11の内側に侵入させない機能を果す。
【0031】
そして、この発明におけるオイルシール1にあって、ダストリップ部11は、図2にも示すように、首振り抑制手段4を有し、この首振り抑制手段4は、シリンダ体3とロッド体2との間における相対移動時にロッド体2に摺接するダストリップ部11における尖端部11aの膨縮、すなわち、径方向の動きたるいわゆる首振り運動を抑制する。
【0032】
つまり、ダストリップ部11がこの種の首振り抑制手段4を有しない従前の場合には、前記したように、ロッド体2がシリンダ体3内から突出するときに、ロッド体2の動きに追随して、ダストリップ部11における尖端部11aが上方に伸ばされながら拡径傾向に変形する(図6(B)参照)。
【0033】
そして、この上方に伸ばされながら径方向に拡径するように変形した尖端部11aは、ロッド体2が反転してシリンダ体3内に没入するときに、同じくロッド体2の動きに追随して、下方に潰されながら縮径傾向に変形する(図6(C)参照)。
【0034】
すなわち、シリンダ体3に対してロッド体2が出没を繰り返すときに、オイルシール1におけるダストリップ部11の尖端部11aが径方向に拡開されたり収縮されたり膨縮し、併せて、このときに、ロッド体2の出没方向たる軸線方向に伸縮することから、首振り運動をすることになる。
【0035】
そして、この首振り運動が惹き起こされるだけなら、何等問題はないが、同じく前記したように、オイルシール1がダスト雰囲気にあるときに、ダストDが上記した拡開する尖端部11aとロッド体2との間を介してダストリップ部11の内周とロッド体2の外周との間に入り込み(図6(C)参照)、ダストリップ部11の内周面を痛め、あるいは、ロッド体2の外周面を傷付け、オイルシール1による所定のシール性を低下させる。
【0036】
そこで、この発明では、オイルシール1におけるダストリップ部11の尖端部11aが径方向に膨縮を繰り返す首振り運動を抑制するために首振り抑制手段4を有する。
【0037】
ちなみに、ここに言う首振り運動の抑制とは、上記したダストリップ部11の尖端部11aにおける膨縮を完全に阻止する意味ではなく、尖端部11aが簡単には大きく膨縮し得ない、つまり、膨縮し難くするの意味である。
【0038】
ちなみに、首振り運動の抑制が尖端部11aにおける膨縮を完全に阻止する意味とされる場合には、尖端部11aにおける変形を阻止することになり、いわゆる余裕がなくなる分、オイルシール1のロッド体2に対する摺動摩擦が非常に大きくなり、好ましくない事態になる。
【0039】
以上のような観点から、この発明における首振り抑制手段4は、先ず、一例としての図1、すなわち、図2に示すところでは、言うなれば浅い角C字状の断面(図2(B)参照)を有するように形成されたキャップ部材41を有してなる。
【0040】
そして、このキャップ部材41は、基本的には、ダストリップ部11を形成するゴム材より硬い材質の材料からなり、たとえば、ダストリップ部11を形成するゴム材より硬いゴム材からなり、あるいは、硬質樹脂材からなり、さらには、金属材からなるとする。
【0041】
そしてまた、キャップ部材41がゴム材からなる場合には、ダストリップ部11と同化させ易くなり、硬質樹脂材からなる場合には、部品コストを安価にし易くなり、金属材からなる場合には、耐久性を保障し易くなる。
【0042】
また、このキャップ部材41は、図2(B)に示すように、ダストリップ部11における尖端部11aを有する図中での上端部たる端部と、この端部に連続してダストリップ部11における図中で左側部となる外部側傾斜部とを周方向に被覆するように配設される。
【0043】
このとき、このキャップ部材41は、図中での上端部および下端部にフック部41a,41bを有し、このフック部41a,41bは、これに相応するようにダストリップ部11に形成された溝(符示せず)内に嵌挿されて、このダストリップ部11からの脱落が阻止されている。
【0044】
一方、このキャップ部材41は、ダストリップ部11にいわゆる後付けされるから、図2(A)に示すように、割り41cを有するCリング状に形成されて、ダストリップ部11への装着を容易にしている。
【0045】
ちなみに、このキャップ部材41が割り41cを有しない環状に形成されても、ダストリップ部11を強制的に変形させることでこのダストリップ部11に装着することは可能になるが、この場合には、ダストリップ部11をいたずらに変形させて疲労を与えたり傷付けたりする可能性が大きくなるので好ましくない。
【0046】
そして、このキャップ部材41にあっては、ダストリップ部11における上端を被覆する天端部に周方向に適宜の間隔で形成された切り欠き部41dを有し、ダストリップ部11における端部の変形阻止をいたずらに増長しないように配慮している。
【0047】
すなわち、キャップ部材41が切り欠き部41dを周方向に適宜の間隔で有する場合には、このキャップ部材41が拡径方向に変形することを許容するもので、たとえば、シリンダ体3に対してロッド体2が傾斜した状態で出没する場合でも、ダストリップ部11における端部にいわゆる無理な横力を作用させないようにするためにも、キャップ部材41が拡径方向に変形するのが好ましい。
【0048】
なお、このキャップ部材41にあって、割り41cは、いわゆる上端から下端に至る全範囲を断ち切るようにして形成されるが、切り欠き部41dは、フック部41aを残して天端部のみを断ち切るようにして、あるいは、天端部に加えて外周部およびフック部41bをも断ち切るようにして形成され、さらには、これに代えて、フック部41bを残して外周部のみを断ち切るようにして、あるいは、外周部に加えて天端部およびフック部41aをも断ち切るようにして形成される。
【0049】
つまり、切り欠き部41dの形成にあっては、天端部および外周部が断ち切られるのはもちろんであるが、フック部41a,41bについては、いずれか一方が常に残される。
【0050】
ちなみに、図2(A)に示すところでは、切り欠き部41dは、フック部41aを有するが、フック部41bを有しない態様に形成されている。
【0051】
そして、この割り41cおよび切り欠き部41dの態様は、その都度説明しないが、後述する図3に示す各実施形態の首振り抑制手段4を構成するキャップ部材42,43,44,45において、同様に具現化される。
【0052】
それゆえ、以上のように形成されたオイルシール1、すなわち、この発明による軸封構造にあっては、ダストリップ部11が首振り抑制手段4を有するから、ダストリップ部11の尖端部11aにおける径方向の動きたる首振り運動が抑制される傾向になり、この尖端部11aが径方向にいたずらに拡開せずして、ダストリップ部11とこれが摺接する他方側たるロッド体2との間に異物たるダストDを侵入させ難くする。
【0053】
そして、ダストリップ部11とロッド体2との間にダストDを侵入させ難くするから、ダストDの侵入でダストリップ部11を傷めたりロッド体2を傷付けたりし難くして、所定のシール性を保障する。
【0054】
図3乃至図5は、この発明による軸封構造を具現化するオイルシール1の他の参考例、すなわち、ダストリップ部11が有する首振り抑制手段4の他の実施形態を示すが、以下には、これについて説明する。
【0055】
先ず、図3に示すところは、首振り抑制手段4を構成する前記した図2に示すキャップ部材41が変形された例を示し、前記したキャップ部材41がダストリップ部11の上端部を被覆するように配設されるに代えて、この図3(A)に示すキャップ部材42は、ダストリップ部11の上端部に埋設されるように配設される。
【0056】
このとき、キャップ部材42が有するフック部42a,42bが前記したキャップ部材41の場合と同様に、ダストリップ部11に形成された溝(符示せず)内に嵌挿されて、このキャップ部材42のダストリップ部11からの脱落が阻止されている。
【0057】
これによって、キャップ部材42がダストリップ部11から剥がれ難くなるのはもちろんだが、キャップ部材42がダストリップ部11における上端部に突出せずして外観を良くする。
【0058】
ちなみに、このキャップ部材42にあっても、図示しないが、割り(図2中の符号41c参照)を有するCリング状に形成され、また、天端部にあるいは天端部から外周部にかけて周方向に適宜の間隔で形成される切り欠き部(図2中の符号41d参照)を有する。
【0059】
なお、フック部がダストリップ部11に形成された溝内に嵌挿されて、キャップ部材のダストリップ部11からの脱落を阻止することに関しては、後述するキャップ部材43,44,45においても同様である。
【0060】
図3(B),(C)および(D)に示すところは、上記したキャップ部材42に代えて、その構成を簡単にするもので、図3(B)に示すキャップ部材43は、ダストリップ部11の図中で左側部となる外部側傾斜部にフック部43aを有して埋設状態に展設され、ダストリップ部11の上端部から剥がれ難くする。
【0061】
そして、このキャップ部材43にあっては、フック部43aを有すると共に割り(図示せず)や切り欠き部(図示せず)を有し、全体的な観点からすれば、上記したキャップ部材42に比較して、素材量を少なくして加工数を減らす点で有利となる。
【0062】
図3(C)に示すキャップ部材44、および、図3(D)に示すキャップ部材45は、共に、ダストリップ部11の図中での上端部たる端部にフック部44a,45aを有して埋設され、上記のキャップ部材43と同様に、ダストリップ部11の上端部から剥がれ難くする。
【0063】
このキャップ部材44,45にあっても、上記したキャップ部材43と同様に、前記したキャップ部材42に比較して、素材量を少なくして加工数を減らす点で有利となる。
【0064】
ちなみに、キャップ部材44,45にあっても、ダストリップ部11の図中での上端部たる端部に配設されるから、割りを有すると共に、切り欠き部を有するのが良い。
【0065】
一方、図3(D)に示すキャップ部材45にあっては、フック部45aがダストリップ部11に言わば軸線方向に沿うように設けられるから、前記したキャップ部材44にあって、フック部44aが言わば天端部に直角に設けられる場合に比較して、ダストリップ部11の上端部からより剥がれ難くなる点で有利となる。
【0066】
ちなみに、前記のキャップ部材44におけるフック部44aを嵌挿させるダストリップ部11における端部に形成される溝(符示せず)については、キャップ部材45におけるフック部45aを嵌挿させるダストリップ部11における端部に形成される溝(符示せず)に比較して、形成が容易になる。
【0067】
本発明における図4の実施の形態に示すところは、首振り抑制手段4がダストリップ部11に埋設されるインサートプレート46を有してなり、このインサートプレート46は、(B)に示すように、環状に形成される基端部46aと、この基端部46aに連設されて櫛刃状に形成される上端側部46bとを有してなる。
【0068】
ちなみに、基端部46aは、(C)に示すように、下端部を芯金12の上端に接触させて担持され、上端部をダストリップ部11の傾斜する軸線方向に起立させ、上端側部46bは、(A)に示すように、ダストリップ部11の傾斜する軸線方向に沿って延びる。
【0069】
それゆえ、このインサートプレート46にあって、上端側部46bは、基端部46aに下端が支えられた状態で上端をいわゆる起こすように変形して、ダストリップ部11の上端部が拡開するように変形することを許容する。
【0070】
そして、このインサートプレート46を有する首振り抑制手段4にあっては、その配設状態を外観されないから、従前のオイルシール1における外観と同じ外観を維持できる利点がある。
【0071】
図5に示すところは、オイルシール1の軸芯部にロッド体2が貫通された後でも、オイルシール1に首振り抑制手段4を設けることを可能にするもので、前記した首振り抑制手段4がオイルシール1の軸芯部にロッド体2を挿通させない前に設けられる為に、ロッド体2を挿通させる際には、締め代に相当する寸法の拡径が必須とされる点で異なる。
【0072】
そして、この首振り抑制手段4は、カバー部材47,48あるいは49を有してなり、それぞれがダストリップ部11に接着材利用で定着され、(A)に示すカバー部材47にあっては、前記したキャップ部材41(図2(B)参照)に類似するフック部41a,41bを有しない形状に形成され、(B)に示すカバー部材48は、(A)に示すカバー部材47に比較して、天端部のみからなって構造が簡素化され、(C)に示すカバー部材49にあっては、極端に素材を少なくして、汎用性の向上を大いに期待できる。
【0073】
いずれの参考例及び図4の実施形態にあっても、前記した割りや切り欠き部が不要なのはもちろんであるが、カバー部材47にあっては、ダストリップ部11における首振り抑制手段4としての機能を重視するところから、内周側端とロッド体2との間に隙間を有しながらダストリップ部11の上端部を全体的に覆い包むように形成されている。
【0074】
それに対して、カバー部材48にあっては、ダストリップ部11における首振り抑制手段4としての構成に加えて、内周側端がロッド体2の外周に軽接触して、スクレーパー機能の発揮を可能にし、ロッド体2の外周に付着する多量のダストDを可能な限りに掻き落して、ダストリップ部11における負担を軽減するように配慮している。
【0075】
上記したところに対して、カバー部材49は、ダストリップ部11に首振り抑制手段4を設けるのについて、可能な限りのコスト低廉化を可能にするもので、言わば箍を嵌めるように、ダストリップ部11の外周側部に配設される。
【0076】
このとき、このカバー部材49は、環状に形成されて割りを有しないのが理想的であるが、割りを有して、ダストリップ部11の、特に、上端部の拡径を許容するように構成されても良い。
【0077】
ちなみに、このカバー部材49が割りを有して縮径可能とされる場合には、外観上、ダストリップ部11がガータースプリングS(図1参照)を有するのと同じになる。
【0078】
しかし、ガータースプリングSは、ダストリップ部11のロッド体2に対する締め代を設定するもので、このことと比較すると、このカバー部材49は、ダストリップ部11におけるロッド体2に対する締め代を設定するのではなく、ダストリップ部11における尖端部11aの首振り運動を抑制するもので、明らかに機能上の差異がある。
【0079】
それゆえ、以上のように形成されたオイルシール1たるこの発明による軸封構造にあっては、一方側に保持される外部側リップ部が他方側に付着などする外部からの異物を掻き落していわゆる内部への侵入を阻止するのはもちろんのこと、外部側リップ部が一方側と他方側との間における相対移動時に他方側に摺接する尖端部における径方向の動きを抑制する首振り抑制手段を有してなるから、外部側リップ部における尖端部が径方向に拡開したり収縮したりせずして、外部側リップ部とこれが摺接する他方側との間に異物を侵入させない。
【0080】
その結果、外部側リップ部と他方側との間に異物が侵入しないから、異物によって外部側リップ部が痛められたり、他方側が傷付けられたりせずして、所定のシール性が低下されなくなり、たとえば、油圧緩衝器における耐久性を向上させ、その汎用性の向上を期待するのに最適となる。
【0081】
前記したところは、この発明による軸封構造が油圧緩衝器におけるシリンダ体3のヘッド端部に配設されるオイルシール1に具現化されるとしたが、このオイルシール1自体については、これが油圧シリンダにおけるシリンダ体のヘッド端部に配設される、すなわち、この発明の軸封構造が油圧シリンダに具現化されるとしても良いことはもちろんである。
【0082】
そして、前記したところでは、この発明による軸封構造を具現化する油圧緩衝器が車両に搭載されるとしたが、この発明が意図するところからすると、油圧緩衝器が免震装置を構成するものであっても良く、また、その他の相対移動を伴う装置類に利用されるダンパとされても良い。
【産業上の利用可能性】
【0083】
たとえば、車両に搭載される油圧緩衝器におけるシリンダ体とロッド体との間の軸封部を構成するオイルシールへの具現化に向く。
【符号の説明】
【0084】
1 オイルシール
2 他方側たるロッド体
3 一方側たるシリンダ体
4 首振り抑制手段
11 外部側リップ部たるダストリップ部
11a 尖端部
12 基部たる芯金
41,42,43,44,45 キャップ部材
41c 割り
41d 切り欠き部
46 インサートプレート
46a 基端部
46b 上端側部
47,48,49 カバー部材
D 異物たるダスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ体と、上記シリンダ体内に出没可能に挿通されたロッド体と、上記シリンダ体と上記ロッド体との間に設けたオイルシールとからなり、上記オイルシールが上記シリンダ体に保持された芯金と、上記芯金から延設されたダストリップとを有し、上記ダストリップが上記ロッド体に摺接してこのロッド体に外部から付着する異物を掻き落す軸封構造において、上記ダストリップに首振り抑制手段を設け、当該首振り抑制手段を上記ダストリップに埋設されるインサートプレートで構成し、このインサートプレートが環状に形成の基端部と、この基端部に連設されて外部側に延設される上端側部とを有し、この上端側部が環状櫛刃状に形成されてなることを特徴とする軸封構造。
【請求項2】
上記インサートメタルの上記基端部が上記芯金の上端に接触して担持されている請求項1に記載の軸封構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−61077(P2013−61077A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−282354(P2012−282354)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2009−116460(P2009−116460)の分割
【原出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】