説明

軽油組成物

【課題】酸化安定性に優れた低硫黄分軽油組成物を提供する。
【解決手段】(a)硫黄分の含有量が10質量ppm以下であり、(b)引火点が60℃以上であり、(c)10%残油の残留炭素分の含有量が0.03質量%以下であり、(d)蒸留性状において、95%留出温度と初留点との温度差が少なくとも120℃以上であり、(e)二環以上の多環芳香族濃度が6容量%以下で、かつ(f)次の式(1);X=0.064×IBP+0.08×T50−0.131×T95−0.035×PAH+9.66(ここで、IBP;蒸留性状における初留点(℃)T50;蒸留性状における50%留出温度(℃)T95;蒸留性状における95%留出温度(℃)PAH;二環以上の多環芳香族含有量(容量%))で表される軽油酸化パラメータXが零以下であることを特徴とする軽油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽油組成物に関するものであり、さらに詳しくは、ディーゼルエンジン用燃料油として要求される品質性状のすべてを充足し、特に、酸化安定性に優れた軽油組成物および軽油組成物の品質管理方法、特に、酸化安定性の判定方法に関するものである。また、本発明によれば、バイオディーゼル燃料油のベース燃料油として適した軽油組成物を提供することもできる。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル車から排出されるNOx及び粒子状物質(PM)の低減を追求することは、現在及び将来にわたって環境保全対策上不可欠な事項である。
しかしながら、自動車用ディーゼル燃料として使用される軽油留分には元来硫黄分が含有し、かかる硫黄分が燃焼により排ガス中に生成する粒子状物質(PM)の原因物質とされていることから、硫黄分を低減させることが要求され、軽油留分の水素化脱硫が一般に行われている。そして、硫黄分をさらに低含有量に低減させるために水素化処理条件の厳しい深度水素化脱硫が行われている。
【0003】
しかしながら、かかる水素化処理条件の苛酷な深度水素化脱硫によれば、軽油留分中の硫黄分の除去のみならず、軽油留分中に元来から含有されている酸化防止作用を有する天然物質、例えばフェノール系化合物、アミン系化合物等も同時に除去されるため、深度水素化脱硫により得られる軽油留分では硫黄分は除去されるものの、酸化安定性が低下し、酸化により変色、沈殿物の生成、過酸化物等が生じ商品価値を低下させるに至る。
【0004】
また、軽油組成物を主成分とするバイオディーゼル燃料、例えば、FAME混合軽油にとっても、酸化劣化により、スラッジ及び酸を発生し、スラッジは自動車の燃料ポンプ及びインジェクターの摺動不良を起こし、酸は金属部品の腐食を起こすことなどから、酸化安定性は特に重要な品質管理項目とされている。
【0005】
従って、軽油組成物の酸化安定性は、前記の如き状況から今後の軽油組成物の品質評価指標として極めて重要なものであることから、かかる状況下にあって、軽油組成物の酸化安定性を改良するための開発が行われており、各種の提案がなされている。
【0006】
例えば、特許文献1によれば、硫黄分が5質量ppm以下、蒸留性状において留出温度220℃以下の留出量が8容量%以下、1環芳香族が1.0〜17.0容量%であり、留出温度220〜340℃以上の留分を30℃毎に5個に分画した留分の留出量の割合と1環〜3環以上の芳香族含有量の割合を要素とするパラメータを充足する軽油組成物が提案されている。
【0007】
また、特許文献2によれば、硫黄分が10質量%以下、炭素数10以上のスチレン類化合物の含有量の合計が0.15質量%以下、炭素数15以上のジエン類化合物含有量が合計で2.00質量%以下であり、スチレン含有量、ジエン含有量、2環および3環の縮合多環芳香族炭化水素の各含有量を要素とするパラメータを満たす軽油組成物が提案されている。
【0008】
さらに、特許文献3によれば、硫黄分の含有量が50質量ppm以下であり、ナフテンベンゼン類とフルオレン類の含有量の和が8.0容量%以下であり、ナフタレン類の含有量が0.5容量%以上3.0容量%以下であり、フルオレン類とナフテンベンゼン類の含有量から導いたパラメータにより求めた酸化安定度指数を満たす軽油組成物が提案されている。
【0009】
かかる開発状況からみて、従来から軽油組成物の酸化安定性の改良のために検討されてきている点は、酸化防止剤を添加することにより酸化安定性の改善を図ることに加え、軽油組成物の組成、成分、性状等に着目した点にあるが、酸化防止剤の添加による対処によれば、その効果を確認するために必要な酸化安定度試験に1〜2日間を要するため、酸化防止剤の適切な添加量の把握および効果の確認に長時間を要するという難点がある。
【0010】
また、軽油組成物の組成、成分、性状等に着目した様々な品質管理によれば、例えば、スチレン量、ジエン量、フルオレン量等の軽油中の特殊成分の分析に多くの時間を要し、また、かかる化合物については含有量の制御が非常に困難であるという問題が指摘されている。
【0011】
かかる状況下において、簡便な手段で評価することが可能であり、かかる手段を用いて提供できる酸化安定性に優れた軽油組成物の開発が切望されてきた。
【特許文献1】特開2008−7675号公報
【特許文献2】特開2008−144156号公報
【特許文献3】特開2006−137922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の課題は、従来の酸化安定性を改良した軽油組成物の開発状況に鑑み、測定容易な軽油の性状を用いる手段により酸化安定性を予測し、適格な組成を調整することにより酸化安定性に優れ、ディーゼル車に使用した場合に粒子状物質(PM)の排出量が低減された環境保全対応型の軽油組成物を提供する点にある。
【0013】
また、本発明の、第二の課題は、軽油組成物の酸化安定性の迅速な判定方法を提供する点にあり、判定結果に基いて酸化安定性の改善方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明者らは、前記の本発明の課題を解決するために、軽油の酸化安定性と軽油性状との相関について、鋭意検討を重ねたところ、軽油の酸化安定性は、軽油の蒸留性状および多環芳香族化合物の濃度に依存することに着目し、蒸留性状において、特定の沸点範囲を有し、かつ、多環芳香族化合物の濃度の特定の条件を充足することにより酸化安定性に優れた軽油組成物を提供することができることを見出し、かかる知見に基づいて本発明の完成に想到した。
【0015】
かくして、本発明によれば、
請求項1において、
(a)硫黄分の含有量が10質量ppm以下であり、
(b)引火点が60℃以上であり、
(c)10%残油の残留炭素分の含有量が0.03質量%以下であり、
(d)蒸留性状において、95%留出温度と初留点との温度差が120℃以上であって、
(e)二環以上の多環芳香族濃度が6容量%以下で かつ
(e)次の式(1);
X=0.064×IBP+0.08×T50−0.131×T95−0.035×PAH+9.66 ・・・・・(1)
(ここで、IBP;蒸留性状における初留点(℃)
50;蒸留性状における50%留出温度(℃)
95;蒸留性状における95%留出温度(℃)
PAH;二環以上の多環芳香族含有量(容量%))
で表される軽油酸化パラメータXが零以下である
ことを特徴とする軽油組成物が提供される。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、
前記蒸留性状において、95%留出温度と初留点との温度差が140℃以上であり、
初留点が190℃以下であり、
95%留出温度が330℃以上であり、
終点が360℃以下である請求項1に記載の軽油組成物が提供される。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、
(a)硫黄分の含有量が10質量ppm以下であり、
(b)引火点が60℃以上であり、
(c)10%残油の残留炭素分の含有量が0.03質量%以下であり、
(d)蒸留性状において、95%留出温度と初留点との温度差が160℃以下であって、かつ
(e)二環以上の多環芳香族濃度が6容量%以下で、かつ
(f)次の式(1);
X=0.064×IBP+0.08×T50−0.131×T95−0.035×PAH+9.66 ・・・・・(1)
(ここで、IBP;蒸留性状における初留点(℃)
50;蒸留性状における50%留出温度(℃)
95;蒸留性状における95%留出温度(℃)
PAH;二環以上の多環芳香族含有量(容量%))
で表される軽油酸化パラメータXが零を超える軽油組成物に酸化防止剤を加速酸化試験(115℃、16時間、酸素吹き込み量3リットル/分)前後の全酸価増加分(ΔTAN)が0.12mgKOH/g以下になるように配合してなることを特徴とする軽油組成物が提供される。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、
前記酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である請求項3に記載の軽油組成物が提供される。
【0019】
また、請求項5に係る発明によれば、
前記軽油組成物の用途が、バイオディーゼル燃料組成物の主成分である請求項1ないし4のいずれかの1項記載の軽油組成物が提供される。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、
軽油組成物の酸化安定性の品質評価において、
(a)硫黄分の含有量が10質量ppm以下であり、(b)引火点が60℃以上であり、(c)10%残油の残留炭素分が0.03質量%以下であり、(d)蒸留性状において、95%留出温度と初留点との温度差が120℃以上であり、(e)二環以上の多環芳香族濃度が6容量%以下である軽油組成物について、
次の式(1);
X=0.064×IBP+0.08×T50−0.131×T95−0.035×PAH+9.66 (1)
(ここで、IBP;蒸留性状における初留点(℃)
50;蒸留性状における50%留出温度(℃)
EP;蒸留性状における終点(℃)
PAH;二環以上の多環芳香族含有量(容量%))
で表される軽油酸化パラメータXを用いて算出した値を基準値(零)と比較して酸化安定性を判定することを特徴とする軽油組成物の酸化安定性の判定方法が提供される。
【0021】
また、請求項7に係る発明によれば、
請求項4の軽油組成物の酸化安定性の判定方法を用いることにより得られた軽油酸化パラメータXが零を超える軽油組成物に対し酸化防止剤を前記軽油組成物の加速酸化試験(115℃、16時間、酸素吹き込み量3リットル/分)前後の全酸価増加分(ΔTAN)が0.12mgKOH/g以下になるように配合することを特徴とする軽油組成物の酸化安定性の改善方法が提供される。
【0022】
また、請求項8に係る発明によれば、
前記酸化防止剤がフェノール類またはアミン類からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である請求項7に記載された酸化安定性の改善方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1に係る発明によれば、式(1)で表される軽油酸化パラメータXが零以下であり、要素(a)〜(e)を満たすことにより、特に、蒸留性状において95%留出温度と初留点との温度差が少なくとも120℃であることの要件を満たすことにより酸化安定性に著しく優れた軽油組成物を提供することができる。
【0024】
さらに、請求項6に係る発明によれば、式(1)で表される軽油酸化パラメータXを用いることにより、比較的簡便な方法により酸化安定性を評価することができ、酸化安定性の高い軽油製品を供給することができる。
【0025】
また、請求項7に係る発明によれば、品質評価の結果、軽油酸化パラメータXの値が基準値の零を超える場合には酸化防止剤の過不足のない最適有効量を配合することができ、酸化防止剤の作用を最大限に発揮させることができる。また、軽油酸化パラメータXを用いることにより、迅速に酸化安定性の判定が可能であり、酸化安定性に優れた軽油組成物の生産管理に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明に係る軽油組成物はJIS K 2204の規格に合格するものであり、特に特徴を有する点について以下に説明する。
【0027】
本発明に係る軽油組成物は、硫黄分の含有量が10質量ppm以下に低減されたものである。好ましくは7質量ppm以下、さらに好ましくは3質量ppm以下のものである。硫黄分の含有量が10質量ppmを超えると粒子状物質(PM)の増加につながり、環境汚染物質の排出をもたらすおそれが生ずることは前記の通りである。
【0028】
なお、JIS K 2204によれば、硫黄分の規格値は、2007年に“50質量ppm以下”から、“10質量ppm以下”に改正された。
また、本発明に係る軽油組成物は、引火点が60℃以上であり、好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。引火点が60℃未満の場合、軽質分が増加し、引火による発火のおそれが生ずるので、取扱い上支障をきたす。
【0029】
本発明に係る軽油組成物によれば、10%残油の残留炭素分の含有量が0.03質量%以下であり、好ましくは0.02質量以下、さらに好ましくは0.01質量%以下である。かかる残留炭素分は環数が多い多環芳香族等が過剰に存在する場合に生成し含有量として0.03質量%を超えるとPM増加や燃焼悪化のおそれが生ずる。
【0030】
本発明に係る軽油組成物における全芳香族含有量は、酸化安定性の確保の観点から、10容量%以上、好ましくは15容量%以上、さらに好ましくは18容量%以上である。
一方、全芳香族含有量が多すぎる場合には燃焼性の悪化やPMの増加の観点から、全芳香族含有量は30容量%以下、好ましくは25容量%以下、さらに好ましくは22容量%以下である。
【0031】
なお、全芳香族含有量の測定方法は、石油学会法JPI-5S-49によるものである。
本発明に係る軽油組成物のセタン価については特に限定するものではないが、好ましくは50以上であり、さらに好ましくは53以上であり、JIS K 2204の規格を充分満足させることができる。
【0032】
また、密度については15℃において0.8400以下であり、0.86以下のJIS K 2204の規格を充分充足したものである。
本発明に係る軽油組成物については、蒸留性状において、95%留出温度と初留点との温度差が少なくとも120℃であり、特に、140℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。具体的には、温度差が140℃以上の場合において95%留出温度を330℃以上、初留点を190℃以下に調整することが好ましく、さらに好ましくは、温度差が160℃以上の場合において95%留出温度を340℃以上、初留点を180℃以下に調整する。
【0033】
かかる温度差が大きいと酸化安定性に寄与する成分の量が確保されるものと推定される。一方、温度差が145℃に達しないと、後述の実施例でも示すように軽油酸化パラメータXが零以下であっても、加速酸化による全酸価増加分が増加し、酸化安定性低下のおそれが生ずる。
【0034】
次に、式(1)表される軽油酸化パラメータについて説明する。
本発明に係る軽油組成物において、下記の式(1);
0.064×IBP+0.08×T50−0.131×T95−0.035×PAH+9.66≦0 ・・・・・(1)
の関係を満たしていることが必要である。
【0035】
前記式(1)は、組成との関係において多数の実験を繰り返した結果、初留点、50%留出温度、95%留出温度からなる蒸留性状および二環以上の多環芳香族含有量を要素として前記式にみられるように特定の関係を有するものとして構成されたものである。
【0036】
本発明に係る軽油組成物は、前記式(1)において、蒸留性状および多環芳香族含有量の関係を満たすものであればよく、特に限定されるものではないが、次の蒸留性状を有するものが好ましい。特に前記の通り95%留出温度−初留点>120℃の関係を満たすものが好適である。なお、本明細書において、蒸留性状における留出量(%)は容量%である。
【0037】
初留点; 170 〜 190℃
10%留出温度; 205 〜 225℃
50%留出温度; 270 〜 290℃
90%留出温度; 310〜 330℃
95%留出温度; 320 〜 350℃
終点; 325 〜 360℃

本発明の軽油組成物は、酸化安定性の改善の観点から、初留点は、前記の通り95%留出温度と温度差を120℃以上とするため、190℃以下が好適である。
【0038】
しかし、初留点が低すぎると、一部の軽質留分が気化して未燃焼分が排ガス中に混入して排出されるおそれがあるため、初留点としては好ましくは160℃以上、特に170℃以上であることが好ましい。初留点が高すぎる場合、低温始動性に問題が生ずるが、低沸点留分に含まれる酸化安定化化合物の確保及び前記の通り95%留出温度との温度差を維持するため190℃以下とすることにより低温始動性の確保も可能となる。
【0039】
本発明に係る軽油組成物の10%留出温度は、特に限定されるものではないが、高すぎる場合は低温始動性に難点が生じるおそれが生じるため、240℃以下、好ましくは230℃以下、さらに好ましくは225℃以下であり、一方、低すぎる場合は、初留点が低すぎる場合と同様に、前記の気化の問題のおそれがあることから、180℃以上、好ましくは195℃以上、さらに好ましくは205℃とすることが好ましい。
【0040】
特に、酸化安定性の確保の観点から、205〜225℃とすることが好ましい。
本発明に係る軽油組成物の50%留出温度は、酸化安定性の確保の観点から、好ましくは250℃以上、さらに好ましくは270℃以上であり、燃料の燃焼性の観点から310℃以下、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは290℃以下とされる。特に酸化安定性の観点から270〜290℃の範囲が好適である。
【0041】
本発明に係る軽油組成物の90%留出温度は特に限定されないが、
燃料の燃焼性の観点から、360℃以以下、好ましくは340℃以下であり、酸化安定性の観点から310〜330℃の範囲が好ましい。
【0042】
本発明に係る軽油組成物の95%留出温度は、酸化安定性の確保の観点から、初留点との温度差を120℃以上とするため、310℃以上であり、好ましくは330℃以上、さらに好ましくは340℃以上である。一方、95%留出温度が高すぎる場合には燃焼性の悪化やPM生成の増加の懸念があるため、380℃以下、好ましくは360℃以下、さらに好ましくは350℃以下である。
【0043】
本発明に係る軽油組成物の終点は、特に限定されるものではないが、燃焼性の悪化やPM生成の増加の懸念の観点から400℃以下、好ましくは380℃以下、さらに好ましくは360℃以下であり、特に酸化安定性の観点から325〜360℃の範囲が好ましい。
【0044】
なお、前記の蒸留性状の測定は、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」によるものである。
次に、前記式(1)の要素であるPAHは、二環以上の多環芳香族の含有量を示すものであり、前記蒸留性状を含め、本発明によれば、軽油パラメータX=0.064×IBP+0.08×T50−0.131×T95−0.035×PAH+9.66≦0 ・・・・・(1)
の関係を満たすことが必要である。
【0045】
軽油組成物中のPAHの含有量は、低すぎる場合において、蒸留性状(IBP,TSO,T95,E.P)が著しく変化しないとき、軽油酸化パラメータXの値が大きくなり、酸化安定性を低下させ、一方、PAHが高すぎる場合には、蒸留性状に影響を与え、前記式(1)の関係を満たすことができず、優れた酸化安定性を確保することができない。
【0046】
従って、本発明に係る軽油組成物のPAHの含有量については、好ましくは6容量%以下であり、1容量%以上、好ましくは2容量%以上、さらに好ましくは3容量%以上である。ここで、PAHの含有量は、石油学会法JPI-5S-49を用いて測定した。
【0047】
前記PAH中、二環以上の多環芳香族の具体例は、ナフタレン、アルキル置換基を側鎖に有するナフタレン等のナフタレン類、例えば、1−メチルナフタレン、2−(1−メチルエチル)ナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン、2,3,5−トリメチルナフタレン、2,3,6−トリメチルナフタレン等のほかアントラセン類、アセナフチレン類、フェナントレン類およびこれらの多環芳香族であってアルキル置換基を有するもの等が包含される。
【0048】
次に、本発明によれば、請求項3に示すように、要素(a)〜(e)のすべてを満たし、(f)の軽油酸化パラメータXが零を超える軽油組成物に酸化防止剤が配合されてなる軽油組成物を提供するものである。
【0049】
酸化防止剤の配合量は、軽油組成物の全酸価増加分(ΔTAN)が0.12mgKOH/g以下になる量であり、通常5〜50質量ppmの範囲で達成することができる。
軽油酸化パラメータXを用いることにより過不足のない適切有効量の酸化防止剤の配合により酸化安定性に優れた軽油組成物を提供することができる。
【0050】
また、本発明によれば、請求項6に示すように、軽油組成物の酸化安定性の判定方法を提供することができる。要素(a)〜(e)をすべて満たすことを前提に、(f)の軽油酸化パラメータXの値を基準値と比較して酸化安定性を判定するものである。基準値は、表2に基いて零(0.00)とされる。
【0051】
従って、軽油酸化パラメータXが≦0の場合、酸化安定性が良好とされ、一方、Xが>0の場合、酸化防止剤の配合が必要となることが示される。
さらに、本発明によれば、請求項7において、軽油酸化パラメータXを用いることによる軽油組成物の酸化安定性の判定の結果により、軽油酸化パラメータX>0の場合、酸化防止剤を配合することによる酸化安定性の改善方法を提供することができる。酸化防止剤の配合量としては前記の通り、全酸価増加分(ΔTAN)が0.12mgKOH/g以下になる量が採用される。
【0052】
本発明に係る軽油組成物は、深度水素化脱硫工程を経たものであり、脂肪族不飽和分は殆ど除去され、芳香族分以外の組成は殆ど飽和分である。
本発明に係る軽油組成物は、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で基油に添加剤を配合することができる。
【0053】
基油としては、直留系軽油留分、直留系灯油留分、接触分解系軽油留分、水素化分解軽油留分等の基材を適宜混合して調製したものを用いることができる。直留系軽油留分は、常圧蒸留装置により原油を蒸留して得られる軽油留分であり、直留系灯油留分も同様に原油を原料とする常圧蒸留装置から採取される基材である。
【0054】
分解系軽油留分は、減圧軽油または減圧残渣油を原料として接触分解装置により得られた分解軽油留分である。また、水素化分解軽油留分は、重質油を原料として水素化分解により得られた分解生成油から採取された軽油留分である。
【0055】
本発明に係る軽油基油としては、かかる基材を前記蒸留性状その他の性状を満たすように混合したものが用いられる。
本発明に係る軽油組成物に配合される添加剤としては、必要に応じ
酸化防止剤、清浄剤、潤滑性向上剤、流動性向上剤、セタン価向上剤、静電気防止剤等を挙げることができ、一種または二種以上を混合して用いることができる。
【0056】
酸化防止剤としては、特に限定されるものではないが、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)のほかに、フェノール系酸化防止剤、またはアミン系酸化防止剤のいずれか、またはこれらの混合物を使用することができる。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール等を挙げることができる。また、アミン系酸化防止剤としては、N,N’−ジイソプロピル−p−ジフェニレンジアミン,N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン等を挙げることができる。
【0057】
さらに、特に、ヒンダードタイプのフェノール系酸化防止剤が好ましく、具体的には、例えば、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4'−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール);4,4'−エチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール);4,4'−プロピリデンビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール);2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4'−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール);2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール);2,2'−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−ブタン、2,2−チオ−ジエチレンビス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン、テトラキス(メチレン−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロハイドロシンナメート、トリエチレングリコール−ビス[β−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシエチル]エチル]−2,4,8,10−テトラオキソスピロー[5,5]ウンデカン等を挙げることができる。
【0058】
酸化防止剤の配合量は、後述の試験方法で示すように加速酸化による全酸価増加分(ΔTAN)が0.12mgKOH/g以下になるように調整された量でよい。
従って、具体的には、軽油酸化パラメータ>0の軽油組成物については、3〜100質量ppm、好ましくは、5〜50質量ppm、さらに好ましくは、5〜20質量ppmの割合で配合すればよい。
【0059】
清浄剤としては、無灰系清浄剤、例えば、ポリアルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルコハク酸アミド、ポリアルケニルコハク酸無水物とペンタエリスリトール等の多価アルコールとの反応により得られるコハク酸エステル、コハク酸エステル−アミド、ベンジンアミン等を挙げることができる。これらの清浄剤は一種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0060】
ポリアルケニルコハク酸イミドとしては、例えば、式(2)
【0061】
【化2】



で表されるモノポリアルケニルコハク酸イミドを用いることができる。
上記式中のRは炭素数30以上のオレフィンオリゴマー残基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、mは1〜10の整数である。
【0062】
また、式(3)
【0063】
【化3】




で表されるビスポリアルケニルコハク酸イミド等を挙げることができる。
【0064】
上記式中のRおよびRは、各々、炭素数30以上のオレフィンオリゴマー残基であり、それらは互いに同一でもまたは異なるものでもよく、RおよびRは、各々、炭素数2〜4のアルキレン基であり、それらは互いに同一でもまたは異なるものでもよい。nは0または1〜10の整数である。
【0065】
これらのポリアルケニルコハク酸イミドは、通常、ポリオレフィンと無水マレイン酸との反応で得られるポリアルケニルコハク酸無水物をポリアルキレンポリアミンと反応させることにより製造することができる。この際、該ポリアルケニルコハク酸無水物とポリアルキレンポリアミンとの割合を変えることにより、モノポリアルケニルコハク酸イミドまたはビスポリアルケニルコハク酸イミドまたはそれらの混合物が得られる。
【0066】
ポリアルケニルコハク酸イミドの製造において、原料として用いられるポリオレフィンとしては、炭素数2〜6のオレフィンを重合して得られる炭素数が30以上、好ましくは40以上で、その平均分子量が500〜20,000、好ましくは700〜5,000のものが好ましい。また、ポリオレフィンを製造するためのオレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、2−メチルペンテン−1、1−オクテン等の炭素数2〜8のα−オレフィンを好ましく挙げることができる。特に好ましいポリオレフィンはポリプロピレンおよびポリイソブチレンである。
【0067】
一方、ポリアルキレンポリアミンとしては、次の式(4)で表される化合物が用いられる。
【0068】
【化4】



【0069】
上記一般式(4)中のRおよびmは上記一般式(2)の化合物と同じ意味をもつ。
また、ポリアルキレンポリアミンとしては、式(5)
【0070】
【化5】



で表される化合物が用いられる。
【0071】
上記一般式中のR、Rおよびnは上記式(3)と同じ意味をもつ。
このようなポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、ポリエチレンポリアミン、ポリプロピレンポリアミン、ポリブチレンポリアミン等が挙げられるが、これらの中でポリエチレンポリアミンが好適である。
【0072】
清浄剤の配合量は、通常、10〜200質量ppm、好ましくは10〜100質量ppmである。
潤滑性向上剤としては、例えば、カルボン酸系、アルコール系、エステル系等の潤滑性向上剤を挙げることができるがエステル系が好適である。
【0073】
カルボン酸系潤滑性向上剤としては、例えば、オレイン酸、サリチル酸、パルチミン酸、ミリスチン酸、リノール酸等を挙げることができる。これらの潤滑油向上剤は、一種または二種以上を混合して使用することができる。
【0074】
また、エステル系潤滑性向上剤としてはグリセリンのカルボン酸エステルを挙げることができ、カルボン酸としては、リノール酸、オレイン酸、サリチル酸、パルシチン酸等を用いることができる。
【0075】
潤滑性向上剤の配合量は、50〜500mg/L、好ましくは100〜300mg/Lの範囲で採用することができる。
流動性向上剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体、ポリアルキルメタクリレート系化合物等を挙げることができる。これらの流動性向上剤は一種または二種以上を混合して使用することができる。
【0076】
流動性向上剤の配合量は、通常、50〜1000質量ppm、好ましくは100〜500質量ppmの範囲で採用される。
セタン価向上剤としては、例えば、硝酸エステルおよび有機過酸化物を挙げることができ、一種または二種以上を混合して用いることができる。
【0077】
硝酸エステルとしては、2−クロロエチルナイトレート、2−エトキシエチルナイトレート、2−エチルヘキシルナイトレート、イソプロピルナイトレート、ブケルナイトレート等を用いることができる。
【0078】
セタン価向上剤の配合量は、通常100〜1500mg/L、好ましくは200〜1000mg/Lである。
【実施例】
【0079】
以下、本発明について、実施例および比較例によってさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は、実施例等により限定されるものではない。
なお、実施例等において使用した軽油組成物供試油の酸化安定性については下記の加速酸化試験法に従って評価した。
【0080】
また、供試油の性状の測定には下記に列挙した性状測定法を採用した。
さらに、基材としては下記記載のものを用いた。
【0081】
酸化安定性評価
加速酸化試験方法
試料350mlを115℃で16時間、酸素を1分間あたり3リットルの割合で吹き込みながら酸化劣化させる。この酸化劣化試験の前後にJIS K 2501に従って、全酸価を測定し、前後の酸価の差(ΔTAN)を求めた。
【0082】
性状測定法
(1)密度:JIS K2249「原油及び石油製品−密度・質量・容量換算表」
(2)蒸留性状:JIS K2254「石油製品−蒸留試験方法」
(3)引火点:JIS K2265「原油及び石油製品−引火点試験方法」
(4)残留炭素分:JIS K2270「原油及び石油製品−残留炭素分試験方法」
(5)セタン価:JIS K2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」
(6)硫黄分:JIS K2541−6「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」
(7)多環芳香族分:石油学会法JPI−5S−49「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」
【0083】
基材

【0084】
実施例1〜10
前記基材のうち直留軽油を主体として、他の基材を混合して表1に示す蒸留性状、およびJIS K 2204の規格で規定されている諸特性を有する軽油組成物G〜I、P〜Nを調製した。各軽油組成物の前記の加速酸化による酸化劣化試験法により全酸価増加分(ΔTAN)を測定し、結果を同表に示す。
【0085】
また、表2に軽油酸化パラメータXを横軸に、全酸価増加分(ΔTAN)の測定値を縦軸に表示し、軽油酸化パラメータXと酸化安定性との関係を示す。
なお、実施例は、軽油酸化パラメータX≦0を示す軽油組成物に関するものであり、他の性状もすべて充足したケースである。
【0086】
実施例11
軽油酸化パラメータXが零以上の表1に示す試料Xに酸化防止剤を0〜50質量ppm配合して、表3に示す結果を得た。表3において、横軸に酸化防止剤の配合量(Amount of anti−oxidant)(質量ppmで表示)を表示し、縦軸に全酸価増加分(ΔTAN)(mgKOH/g)を表示し、両者の関係を◆印で示した。
【0087】
比較例1〜11
実施例と同様に表1に示す、蒸留性状および諸特性を有する軽油組成物A〜F、J〜Oを調製し、各試作油について全酸価増加分(ΔTAN)を測定した。結果を同表に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
前記の実施例および比較例の結果からは、要素(a)〜(e),特に特定条件下の蒸留性状を満たし、かつ(f)の軽油酸化パラメータXを満たす軽油組成物は、全酸価増加分(ΔTAN)が著しく低減されることが明らかとなった。また、軽油酸化パラメータXが基準値(0.00)を超える場合には酸化防止剤を適量配合することにより表3に示すように全酸価増加分の激減した軽油組成物を得ることができることが示されている。
【0090】
表の説明
表1は、実施例1〜11及び比較例1〜11に係る各軽油組成物供試油の性状、軽油酸化パラメータXおよび全酸価増加分(ΔTAN)を一覧して示すものである。
表2は、軽油酸化パラメータXと全酸価増加量(TAN Increase)(ΔTAN)との関係をグラフ化して示すものである。
表3は、酸化防止剤の効果(Effect of anti−oxidant)を全酸価増加分(ΔTAN)との関係で示すものである。
【0091】
【表2】

【0092】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)硫黄分の含有量が10質量ppm以下であり、
(b)引火点が60℃以上であり、
(c)10%残油の残留炭素分の含有量が0.03質量%以下であり、
(d)蒸留性状において、95%留出温度と初留点との温度差が120℃以上であり、
(e)二環以上の多環芳香族濃度が6容量%以下で、かつ
(f)次の式(1);
X=0.064×IBP+0.08×T50−0.131×T95−0.035×PAH+9.66 ・・・・・(1)
(ここで、IBP;蒸留性状における初留点(℃)
50;蒸留性状における50%留出温度(℃)
95;蒸留性状における95%留出温度(℃)
PAH;二環以上の多環芳香族含有量(容量%))
で表される軽油酸化パラメータXが零以下である
ことを特徴とする軽油組成物。
【請求項2】
前記蒸留性状において、95%留出温度と初留点との温度差が140℃以上であり、
初留点が190℃以下であり、
95%留出温度が330℃以上であり、
終点が360℃以下である請求項1に記載の軽油組成物。
【請求項3】
(a)硫黄分の含有量が10質量ppm以下であり、
(b)引火点が60℃以上であり、
(c)10%残油の残留炭素分の含有量が0.03質量%以下であり、
(d)蒸留性状において、95%留出温度と初留点との温度差が160℃以下であり、
(e)二環以上の多環芳香族濃度が6容量%以下で、かつ
(f)次の式(1);
X=0.064×IBP+0.08×T50−0.131×T95−0.035×PAH+9.66 ・・・・・(1)
(ここで、IBP;蒸留性状における初留点(℃)
50;蒸留性状における50%留出温度(℃)
95;蒸留性状における95%留出温度(℃)
PAH;二環以上の多環芳香族含有量(容量%))
で表される軽油酸化パラメータXが零を超える軽油組成物に酸化防止剤を加速酸化試験(115℃、16時間、酸素吹き込み量3リットル/分)前後の全酸価増加分(ΔTAN)が0.12mgKOH/g以下になるように配合してなることを特徴とする軽油組成物。
【請求項4】
前記酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である請求項3に記載の軽油組成物。
【請求項5】
前記軽油組成物の用途が、バイオディーゼル燃料組成物の主成分である請求項1または3に記載の軽油組成物。
【請求項6】
軽油組成物の酸化安定性の品質評価において、
(a)硫黄分の含有量が10質量ppm以下であり、(b)引火点が60℃以上であり、(c)10%残油の残留炭素分が0.03質量%以下であり、(d)蒸留性状において、95%留出温度と初留点との温度差が120℃以上で、(e)二環以上の多環芳香族濃度が6容量%以下である軽油組成物について、
次の式(1);
X=0.064×IBP+0.08×T50−0.131×T95−0.035×PAH+9.66 ・・・・・(1)
(ここで、IBP;蒸留性状における初留点(℃)
50;蒸留性状における50%留出温度(℃)
EP;蒸留性状における終点(℃)
PAH;二環以上の多環芳香族含有量(容量%))
で表される軽油酸化パラメータXを用いて算出した値を基準値と比較して酸化安定性を判定することを特徴とする軽油組成物の酸化安定性の判定方法。
【請求項7】
請求項3の軽油組成物の酸化安定性の判定方法を用いることにより得られた軽油酸化パラメータXが零を超える軽油組成物に対し酸化防止剤を前記軽油組成物の加速酸化試験(115℃、16時間、酸素吹き込み量3リットル/分)前後の全酸価増加分(ΔTAN)が0.12mgKOH/g以下になるように配合することを特徴とする軽油組成物の酸化安定性の改善方法。
【請求項8】
前記酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である請求項7に記載された酸化安定性の改善方法。