説明

輪切形多段ポンプ

【課題】吸込ケーシングおよび/または吸込ケーシングを交換することなく、吸込ポートおよび/または吐出しポートの位置を容易に変えることができる多段ポンプを提供する。
【解決手段】吸込ケーシング10は中間ケーシング50に通しボルト6およびナット7により固定される。吸込ケーシング10は、吸込ポート11が上、または右、または左を向いた状態で中間ケーシング50に取り付けることが可能に構成されている。吸込ケーシング10の底面、右側面、および左側面は、回転軸1の中心Oから同じ距離に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪切形多段ディフューザポンプ(以下、単に多段ポンプという)に関し、特に多段ポンプのケーシング構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多段ポンプは、清水や海水などの様々な液体の移送に使用され、様々な場所で使用される。横形の多段ポンプは、吸込ポートおよび吐出しポートが上を向いた状態で設置される場合がほとんどである(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、設置場所によっては、多段ポンプに接続される配管が水平に配置されることがある。このような場所では、配管接続の観点から、側部に吸込ポートおよび/または吐出しポートを持つ多段ポンプが好ましい。そこで、このような客先仕様に応えるために、様々な形式の吸込ケーシングおよび吐出しケーシングが製造され、必要に応じてポンプに組み込まれる。
【0003】
図1乃至図3は、従来の吸込ケーシングを示す模式図である。図1に示す吸込ケーシング100はその上部に吸込ポート101を有し、図2に示す吸込ケーシング100はその右側部に吸込ポート101を有し、図3に示す吸込ケーシング100はその左側部に吸込ポート101を有している。図1乃至図3に示すように、吸込ケーシング100の下部には脚部102が一体に形成されている。
【0004】
しかしながら、図1,図2,図3に示す吸込ケーシングを製造するためには、それぞれ個別の木型あるいは金型が必要となり、製造コストが高くなってしまう。さらに、これら複数種の吸込ケーシングの製造に伴って、在庫管理が複雑になり、客先への納期が遅れることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−130400号公報
【特許文献2】特開2001−241400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、吸込ケーシングおよび/または吸込ケーシングを交換することなく、吸込ポートおよび/または吐出しポートの位置を容易に変えることができる多段ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、回転軸と、前記回転軸に固定された複数の羽根車と、前記複数の羽根車を収容するポンプケーシングとを備え、前記ポンプケーシングは、吸込ポートを有する吸込ケーシングと、吐出しポートを有する吐出しケーシングと、前記吸込ケーシングと前記吐出しケーシングとの間に配置された中間ケーシングとを有し、前記吸込ケーシングは、前記吸込ポートが上、または右、または左を向いた状態で前記中間ケーシングに取り付けることが可能に構成されており、前記吸込ケーシングの底面、右側面、および左側面は、前記回転軸から同じ距離に位置することを特徴とする多段ポンプである。
【0008】
本発明の好ましい態様は、前記吸込ケーシングの底面、右側面、および左側面のうちのいずれかには、脚部が着脱可能に固定されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記吐出しケーシングは、前記吐出しポートが上、または右、または左を向いた状態で前記中間ケーシングに取り付けることが可能に構成されており、前記吐出しケーシングの底面、右側面、および左側面は、前記回転軸から同じ距離に位置することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記吐出しケーシングの底面、右側面、および左側面のうちのいずれかには、脚部が着脱可能に固定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記多段ポンプは、前記回転軸に作用するスラスト力を支持するためのバランス機構と、前記バランス機構が収容されるバランス室と、前記バランス室内の液体を前記吸込ケーシングに導くバランス配管とをさらに備え、前記吸込ケーシングの両側には、前記バランス配管が接続される第1の吸込側接続ポートおよび第2の吸込側接続ポートが設けられていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記吐出しケーシングの両側には、前記バランス配管が接続される第1の吐出し側接続ポートおよび第2の吐出し側接続ポートが設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様は、回転軸と、前記回転軸に固定された複数の羽根車と、前記複数の羽根車を収容するポンプケーシングとを備え、前記ポンプケーシングは、吸込ポートを有する吸込ケーシングと、吐出しポートを有する吐出しケーシングと、前記吸込ケーシングと前記吐出しケーシングとの間に配置された中間ケーシングとを有し、前記吐出しケーシングは、前記吐出しポートが上、または右、または左を向いた状態で前記中間ケーシングに取り付けることが可能に構成されており、前記吐出しケーシングの底面、右側面、および左側面は、前記回転軸から同じ距離に位置することを特徴とする多段ポンプである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多段ポンプに接続される配管の配置に合わせて、吸込ポートおよび/または吐出しポートを上向き、右向き、または左向きとすることができる。したがって、複数種の吸込ケーシングおよび/または吐出しケーシングを用意する必要がなく、製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】上部に吸込ポートを有する従来の吸込ケーシングを示す図である。
【図2】右側部に吸込ポートを有する従来の吸込ケーシングを示す図である。
【図3】左側部に吸込ポートを有する従来の吸込ケーシングを示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る輪切形多段ディフューザポンプを示す断面図である。
【図5】吸込ケーシングを示す図である。
【図6】吸込ポートが右を向いた状態の吸込ケーシングを示す図である。
【図7】吸込ポートが左を向いた状態の吸込ケーシングを示す図である。
【図8】脚部が固定された吸込ケーシングを示す図である。
【図9】吸込ポートが右を向いた状態の吸込ケーシングを示す図である。
【図10】吸込ポートが左を向いた状態の吸込ケーシングを示す図である。
【図11】吐出しケーシングを示す図である。
【図12】脚部が固定された吐出しケーシングを示す図である。
【図13】吐出しポートが右を向いた状態の吐出しケーシングを示す図である。
【図14】吐出しポートが左を向いた状態の吐出しケーシングを示す図である。
【図15】図15(a)は、吸込ポートおよび吐出しポートが上を向いた多段ポンプの側面図であり、図15(b)は、図15(a)の矢印Aで示す方向から見た図であり、図15(c)は、図15(a)の矢印Bで示す方向から見た図である。
【図16】図16(a)は、吸込ポートが右を向き、吐出しポートが上を向いた多段ポンプの側面図であり、図16(b)は、図16(a)の矢印Cで示す方向から見た図であり、図16(c)は、図16(a)の矢印Dで示す方向から見た図である。
【図17】吸込ケーシングの他の例を示す図である。
【図18】吸込ポートが右を向いた状態の吸込ケーシングを示す図である。
【図19】吸込ポートが左を向いた状態の吸込ケーシングを示す図である。
【図20】吐出しケーシングの他の例を示す図である。
【図21】吐出しポートが右を向いた状態の吐出しケーシングを示す図である。
【図22】吐出しポートが左を向いた状態の吐出しケーシングを示す図である。
【図23】図23(a)は、吸込ポートおよび吐出しポートが上を向いた、8本の通しボルトを有する多段ポンプの側面図であり、図23(b)は、図23(a)の矢印Eで示す方向から見た図であり、図23(c)は、図23(a)の矢印Fで示す方向から見た図である。
【図24】図24(a)は、吸込ポートが右を向き、吐出しポートが上を向いた多段ポンプの側面図であり、図24(b)は、図24(a)の矢印Gで示す方向から見た図であり、図24(c)は、図24(a)の矢印Hで示す方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る多段ポンプを示す断面図である。図4に示すように、この多段ポンプは、水平に延びる回転軸1と、回転軸1に固定された複数の羽根車2と、これら羽根車2を収容するポンプケーシング3とを備えている。回転軸1は、軸受9,9により回転自在に支持されている。回転軸1の一端は、モータなどの駆動源に連結され、この駆動源により回転軸1および羽根車2が回転するようになっている。
【0014】
ポンプケーシング3は、吸込ポート11を有する吸込ケーシング10と、吐出しポート31を有する吐出しケーシング30と、吸込ケーシング10と吐出しケーシング30との間に配置された中間ケーシング50とを有している。中間ケーシング50は、複数の環状のケーシングピース50aが軸方向に積み重なった構造を有している。各羽根車2の径方向外側には、ディフューザ4が配置されている。各ケーシングピース50a内には、1組の羽根車2およびディフューザ4が配置されている。吸込ケーシング10、中間ケーシング50、および吐出しケーシング30は、通しボルト6およびナット7によって互いに固定されている。
【0015】
この多段ポンプは、羽根車2の段数を変更することが可能に構成されている。羽根車2の段数を増やす場合は、所望の数の羽根車およびこれら羽根車に対応したディフューザおよびケーシングピースを多段ポンプに追加する。一方、羽根車2の段数を減らす場合は、所望の数の羽根車およびこれら羽根車に対応したディフューザおよびケーシングピースを多段ポンプから取り外す。このように、本多段ポンプは、その用途に応じて所望の段数にすることができる。
【0016】
回転軸1は、吸込ケーシング10および吐出しケーシング30を貫通して延びている。吸込ケーシング10および吐出しケーシング30の外側には、軸封機構55,55がそれぞれ設けられている。軸封機構55,55としては、メカニカルシールやグランドパッキンなどが使用される。軸受9,9は、それぞれ軸受ケーシング65,65に収容されている。これら軸受ケーシング65,65には、それぞれ軸受カバー67,67がボルトにより固定されている。各軸受ケーシング65内には潤滑オイルが充填されており、この潤滑オイルは、冷却パイプ66によって冷却されるようになっている。
【0017】
吐出しケーシング30には、バランス機構70が設けられている。このバランス機構70は、回転軸1と一体に回転するバランスディスク71と、このバランスディスク71に対向して配置されたバランスディスクシート72とを有している。このバランス機構70は、羽根車2の吸込側と吐出し側の圧力差に起因して発生するスラスト力を支持することで、回転軸1に作用するスラスト力をバランスさせる機能を有する。バランス機構70は、バランス室73内に配置されている。羽根車2によって昇圧された液体は、バランスディスク71とバランスディスクシート72との間の微小な隙間を通り、バランス室73に流入するようになっている。
【0018】
吸込ケーシング10の内部には、吸込ポート11に連通する吸込ボリュート20と、多段の羽根車2のうちの初段羽根車に隣接した側室25が形成されている。側室25には、初段羽根車によって昇圧された液体の一部が流入するようになっている。バランス室73と、吸込ボリュート20または側室25とは、バランス配管75によって連結されている。したがって、バランス室73内の圧力と、吸込ボリュート20または側室25内の圧力とは、実質的に同一となっている。
【0019】
図5は、吸込ケーシング10を示す図である。吸込ケーシング10は、吸込流路が内部に形成された吸込ポート11と、通しボルト6の挿入孔12A,13A,14A,15Aが形成された4つのボルト台座(第1のボルト台座12、第2のボルト台座13、第3のボルト台座14、第4のボルト台座15)とを有している。これら4つのボルト台座12,13,14,15は、回転軸1の周方向において等間隔に設けられている。
【0020】
第1のボルト台座12には縦に延びる平坦部12aが形成されており、第2のボルト台座13には縦に延びる平坦部13aおよび水平に延びる平坦部13bが形成されている。同様に、第3のボルト台座14には縦に延びる平坦部14aおよび水平に延びる平坦部14bが形成されており、第4のボルト台座15には縦に延びる平坦部15aが形成されている。第1のボルト台座12および第2のボルト台座13の平坦部12a,13aは、吸込ケーシング10の右側面を構成し、第3のボルト台座14および第4のボルト台座15の平坦部14a,15aは、吸込ケーシング10の左側面を構成し、第2のボルト台座13および第3のボルト台座14の平坦部13b,14bは、吸込ケーシング10の底面面を構成する。
【0021】
ボルト台座12,13,14,15は、互いに同じ形状を有しており、吸込ケーシング10の底面、右側面、および左側面と回転軸1の軸心Oからの距離dは、同一である。
【0022】
吸込ケーシング10および吐出しケーシング30は、中間ケーシング50に着脱可能に取り付けられている。すなわち、吸込ケーシング10および吐出しケーシング30は、通しボルト6およびナット7を取り外すことにより中間ケーシング50から切り離すことができる。さらに、吸込ケーシング10は、中間ケーシング50に対して右側および左側に90度回転させた状態で、中間ケーシング50に取り付けることが可能となっている。したがって、吸込ケーシング10を右側または左側に90度回転させた状態で中間ケーシング50に取り付けることにより、吸込ポート11の位置を変えることができる。
【0023】
図5に示す吸込ケーシング10では、吸込ポート11は上を向いているが、図6および図7に示す吸込ケーシング10では、吸込ポート11は側方を向いている。より具体的には、図6では吸込ポート11は右を向いており、この場合は吸込ケーシング10の右側面が底面として機能する。図7では吸込ポート11は左を向いており、この場合は吸込ケーシング10の左側面が底面として機能する。吸込ケーシング10の底面、左側面、および右側面と回転軸1の軸心からの距離は同一であるので、図5乃至図7に示すいずれの場合でも、回転軸1の高さに変化はない。
【0024】
吸込ケーシング10の両側には第1の吸込側接続ポート16および第2の吸込側接続ポート17が形成されている。これら吸込側接続ポート16,17は吸込ポート11の中心線に関して対称的に配置されている。第1の吸込側接続ポート16は吸込ボリュート20に連通しており、第2の吸込側接続ポート17は側室25に連通している。バランス配管75は、第1の吸込側接続ポート16または第2の吸込側接続ポート17に選択的に接続することができるようになっている。したがって、吸込ポート11の向きにかかわらず、バランス配管75を吸込ケーシング10に接続することができる。
【0025】
図5に示すように、吸込ケーシング10の右側面にはねじ孔12s,13sが形成され、底面にはねじ孔13t,14tが形成され、左側面にはねじ孔14s,15sが形成されている。ねじ孔12s,13s、ねじ孔13t,14t、およびねじ孔14s,15sの回転軸1に対する相対位置は同じである。図8に示すように、吸込ケーシング10には脚部80が締結ボルト85によって固定されている。締結ボルト85はねじ孔13t,14tに螺合されている。脚部80は、締結ボルト85を介して着脱可能に吸込ケーシング10に取り付けられている。
【0026】
図8に示す吸込ケーシング10では、吸込ポート11が上を向いており、この場合は、脚部80は底面に固定される。図9に示す吸込ケーシング10では、吸込ポート11が右を向いている。この場合は、脚部80は右側面に固定され、締結ボルト85はねじ孔12s,13sに螺合されている。図10に示す吸込ケーシング10では、吸込ポート11が左を向いている。この場合は、脚部80は左側面に固定され、締結ボルト85はねじ孔14s,15sに螺合されている。
【0027】
このように、吸込ポート11の位置に従って、脚部80を底面、右側面、または左側面に取り付けることができる。脚部80には、締結ボルトが挿入される通孔80aが形成されており、締結ボルトによって吸込ケーシング10を共通ベースに固定することができる。
【0028】
吸込ケーシング10を右または左に回転させた状態で、吸込ケーシング10を中間ケーシング50に連結することができるので、吸込ポート11を右または左に向けることができる。したがって、多段ポンプに接続される配管の配置に適した位置に吸込ポート11を向けることができる。また、吸込ポートの位置が異なる複数種の吸込ケーシングを用意しておく必要がないので、多段ポンプのコストを下げることができる。
【0029】
吐出しケーシング30も、吸込ケーシング10と同様の構成を有している。図11は、吐出しケーシング30を示す図である。吐出しケーシング30は、吐出し流路が内部に形成された吐出しポート31と、通しボルト6の挿入孔32A,33A,34A,35Aが形成された4つのボルト台座32,33,34,35とを有している。これら4つのボルト台座32,33,34,35は、回転軸1の周方向において等間隔に設けられている。
【0030】
第1のボルト台座32には縦に延びる平坦部32aが形成されており、第2のボルト台座33には縦に延びる平坦部33aおよび水平に延びる平坦部33bが形成されている。同様に、第3のボルト台座34には縦に延びる平坦部34aおよび水平に延びる平坦部34bが形成されており、第4のボルト台座35には縦に延びる平坦部35aが形成されている。第1のボルト台座32および第2のボルト台座33の平坦部32a,33aは、吐出しケーシング30の右側面を構成し、第3のボルト台座34および第4のボルト台座35の平坦部34a,35aは、吐出しケーシング30の左側面を構成し、第2のボルト台座33および第3のボルト台座34の平坦部33b,34bは、吐出しケーシング30の底面面を構成する。
【0031】
ボルト台座32,33,34,35は、互いに同じ形状を有しており、吐出しケーシング30の底面、右側面、および左側面と回転軸1の軸心Oからの距離dは、同一である。
【0032】
吸込ケーシング10と同様に、吐出しケーシング30は、中間ケーシング50に対して右側および左側に90度回転させた状態で、中間ケーシング50に取り付けることが可能となっている。したがって、吐出しケーシング30を右側または左側に90度回転させた状態で中間ケーシング50に取り付けることにより、吐出しポート31の位置を変えることができる。
【0033】
吐出ケーシング30には、上述したバランス室73が形成されている。吐出しケーシング30の両側には第1の吐出し側接続ポート36および第2の吐出し側接続ポート37が形成されている。これら吐出し側接続ポート36,37は吐出しポート31の中心線に関して対称的に配置されている。第1の吐出し側接続ポート36および第2の吐出し側接続ポート37は、いずれもバランス室73に連通している。バランス配管75は、第1の吐出し側接続ポート36または第2の吐出し側接続ポート37に選択的に接続することができるようになっている。したがって、吐出しポート31の向きにかかわらず、バランス配管75を吐出しケーシング30に接続することができる。
【0034】
第1の吸込側接続ポート16と第1の吐出し側接続ポート36は、多段ポンプの同じ側に設けられており、第2の吸込側接続ポート17と第2の吐出し側接続ポート37は反対側に設けられている。通常は、第1の吸込側接続ポート16と第1の吐出し側接続ポート36、または第2の吸込側接続ポート17と第2の吐出し側接続ポート37がバランス配管75によって連結されるが、客先仕様によってバランス配管75を自在に連結することが可能である。このように、多段ポンプの両側に吸込側接続ポート16,17と吐出し側接続ポート36,37を設けることで、客先仕様への対応が良くなり、結果的に簡単な構造の多段ポンプを提供することができる。
【0035】
図11に示すように、吐出しケーシング30の右側面にはねじ孔32s,33sが形成され、底面にはねじ孔33t,34tが形成され、左側面にはねじ孔34s,35sが形成されている。ねじ孔32s,33s、ねじ孔33t,34t、およびねじ孔34s,35sの回転軸1に対する相対位置は同じである。図12に示すように、吐出しケーシング30には脚部81が締結ボルト85によって固定されている。締結ボルト85はねじ孔33t,34tに螺合されている。脚部81は、締結ボルト85を介して着脱可能に吐出しケーシング30に取り付けられている。
【0036】
図12に示す吐出しケーシング30では、吐出しポート31が上を向いており、この場合は、脚部81は底面に固定される。図13に示す吐出しケーシング30では、吐出しポート31が右を向いている。この場合は、脚部81は右側面に固定され、締結ボルト85はねじ孔32s,33sに螺合されている。図14に示す吐出しケーシング30では、吐出しポート31が左を向いている。この場合は、脚部81は左側面に固定され、締結ボルト85はねじ孔34s,35sに螺合されている。脚部81には、締結ボルトが挿入される通孔81aが形成されており、締結ボルトによって吐出しケーシング30を共通ベースに固定することができる。
【0037】
図15(a)は、吸込ポート11および吐出しポート31が上を向いた多段ポンプの側面図であり、図15(b)は、図15(a)の矢印Aで示す方向から見た図であり、図15(c)は、図15(a)の矢印Bで示す方向から見た図である。図16(a)は、吸込ポート11が右を向き、吐出しポート31が上を向いた多段ポンプの側面図であり、図16(b)は、図16(a)の矢印Cで示す方向から見た図であり、図16(c)は、図16(a)の矢印Dで示す方向から見た図である。
【0038】
図15(a)乃至図15(c)および図16(a)乃至図16(c)に示すように、吸込ケーシング10を回転軸1を中心に回転させることができるので、吸込ケーシング10を交換することなく、吸込ポート11の位置を変えることができる。したがって、多段ポンプに接続される配管の配置に合わせて、吸込ポート11の位置を最適にすることができる。なお、図示しないが、吐出しケーシング30を回転軸1を中心に回転させることにより、吐出しポート31の位置を変えることも可能である。
【0039】
上述した例では、4本の通しボルト6が使用されているが、羽根車2の径がある程度大きい場合は、8本の通しボルトが使用される。図17は、吸込ケーシング10の他の例を示す図である。なお、図5に示す要素と同一のものについては同一の符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0040】
図17に示すように、吸込ケーシング10には、通しボルト6が挿入される8つの挿入孔12A,12B,13A,13B,14A,14B,15A,15Bが形成されている。ボルト台座12には、締結ボルトが挿入される通孔12vが形成され、ボルト台座13には、締結ボルトが挿入される通孔13v,13uが形成され、ボルト台座14には、締結ボルトが挿入される通孔14v,14uが形成され、ボルト台座15には、締結ボルトが挿入される通孔15vが形成されている。このタイプの吸込ケーシング10には脚部は取り付けられず、吸込ケーシング10が締結ボルトにより共通ベースに直接固定される。
【0041】
図18は、吸込ポート11が右を向いた状態の吸込ケーシング10を示す図であり、図19は、吸込ポート11が左を向いた状態の吸込ケーシング10を示す図である。この例においても、吸込ケーシング10を右または左に90度回転させることにより、吸込ポート11の位置を変更することができる。
【0042】
図20は、吐出しケーシング30の他の例を示す図である。なお、図11に示す要素と同一のものについては同一の符号を付して、その重複する説明を省略する。図20に示すように、吐出しケーシング30には、通しボルト6が挿入される8つの挿入孔32A,32B,33A,33B,34A,34B,35A,35Bが形成されている。ボルト台座32には、締結ボルトが挿入される通孔32vが形成され、ボルト台座33には、締結ボルトが挿入される通孔33v,33uが形成され、ボルト台座34には、締結ボルトが挿入される通孔34v,34uが形成され、ボルト台座35には、締結ボルトが挿入される通孔35vが形成されている。このタイプの吐出しケーシング30には脚部は取り付けられず、吐出しケーシング30が締結ボルトにより共通ベースに直接固定される。
【0043】
図21は、吐出しポート31が右を向いた状態の吐出しケーシング30を示す図であり、図22は、吐出しポート31が左を向いた状態の吐出しケーシング30を示す図である。この例においても、吐出しケーシング30を右または左に90度回転させることにより、吐出しポート31の位置を変更することができる。
【0044】
図23(a)は、吸込ポート11および吐出しポート31が上を向いた、8本の通しボルト6を有する多段ポンプの側面図であり、図23(b)は、図23(a)の矢印Eで示す方向から見た図であり、図23(c)は、図23(a)の矢印Fで示す方向から見た図である。図24(a)は、吸込ポート11が右を向き、吐出しポート31が上を向いた多段ポンプの側面図であり、図24(b)は、図24(a)の矢印Gで示す方向から見た図であり、図24(c)は、図24(a)の矢印Hで示す方向から見た図である。
【0045】
図23(a)乃至図23(c)および図24(a)乃至図24(c)に示すように、吸込ケーシング10を回転軸1を中心に回転させることができるので、吸込ケーシング10を交換することなく、吸込ポート11の位置を変えることができる。したがって、多段ポンプに接続される配管の配置に合わせて、吸込ポート11の位置を最適にすることができる。なお、図示しないが、吐出しケーシング30を回転軸1を中心に回転させることにより、吐出しポート31の位置を変えることも可能である。
【0046】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 回転軸
2 羽根車
3 ポンプケーシング
4 ディフューザ
6 通しボルト
7 ナット
9 軸受
10 吸込ケーシング
11 吸込ポート
16 第1の吸込側接続ポート
17 第2の吸込側接続ポート
30 吐出しケーシング
36 第1の吐出し側接続ポート
37 第2の吐出し側接続ポート
31 吐出しポート
50 中間ケーシング
55 軸封機構
65 軸受ケーシング
66 冷却パイプ
70 バランス機構
73 バランス室
75 バランス配管
80,81 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に固定された複数の羽根車と、
前記複数の羽根車を収容するポンプケーシングとを備え、
前記ポンプケーシングは、吸込ポートを有する吸込ケーシングと、吐出しポートを有する吐出しケーシングと、前記吸込ケーシングと前記吐出しケーシングとの間に配置された中間ケーシングとを有し、
前記吸込ケーシングは、前記吸込ポートが上、または右、または左を向いた状態で前記中間ケーシングに取り付けることが可能に構成されており、
前記吸込ケーシングの底面、右側面、および左側面は、前記回転軸から同じ距離に位置することを特徴とする多段ポンプ。
【請求項2】
前記吸込ケーシングの底面、右側面、および左側面のうちのいずれかには、脚部が着脱可能に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の多段ポンプ。
【請求項3】
前記吐出しケーシングは、前記吐出しポートが上、または右、または左を向いた状態で前記中間ケーシングに取り付けることが可能に構成されており、
前記吐出しケーシングの底面、右側面、および左側面は、前記回転軸から同じ距離に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の多段ポンプ。
【請求項4】
前記吐出しケーシングの底面、右側面、および左側面のうちのいずれかには、脚部が着脱可能に固定されていることを特徴とする請求項3に記載の多段ポンプ。
【請求項5】
前記多段ポンプは、
前記回転軸に作用するスラスト力を支持するためのバランス機構と、
前記バランス機構が収容されるバランス室と、
前記バランス室内の液体を前記吸込ケーシングに導くバランス配管とをさらに備え、
前記吸込ケーシングの両側には、前記バランス配管が接続される第1の吸込側接続ポートおよび第2の吸込側接続ポートが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の多段ポンプ。
【請求項6】
前記吐出しケーシングの両側には、前記バランス配管が接続される第1の吐出し側接続ポートおよび第2の吐出し側接続ポートが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の多段ポンプ。
【請求項7】
回転軸と、
前記回転軸に固定された複数の羽根車と、
前記複数の羽根車を収容するポンプケーシングとを備え、
前記ポンプケーシングは、吸込ポートを有する吸込ケーシングと、吐出しポートを有する吐出しケーシングと、前記吸込ケーシングと前記吐出しケーシングとの間に配置された中間ケーシングとを有し、
前記吐出しケーシングは、前記吐出しポートが上、または右、または左を向いた状態で前記中間ケーシングに取り付けることが可能に構成されており、
前記吐出しケーシングの底面、右側面、および左側面は、前記回転軸から同じ距離に位置することを特徴とする多段ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−11242(P2013−11242A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145229(P2011−145229)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】