農作業機
【課題】作業台を備える構成でありながら、狭い荷台への積み込みや狭い納屋への格納を容易に行えるようにする。
【解決手段】粉粒体供給装置5に残った粉粒体を走行車体の外方に案内して、案内終端の取出口46Cからの残留粉粒体の取り出しを可能にする粉粒体回収経路Bを備え、取出口46Cから取り出した残留粉粒体を貯留する回収容器Zを載置する作業台77を、回収容器Zの載置が可能な載置姿勢で走行車体の外方に張り出す使用位置と、使用位置よりも車体外方への張り出し量が減少する格納位置とに位置変更可能に装備する。
【解決手段】粉粒体供給装置5に残った粉粒体を走行車体の外方に案内して、案内終端の取出口46Cからの残留粉粒体の取り出しを可能にする粉粒体回収経路Bを備え、取出口46Cから取り出した残留粉粒体を貯留する回収容器Zを載置する作業台77を、回収容器Zの載置が可能な載置姿勢で走行車体の外方に張り出す使用位置と、使用位置よりも車体外方への張り出し量が減少する格納位置とに位置変更可能に装備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体供給装置に残った粉粒体を走行車体の外方に案内して、案内終端の取出口からの残留粉粒体の取り出しを可能にする粉粒体回収経路を備えた農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような農作業機としては、取出口から取り出した残留粉粒体を貯留する回収容器を載置するための作業台(容器受台)を、回収容器の載置が可能な載置姿勢で後輪の車体外方側に位置するように、粉粒体回収経路を形成する排出パイプに一体的に備えるように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−215624号公報(段落番号0029、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、粉粒体供給装置に残った粉粒体を回収する場合には、作業台に回収容器を載置することにより、回収容器を手で抱えることなく、取出口から取り出した残留粉粒体を回収容器に貯留することができる。
【0005】
しかしながら、作業台が常に車体の横外方側に張り出した状態になることから、走行中に作業台を他物に接触させる不都合を招き易くなる。そのため、輸送のために狭いトラックの荷台に乗せる場合や狭い納屋に格納する場合などにおいて、作業台が邪魔になって荷台への積み込みや納屋への格納に手間取り易くなっていた。
【0006】
本発明の目的は、作業台を備える構成でありながら、狭い荷台への積み込みや狭い納屋への格納を容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の課題解決手段では、粉粒体供給装置に残った粉粒体を走行車体の外方に案内して、案内終端の取出口からの残留粉粒体の取り出しを可能にする粉粒体回収経路を備えた農作業機において、
前記取出口から取り出した残留粉粒体を貯留する回収容器を載置する作業台を、前記回収容器の載置が可能な載置姿勢で前記走行車体の外方に張り出す使用位置と、前記使用位置よりも車体外方への張り出し量が減少する格納位置とに位置変更可能に装備してある。
【0008】
この課題解決手段によると、粉粒体供給装置に残った粉粒体を回収する場合には、作業台を使用位置に位置させて回収容器を作業台に載置することにより、回収容器を手で抱えることなく、取出口から取り出した残留粉粒体を回収容器に貯留することができる。これにより、残留粉粒体の回収に要する労力を軽減することができる。
【0009】
残留粉粒体を回収しない場合は、作業台を格納位置に位置させることにより、走行中に作業台が他物に接触する不都合を招き難くすることができる。これにより、輸送のために狭いトラックの荷台に乗せる場合や狭い納屋に格納する場合などにおいて作業台が邪魔になることを抑制することができる。
【0010】
従って、残留粉粒体の回収に要する労力を軽減できる作業台を備える構成でありながら、狭い荷台への積み込みや狭い納屋への格納を容易に行うことができる。
【0011】
本発明の第2の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記使用位置を、後輪の車体外方側に配備した補助車輪の車体外方側に設定し、
前記作業台を、前記走行車体から前記後輪及び前記補助車輪を迂回して前記使用位置に延出するL字状の支持アームで片持ち支持するように構成してある。
【0012】
この課題解決手段によると、乗用田植機やトラクタなどの農作業機では、走行車体の後部に施肥装置や薬剤散布装置などの粉粒体供給装置を配備することが一般的であり、又、軟弱な圃場での走行を良好に行えるようにするために後輪の車体外方側に補助車輪を配備することが多いことから、作業台の使用位置を補助車輪の車体外方側に設定することにより、残留粉粒体を回収する場合には、作業台とともに回収容器を粉粒体供給装置に近い残留粉粒体の回収に適した位置に位置させることができる。
【0013】
そして、後輪及び補助車輪を迂回するL字状の支持アームで作業台を片持ち支持することにより、後輪及び補助車輪を迂回するコの字状などの支持部材で作業台を両持ち支持する場合に比較して、作業台支持構造の簡素化を図ることができる。
【0014】
従って、作業台支持構造の簡素化を図りながら、農作業機での残留粉粒体の回収に適した位置に回収容器を位置させることができる。
【0015】
本発明の第3の課題解決手段では、上記第1又は2の課題解決手段において、
前記作業台に、前記回収容器を側方から受け止める受止部材を装備してある。
【0016】
この課題解決手段によると、例えば回収容器として貯留量の増加とともに変形し易い袋などを使用する場合には、袋を受止部材により袋の側方から受け止めさせておくことにより、袋をより安定した状態で作業台に載置することができる。
【0017】
その結果、作業台に載置した袋の形状(姿勢)を貯留量の増加にかかわらず略一定に保持することができ、作業台に載置した袋が貯留量の増加とともに変形して作業台から落下する恐れを効果的に抑制することができる。
【0018】
本発明の第4の課題解決手段では、上記第3の課題解決手段において、
前記受止部材を、載置姿勢の前記作業台に対して起立した使用姿勢と前記作業台に沿った格納姿勢とに姿勢切り換え可能に構成してある。
【0019】
残留粉粒体を回収する場合には、受止部材を使用姿勢に切り換えて回収容器を側方から受け止めさせておくことで回収容器をより安定した状態で作業台に載置することができる。又、残留粉粒体の回収を終えて作業台を格納する場合には、受止部材を格納姿勢に切り換えておくことで、作業台を格納位置に位置変更する際に受止部材が農作業機側の他物に干渉する恐れを回避し易くなる。
【0020】
従って、回収容器をより安定した状態で作業台に載置できるようにしながら、作業台の位置変更操作の際に受止部材が支障を来たす恐れを効果的に抑制することができる。
【0021】
本発明の第5の課題解決手段では、上記第1〜4の課題解決手段のいずれか一つにおいて、
前記走行車体における前記使用位置の前記作業台に隣接した位置に燃料タンクを配備してある。
【0022】
この課題解決手段によると、作業台を燃料補給用の補給タンクを載置する作業台として使用することができる。
【0023】
従って、燃料補給用の作業台を設けることなく燃料タンクへの燃料補給を行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】乗用田植機の全体右側面図である。
【図2】乗用田植機の平面図である。
【図3】第1実施形態での非回収状態を示す要部の右側面図である。
【図4】第1実施形態での回収状態を示す要部の右側面図である。
【図5】第1実施形態での非回収状態を示す要部の縦断正面図である。
【図6】第1実施形態での回収状態を示す要部の縦断正面図である。
【図7】施肥装置の構成を示す要部の縦断正面図である。
【図8】施肥装置の構成を示す要部の横断平面図である。
【図9】施肥装置の構成を示す要部の縦断右側面図である。
【図10】繰出機構の構成を示す要部の縦断右側面図である。
【図11】繰出機構の構成を示す要部の縦断正面図である。
【図12】作業状態での搬送風の流れを示す概略図である。
【図13】回収状態での搬送風の流れを示す概略図である。
【図14】搬送方向変更部及び閉塞部材の非回収状態を示す要部の縦断正面図である。
【図15】搬送方向変更部及び閉塞部材の回収状態を示す要部の縦断正面図である。
【図16】搬送方向変更部及び閉塞部材の非回収状態を示す要部の縦断側面図である。
【図17】閉塞部材の構成を示す図である。
【図18】第1実施形態での回収容器支持構造の構成を示す要部の背面図である。
【図19】第1実施形態での回収容器支持構造の構成を示す要部の分解斜視図である。
【図20】第1実施形態での別の回収容器支持構造を示す要部の縦断正面図である。
【図21】肥料繰り出し量の表示構造を示す要部の平面図である。
【図22】肥料繰り出し量の別の表示構造を示す要部の斜視図である。
【図23】肥料繰り出し量の別の表示構造で用いる目盛り表記部材の展開図である。
【図24】第2実施形態での回収容器支持構造の構成を示す要部の縦断正面図である。
【図25】第2実施形態での回収容器支持構造の構成を示す要部の右側面図である。
【図26】第2実施形態での回収容器支持構造の要部の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を農作業機の一例である乗用田植機に適用した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1〜6に示すように、この実施形態で例示する乗用田植機は、走行車体1の後部に、油圧式の昇降シリンダ2の作動で上下揺動するリンク機構3を介して、8条用の苗植付装置4を駆動昇降可能に連結してある。又、走行車体1の後部と苗植付装置4とにわたって粉粒体供給装置の一例である8条用の施肥装置5を装備してある。これにより、8条用のミッドマウント施肥仕様に構成してある。
【0027】
走行車体1は、車体フレーム6の前部に搭載したエンジン7からの動力を、主変速装置として備えた静油圧式無段変速装置(図示せず)及びトランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)8に副変速装置として内蔵したギア式変速装置(図示せず)などを介して左右の前輪9及び左右の後輪10に伝達する4輪駆動式に構成してある。左右の後輪10の車体外方側には、左右の後輪10と一体回転する補助車輪11を配備してある。エンジン7の後方には、前輪操舵用のステアリングホイール12及び運転座席13などを配備して搭乗運転部14を形成してある。
【0028】
車体フレーム6は、フレーム兼用のT/Mケース8、T/Mケース8の前部に連結した前部フレーム15、及び、T/Mケース8の後部に連結した後部フレーム16、などから構成してある。車体フレーム6には、搭乗運転部14の床面を形成する搭乗ステップ17、床面を左右に拡張する左右の拡張ステップ18、及び、左右の後輪10及び補助車輪11の上方に配置して苗植付装置4への苗補給などの際に踏み台として使用する後部ステップ19、などを装備してある。右側の拡張ステップ18の後部下方箇所には燃料タンク20を配備してある。燃料タンク20は、前後のタンク支持部材21,22を介して後部フレーム16に支持させてある。車体フレーム6の前部における左右の横側方箇所には、3枚の予備苗載台23を上下方向に所定間隔をあけて装備した予備苗載置フレーム24を立設してある。
【0029】
苗植付装置4には、T/Mケース8から取り出した植え付け作業用の動力を、走行車体1の下部に前後向きに配備した第1伝動軸25などで構成した植え付け伝動系26介して伝達してある。施肥装置5には、T/Mケース8から取り出した施肥用の動力を、走行車体1の下部に前後向きに配備した第2伝動軸27などで構成した施肥伝動系28を介して伝達してある。施肥伝動系28は、T/Mケース8から取り出した施肥用の動力で回転する第2伝動軸27の回転運動を揺動運動に変換する。
【0030】
図示は省略するが、T/Mケース8には、苗植付装置4への伝動を断続する植付クラッチ、及び、施肥装置5への伝動を断続する施肥クラッチを内蔵してある。
【0031】
図1及び図2に示すように、苗植付装置4は、T/Mケース8からの植え付け作業用の動力で、横送り機構(図示せず)、8基のロータリ式の植付機構29、及び、8基の縦送り機構30が作動する。そして、これらの作動で、最大8条の苗の植え付けを行うように構成してある。横送り機構は、その作動により8条分のマット状苗を載置するように形成した苗載台31を左右方向に一定ストロークで往復移動させる。各植付機構29は、その作動により苗載台31に載置したマット状苗の下端から所定量ずつの苗を切り取って圃場の泥土部に植え付ける。各縦送り機構30は、その作動により苗載台31が左右のストローク端に達するごとに各マット状苗を苗載台31の下端に向けて所定ピッチで縦送りする。苗植付装置4の底部には、5つの整地フロート32をそれらの後部を支点にして上下揺動する状態で左右方向に並べて配備してある。各整地フロート32は、走行車体1の走行に伴って接地滑走することにより苗植え付け予定箇所などの圃場泥面を整地する。
【0032】
図示は省略するが、苗植付装置4には、2条1組で植付機構29への伝動を断続する4つの植え付け用の補助クラッチと、2条1組で縦送り機構30への伝動を断続する4つの縦送り用の補助クラッチとを備えている。これらの植え付け用と縦送り用の各補助クラッチの操作は、搭乗運転部14に備えた補助クラッチ操作用の4つの操作具で行う。補助クラッチ操作用の各操作具は、同じ植え付け条に対応する植え付け用の補助クラッチと縦送り用の補助クラッチとを一括して操作するように、対応する植え付け用の補助クラッチと縦送り用の補助クラッチとに補助クラッチ操作用の連係機構を介して操作連係してある。補助クラッチ操作用の操作具には、例えばオンオフスイッチや操作レバーなどを採用することができる。補助クラッチ操作用の連係機構には、機械式や電気式のものなどを採用することができる。
【0033】
そして、これらの操作具で植え付け用と縦送り用の各補助クラッチを操作することにより、苗植付装置4の作動状態を、全ての植付機構29及び縦送り機構30を作動させる全条植え状態(8条植え状態)、左側6条に対応する植付機構29及び縦送り機構30を作動させる左6条植え状態、左側4条に対応する植付機構29及び縦送り機構30を作動させる左4条植え状態、左側2条に対応する植付機構29及び縦送り機構30を作動させる左2条植え状態、全ての植付機構29及び縦送り機構30を作動停止させる植え付け停止状態(整地作業状態)、右側6条に対応する植付機構29及び縦送り機構30を作動させる右6条植え状態、右側4条に対応する植付機構29及び縦送り機構30を作動させる右4条植え状態、又は、右側2条に対応する植付機構29及び縦送り機構30を作動させる右2条植え状態に切り換えることができる。
【0034】
図1〜13に示すように、施肥装置5は、走行車体1の後部に搭載した肥料送出部5A、及び、肥料送出部5Aから苗植付装置4にわたる肥料案内部5Bを備えている。肥料送出部5Aは、T/Mケース8からの施肥用の動力で4基の繰出機構33が作動して、粉粒体の一例である粒状肥料を貯留するホッパ34から所定量の粒状肥料を繰り出し、繰り出した各粒状肥料を、電動式の送風機35が生起する搬送風に乗せて肥料案内部5Bに送り出す。肥料案内部5Bは、肥料送出部5Aからの粒状肥料を、各繰出機構33に対して2本ずつ備えた合計8本の施肥ホース36により対応する作溝器37に流下案内し、各作溝器37により圃場の泥土内に埋没させる。これにより、最大8条の施肥を行うように構成してある。肥料送出部5Aは、後部ステップ19よりも上方に位置するように、後部フレーム16の後上部に連結した施肥フレーム38に支持させてある。
【0035】
各繰出機構33は、最大2条の粒状肥料を繰り出すことが可能な2条用に構成してある。ホッパ34は、透明樹脂製の4つの貯留容器39を左右方向に連結して構成してある。そして、各貯留容器39の上部開口を一括して開閉する単一の蓋体40を開閉揺動可能に装備してある。送風機35は、施肥装置5に伝動している状態での苗植付装置4の接地に連動して作動し、苗植付装置4の浮上に連動して作動停止するように構成してある。そして、その作動で生起した搬送風を分岐ダクト41及び左供給ダクト42又は右供給ダクト43を介して各繰出機構33に供給する。各施肥ホース36は、対応する繰出機構33が繰り出した粒状肥料を搬送風とともに対応する作溝器37に流下案内する。各作溝器37は、左右方向に所定間隔を隔てて位置するように対応する整地フロート32に装備してある。そして、走行車体1の走行に伴って、圃場における苗植え付け予定箇所の横側方近傍に位置する泥土部に施肥用の溝を形成し、この溝内に、対応する施肥ホース36が流下案内した粒状肥料を埋没させる。
【0036】
左右の供給ダクト42,43は、各下部ケース49の直前方箇所を通るように配置してある。左供給ダクト42の左端部には、平面視コの字状の中継ダクト44を介して回収ダクト45の左端部を連通接続してある。回収ダクト45は、各上部ケース48の直後方箇所を通るように配置してある。回収ダクト45の右端部には、搬送風と回収した粒状肥料とを分けて車体の右外方に排出する排出ダクト46の左端部を連通接続してある。右供給ダクト43の右端部には、右供給ダクト43の右端部を閉塞するキャップ47を接続してある。
【0037】
図10及び図11に示すように、各繰出機構33は、透明樹脂製の上部ケース48と下部ケース49とを備えている。上部ケース48と下部ケース49との間には、左右の肥料繰出部50を備えた左右向きの繰出軸51などを配備してある。各上部ケース48は、対応する貯留容器39の下部に連通接続してある。各下部ケース49は、左右の肥料繰出部50に対応して左右に区画した2つの漏斗部49Aを備える二股状に形成してある。左右の肥料繰出部50は、繰出軸51に相対回転可能に外嵌した左右の筒軸52に、それぞれ2つの繰出ロール53を一体回転するように外嵌して構成してある。左右の筒軸52は、繰出軸51に摺動操作可能に備えた3位置切り換え式のキー部材54を摺動操作することで、左右両方の筒軸52が繰出軸51と一体回転する2条繰り出し状態と、左側の筒軸52が繰出軸51と一体回転する左1条繰り出し状態と、右側の筒軸52が繰出軸51と一体回転する右1条繰り出し状態とに切り換えることができる。各繰出ロール53の外周には、肥料繰り出し用の複数の凹部53Aを周方向に一定間隔をあけて整列形成してある。上部ケース48と下部ケース49との間で左右の肥料繰出部50の前側には、各凹部53Aからはみ出す粒状肥料を掃き取るブラシ55を配備してある。これにより、各繰出機構33は、左右の肥料繰出部50が繰出軸51と右側面視で右回りに一体回転することで、対応する貯留容器39に貯留した粒状肥料を下部ケース49の左右の漏斗部49Aに所定量ずつ繰り出すことができる。
【0038】
図3〜11に示すように、各繰出軸51には従動ギア51Aを一体形成してある。各繰出軸51の直後方箇所には、各繰出機構33に共通する長尺の繰出駆動軸56を各繰出機構33にわたる左右向きの姿勢で配備してある。繰出駆動軸56における各従動ギア51Aとの対応箇所には、対応する従動ギア51Aに噛合する伝動ギア57を相対回転可能に外嵌してある。繰出駆動軸56と各伝動ギア57との間には、繰出駆動軸56から各伝動ギア57への伝動を断続する施肥用の補助クラッチ58を備えてある。繰出駆動軸56の右端部は、施肥伝動系28の揺動運動を間欠回転運動に変換するワンウェイクラッチ59を介して施肥伝動系28に連結してある。
【0039】
つまり、各繰出機構33は、T/Mケース8からの施肥用の動力で繰出軸51とともに左右の肥料繰出部50が間欠的に回転することで、左右の各肥料繰出部50から1条ずつの合計2条の粒状肥料を所定量ずつ繰り出し、又、繰出軸51とともに左右いずれかの肥料繰出部50が間欠的に回転することで、左右いずれかの肥料繰出部50から1条の粒状肥料を所定量ずつ繰り出すように構成してある。
【0040】
図示は省略するが、施肥用の各補助クラッチ58の操作は、搭乗運転部14に備えた補助クラッチ操作用の4つの操作具で、同じ植え付け条に対応する植え付け用の補助クラッチ及び縦送り用の補助クラッチとともに一括して行うように、対応する補助クラッチ操作用の操作具に補助クラッチ操作用の連係機構を介して操作連係してある。
【0041】
そして、これらの操作具で施肥用の各補助クラッチを操作することにより、施肥装置5の作動状態を、全ての繰出機構33を作動させる全条施肥状態(8条施肥状態)、左側6条に対応する繰出機構33を作動させる左6条施肥状態、左側4条に対応する繰出機構33を作動させる左4条施肥状態、左側2条に対応する繰出機構33を作動させる左2条施肥状態、全ての繰出機構33を作動停止させる施肥停止状態、右側6条に対応する繰出機構33を作動させる右6条施肥状態、右側4条に対応する繰出機構33を作動させる右4条施肥状態、又は、右側2条に対応する繰出機構33を作動させる右2条施肥状態に切り換えることができる。
【0042】
図10に示すように、各上部ケース48の後下部には左右に並ぶ2つの係合孔48Aを形成してある。各下部ケース49の後上部には、対応する上部ケース48の係合孔48Aに係入する左右の係合片49Bを形成してある。そして、各下部ケース49は、上部ケース48の係合孔48Aと下部ケース49の係合片49Bとが係合する後部の係合部を支点にして上下方向に開閉揺動する。
【0043】
図示は省略するが、各上部ケース48の左右両側部には係止突起を形成してある。各下部ケース49の左右両側部には、対応する上部ケース48の係止突起に係止することで、下部ケース49の上縁部を上部ケース48の下縁部に密接させた閉じ姿勢で下部ケース49を固定するロックレバーを上下方向に揺動操作可能に装備してある。
【0044】
各繰出機構33では、上部ケース48と下部ケース49との側面視での分割ラインが前上がり傾斜するように設定してある。これにより、下部ケース49を開き姿勢に切り換えて、下部ケース49が受け止め支持する左右の肥料繰出部50の状態などを繰出機構33の前上方側から視認する際に、上部ケース48を視界に入り難くすることができる。その結果、下部ケース49を開き姿勢に切り換えた状態で繰出機構33の前方側から行う各肥料繰出部50の清掃やブラシ55の交換などのメンテナンス作業が行い易くなる。
【0045】
図7〜13に示すように、各下部ケース49の左右の漏斗部49Aには、漏斗部49Aの底部から前方に向けて延出する円筒状の導風管部49Cと、漏斗部49Aの底部から後方に向けて延出する円筒状の排出管部49Dとを、漏斗部49Aの底部に連通するように形成してある。各導風管部49Cは、左右の供給ダクト42,43に、左右の供給ダクト42,43を流れる搬送風を導風管部49Cに導く導風部材60を介して連通接続してある。各排出管部49Dには対応する施肥ホース36を連通接続してある。これにより、各漏斗部49Aに繰り出した所定量の粒状肥料を、左右の供給ダクト42,43から各漏斗部49Aに導入した送風機35からの搬送風に乗せて、施肥ホース36及び作溝器37の内部を通して圃場の施肥溝内に供給することができる。
【0046】
各上部ケース48の背部には、ホッパ34及び上部ケース48に残った粒状肥料の回収を可能にする背面視矩形状の回収口48Bを形成してある。回収口48Bには回収ダクト45を連通接続してある。各上部ケース48には、回収口48Bを開閉する開閉部材61を、開閉部材61の上部に備えた左右向きの支軸62を支点にした開閉揺動操作が可能となるように装備してある。各開閉部材61は、施肥フレーム38に上下揺動可能に備えた単一の操作レバー63に、各開閉部材61に対応する第1連係機構64を介して連係してある。そして、この連係により、操作レバー63の上方への揺動操作に連動して各開閉部材61が一斉に閉じ方向に揺動し、操作レバー63の下方への揺動操作に連動して各開閉部材61が一斉に開き方向に揺動するように構成してある。
【0047】
操作レバー63は、長尺の支軸部63Aと短尺の把持部63Bとを有するL字状に屈曲形成してある。そして、支軸部63Aが各繰出機構33にわたる左右向きの姿勢になり、かつ、把持部63Bが搭乗運転部14に向けて延出する前後向きの姿勢になるように組み付け姿勢を設定してある。又、施肥フレーム38と把持部63Bとにわたって架設したトグルバネ65の作用で上下の2位置に切り換え保持することができる。
【0048】
送風機35は、運転座席13の下方に位置するように後部フレーム16に支持させてある。そして、送風機35の吸気管部35Aに連通接続した吸気ダクト66を介してエンジン周辺の高温で乾燥した外気を取り込むように構成してある〔図2参照〕。これにより、エンジン周辺の高温で乾燥した外気を搬送風に利用することができ、高温の乾燥した搬送風により粒状肥料を乾燥させて粒状肥料の搬送を促進させる効果を期待することができる。
【0049】
送風機35の排気管部35Bには分岐ダクト41の下端部を連通接続してある。分岐ダクト41には、前後向きの支軸67を支点にした上方への揺動操作で分岐ダクト41と右供給ダクト43との連通を遮断する遮断姿勢に切り換わり、前後向きの支軸67を支点にした下方への揺動操作で分岐ダクト41と右供給ダクト43とを連通する連通姿勢に切り換わる第1切換部材68を内蔵してある。第1切換部材68は、操作レバー63に第2連係機構69を介して連係してある。そして、この連係により、操作レバー63の上方への揺動操作に連動して連通姿勢に切り換わり、操作レバー63の下方への揺動操作に連動して遮断姿勢に切り換わるように構成してある。
【0050】
中継ダクト44には、上下向きの支軸70を支点にした前方への揺動操作で左供給ダクト42と回収ダクト45とを連通する連通姿勢に切り換わり、上下向きの支軸70を支点にした後方への揺動操作で左供給ダクト42と回収ダクト45との連通を遮断する遮断姿勢に切り換わる第2切換部材71を内蔵してある。第2切換部材71は、操作レバー63に第3連係機構72を介して連係してある。そして、この連係により、操作レバー63の上方への揺動操作に連動して遮断姿勢に切り換わり、操作レバー63の下方への揺動操作に連動して連通姿勢に切り換わるように構成してある。
【0051】
上記の構成から、操作レバー63の揺動操作に連動して全ての開閉部材61と第1切換部材68と第2切換部材71とが一斉に揺動変位する。そして、トグルバネ65の作用で操作レバー63を上側の操作位置に保持した状態では、各開閉部材61が対応する繰出機構33の回収口48Bを閉じる閉じ姿勢を維持し、第1切換部材68が分岐ダクト41と右供給ダクト43とを連通する連通姿勢を維持し、第2切換部材71が左供給ダクト42と回収ダクト45との連通を遮断する遮断姿勢を維持する。これにより、送風機35からの搬送風が、分岐ダクト41及び左右の供給ダクト42,43を通って各繰出機構33の左右の導風管部49Cから各繰出機構33の左右の漏斗部49Aに流れ込み、各繰出機構33が左右の漏斗部49Aに繰り出した所低量の粒状肥料を、対応する施肥ホース36及び作溝器37の内部を通して圃場の施肥溝内まで搬送するようになる。
【0052】
又、トグルバネ65の作用で操作レバー63を下側の操作位置に保持した状態では、各開閉部材61が対応する繰出機構33の回収口48Bを開く開き姿勢を維持し、第1切換部材68が分岐ダクト41と右供給ダクト43との連通を遮断する遮断姿勢を維持し、第2切換部材71が左供給ダクト42と回収ダクト45とを連通する連通姿勢を維持する。これにより、送風機35からの搬送風は、分岐ダクト41から左供給ダクト42及び中継ダクト44を通って回収ダクト45に流れ込み、各繰出機構33の回収口48Bから回収ダクト45に流下した粒状肥料(残留肥料)を排出ダクト46まで搬送するようになる。
【0053】
つまり、操作レバー63の上側の操作位置が施肥位置であり、いずれかの繰出機構33が作動している施肥状態において操作レバー63を施肥位置に操作することにより、送風機35からの搬送風を圃場への肥料供給に使用することができ、圃場への肥料供給を円滑に行うことができる。又、操作レバー63の下側の操作位置が肥料回収位置であり、施肥装置5に伝動して苗植付装置4を接地させた送風機作動状態で、補助クラッチ操作用の操作具を操作して全ての繰出機構33を作動停止させた施肥停止状態において、操作レバー63を肥料回収位置に操作することにより、送風機35からの搬送風を施肥装置5に残った粒状肥料の回収に使用することができ、残留肥料の回収を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0054】
図10、図12及び図13に示すように、回収ダクト45においては、各繰出機構33の回収口48Bとの接続部45Aを回収ダクト45の内部に向けて凹入させてある。又、各接続部45Aにおける肥料回収方向下手側の側面に平面視三角形状の絞り部45Bを形成してある。これにより、肥料回収時に搬送風が各回収口48Bから繰出機構33の内部に流れ込む、あるいは、回収ダクト45の接続部45Aで渦流が発生する、などに起因した肥料回収効率の低下を防止してある。
【0055】
図3〜9及び図12〜16に示すように、排出ダクト46は、回収ダクト45の右端部に連通接続する接続部46A、搬送方向を下向きに変更するヘの字状の搬送方向変更部46B、及び、粒状肥料の取り出しを可能にする取出口46C、を備えている。そして、取出口46Cが車体の右外方に位置するように回収ダクト45から延出させてある。
【0056】
接続部46Aは、その断面形状を回収ダクト45の右端部と同径の円形に形成してある〔図9参照〕。接続部46Aと回収ダクト45の右端部には、接続用のフランジ46D,45Cを形成してある。そして、接続部46Aと回収ダクト45の右端部とを、それらのフランジ46D,45Cに跨るコの字状の断面形状を有する環状の連結具73を介して相対回転可能に連通接続してある。
【0057】
搬送方向変更部46Bは、接続部46Aに連なる搬送方向上手側の断面形状を接続部46Aと同径の円形に形成してある〔図9参照〕。そして、搬送方向上手側の所定位置を、施肥フレーム38に備えた支持板74により下方から受け止めて支持させてある。又、右下がり傾斜する搬送方向下手側の断面形状を上端部が平坦になるD字状に形成してある〔図16参照〕。更に、搬送方向下手側の上端部には、上方に向けて膨出する矩形状の膨出部分46Baを備え、この膨出部分46Baに枠状の周縁を残して搬送方向の長さが長い矩形状の排気口46Bbを形成してある。そして、粒状肥料の粒径よりも小径の通気孔75aを多数形成して粒状肥料の通過を阻止するように構成した矩形状の多孔板75を、通気孔75aを多数形成した多孔面部75Aが排気口46Bbに臨むように膨出部分46Baに内嵌した状態で配備してある。膨出部分46Baの下方箇所には、多孔板75の周部が膨出部分46Baの周縁内面に接合する状態に多孔板75を保持する位置保持用の係止突起46Bcを内向きに突出形成してある。
【0058】
尚、多孔板75には、金属製のものや樹脂製のものなどを採用することができる。又、多孔板75に代えて、網目を粒状肥料よりも小さくして通気用とすることにより粒状肥料の通過を阻止するように構成した金網や樹脂網などのメッシュを採用してもよい。
【0059】
取出口46Cは、その断面形状を搬送方向変更部46Bにおける搬送方向下手側の形状と同じ形状の上端部が平坦になるD字状に形成してある〔図4参照〕。
【0060】
上記の構成から、排出ダクト46は、回収ダクト45から搬送風とともに回収した粒状肥料が流入すると、搬送方向変更部46Bの搬送方向下手側において、多孔板75を通過する搬送風と多孔板75を通過しない粒状肥料とに分離する。そして、多孔板75を通過しない粒状肥料を取出口46Cに向けて流下させて取出口46Cから外部に排出する。つまり、例えば粒状肥料を搬送風とともに取出口46Cから排出するように構成した場合には、取出口46Cからの粒状肥料を受け入れるように備えた肥料袋などの回収容器に粒状肥料とともに搬送風が流れ込むことになり、これにより、回収容器に貯留した粒状肥料が回収容器から吹き出して飛散する不都合を招き易くなる。これに対し、この実施形態で例示した構造では、搬送方向変更部46Bの搬送方向下手側において搬送風が外部に流出し、取出口46Cからは粒状肥料のみが流出するようになることから、取出口46Cからの粒状肥料を受け入れるように備えた肥料袋(回収容器の一例)Zに搬送風が流れ込むことを阻止することができる。その結果、搬送風が肥料袋Zに流れ込むことに起因した肥料袋Zからの粒状肥料の吹き出しを回避することができ、残留肥料の回収を無駄なく効率良く行うことができる。
【0061】
又、回収ダクト45の右端部と排出ダクト46の接続部46Aとを環状の連結具73を介して相対回転可能に連通接続することにより、回収ダクト45に対して排出ダクト46の接続部46Aを、回収ダクト45と接続部46Aとの共通する中心軸を支点にして相対回転させることができ、その結果、排出ダクト46による粒状肥料の流下案内方向を前後方向に調節することができる。
【0062】
図15に示すように、搬送方向変更部46Bにおいては、多孔板75に対する粒状肥料の衝突角度θが比較的浅い角度(45度よりも小さい角度で例えば30度程度)になるように設定してある。これにより、多孔板75に粒状肥料が衝突する際の衝撃を弱めることができ、多孔板75に衝突する際の衝撃で粒状肥料が損傷する恐れや、多孔板75への衝突で砕けた粒状肥料が多孔板75を通過することに起因した肥料回収率の低下を防止することができる。
【0063】
又、搬送方向変更部46Bの排気口46Bbに対する搬送方向上手側の直前箇所を搬送方向変更部46Bの湾曲箇所46Bdに設定してある。これにより、粒状肥料は、湾曲箇所46Bdを通過する際には多孔板75から離れる下向きの案内作用を受けることから、多孔板75に粒状肥料が衝突する際の衝撃を更に弱めることができる。これにより、多孔板75への衝突で粒状肥料が損傷する恐れや、多孔板75への衝突で砕けた粒状肥料が多孔板75を通過することに起因した肥料回収率の低下をより確実に防止することができる。
【0064】
搬送方向変更部46Bにおいては、排気口46Bbの上縁(多孔板75における多孔面部75Aの上端)が搬送方向変更部46Bの搬送方向上手側の内周上端と同じ高さ位置に位置し、かつ、排気口46Bbの下縁(多孔板75における多孔面部75Aの下端)が搬送方向変更部46Bの搬送方向上手側の内周下端よりも低い位置に位置するように形成してある。これにより、側面視(搬送方向変更部46Bの搬送方向上手側での搬送方向視)においては、搬送方向変更部46Bにおける搬送方向上手側の風路断面の略全域が排気口46Bbに臨むようになっている。その結果、回収ダクト45の延長線上に位置する搬送方向変更部46Bの搬送方向上手側を通った搬送風を排気口46Bbに備えた多孔板75の各通気孔75aから円滑に流出させることができる。
【0065】
尚、搬送方向変更部46Bとしては、排気口46Bbの上縁(多孔板75における多孔面部75Aの上端)が搬送方向変更部46Bの搬送方向上手側の内周上端と略同じ高さになるように形成したものであってもよく、又、排気口46Bbの下縁が搬送方向変更部46Bの搬送方向上手側の内周下端と同じ高さになる又は内周下端よりも少し高くなるように形成したものであってもよい。
【0066】
図1〜8及び図15〜17に示すように、排出ダクト46には、ゴム製のカバー体76を簡易着脱可能に取り付けてある。カバー体76は、搬送方向変更部46Bの上端部を上方から覆って排気口46Bbを塞ぐ平面視矩形状のカバー部76Aを備えている。カバー部76Aの右端部には、取出口46Cを塞ぐ側面視略D字状のキャップ部76Bを一体形成してある。カバー部76Aには、キャップ部76Bの上半部に形成した垂下壁部76Baに連なる周壁76Aaを備えてある。カバー部76Aの左端部には、排出ダクト46の接続部46Aに立設した第1係止突起46Eに外嵌する第1係止環76Cを一体形成してある。キャップ部76Bの下部には、排出ダクト46の右端部に垂下装備した第2係止突起46F又は排出ダクト46の右端部に立設した第3係止突起46Gに外嵌する第2係止環76Dを一体形成してある。第2係止環76Dの下端には操作片76Eを一体形成してある。カバー部76Aの右端上部には、排出ダクト46の第2係止突起46Fにカバー体76の第2係止環76Dを外嵌した場合に排出ダクト46の第3係止突起46Gを上方から覆う半球形の膨出部分76Abを備えてある。キャップ部76Bには、排出ダクト46の取出口周縁に外向きに膨出形成した環状の突条46Caに外嵌する環状の係合溝76Bbを形成してある。
【0067】
上記の構成から、排出ダクト46の第1係止突起46Eにカバー体76の第1係止環76Cを外嵌してカバー体76の左端部を固定した状態において、走行車体1の右外方からカバー体76の操作片76Eを把持して第2係止環76Dの係止位置を排出ダクト46の第2係止突起46Fと第3係止突起46Gとに変更することにより、排出ダクト46に対するカバー体76の取り付け姿勢を、カバー体76により搬送方向変更部46Bの搬送方向下手側を上方から覆ってカバー部76Aで排気口46Bbを塞ぐとともにキャップ部76Bで取出口46Cを塞ぐ閉塞姿勢〔図14参照〕と、カバー体76が搬送方向変更部46Bの排気口46Bb及び取出口46Cの直上方に位置して排気口46Bb及び取出口46Cを開放する開放姿勢〔図15参照〕とに簡単に変更することができる。
【0068】
これにより、粒状肥料を回収しない施肥作業時や移動走行中の作業停止時などにおいては、カバー体76の取り付け姿勢を閉塞姿勢とすることにより、施肥作業時や作業停止時などにおける排出ダクト46の排気口46Bb及び取出口46Cからの雨水などの浸入を防止することができる。又、粒状肥料を回収する肥料回収時においては、カバー体76の取り付け姿勢を開放姿勢とすることにより、搬送方向変更部46Bにおいて搬送風と粒状肥料とを分離して取出口46Cから回収した粒状肥料を取り出すことができる。そして、この開放姿勢では、カバー体76が搬送方向変更部46Bの上方に位置することにより、排出ダクト46の排気口46Bb及び取出口46Cからの雨水などの浸入を抑制することができる。つまり、カバー体76を雨除けとして使用することができる。
【0069】
特に、カバー体76の閉塞姿勢では、排気口46Bbを形成した搬送方向変更部46Bにおける搬送方向下手側の上端部周縁をカバー部76Aの周壁76Aaが囲むように覆い、かつ、キャップ部76Bの係合溝76Bbが排出ダクト46における取出口周縁の突条46Caに取出口46Cの全周にわたって外嵌することから、高圧の洗浄水を吹き掛けた場合における排出ダクト46の排気口46Bb及び取出口46Cからの洗浄水の浸入を抑制することができる。
【0070】
そして、回収した粒状肥料を肥料袋Zに貯留する場合には、肥料袋Zの外側上端部をカバー体76の第2係止環76Dと排出ダクト46の第3係止突起46Gとの間に挟み込むことにより、肥料袋Zの上部を排出ダクト46の搬送終端に被せた状態で固定することができる〔図6及び図15参照〕。これにより、排出ダクト46の下方に位置させた作業台77に載置した肥料袋Zの姿勢を肥料貯留量の増加にかかわらず略一定に保持することができる。その結果、作業台77に載置した肥料袋Zが粒状肥料の貯留とともに変形して作業台77から落下する不具合の発生を未然に回避することができる。
【0071】
図5〜7、図14及び図15に示すように、カバー体76は、閉塞姿勢が搬送方向変更部46Bの搬送方向下手側を上方から覆う右下がり姿勢であるのに対して、開放姿勢を略水平姿勢に設定してある。これにより、右下がり姿勢の搬送方向変更部46Bの搬送方向下手側に対して、カバー体76の開放姿勢での車体右外方への延出長さを長くすることができる。これにより、カバー体76を、車体の右外方に向けて延出する排出ダクト46の排気口46Bb及び取出口46Cからの雨水などの浸入を抑制する雨除けとしてより好適に機能させることができる。
【0072】
尚、この実施形態では、分岐ダクト41、左供給ダクト42、及び右供給ダクト43により、送風機35からの搬送風を各繰出機構33に供給して圃場への肥料供給に使用する肥料供給経路Aを形成してある。又、分岐ダクト41、左供給ダクト42、中継ダクト44、回収ダクト45、及び排出ダクト46により、送風機35からの搬送風を、各繰出機構33を迂回させて施肥装置5に残った粒状肥料の回収に使用する肥料回収経路(粉粒体回収経路)Bを形成してある。
【0073】
図1〜6、図18及び図19に示すように、走行車体1の後部右側方箇所には、前後向きの支軸78を支点した上下揺動操作が可能で、かつ、前後向きの支軸78に対する前後摺動操作が可能な支持アーム79を配備してある。前後向きの支軸78は、前後方向に所定間隔をあけて対向するように後部フレーム16の右側部に備えた前支持板80と後支持板81とにわたって架設してある。前後向きの支軸78及び前後の支持板80,81は、側面視で右側の補助車輪11(後輪10)と燃料タンク20との間に位置するように配置してある。支持アーム79は、L字状に屈曲形成した丸パイプ鋼材などにより、支軸78から延出して右側の補助車輪11と燃料タンク20との間を通るアーム部79A、及び、アーム部79Aの延出端から後方に向けて延出する支持部79B、などを備えるように形成してある。そして、この支持アーム79の支持部79Bに作業台77を溶接してある。
【0074】
つまり、作業台77は、後部フレーム16から右側の補助車輪11を迂回するように延出したL字状の支持アーム79に片持ち支持させてある。そして、前後向きの支軸78を支点した支持アーム79の上下揺動操作による格納位置と使用位置との位置変更が可能となるように構成してある。
【0075】
作業台77の格納位置は、8条用の施肥装置5では、走行車体1の後部に搭載した肥料送出部5Aの左右幅が左右の補助車輪11の中心間距離と略同じであることから、右側の補助車輪11の上部右側端に近接する上方の位置に設定してある。そして、格納位置での作業台77の姿勢を、車体右外方への張り出しを抑制する非載置姿勢に設定してある。一方、作業台77の使用位置は、排出ダクト46の取出口46Cが右側の補助車輪11の右上方に位置していることから、右側の補助車輪11の右外方で取出口46Cから下方に所定距離(肥料袋Zの大きさを考慮した適切な距離)を隔てた下方の位置に設定してある。そして、使用位置では、作業台77の姿勢が載置姿勢であることから右側の補助車輪11の右外方に張り出すようになる。
【0076】
作業台77の非載置姿勢は、作業台77の右外方への張り出しを抑制する垂直姿勢又は略垂直姿勢である。作業台77の載置姿勢は、肥料袋Zを安定性良く載置することのできる水平姿勢又は略水平姿勢である。
【0077】
これにより、作業台77を、肥料袋Zの載置が可能な載置姿勢で走行車体1の外方に張り出す下方側の使用位置と、使用位置よりも車体外方への張り出し量が減少する上方側の格納位置とに位置変更可能に装備してある。
【0078】
支持アーム79の揺動支点部79Cは、前後向きの支軸78に相対回転可能かつ相対摺動可能に外嵌する前後の嵌合片79Ca,79Cbを備えるコの字状に形成してある。前後の嵌合片79Ca,79Cbには嵌合用の貫通孔79Ccを穿設してある。揺動支点部79Cには、後支持板81に形成した上下2つの凹部81A,81Bに係合する前後向きの係合ピン82を固定してある。係合ピン82は、支持アーム79の前方への摺動操作により後支持板81から離間して支持アーム79の上下揺動操作を許容する。又、支持アーム79の上下揺動操作で上下いずれかの凹部81A,81Bに対向した場合に支持アーム79の後方への摺動操作を許容する。そして、支持アーム79の後方への摺動操作で係合ピン82を上側の凹部81Aに係合することで作業台77を格納位置に保持することができる。又、係合ピン82を下側の凹部81Bに係合することで作業台77を使用位置に保持することができる。
【0079】
支持アーム79のアーム部79Aと後支持板81とにわたって、支持アーム79を後方に摺動付勢しながら支持アーム79の上下揺動操作に伴って支持アーム79を上方に揺動付勢する状態と下方に揺動付勢する状態とに切り換わるトグルバネ83を架設してある。そして、このトグルバネ83の作用で、係合ピン82を上側の凹部81Aに係合した状態と下側の凹部81Bに係合した状態とに切り換え保持することができる。
【0080】
上記の構成から、支持アーム79をトグルバネ83の付勢に抗して前方に摺動操作した後に、支持アーム79を上方に揺動操作して、トグルバネ83の付勢で係合ピン82を後支持板81の上側の凹部81Aに係合させることにより、作業台77を格納位置に切り換え保持することができる。又、支持アーム79をトグルバネ83の付勢に抗して前方に摺動操作した後に、支持アーム79を下方に揺動操作して、トグルバネ83の付勢で係合ピン82を後支持板81の下側の凹部81Bに係合させることにより、作業台77を使用位置に切り換え保持することができる。
【0081】
図3〜6、図18及び図19に示すように、作業台77は、前後に起立部77Aaを備えた平面視矩形のループ状に形成した丸棒鋼材からなる第1部材77Aの前後に、右端部に起立部77Baを備えた平面視矩形のループ状に形成した丸棒鋼材からなる2つの第2部材77Bを載置した状態で溶接して格子状に構成してある。作業台77の左端部には、作業台77に載置した肥料袋Zを車体側の横側方から受け止める受止部材84を備えている。受止部材84は、コの字状に屈曲形成した丸棒鋼材の両端側を各第2部材77Bの左端部77Bbに巻き付けることにより、載置姿勢の作業台77に対して起立した使用姿勢と作業台77に沿った格納姿勢とに、前後の第2部材77Bの左端部77Bbを支点にした揺動による姿勢切り換えが可能となるように構成してある。そして、受止部材84の両端部84Aを、第1部材77Aの左端部77Abとの接当で受止部材84を使用姿勢に保持する接当部として機能するように形成してある。又、第1部材77Aの起立部77Aaは、格納姿勢に切り換えた受止部材84の遊端部84Bとの係合により受止部材84を格納姿勢に保持する係合部として機能するように受止部材側に傾倒させてある。
【0082】
上記の構成から、作業台77を格納位置に保持する場合には、受止部材84を格納姿勢に切り換えて受止部材84の遊端部84Bを第1部材77Aの起立部77Aaに係合しておくことにより、走行時の振動などにかかわらず受止部材84を格納姿勢の作業台77に沿って起立する格納姿勢に安定して保持することができる。そして、作業台77を使用位置に保持して肥料袋Zを載置する場合には、受止部材84を使用姿勢に切り換えて肥料袋Zを凭れ掛けさせることにより、肥料袋Zをより安定した状態で作業台77に載置することができる。又、作業台77の各起立部77Aa,77Ba及び受止部材84により、肥料袋Zの底部を作業台上に確実に保持することができる。しかも、作業台7を格子状に構成したことにより、貯留袋Zへの粒状肥料の貯留とともに貯留袋Zの底部が部分的に第1部材77Aと第2部材77Bとの間に入り込み、作業台7に対する位置ズレを防止するようになる。その結果、作業台77に載置した肥料袋Zの姿勢及び位置を肥料貯留量の増加にかかわらず略一定に保持することができ、作業台77に載置した肥料袋Zが粒状肥料の貯留とともに変形又は移動して作業台77から落下する恐れを未然に回避することができる。
【0083】
そして、作業台77を格納位置に保持した状態では、作業台77とともに支持アーム79が、右側の拡張ステップ18の右端から右外方に食み出した燃料タンク20の給油筒20Aと、右側の後部ステップ19の右端から右外方に食み出した施肥装置5の排出ダクト46との間に位置して、燃料タンク20の給油筒20A及び施肥装置5の排出ダクト46への他物の接触を抑制するガードとして機能するように構成してある。
【0084】
又、作業台77を使用位置に保持した状態では、作業台77が燃料タンク20の給油筒20Aの直後方に位置することから、作業台77を燃料補給用の補給タンク(図示せず)を載置する作業台としても使用することができる。
【0085】
図1及び図2に示すように、作業台77は、右側の予備苗載台23に対しては、使用位置では予備苗載台23の右端から右外方に食み出し、格納位置では予備苗載台23の右端よりも車体側に位置するように構成してある。又、苗載台31に対しては、使用位置と格納位置とにかかわらず苗載台31の右端よりも車体側に位置するように構成してある。更に、右側の拡張ステップ18の右下方に配備した乗降用の右側の補助ステップ85に対しては、使用位置では補助ステップ85の右端から右外方に食み出し、格納位置では補助ステップ85の右端よりも車体側に位置するように構成してある。
【0086】
ところで、図20に示すように、8条よりも作業条数が少ない例えば6条用のミッドマウント施肥仕様に構成した乗用田植機においては、走行車体1の後部に搭載する6条用の施肥装置5における肥料送出部5Aの左右幅が左右の補助車輪11の中心間距離よりも短くなる。そこで、このような乗用田植機に作業台77を格納位置と使用位置とに位置変更可能に装備する場合には、同図に示すように、支持アーム79におけるアーム部79Aの長さを長くして、作業台77の格納位置では、作業台77が右側の補助車輪11の真上に非載置姿勢で位置して施肥装置5の肥料送出部5Aに近接するように構成してもよい。
【0087】
図7〜9に示すように、施肥伝動系28は、第2伝動軸27の回転運動を、第2伝動軸27と一体回転する回転アーム86、及び、回転アーム86の回転で上下動する第1連係ロッド87を介して、第1揺動アーム88の揺動運動に変換する。そして、第1揺動アーム88の揺動運動を、第1揺動アーム88の揺動支点を兼ねる左右向きの伝動軸89を介して、施肥フレーム38の右側部に配備した繰出量調節機構90に伝達し、繰出量調節機構90により揺動ストローク量を調節した後の揺動運動を、第2連係ロッド91を介して第2揺動アーム92に伝達する。第2揺動アーム92は、繰出駆動軸56の右端部にワンウェイクラッチ59を介して連結してある。
【0088】
図9に示すように、繰出量調節機構90は、伝動軸89を介して第1揺動アーム88と一体揺動する揺動アーム93の揺動運動を、連係ロッド94を介して天秤アーム95に伝達する。そして、天秤アーム95の出力側の揺動運動を第2連係ロッド91を介して第2揺動アーム92に伝動する。天秤アーム95は、天秤アーム95に対する揺動支点軸96の前後方向への位置変更が可能となるように構成してある。又、揺動支点軸96を位置変更可能に支持する案内板97に装備した揺動規制アーム98により、天秤アーム95の入力側の揺動ストローク量を揺動支点軸96の位置変更にかかわらず一定に制限してある。これにより、揺動支点軸96の前後方向への位置変更に応じて天秤アーム95の出力側の揺動ストローク量を調節できるように構成してある。そして、このように天秤アーム95の出力側の揺動ストローク量を調節することで、繰出駆動軸56の回転操作角とともに繰出駆動軸56と連動する繰出機構33の繰出ロール53の回転操作角を変更することができ、繰出ロール53の回転による肥料繰り出し量を調節することができる。天秤アーム95の揺動支点軸96は、ネジ送り式に構成した調節機構部99の操作具100を回転操作することにより天秤アーム95に対する前後位置を任意に変更することができる。
【0089】
図9及び図21に示すように、繰出量調節機構90の調節機構部99には、操作具100による肥料繰り出し量の調節に連動して天秤アーム95の揺動支点軸96とともに前後方向に移動する指針101を備えている。繰出量調節機構90を覆うカバー102の上面には、指針101の移動経路となる長孔102Aを形成してある。そして、長孔102Aの一側縁に沿って、天秤アーム95の揺動支点軸96の前後移動に応じて変化する肥料繰り出し量に対応して刻んだ目盛りを表記してある。つまり、指針101及び目盛りにより繰出量調節機構90による調節後の肥料繰り出し量を表示するように構成してある。
【0090】
ところで、揺動支点軸96の前後移動量と肥料繰り出し量との関係は粒状肥料の粒径などで異なるかさ比重に応じて変化することから、粒状肥料の繰り出し量を示す目盛りとしては、粒状肥料の種類などで異なる粒径などに対応した複数種のものを備えることが現実的である。しかしながら、複数種の目盛りを同一面上に並べて表記すると、使用する目盛りを見誤って間違った位置に指針101を合わせてしまう恐れがある。
【0091】
そこで、目盛りの見誤りを解消するための手段として以下に例示する目盛り切り換え手段103を採用するようにしてもよい。
【0092】
図22及び図23に示すように、目盛り切り換え手段103は、カバー102の上面に、多角柱状(例示は三角柱状)に形成した目盛表記部材104を、カバー102の長孔102Aに沿った横向き姿勢で表示部材106の中心を回転軸心Pとした回転操作が可能となるように配備してある。そして、目盛表記部材104の各面に、粒状肥料の種類などで異なる粒径などに対応させた複数種の目盛りを個別に表記してある。又、目盛表記部材104の所定又は任意の回転姿勢での保持を可能にする保持機構(図示せず)を備えている。
【0093】
つまり、目盛表記部材104を、使用する粒状肥料に対応する目盛りに指針101を合わせ易い回転姿勢に回転操作することにより、使用する目盛りを見誤って間違った位置に指針101を合わせてしまう恐れを未然に回避することができる。
【0094】
図示は省略するが、カバー102の上面に、目盛表記部材104の目盛り表記面を選択切り換え可能に臨ませる矩形状の開口を形成して、目盛表記部材104をカバー102の内部に備えるようにしてもよい。
【0095】
〔第2実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を農作業機の一例である乗用田植機に適用した第2実施形態を図面に基づいて説明する。尚、この第2実施形態は、肥料袋(回収容器の一例)Zの支持構造が前述した第1実施形態と異なることから、以下、肥料袋Zの支持構造についてのみ図面に基づいて説明する。
【0096】
図24〜26に示すように、第2実施形態では、施肥フレーム38から延出した支持アーム79の延出端に作業台77を装備してある。作業台77は、コの字状に屈曲形成した揺動部材77Cの遊端側に載置面を形成する板状部材77Dを溶接して構成してある。そして、支持アーム79の延出端に、前後向きの支軸105を介して、前後向きの支軸105を支点にした揺動操作で非載置姿勢と載置姿勢とに姿勢切り換え可能に連結してある。又、揺動部材77Cと支持アーム79とにわたって架設したトグルバネ106の作用で非載置姿勢と載置姿勢とに切り換え保持することができる。
【0097】
支持アーム79は、ヘの字状に屈曲形成した丸パイプ鋼材などからなる第1アーム部79D、及び、前後の角パイプ鋼材などからなる第2アーム部79E、などを備えている。第1アーム部79Dは、施肥フレーム38の右後部に備えた支持部材107に支持させてある。第2アーム部79Eは、第1アーム部79Dの右端部に、前後向きの支軸79Fを介して、前後向きの支軸79Fを支点にした上下揺動操作が可能となるように連結してある。そして、第2アーム部79Eの遊端に作業台77を連結してある。第2アーム部79Eの遊端には、作業台77を載置姿勢に切り換えた状態において揺動部材77Cを受け止め支持する受板79Eaを溶接してある。前後向きの支軸79Fは、回収した粒状肥料を排出する排出ダクト46の取出口46Cと同じ高さで右側の補助車輪11の真上に位置するように配置設定してある。第2アーム部79Eの長さは、第2アーム部79Eの下方への揺動で作業台77を右側の補助車輪11の右外方で取出口46Cから下方に所定距離(肥料袋Zの大きさを考慮した適切な距離)を隔てた下方の位置に位置させることが可能な長さに設定してある。
【0098】
上記の構成から、第2アーム部79Eを前後向きの支軸79Fを支点にして下方に揺動操作し、作業台77を載置姿勢に切り換えることにより、載置姿勢の作業台77を、右側の補助車輪11の右外方に張り出す下方側の使用位置に位置させることができる。又、作業台77を非載置姿勢に切り換え、第2アーム部79Eを前後向きの支軸79Fを支点にして上方に揺動操作することにより、非載置姿勢の作業台77を、第2アーム部79Eとともに補助車輪11の真上に位置して施肥装置5の肥料送出部5Aの右側端に近接する上方側の格納位置に位置させることができる。
【0099】
そして、作業台77を使用位置に位置させた状態では、第2アーム部79Eが作業台77に載置した肥料袋Zを車体側の横側方から受け止める受止部材84として機能するように構成してある。
【0100】
繰出量調節機構90を覆うカバー102の右側面には、係合凹部108Aを形成した受具108を備えてある。第2アーム部79Eには、作業台77を格納位置に位置させた場合に係合凹部108Aに係入する前後向きの係合ピン79Ebを溶接してある。受具108には、前後向きの支軸109を支点にした揺動操作で、係合凹部108Aに係入した係合ピン79Ebに係合して係合凹部108Aからの係合ピン79Ebの離脱を阻止する係合状態と、係合ピン79Ebとの係合を解除する解除状態とに切り換え可能な係合片110を備えている。つまり、係合凹部108Aに係入した係合ピン79Ebに係合片110を係合させることにより、作業台77を格納位置に保持することができる。
【0101】
第2アーム部79Eは、第2アーム部79Eの揺動支点側のエッジ部分79Ecが第1アーム部79Dに接当する位置を下限位置に設定してある。第1アーム部79Dの右端部には、前後向きの支軸111を支点にして揺動する揺動部材112を備えてある。揺動部材112は、左アーム部112Aと右アーム部112Bと連係アーム部112Cとを備える前後方向視略T字状に形成してある。そして、第2アーム部79Eと揺動部材112の連係アーム部112Cとにわたって、第2アーム部79Eの上下揺動操作に伴って第2アーム部79Eを上方に揺動付勢する状態と下方に揺動付勢する状態とに切り換わるトグルバネ113を架設してある。
【0102】
これにより、第2アーム部79Eを上方に揺動操作する場合は、先ず、この操作に伴うトグルバネ113を介した引っ張り作用で、揺動部材112が前後向きの支軸111を支点にして正面視右回りに揺動し、揺動部材112の左アーム部112Aが第1アーム部79Dに接当する。そして、この接当後に発生するトグルバネ113の引っ張り作用で第2アーム部79Eを上方に揺動付勢するように構成してある。又、第2アーム部79Eを下方に揺動操作する場合は、先ず、この操作に伴うトグルバネ113を介した押し上げ作用で、揺動部材112が前後向きの支軸111を支点にして正面視左回りに揺動し、揺動部材112の右アーム部112Bが第1アーム部79Dに沿った姿勢で第1アーム部79Dに接当する。そして、この接当後に発生するトグルバネ113の弾性で第2アーム部79Eのエッジ部分79Ecが第1アーム部79Dに接当する際の衝撃を吸収するように構成してある。
【0103】
〔別実施形態〕
【0104】
〔1〕農作業機としては、施肥装置、薬剤散布装置、及び播種装置などの粉粒体供給装置のいずれか一つ又は複数を備えた乗用田植機、直播機、あるいはトラクタなどであってもよい。又、乗用田植機としては、左右幅を車体幅などに減少可能に構成した折り畳み式の苗植付装置4を備えるものであってもよい。
【0105】
〔2〕粉粒体供給装置5としては、粉状の肥料を供給する施肥装置、粉粒状の薬剤を供給する薬剤散布装置、あるいは播種装置、などであってもよい。又、送風機35を走行車体1の左右一側部に配備するように構成したものであってもよい。更に、送風機35を備えていないものであってもよい。
【0106】
〔3〕走行車体1としては、補助車輪11を装備しないものであってもよい。又、エンジン7を運転座席13の下方に配備したものであってもよい。そして、補助車輪11を装備しないものにおいては、作業台77の格納位置を後輪10に近接させた位置に設定して、補助車輪11に近接させた位置に設定する場合よりも走行車体1に近づけた位置に作業台77を格納できるように構成してもよい。
【0107】
〔4〕粉粒体回収経路Bとしては、送風機35からの搬送風を使用せずに粉粒体の自然流下で粉粒体を回収するように構成したものであってもよい。又、回収専用の送風機を備えるように構成したものであってもよい。更に、粉粒体供給経路Aとは別に独立して構成したものであってもよい。
【0108】
〔5〕作業台77としては、上下向きの支軸を支点にした支持アーム79の前後揺動操作、左右向きの支軸を支点にした支持アーム79の上下揺動操作、あるいは、水平方向への支持アーム79の摺動操作などで使用位置と格納位置とに位置変更可能に構成したものであってもよい。又、支持アーム79の揺動操作と摺動操作の組み合わせで使用位置と格納位置とに位置変更可能に構成したものであってもよい。更に、作業台77の使用位置と格納位置との付け替えで使用位置と格納位置とに位置変更可能に構成したものであってもよい。
【0109】
〔6〕作業台77の使用位置は粉粒体回収経路Bの取出口46Cの位置などに応じて種々の変更が可能である。例えば、粉粒体回収経路Bの取出口46Cが走行車体1の左側に位置する場合には、作業台77の使用位置を走行車体1の左側の位置に設定してもよい。又、作業台77の格納位置は車体構造などに応じて種々の変更が可能である。例えば、作業台77の格納位置を、燃料タンク20を車体外方側から覆う位置に設定してもよい。
【0110】
〔7〕作業台77を使用位置において粉粒体回収経路Bの取出口46Cに対する高さ調節が可能となるように構成してもよい。
【0111】
〔8〕作業台77に受止部材84を着脱可能に装備するようにしてもよい。又、作業台77に複数の受止部材84を装備するようにしてもよい。
【0112】
〔9〕回収容器Zとしては肥料袋以外の袋やバケツなどであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、施肥装置、薬剤散布装置、及び播種装置などの粉粒体供給装置のいずれか一つ又は複数を備えた乗用田植機、直播機、あるいはトラクタなどの農作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 走行車体
5 粉粒体供給装置
10 後輪
11 補助車輪
20 燃料タンク
46C 取出口
77 作業台
79 支持アーム
84 受止部材
B 粉粒体回収経路
Z 回収容器
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体供給装置に残った粉粒体を走行車体の外方に案内して、案内終端の取出口からの残留粉粒体の取り出しを可能にする粉粒体回収経路を備えた農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような農作業機としては、取出口から取り出した残留粉粒体を貯留する回収容器を載置するための作業台(容器受台)を、回収容器の載置が可能な載置姿勢で後輪の車体外方側に位置するように、粉粒体回収経路を形成する排出パイプに一体的に備えるように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−215624号公報(段落番号0029、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、粉粒体供給装置に残った粉粒体を回収する場合には、作業台に回収容器を載置することにより、回収容器を手で抱えることなく、取出口から取り出した残留粉粒体を回収容器に貯留することができる。
【0005】
しかしながら、作業台が常に車体の横外方側に張り出した状態になることから、走行中に作業台を他物に接触させる不都合を招き易くなる。そのため、輸送のために狭いトラックの荷台に乗せる場合や狭い納屋に格納する場合などにおいて、作業台が邪魔になって荷台への積み込みや納屋への格納に手間取り易くなっていた。
【0006】
本発明の目的は、作業台を備える構成でありながら、狭い荷台への積み込みや狭い納屋への格納を容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の課題解決手段では、粉粒体供給装置に残った粉粒体を走行車体の外方に案内して、案内終端の取出口からの残留粉粒体の取り出しを可能にする粉粒体回収経路を備えた農作業機において、
前記取出口から取り出した残留粉粒体を貯留する回収容器を載置する作業台を、前記回収容器の載置が可能な載置姿勢で前記走行車体の外方に張り出す使用位置と、前記使用位置よりも車体外方への張り出し量が減少する格納位置とに位置変更可能に装備してある。
【0008】
この課題解決手段によると、粉粒体供給装置に残った粉粒体を回収する場合には、作業台を使用位置に位置させて回収容器を作業台に載置することにより、回収容器を手で抱えることなく、取出口から取り出した残留粉粒体を回収容器に貯留することができる。これにより、残留粉粒体の回収に要する労力を軽減することができる。
【0009】
残留粉粒体を回収しない場合は、作業台を格納位置に位置させることにより、走行中に作業台が他物に接触する不都合を招き難くすることができる。これにより、輸送のために狭いトラックの荷台に乗せる場合や狭い納屋に格納する場合などにおいて作業台が邪魔になることを抑制することができる。
【0010】
従って、残留粉粒体の回収に要する労力を軽減できる作業台を備える構成でありながら、狭い荷台への積み込みや狭い納屋への格納を容易に行うことができる。
【0011】
本発明の第2の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記使用位置を、後輪の車体外方側に配備した補助車輪の車体外方側に設定し、
前記作業台を、前記走行車体から前記後輪及び前記補助車輪を迂回して前記使用位置に延出するL字状の支持アームで片持ち支持するように構成してある。
【0012】
この課題解決手段によると、乗用田植機やトラクタなどの農作業機では、走行車体の後部に施肥装置や薬剤散布装置などの粉粒体供給装置を配備することが一般的であり、又、軟弱な圃場での走行を良好に行えるようにするために後輪の車体外方側に補助車輪を配備することが多いことから、作業台の使用位置を補助車輪の車体外方側に設定することにより、残留粉粒体を回収する場合には、作業台とともに回収容器を粉粒体供給装置に近い残留粉粒体の回収に適した位置に位置させることができる。
【0013】
そして、後輪及び補助車輪を迂回するL字状の支持アームで作業台を片持ち支持することにより、後輪及び補助車輪を迂回するコの字状などの支持部材で作業台を両持ち支持する場合に比較して、作業台支持構造の簡素化を図ることができる。
【0014】
従って、作業台支持構造の簡素化を図りながら、農作業機での残留粉粒体の回収に適した位置に回収容器を位置させることができる。
【0015】
本発明の第3の課題解決手段では、上記第1又は2の課題解決手段において、
前記作業台に、前記回収容器を側方から受け止める受止部材を装備してある。
【0016】
この課題解決手段によると、例えば回収容器として貯留量の増加とともに変形し易い袋などを使用する場合には、袋を受止部材により袋の側方から受け止めさせておくことにより、袋をより安定した状態で作業台に載置することができる。
【0017】
その結果、作業台に載置した袋の形状(姿勢)を貯留量の増加にかかわらず略一定に保持することができ、作業台に載置した袋が貯留量の増加とともに変形して作業台から落下する恐れを効果的に抑制することができる。
【0018】
本発明の第4の課題解決手段では、上記第3の課題解決手段において、
前記受止部材を、載置姿勢の前記作業台に対して起立した使用姿勢と前記作業台に沿った格納姿勢とに姿勢切り換え可能に構成してある。
【0019】
残留粉粒体を回収する場合には、受止部材を使用姿勢に切り換えて回収容器を側方から受け止めさせておくことで回収容器をより安定した状態で作業台に載置することができる。又、残留粉粒体の回収を終えて作業台を格納する場合には、受止部材を格納姿勢に切り換えておくことで、作業台を格納位置に位置変更する際に受止部材が農作業機側の他物に干渉する恐れを回避し易くなる。
【0020】
従って、回収容器をより安定した状態で作業台に載置できるようにしながら、作業台の位置変更操作の際に受止部材が支障を来たす恐れを効果的に抑制することができる。
【0021】
本発明の第5の課題解決手段では、上記第1〜4の課題解決手段のいずれか一つにおいて、
前記走行車体における前記使用位置の前記作業台に隣接した位置に燃料タンクを配備してある。
【0022】
この課題解決手段によると、作業台を燃料補給用の補給タンクを載置する作業台として使用することができる。
【0023】
従って、燃料補給用の作業台を設けることなく燃料タンクへの燃料補給を行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】乗用田植機の全体右側面図である。
【図2】乗用田植機の平面図である。
【図3】第1実施形態での非回収状態を示す要部の右側面図である。
【図4】第1実施形態での回収状態を示す要部の右側面図である。
【図5】第1実施形態での非回収状態を示す要部の縦断正面図である。
【図6】第1実施形態での回収状態を示す要部の縦断正面図である。
【図7】施肥装置の構成を示す要部の縦断正面図である。
【図8】施肥装置の構成を示す要部の横断平面図である。
【図9】施肥装置の構成を示す要部の縦断右側面図である。
【図10】繰出機構の構成を示す要部の縦断右側面図である。
【図11】繰出機構の構成を示す要部の縦断正面図である。
【図12】作業状態での搬送風の流れを示す概略図である。
【図13】回収状態での搬送風の流れを示す概略図である。
【図14】搬送方向変更部及び閉塞部材の非回収状態を示す要部の縦断正面図である。
【図15】搬送方向変更部及び閉塞部材の回収状態を示す要部の縦断正面図である。
【図16】搬送方向変更部及び閉塞部材の非回収状態を示す要部の縦断側面図である。
【図17】閉塞部材の構成を示す図である。
【図18】第1実施形態での回収容器支持構造の構成を示す要部の背面図である。
【図19】第1実施形態での回収容器支持構造の構成を示す要部の分解斜視図である。
【図20】第1実施形態での別の回収容器支持構造を示す要部の縦断正面図である。
【図21】肥料繰り出し量の表示構造を示す要部の平面図である。
【図22】肥料繰り出し量の別の表示構造を示す要部の斜視図である。
【図23】肥料繰り出し量の別の表示構造で用いる目盛り表記部材の展開図である。
【図24】第2実施形態での回収容器支持構造の構成を示す要部の縦断正面図である。
【図25】第2実施形態での回収容器支持構造の構成を示す要部の右側面図である。
【図26】第2実施形態での回収容器支持構造の要部の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を農作業機の一例である乗用田植機に適用した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1〜6に示すように、この実施形態で例示する乗用田植機は、走行車体1の後部に、油圧式の昇降シリンダ2の作動で上下揺動するリンク機構3を介して、8条用の苗植付装置4を駆動昇降可能に連結してある。又、走行車体1の後部と苗植付装置4とにわたって粉粒体供給装置の一例である8条用の施肥装置5を装備してある。これにより、8条用のミッドマウント施肥仕様に構成してある。
【0027】
走行車体1は、車体フレーム6の前部に搭載したエンジン7からの動力を、主変速装置として備えた静油圧式無段変速装置(図示せず)及びトランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)8に副変速装置として内蔵したギア式変速装置(図示せず)などを介して左右の前輪9及び左右の後輪10に伝達する4輪駆動式に構成してある。左右の後輪10の車体外方側には、左右の後輪10と一体回転する補助車輪11を配備してある。エンジン7の後方には、前輪操舵用のステアリングホイール12及び運転座席13などを配備して搭乗運転部14を形成してある。
【0028】
車体フレーム6は、フレーム兼用のT/Mケース8、T/Mケース8の前部に連結した前部フレーム15、及び、T/Mケース8の後部に連結した後部フレーム16、などから構成してある。車体フレーム6には、搭乗運転部14の床面を形成する搭乗ステップ17、床面を左右に拡張する左右の拡張ステップ18、及び、左右の後輪10及び補助車輪11の上方に配置して苗植付装置4への苗補給などの際に踏み台として使用する後部ステップ19、などを装備してある。右側の拡張ステップ18の後部下方箇所には燃料タンク20を配備してある。燃料タンク20は、前後のタンク支持部材21,22を介して後部フレーム16に支持させてある。車体フレーム6の前部における左右の横側方箇所には、3枚の予備苗載台23を上下方向に所定間隔をあけて装備した予備苗載置フレーム24を立設してある。
【0029】
苗植付装置4には、T/Mケース8から取り出した植え付け作業用の動力を、走行車体1の下部に前後向きに配備した第1伝動軸25などで構成した植え付け伝動系26介して伝達してある。施肥装置5には、T/Mケース8から取り出した施肥用の動力を、走行車体1の下部に前後向きに配備した第2伝動軸27などで構成した施肥伝動系28を介して伝達してある。施肥伝動系28は、T/Mケース8から取り出した施肥用の動力で回転する第2伝動軸27の回転運動を揺動運動に変換する。
【0030】
図示は省略するが、T/Mケース8には、苗植付装置4への伝動を断続する植付クラッチ、及び、施肥装置5への伝動を断続する施肥クラッチを内蔵してある。
【0031】
図1及び図2に示すように、苗植付装置4は、T/Mケース8からの植え付け作業用の動力で、横送り機構(図示せず)、8基のロータリ式の植付機構29、及び、8基の縦送り機構30が作動する。そして、これらの作動で、最大8条の苗の植え付けを行うように構成してある。横送り機構は、その作動により8条分のマット状苗を載置するように形成した苗載台31を左右方向に一定ストロークで往復移動させる。各植付機構29は、その作動により苗載台31に載置したマット状苗の下端から所定量ずつの苗を切り取って圃場の泥土部に植え付ける。各縦送り機構30は、その作動により苗載台31が左右のストローク端に達するごとに各マット状苗を苗載台31の下端に向けて所定ピッチで縦送りする。苗植付装置4の底部には、5つの整地フロート32をそれらの後部を支点にして上下揺動する状態で左右方向に並べて配備してある。各整地フロート32は、走行車体1の走行に伴って接地滑走することにより苗植え付け予定箇所などの圃場泥面を整地する。
【0032】
図示は省略するが、苗植付装置4には、2条1組で植付機構29への伝動を断続する4つの植え付け用の補助クラッチと、2条1組で縦送り機構30への伝動を断続する4つの縦送り用の補助クラッチとを備えている。これらの植え付け用と縦送り用の各補助クラッチの操作は、搭乗運転部14に備えた補助クラッチ操作用の4つの操作具で行う。補助クラッチ操作用の各操作具は、同じ植え付け条に対応する植え付け用の補助クラッチと縦送り用の補助クラッチとを一括して操作するように、対応する植え付け用の補助クラッチと縦送り用の補助クラッチとに補助クラッチ操作用の連係機構を介して操作連係してある。補助クラッチ操作用の操作具には、例えばオンオフスイッチや操作レバーなどを採用することができる。補助クラッチ操作用の連係機構には、機械式や電気式のものなどを採用することができる。
【0033】
そして、これらの操作具で植え付け用と縦送り用の各補助クラッチを操作することにより、苗植付装置4の作動状態を、全ての植付機構29及び縦送り機構30を作動させる全条植え状態(8条植え状態)、左側6条に対応する植付機構29及び縦送り機構30を作動させる左6条植え状態、左側4条に対応する植付機構29及び縦送り機構30を作動させる左4条植え状態、左側2条に対応する植付機構29及び縦送り機構30を作動させる左2条植え状態、全ての植付機構29及び縦送り機構30を作動停止させる植え付け停止状態(整地作業状態)、右側6条に対応する植付機構29及び縦送り機構30を作動させる右6条植え状態、右側4条に対応する植付機構29及び縦送り機構30を作動させる右4条植え状態、又は、右側2条に対応する植付機構29及び縦送り機構30を作動させる右2条植え状態に切り換えることができる。
【0034】
図1〜13に示すように、施肥装置5は、走行車体1の後部に搭載した肥料送出部5A、及び、肥料送出部5Aから苗植付装置4にわたる肥料案内部5Bを備えている。肥料送出部5Aは、T/Mケース8からの施肥用の動力で4基の繰出機構33が作動して、粉粒体の一例である粒状肥料を貯留するホッパ34から所定量の粒状肥料を繰り出し、繰り出した各粒状肥料を、電動式の送風機35が生起する搬送風に乗せて肥料案内部5Bに送り出す。肥料案内部5Bは、肥料送出部5Aからの粒状肥料を、各繰出機構33に対して2本ずつ備えた合計8本の施肥ホース36により対応する作溝器37に流下案内し、各作溝器37により圃場の泥土内に埋没させる。これにより、最大8条の施肥を行うように構成してある。肥料送出部5Aは、後部ステップ19よりも上方に位置するように、後部フレーム16の後上部に連結した施肥フレーム38に支持させてある。
【0035】
各繰出機構33は、最大2条の粒状肥料を繰り出すことが可能な2条用に構成してある。ホッパ34は、透明樹脂製の4つの貯留容器39を左右方向に連結して構成してある。そして、各貯留容器39の上部開口を一括して開閉する単一の蓋体40を開閉揺動可能に装備してある。送風機35は、施肥装置5に伝動している状態での苗植付装置4の接地に連動して作動し、苗植付装置4の浮上に連動して作動停止するように構成してある。そして、その作動で生起した搬送風を分岐ダクト41及び左供給ダクト42又は右供給ダクト43を介して各繰出機構33に供給する。各施肥ホース36は、対応する繰出機構33が繰り出した粒状肥料を搬送風とともに対応する作溝器37に流下案内する。各作溝器37は、左右方向に所定間隔を隔てて位置するように対応する整地フロート32に装備してある。そして、走行車体1の走行に伴って、圃場における苗植え付け予定箇所の横側方近傍に位置する泥土部に施肥用の溝を形成し、この溝内に、対応する施肥ホース36が流下案内した粒状肥料を埋没させる。
【0036】
左右の供給ダクト42,43は、各下部ケース49の直前方箇所を通るように配置してある。左供給ダクト42の左端部には、平面視コの字状の中継ダクト44を介して回収ダクト45の左端部を連通接続してある。回収ダクト45は、各上部ケース48の直後方箇所を通るように配置してある。回収ダクト45の右端部には、搬送風と回収した粒状肥料とを分けて車体の右外方に排出する排出ダクト46の左端部を連通接続してある。右供給ダクト43の右端部には、右供給ダクト43の右端部を閉塞するキャップ47を接続してある。
【0037】
図10及び図11に示すように、各繰出機構33は、透明樹脂製の上部ケース48と下部ケース49とを備えている。上部ケース48と下部ケース49との間には、左右の肥料繰出部50を備えた左右向きの繰出軸51などを配備してある。各上部ケース48は、対応する貯留容器39の下部に連通接続してある。各下部ケース49は、左右の肥料繰出部50に対応して左右に区画した2つの漏斗部49Aを備える二股状に形成してある。左右の肥料繰出部50は、繰出軸51に相対回転可能に外嵌した左右の筒軸52に、それぞれ2つの繰出ロール53を一体回転するように外嵌して構成してある。左右の筒軸52は、繰出軸51に摺動操作可能に備えた3位置切り換え式のキー部材54を摺動操作することで、左右両方の筒軸52が繰出軸51と一体回転する2条繰り出し状態と、左側の筒軸52が繰出軸51と一体回転する左1条繰り出し状態と、右側の筒軸52が繰出軸51と一体回転する右1条繰り出し状態とに切り換えることができる。各繰出ロール53の外周には、肥料繰り出し用の複数の凹部53Aを周方向に一定間隔をあけて整列形成してある。上部ケース48と下部ケース49との間で左右の肥料繰出部50の前側には、各凹部53Aからはみ出す粒状肥料を掃き取るブラシ55を配備してある。これにより、各繰出機構33は、左右の肥料繰出部50が繰出軸51と右側面視で右回りに一体回転することで、対応する貯留容器39に貯留した粒状肥料を下部ケース49の左右の漏斗部49Aに所定量ずつ繰り出すことができる。
【0038】
図3〜11に示すように、各繰出軸51には従動ギア51Aを一体形成してある。各繰出軸51の直後方箇所には、各繰出機構33に共通する長尺の繰出駆動軸56を各繰出機構33にわたる左右向きの姿勢で配備してある。繰出駆動軸56における各従動ギア51Aとの対応箇所には、対応する従動ギア51Aに噛合する伝動ギア57を相対回転可能に外嵌してある。繰出駆動軸56と各伝動ギア57との間には、繰出駆動軸56から各伝動ギア57への伝動を断続する施肥用の補助クラッチ58を備えてある。繰出駆動軸56の右端部は、施肥伝動系28の揺動運動を間欠回転運動に変換するワンウェイクラッチ59を介して施肥伝動系28に連結してある。
【0039】
つまり、各繰出機構33は、T/Mケース8からの施肥用の動力で繰出軸51とともに左右の肥料繰出部50が間欠的に回転することで、左右の各肥料繰出部50から1条ずつの合計2条の粒状肥料を所定量ずつ繰り出し、又、繰出軸51とともに左右いずれかの肥料繰出部50が間欠的に回転することで、左右いずれかの肥料繰出部50から1条の粒状肥料を所定量ずつ繰り出すように構成してある。
【0040】
図示は省略するが、施肥用の各補助クラッチ58の操作は、搭乗運転部14に備えた補助クラッチ操作用の4つの操作具で、同じ植え付け条に対応する植え付け用の補助クラッチ及び縦送り用の補助クラッチとともに一括して行うように、対応する補助クラッチ操作用の操作具に補助クラッチ操作用の連係機構を介して操作連係してある。
【0041】
そして、これらの操作具で施肥用の各補助クラッチを操作することにより、施肥装置5の作動状態を、全ての繰出機構33を作動させる全条施肥状態(8条施肥状態)、左側6条に対応する繰出機構33を作動させる左6条施肥状態、左側4条に対応する繰出機構33を作動させる左4条施肥状態、左側2条に対応する繰出機構33を作動させる左2条施肥状態、全ての繰出機構33を作動停止させる施肥停止状態、右側6条に対応する繰出機構33を作動させる右6条施肥状態、右側4条に対応する繰出機構33を作動させる右4条施肥状態、又は、右側2条に対応する繰出機構33を作動させる右2条施肥状態に切り換えることができる。
【0042】
図10に示すように、各上部ケース48の後下部には左右に並ぶ2つの係合孔48Aを形成してある。各下部ケース49の後上部には、対応する上部ケース48の係合孔48Aに係入する左右の係合片49Bを形成してある。そして、各下部ケース49は、上部ケース48の係合孔48Aと下部ケース49の係合片49Bとが係合する後部の係合部を支点にして上下方向に開閉揺動する。
【0043】
図示は省略するが、各上部ケース48の左右両側部には係止突起を形成してある。各下部ケース49の左右両側部には、対応する上部ケース48の係止突起に係止することで、下部ケース49の上縁部を上部ケース48の下縁部に密接させた閉じ姿勢で下部ケース49を固定するロックレバーを上下方向に揺動操作可能に装備してある。
【0044】
各繰出機構33では、上部ケース48と下部ケース49との側面視での分割ラインが前上がり傾斜するように設定してある。これにより、下部ケース49を開き姿勢に切り換えて、下部ケース49が受け止め支持する左右の肥料繰出部50の状態などを繰出機構33の前上方側から視認する際に、上部ケース48を視界に入り難くすることができる。その結果、下部ケース49を開き姿勢に切り換えた状態で繰出機構33の前方側から行う各肥料繰出部50の清掃やブラシ55の交換などのメンテナンス作業が行い易くなる。
【0045】
図7〜13に示すように、各下部ケース49の左右の漏斗部49Aには、漏斗部49Aの底部から前方に向けて延出する円筒状の導風管部49Cと、漏斗部49Aの底部から後方に向けて延出する円筒状の排出管部49Dとを、漏斗部49Aの底部に連通するように形成してある。各導風管部49Cは、左右の供給ダクト42,43に、左右の供給ダクト42,43を流れる搬送風を導風管部49Cに導く導風部材60を介して連通接続してある。各排出管部49Dには対応する施肥ホース36を連通接続してある。これにより、各漏斗部49Aに繰り出した所定量の粒状肥料を、左右の供給ダクト42,43から各漏斗部49Aに導入した送風機35からの搬送風に乗せて、施肥ホース36及び作溝器37の内部を通して圃場の施肥溝内に供給することができる。
【0046】
各上部ケース48の背部には、ホッパ34及び上部ケース48に残った粒状肥料の回収を可能にする背面視矩形状の回収口48Bを形成してある。回収口48Bには回収ダクト45を連通接続してある。各上部ケース48には、回収口48Bを開閉する開閉部材61を、開閉部材61の上部に備えた左右向きの支軸62を支点にした開閉揺動操作が可能となるように装備してある。各開閉部材61は、施肥フレーム38に上下揺動可能に備えた単一の操作レバー63に、各開閉部材61に対応する第1連係機構64を介して連係してある。そして、この連係により、操作レバー63の上方への揺動操作に連動して各開閉部材61が一斉に閉じ方向に揺動し、操作レバー63の下方への揺動操作に連動して各開閉部材61が一斉に開き方向に揺動するように構成してある。
【0047】
操作レバー63は、長尺の支軸部63Aと短尺の把持部63Bとを有するL字状に屈曲形成してある。そして、支軸部63Aが各繰出機構33にわたる左右向きの姿勢になり、かつ、把持部63Bが搭乗運転部14に向けて延出する前後向きの姿勢になるように組み付け姿勢を設定してある。又、施肥フレーム38と把持部63Bとにわたって架設したトグルバネ65の作用で上下の2位置に切り換え保持することができる。
【0048】
送風機35は、運転座席13の下方に位置するように後部フレーム16に支持させてある。そして、送風機35の吸気管部35Aに連通接続した吸気ダクト66を介してエンジン周辺の高温で乾燥した外気を取り込むように構成してある〔図2参照〕。これにより、エンジン周辺の高温で乾燥した外気を搬送風に利用することができ、高温の乾燥した搬送風により粒状肥料を乾燥させて粒状肥料の搬送を促進させる効果を期待することができる。
【0049】
送風機35の排気管部35Bには分岐ダクト41の下端部を連通接続してある。分岐ダクト41には、前後向きの支軸67を支点にした上方への揺動操作で分岐ダクト41と右供給ダクト43との連通を遮断する遮断姿勢に切り換わり、前後向きの支軸67を支点にした下方への揺動操作で分岐ダクト41と右供給ダクト43とを連通する連通姿勢に切り換わる第1切換部材68を内蔵してある。第1切換部材68は、操作レバー63に第2連係機構69を介して連係してある。そして、この連係により、操作レバー63の上方への揺動操作に連動して連通姿勢に切り換わり、操作レバー63の下方への揺動操作に連動して遮断姿勢に切り換わるように構成してある。
【0050】
中継ダクト44には、上下向きの支軸70を支点にした前方への揺動操作で左供給ダクト42と回収ダクト45とを連通する連通姿勢に切り換わり、上下向きの支軸70を支点にした後方への揺動操作で左供給ダクト42と回収ダクト45との連通を遮断する遮断姿勢に切り換わる第2切換部材71を内蔵してある。第2切換部材71は、操作レバー63に第3連係機構72を介して連係してある。そして、この連係により、操作レバー63の上方への揺動操作に連動して遮断姿勢に切り換わり、操作レバー63の下方への揺動操作に連動して連通姿勢に切り換わるように構成してある。
【0051】
上記の構成から、操作レバー63の揺動操作に連動して全ての開閉部材61と第1切換部材68と第2切換部材71とが一斉に揺動変位する。そして、トグルバネ65の作用で操作レバー63を上側の操作位置に保持した状態では、各開閉部材61が対応する繰出機構33の回収口48Bを閉じる閉じ姿勢を維持し、第1切換部材68が分岐ダクト41と右供給ダクト43とを連通する連通姿勢を維持し、第2切換部材71が左供給ダクト42と回収ダクト45との連通を遮断する遮断姿勢を維持する。これにより、送風機35からの搬送風が、分岐ダクト41及び左右の供給ダクト42,43を通って各繰出機構33の左右の導風管部49Cから各繰出機構33の左右の漏斗部49Aに流れ込み、各繰出機構33が左右の漏斗部49Aに繰り出した所低量の粒状肥料を、対応する施肥ホース36及び作溝器37の内部を通して圃場の施肥溝内まで搬送するようになる。
【0052】
又、トグルバネ65の作用で操作レバー63を下側の操作位置に保持した状態では、各開閉部材61が対応する繰出機構33の回収口48Bを開く開き姿勢を維持し、第1切換部材68が分岐ダクト41と右供給ダクト43との連通を遮断する遮断姿勢を維持し、第2切換部材71が左供給ダクト42と回収ダクト45とを連通する連通姿勢を維持する。これにより、送風機35からの搬送風は、分岐ダクト41から左供給ダクト42及び中継ダクト44を通って回収ダクト45に流れ込み、各繰出機構33の回収口48Bから回収ダクト45に流下した粒状肥料(残留肥料)を排出ダクト46まで搬送するようになる。
【0053】
つまり、操作レバー63の上側の操作位置が施肥位置であり、いずれかの繰出機構33が作動している施肥状態において操作レバー63を施肥位置に操作することにより、送風機35からの搬送風を圃場への肥料供給に使用することができ、圃場への肥料供給を円滑に行うことができる。又、操作レバー63の下側の操作位置が肥料回収位置であり、施肥装置5に伝動して苗植付装置4を接地させた送風機作動状態で、補助クラッチ操作用の操作具を操作して全ての繰出機構33を作動停止させた施肥停止状態において、操作レバー63を肥料回収位置に操作することにより、送風機35からの搬送風を施肥装置5に残った粒状肥料の回収に使用することができ、残留肥料の回収を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0054】
図10、図12及び図13に示すように、回収ダクト45においては、各繰出機構33の回収口48Bとの接続部45Aを回収ダクト45の内部に向けて凹入させてある。又、各接続部45Aにおける肥料回収方向下手側の側面に平面視三角形状の絞り部45Bを形成してある。これにより、肥料回収時に搬送風が各回収口48Bから繰出機構33の内部に流れ込む、あるいは、回収ダクト45の接続部45Aで渦流が発生する、などに起因した肥料回収効率の低下を防止してある。
【0055】
図3〜9及び図12〜16に示すように、排出ダクト46は、回収ダクト45の右端部に連通接続する接続部46A、搬送方向を下向きに変更するヘの字状の搬送方向変更部46B、及び、粒状肥料の取り出しを可能にする取出口46C、を備えている。そして、取出口46Cが車体の右外方に位置するように回収ダクト45から延出させてある。
【0056】
接続部46Aは、その断面形状を回収ダクト45の右端部と同径の円形に形成してある〔図9参照〕。接続部46Aと回収ダクト45の右端部には、接続用のフランジ46D,45Cを形成してある。そして、接続部46Aと回収ダクト45の右端部とを、それらのフランジ46D,45Cに跨るコの字状の断面形状を有する環状の連結具73を介して相対回転可能に連通接続してある。
【0057】
搬送方向変更部46Bは、接続部46Aに連なる搬送方向上手側の断面形状を接続部46Aと同径の円形に形成してある〔図9参照〕。そして、搬送方向上手側の所定位置を、施肥フレーム38に備えた支持板74により下方から受け止めて支持させてある。又、右下がり傾斜する搬送方向下手側の断面形状を上端部が平坦になるD字状に形成してある〔図16参照〕。更に、搬送方向下手側の上端部には、上方に向けて膨出する矩形状の膨出部分46Baを備え、この膨出部分46Baに枠状の周縁を残して搬送方向の長さが長い矩形状の排気口46Bbを形成してある。そして、粒状肥料の粒径よりも小径の通気孔75aを多数形成して粒状肥料の通過を阻止するように構成した矩形状の多孔板75を、通気孔75aを多数形成した多孔面部75Aが排気口46Bbに臨むように膨出部分46Baに内嵌した状態で配備してある。膨出部分46Baの下方箇所には、多孔板75の周部が膨出部分46Baの周縁内面に接合する状態に多孔板75を保持する位置保持用の係止突起46Bcを内向きに突出形成してある。
【0058】
尚、多孔板75には、金属製のものや樹脂製のものなどを採用することができる。又、多孔板75に代えて、網目を粒状肥料よりも小さくして通気用とすることにより粒状肥料の通過を阻止するように構成した金網や樹脂網などのメッシュを採用してもよい。
【0059】
取出口46Cは、その断面形状を搬送方向変更部46Bにおける搬送方向下手側の形状と同じ形状の上端部が平坦になるD字状に形成してある〔図4参照〕。
【0060】
上記の構成から、排出ダクト46は、回収ダクト45から搬送風とともに回収した粒状肥料が流入すると、搬送方向変更部46Bの搬送方向下手側において、多孔板75を通過する搬送風と多孔板75を通過しない粒状肥料とに分離する。そして、多孔板75を通過しない粒状肥料を取出口46Cに向けて流下させて取出口46Cから外部に排出する。つまり、例えば粒状肥料を搬送風とともに取出口46Cから排出するように構成した場合には、取出口46Cからの粒状肥料を受け入れるように備えた肥料袋などの回収容器に粒状肥料とともに搬送風が流れ込むことになり、これにより、回収容器に貯留した粒状肥料が回収容器から吹き出して飛散する不都合を招き易くなる。これに対し、この実施形態で例示した構造では、搬送方向変更部46Bの搬送方向下手側において搬送風が外部に流出し、取出口46Cからは粒状肥料のみが流出するようになることから、取出口46Cからの粒状肥料を受け入れるように備えた肥料袋(回収容器の一例)Zに搬送風が流れ込むことを阻止することができる。その結果、搬送風が肥料袋Zに流れ込むことに起因した肥料袋Zからの粒状肥料の吹き出しを回避することができ、残留肥料の回収を無駄なく効率良く行うことができる。
【0061】
又、回収ダクト45の右端部と排出ダクト46の接続部46Aとを環状の連結具73を介して相対回転可能に連通接続することにより、回収ダクト45に対して排出ダクト46の接続部46Aを、回収ダクト45と接続部46Aとの共通する中心軸を支点にして相対回転させることができ、その結果、排出ダクト46による粒状肥料の流下案内方向を前後方向に調節することができる。
【0062】
図15に示すように、搬送方向変更部46Bにおいては、多孔板75に対する粒状肥料の衝突角度θが比較的浅い角度(45度よりも小さい角度で例えば30度程度)になるように設定してある。これにより、多孔板75に粒状肥料が衝突する際の衝撃を弱めることができ、多孔板75に衝突する際の衝撃で粒状肥料が損傷する恐れや、多孔板75への衝突で砕けた粒状肥料が多孔板75を通過することに起因した肥料回収率の低下を防止することができる。
【0063】
又、搬送方向変更部46Bの排気口46Bbに対する搬送方向上手側の直前箇所を搬送方向変更部46Bの湾曲箇所46Bdに設定してある。これにより、粒状肥料は、湾曲箇所46Bdを通過する際には多孔板75から離れる下向きの案内作用を受けることから、多孔板75に粒状肥料が衝突する際の衝撃を更に弱めることができる。これにより、多孔板75への衝突で粒状肥料が損傷する恐れや、多孔板75への衝突で砕けた粒状肥料が多孔板75を通過することに起因した肥料回収率の低下をより確実に防止することができる。
【0064】
搬送方向変更部46Bにおいては、排気口46Bbの上縁(多孔板75における多孔面部75Aの上端)が搬送方向変更部46Bの搬送方向上手側の内周上端と同じ高さ位置に位置し、かつ、排気口46Bbの下縁(多孔板75における多孔面部75Aの下端)が搬送方向変更部46Bの搬送方向上手側の内周下端よりも低い位置に位置するように形成してある。これにより、側面視(搬送方向変更部46Bの搬送方向上手側での搬送方向視)においては、搬送方向変更部46Bにおける搬送方向上手側の風路断面の略全域が排気口46Bbに臨むようになっている。その結果、回収ダクト45の延長線上に位置する搬送方向変更部46Bの搬送方向上手側を通った搬送風を排気口46Bbに備えた多孔板75の各通気孔75aから円滑に流出させることができる。
【0065】
尚、搬送方向変更部46Bとしては、排気口46Bbの上縁(多孔板75における多孔面部75Aの上端)が搬送方向変更部46Bの搬送方向上手側の内周上端と略同じ高さになるように形成したものであってもよく、又、排気口46Bbの下縁が搬送方向変更部46Bの搬送方向上手側の内周下端と同じ高さになる又は内周下端よりも少し高くなるように形成したものであってもよい。
【0066】
図1〜8及び図15〜17に示すように、排出ダクト46には、ゴム製のカバー体76を簡易着脱可能に取り付けてある。カバー体76は、搬送方向変更部46Bの上端部を上方から覆って排気口46Bbを塞ぐ平面視矩形状のカバー部76Aを備えている。カバー部76Aの右端部には、取出口46Cを塞ぐ側面視略D字状のキャップ部76Bを一体形成してある。カバー部76Aには、キャップ部76Bの上半部に形成した垂下壁部76Baに連なる周壁76Aaを備えてある。カバー部76Aの左端部には、排出ダクト46の接続部46Aに立設した第1係止突起46Eに外嵌する第1係止環76Cを一体形成してある。キャップ部76Bの下部には、排出ダクト46の右端部に垂下装備した第2係止突起46F又は排出ダクト46の右端部に立設した第3係止突起46Gに外嵌する第2係止環76Dを一体形成してある。第2係止環76Dの下端には操作片76Eを一体形成してある。カバー部76Aの右端上部には、排出ダクト46の第2係止突起46Fにカバー体76の第2係止環76Dを外嵌した場合に排出ダクト46の第3係止突起46Gを上方から覆う半球形の膨出部分76Abを備えてある。キャップ部76Bには、排出ダクト46の取出口周縁に外向きに膨出形成した環状の突条46Caに外嵌する環状の係合溝76Bbを形成してある。
【0067】
上記の構成から、排出ダクト46の第1係止突起46Eにカバー体76の第1係止環76Cを外嵌してカバー体76の左端部を固定した状態において、走行車体1の右外方からカバー体76の操作片76Eを把持して第2係止環76Dの係止位置を排出ダクト46の第2係止突起46Fと第3係止突起46Gとに変更することにより、排出ダクト46に対するカバー体76の取り付け姿勢を、カバー体76により搬送方向変更部46Bの搬送方向下手側を上方から覆ってカバー部76Aで排気口46Bbを塞ぐとともにキャップ部76Bで取出口46Cを塞ぐ閉塞姿勢〔図14参照〕と、カバー体76が搬送方向変更部46Bの排気口46Bb及び取出口46Cの直上方に位置して排気口46Bb及び取出口46Cを開放する開放姿勢〔図15参照〕とに簡単に変更することができる。
【0068】
これにより、粒状肥料を回収しない施肥作業時や移動走行中の作業停止時などにおいては、カバー体76の取り付け姿勢を閉塞姿勢とすることにより、施肥作業時や作業停止時などにおける排出ダクト46の排気口46Bb及び取出口46Cからの雨水などの浸入を防止することができる。又、粒状肥料を回収する肥料回収時においては、カバー体76の取り付け姿勢を開放姿勢とすることにより、搬送方向変更部46Bにおいて搬送風と粒状肥料とを分離して取出口46Cから回収した粒状肥料を取り出すことができる。そして、この開放姿勢では、カバー体76が搬送方向変更部46Bの上方に位置することにより、排出ダクト46の排気口46Bb及び取出口46Cからの雨水などの浸入を抑制することができる。つまり、カバー体76を雨除けとして使用することができる。
【0069】
特に、カバー体76の閉塞姿勢では、排気口46Bbを形成した搬送方向変更部46Bにおける搬送方向下手側の上端部周縁をカバー部76Aの周壁76Aaが囲むように覆い、かつ、キャップ部76Bの係合溝76Bbが排出ダクト46における取出口周縁の突条46Caに取出口46Cの全周にわたって外嵌することから、高圧の洗浄水を吹き掛けた場合における排出ダクト46の排気口46Bb及び取出口46Cからの洗浄水の浸入を抑制することができる。
【0070】
そして、回収した粒状肥料を肥料袋Zに貯留する場合には、肥料袋Zの外側上端部をカバー体76の第2係止環76Dと排出ダクト46の第3係止突起46Gとの間に挟み込むことにより、肥料袋Zの上部を排出ダクト46の搬送終端に被せた状態で固定することができる〔図6及び図15参照〕。これにより、排出ダクト46の下方に位置させた作業台77に載置した肥料袋Zの姿勢を肥料貯留量の増加にかかわらず略一定に保持することができる。その結果、作業台77に載置した肥料袋Zが粒状肥料の貯留とともに変形して作業台77から落下する不具合の発生を未然に回避することができる。
【0071】
図5〜7、図14及び図15に示すように、カバー体76は、閉塞姿勢が搬送方向変更部46Bの搬送方向下手側を上方から覆う右下がり姿勢であるのに対して、開放姿勢を略水平姿勢に設定してある。これにより、右下がり姿勢の搬送方向変更部46Bの搬送方向下手側に対して、カバー体76の開放姿勢での車体右外方への延出長さを長くすることができる。これにより、カバー体76を、車体の右外方に向けて延出する排出ダクト46の排気口46Bb及び取出口46Cからの雨水などの浸入を抑制する雨除けとしてより好適に機能させることができる。
【0072】
尚、この実施形態では、分岐ダクト41、左供給ダクト42、及び右供給ダクト43により、送風機35からの搬送風を各繰出機構33に供給して圃場への肥料供給に使用する肥料供給経路Aを形成してある。又、分岐ダクト41、左供給ダクト42、中継ダクト44、回収ダクト45、及び排出ダクト46により、送風機35からの搬送風を、各繰出機構33を迂回させて施肥装置5に残った粒状肥料の回収に使用する肥料回収経路(粉粒体回収経路)Bを形成してある。
【0073】
図1〜6、図18及び図19に示すように、走行車体1の後部右側方箇所には、前後向きの支軸78を支点した上下揺動操作が可能で、かつ、前後向きの支軸78に対する前後摺動操作が可能な支持アーム79を配備してある。前後向きの支軸78は、前後方向に所定間隔をあけて対向するように後部フレーム16の右側部に備えた前支持板80と後支持板81とにわたって架設してある。前後向きの支軸78及び前後の支持板80,81は、側面視で右側の補助車輪11(後輪10)と燃料タンク20との間に位置するように配置してある。支持アーム79は、L字状に屈曲形成した丸パイプ鋼材などにより、支軸78から延出して右側の補助車輪11と燃料タンク20との間を通るアーム部79A、及び、アーム部79Aの延出端から後方に向けて延出する支持部79B、などを備えるように形成してある。そして、この支持アーム79の支持部79Bに作業台77を溶接してある。
【0074】
つまり、作業台77は、後部フレーム16から右側の補助車輪11を迂回するように延出したL字状の支持アーム79に片持ち支持させてある。そして、前後向きの支軸78を支点した支持アーム79の上下揺動操作による格納位置と使用位置との位置変更が可能となるように構成してある。
【0075】
作業台77の格納位置は、8条用の施肥装置5では、走行車体1の後部に搭載した肥料送出部5Aの左右幅が左右の補助車輪11の中心間距離と略同じであることから、右側の補助車輪11の上部右側端に近接する上方の位置に設定してある。そして、格納位置での作業台77の姿勢を、車体右外方への張り出しを抑制する非載置姿勢に設定してある。一方、作業台77の使用位置は、排出ダクト46の取出口46Cが右側の補助車輪11の右上方に位置していることから、右側の補助車輪11の右外方で取出口46Cから下方に所定距離(肥料袋Zの大きさを考慮した適切な距離)を隔てた下方の位置に設定してある。そして、使用位置では、作業台77の姿勢が載置姿勢であることから右側の補助車輪11の右外方に張り出すようになる。
【0076】
作業台77の非載置姿勢は、作業台77の右外方への張り出しを抑制する垂直姿勢又は略垂直姿勢である。作業台77の載置姿勢は、肥料袋Zを安定性良く載置することのできる水平姿勢又は略水平姿勢である。
【0077】
これにより、作業台77を、肥料袋Zの載置が可能な載置姿勢で走行車体1の外方に張り出す下方側の使用位置と、使用位置よりも車体外方への張り出し量が減少する上方側の格納位置とに位置変更可能に装備してある。
【0078】
支持アーム79の揺動支点部79Cは、前後向きの支軸78に相対回転可能かつ相対摺動可能に外嵌する前後の嵌合片79Ca,79Cbを備えるコの字状に形成してある。前後の嵌合片79Ca,79Cbには嵌合用の貫通孔79Ccを穿設してある。揺動支点部79Cには、後支持板81に形成した上下2つの凹部81A,81Bに係合する前後向きの係合ピン82を固定してある。係合ピン82は、支持アーム79の前方への摺動操作により後支持板81から離間して支持アーム79の上下揺動操作を許容する。又、支持アーム79の上下揺動操作で上下いずれかの凹部81A,81Bに対向した場合に支持アーム79の後方への摺動操作を許容する。そして、支持アーム79の後方への摺動操作で係合ピン82を上側の凹部81Aに係合することで作業台77を格納位置に保持することができる。又、係合ピン82を下側の凹部81Bに係合することで作業台77を使用位置に保持することができる。
【0079】
支持アーム79のアーム部79Aと後支持板81とにわたって、支持アーム79を後方に摺動付勢しながら支持アーム79の上下揺動操作に伴って支持アーム79を上方に揺動付勢する状態と下方に揺動付勢する状態とに切り換わるトグルバネ83を架設してある。そして、このトグルバネ83の作用で、係合ピン82を上側の凹部81Aに係合した状態と下側の凹部81Bに係合した状態とに切り換え保持することができる。
【0080】
上記の構成から、支持アーム79をトグルバネ83の付勢に抗して前方に摺動操作した後に、支持アーム79を上方に揺動操作して、トグルバネ83の付勢で係合ピン82を後支持板81の上側の凹部81Aに係合させることにより、作業台77を格納位置に切り換え保持することができる。又、支持アーム79をトグルバネ83の付勢に抗して前方に摺動操作した後に、支持アーム79を下方に揺動操作して、トグルバネ83の付勢で係合ピン82を後支持板81の下側の凹部81Bに係合させることにより、作業台77を使用位置に切り換え保持することができる。
【0081】
図3〜6、図18及び図19に示すように、作業台77は、前後に起立部77Aaを備えた平面視矩形のループ状に形成した丸棒鋼材からなる第1部材77Aの前後に、右端部に起立部77Baを備えた平面視矩形のループ状に形成した丸棒鋼材からなる2つの第2部材77Bを載置した状態で溶接して格子状に構成してある。作業台77の左端部には、作業台77に載置した肥料袋Zを車体側の横側方から受け止める受止部材84を備えている。受止部材84は、コの字状に屈曲形成した丸棒鋼材の両端側を各第2部材77Bの左端部77Bbに巻き付けることにより、載置姿勢の作業台77に対して起立した使用姿勢と作業台77に沿った格納姿勢とに、前後の第2部材77Bの左端部77Bbを支点にした揺動による姿勢切り換えが可能となるように構成してある。そして、受止部材84の両端部84Aを、第1部材77Aの左端部77Abとの接当で受止部材84を使用姿勢に保持する接当部として機能するように形成してある。又、第1部材77Aの起立部77Aaは、格納姿勢に切り換えた受止部材84の遊端部84Bとの係合により受止部材84を格納姿勢に保持する係合部として機能するように受止部材側に傾倒させてある。
【0082】
上記の構成から、作業台77を格納位置に保持する場合には、受止部材84を格納姿勢に切り換えて受止部材84の遊端部84Bを第1部材77Aの起立部77Aaに係合しておくことにより、走行時の振動などにかかわらず受止部材84を格納姿勢の作業台77に沿って起立する格納姿勢に安定して保持することができる。そして、作業台77を使用位置に保持して肥料袋Zを載置する場合には、受止部材84を使用姿勢に切り換えて肥料袋Zを凭れ掛けさせることにより、肥料袋Zをより安定した状態で作業台77に載置することができる。又、作業台77の各起立部77Aa,77Ba及び受止部材84により、肥料袋Zの底部を作業台上に確実に保持することができる。しかも、作業台7を格子状に構成したことにより、貯留袋Zへの粒状肥料の貯留とともに貯留袋Zの底部が部分的に第1部材77Aと第2部材77Bとの間に入り込み、作業台7に対する位置ズレを防止するようになる。その結果、作業台77に載置した肥料袋Zの姿勢及び位置を肥料貯留量の増加にかかわらず略一定に保持することができ、作業台77に載置した肥料袋Zが粒状肥料の貯留とともに変形又は移動して作業台77から落下する恐れを未然に回避することができる。
【0083】
そして、作業台77を格納位置に保持した状態では、作業台77とともに支持アーム79が、右側の拡張ステップ18の右端から右外方に食み出した燃料タンク20の給油筒20Aと、右側の後部ステップ19の右端から右外方に食み出した施肥装置5の排出ダクト46との間に位置して、燃料タンク20の給油筒20A及び施肥装置5の排出ダクト46への他物の接触を抑制するガードとして機能するように構成してある。
【0084】
又、作業台77を使用位置に保持した状態では、作業台77が燃料タンク20の給油筒20Aの直後方に位置することから、作業台77を燃料補給用の補給タンク(図示せず)を載置する作業台としても使用することができる。
【0085】
図1及び図2に示すように、作業台77は、右側の予備苗載台23に対しては、使用位置では予備苗載台23の右端から右外方に食み出し、格納位置では予備苗載台23の右端よりも車体側に位置するように構成してある。又、苗載台31に対しては、使用位置と格納位置とにかかわらず苗載台31の右端よりも車体側に位置するように構成してある。更に、右側の拡張ステップ18の右下方に配備した乗降用の右側の補助ステップ85に対しては、使用位置では補助ステップ85の右端から右外方に食み出し、格納位置では補助ステップ85の右端よりも車体側に位置するように構成してある。
【0086】
ところで、図20に示すように、8条よりも作業条数が少ない例えば6条用のミッドマウント施肥仕様に構成した乗用田植機においては、走行車体1の後部に搭載する6条用の施肥装置5における肥料送出部5Aの左右幅が左右の補助車輪11の中心間距離よりも短くなる。そこで、このような乗用田植機に作業台77を格納位置と使用位置とに位置変更可能に装備する場合には、同図に示すように、支持アーム79におけるアーム部79Aの長さを長くして、作業台77の格納位置では、作業台77が右側の補助車輪11の真上に非載置姿勢で位置して施肥装置5の肥料送出部5Aに近接するように構成してもよい。
【0087】
図7〜9に示すように、施肥伝動系28は、第2伝動軸27の回転運動を、第2伝動軸27と一体回転する回転アーム86、及び、回転アーム86の回転で上下動する第1連係ロッド87を介して、第1揺動アーム88の揺動運動に変換する。そして、第1揺動アーム88の揺動運動を、第1揺動アーム88の揺動支点を兼ねる左右向きの伝動軸89を介して、施肥フレーム38の右側部に配備した繰出量調節機構90に伝達し、繰出量調節機構90により揺動ストローク量を調節した後の揺動運動を、第2連係ロッド91を介して第2揺動アーム92に伝達する。第2揺動アーム92は、繰出駆動軸56の右端部にワンウェイクラッチ59を介して連結してある。
【0088】
図9に示すように、繰出量調節機構90は、伝動軸89を介して第1揺動アーム88と一体揺動する揺動アーム93の揺動運動を、連係ロッド94を介して天秤アーム95に伝達する。そして、天秤アーム95の出力側の揺動運動を第2連係ロッド91を介して第2揺動アーム92に伝動する。天秤アーム95は、天秤アーム95に対する揺動支点軸96の前後方向への位置変更が可能となるように構成してある。又、揺動支点軸96を位置変更可能に支持する案内板97に装備した揺動規制アーム98により、天秤アーム95の入力側の揺動ストローク量を揺動支点軸96の位置変更にかかわらず一定に制限してある。これにより、揺動支点軸96の前後方向への位置変更に応じて天秤アーム95の出力側の揺動ストローク量を調節できるように構成してある。そして、このように天秤アーム95の出力側の揺動ストローク量を調節することで、繰出駆動軸56の回転操作角とともに繰出駆動軸56と連動する繰出機構33の繰出ロール53の回転操作角を変更することができ、繰出ロール53の回転による肥料繰り出し量を調節することができる。天秤アーム95の揺動支点軸96は、ネジ送り式に構成した調節機構部99の操作具100を回転操作することにより天秤アーム95に対する前後位置を任意に変更することができる。
【0089】
図9及び図21に示すように、繰出量調節機構90の調節機構部99には、操作具100による肥料繰り出し量の調節に連動して天秤アーム95の揺動支点軸96とともに前後方向に移動する指針101を備えている。繰出量調節機構90を覆うカバー102の上面には、指針101の移動経路となる長孔102Aを形成してある。そして、長孔102Aの一側縁に沿って、天秤アーム95の揺動支点軸96の前後移動に応じて変化する肥料繰り出し量に対応して刻んだ目盛りを表記してある。つまり、指針101及び目盛りにより繰出量調節機構90による調節後の肥料繰り出し量を表示するように構成してある。
【0090】
ところで、揺動支点軸96の前後移動量と肥料繰り出し量との関係は粒状肥料の粒径などで異なるかさ比重に応じて変化することから、粒状肥料の繰り出し量を示す目盛りとしては、粒状肥料の種類などで異なる粒径などに対応した複数種のものを備えることが現実的である。しかしながら、複数種の目盛りを同一面上に並べて表記すると、使用する目盛りを見誤って間違った位置に指針101を合わせてしまう恐れがある。
【0091】
そこで、目盛りの見誤りを解消するための手段として以下に例示する目盛り切り換え手段103を採用するようにしてもよい。
【0092】
図22及び図23に示すように、目盛り切り換え手段103は、カバー102の上面に、多角柱状(例示は三角柱状)に形成した目盛表記部材104を、カバー102の長孔102Aに沿った横向き姿勢で表示部材106の中心を回転軸心Pとした回転操作が可能となるように配備してある。そして、目盛表記部材104の各面に、粒状肥料の種類などで異なる粒径などに対応させた複数種の目盛りを個別に表記してある。又、目盛表記部材104の所定又は任意の回転姿勢での保持を可能にする保持機構(図示せず)を備えている。
【0093】
つまり、目盛表記部材104を、使用する粒状肥料に対応する目盛りに指針101を合わせ易い回転姿勢に回転操作することにより、使用する目盛りを見誤って間違った位置に指針101を合わせてしまう恐れを未然に回避することができる。
【0094】
図示は省略するが、カバー102の上面に、目盛表記部材104の目盛り表記面を選択切り換え可能に臨ませる矩形状の開口を形成して、目盛表記部材104をカバー102の内部に備えるようにしてもよい。
【0095】
〔第2実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を農作業機の一例である乗用田植機に適用した第2実施形態を図面に基づいて説明する。尚、この第2実施形態は、肥料袋(回収容器の一例)Zの支持構造が前述した第1実施形態と異なることから、以下、肥料袋Zの支持構造についてのみ図面に基づいて説明する。
【0096】
図24〜26に示すように、第2実施形態では、施肥フレーム38から延出した支持アーム79の延出端に作業台77を装備してある。作業台77は、コの字状に屈曲形成した揺動部材77Cの遊端側に載置面を形成する板状部材77Dを溶接して構成してある。そして、支持アーム79の延出端に、前後向きの支軸105を介して、前後向きの支軸105を支点にした揺動操作で非載置姿勢と載置姿勢とに姿勢切り換え可能に連結してある。又、揺動部材77Cと支持アーム79とにわたって架設したトグルバネ106の作用で非載置姿勢と載置姿勢とに切り換え保持することができる。
【0097】
支持アーム79は、ヘの字状に屈曲形成した丸パイプ鋼材などからなる第1アーム部79D、及び、前後の角パイプ鋼材などからなる第2アーム部79E、などを備えている。第1アーム部79Dは、施肥フレーム38の右後部に備えた支持部材107に支持させてある。第2アーム部79Eは、第1アーム部79Dの右端部に、前後向きの支軸79Fを介して、前後向きの支軸79Fを支点にした上下揺動操作が可能となるように連結してある。そして、第2アーム部79Eの遊端に作業台77を連結してある。第2アーム部79Eの遊端には、作業台77を載置姿勢に切り換えた状態において揺動部材77Cを受け止め支持する受板79Eaを溶接してある。前後向きの支軸79Fは、回収した粒状肥料を排出する排出ダクト46の取出口46Cと同じ高さで右側の補助車輪11の真上に位置するように配置設定してある。第2アーム部79Eの長さは、第2アーム部79Eの下方への揺動で作業台77を右側の補助車輪11の右外方で取出口46Cから下方に所定距離(肥料袋Zの大きさを考慮した適切な距離)を隔てた下方の位置に位置させることが可能な長さに設定してある。
【0098】
上記の構成から、第2アーム部79Eを前後向きの支軸79Fを支点にして下方に揺動操作し、作業台77を載置姿勢に切り換えることにより、載置姿勢の作業台77を、右側の補助車輪11の右外方に張り出す下方側の使用位置に位置させることができる。又、作業台77を非載置姿勢に切り換え、第2アーム部79Eを前後向きの支軸79Fを支点にして上方に揺動操作することにより、非載置姿勢の作業台77を、第2アーム部79Eとともに補助車輪11の真上に位置して施肥装置5の肥料送出部5Aの右側端に近接する上方側の格納位置に位置させることができる。
【0099】
そして、作業台77を使用位置に位置させた状態では、第2アーム部79Eが作業台77に載置した肥料袋Zを車体側の横側方から受け止める受止部材84として機能するように構成してある。
【0100】
繰出量調節機構90を覆うカバー102の右側面には、係合凹部108Aを形成した受具108を備えてある。第2アーム部79Eには、作業台77を格納位置に位置させた場合に係合凹部108Aに係入する前後向きの係合ピン79Ebを溶接してある。受具108には、前後向きの支軸109を支点にした揺動操作で、係合凹部108Aに係入した係合ピン79Ebに係合して係合凹部108Aからの係合ピン79Ebの離脱を阻止する係合状態と、係合ピン79Ebとの係合を解除する解除状態とに切り換え可能な係合片110を備えている。つまり、係合凹部108Aに係入した係合ピン79Ebに係合片110を係合させることにより、作業台77を格納位置に保持することができる。
【0101】
第2アーム部79Eは、第2アーム部79Eの揺動支点側のエッジ部分79Ecが第1アーム部79Dに接当する位置を下限位置に設定してある。第1アーム部79Dの右端部には、前後向きの支軸111を支点にして揺動する揺動部材112を備えてある。揺動部材112は、左アーム部112Aと右アーム部112Bと連係アーム部112Cとを備える前後方向視略T字状に形成してある。そして、第2アーム部79Eと揺動部材112の連係アーム部112Cとにわたって、第2アーム部79Eの上下揺動操作に伴って第2アーム部79Eを上方に揺動付勢する状態と下方に揺動付勢する状態とに切り換わるトグルバネ113を架設してある。
【0102】
これにより、第2アーム部79Eを上方に揺動操作する場合は、先ず、この操作に伴うトグルバネ113を介した引っ張り作用で、揺動部材112が前後向きの支軸111を支点にして正面視右回りに揺動し、揺動部材112の左アーム部112Aが第1アーム部79Dに接当する。そして、この接当後に発生するトグルバネ113の引っ張り作用で第2アーム部79Eを上方に揺動付勢するように構成してある。又、第2アーム部79Eを下方に揺動操作する場合は、先ず、この操作に伴うトグルバネ113を介した押し上げ作用で、揺動部材112が前後向きの支軸111を支点にして正面視左回りに揺動し、揺動部材112の右アーム部112Bが第1アーム部79Dに沿った姿勢で第1アーム部79Dに接当する。そして、この接当後に発生するトグルバネ113の弾性で第2アーム部79Eのエッジ部分79Ecが第1アーム部79Dに接当する際の衝撃を吸収するように構成してある。
【0103】
〔別実施形態〕
【0104】
〔1〕農作業機としては、施肥装置、薬剤散布装置、及び播種装置などの粉粒体供給装置のいずれか一つ又は複数を備えた乗用田植機、直播機、あるいはトラクタなどであってもよい。又、乗用田植機としては、左右幅を車体幅などに減少可能に構成した折り畳み式の苗植付装置4を備えるものであってもよい。
【0105】
〔2〕粉粒体供給装置5としては、粉状の肥料を供給する施肥装置、粉粒状の薬剤を供給する薬剤散布装置、あるいは播種装置、などであってもよい。又、送風機35を走行車体1の左右一側部に配備するように構成したものであってもよい。更に、送風機35を備えていないものであってもよい。
【0106】
〔3〕走行車体1としては、補助車輪11を装備しないものであってもよい。又、エンジン7を運転座席13の下方に配備したものであってもよい。そして、補助車輪11を装備しないものにおいては、作業台77の格納位置を後輪10に近接させた位置に設定して、補助車輪11に近接させた位置に設定する場合よりも走行車体1に近づけた位置に作業台77を格納できるように構成してもよい。
【0107】
〔4〕粉粒体回収経路Bとしては、送風機35からの搬送風を使用せずに粉粒体の自然流下で粉粒体を回収するように構成したものであってもよい。又、回収専用の送風機を備えるように構成したものであってもよい。更に、粉粒体供給経路Aとは別に独立して構成したものであってもよい。
【0108】
〔5〕作業台77としては、上下向きの支軸を支点にした支持アーム79の前後揺動操作、左右向きの支軸を支点にした支持アーム79の上下揺動操作、あるいは、水平方向への支持アーム79の摺動操作などで使用位置と格納位置とに位置変更可能に構成したものであってもよい。又、支持アーム79の揺動操作と摺動操作の組み合わせで使用位置と格納位置とに位置変更可能に構成したものであってもよい。更に、作業台77の使用位置と格納位置との付け替えで使用位置と格納位置とに位置変更可能に構成したものであってもよい。
【0109】
〔6〕作業台77の使用位置は粉粒体回収経路Bの取出口46Cの位置などに応じて種々の変更が可能である。例えば、粉粒体回収経路Bの取出口46Cが走行車体1の左側に位置する場合には、作業台77の使用位置を走行車体1の左側の位置に設定してもよい。又、作業台77の格納位置は車体構造などに応じて種々の変更が可能である。例えば、作業台77の格納位置を、燃料タンク20を車体外方側から覆う位置に設定してもよい。
【0110】
〔7〕作業台77を使用位置において粉粒体回収経路Bの取出口46Cに対する高さ調節が可能となるように構成してもよい。
【0111】
〔8〕作業台77に受止部材84を着脱可能に装備するようにしてもよい。又、作業台77に複数の受止部材84を装備するようにしてもよい。
【0112】
〔9〕回収容器Zとしては肥料袋以外の袋やバケツなどであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、施肥装置、薬剤散布装置、及び播種装置などの粉粒体供給装置のいずれか一つ又は複数を備えた乗用田植機、直播機、あるいはトラクタなどの農作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 走行車体
5 粉粒体供給装置
10 後輪
11 補助車輪
20 燃料タンク
46C 取出口
77 作業台
79 支持アーム
84 受止部材
B 粉粒体回収経路
Z 回収容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体供給装置に残った粉粒体を走行車体の外方に案内して、案内終端の取出口からの残留粉粒体の取り出しを可能にする粉粒体回収経路を備えた農作業機であって、
前記取出口から取り出した残留粉粒体を貯留する回収容器を載置する作業台を、前記回収容器の載置が可能な載置姿勢で前記走行車体の外方に張り出す使用位置と、前記使用位置よりも車体外方への張り出し量が減少する格納位置とに位置変更可能に装備してある農作業機。
【請求項2】
前記使用位置を、後輪の車体外方側に配備した補助車輪の車体外方側に設定し、
前記作業台を、前記走行車体から前記後輪及び前記補助車輪を迂回して前記使用位置に延出するL字状の支持アームで片持ち支持するように構成してある請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
前記作業台に、前記回収容器を側方から受け止める受止部材を装備してある請求項1又は2に記載の農作業機。
【請求項4】
前記受止部材を、載置姿勢の前記作業台に対して起立した使用姿勢と前記作業台に沿った格納姿勢とに姿勢切り換え可能に構成してある請求項3に記載の農作業機。
【請求項5】
前記走行車体における前記使用位置の前記作業台に隣接した位置に燃料タンクを配備してある請求項1〜4のいずれか一つに記載の農作業機。
【請求項1】
粉粒体供給装置に残った粉粒体を走行車体の外方に案内して、案内終端の取出口からの残留粉粒体の取り出しを可能にする粉粒体回収経路を備えた農作業機であって、
前記取出口から取り出した残留粉粒体を貯留する回収容器を載置する作業台を、前記回収容器の載置が可能な載置姿勢で前記走行車体の外方に張り出す使用位置と、前記使用位置よりも車体外方への張り出し量が減少する格納位置とに位置変更可能に装備してある農作業機。
【請求項2】
前記使用位置を、後輪の車体外方側に配備した補助車輪の車体外方側に設定し、
前記作業台を、前記走行車体から前記後輪及び前記補助車輪を迂回して前記使用位置に延出するL字状の支持アームで片持ち支持するように構成してある請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
前記作業台に、前記回収容器を側方から受け止める受止部材を装備してある請求項1又は2に記載の農作業機。
【請求項4】
前記受止部材を、載置姿勢の前記作業台に対して起立した使用姿勢と前記作業台に沿った格納姿勢とに姿勢切り換え可能に構成してある請求項3に記載の農作業機。
【請求項5】
前記走行車体における前記使用位置の前記作業台に隣接した位置に燃料タンクを配備してある請求項1〜4のいずれか一つに記載の農作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2011−200157(P2011−200157A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69882(P2010−69882)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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