説明

農園芸用殺菌剤組成物

【課題】 有効な病害の対象範囲を広げ、耐性菌に対して安定した効力を有し、か

つ耐性菌の発達を防止できる優れた効果の農園芸用殺菌剤組成物を提供する。
【解決手段】 一般式(I)


(式中、Xはハロゲン原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cハロアルキル基又はC〜Cハロアルコキシ基を表し、Yはハロゲン原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルコキシ基を表し、lは0、1/2又は1を表し、m及びnは各々独立に0又は1から4の整数を表し、RはC〜Cアルキル基を表し、Rは水素原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cハロアルキル基を表し、H−Aは酸性物質を表す。)にて示されるイミノオキシメチルピリジン化合物と、植物病害に対して殺菌活性を有するイミノオキシメチルピリジン化合物以外の化合物から選択される1種または2種以上の農園芸用殺菌剤とを混合した農園芸用殺菌剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミノオキシメチルピリジン化合物とイミノオキシメチルピリジン化合物以外の農園芸用殺菌剤とを混合することにより、それらの個々の農園芸用殺菌剤の相加的効果のみならず相乗効果を示す農園芸用殺菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明農園芸用殺菌剤組成物の1つの活性成分である上記式(I)で示されるイミノオキシメチルピリジン化合物は、特許文献1に記載されている。これらの化合物は、イネ、ムギ、野菜類及び果樹類などに安全で、それ自体優れた殺菌効果を示す。
【特許文献1】特許第3472245号公報
【0003】
一方、近年、農薬の環境汚染に対する問題が取り上げられるようになり、可能な限り投下薬量を減少させ、環境に及ぼす影響を少なくして、確実に病害を防除する薬剤の出現が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、式(I)で示されるイミノオキシメチルピリジン化合物の殺菌効果を増強し、有効な病害の対象範囲を拡大することにより、この化合物の使用量を低減させ、有用植物に対して高い有効性と安全性を有する農園芸用殺菌剤組成物を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの課題を解決する目的で、式(I)で示されるイミノオキシメチルピリジン化合物と多数の農薬の有効成分とを混合して鋭意研究した結果、イミノオキシメチルピリジン化合物と、イミノオキシメチルピリジン化合物以外の農園芸用殺菌剤とを混合することにより、式(I)で示されるイミノオキシメチルピリジン化合物単独では十分な効果が得られない低薬量で、多くの病害に対して極めて高い殺菌効果が得られることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は一般式(I)
【化1】

(式中、Xはハロゲン原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cハロアルキル基又はC〜Cハロアルコキシ基を表し、Yはハロゲン原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルコキシ基を表し、lは0、1/2又は1を表しm及びnは各々独立に0又は1から4の整数を表し、RはC〜Cアルキル基を表し、Rは水素原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cハロアルキル基を表し、H−Aは酸性物質を表す。)にて示されるイミノオキシメチルピリジン化合物と、植物病害に対して殺菌活性を有するイミノオキシメチルピリジン化合物以外の化合物から選択される1種または2種以上の農園芸用殺菌剤とを混合した農園芸用殺菌剤組成物を提供するものである。
【0006】
本発明に使用されるイミノオキシメチルピリジン化合物は、前記一般式(I)で示される化合物であり、それらを1種、または、2種以上を用いることもできる。一般式(I)で示されるイミノオキシメチルピリジン化合物の好ましい具体例を第1表に示す。これら例示化合物は、一般式
【化2】


で表されるものから選ばれたものである。なお、表1における化合物番号は以下の記載において参照される。
【0007】
【表1】

【0008】
本発明に使用されるイミノオキシメチルピリジン化合物以外の農園芸用殺菌剤は、ペスティサイドマニュアル(The Pesticide Manual)第13版2003年(The British Crop Protection Council発行)等に記載されている公知の殺菌剤である。
【0009】
以下にイミノオキシメチルピリジン化合物と混合して使用される植物病害に対して殺菌活性を有する化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。すなわち無機銅化合物、例えば塩基性硫酸銅、無水硫酸銅、水酸化第二銅、塩基性塩化銅等、有機銅化合物、例えば有機銅、ノニルフェノールスルホン酸銅等、無機硫黄化合物、例えば硫黄、全硫化態硫黄等、有機硫黄化合物、例えばジネブ、マンネブ、プロピネブ、チアジアジン、チウラム、ポリカーバメート等、アニリノピリミジン系化合物、例えばシプロジニル、ピリメタニル、メパニピリム等、フェニルピロール系化合物、例えばフルジオキソニル等、有機塩素系化合物、例えばクロロタロニル、キャプタン、トリアジン、フルアジナム、スルフェン酸、フサライド等、炭酸水素塩剤、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等、有機リン系化合物、例えばEDDP、ホセチル、トルクロホスメチル、IBP等、ベンズイミダゾール系化合物、例えばカルベンダジム、チオファネートメチル、チアベンダゾール、ベノミル、フベリダゾール等、ジカルボキシイミド系化合物、例えばイプロジオン、プロシミドン、ビンクロゾリン等、アゾール系化合物、例えばフェンブコナゾール、シメコナゾール、ジクロブトラゾール、トリチコナゾール、イプコナゾール、フルコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、オキスポコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、メトコナゾール、プロピコナゾール、シプコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール等、イミダゾール系化合物、例えばトリフルミゾール、プロクロラズ、イマザリル、ペフラゾエート等、ピペラジン系化合物、例えばトリホリン等、モルホリン系化合物、例えばフェンプロピモルフ、トリデモルフ、フェンプロピジン等、ヒドロキシピリミジン系化合物、例えばエチリモル、ジメチリモル等、グアニジン化合物、例えばイミノクタジン酢酸塩、イミノクタジンアルベシル酸塩、グアザチン等、酸アミド系化合物、例えばオキシカルボキシン等、ベンゾアニリド系化合物、例えばメプロニル、ジクロメジン、フルトラニル、ペンシクロンフラメトピル、チフルザミド等、アシルアラニン系化合物、例えば、オキサジキシル、メタラキシル、メトキシアクリレート系化合物、例えばアゾキシストロビン、クレソキシムメチル、メトミノストロビン、トリフロキシストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、オリサストロビン等、キノキサリン系化合物、例えばキノメチオネート等、ヒドロキシアニリド系化合物、例えばフェンヘキサミド等、シアノアセトアミド系化合物、例えばシモキサニル等、シアノイミダゾール系化合物、例えばシアゾファミド等、その他 ファモキサドン、スピロキサミン、トリアゾキシド、ピラゾホス、フルオルイミド、ジメトモルフ、イプロバリカルブ、フェナミドン、エタボキサム、シフルフェナミド、ジチアノン、カルプロパミド、プロベナゾール、メタルスホカルブ、ピロキロン、ヒドロキシイソキサゾール、トリシクラゾール、ジフルメトリム、フェナジンキシド、イソプロチオラン、オキソリニック酸、アシベンゾラル−S−メチル、キノキシフェン。
【0010】
本発明組成物が優れた効力を有する植物病害としては、糸状菌類病害、細菌類病害、ウイルス病害を含むものであるが、具体的には糸状菌類としてシュードペロノスポラ(Pseudoperonospora)属菌、例えばキュウリべと病菌(Pseudoperonospora cubensis)、ベンチュリア(Venturia)属菌、例えばリンゴ黒星病菌(Venturia inaequalis)、エリシフェ(Erysiphe)属菌、例えばコムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis)、ピリキュラリア(Pyricularia)属菌、例えばイネいもち病菌(Pyricularia oryzae)、ボトリチス(Botrytis)属菌、例えばキュウリ灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、リゾクトニア(Rhizoctonia)属菌、例えばイネ紋枯病菌(Rhizoctonia solani)、クラドスポリウム(Cladosporium)属菌、例えばトマト葉かび病菌(Cladosporium fulvum)、コレトトリカム(Colletotrichum)属菌、例えばイチゴ炭そ病菌(Colletotrichum fragariae)、パクシニア(Puccinia)属菌、例えばコムギ赤さび病菌(Puccinia recondita)、セプトリア(Septoria)属菌、例えばコムギふ枯病菌(Septoria nodorum)、スクレロティニア(Sclerotinia)属菌、例えばキュウリ菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)、ピシウム(Pythium)属菌、例えばキュウリ苗立枯病菌(Pythium debaryanum Hesse)、ゲウマノマイセス(Gaeumannomyces)属菌、例えばコムギ立枯病菌(Gaeumannomyces graminis)、また細菌として、バークホルデリア(Burkholderia)属菌、例えばイネ苗立枯細菌病菌(Burkholderia plantarii)、シュードモナス(Pseudomonas)属菌、例えばキュウリ斑点細菌病菌(Pseudomonas syringae pv. Lachrymans)、ラルストニア属細菌(Ralstonia)、例えばナス青枯病菌(Ralstonia solanacearum)、ザンソモナス属細菌(Xanthomonas)、例えばカンキツかいよう病菌(Xanthomonas citiri)、エルビニア(Erwinia)属細菌、例えばハクサイ軟腐病菌(Erwinia carotovora)等が挙げられる。ウイルス病としてはタバコモザイクウイルス(Tobacco mosaic virus)、キュウリモザイクウイルス(Cucumber mosaic virus)等が挙げられるが、何れも該殺菌スペクトルはこれらに限定されるべきものではない。
【0011】
本発明組成物の有効成分であるイミノオキシメチルピリジン化合物と、イミノオキシメチルピリジン化合物以外の農園芸用殺菌剤との混合割合は比較的広い範囲に変えることができるが、通常、イミノオキシメチルピリジン化合物1重量部に対して、イミノオキシメチルピリジン化合物以外の農園芸用殺菌剤は0.01〜1000重量部であり、好ましくは0.1〜100重量部の範囲である。
【0012】
本発明組成物を農園芸用殺菌剤として用いる場合は、通常、固体担体、液体担体あるいはガス状担体と混合し、必要あれば、界面活性剤、その他の製剤用補助剤を添加して、油剤、乳剤、水和剤、粒剤、粉剤、エアゾール、液剤、懸濁剤、泡沫剤、マイクロカプセル、種子用被覆剤、ULV(コールドミスト、ウォームミスト)、ペースト等に製剤化して用いる。これらの製剤には有効成分の合計量として、重量比で、0.1〜99.9%、好ましくは0.2〜80%含有する。
【0013】
これらの製剤は公知の方法で製造することができる。かかる方法は、例えば、活性化合物を、展開剤、即ち、固体担体、液体担体、ガス状担体、場合によっては界面活性剤、固着剤、分散剤、安定剤、泡沫形成剤等あるいは、それらの混合物を用いて混合することによって行なうことができる。展開剤として水を用いる場合には、たとえば、有機溶媒は、また補助溶媒として使用することができる。
【0014】
固体担体としては、たとえば、粘土類(たとえば、カオリン、珪藻土、合成含水酸化珪素、フバサミクレー、ベントナイト、酸性白土)、タルク類、その他の無機鉱物(たとえば、セリサイト、石英粉末、硫黄粉末、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ、)、化学肥料(たとえば、硫安、燐安、硝安、尿素、塩安)等の微粉末あるいは粒状物があげられる。
【0015】
液体担体としては、たとえば、水、アルコール類(たとえば、メタノール、エタノール)、ケトン類(たとえば、アセトン、メチルエチルケトン)、芳香族炭化水素類(たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルナフタレン)、脂肪族炭化水素類(たとえば、n−ヘキサン、シクロヘキサノン、ケロシン、灯油)、エステル類(たとえば、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ニトリル類(たとえば、アセトニトリル、イソブチロニトリル)、エーテル類(たとえば、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル)、酸アミド類(たとえば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、ハロゲン化炭化水素類(たとえば、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素)等があげられる。
【0016】
ガス状担体、すなわち噴射剤としては、たとえば、フロンガス、ブタンガス、炭酸ガスなどがあげられる。
【0017】
界面活性剤としては、たとえば、アルキル硫酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類およびそのポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、糖アルコール誘導体等があげられる。
【0018】
固着剤や分散剤としては、たとえば、カゼイン、ゼラチン、多糖類(たとえば、でんぷん粉、アラビアゴム、セルロース誘導体、アルギン酸)、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶性高分子(たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類)等があげられ、安定剤としては、たとえば、PAP(酸性りん酸イソプロピル)、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、BHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールとの混合物)、植物油、鉱物油、界面活性剤又は脂肪酸もしくはそのエステル等があげられる。
【0019】
製剤化された本発明の殺菌剤組成物は、そのままでまたは水等で希釈して植物体、水面または土壌に施用される。また、他の殺菌剤、殺虫剤、除草剤、肥料、土壌改良剤等と併用することもできる。
【0020】
本発明の殺菌剤組成物の施用量は、有効成分化合物である式(I)で示される化合物と式(I)で示される化合物以外の農園芸用病害防除剤との混合比、気象条件、製剤形態、施用時期、施用方法、施用場所、防除対象病害、対象作物等により異なるが、通常1ヘクタール当たり有効成分化合物量にして1〜1000g、好ましくは10〜250gである。乳剤、水和剤、懸濁剤、液剤等を水で希釈して施用する場合、その施用濃度は、1〜1000ppm、好ましくは10〜250ppmであり、粒剤、粉剤等は通常希釈することなくそのまま施用する。
【発明の効果】
【0021】
本発明組成物は、種々の植物病害に相乗的な卓効を示し、式(I)で示される化合物単独では十分な効果が得られない低薬量でも、多くの病害に対して極めて高い殺菌効果を得ることができることより、農園芸用殺菌剤として優れたものである。
【実施例】
【0022】
以下に製剤例および試験例を示し、本発明をさらに詳しく説明するが、製剤例における化合物、添加物およびその配合割合はこれらのみに限定されるものではない。なお製剤例の使用割合を示す%は特にことわりのない限り重量%である。
【0023】
(製剤例1)
化合物1を10部、農園芸用殺菌剤トリシクラゾールを0.3部、合成含水酸化珪素1部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、ベントナイト25部およびカオリンクレー61.7部をよく粉砕混合し、水を加えてよく練り合わせた後、造粒乾燥して有効成分10.3%の粒剤を得る。
【0024】
(製剤例2)
化合物5を3部、農園芸用殺菌剤トリシクラゾールを0.1部、カオリンクレー85.7部およびタルク11.2部をよく粉砕混合して有効成分3.1%の粉剤を得る。
【0025】
(製剤例3)
化合物1を30部、農園芸用殺菌剤メパニピリムを0.9部、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート3部、CMC3部、水63.1部を混合し、粒度が5ミクロン以下になるまで湿式粉砕して有効成分30.9%の懸濁剤を得る。
【0026】
(製剤例4)
化合物1を9部、農園芸用殺菌剤トリシクラゾールを0.3部、リグニンスルホン酸カルシウム3部、ラウリル硫酸ナトリウム2部および合成水酸化珪素85.7部をよく粉砕混合して有効成分9.3%の水和剤を得る。
【0027】
(製剤例5)
化合物5を9部、農園芸用殺菌剤フサライドを3部、リグニンスルホン酸カルシウム3部、ラウリル硫酸ナトリウム2部および合成水酸化珪素83部をよく粉砕混合して有効成分12%の水和剤を得る。
【0028】
(製剤例6)
化合物1を30部、農園芸用殺菌剤イミノクタジンアルベシル酸塩を7.5部、リグニンスルホン酸カルシウム3部、ラウリル硫酸ナトリウム2部および合成水酸化珪素57.5部をよく粉砕混合して有効成分42.5%の水和剤を得る。
【0029】
(製剤例7)
化合物5を50部、農園芸用殺菌剤ベンチアバリカルブイソプロピルを0.3部、リグニンスルホン酸カルシウム3部、ラウリル硫酸ナトリウム2部および合成水酸化珪素44.7部をよく粉砕混合して有効成分50.3%の水和剤を得る。
【0030】
(製剤例8)
化合物5を30部、農園芸用殺菌剤アゾキシストロビンを0.3部、ポリオキシエチレンスチルフェニルエーテル14部、ドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム6部、キシレン49.7部をよく混合して有効成分30.3%の乳剤を得る。
【0031】
次に本発明組成物が殺菌剤として有用であることを試験例で示す。
【0032】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物の優れた殺菌効果は下記の試験例からも明らかである。つまり、個々の活性化合物はある程度の殺菌効果を示すが、それらの組み合わせは単なる個々の活性化合物の殺菌効果の合計より大きな殺菌効果を示し、相乗効果が見られる。
【0033】
個々の活性化合物の組み合わせによる期待される殺菌効果はコルビー(Colby)の計算式より求めることができる(除草剤の組み合わせの相乗的及び拮抗的反応の計算:Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combination、 Weed 15、 20〜22ページ、 1967)。コルビー(Colby)の計算式を以下に示す。
(数1)
E=X+Y−X×Y/100
Xは化合物をm ppmの濃度で用いた場合の無処理対照の百分率で表される殺菌効果(防除価)を表し、Yは農園芸用殺菌剤をn ppmの濃度で用いた場合の無処理対照の百分率で表される殺菌効果(防除価)を表し、そしてEは化合物をm ppm、農園芸用殺菌剤をn ppmの濃度に混合して用いた場合の無処理対照の百分率で表される殺菌効果(防除価)を表している。
【0034】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物の殺菌効果がコルビー(Colby)の計算式より求められる計算値(E)より大きい場合は、この組み合わせによる殺菌効果は相乗効果を示すこととなる。次に、本発明の農園芸用殺菌剤組成物の殺菌効果が相乗効果を示すことを試験例をあげて具体的に説明する。
【0035】
(コムギうどんこ病防除効果試験)
1辺が9cmの塩ビ製四角鉢に小麦種子(品種:農林61号)を9粒づつ播種し、温室内で8日間育成させ、製剤例3及び製剤例8に準じて調製した本発明の農園芸用殺菌剤組成物、及び化合物と農園芸用殺菌剤を所定濃度の有効成分になるように水で希釈し、1鉢当たり10ml散布した。風乾後、コムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis)の胞子を接種し、20〜25℃の温室内に入れた。接種10日後に各々の第1葉の発病面積を下記の基準に従って指数調査し、得られた指数値をもとに、数2により被害度を求め、さらに数3により防除価(%)を求めた。試験によって得られた実験値の防除価(%)、及びコルビーの計算式より求められた計算値の防除価(%)を表2に示した。
【0036】
発病指数 0:発病を認めず
1:5%未満の発病面積
2:5%以上10%未満の発病面積
3:10%以上25%未満の発病面積
4:25%以上の発病面積
【0037】
(数2)
被害度(%)=(Σ(指数×当該葉数))/(調査葉数×4)×100
【0038】
(数3)
防除価(%)=(1−処理区の被害度/無処理区の被害度)×100
【表2】

【0039】
(イネいもち病予防効果試験)
直径7cmの素焼鉢に水稲種子(品種:愛知旭)を約15粒ずつ播種し、温室内で2〜3週間育成した。第4葉が完全に展開したイネ苗に製剤例4及び製剤例5に準じて調製した本発明の農園芸用殺菌剤組成物、及び化合物と農園園芸用殺菌剤を所定濃度の有効成分になるように水で希釈し、各々1鉢当たり10mlを噴霧散布した。風乾後、イネいもち病菌(Pyricularia oryzae)の分生胞子懸濁液を噴霧接種し、直ちに25℃の湿室内に24時間入れた。その後温室内に移し、接種5日後に第4葉の病斑数を調査し、数4により防除価を求めた。試験によって得られた実験値の防除価(%)、及びコルビーの計算式より求められた計算値の防除価(%)を表3に示した。
【0040】
(数4)
防除価(%)=(1−処理区の病斑数/無処理区の病斑数)×100
【表3】

【0041】
(キュウリうどんこ病防除効果試験)
1辺が9cmの塩ビ製四角鉢にキュウリ種子(品種:相模半白)を10粒づつ播種し、温室内で7日間育成させ、子葉が展開したキュウリ幼苗を供試植物として用いた。製剤例3、製剤例6、製剤例8に準じて調製した本発明の農園芸用殺菌剤組成物、化合物および農園芸用殺菌剤を所定濃度の有効成分になるように水で希釈し、各々1鉢当たり10mlを噴霧散布した。風乾後、キュウリうどんこ病菌(Sphaerotheca fuliginea)あるいはその耐性菌の分生胞子を振るい落として接種し、20℃の温室内に保持し、7日後に各子葉の発病程度を下記の発病指数の基準に従って調査し、得られた指数値をもとに、数2により被害度を求め、さらに数3により防除価(%)を求めた。試験によって得られた実験値の防除価(%)、及びコルビーの計算式より求められた計算値の防除価(%)を表4、5に示した。
【0042】
発病指数 0:発病を認めず
1:葉の面積の5%未満の発病面積
2:葉の面積の5%以上33.3%未満の発病面積
3:葉の面積の33.3%以上66.6%未満の発病面積
4:葉の面積の66.6%以上の発病面積、または落葉
【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
(キュウリべと病防除効果試験)
1辺が9cmの塩ビ製四角鉢にキュウリ種子(品種:相模半白)を10粒づつ播種し、温室内で7日間育成させ、子葉が展開したキュウリ幼苗を供試植物として用いた。製剤例7及び製剤例8に準じて調製した本発明の農園芸用殺菌剤組成物、化合物および農園芸用殺菌剤を所定濃度の有効成分になるように水で希釈し、各々1鉢当たり10mlを噴霧散布した。風乾後、キュウリべと病菌(Pseudoperonospora cubensis)あるいはその耐性菌の分生胞子懸濁液を噴霧接種し、直ちに20℃の湿室内に24時間入れた。その後温室内に移し、7日後に各子葉の発病程度を下記の発病指数の基準に従って調査し、得られた指数値をもとに、数2により被害度を求め、さらに数3により防除価(%)を求めた。試験によって得られた実験値の防除価(%)、及びコルビーの計算式より求められた計算値の防除価(%)を表6、7に示した。
【0046】
発病指数 0:発病を認めず
1:葉の面積の5%未満の発病面積
2:葉の面積の5%以上33.3%未満の発病面積
3:葉の面積の33.3%以上66.6%未満の発病面積
4:葉の面積の66.6%以上の発病面積、または落葉
【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】
これらの結果から明らかなように、本発明組成物は、式(I)で示される化合物単独では十分な効果が得られない低薬量でも、コルビーの計算式で予想されるよりも高い相乗的な高い効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)




(式中、Xはハロゲン原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cハロアルキル基又はC〜Cハロアルコキシ基を表し、Yはハロゲン原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルコキシ基を表し、1は0、1/2又は1を表し、m及びnは各々独立に0又は1から4の整数を表し、RはC〜Cアルキル基を表し、Rは水素原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cハロアルキル基を表し、H−Aは酸性物質を表す。)にて示されるイミノオキシメチルピリジン化合物と植物病害に対して殺菌活性を有するイミノオキシメチルピリジン化合物以外の化合物から選択される1種または2種以上の農園芸用殺菌剤とを混合した農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項2】
成分として、イミノオキシメチルピリジン化合物が、上記一般式(I)で、Xがハロゲン原子又はC〜Cアルキル基であり、Yがハロゲン原子又はC〜Cアルキル基であり、lは0、又は1であり、m及びnは各々独立に0又は1の整数であり、Rはメチル基であり、RはC〜Cアルキル基であり、H−Aはp−ラウリルベンゼンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸である請求項1に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項3】
成分として、イミノオキシメチルピリジン化合物が、一般式(II)でXは水素原子又はメチル基を表し、Yは水素原子、塩素原子又はメチル基を表し、lは0又は1を表し、Rはメチル基又はエチル基を表し、H−Aはp−ラウリルベンゼンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸である請求項1に記載の農園芸用殺菌剤組成物。


【請求項4】
成分として、イミノオキシメチルピリジン化合物が、一般式(III)である請求項1に記載の農園芸用殺菌剤組成物。



【公開番号】特開2006−104097(P2006−104097A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291047(P2004−291047)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000000169)クミアイ化学工業株式会社 (86)
【Fターム(参考)】