説明

農業ハウス用チューブとそれを用いた農業用ハウス

【課題】 加温媒体を送ることができる安価で設置容易な農業ハウス用チューブとそれを用いた農業用ハウスを提供する。
【解決手段】 農業ハウス用チューブは、扁平状であり、内部に流体供給により膨らみ、流体非流通時は扁平状に戻る、巻取り可能な可撓性を備えるものとした。チューブは流体温度以上の耐熱性、流体熱を外部に伝達/放出可能な熱伝導性を備えたものとすることができる。農業ハウス用チューブには表面側と裏面側が重合接合された接合部を設けることも、加温媒体が放出可能な通孔を開口することもできる。農業用ハウスは、前記農業ハウス用チューブを農業用ハウス内又は小室に区画した農業用ハウス内に配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は農業用ハウス内に加温媒体を流すのに適する農業ハウス用チューブと、それを用いた農業用ハウスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の育苗、栽培等には農業用ハウスが使用されており、農業用ハウス内の加温はボイラ等の温風加熱装置から農業用ハウス内に配管されたホースやチューブに熱風を送る方法で行われるのが主流である。植物栽培地面を加温する場合はその地面の上に加熱媒体輸送パイプを配管したり埋設したりし、それらパイプにボイラ等で沸かした湯を供給して加温する方法もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の温風加熱方法には次のような難点があった。
(1)ボイラからの温風をダクト内に送り込み、ダクトから農業用ハウス内の空中に温風を噴出しているため加温効率が悪い。
(2)農業用ハウス内に放出される温風が栽培物に直接当たって栽培物の茎や葉が損傷することがあった。
(3)加温媒体輸送管に硬質樹脂製や金属製等のパイプが使用されているため、それを地面上に配管したり地中に埋設したりすると、植物栽培後に地面を耕運するときにそれらパイプが邪魔になる。邪魔にならないようにするためには地面上のパイプを片付けたり、地中のパイプを掘り起こしたりしなければならず面倒である。
【0004】
本願発明の解決課題は、少なくとも前記難点を解決でき、設備導入費が安価で、設置が大掛かりにならず、湯、温風、ガスなどの加温媒体を送ることができ、植物栽培の邪魔にならず、植替え時の土壌耕運の邪魔にもならず、手軽に一時撤去可能な農業ハウス用チューブと、それを用いた農業用ハウスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の農業ハウス用チューブは、請求項1記載のように、農業用ハウス内で使用されるチューブにおいて、前記チューブは扁平状のチューブであり、内部に流体が供給されると膨らみ、流体非流通時は扁平状に戻り、扁平状態でロール状に巻取り可能なる可撓性があるものである。この場合、請求項2記載のように、チューブがその内部を流れる流体温度以上の耐熱性があり、流体熱を外部に伝達/放出可能な熱伝導性を備えたものとすることができる。請求項3記載のように、農業ハウス用チューブの幅方向両端部にチューブ表面側と裏面側が重合接合された接合部を設けることもできる。請求項4記載のように、農業ハウス用チューブに、その内部を流れる気体の加熱媒体が放出可能な通孔を開口することもできる。
【0006】
本願発明の農業用ハウスは、請求項5記載のように、前記農業ハウス用チューブを農業用ハウス内に配置したものである。この場合、請求項6記載のように、農業用ハウス内を小室に区画しそれら小室内に配置することができる。
【発明の効果】
【0007】
本願発明の農業ハウス用チューブ(以下「チューブ」という)は次のような効果がある。
(1)扁平状態でロール状に巻取り可能な可撓性があるため、不使用時の片付が容易になる。
(2)加熱媒体温度(流体温度)以上の耐熱性と、加熱媒体の熱を外部に伝達/放出可能な熱伝導性を備えているため、農業用ハウス内の加温に適する。
(3)チューブの幅方向両端部に表面側と裏面側が重合接合された接合部を備えているため、チューブを回転ドラムなどにロール状に巻取る際にチューブが捩れにくくなり、巻取りをスムーズに行なうことができる。
(4)加温媒体が放出する通孔が開口されているので、チューブ内を流れる加温媒体が自動的に農業用ハウス内に放出されて、農業用ハウス内を加温することができる。
(5)チューブ1を農業用ハウス内又は小室内の所望箇所に配置できるので、ボイラを使用する場合のように温かい空気が栽培物とは無関係な場所(農業用ハウスの天井付近)に溜まってしまうような無駄はなく、農業用ハウス内又は小室内を効果的かつほぼ均一温度に加温することができる。
(6)ボイラのように温風を噴出するものではないので、温風などにより栽培物の茎や葉などの損傷を引き起こすことがない。
(7)ボイラのような石油燃焼式の大型装置を使用する必要がないので、農業用ハウス内の汚染を軽減することができる。
【0008】
本願発明の農業用ハウスは次のような効果がある。
(1)農業用ハウス内に敷設されたチューブは扁平状であるため、設置に場所をとらず、栽培用スペースや作業用スペースを広く確保することができる。
(2)チューブは扁平状であり、ロール状に巻取り可能であるので、手軽に一時撤去することができ、土壌を耕耘するときに邪魔にならず、耕耘し易くなる。
(3)チューブが農業用ハウス内の分割された小室内に配置されているので、小室ごとの加温が可能になり、小室内で栽培されている栽培物に合せて、小室内を必要温度に加温することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(農業ハウス用チューブの実施形態)
本願発明の農業ハウス用チューブの実施形態の一例を図1に基づいて説明する。
【0010】
図1に示すチューブ1は、二枚の細長シート1a、1bが積層されてその幅方向両側が重合され、その幅方向両端部が接着剤等で接合されて幅方向両端部に接合部1cを有するものである。二枚の細長シート1a、1bは内部空間2に温風(気体)や温水(液体)などの加温媒体が供給されるとその圧力で内部空間2が膨張して筒状(図1(b))になり、加温媒体が供給されていない時は扁平状(図1(a))に戻る可撓性を有する。チューブ1はシームレス状に成型し、その幅方向両側を表面側と裏面側に重ねて接合して扁平状にすることもできる。
【0011】
前記チューブ1を構成する細長シート1a、1bは、その内部空間2内に温水、温風等の加温媒体を流すため、加温媒体の温度以上の耐熱性を有する材質製とする必要があり、例えば80℃程度の温度に耐え得る材質製とすることが望ましい。また、内部空間2内に供給される加温媒体で農業用ハウス3(図2(a))内を加温する必要があるため、加温媒体の熱が農業用ハウス3内或いは農業用ハウス3内の植物栽培土壌に伝達され易い熱伝導性の良好な材料製とすることもできる。チューブ1には加温媒体が放出される通孔4を開口することもできる。この場合は、チューブ1の長手方向に適宜間隔をあけて開口することができる。
【0012】
前記チューブ1は扁平状態で軸や巻取りドラム等にロール状に巻取り可能な可撓性を備えるものである。このように巻取り可能とすることによりチューブ1をロール状に巻取って手軽に撤去することができる。
【0013】
(農業用ハウスの実施形態)
本願発明の農業用ハウスの実施形態の一例を、図2に基づいて説明する。この実施形態の農業用ハウス3は、内部を複数の小室5に分け、その各小室5内を加温できるようにしたものである。
【0014】
前記農業用ハウス3はその内部がビニール材等によって複数の小室5に仕切られたタイプのものである。内部を二以上の小室5に分割した農業用ハウス3として、例えば、図2(a)(b)に示すような農業用ハウス3を使用することができる。この場合、チューブ1から放出される熱で小室5内が効率よく加温される。前記小室5の広さ・高さ等は栽培物に応じて任意のものとすることができる。また、農業用ハウス3はその内部が小室5に分割されていない汎用の又は新規のものであってもよい。
【0015】
前記小室5の夫々には、本願発明に係る扁平状のチューブ1を配設してある。チューブ1は小室5内の所望箇所に配設することができ、例えば、各小室5に設けられた畝(地面)の上に敷設したり、地面の近くに支持具で支持して配置したり、小室5の天井や区画されていない農業用ハウス3の天井等にフック付のロープや紐などで吊り下げたりすることができる。このようにチューブ1を上方から吊り下げたとしても、チューブ1は軽量であるので、ヒートパイプ等を使用する場合に比して、農業用ハウス3の天井等にかかる負担は格段に小さい。
【0016】
(使用例)
本願発明のチューブ1を用いて内部を複数の小室5に分けた農業用ハウス3内を加温する場合の一例(使用例)を図2に基づいて説明する。なお、本使用例は内部が小室5に仕切られていない既存の農業用ハウス3内を加温する場合の一例でもある。この使用例は、農業用ハウス3の小室5内に配設した前記扁平状のチューブ1の内部空間2に給湯器6から温水を供給し、そのチューブ1からに輻射熱で前記農業用ハウス3の各小室5内を加温する場合の例である。
【0017】
給湯器6には既存の又は新規な湯沸かし器を使用することも、太陽熱式給湯器などを使用することもできる。これら給湯器6は二酸化炭素の排出量がボイラ等に比して格段に少ないため、農業用ハウス3の外への二酸化炭素の排出量を著しく低減することができ地球環境改善の一助となる。これら給湯器6はボイラに比して小型であるため農業用ハウス3内で使用することもでき、この場合は給湯器6から排出される二酸化炭素が農業用ハウス3内に拡散されるため、高温の二酸化炭素による二次的な加温も期待でき、更には、二酸化炭素が植物の光合成にも役立つ。
【0018】
前記温水の給湯は農業用ハウス3内で行うことも各小室5内で行うこともできる。農業用ハウス3内に複数の小室5を設ける場合でも、農業用ハウス3内の一つの給湯器6から各小室5に分散供給することができる。給湯温度は季節によっても異なるが40℃〜80℃程度が望ましい。
【0019】
温水は給湯器6からチューブ1に連続供給することも簡潔供給することもでき、また、連続循環式とすることも、所定時間ごとに流れる間欠的循環式とすることもできる。
【0020】
加温媒体は温水に限らす、加熱ガスとすることもできる。この場合も加熱ガスの輻射熱で農業用ハウス3内を加温可能であるガ、加熱ガスがチューブ1の前記通孔4から農業用ハウス3内に放出させると加温効率が向上する。
【0021】
前記チューブ1を巻取るときは、チューブ1を扁平状態にし、その一端に軸や巻きりドラム等を取付けてチューブ1をロール状に巻取る。チューブ1は扁平状であるので、折り畳んで重ねるなど、ロール状以外の形状に巻取ることもできる。チューブ1を巻取り可能とすることにより、耕作時などにチューブ1を手軽に撤去することができる。
【0022】
チューブ1は農業用ハウス3内の土壌中に埋設することもできる。この場合、土の重さでチューブ1が膨らまないという事態を回避するため、チューブ1の外周を硬質のカバーで被覆する。カバーはチューブ1が膨らむ空間を確保できるものであれば、その材質は問わず、プラスチック製であっても金属製であってもよい。硬質かつ軽量な材質を用いると、土壌を耕耘する場合など、チューブ1を撤去しなければならない場合に作業がし易くなる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本願発明のチューブは農業用ハウスやその小室といった室内の加温用としてのみならず、積雪地帯において融雪用チューブとして使用することもできる。より具体的には、雪の積もり易い場所(例えば、道路、屋根、庭、公園など)に本願発明のチューブを配設し、そのチューブに温水等を流すことによって融雪することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本願発明のチューブの一例を示すものであって、(a)はチューブ内に流体が流れていない状態の断面説明図、(b)はチューブ内に流体が流れている状態の断面説明図。
【図2】(a)本願発明の農業用ハウス全体の一例を示す斜視図、(b)はその小室部分の拡大図。
【符号の説明】
【0025】
1 チューブ
1a (上面の)細長シート
1b (下面の)細長シート
1c 接合部
2 内部空間
3 農業用ハウス
4 通孔
5 小室
6 給湯器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用ハウス内で使用されるチューブにおいて、
前記チューブは扁平状であり、
内部に流体が供給されると膨らみ、流体非流通時は扁平状に戻り、
扁平状態でロール状に巻取り可能な可撓性がある、
ことを特徴とする農業ハウス用チューブ。
【請求項2】
請求項1記載の農業ハウス用チューブにおいて、
農業ハウス用チューブがその内部を流れる流体温度以上の耐熱性があり、流体熱を外部に伝達/放出可能な熱伝導性を備えた、
ことを特徴とする農業ハウス用チューブ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の農業ハウス用チューブにおいて、
農業ハウス用チューブの幅方向両端部にチューブ表面側と裏面側が重合接合された接合部を備えた、
ことを特徴とする農業ハウス用チューブ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の農業ハウス用チューブにおいて、
農業ハウス用チューブに、内部を流れる気体の加温媒体が放出する通孔が開口されている、
ことを特徴とする農業ハウス用チューブ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の農業ハウス用チューブが、農業用ハウス内に配置された、
ことを特徴とする農業用ハウス。
【請求項6】
請求項5記載の農業用ハウスにおいて、
農業ハウス用チューブが農業用ハウス内の分割された小室内に配置された、
ことを特徴とする農業用ハウス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−99050(P2010−99050A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275839(P2008−275839)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(308007099)
【Fターム(参考)】