説明

農業用フィルム

【課題】 本発明は、防曇剤のブリードアウトによる白化が少なく、且つ、初期防曇性及び防曇持続性に優れた農業用フィルムを提供する。
【解決手段】 本発明の農業用フィルムは、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部、薄片化黒鉛0.005〜2重量部及び防曇剤1〜5重量部を含有し、又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部、薄片化黒鉛0.005〜2重量部及び防曇剤1〜5重量部を含有する中間層と、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部及び防曇剤0.1〜0.8重量部を含有し且つ薄片化黒鉛を含有しない第一表面層と、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第二表面層とを有するので、農業用フィルムの表面に適切な量の防曇剤を使用初期から長期間に亘って安定的にブリードアウトさせることができ初期防曇性及び防曇持続性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用フィルムに関し、詳しくは、長期間に亘って優れた防曇性を持続し得る農業用温室ハウスやトンネル用被覆資材に好適な農業用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
温室栽培は年間を通じて各種野菜、果物、花等の農作物を供給するための栽培手法として広く普及している。その被覆資材としては、従来からポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等からなるフィルムが汎用されているが、近年、環境保護の観点から、特にポリオレフィン系樹脂フィルムの使用が急速に広まっている。
【0003】
ところが、上記ポリオレフィン系樹脂フィルムは、その表面が疎水性であるために、作物に与える水分や作物自身から出る水分によって、気象条件によってはフィルムの温室内面で水分が凝結し、小さな水滴が無数に発生する。このような状態では日中の太陽光線の透過が阻害されて、温室内の温度上昇不足を招き、或いは、水滴が落下して作物に害を与えるといった問題があった。
【0004】
このような害を防ぐために、防曇剤として多価アルコール脂肪酸エステルを練り混む方法が一般的に採られている。この方法により、フィルム表面で凝結した水分は水滴となることなく水膜を形成するので水滴の落下が防止される。しかしながら、水分の流下に伴い、フィルム表面の防曇剤は流されてしまい、長期間の防曇持続性を発現させることが困難 である。これを解決するために、ブリード性の遅い防曇剤を使ったり、防曇剤の練り混み量を増やしたりすれば、防曇性を発現させるまでに長期間エージングさせる必要が生じたり、防曇剤のブリード過多によりフィルム表面が著しく白化したり、べたつきを発生させたりする等の問題点があった。
【0005】
このようなブリード過多による白化やべたつきを防止する方法として、特許文献1及び特許文献2には、遅効性のソルビタン系防曇剤と速効性のグリセリン系防曇剤を特定の比率で混合する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、上記問題点を防止することは困難であり、白化と防曇持続性の両方を同時に満足させることはできなかった。
【0006】
更に、特許文献3には、非イオン系界面活性剤にヒドロキシ脂肪酸の多価アルコールエステルを混合する方法が開示されている。しかしながら、この方法においても十分な白化改善が得られなかったり、防曇持続性を低下させてしまうという問題点があった。又、特許文献4には、多価アルコール飽和脂肪酸エステルに直鎖パラフィンスルホン酸金属塩を混合する方法が開示されている。しかしながら、直鎖パラフィンスルホン酸金属塩を配合 すると、界面活性剤のブリードアウト性が著しく低下するため、初期防曇性及び防曇持続性を著しく低下させてしまうという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−59046号公報
【特許文献2】特開平3−59047号公報
【特許文献3】特開昭60−26048号公報
【特許文献4】特開平10−35号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、防曇剤のブリードアウトによる白化が少なく、且つ、初期防曇性及び防曇持続性に優れた農業用フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の農業用フィルムは、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部、薄片化黒鉛0.005〜2重量部及び防曇剤1〜5重量部を含有することを特徴とする。
【0010】
エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分の含有量は、少ないと、エチレン−酢酸ビニル共重合体の極性が低くなり、防曇剤を十分に含有させることができないことがあり、多いと、農業用フィルムからブリードアウトする防曇剤の量が少なくなり過ぎて農業用フィルムの防曇性が低下することがあるので、1〜10重量%が好ましく、3〜8重量%がより好ましい。
【0011】
又、エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイト(MFR)は、低いと、農業用フィルムの柔軟性が低下することがあり、高いと、農業用フィルムの透明性が低下することがあるので、0.5〜4g/10分が好ましい。なお、本発明において、エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトは、JIS K 7210「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)の試験方法」に準拠して、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定された値をいう。
【0012】
農業用フィルムには防曇剤が含有されている。防曇剤としては、特に限定されず、例えば、例えば、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、グリセリンステアレート、ジグリセリンステアレート、ポリグリセリンステアレート、ソルビトールグリセリンステアリレートなどの多価アルコール飽和脂肪酸エステル;グリセリンオレアート、ジグリセリンオレアートなどの多価アルコール不飽和脂肪酸エステルなどが挙げられ、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレートが好ましく、ソルビタンパルミテートとソルビタンステアレートとを併用することが好ましい。なお、防曇剤は単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0013】
農業用フィルム中における防曇剤の含有量は、少ないと、農業用フィルムの防曇性が低下することがあり、多いと、防曇剤のブリードアウト量が多くなりすぎて農業用フィルムの白化を生じることがあるので、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して1〜5重量部に限定され、1.3〜2.5重量部が好ましい。
【0014】
更に、農業用フィルムには薄片化黒鉛が含有されている。この薄片化黒鉛は、複数のグラフェンシートの積層体である。薄片化黒鉛は、黒鉛化合物を剥離処理して得られるものであり、原料となる黒鉛化合物よりも厚みの薄いグラフェンシートの積層体、即ち、原料となる黒鉛化合物のグラフェンシートの積層数よりも少ない積層数を有するグラフェンシートの積層体である。本発明において、グラフェンシートとは炭素六角網平面からなる1枚のシート状物をいう。
【0015】
なお、黒鉛化合物としては、黒鉛、膨張化黒鉛の何れであってもよいが、グラフェンシート間から剥離し易いので、膨張化黒鉛が好ましい。なお、黒鉛に官能基が化学的に結合してしても、或いは、黒鉛に官能基が弱い相互作用により疑似的に結合していてもよい。なお、本発明において、膨張化黒鉛とは、原料となる黒鉛に層間物質が挿入され、グラフェンシート間の間隔が広げられたものをいう。
【0016】
薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は、原料となる黒鉛化合物の積層数よりも少なければよいが、2〜200層である。薄片化黒鉛は、薄いグラフェンシートが複数枚、積層されており、アスペクト比が比較的大きい鱗片状の形態を有する。
【0017】
薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は、150層以下が好ましく、60層以下がより好ましく、30層以下が更に好ましく、10層以下が特に好ましく、5層以下が最も好ましい。なお、薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができ、各薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数の相加平均値をいう。
【0018】
更に、薄片化黒鉛のアスペクト比は20以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上が特に好ましく、200以上が最も好ましいが、高すぎると、薄片化黒鉛の割れが発生することがあるので、5000以下が好ましい。なお、薄片化黒鉛のアスペクト比は、各薄片化黒鉛についてグラフェンシートの面方向における最大寸法を厚みで除したアスペクト比を算出し、各薄片化黒鉛のアスペクト比の相加平均値をいう。
【0019】
ここで、薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの面方向における最大寸法とは、薄片化黒鉛の面積が最も大きくなる方向から見た時の薄片化黒鉛の最大寸法をいう。薄片化黒鉛の厚みとは、薄片化黒鉛の面積が最も大きくなる方向から見た時の薄片化黒鉛の表面に対して直交する方向の薄片化黒鉛の最大寸法をいう。
【0020】
なお、薄片化黒鉛にてグラフェンシートの面方向における最大寸法は、FE−SEMを用いて測定することができる。又、薄片化黒鉛の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)又はFE−SEMを用いて測定することができる。
【0021】
農業用フィルム中における薄片化黒鉛の含有量は、少ないと、防曇剤のブリードアウトが多くなりすぎて農業用フィルムの白化を生じ、多いと、農業用フィルムの透明性が低下するので、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して0.005〜2重量部に限定され、0.02〜0.07重量部が好ましい。
【0022】
薄片化黒鉛は、上述のように、黒鉛化合物を剥離処理して得られたものであって、アスペクト比が比較的大きい鱗片状の形態を有し、薄片化黒鉛はその多くがグラフェンシートの主面を農業用フィルムの表裏面に沿わせた状態に含有されている。なお、グラフェンシートの主面とは最も面積の大きい面をいう。
【0023】
そして、農業用フィルム中に含有されている防曇剤が農業用フィルムの表面にブリードアウトする途上において、薄片化黒鉛が防曇剤の進行を留める作用を奏し、防曇剤は薄片化黒鉛中に存在する微細孔に保持され、薄片化黒鉛中に保持された防曇剤はその後、徐々に放出されて農業用フィルムの表面にブリードアウトする。従って、農業用フィルム中の防曇剤は薄片化黒鉛が存在していない場合に比して遅い速度でもって農業用フィルムの表面にブリードアウトする。又、上述のように、薄片化黒鉛の微細孔内に防曇剤を保持し、この微細孔から徐々に防曇剤を放出させているので、農業用フィルム中に従来よりも多量の防曇剤を含有させることができる。即ち、本発明の農業用フィルムは、多量の防曇剤を含有させているものの、薄片化黒鉛を存在させることによって防曇剤が農業用フィルムの表面にブリードアウトする速度を調整しており、その結果、農業用フィルムの表面に適切な量の防曇剤を長期間に亘って安定的にブリードアウトさせることができる。
【0024】
又、薄片化黒鉛は微量でもって防曇剤が農業用フィルムの表面にブリードアウトする速度を調整することができ、その結果、本発明の農業用フィルムは優れた透明性を有しており、太陽光線の透過を十分に確保し作物の育成を担保することができる。
【0025】
次に、農業用フィルム中に含有されている薄片化黒鉛の製造方法について説明する。薄片化黒鉛は、黒鉛化合物を剥離処理して製造され、薄片化黒鉛の製造方法としては特に限定されないが、下記の方法によって薄片化黒鉛を製造することが好ましい。
【0026】
先ず、黒鉛シートまたは膨張化黒鉛シートを作用極とし、該作用極をPtなどからなる対照極とともに、酸性電解質水溶液中に浸漬し、電気化学処理する。それによって、黒鉛シート、即ち、層状黒鉛のグラフェンシート間に酸性電解質イオンをインターカレートすることができ、グラフェンシート同士の間隔を広げることができる。
【0027】
具体的には、図1に示すように、黒鉛または膨張化黒鉛からなるシート1を用意する。このシート1に、図1に示すように、複数本のスリット1a、1bを形成する。シート1は、模式的に示すように、複数のグラフェンシートGの積層体である。このグラフェンシートGの面方向に垂直方向である、シート1の厚み方向に貫通する、上記複数本のスリット1a、1bを形成する。スリット1a、1bの形成は、機械的切削加工、或いは、レーザー光の照射などによって行い得る。なお、スリットの数は特に限定されない。
【0028】
次に、スリット1a、1bに、電極2の一部を挿入する。電極2は、スリット1a、1bにそれぞれ挿入される挿入片2a、2bと、挿入片2a、2bを連結している連結部2cとを有する。電極2は、本実施形態では、Ptからなるが、適宜の金属により形成することができる。
【0029】
上記電極2の挿入片2a、2bをスリット1a、1bに挿入する。その結果、図2に示すようにシート1に電極2の一部が挿入された構造を得ることができる。この構造を図3に示すように、電解質水溶液中に浸漬する。
【0030】
上記電解質溶液6としては、硝酸水溶液、硫酸水溶液などを用いることができる。それによって、硝酸イオンや硫酸イオンなどをグラフェンシート間に挿入することができる。
【0031】
上記電解質溶液6に浸漬されたシート1を作用極とし、電解質溶液6中にPtなどの金属からなる対極7と、Ag/AgClからなる参照極8とを浸漬し、対極7とシート1との間に直流電圧を印可して電気化学処理を行う。それによって、シート1のグラフェンシート間に電解質溶液6中の電解質イオンがインターカレートされる。また、シート1のグラフェンシート間の隙間が広がることとなる。
【0032】
上記電気化学的処理に際しては、対極7とシート1との間に、好ましくは0.3〜10Vの直流電圧を1時間以上で且つ500時間未満に亘って印加する。直流電圧の範囲が、この範囲内にあれば、黒鉛化合物のグラフェンシート間に硝酸イオンや硫酸イオンなどの電解質イオンをより確実にインターカレートすることができ、膨張化黒鉛をより確実に得ることができる。なお、直流電圧印加時間が、1時間以上であればよいが、長すぎると、膨張化黒鉛の生産性が低下し且つ電解質イオンをインターカレートする効果も飽和する。従って、直流電圧の印加時間は500時間未満とすればよい。
【0033】
電解質溶液6の濃度は特に限定されないが、水溶液の場合は、10〜80重量%が好ましい。この範囲内であれば、電解質イオンをより一層確実にグラフェンシート間にインターカレートすることができる。
【0034】
又、上記電気化学処理に際しての電解質溶液6の温度は特に限定されないが、水溶液の場合は5〜100℃程度の温度とすればよい。
【0035】
より好ましくは、黒鉛化合物からなる上記シート1にスリット1a、1bを形成するに先立ち、より密度の低いシート1を用意することが好ましい。このようなより密度が低いシート1を用意するには、例えば以下の方法を用いることができる。先ず、黒鉛化合物の原料粉末を予備的にシート成型して予備成型シートを得る。図4に示すように、予備成型シート11を、ロール12、13間に供給して圧延する。それによって、予備成型シート11よりも厚みの薄いシート1を得ることができる。この場合、圧延倍率を調整することにより、シート1の密度を調整することができる。即ち、圧延倍率を低くすることにより、相対的に密度の低いシート状の黒鉛化合物を得ることができる。
【0036】
上記のようにして、黒鉛化合物からなる密度が低いシート1を用いた場合、層間物質としての電解質イオンが黒鉛化合物のグラフェンシート間により均一にインターカレートされ、グラフェン間の層間をより確実に広げることができる。
【0037】
上述のようにして得られた膨張化黒鉛は、硝酸イオンなどがインターカレートされてグラフェンシートの主面同士がなす角度の均一性や各グラフェンシート間での層間物質の挿入量の均一性に優れている。従って、得られた膨張化黒鉛に剥離力を加えることにより、膨張化黒鉛のグラフェンシート同士を容易に剥離することができる。膨張化黒鉛のグラフェンシート間での層間物質の挿入量にばらつきがある場合、特に熱による剥離力を加えたときはグラフェンシート同士を剥離し得ない部分が存在する。これに対して、上述のようにして得られた膨張化黒鉛は、グラフェンシート間での層間物質の挿入量の均一性に優れているため、グラフェンシート同士を剥離するための剥離力を加えた場合、殆どのグラフェンシート間において、グラフェンシートを他のグラフェンシートから確実に剥離することができる。よって、上述の製造方法によって得られた膨張化黒鉛にグラフェンシート同士を剥離させる剥離力を加えることによって薄片化黒鉛を容易に得ることができる。
【0038】
なお、膨張化黒鉛から薄片化黒鉛を得るための剥離工程は、加熱、機械的剥離力、超音波などからなる群から選択された一種のエネルギー付加工程を実施することにより行うことができる。
【0039】
一例を挙げると、膨張化黒鉛を300〜1200℃に加熱することにより、好ましくは300〜600℃に加熱することにより、膨張化黒鉛から薄片化黒鉛を得ることができる。
【0040】
なお、上記農業用フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、無機保温剤、有機保温剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防霧剤、滑剤、顔料などの添加剤が添加されていてもよい。
【0041】
上記無機保温剤は、農業用フィルムの保温性向上及びフィルムの農業用フィルム押出製膜時における押出変動防止の目的で添加される。このような無機保温剤としては、特に限定されず、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、燐酸リチウム、燐酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、タルク、ハイドロタルサイト類、リチウムアルミニウム複合水酸化物、及び、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、12族(2B族)元素、炭素以外の14族(4B族)元素から選ばれる少なくとも2種以上の元素を有する複合水酸化物などが挙げられ、これらは単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
又、上記光安定剤としては、従来公知のものが使用できるが、これらのなかでも、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−[(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]}などが挙げられ、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
そして、上記酸化防止剤としては、従来公知のものが使用できるが、熱安定剤としての効果を兼ね備えているものが好ましい。このような酸化防止剤としては、例えば、カルボン酸の金属塩、フェノール系抗酸化剤、有機亜燐酸エステルなどのキレーターが挙げられ、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
又、上記紫外線吸収剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられ、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
そして、上記防霧剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、シリコーン系、フッ素系などの界面活性剤が挙げられる。上記滑剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイドなどのビスアマイドなどが挙げられる。
【0046】
更に、本発明の農業用フィルムの厚さは、薄いと、農業用フィルムの引裂強度及びインパクト強度が低下することがあり、厚いと、農業用フィルムの裁断、接合、展張作業が困難となり、取扱い性が低下することがあるので、50〜200μmが好ましく、70〜170μmがより好ましい。
【0047】
次に、本発明の農業用フィルムの製造方法について説明する。農業用フィルムの製造方法は、公知の方法が用いられ、例えば、(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体、薄片化黒鉛及び防曇剤、並びに、その他の添加剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機の先端に取り付けたサーキュラダイから円筒状体を押出し、この円筒状体の中心部から圧縮空気を送って一定の大きさまで膨張させると共に、円筒状体の外面に冷却空気を吹き付けて冷却した後、円筒状体を所定箇所から切断して展開することによって農業用フィルムを製造するインフレーションフィルム成形方法、(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体、薄片化黒鉛及び防曇剤、並びに、その他の添加剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機の先端に取り付けたTダイから押出して農業用フィルムを製造するTダイ法などが挙げられ、上記(1)のインフレーションフィルム成形法が好ましい。
【0048】
上述のようにして農業用フィルムを製造するにあたって、薄片化黒鉛はサーキュラダイ又はTダイを通過する際に押出方向に剪断力が加わり、グラフェンシートの主面が農業用フィルムの表面に対向した状態に配向させられる。よって、得られる農業用フィルムは、その内部に薄片化黒鉛がそのグラフェンシートの主面を農業用フィルムの表面に略沿った状態に含有されており、薄片化黒鉛は少量でもって防曇剤が農業用フィルム中を進行する速度を適切な速度まで減速させることができる。
【0049】
なお、上記では薄片化黒鉛を押出機に供給した場合を説明したが、薄片化黒鉛の代わりに或いは薄片化黒鉛と共に、膨張化黒鉛を押出機に供給し、押出機内において膨張化黒鉛に剥離力を加えて、膨張化黒鉛のグラフェンシート同士を剥離させて薄片化黒鉛を押出機内にて製造し、この薄片化黒鉛をポリエチレン系樹脂と共にサーキュラダイ又はTダイから押出して農業用フィルムを製造してもよい。
【0050】
上記では農業用フィルムが単層である場合を説明したが複層の農業用フィルムであってもよい。具体的には、図5に示したように、複層の農業用フィルムAは、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部、薄片化黒鉛0.005〜2重量部及び防曇剤1〜5重量部を含有する中間層A1と、この中間層A1の一面に積層一体化されており、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部及び防曇剤0.1〜0.8重量部を含有し且つ薄片化黒鉛を含有しない第一表面層A2と、上記中間層A1の他面に積層一体化され且つ直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第二表面層A3とを有する。なお、中間層A1を構成している薄片化黒鉛及び防曇剤は単層の農業用フィルムの場合と同様であるので説明を省略する。
【0051】
中間層A1中における防曇剤の含有量は、少ないと、農業用フィルムの防曇性が低下することがあり、多いと、防曇剤のブリードアウト量が多くなりすぎて農業用フィルムの白化を生じることがあるので、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して1〜5重量部に限定され、1.3〜2.5重量部が好ましい。
【0052】
中間層A1中の中における薄片化黒鉛の含有量は、少ないと、防曇剤のブリードアウトが多くなりすぎて農業用フィルムの白化を生じ、多いと、農業用フィルムの透明性が低下するので、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して0.005〜2重量部に限定され、0.06〜2重量部が好ましい。
【0053】
又、中間層A1を構成しているエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトは、低いと、農業用フィルムの柔軟性が低下することがあり、高いと、農業用フィルムの透明性が低下することがあるので、0.5〜4g/10分が好ましい。
【0054】
中間層A1の一面に積層一体化されている第一表面層A2には防曇剤が含有されている。防曇剤としては、特に限定されず、例えば、例えば、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、グリセリンステアレート、ジグリセリンステアレート、ポリグリセリンステアレート、ソルビトールグリセリンステアリレートなどの多価アルコール飽和脂肪酸エステル;グリセリンオレアート、ジグリセリンオレアートなどの多価アルコール不飽和脂肪酸エステルなどが挙げられ、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレートが好ましく、ソルビタンパルミテートとソルビタンステアレートとを併用することが好ましい。なお、防曇剤は単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0055】
第一表面層A2に含有されている防曇剤の含有量は、少ないと、農業用フィルムの防曇性が低下することがあり、多いと、防曇剤のブリードアウト量が多くなりすぎて農業用フィルムに白化を生じることがあるので、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して0.1〜0.8重量部に限定され、0.2〜0.5重量部が好ましい。
【0056】
第一表面層A2には薄片化黒鉛が含有されておらず、第一表面層A2中に含有されている防曇剤は、農業用フィルムの表面にブリードアウトするのを薄片化黒鉛によって阻害されることはない。
【0057】
上述のように、中間層A1には薄片化黒鉛が含有されており、中間層A1は防曇剤が中間層A1中を進む速度が遅くなるように構成されている一方、第一表面層A2は防曇剤の進行が遅くなるような構成を採っていない。更に、中間層A1に含まれている防曇剤の量を第一表面層A2に含まれている防曇剤の量よりも多くなるように構成している。
【0058】
即ち、複層の農業用フィルムAは、中間層A1に多量の防曇剤を含有させているものの、上述の通り、中間層A1中における防曇剤のブリードアウトの速度が抑制されている。更に、中間層A1と第一表面層A2との間における防曇剤の濃度勾配によって中間層A1からこの中間層A1に接している第一表面層A2への移行を確実なものとしている。そして、中間層A1から第一表面層A2に移行した防曇剤は薄片化黒鉛によって阻害されることなく第一表面A2中を進行して農業用フィルムの表面に円滑にブリードアウトする。このように、複層の農業用フィルムAは、中間層A1に多量の防曇剤を含有させているものの、中間層A1から第一表面層A2への単位時間当たりの供給量が過多とならないように調整されており、中間層A1から第一表面層A2への供給が長期間に亘って安定的に行われるように構成されていると共に、第一表面層A2に移行した防曇剤は農業用フィルムAの表面に円滑にブリードアウトするため、農業用フィルムAの表面には常に適切な量の防曇剤がブリードアウトし且つその防曇剤のブリードアウトも長期間に亘って安定的に維持されており、よって、本発明の農業用フィルムは、防曇剤のブリードアウトによる白化が少なく、且つ、初期防曇性及び防曇持続性に優れている。
【0059】
そして、中間層A1を構成しているエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分の含有量は、少ないと、エチレン−酢酸ビニル共重合体の極性が低くなり、防曇剤を十分に含有させることができないことがあり、多いと、農業用フィルムからブリードアウトする防曇剤の量が少なくなり過ぎて農業用フィルムの防曇性が低下することがあるので、15〜25重量%が好ましく、18〜22重量%がより好ましい。
【0060】
一方、第一表面層A2を構成しているエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分の含有量は、少ないと、エチレン−酢酸ビニル共重合体の極性が低くなり、防曇剤を十分に含有させることができないことがあり、多いと、農業用フィルムからブリードアウトする防曇剤の量が少なくなり過ぎて農業用フィルムの防曇性が低下することがあるので、1〜10重量%が好ましく、4〜8重量%がより好ましい。
【0061】
このように、複層の農業用フィルムにおいて、中間層A1を構成しているエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分の含有量を多くすることによって、中間層A1を構成しているエチレン−酢酸ビニル共重合体の極性を高くして、極性を有する防曇剤を中間層A1に含有し易くし、中間層A1に防曇剤を多く含有させることができるように構成することが好ましい。
【0062】
一方、第一表面層A2を構成しているエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分の含有量を少なくすることによって、第一表面層A2を構成しているエチレン−酢酸ビニル共重合体の極性を低くし、第一表面層A2に進入した防曇剤が円滑に第一表面層A2からブリードアウトするように構成することが好ましい。
【0063】
なお、上述のようにエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分の含有量を調整すると、中間層A1の方が第一表面層A2よりも防曇剤との親和性が高くなるが、中間層A1と第一表面層A2との界面に達した防曇剤は、中間層A1と第一表面層A2との間におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体に対する親和性の相違よりも中間層A1と第一表面層A2との間における防曇剤の濃度勾配の影響を大きく受けるため、中間層A1中の防曇剤は、中間層A1と第一表面層A2との界面に達すると、中間層A1内にとどまることなく第一表面層A2内に取り込まれ、第一表面層A2内に取り込まれた防曇剤は、第一表面層A2を構成しているエチレン−酢酸ビニル共重合体との親和性が相対的に低くなると共に薄片化黒鉛も存在しないために農業用フィルムの表面に円滑にブリードアウトする。
【0064】
又、農業用フィルムAを構成している中間層A1の他面には直鎖状低密度ポリエチレンを含む第二表面層A3が積層一体化されている。この第二表面層A3を構成している直鎖状低密度ポリエチレンは極性が極めて低いために防曇剤との親和性に欠け、中間層A1中に含有されている防曇剤が中間層A1に接している第二表面層A3に移行するようなことは殆どなく、中間層A1に含有されている防曇剤を第一表面層A2側に円滑に移行させることができる。
【0065】
そして、第二表面層A3には農業用フィルムの透明性が低下する虞れがあるので薄片化黒鉛は含有されていないことが好ましい。又、第二表面層A3には農業用フィルムの防汚性の向上のために防曇剤が含有されていないことが好ましい。
【0066】
更に、本発明の複層の農業用フィルムの厚さは、薄いと、農業用フィルムの引裂強度及びインパクト強度が低下することがあり、厚いと、農業用フィルムの裁断、接合、展張作業が困難となり、取扱い性が低下することがあるので、50〜200μmが好ましく、70〜170μmがより好ましい。
【0067】
次に、複層の農業用フィルムの製造方法について説明する。複層の農業用フィルムAの製膜方法としては、特に限定されず、例えば、3機の押出機が接続具を介して一のサーキュラダイに接続されてなる製膜装置を用意し、この製膜装置の3機の押出機に、それぞれ中間層A1、第一表面層A2又は第二表面層A3用の樹脂組成物を供給し、各押出機内で溶融混練させた後、溶融状態の樹脂組成物をサーキュラダイに供給して、サーキュラダイから円筒状に共押出製膜すると共に、サーキュラダイの中心部から圧縮空気を供給して、共押出された樹脂組成物を空冷インフレーションフィルム成形により製膜して巻き取る方法が挙げられる。
【0068】
なお、上記では薄片化黒鉛を押出機に供給した場合を説明したが、薄片化黒鉛の代わりに或いは薄片化黒鉛と共に、膨張化黒鉛を押出機に供給し、押出機内において膨張化黒鉛に剥離力を加えて、膨張化黒鉛のグラフェンシート同士を剥離させて薄片化黒鉛を押出機内にて製造し、この薄片化黒鉛をポリエチレン系樹脂と共にサーキュラダイ又はTダイから押出して農業用フィルムを製造してもよい。
【発明の効果】
【0069】
本発明の農業用フィルムは、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部、薄片化黒鉛0.005〜2重量部及び防曇剤1〜5重量部を含有するので、農業用フィルムの表面に適切な量の防曇剤を使用初期から長期間に亘って安定的にブリードアウトさせることができ初期防曇性及び防曇持続性に優れている。
【0070】
又、薄片化黒鉛はアスペクト比の大きな鱗片状の形態をとっており、防曇剤が農業用フィルム中を進行する速度を減速させるために必要な薄片化黒鉛の量を少なくすることができ、本発明の農業用フィルムは優れた透明性を有しており、太陽光線の透過を十分に確保し作物の育成を担保することができる。
【0071】
更に、本発明の農業用フィルムは、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部、薄片化黒鉛0.005〜2重量部及び防曇剤1〜5重量部を含有する中間層と、この中間層の一面に積層一体化されており、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部及び防曇剤0.1〜0.8重量部を含有し且つ薄片化黒鉛を含有しない第一表面層と、上記中間層の他面に積層一体化され且つ直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第二表面層とを有するので、中間層に多量の防曇剤を含有させながら、適切な供給速度にて第一表面層に防曇剤を供給することができ、第一表面層を通じて防曇剤を農業用フィルムの表面に適切な量でもって使用初期から長期間に亘ってブリードアウトさせることができる。よって、本発明の農業用フィルムは、防曇剤のブリードアウトによる白化が少なく且つ優れた初期防曇性及び防曇持続性を有している。
【0072】
又、上記農業用フィルムは、中間層の他面に直鎖状低密度ポリエチレンを含む第二表面層A3が積層一体化されており、この第二表面層を構成している直鎖状低密度ポリエチレンは極性が極めて低いために防曇剤との親和性に欠け、中間層中に含有されている防曇剤が第二表面層に移行するようなことは殆どなく、中間層に含有されている防曇剤を第一表面層側に円滑に移行させ、第一表面層の表面から防曇剤を確実に適切な量でもってブリードアウトすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】電極を黒鉛に挿入する工程を説明するための模式的斜視図である。
【図2】電極が黒鉛に挿入された状態を示す模式的斜視図である。
【図3】電気化学的処理を行う工程を説明するための模式図である。
【図4】原料となる黒鉛からなるシートを圧延し、シート状の黒鉛を得る工程を示した模式図である。
【図5】本発明の農業用フィルムの一例を示した断面図である。
【図6】黒鉛シートに電気化学処理で電圧を印加する際の電圧印加パターンを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
次に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0075】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
黒鉛粉末を予備的にシート成型して予備成型シートを製造した。この予備成型シートを図4に示すようにロール12、13間に供給して圧延し密度が密度0.7g/cm3、厚み1mmの低密度黒鉛シートを用意した。
【0076】
上記のようにして得られた密度0.7g/cm3の黒鉛シートを一辺が3cmの平面正方形状に切断し、電極材料としての黒鉛シートを得た。この黒鉛シートに、図2に示したように、2本のスリットを、スリットの長さが1cm、幅が1cmとなるようにカッターナイフにより切削し、形成した。上記2本のスリットが形成された黒鉛シートに、図2に示したPtからなる電極2を挿入した。このようにして用意した黒鉛シートを作用極(陽極)として、Ptからなる対照極(陰極)及び、Ag/AgClからなる参照極とともに60重量%濃度の硝酸水溶液中に浸漬し、直流電圧を印加し電気化学処理を行った。電気化学処理に際しては、図6に示す電圧を2時間印加した。このようにして、陽極に作用極として用いた黒鉛を膨張化黒鉛とした。
【0077】
得られた膨張化黒鉛を一辺が1cmの平面正方形状に切断して切断片を製造し、切断片をカーボンるつぼに入れて電磁誘導加熱処理を行った。誘導加熱装置はSKメディカル社から商品名「MU1700D」にて市販されている装置を用い、アルゴンガス雰囲気下で最高到達温度550度となるように10Aの電流量で行った。電磁誘導加熱により膨張化黒鉛を薄片化して薄片化黒鉛を得た。
【0078】
押出機の先端部にサーキュラダイが接続されてなる製膜装置を用意し、この製膜装置の押出機に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(宇部丸善ポリエチレン社製 商品名「VF105S」、酢酸ビニル成分:5重量%、メルトフローレイト:1.0g/10分)100重量部、光安定剤(BASFジャパン社製 商品名「TINUVIN783」)0.4重量部、Mg−Al系赤外線吸収剤(協和化学工業社製 商品名「DHT−4A」)4重量部、並びに、表1に示した所定量のソルビタンパルミテート(理研ビタミン社製 商品名「P−300」)、ソルビタンステアレート(理研ビタミン社製 商品名「S−300W」)、グリセリンステアレート(理研ビタミン社製 商品名「S−100」)、ジグリセリンステアレート(理研ビタミン社製 商品名「S−72」)及び上記薄片化黒鉛を供給して押出機内で溶融混練した後、押出機から溶融状態の樹脂組成物をサーキュラダイに供給してサーキュラダイから円筒状体を押出し、この円筒状体の中心部から25℃の圧縮空気を送って一定の大きさまで膨張させると共に、円筒状体の外面に20℃の冷却空気を吹き付けて冷却した後、円筒状体を所定箇所から切断して展開することによって厚みが100μmの農業用フィルムを得た。
【0079】
(実施例5〜8、比較例4〜6)
3機の押出機が接続具を介して一のサーキュラダイに接続されてなる製膜装置を用意し、この製膜装置の第1押出機を中間層A1用の押出機として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(宇部丸善ポリエチレン社製 商品名「VF120S」、酢酸ビニル成分:20重量%、メルトフローレイト:0.8g/10分)100重量部、光安定剤(BASFジャパン社製 商品名「TINUVIN783」)0.27重量部、Mg−Al系赤外線吸収剤(協和化学工業社製 商品名「DHT−4A」)3重量部、並びに、表2に示した所定量のソルビタンパルミテート(理研ビタミン社製 商品名「P−300」)、ソルビタンステアレート(理研ビタミン社製 商品名「S−300W」)、グリセリンステアレート(理研ビタミン社製 商品名「S−100」)、ジグリセリンステアレート(理研ビタミン社製 商品名「S−72」)及び実施例1で製造した薄片化黒鉛を含む樹脂組成物を供給し、第2押出機を第一表面層A2用の押出機として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(宇部丸善ポリエチレン社製 商品名「VF105S」、酢酸ビニル成分:5重量%、メルトフローレイト:1.0g/10分)100重量部、光安定剤(BASFジャパン社製 商品名「TINUVIN783」)0.1重量部、Mg−Al系赤外線吸収剤(協和化学工業社製 商品名「DHT−4A」)1重量部、並びに、表1に示した所定量のソルビタンパルミテート(理研ビタミン社製 商品名「P−300」)、ソルビタンステアレート(理研ビタミン社製 商品名「S−300W」)、グリセリンステアレート(理研ビタミン社製 商品名「S−100」)及びジグリセリンステアレート(理研ビタミン社製 商品名「S−72」)を含む樹脂組成物を供給し、第3押出機を第二表面層A2用の押出機として、直鎖状低密度ポリエチレン(ダウ・ケミカル社製 商品名「エリート5100」、メルトフローレイト:0.85g/10分)100重量部及び光安定剤(BASFジャパン社製 商品名「TINUVIN783」)0.03重量部を供給して、それぞれの押出機内で溶融混練した後、第1〜3押出機から溶融状態の樹脂組成物をサーキュラダイに供給して、第一表面層A2、中間層A1、第二表面層A3がこの順に積層一体化された状態となるようにサーキュラダイから円筒状に共押出製膜し、サーキュラダイの中心部から25℃の圧縮空気を供給すると共に円筒状体の外面に20℃の冷却空気を吹き付けて冷却した後、共押出された樹脂組成物を空冷インフレーションフィルム成形により製膜し、この製膜したフィルムを巻き取ることにより、第二表面層A3、中間層A1及び第一表面層A2の厚さ比が、15/65/20で且つ総厚さが100μmの農業用フィルムを得た。
【0080】
得られた農業用フィルムの白化性、初期防曇性及び防曇持続性を下記の要領で測定し、その結果を表1、2に示した。
【0081】
(白化性)
製造直後の農業用フィルムを40℃に維持された恒温器内にて1カ月に亘って放置した後、農業用フィルムのヘーズ値をヘーズ測定器(日本電色工業社製 商品名「NDH2000」)を用いて測定し、下記基準に基づいて評価した。
◎・・・ヘーズ値が10%未満であった。
○・・・ヘーズ値が10%以上で且つ15%未満であった。
△・・・ヘーズ値が15%以上で且つ25%未満であった。
×・・・ヘーズ値が25%以上であった。
【0082】
(初期防曇性)
水槽中に20℃の水を所定量だけ供給した後、水槽の開口部に農業用フィルムをその第一表面層が水槽内を向いた状態となるように且つ水槽内の水に接触しないように張設することによって水槽の開口部を完全に閉止した。なお、水槽を放置している雰囲気温度は0℃であった。
【0083】
この状態で3時間に亘って放置した後、農業用フィルムを目視観察して下記基準に基づいて評価した。
◎・・・農業用フィルムの表面に水滴はなく水槽内の水を視認できた。
○・・・農業用フィルムの表面の一部に水滴が付着しているが、農業用フィルムの表面を
流れた水滴はなく、水槽内の水を視認できた。
△・・・農業用フィルムの表面に水滴が付着しており、水滴の一部が農業用フィルムの表
面を流れていた。
×・・・農業用フィルムの表面全面に水滴が付着し、水槽内の水を視認することができな
かった。
【0084】
(防曇持続性)
水槽中に20℃の水を所定量だけ供給した後、水槽の開口部に農業用フィルムをその第一表面層が水槽内を向いた状態となるように且つ水槽内の水に接触しないように張設することによって水槽の開口部を完全に閉止した。なお、水槽を放置している雰囲気温度は0℃であった。
【0085】
この状態で600時間に亘って放置した後、農業用フィルムを目視観察し、水槽内の水に対向している農業用フィルムの表面部分のうち、水滴が付着している面積の割合を算出して下記基準に基づいて評価した。
◎・・・水滴が付着している面積の割合は0%であった。
○・・・農業用フィルムの表面に水滴が付着していたが、水滴が付着している面積の割合
は30%未満であった。
△・・・農業用フィルムの表面に水滴が付着しており、水滴が付着している面積の割合は
30%以上で且つ60%未満であった。
×・・・農業用フィルムの表面に水滴が付着しており、水滴が付着している面積の割合は
60%以上であった。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【符号の説明】
【0088】
1 シート
1a スリット
2a 挿入片
2c 連結部
2 電極
6 電解質溶液
7 対極
8 参照極
11 予備成型シート
12 ロール
A 農業用フィルム
A1 中間層
A2 第一表面
A2 第一表面層
A2 第二表面層
A3 第二表面層
G グラフェンシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部、薄片化黒鉛0.005〜2重量部及び防曇剤1〜5重量部を含有することを特徴とする農業用フィルム。
【請求項2】
エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部、薄片化黒鉛0.005〜2重量部及び防曇剤1〜5重量部を含有する中間層と、この中間層の一面に積層一体化されており、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部及び防曇剤0.1〜0.8重量部を含有し且つ薄片化黒鉛を含有しない第一表面層と、上記中間層の他面に積層一体化され且つ直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第二表面層とを有することを特徴とする農業用フィルム。
【請求項3】
中間層を構成しているエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分量が15〜25重量%であると共に、第一表面層を構成しているエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分量が1〜10重量%であることを特徴とする請求項2に記載の農業用フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−187076(P2012−187076A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55338(P2011−55338)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】