説明

農業用マルチシートの処理装置

【課題】小型で効率良く異物を除去可能な農業用マルチシートの処理装置を提案すること。
【解決手段】農業用マルチシートの処理装置1は、農業用マルチシート12の先端を取り付けたシートガイド板38を前端から後端に移動させることにより、農業用マルチシート12をセットできる。この状態で上流側および下流側シート搬送ゴムローラ42、43および81、82を駆動すると、シート洗浄部4において洗浄水が吹き付けられながら表面がブラシローラ44、45および46、47によってブラッシングされて泥などの異物が掻き落とされる。この後、シート水切り・乾燥部6においてワイパー板61、62によって付着している洗浄液が拭き取られた後に温風が吹き付けられて農業用マルチシート12は乾燥させられる。この後は、水切り用ゴムローラ65、66を介して下流側シート搬送ゴムローラ81、82の間を通って排出され、シート回収部8の巻き取り機構88に回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜などの苗床などを作るために用いられた後のビニール製、ポリエチレン製などの使用済みの農業用マルチシートを再生するための農業用マルチシートの処理装置に関し、特に、農業用マルチシートを効率良く洗浄して、表面に付着している泥、異物などを除去した後に乾燥して、再生に適した状態にするために用いる農業用マルチシートの処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済みの農業用マルチシートの再生においては、一般に、回収された泥、ゴミなどが付着した状態の農業用マルチシートを細かく破砕する破砕工程、および、破砕物に混入している泥、ゴミなどの異物を分離除去する異物除去工程を経た後に、シート破砕片を溶融するなどの各種の処理を施してペレット状の再生プラスチックが得られる。ペレット状の再生プラスチックはそのまま用いられる場合もあるが、一般的には、バージン材と混合して用いられる。従来において使用されている農業用マルチシートを再生するための処理装置は、一般に、破砕機と、破砕物から異物を除去する洗浄機と、洗浄後のシート破砕片を乾燥する乾燥機と、乾燥後のシート破砕片をプレスして減容化するプレス機とを備えた構成となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の処理装置では、破砕後に泥、木片、野菜片、金属片などの異物を除去する必要があるので、これらを洗浄、除去するために大掛かりな洗浄機が必要とされ、破砕物の搬送経路も長くなってしまう。また、異なる材質の異物が混入した状態で破砕を行う必要があるので、破砕機も大型で汎用性の高い高価なものが必要となり、そのメンテナンスも大変である。
【0004】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、農業用マルチシートに混在あるいは付着している異物を、簡単な構成により効率良く除去することのできる農業用マルチシートの処理装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の農業用マルチシートの処理装置は、
筒状に巻き取られた状態で農業用マルチシートを装着するシート供給部と、
当該シート供給部から繰り出される農業用マルチシートを洗浄するシート洗浄部と、
洗浄後の農業用マルチシートから洗浄液を振り落として加熱乾燥するシート液切り・乾燥部と、
乾燥後の農業用マルチシートを回収するシート回収部と、
農業用マルチシートを前記シート供給部から前記シート洗浄および前記シート液切り・乾燥部を経由して前記シート回収部に向けて搬送するための上下一対の上流側シート搬送ゴムローラおよび上下一対の下流側シート搬送ゴムローラと、
前記シート供給部に装着された農業用マルチシートを幅方向に広げた状態で、前記上流側搬送ゴムローラの間を通って前記下流側シート搬送ゴムローラの間から引き出した状態を形成するためのシートガイド機構とを有していることを特徴としている。
【0006】
本発明の処理装置では、農業用マルチシートを破砕することなく、そのまま広げた状態で長手方向に搬送して、そこに混入あるいは付着している異物を除去するようにしている。広がった状態で農業用マルチシートが搬送されるので、その両面に水などの洗浄液を吹き付け、ブラシローラなどによって付着している異物を掻き落とすことにより、簡単かつ確実に、しかも効率良く、異物を除去することができる。
【0007】
ここで、前記シートガイド機構は、左右一対のガイドレールと、これらのガイドレールに架け渡されたシートガイド部材と、このシートガイド部材を前記ガイドレールに沿って搬送するガイド部材搬送機構とを備えており、前記装着部に装着された前記農業用マルチシートの巻き終わり端を幅方向に広げた状態で前記シートガイド部材に取り付け、当該シートガイド部材を前記ガイドレールに沿って搬送することにより、前記農業用マルチシートが前記上流側シート搬送ゴムローラおよび前記下流側シート搬送ゴムローラの間に架け渡された状態が形成されるようになっていることを特徴としている。シートガイド部材に農業用マルチシートの巻き終わり端を掛け、この状態でシートガイド部材を搬送すれば、農業用マルチシートが装置内にセットされた状態が形成される。よって、極めて簡単な操作によって農業用マルチシートをセットできる。
【0008】
この場合、前記上流側シート搬送ゴムローラおよび下流側シート搬送ゴムローラは、前記シートガイド部材が通過すると、それぞれ、相互に離れた退避位置から相互に当接した動作位置に移動するようにしておけばよい。
【0009】
次に、前記シート洗浄部は、少なくとも一組の上下一対のブラシローラと、前記シート洗浄部から前記シート液切り・乾燥部に向かう農業用マルチシートの部分を上方に持ち上げるためのシート持ち上げ用ガイド部材と、洗浄液を吹き出す洗浄液ノズル群とを有し、前記ブラシローラは、前記ガイドシート部材が通過すると、それぞれ、相互に離れた退避位置から、農業用マルチシートに上下から当接した動作位置に移動するようになっており、前記シート持ち上げ用ガイド部材は、前記シートガイド部材が通過すると、下側の退避位置から上側からの動作位置に上昇するようになっていることを特徴としている。
【0010】
シート洗浄部から後段のシート液切り・乾燥部に向かうシートを上方に持ち上げる状態で搬送すると、農業用マルチシートに付着している洗浄液がシート洗浄部の側に流れるので、シート液切り・乾燥部に洗浄液が流れ込むことを防止できる。
【0011】
次に、前記液切り・乾燥部は、上下一対の液切り用ワイパー部材と、乾燥用エアーを吹き出すエアーノズル群と、上下一対の液切り用ゴムローラとを有し、前記液切り用ワイパー部材および前記液切り用ゴムローラは、前記シートガイド部が通過すると、それぞれ、相互に離れた退避位置から農業用マルチシートに上下から当接した動作位置に移動するようになっていることを特徴としている。
【0012】
前記シート回収部は、前記下流側シート搬送ゴムローラから送り出された処理済みの農業用マルチシートを巻き取る巻き取りローラあるいは、当該処理済みの農業用マルチシートを折り畳んだ状態で圧縮するプレス機を備えた回収機構とを有していることを特徴としている。
【0013】
ここで、上下一対の第1ブラシローラは、それらが動作位置にある状態では、その幅方向の中央から両側に向けてそれらの押圧力が漸減するようになっており、上下一対の第2ブラシローラも同様とされていることを特徴としている。このようにすると、農業用マルチシートが幅方向に広げられながら搬送されるので、重なった状態で搬送されることを防止できる。よって、農業用マルチシートの両面から確実に異物を除去できる。
【0014】
また、前記下流側シート搬送ゴムローラは、その外周面に、幅方向に沿って所定の間隔で形成した円周方向に延びる溝を備えた溝付きゴムローラであることを特徴としている。溝を付けることによって、乾燥後の農業用マルチシートを搬送方向に向けて送り出すことができるので、当該農業用マルチシートが詰まってしまうなどの弊害を防止できる。
【0015】
次に、前記シート洗浄部および前記シート液切り・乾燥部の下側位置には洗浄液および異物を回収するための汚水回収部が配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の農業用マルチシートの処理装置では、シートガイド機構によって農業用マルチシートを幅方向に広げた状態で装置内にセットし、この状態で搬送しながら、農業用マルチシートの洗浄および乾燥が行われる。したがって、従来のように破砕後に洗浄および乾燥を行う場合に比べて、小型で簡単な構成により効率良く異物を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した農業用マルチシートの処理装置の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は本例の農業用マルチシートの処理装置を示す斜視図であり、図2はその概略構成図である。これらの図に示すように、本例の処理装置1は、全体として前後方向に直方体形状をした装置ハウジング2を備え、当該装置ハウジング2の前端にはシート供給部3が取り付けられており、その内部には、その前側からシート洗浄部4、シート水切り・乾燥部6、およびシート回収部8がこの順序で配置されている。シート洗浄部4およびシート水切り・乾燥部6の下側位置には汚水回収部9が配置されている。
【0019】
また、処理装置1には固水分離器10が接続されており、ここから、洗浄水がシート洗浄部4に供給され、汚水回収部9で回収された洗浄水が固水分離器10に回収されて浄化されて再使用されるようになっている。また、処理装置1にはブロワ11が接続されており、ここからシート乾燥用の高温エアーがシート水切り・乾燥部6を介して循環するようになっている。
【0020】
次に、図3はシート供給部3およびシート洗浄部4を示す構成図であり、図4はシート水切り・乾燥部6を示す構成図であり、図5はシート回収部8を示す構成図である。また、図6は動作状態における主要部分の位置を示す説明図である。これらの図も参照して処理装置1の構成を説明する。
【0021】
まず、シート供給部3は、図3に示すように、筒状に巻き取られた状態で回収された使用済みの農業用マルチシート12を、その中心軸13を中心として回転自在の状態で装置幅方向に水平に取り付ける装着部31と、この装着部31から繰り出される農業用マルチシート12を上方に位置するシート洗浄部4の供給口41に向けて上方に案内するために幅方向に水平に架け渡した4本のガイドローラ32〜35とを備えている。
【0022】
ここで、シート洗浄部4の供給口41の近傍には、装置ハウジング2の上下方向の中程の位置において幅方向に水平に架け渡された上下一対の上流側シート搬送ゴムローラ42、43が配置されている。図5に示すように、装置ハウジング2の後端近傍にも、その幅方向に水平に架け渡された上下一対の下流側シート搬送ゴムローラ81、82が配置されている。シート供給部3のガイドローラ32〜35に架け渡された状態で幅方向に広げられて引き出された農業用マルチシート12は、装置ハウジング2に組み込まれているシートガイド機構によって装置ハウジング2の内部を前端から後端に向けてガイドされて、上流側シート搬送ゴムローラ42、43と、下流側シート搬送ゴムローラ81、82との間に架け渡された状態にセットされる。
【0023】
本例のシートガイド機構は、装置ハウジング2の内部の幅方向の両側位置において、前端から後端にほぼ水平に延びる左右のガイドレール36、37と、これらの間をスライド自在の状態で架け渡されたシートガイド板38と、シートガイド板38をガイドレール36、37に沿って前後に移動させるためのガイド板移動機構とを備えている。ガイド板移動機構は、図5に示すように、ガイドレール36、37に沿って引き回されているタイミングベルト39aと、このタイミングベルト39aが架け渡されているベルト駆動プーリ39bと、ベルト駆動プーリ39bを回転駆動するためのモータ39cとを備えている。左右のタイミングベルト39aの間にシートガイド板38が取り付けられている。
【0024】
次に、図3に示すシート洗浄部4は、上記の上下一対の上流側シート搬送ゴムローラ42、43と、上下一対の第1ブラシローラ44、45と、上下一対の第2ブラシローラ46、47と、シート洗浄部4からシート水切り・乾燥部6に向かう農業用マルチシート12の部分を上方に持ち上げるためのシート持ち上げ用のガイドローラ48とを備えている。
【0025】
シート供給口41には、上下一対の洗浄水供給管49、50が幅方向に水平に配置されている。上側の供給管49には、洗浄水を上側の上流側シート搬送ゴムローラ42の外周面部分に向けて吹き付けるための複数のノズル49aが形成されている。下側の供給管50には、洗浄水を下側の上流側シート搬送ゴムローラ43による農業用マルチシートの搬送部分に吹き付けるための複数のノズル50aが形成されている。上流側シート搬送ゴムローラ42、43と第1ブラシローラ44、45の間においても、洗浄水供給管51が幅方向に水平に配置されており、ここには、上側から下方に向けて洗浄水を吹き出す複数のノズル51aが形成されている。この洗浄水供給管51より後側の下方の位置には、下側の第1ブラシローラ45の手前側に、幅方向に水平に延びる洗浄水供給管52が配置されており、ここには、下側の第1ブラシローラ45のブラッシング位置に向けて洗浄水を吹き付ける複数のノズル52aが形成されている。
【0026】
下側の第1、第2ブラシローラ45、47の間においても、幅方向に水平に延びる洗浄水供給管53が配置されており、ここには、下側の第1ブラシローラ45のブラッシング位置に向けて洗浄水を吹き出す複数のノズル53aが形成されている。また、第2ブラシローラ46、47の後側の上下の位置にも、幅方向に水平に延びる洗浄水供給管54、55が配置されており、これらには、上下の第2ブラシローラ46、47のブラッシング位置に向けて洗浄水を吹き付ける複数のノズル54a、55aが形成されている。
【0027】
シート洗浄部4の後端は、幅方向に延びる上下の垂直仕切り板56、57によってシート水切り・乾燥部6と仕切られている。これらの垂直仕切り板56、57の間は農業用マルチシートの通過口58となっている。上側の垂直仕切り板56におけるシート洗浄部4の側の面には幅方向に水平に延びる洗浄水供給管59が取り付けられており、ここには、シート洗浄部4内に向けてほぼ水平に洗浄水を吹き出すための複数のノズル59aが形成されている。
【0028】
ここで、下側の上流側シート搬送ゴムローラ43および下側の第1ブラシローラ45が駆動側のローラであり、これらの間に配置されている搬送モータ43aによって駆動される。これに対して、上側の上流側シート搬送ゴムローラ42および上側の第1ブラシローラ44は、リンク機構42aを介して流体圧シリンダなどの駆動源42bに連結されている。これらのローラ42、44は、図3に示す下側のローラ43、45から上方に離れている退避位置と、図6に示すローラ43、45に当接する動作位置との間を旋回軸42c、44cを中心として上下方向に旋回可能である。同様に、下側の第2ブラシローラ47が駆動側のローラであり、駆動モータ47aによって駆動されるようになっており、上側の第2ブラシローラ46は、リンク機構46aを介して直動用の駆動源46bに連結されており、図3に示す退避位置と図6に示す下側のローラ47に当接した動作位置との間を旋回軸46cを中心として、上下方向に旋回可能である。
【0029】
また、シート持ち上げ用のガイドローラ48は、下側の垂直仕切り板57のシート洗浄部4の側に配置されている昇降機構48aによって図3に示す退避位置と、図6に示す上方に移動した動作位置との間を昇降可能となっている。
【0030】
なお、本例においては、上側の第1ブラシローラ44の前側および上側の第2ブラシローラ46の後側にそれぞれ搬送ローラ44d、46dが配置されており、これらのローラは、上方位置に配置されている駆動モータ44eによって駆動されるようになっている。
【0031】
次に、図4を主に参照してシート水切り・乾燥部6の構成を説明する。シート水切り・乾燥部6は、その前側の部位に、幅方向に水平に延びる上下一対のゴム製のワイパー板61、62が配置されている。下側のワイパー板62は固定した位置に配置されており、上側ワイパー板61は、リンク機構63を介して直動用の駆動源64に連結されており、図4に示す退避位置と図6に示す下側のワイパー板62に所定の押し付け力で当接した動作位置との間を移動可能である。
【0032】
シート水切り・乾燥部6の後端の部位には、幅方向に水平に延びる上下一対の水切り用のゴムローラ65、66が配置されている。下側のゴムローラ66が固定側の駆動ローラであり、シート回収部8の側に配置されている駆動モータ67によって駆動される。上側のゴムローラ65は、リンク機構68を介して、シート回収部8の側に配置されている直動用の駆動源69に連結されており、図4に示す退避位置と図6に示す下側のゴムローラ65に当接可能な動作位置との間を旋回軸70を中心として上下方向の旋回可能である。
【0033】
また、シート水切り・乾燥部6の内部には、ブロワ11の側から乾燥用温風を供給するためのダクト71が引き回されており、ダクト71および、その分岐管72、73には、温風を吹き出すための多数のエアーノズル71a、72a、73aが形成されている。
【0034】
次に、図5を参照してシート回収部8の構成を説明する。シート回収部8の後端部分には、上下一対の下流側シート搬送ゴムローラ81、82が配置されている。下側のゴムローラ82が固定側であり、モータ83によって駆動される。上側のゴムローラ81はリンク機構84を介して直動用の駆動源85に連結されており、図5に示す退避位置と図6に示す下側のゴムローラ82に当接可能な動作位置との間を旋回軸86を中心として上下に旋回可能である。これらの下流側シート搬送ゴムローラ81、82の後側には、上下方向に円弧状に広がるシートガイド板87a、87bが取り付けられており、下側のシートガイド板87bの先端側に連続して下方に傾斜している平坦なシートガイド板87cが取り付けられている。このシートガイド板87cの先端下側には、シート巻き取り軸88aを備えた巻き取り機構88が配置されており、ここに、農業用マルチシート12が巻き取られるようになっている。また、下側のシートガイド板87bの下側には上方に向けて空気を吹き出すための複数のノズル89が幅方向に配列されており、排出される農業用マルチシート12を浮き上がらせながら搬送可能となっている。
【0035】
ここで、上下一対の第1ブラシローラ44、45は、当接状態(動作位置)において、その幅方向の中央から両側に向けてそれらの押圧力が漸減するようになっている。また、上下一対の第2ブラシローラ46、47も同様とされている。このようにすることにより、農業用マルチシート12を幅方向に広げながら搬送することができるようになっている。
【0036】
また、下流側シート搬送ゴムローラ81、82は、その外周面に、幅方向に沿って所定の間隔で形成した円周方向に延びる溝を備えた溝付きゴムローラとしてある。溝を付けることによって、乾燥後の農業用マルチシートの斜行を防止して搬送方向に向けて送り出すことができるので、当該農業用マルチシートが詰まってしまうなどの弊害を防止可能となっている。
【0037】
このように構成した処理装置1の動作を説明する。まず、筒状に巻き取られた使用済みの農業用マルチシート12をシート供給部3に装着する。そして、農業用マルチシート12の巻き終わり端(先端)をガイドローラ32〜35に架け渡しながら引き出して、シート供給口41に待機しているシートガイド板38に引掛けて固定する。しかる後に、洗浄水の供給を介して各ノズルから洗浄水が吹き出されている状態とし、モータ39cを駆動してシートガイド板38をガイドレール36、37に沿って移動させる。このとき、装置内の各部分は図3ないし5に示す退避位置に設定されている。シートガイド板38が通過した部分においては退避位置にある部材を動作位置に順次に移動する。シートガイド板38が下流側シート搬送ゴムローラ81、82の間を通り抜けた後は、当該シートガイド板38から農業用マルチシート12の先端を外して巻き取り機構88の側に取り付ける。あるいは、シートガイド板38をそのまま巻き取り機構88の巻き取り軸88aとして用いる。
【0038】
この後は、図6に示す状態となり、各部の駆動が開始して農業用マルチシート12の搬送が開始される。シート洗浄部4においては、洗浄水が吹き付けられながら農業用マルチシート12が第1ブラシローラ44、45の間および第2ブラシローラ46、47の間を通って搬送される。これらのブラシローラによって農業用マルチシート12に付着している泥などの異物が洗浄されて掻き落とされる。農業用マルチシート12には多数の穴が形成されているので、洗浄水、掻き落とされた泥などの異物は落下して、下側に配置されている汚水回収部9の回収パン(図示せず)に回収される。回収された汚水は固水分離器10に回収されて浄化され、再び洗浄水として用いられる。
【0039】
ここで、シート洗浄部4の出口(シート通過口58)には昇降式のガイドローラ48が配置されており、動作時には上方に持ち上げられた位置に設定されている。洗浄後の農業用マルチシート12は当該ガイドローラ48によって持ち上げられながら後段のシート水切り・乾燥部6に送り込まれる。このように搬送される農業用マルチシート12の全体を持ち上げることにより、そこに付着している水をシート洗浄部4の側に戻すことができ、洗浄水がシート水切り・乾燥部6の側に流れ込むことを防止できる。
【0040】
次に、シート洗浄部4からシート水切り・乾燥部6に搬送された農業用マルチシート12の部分は、上下一対のワイパー板61、62の間を通る間に、表面に付着していた洗浄水が取り除かれる。また、ここから水切り用ゴムローラ65、66に到る間に、乾燥用の温風が農業用マルチシート12の両側から吹き付けられて乾燥が行われる。このようにして乾燥した後の農業用マルチシート12はシート回収部8を通って下流側シート搬送ゴムローラ81、82から排出されて、巻き取り機構88に回収される。
【0041】
(その他の実施の形態)
上記の例では、洗浄液として水を用いているが、水以外の洗浄液を用いることも勿論可能である。また、搬送ローラの設置個数などは適宜設定されるべきものであり、上記の例に限定されるものではない。
【0042】
さらに、農業用マルチシート以外のプラスチックシートの洗浄乾燥を上記の処理装置1を用いて行うこともできる。プラスチックシートとしては一定幅で長尺状のものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を適用した農業用マルチシートの処理装置の外観斜視図である。
【図2】図1の処理装置の概略構成図である。
【図3】図1の処理装置のシート供給部およびシート洗浄部を示す構成図である。
【図4】図1の処理装置のシート水切り・乾燥部を示す構成図である。
【図5】図1の処理装置のシート回収部を示す構成図である。
【図6】図1の処理装置の動作状態における主要部分を示す構成図である。
【符号の説明】
【0044】
1 処理装置
2 装置ハウジング
3 シート供給部
4 シート洗浄部
6 シート水切り・乾燥部
8 シート回収部
9 汚水回収部
12 農業用マルチシート
36、37 ガイドレール
38 シートガイド板
39a タイミングベルト
39b ベルト駆動プーリ
39c モータ
42、43 上流側シート搬送ゴムローラ
44、45 第1ブラシローラ
46、47 第2ブラシローラ
48 昇降式のガイドローラ
50a、51a、52a、53a、54a、55a ノズル
61、62 ワイパー板
65、66 水切り用ゴムローラ
71a、72a、73a エアーノズル
81、82 下流側シート搬送ゴムローラ
88 巻き取り機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に巻き取られた状態で農業用マルチシートを装着するシート供給部と、
当該シート供給部から繰り出される農業用マルチシートを洗浄するシート洗浄部と、
洗浄後の農業用マルチシートから洗浄液を振り落として加熱乾燥するシート液切り・乾燥部と、
乾燥後の農業用マルチシートを回収するシート回収部と、
農業用マルチシートを前記シート供給部から前記シート洗浄および前記シート液切り・乾燥部を経由して前記シート回収部に向けて搬送するための上下一対の上流側シート搬送ゴムローラおよび上下一対の下流側シート搬送ゴムローラと、
前記シート供給部に装着された農業用マルチシートを幅方向に広げた状態で、前記上流側シート搬送ゴムローラの間を通って前記下流側シート搬送ゴムローラの間から引き出した状態を形成するためのシートガイド機構とを有していることを特徴とする農業用マルチシートの処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記シートガイド機構は、左右一対のガイドレールと、これらのガイドレールに架け渡されたシートガイド部材と、このシートガイド部材を前記ガイドレールに沿って搬送するガイド部材搬送機構とを備えており、
前記シート供給部に装着された前記農業用マルチシートの巻き終わり端を幅方向に広げた状態で前記シートガイド部材に取り付け、当該シートガイド部材を前記ガイドレールに沿って搬送することにより、前記農業用マルチシートが前記上流側シート搬送ゴムローラおよび前記下流側シート搬送ゴムローラの間に架け渡された状態が形成されるようになっていることを特徴とする農業用マルチシートの処理装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記上流側シート搬送ゴムローラおよび下流側シート搬送ゴムローラは、前記シートガイド部材が通過すると、それぞれ、相互に離れた退避位置から相互に当接した動作位置に移動するようになっていることを特徴とする農業用マルチシートの処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記シート洗浄部は、
少なくとも一組の上下一対のブラシローラと、
前記シート洗浄部から前記シート液切り・乾燥部に向かう農業用マルチシートの部分を上方に持ち上げるためのシート持ち上げ用ガイド部材と、
洗浄液を吹き出す洗浄液ノズル群とを有し、
前記ブラシローラは、前記シートガイド部材が通過すると、それぞれ、相互の離れた退避位置から、農業用マルチシートに上下から当接した動作位置に移動するようになっており、
前記シート持ち上げ用ガイド部材は、前記シートガイド部材が通過すると、下側の退避位置から上側の動作位置に上昇するようになっていることを特徴とする農業用マルチシートの処理装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記液切り・乾燥部は、
上下一対の液切り用ワイパー部材と、
乾燥用エアーを吹き出すエアーノズル群と、
上下一対の液切り用ゴムローラとを有し、
前記液切り用ワイパー部材および前記液切り用ゴムローラは、前記シートガイド部が通過すると、それぞれ、相互に離れた退避位置から農業用マルチシートに上下から当接した動作位置に移動するようになっていることを特徴とする農業用マルチシートの処理装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記シート回収部は、
前記下流側シート搬送ゴムローラから送り出された処理済みの農業用マルチシートを巻き取る巻き取りローラあるいは、当該処理済みの農業用マルチシートを折り畳んだ状態で圧縮するプレス機を備えた回収機構とを有していることを特徴とする農業用マルチシートの処理装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のうちのいずれかの項において、
前記ブラシローラは、それらが動作位置にある状態では、その幅方向の中央から両側に向けてそれらの押圧力が漸減するようになっていることを特徴とする農業用マルチシートの処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちのいずれかの項において、
前記下流側シート搬送ゴムローラは、その外周面に、幅方向に沿って所定の間隔で形成した円周方向に延びる溝を備えた溝付きゴムローラであることを特徴とする農業用マルチシートの処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちのいずれかの項において、
前記シート洗浄部および前記シート液切り・乾燥部の下側位置には洗浄液および異物を回収するための汚水回収部が配置されていることを特徴とする農業用マルチシートの処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−119737(P2009−119737A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296745(P2007−296745)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(505404530)株式会社ダイキアクシス (9)
【Fターム(参考)】