説明

農薬包装用水溶性フィルム

【課題】水溶性が向上して、破袋性に優れた農薬包装用水溶性フィルムを提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂(A)と、アセチレングリコール系界面活性剤(B)を必須成分とする樹脂組成物からなる農薬包装用水溶性フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除草剤等の農薬を封入し、水田等の水面に散布した際にフィルムが素早く溶解して封入した農薬を拡散することのできる農薬包装用水溶性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水田等に用いられる農薬には、粒状、粉状、液状等各種形状・状態を備えた薬剤が使用されている。中でも、農薬散布者および周囲の環境に対して優れた安全性を有すること、また水田内に均一に散布可能であるという点から、粒状の形状を有する農薬が有効であるとして多用されている。
【0003】
上記粒状の農薬の使用態様としては、例えば、これをそのままの状態で水田に散布する方法以外に、近年、農薬の運搬、水田に対する散布が容易であるという点から、水溶性フィルムからなる袋状物に粒状の農薬を封入して水田に散布し、水面にて袋状物を溶解させ封入した農薬を水田に拡散させる方法が採られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−226901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、上記粒状の農薬を封入する袋状物の水溶性が不充分であるために、例えば、水面と接触する袋状物の下面のみが溶解して、上面は空気を内包した状態で盛り上がり部が形成されドーム状となり、その結果、この部分が完全に溶解せず、ドーム状部分内に残存する農薬が塊状となって拡散し難いという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、水溶性に優れた農薬包装用水溶性フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかるに、本発明者らが、従来に比べてさらなる水溶性の向上を図るため、農薬を封入するための袋の形成材料となる水溶性フィルムの改良を目的に一連の研究を重ね、そして、水溶性フィルムの主原料であるポリビニルアルコール系樹脂自身ではなく、添加剤の配合による水溶性の向上に着目し、種々の化合物を検討した結果、アセチレングリコール系界面活性剤を配合することにより、水溶性が向上し、従来よりも水溶解時間が短縮され、これを用いて袋状に形成した際に、水面にて空気を含み形成されるドーム状部分が素早く水溶解しドーム状部分が消失することを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、ポリビニルアルコール系樹脂(A)と、アセチレングリコール系界面活性剤(B)を必須成分とする樹脂組成物からなる農薬包装用水溶性フィルムに関するものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明の農薬包装用水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂(A)とアセチレングリコール系界面活性剤(B)を必須成分とする樹脂組成物を用いて形成してなるものである。このため、上記水溶性フィルムは、フィルムとしての保形性は維持されつつ水溶性に優れることになり、このフィルムを用い袋状に形成して農薬を封入包装してなる袋状物を水田等に散布した場合、破袋性が向上して水面にて形成されるドーム部分も素早く溶解することとなる。したがって、封入された農薬が塊状にならず、水田に拡散し農薬の散布効果の向上が図られる。
【0009】
そして、上記アセチレングリコール系界面活性剤(B)が、ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部の割合であると、フィルム表面におけるアセチレングリコール系界面活性剤のブリードアウト現象が抑制され、かつ包装袋とした際の水面での空気を含む盛り上がり部(エアードーム形状)の消失効果に一層優れるようになる。
【0010】
また、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)の4重量%水溶液粘度が、20℃において10〜70mPa・sであり、かつポリビニルアルコール系樹脂(A)の平均ケン化度が70〜98モル%であると、農薬包装袋としての良好な強度および製膜性が得られ、また水溶性フィルム自身の水溶性が一層良好となる。
【0011】
さらに、農薬包装用水溶性フィルムの厚みが、10〜100μmであると、フィルムの機械的強度に優れるとともに、冷水での溶解性が向上し、しかも良好な製膜効率が得られる。
【0012】
このように、ポリビニルアルコール系樹脂(A)とアセチレングリコール系界面活性剤(B)を必須成分とする樹脂組成物を用いて形成された水溶性フィルムは、フィルムとしての保形性は維持しつつ、水に対する溶解性に非常に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の農薬包装用水溶性フィルムは、各種農薬製剤を封入し包装するための袋状物を形成するための水溶性フィルムである。
【0014】
上記封入包装対象となる各種農薬製剤としては、特に限定するものではなく、例えば、水田等に投入し、それ自体の崩壊により水中に拡散可能となる、除草剤、殺菌剤、殺虫剤、植物成長調整剤等の農薬活性成分を含有する製剤があげられる。
【0015】
上記除草剤としては、2, 4, 6−トリクロルフェニル−4' −ニトロフェニルエ−テル(CNP)、2−メチル−4−クロロフェノキシチオ酢酸−S−エチル(フェノチオ−ル)、α−(2−ナフトキシ)プロピオンアニリド(ナプロアニリド)、5−(2, 4−ジクロロフェノキシ)−2−ニトロ安息香酸メチル(ビフェノックス)、S−(4−クロルベンジル)N, Nージエチルチオカ−バメ−ト(ベンチオカーブ)、S−ベンジル=1, 2−ジメチルプロピル(エチル)チオカルバマート(エスプロカルブ)、S−エチルヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−カーボチオエート(モリネート)、S−1−メチル−1−フェニルエチル=ピペリジン−1−カルボチオア−ト(ジメピペレート)、o−3−tert−ブチルフェニル=6−メトキシ−2−ピリジル(メチル)チオカルバマ−ト(ピリブチカルブ)、2−クロロ−2',6' −ジエチル−N−(ブトキシメチル)アセトアニリド(ブタクロール)、2−クロロ−2',6' −ジエチル−N−(2−プロポキシエチル)アセトアニリド(プレチラクロール)、(RS)−2−ブロモ−N−(α, α−ジメチルベンジル)−3, 3−ジメチルブチルアミド(ブロモブチド)、2−ベンゾチアゾ−ル−2−イルオキシ−N−メチルアセトアニリド(メフェナセット)、1−(α, α−ジメチルベンジル)−3−(パラトリル)尿素(ダイムロン)、メチル=α−(4, 6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−o−トルア−ト(ベンスルフロンメチル)、1−(2−クロロイミダゾ[1, 2−a]ピリジン−3−イルスルホニル)−3−(4, 6−ジメトキシピリミジン−2−イル)尿素(イマゾスルフロン)、エチル=5−(4, 6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−1−メチルピラゾ−ル−4−カルボキシラ−ト(ピラゾスルフロンエチル)、2−メチルチオ−4, 6−ビス(エチルアミノ)−s−トリアジン(シメトリン)、2−メチルチオ−4, 6−ビス(イソプロピルアミノ)−s−トリアジン(プロメトリン)、2−メチルチオ−4−エチルアミノ−6−(1, 2−ジメチルプロピルアミノ)−s−トリアジン(ジメタメトリン)、2, 4−ジクロロフェニル−3' −メトキシ−4' −ニトロフェニルエーテル(クロメトキシニル)、5−タ−シャリ−ブチル−3−(2, 4−ジクロロ−5−イソプロポキシフェニル)−1, 3, 4−オキサジアゾリン−2−オン(オキサジアゾン)、4−(2, 4−ジクロロベンゾイル)−1, 3−ジメチル−5−ピラゾリル=p−トルエンスルホネ−ト(ピラゾレート)、2−[4−(2, 4−ジクロロベンゾイル)−1, 3−ジメチルピラゾ−ル−5−イルオキシ]アセトフェノン(ピラゾキシフェン)、(RS)−2−(2, 4−ジクロロ−m−トリルオキシ)プロピオンアニリド(クロメプロップ)、2−[4−[2, 4−ジクロロ−m−トルオイル]−1, 3−ジメチルピラゾ−ル−5−イルオキシ]−4' −メチルアセトフェノン(ベンゾフェナップ)、S, S' −ジメチル=2−ジフルオロメチル−4−イソブチル−6−トリフルオロメチルピリジン−3, 5−ジカルボチオア−ト(ジチオピル)、2−クロロ−N−(3−メトキシ−2−テニル)−2',6' −ジメチルアセトアニリド(テニルクロール)、n−ブチル−(R)−2−[4−(2−フルオロ−4−シアノフェノキシ)フェノキシ]プロピオネ−ト(シハロホップブチル)、3−[1−(3, 5−ジクロルフェニル)−1−メチルエチル]−2, 3−ジヒドロ−6−メチル−5−フェニル−4H−1, 3−オキサジン−4−オン(オキサジクロメホン)、3−(4−クロロ−5−シクロペンチルオキシ−2−フルオロフェニル)−5−イソプロピリデン−1, 3−オキサゾリジン−2, 4−ジオン(ペントキサゾン)、1−(ジエチルカルバモイル)−3−(2, 4, 6−トリメチルフェニルスルフォニル)−1, 2, 4−トリアゾ−ル(カフェンストロール)、N−{[(4, 6−ジメトキシピリミジン−2−イル)アミノカルボニル]}−1−メチル−4−(2−メチル−2H−テトラゾ−ル−5−イル)−1H−ピラゾール−5−スルホンアミド(アジムスルフロン)、メチル=2−[(4, 6−ジメトキシピリミジン−2−イル)オキシ]−6−[(E)−1−(メトキシイミノ)エチル]ベンゾエイト(ピリミノバックメチル)、2, 3−ジハイドロ−3, 3−ジメチルベンゾフラン−5−イル=エタンスルホネート(ベンフレセート)、(RS)−2’−[(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)(ヒドロキシ)メチル]−1,1−ジフルオロ−6’−(メトキシメチル)メタンスルホンアニリド(ピリミスルファン)、3−(2−クロロ−4−メシルベンゾイル)−2−フェニルチオビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン−4−オン(ベンゾビシクロン)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0016】
上記殺菌剤としては、O, O−ジイソプロピル−S−ベンジルチオフォスフェ−ト(IBP)、O−エチル−S, S' −ジフェニルジチオフォスフェ−ト(EDDP)、3' −イソプロポキシ−2−メチルベンズアニリド(メプロニル)、α, α, α−トリフルオロ−3' −イソプロポキシ−o−トルアニリド(フルトラニル)、3, 4, 5, 6−テトラクロロ−N−(2, 3−ジクロロフェニル)フタルアミド酸(テクロフタラム)、1−(4−クロロベンジル)−1−シクロペンチル−3−フェニル尿素(ペンシクロン)、6−(3, 5−ジクロロ−4−メチルフェニル)−3(2H)−ピリダジノン(ジクロメジン)、メチル=N−(2−メトキシアセチル)−N−(2, 6−キシリル)−DL−アラニナ−ト(メタラキシル)、(E)−4−クロロ−α, α, α−トリフルオロ−N−(1−イミダゾ−ル−1−イル−2−プロポキシエチリデン)−o−トルイジン(トリフルミゾール)、カスガマイシン、バリダマイシン、3−アリルオキシ−1, 2−ベンゾイソチアゾ−ル−1, 1−ジオキシド(プロベナゾール)、ジイソプロピル−1, 3−ジチオラン−2−イリデン−マロネ−ト(イソプロチオラン)、5−メチル−1, 2, 4−トリアゾロ[3, 4−b]ベンゾチアゾ−ル(トリシクラゾール)、1, 2, 5, 6−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3, 2, 1−ij]キノリン−4−オン(ピロキロン)、5−エチル−5, 8−ジヒドロ−8−オキソ[1, 3]ジオキソロ[4, 5−g]キノリン−7−カルボン酸(オキソリニック酸)、(Z)−2' −メチルアセトフェノン=4, 6−ジメチルピリミジン−2−イルヒドラゾン(フェリムゾン)、3−(3, 5−ジクロロフェニル)−N−イソプロピル−2, 4−ジオキソイミダゾリジン−1−カルボキサミド(イプロジオン)、(E)−2−メトキシイミノ−N−メチル−2−(2−フェノキシフェニル)アセタミド(メトミノストロビン)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0017】
上記殺虫剤としては、O, O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)チオホスフェ−ト(MEP)、O, O−ジメチル−O−[3−メチル−4−(メチルチオ)フェニル]チオホスフェ−ト(MPP)、ジメチルジチオホスホリルフェニル酢酸エチル(PAP)、(2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6−イル)−ジエチルチオホスフェート(ダイアジノン)、1−ナフチル−N−メチルカ−バメ−ト(NAC)、O, O−ジエチル−O−(3−オキソ−2−フェニル−2H−ピリダジン−6−イル)ホスホロチオエ−ト(ピリダフェンチオン)、O, O−ジメチル−O−3, 5, 6−トリクロロ−2−ピリジルホスホロチオエ−ト(クロルピリホスメチル)、O, O−ジメチル−S−ジカルベトキシエチルジチオホスフェ−ト(マラソン)、O, O−ジメチル−S−(N−メチルカルバモイルメチル)ジチオホスフェ−ト(ジメトエート)、O, O−ジプロピル−O−4−メチルチオフェニルホスフェ−ト(プロパホス)、O, S−ジメチル−N−アセチルホスホロアミドチオエ−ト(アセフェート)、O−エチル−O−(4−ニトロフェニル)チオノベンゼンホスホネ−ト(EPN)、2−セカンダリ−ブチルフェニル−N−メチルカ−バメ−ト(BPMC)、2, 3−ジヒドロ−2, 2−ジメチル−7−ベンゾ[b]フラニル=N−ジブチルアミノチオ−N−メチルカルバマ−ト(カルボスルファン)、エチル=N−[2, 3−ジヒドロ−2, 2−ジメチルベンゾフラン−7−イルオキシカルボニル(メチル)アミノチオ]−N−イソプロピル−β−アラニナ−ト(ベンフラカルブ)、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル=(RS)−2, 2−ジクロロ−1−(4−エトキシフェニル)シクロプロパンカルボキシラ−ト(シクロプロトリン)、2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル=3−フェノキシベンジル=エ−テル(エトフェンプロックス)、1, 3−ビス(カルバモイルチオ)−2−(N, N−ジメチルアミノ)プロパン塩酸塩(カルタップ)、5−ジメチルアミノ−1, 2, 3−トリチアンシュウ酸塩(チオシクラム)、S, S' −2−ジメチルアミノトリメチレン=ジ(ベンゼンチオスルホナ−ト)(ベンスルタップ)、2−タ−シャリ−ブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニル−1, 3, 5, 6−テトラヒドロ−2H−1, 3, 5−チアジアジン−4−オン(ブプロフェジン)、スピノシンAとスピノシンBの混合物(スピノサド)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0018】
上記植物成調節剤としては、4' −クロロ−2' −(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリド(イナベンフィド)、(2RS, 3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4, 4−ジメチル−2−(1H−1, 2, 4−トリアゾ−ル−1−イル)ペンタン−3−オ−ル(パクロブトラゾール)、(E)−(S)−1−(4−クロロフェニル)−4, 4−ジメチル−2−(1H−1, 2, 4−トリアゾ−ル−1−イル)ペンタ−1−エン−3−オール(ウニコナゾールP)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0019】
そして、前記農薬製剤としては、上記農薬活性成分とともに界面活性剤を含有することにより、水面で農薬製剤を崩壊させ、水中に拡散させることが可能となる。
【0020】
上記界面活性剤としては、農薬製剤に一般的に用いられるものが使用され、具体的には、ポリエチレングリコール高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、ソルビタンモノアルキレート、アセチレンアルコールおよびアセチレンジオール並びにそれらのアルキレンオキシド付加物等のノニオン性界面活性剤、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩およびその縮合物、アルキル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、アルキルアリール燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリカルボン酸型高分子活性剤等のアニオン性界面活性剤等、さらにはシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤をあげることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なお、液体の界面活性剤は、ホワイトカーボン、珪藻土、尿素等の固体単体に吸着させて用いてもよい。
【0021】
さらに、前記農薬製剤は、水面に浮遊した後、崩壊し拡散するものであることから、農薬製剤を水面に浮遊させるための、浮遊性を付与する各種方法が採用される。
【0022】
上記水面浮遊性を付与させる方法の一例としては、真珠岩や黒曜石よりなるパーライト、シラスよりなる発泡シラス、アルミノシリケート系を焼成してなるフィライト、珪酸ソーダあるいは硼砂を発泡させたマイクロバルーン、軽石、粒状珪藻土、粒状活性炭、木粉、コルク粉、ケナフ片、フェノール樹脂よりなるフェノールマイクロバルーン、エポキシ樹脂よりなるエコスフェアー、ポリウレタンよりなるポリウレタンフォーム、ポリアクリロニトリルよりなるマイクロスフェアー、石炭火力発電時の灰で産出されるフライアッシュ、フライアッシュバルーン等の独立または複数の気室を有する物質を農薬製剤に含有させる方法をあげることができる。
また、他の方法としては、ステアリン酸およびその塩および疎水性ホワイトカーボン等の撥水性物質を含有させる方法等があげられる。なかでも、上記独立または複数の気室を有する物質を含有させる方法がより好ましい。
【0023】
上記農薬製剤の形状・状態としては、袋状物に封入可能であれば特に限定するものではないが、なかでも粒状のものが好適である。上記粒状の農薬製剤の形状としては、球状、円柱状等があげられ、具体的には、その平均粒径が0.8mm以上であることが好ましく、より好ましくは1.2〜10mm、特に好ましくは3〜8mmである。そして、上記平均粒径としては、例えば、短径の平均値をいい、その測定には、母集団から任意の数量を抽出し、ノギスを用いて粒状物の短径を測定し算出した値である。
【0024】
つぎに、前記水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール(PVOH)系樹脂(A)を主原料とし、これにアセチレングリコール系界面活性剤(B)を含有してなる樹脂組成物をフィルム状に形成することにより得られる。
なお、PVOH系とは、PVOH自体、または、例えば、各種変性種によって変性されたものを意味する。また、上記主原料とは、水溶性フィルムを形成する材料(樹脂組成物)において、水溶性フィルムの物性等を特徴づけるものであり、具体的には、水溶性フィルム形成材料全体の60重量%以上を占めるものをいう。
【0025】
上記PVOH系樹脂(A)としては、特に限定されることなく、公知の方法で製造することができる。すなわち、ビニルエステル系化合物を重合して得られるビニルエステル系重合体をケン化することにより製造することができる。
【0026】
上記ビニルエステル系化合物としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が単独でまたは2種以上併せて用いられるが、実用的には酢酸ビニルが好適である。
【0027】
また、PVOH系樹脂(A)は、上記ビニルエステル系化合物と共重合可能な単量体を共重合させたものであってもよく、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、好ましくは10モル%以下、より好ましくは7モル%以下の範囲において、他の単量体を共重合させることができる。
【0028】
上記共重合させる他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノまたはジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン〔1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル〕エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン、ジアクリルアセトンアミド、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等があげられる。これら他の単量体は、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
なお、本発明において、(メタ)アリルとはアリルまたはメタリル、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレート、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルをそれぞれ意味する。
【0029】
上記重合(または共重合)を行うに際しては、特に制限はなく公知の重合方法が任意に用いられるが、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールを溶媒とする溶液重合法が実施される。なお、上記溶液重合法以外に、乳化重合、懸濁重合も可能である。
【0030】
また、上記重合反応は、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の公知のラジカル重合触媒を用いて行われる。その重合反応温度は、好ましくは35℃〜100℃の範囲、より好適には40〜80℃、特に好適には50〜80℃の範囲から選択される。
【0031】
つぎに、得られたビニルエステル系重合体のケン化は、上記ビニルエステル系重合体をアルコールに溶解し、アルカリ触媒の存在下にて行なわれる。上記アルコールとしてはメタノール、エタノール、ブタノール等があげられる。また、上記アルコール中のビニルエステル系共重合体の濃度は20〜50重量%の範囲とすることが好ましい。
【0032】
上記ケン化におけるアルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラート等のアルカリ触媒を用いることができる。上記アルカリ触媒の使用量は、ビニルエステル系重合体に対して1〜100ミリモル当量に設定することが好ましい。なお、場合によっては、酸触媒を用いてケン化することも可能である。
【0033】
このようにして得られるPVOH系樹脂(A)としては、必要に応じてケン化度の異なる2種以上のPVOH系樹脂を混合して用いてもよい。
【0034】
そして、本発明においては、PVOH系樹脂(A)の平均ケン化度が、70〜98モル%であることが好ましく、より好ましくは75〜96モル%である。すなわち、PVOH系樹脂(A)の平均ケン化度が上記範囲から外れると、水溶性フィルムの水に対する溶解性が遅延し、内包する農薬の拡散が妨げられ、結果、薬害等の原因となる傾向がみられるからである。
なお、上記平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定される。
【0035】
また、PVOH系樹脂(A)の4重量%水溶液の20℃における平均粘度は、10〜70mPa・sであることが好ましく、15〜60mPa・sであることがより好ましい。すなわち、4重量%水溶液の平均粘度が低すぎる場合は、農薬包装袋の強度が不足して破袋の原因となる傾向があり、またフィルム製造時に破断が発生して製膜困難となる傾向がみられるからである。平均粘度が高すぎると、フィルムの溶解性が遅延し、内包する農薬の拡散を妨げて薬害等の原因となる他に、粘度が高いため製膜が困難となる傾向がみられる。
なお、上記平均粘度は、JIS K 6726に準じて測定される。
【0036】
そして、上記アセチレングリコール系界面活性剤(B)としては、例えば、下記の一般式(1)で表されるアセチレングリコール系化合物、すなわち、アセチレングリコールおよびアセチレングリコール誘導体の少なくとも一方があげられる。
【0037】
【化1】

【0038】
上記一般式(1)では、上述のとおり、R2 およびR3 はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基であり、また、R1 およびR4 はそれぞれ炭素数1〜20のアルキル基またはアリル基である。そして、R2 とR3 、R1 とR4 は、それぞれ互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
そして、上記一般式(1)で表されるアセチレングリコール系化合物中の、エチレンオキサイド単位(繰り返し単位m+n)の付加モル数は、0≦m+n≦30(モル)であることが好ましい。すなわち、エチレンオキサイド単位の付加モルの総数が多すぎると、アセチレングリコール系化合物自身の水に対する溶解性が向上して、フィルムの溶解性が低下する傾向がみられるからである。
【0040】
上記一般式(1)で表されるアセチレングリコール系化合物において、エチレンオキサイド単位の付加モル数が0となるアセチレングリコールとしては、具体的には、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、5,8−ジメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、4,7−ジメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,3,6,7−テトラメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール等があげられる。
【0041】
また、上記一般式(1)で表されるアセチレングリコール系化合物において、アセチレングリコール誘導体、すなわちアセチレングリコール系化合物のエトキシル化体としては、例えば2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールのエトキシル化体(エチレンオキサイド付加モル総数:6)、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエトキシル化体(エチレンオキサイド付加モル総数:10)、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエトキシル化体(エテレンオキサイド付加モル総数:4)、3,6−ジメチル−4−オクチル−3,6−ジオールのエトキシル化体(エチレンオキサイド付加モル総数:4)等のアセチレングリコールのエチレンオキサイド誘導体をあげることができる。特に好ましくは、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエトキシル化体(エチレンオキサイド付加モル総数:1.3、上記一般式(1)においてR1 およびR4 がiso−ブチル基、R2 およびR3 がメチル基、m+n=1.3)、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエトキシル化体(エチレンオキサイド付加モル総数:3.5、一般式(1)においてR1 およびR4 がiso−ブチル基、R2 およびR3 がメチル基、m+n=3.5)があげられる。これらアセチレングリコール系化合物は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0042】
上記アセチレングリコール系界面活性剤(B)の含有量は、PVOH系樹脂(A)100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8重量部、特に好ましくは1〜6重量部である。すなわち、アセチレングリコール系界面活性剤(B)の含有量が少な過ぎると、エアドームの消失による水溶性の向上効果が得られ難くなる傾向にある。また、アセチレングリコール化合物の含有量が多過ぎると、このアセチレングリコール系界面活性剤(B)の分散性が悪くなり、フィルム表面にブリードアウトしてブロッキングを生じる傾向がみられるからである。
【0043】
さらに、本発明の農薬包装用水溶性フィルムの形成材料である、PVOH系樹脂(A)を主原料とし、これにアセチレングリコール系界面活性剤(B)を含有してなる樹脂組成物には、上記配合成分以外に、必要に応じて、可塑剤が配合される。
【0044】
上記可塑剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピリングリコール等のアルキレングリコール類やトリメチロールプロパンなどがあげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
【0045】
そして、上記可塑剤の含有量については、特に限定されないが、PVOH系樹脂(A)100重量部に対して3〜45重量部であることが好ましく、更には5〜40重量部、特には7〜38重量部であることが好ましい。すなわち、上記可塑剤の含有量が少なすぎると、可塑効果が低く、フィルム破断の原因になる傾向がみられ、多すぎると、製袋加工時の寸法安定性が悪く、一定サイズの製袋の作製が困難となる傾向がみられるからである。
【0046】
さらに、本発明の農薬包装用水溶性フィルムの形成材料においては、水溶性フィルムの製膜装置のドラムやベルト等の金属表面と製膜したフィルムとの剥離性の向上を目的として、界面活性剤(上記アセチレングリコール界面活性剤(B)を除く。)を含有することができる。上記界面活性剤としては、特に限定するものではなく、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも、剥離性の点でポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートが好適に用いられる。
【0047】
上記界面活性剤の含有量については、特に限定されないが、PVOH系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部であることが好ましく、更には0.03〜4.5重量部、特には0.05〜4重量部であることが好ましい。すなわち、上記界面活性剤の含有量が少なすぎると、製膜装置のドラムやベルト等の金属表面と製膜したフィルムとの剥離性が低下して製造困難となる傾向がみられ、多すぎると、フィルム表面にブリードして巻物にした際にフィルムがブロッキングする傾向がみられるからである。
【0048】
また、本発明の農薬包装用水溶性フィルムの形成材料においては、この水溶性フィルムの作用・効果を妨げない範囲内で、抗酸化剤(フェノール系、アミン系等)、安定剤(リン酸エステル類等)、着色料、香料、増量剤、消包剤、防錆剤、紫外線吸収剤、粉体(無機物または有機物)、さらには他の水溶性高分子(ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キトサン、キチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)等を添加しても差し支えない。
【0049】
本発明の農薬包装用水溶性フィルムは、上記PVOH系樹脂(A)を主原料とし、これにアセチレングリコール系界面活性剤(B)を含有してなる樹脂組成物を製膜(フィルム化)することにより得られる。上記製膜に際しては、特に限定されることなく流延法等の公知の方法を採用することができる。
【0050】
上記流延法について、具体的に説明する。
すなわち、上記樹脂組成物、好ましくは可塑剤、界面活性剤を含有した樹脂組成物を水に分散させ、固形分濃度が、通常、10〜50重量%(より好ましくは15〜35重量%)の樹脂組成物の水分散液を調製し、金属ベルトに流延した後に、通常、80〜140℃程度の熱風で乾燥させるか、通常、50〜100℃程度の金属ドラムの表面に流延乾燥させることにより本発明のPVOH系フィルムを得ることができる。詳しくは、製膜ベルトまたは製膜第一ドラムからフィルムを剥離した後巻き取るまでに、表面温度50〜140℃のエンボス処理ロールを通すことが好ましい。なお、樹脂組成物の水分散液を調製するに際しては、PVOH系樹脂(A)、アセチレングリコール系界面活性剤(B)、可塑剤、界面活性剤等の各成分を一括混合してもよいし、任意の順に混合してものよいし、また、任意の成分を予め水と混合しておき、残りの成分を混合するなど適宜選択可能である。
【0051】
ここで、上記製膜ベルトとは、一対のロール間に架け渡されて走行する無端状のベルトを有し、Tダイ等から流れ出た原液(樹脂組成物の水溶液)をベルト上に流延させるとともに乾燥させるものである。上記無端状のベルトとしては、例えば、ステンレススチールからなり、その外周表面は鏡面仕上げが施されたものが好ましい。
また、上記製膜第一ドラムとは、Tダイ等から流れ出た原液(樹脂組成物の水溶液)を1個以上の回転するドラム型ロール上に流延し乾燥させる製膜機における最上流側に位置するドラム型ロールである。
また、上記製膜ベルトあるいは製膜第一ドラムからフィルムを剥離した後巻き取るまでとは、Tダイ等から吐出された原液(樹脂組成物の水溶液)が製膜ベルト上あるいは製膜第一ドラム上において乾燥されフィルム状になり、製膜ベルトあるいは製膜第一ドラムから剥離され、熱処理機を経て、必要に応じて調湿処理を経て、製膜されたフィルムを巻き取り機により巻き取られるまでをいう。
【0052】
上記熱処理機による熱処理条件としては、50〜140℃で行うことが好ましく、より好ましくは60〜130℃である。すなわち、熱処理の温度が低すぎると、製膜ベルトあるいは製膜第一ドラムに接する面のカールが強く、製袋適正等に不具合を生じる傾向がみられ、熱処理の温度が高すぎると、フィルムの結晶性が上がりすぎて実使用時の水溶性が低下してしまう傾向がみられるからである。上記熱処理は、通常、フィルム乾燥のための乾燥ロール処理に引き続き、別体のエンボスロールにて行われる。
【0053】
そして、本発明の農薬包装用水溶性フィルムの作製では、前述のように上記流延法に基づき説明したが、本発明の農薬包装用水溶性フィルムにおいてはこの製法に限定されるものではない。例えば、本発明の農薬包装用水溶性フィルムは、上記製法以外に、アプリケーターを用いて、樹脂組成物の水分散液をポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンフィルム等のプラスチック基材あるいは金属基材上にキャストして、乾燥させることによりPVOH系フィルムである水溶性フィルムを得ることもできる。
【0054】
このようにして得られる本発明の水溶性フィルムの厚みは、包装する農薬の種類、特性、目的等により適宜設定されるが、例えば、10〜100μmに設定することが好ましく、特に好ましくは15〜90μmである。すなわち、水溶性フィルムの厚みが薄すぎると水溶性フィルムの機械的強度が低下する傾向があり、逆に厚すぎると冷水での溶解速度が大幅に遅くなる傾向があり、また製膜時の効率も低下する傾向がみられるからである。
【0055】
また、得られる水溶性フィルムの表面は平滑であってもよいが、必要に応じて上記フィルムの片面あるいは両面にエンボス模様や梨地模様等の各種凹凸模様を施してもよい。
【0056】
さらに、本発明の水溶性フィルムには、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の水溶性高分子(ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キトサン、キチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、防錆剤、着色剤等を含有させてもよい。
【0057】
そして、上記のようにして得られる水溶性フィルムは、その水分率に大きく変化が生じないように、例えば、防湿包装を施し、10〜25℃の温度条件下で宙づりにて保存することが好ましい。
【0058】
なお、本発明の水溶性フィルムは、フィルム材料として、前記PVOH系樹脂(A)を主原料とし、これにアセチレングリコール系界面活性剤(B)を含有してなる樹脂組成物を製膜(フィルム化)することにより得られるものであるが、上記水溶性フィルム中に含有されてなるアセチレングリコール系界面活性剤(B)は、つぎのような方法にて確認することができる。例えば、液体クロマトグラフ(LC)、ガスクロマトグラフ(GC)等を用い、フィルムの成分分析を行なうことにより確認することができる。このときの分析条件としては、例えば、本発明の農薬包装用水溶性フィルムを70%メタノール水溶液で抽出した液を、FID検出器付ガスクロマトグラフ5890A(ヒューレットパッカード製)、内径0.53mm長さ15mのメガボアDB−1カラム(ヒューレットパッカード製)を用い、カラム温度100℃から昇温速度3℃/分で280℃とした昇温分析することにより、本発明の農薬包装用水溶性フィルムに含まれるアセチレングリコール系界面活性剤(B)を測定することができる。
【0059】
このようにして得られる水溶性フィルムは、水溶性に優れたフィルムであり、その溶解性は、50℃以下の、好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下の水に溶解または分散するものである。
【0060】
そして、先に述べた農薬の薬剤の包装(ユニット包装)用途の水溶性フィルムとして有用であるばかりでなく、さらには、例えば、(水圧)転写用フィルム、ナプキン・紙おむつ等の生理用品、オストミーバッグ等の汚物処理用品、吸血シート等の医療用品、育苗シート・刺繍用基布等の一時的基材等の各種用途の水溶性フィルムとしても利用することができる。なかでも、上記農薬の薬剤包装用途に非常に有用である。
【実施例】
【0061】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の記述で「%」、「部」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
【0062】
〔実施例1〕
4%水溶液粘度15mPa・s(20℃)、平均ケン化度88.0モル%の未変性PVOH系樹脂(A)100部に、グリセリン15部、界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩2部、水、およびアセチレングリコール系化合物(B)としてサーフィノール440(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエトキシル化体)(エアープロダクツジャパン株式会社製)を4部加え、固形分濃度35%樹脂組成物の水分散液を得た。
【0063】
ホットプレート上に設置したSUSの表面を90℃に調整した後、上記の樹脂組成物の水分散液を、加熱されたSUS板上に流延し、その後80〜90℃で2分間乾燥して、SUS基材よりフィルムを剥離し、厚み40μmのPVOH系フィルムを得た。
【0064】
〔実施例2〕
アセチレングリコール系化合物であるサーフィノール440(エアープロダクツジャパン株式会社製)の配合量を0.5部に変えた。それ以外は実施例1と同様にして厚み40μmのPVOH系フィルムを得た。
【0065】
〔実施例3〕
アセチレングリコール系化合物であるサーフィノール440(エアープロダクツジャパン株式会社製)の配合量を10部に変えた。それ以外は実施例1と同様にして厚み40μmのPVOH系フィルムを得た。
【0066】
〔実施例4〕
4%水溶液粘度28mPa・s(20℃)、平均ケン化度96モル%、変性量2モル%のマレイン酸変性PVOH系樹脂を用いた。それ以外は実施例1と同様にして厚み40μmのPVOH系フィルムを得た。
【0067】
〔実施例5〕
アセチレングリコール化合物として、サーフィノール440(エアープロダクツジャパン株式会社製)に代えてサーフィノール420(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエトキシル化体)(エアープロダクツジャパン株式会社製)を5部用いた。それ以外は実施例1と同様にして厚み40μmのPVOH系フィルムを得た。
【0068】
〔実施例6〕
4%水溶液粘度28mPa・s(20℃)、平均ケン化度96モル%、変性量2モル%のマレイン酸変性PVOH系樹脂を用い、かつ、アセチレングリコール化合物として、サーフィノール420(エアープロダクツジャパン株式会社製)を5部用いた。それ以外は実施例1と同様にして厚み40μmのPVOH系フィルムを得た。
【0069】
〔比較例〕
4%水溶液粘度15mPa・s(20℃)、平均ケン化度88.0モル%の未変性PVOH系樹脂に、グリセリン15部、界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩2部、および水を加え、固形分濃度35%樹脂組成物の水分散液を得た。
【0070】
ホットプレート上に設置したSUSの表面を90℃に調整した後、上記の樹脂組成物の水分散液を、加熱されたSUS板上に流延し、その後80〜90℃で2分間乾燥して、SUS基材よりフィルムを剥離し、厚み40μmのPVOH系フィルムを得た。
【0071】
このようにして得られた実施例品および比較例品の各PVOH系フィルムについて、以下の評価を行なった。その結果を後記の表1に示す。
【0072】
〔エアドーム消失時間〕
23℃、50%RH雰囲気下で、1週間調湿したPVOH系フィルムを用いて、円柱状の除草剤(平均粒径5mm、クミアイ化学工業社製のパットフルエースLジャンボ)25gをヒートシーラーを用いて包装し、80×90mmの大きさの三方シールの包装袋を作製した。
【0073】
縦70cm×横50cm×高さ10cmの容器に5cmの高さまで水をはり、25℃に調整した水面に、除草剤を包装した上記包装袋を高さ70cmの高さから自然落下させた。水面に落下させた上記包装袋のフィルムは、吸水し膨潤して溶解を開始すると、内包した薬剤(除草剤)が水面上を拡散してゆくが、それと同時に水面に接していない側(上方)のフィルムがドーム状にエアを含んだ状態に膨らむ。この膨潤・溶解が進行し、上記エアドーム部分が潰れるまでの時間を測定した。そして、下記の基準により各フィルムの性能を評価した。
○:エアドーム消失時間が400秒未満
×:エアドーム消失時間が400秒以上
【0074】
【表1】

【0075】
上記結果から、実施例品はエアードーム消泡時間が短いことから、優れた水溶性を備えたものであることがわかる。したがって、包装された除草剤は、固まってとどまることなく、例えば、水田等に使用した場合、良好に拡散されることになる。
【0076】
これに対して、比較例品は、エアードーム消泡時間が長いことから、水溶性に劣るものである。したがって、エアードームのドーム状部分で除草剤が固まり、例えば、水田等に使用した場合、除草剤が拡散せずにとどまってしまい、この領域だけ除草剤の濃度が高くなり稲に対して悪影響を与えることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)と、アセチレングリコール系界面活性剤(B)を必須成分とする樹脂組成物からなることを特徴とする農薬包装用水溶性フィルム。
【請求項2】
アセチレングリコール系界面活性剤(B)が、ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部の割合である請求項1記載の農薬包装用水溶性フィルム。
【請求項3】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)の4重量%水溶液粘度が、20℃において10〜70mPa・sであり、かつポリビニルアルコール系樹脂(A)の平均ケン化度が70〜98モル%である請求項1または2記載の農薬包装用水溶性フィルム。
【請求項4】
農薬包装用水溶性フィルムの厚みが、10〜100μmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の農薬包装用水溶性フィルム。
【請求項5】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)と、アセチレングリコール系界面活性剤(B)を必須成分とする樹脂組成物からなることを特徴とする水溶性フィルム。

【公開番号】特開2009−51947(P2009−51947A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220137(P2007−220137)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【出願人】(000000169)クミアイ化学工業株式会社 (86)
【Fターム(参考)】