説明

近視または遠視の進行を阻止または遅鈍するコンタクトレンズセットおよびその方法

患者の近視または遠視の進行を遅鈍する方法は、コンタクトレンズを供与する工程を含んでいる。コンタクトレンズは2種類またはそれ以上の屈折力を有している。第1屈折率ははっきり見える視力をもたらし、第2屈折力は焦点ボケした網膜像を患者にもたらす。該方法は、第1組のコンタクトレンズ群および第2組のコンタクトレンズ群を供与することに関与しており、第2組のコンタクトレンズ群は第1組のコンタクトレンズ群とは異なる光学設計を有している。本発明の方法を利用すれば、患者の眼の1種類以上のパラメータ、第1組のコンタクトレンズに対する患者の1種類以上の反応、または、この両方の各種組合せに基づいて、第2組のコンタクトレンズ群から1個以上のコンタクトレンズをアイケア従事者が選択することで、第1組のコンタクトレンズ群により供与される利益と比較してより向上した臨床上の利益を患者にもたらすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、合衆国法典第35巻119条の(e)(35 U.S.C. §119 (e))の規定に基づき、2009年10月22日付け先の出願である米国特許仮出願第61/253,861号の優先権を主張するものであるが、かかる先の出願の全体はここに引例に挙げることにより本願の一部をなすものである。
【0002】
本発明はコンタクトレンズおよびその方法に関するものである。より詳細には、近視または遠視の進行を阻止または遅鈍する方法は、相互に異なる光学設計の2組以上のコンタクトレンズを使用することを含んでおり、各組のコンタクトレンズは患者に焦点ボケした網膜像を供与することで、近視または遠視の進行を阻止または遅鈍するものである。
【背景技術】
【0003】
近視すなわち近眼には、相当な比率の世界人口が罹患しており、とりわけアジア諸国の一部においては顕著である。通例、近視は人の眼球軸が異常に長く伸びていることに付随して起こる。軸伸長した眼球では、網膜が「正常な」焦平面から外れた位置にきてしまい、遠距離物体の結像点が網膜面上に位置せずに網膜より前方に置かれてしまうことになる。軸伸長した眼球も更に程度が酷い近視に関与しているものは、網膜剥離、緑内障性の障害、および、変性近視性の網膜障害などを伴うことがある。
【0004】
近視の進行を緩和するための努力がなされてきたが、その具体例として、多焦点眼鏡または多焦点コンタクトレンズの使用、光収差に作用するレンズの使用、角膜整形の施術、薬理剤の使用などがある。近視の進行を緩和するための眼科レンズが既に幾つも開示されており、かかるレンズには遠近両方の視距離でくっきり見える視力をもたらす視力矯正領域と遠近両方の視距離でピンボケ像をもたらす近視焦点ボケ領域とが設けられている。既に提案されている試みの或るものについて、近視の進行を緩和するという目的に付随する難点の具体例として、医薬品の副作用、不快感、妥協の産物でしかない視力回復、または、これら難点の各種組合せが挙げられる。
【0005】
遠近いずれを見ている時でもピントの合った網膜像をもたらし、これと同時に、遠近いずれを見ている時でもコンタクトレンズ装着者の眼(片方または両方)に近視焦点ボケ網膜像をもたらすという、両方の像をもたらすコンタクトレンズが近視の進行を阻止または遅鈍するという目的のもとに既に開示されており、例えば、「近眼進行を阻止するコンタクトレンズおよびその方法(Contact Lenses and Methods for Prevention of Myopia Progression)」という発明名称の米国特許出願公開第US 20080062380号や「コンタクトレンズおよび方法(contact Lenses and Method)」という発明名称の米国特許出願公開第US 20080218687号に開示されているが、これら出願公開の各々はその全体が、ここに引例に挙げることにより本件の一部を構成しているものとする。このようなレンズは、数多くのコンタクトレンズ装着者の近視を矯正するとともに近眼進行を遅鈍するのに有効であって、尚且つ、遠視の症例を矯正するとともに遠視進行を遅鈍することもできることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
患者の近視または遠視の進行を遅鈍する方法は、コンタクトレンズを供与する工程を含んでいる。コンタクトレンズは、コンタクトレンズ製造業者からコンタクトレンズ配給業者に供与され、そのいずれかからコンタクトレンズ小売業者に提供され、これらのいずれかからアイケアの従事者に供与され、アイケアの従事者から患者に用意され、または、これらのいずれであれ各種組合せで供与される。コンタクトレンズは各々が2種類以上の屈折力を有している。第1の屈折力は患者の眼にはっきり見える視力をもたらし、第2の屈折力は患者の眼に焦点ボケした網膜像を供与する。焦点ボケした網膜像は、近視焦点ボケ網膜像か遠視焦点ボケ網膜像のいずれであってもよい。かかる方法は第1組のコンタクトレンズおよび第2組のコンタクトレンズを供与することを含んでおり、第2組のコンタクトレンズは第1組のコンタクトレンズとは異なる光学設計を有している。本発明の方法を利用すれば、アイケアの従事者は、患者の1つ以上の光学パラメータ、第1組のコンタクトレンズに対する患者の1つ以上の反応、または、そのような光学パラメータと反応の両方に基づいて第2組のコンタクトレンズから1つ以上のコンタクトレンズを選択することで、第1組のコンタクトレンズによってもたらされる利益と比べてより向上した臨床上の利益を患者にもたらすことができる。本件で使用されているような「より向上した臨床上の利益」とは、統制条件下の臨床効果と比べて試験条件下でより良好であると患者またはアイケアの従事者が認知した臨床効果を意味している。
【0007】
US 200080218687 に記載されているコンタクトレンズは幾多のコンタクトレンズ装着者については近視の進行を遅鈍するのに有効であるが、相当数のコンタクトレンズ装着者がこのようなコンタクトレンズによって提供される治療に満足のゆく反応を示してはいないことが露見している。例えば、このようなコンタクトレンズ装着者群については、コンタクトレンズが近眼進行を効果的に緩和している他のコンタクトレンズ装着者群と比較して、コンタクトレンズが近視を矯正したとか近視の進行を遅鈍したという同レベルの実効性をもたらしていない。本件で記載されているように、本発明の方法および本発明の何組かのコンタクトレンズは、US 20080218687 に記載されているコンタクトレンズによってもたらされる各種効果には満足のゆく反応を示していないコンタクトレンズ装着者について、近視を緩和または除去する効果をもたらすことができる。本発明の方法および本発明の何組かのコンタクトレンズは、遠視の進行を緩和するように図ったコンタクトレンズによってもたらされる各種効果に満足のゆく反応を示していないコンタクトレンズ装着者について、遠視の進行を緩和または除去する効果をもたらすことができる。
【0008】
US 20080218687 に記載されているコンタクトレンズは、遠近両方の視距離でくっきりした網膜像を供与する効果のある視力矯正領域と、眼調節を行うことのできる患者について遠近両方の視距離で同時に近視焦点ボケ像を供与するのに効果がある近視焦点ボケ領域とを含んでいる。このようなコンタクトレンズは、本件では至便性のために、「近視焦点ボケコンタクトレンズ」と呼称することがある。特に、本件記載の近視焦点ボケコンタクトレンズは、中央の円形域と、かかる中央の円形域を包囲している1つ以上の同心リングとから構成されている。視力矯正領域と近視焦点ボケ領域とは、本件記載のとおり、中央の円形域と1つ以上の同心リングとを多様に組合わせることにより境界が画定されている。
【0009】
従って、近視の進行を阻止または遅鈍する近視焦点ボケコンタクトレンズについては、かかるコンタクトレンズがコンタクトレンズ装着者に近視焦点ボケ網膜像とピントの合った網膜像とを同時に供与するのであるが、コンタクトレンズに供与される治療に対するコンタクトレンズ装着者の反応に多数の要因が影響を及ぼす恐れがあることが露見している。このような要因の具体例としては、コンタクトレンズ装着者の瞳寸法、コンタクトレンズの中央の円形域の直径、コンタクトレンズの近視焦点ボケ領域の面積の視力矯正域の面積に対する比率、または、これらの各種組合せが挙げられる。これらパラメータと治療結果との間の関係を見つければ、コンタクトレンズのパラメータを変動させることにより、多様なコンタクトレンズパラメータを有している1組のレンズからレンズを選択することにより、または、その両方の方法により、治療成果を変える手段が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明を実施するにあたり、複数組のコンタクトレンズが供与される。少なくとも1組と2組が供与される。2組を超える組数のコンタクトレンズが供与されてもよい。各組のコンタクトレンズは1組ごとに2個以上のコンタクトレンズを含んでいる。換言すると、1組のコンタクトレンズは第1コンタクトレンズおよび第2コンタクトレンズを含んでいる。本件で使用されているような「1組」という句は、2個を超える数のコンタクトレンズ、例えば、3個のコンタクトレンズ群、4個のコンタクトレンズ群、5個のコンタクトレンズ群などを意味範囲とする。1組のコンタクトレンズと2組のコンタクトレンズは相互に異なるレンズ設計を有しているか、相互に異なる設計寸法を有しているか、または、相互に異なるレンズ設計と設計寸法とを有している。従って、治療を必要とするコンタクトレンズ装着者が1組目のうちの1個のコンタクトレンズによって供与された治療に対して満足のゆく反応をしない場合は、2組目のうちの1個のコンタクトレンズが供与されてより実効性のある治療を得られるようにする。例えば、近視の進行を緩和することを目的とした或るレンズ設計では、近眼進行の緩和に顕著な効果が皆無であるレンズ装着者すなわち患者の比率は約25%である。効果と瞳寸法との間には相関関係があるかもしれないことが分っている。代替例として、治療を必要としているコンタクトレンズ装着者が1組目のコンタクトレンズによって供与されている治療の水準が高すぎることに気付いた場合は、低下した水準でも依然として実効性のある治療を得るために、2組目のコンタクトレンズが供与される。更には、2組目からコンタクトレンズを1個選択することで低下した水準の治療を供与することにより、視力向上すなわち視認性能の向上をもたらすことでレンズ装着者が引き続きコンタクトレンズを装着することができるようにしながら、同時に、何らかの治療の利益を受けることができるようになる。
【0011】
これに加えて、コンタクトレンズ装着者が2組目のコンタクトレンズに対して満足のゆく反応をしめしていない場合には、或いは、2組目のコンタクトレンズによってもたらされる効果に対して所望どおりの反応を示さないとアイケアの従事者が予測した場合には、1組目のコンタクトレンズと2組目のコンタクトレンズとは光学設計が異なっている、更に別組のコンタクトレンズによってもう1個別なコンタクトレンズが供与されるようにしてもよい。
【0012】
本発明のもう1つ別な局面は、本件に記載されているように、複数組のコンタクトレンズに関するものであることが分かる。
【0013】
また別な局面では、本発明は1組のコンタクトレンズを供与する方法を目的としている。かかる方法は少なくとも2個のコンタクトレンズを製造することを含んでおり、コンタクトレンズは、前段までに記載されているようなコンタクトレンズであるか、または、中央の円形域の直径、面積比、光学設計、屈折力プロファイル、屈折力分布、または、これらの各種組合せであるコンタクトレンズパラメータが、1組に含まれている少なくとも2個のコンタクトレンズのうちの個々のレンズごとに異なっているコンタクトレンズである。
【0014】
また別な局面では、本発明はコンタクトレンズを処方する方法を目的としている。かかる方法は、コンタクトレンズ装着者の瞳寸法を判定する工程と、装着者の瞳寸法に基づいて装着者に少なくとも1個のコンタクトレンズを選択する工程とを含んでいる。これに加えて、または、代替例として、本発明の方法はコンタクトレンズ装着者の眼調節反応を判定する工程、コンタクトレンズ装着者の視覚反応を判定する工程、または、その両方の工程を含んでいるようにしてもよい。
【0015】
広義の局面では、本発明は少なくとも2個のコンタクトレンズを含んでいる1組のコンタクトレンズ群を利用する方法を目的としている。
【0016】
本発明の付加的な各局面は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0017】
本発明の多様な実施形態が後段の「詳細な説明」に詳細に記載されている。文脈、本明細書、および、当業者のお知識から明白になることであるが、ここに記載されている各種特徴のどの1つも、または、各種特徴のどの組合せも、かかる組合せに含まれている特徴が相互に矛盾しない限りにおいて、本発明の範囲に入る。それに加えて、各種特徴のどの1つも、または、各種特徴のどの組合せも、本発明のどの実施例からも特に排除されるものではない。本発明の上記以外の利点および局面は後段の詳細な説明と、添付の図面および添付の特許請求の範囲において明らかになっている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の複数組のコンタクトレンズ群のうちの1個のコンタクトレンズを例示した正面図である。
【図2A】図2Aは本発明による1組のコンタクトレンズ群で、尚且つ、本発明の方法において使用されるコンタクトレンズ群のうちの1個のコンタクトレンズを例示した正面平面図である。
【図2B】図2Bは本発明による1組のコンタクトレンズ群で、尚且つ、本発明の方法において使用されるコンタクトレンズ群のうちの1個のコンタクトレンズを例示した正面平面図である。
【図3A】図3Aは本発明の方法で使用される複数組のコンタクトレンズ群のうちの別なコンタクトレンズを例示した正面平面図である。
【図3B】図3Bは本発明の方法で使用される複数組のコンタクトレンズ群のうちの別なコンタクトレンズを例示した正面平面図である。
【図3C】図3Cは本発明の方法で使用される複数組のコンタクトレンズ群のうちの別なコンタクトレンズを例示した正面平面図である。
【図3D】図3Dは本発明の方法で使用される複数組のコンタクトレンズ群のうちの別なコンタクトレンズを例示した正面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一般に、本発明の一局面は各種方法に関連している。より詳細には、本発明の本局面は、コンタクトレンズ製造業者、コンタクトレンズ供給業者、コンタクトレンズ配給業者、または、これらの各種組合せによって採用される方法に関するものである。かかる方法は、アイケアの従事者によって実施される。例えば、本発明の一方法は、コンタクトレンズ製造業者、コンタクトレンズ供給業者、または、コンタクトレンズ配給業者によってアイケアの従事者にコンタクトレンズを供与する工程を含んでいる。かかる方法は、例えば、レンズ装着者の眼にコンタクトレンズを設置することに関与している場合には、コンタクトレンズ装着者によって実施される。
【0020】
本件に記載されているように、本発明の方法は、患者の近視または遠視の進行を遅鈍することに関するものである。これも本件記載のとおりであるが、患者の近視または遠視の進行を遅鈍する方法はコンタクトレンズを供与する工程を含んでいる。かかる方法は、本件記載のような供与する工程に加えて、更にもう1またはそれ以上の別な工程を含んでいることもある。
【0021】
本発明の方法で供与されるコンタクトレンズは、1組のコンタクトレンズおよび2組のコンタクトレンズから構成されている。コンタクトレンズは、アイケアの従事者(ECP)が患者の眼のパラメータ、1組目のコンタクトレンズ群のうちの1個のコンタクトレンズに対する患者の反応、眼用レンズによる眼の測定、または、これらの各種組合せに基づいて2組目のコンタクトレンズ群からコンタクトレンズを選択することができるように供与される。例えば、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズは、コンタクトレンズ装着者の角膜曲率、角膜直径、瞳寸法、眼調節ラグ、コントラストの喪失、文字判読能力試験時の悪い出来(例えば、ミネソタ研究所方式文字読取り視力検査表)、コンタクトレンズ径、多重像の度合、周辺屈折、または、これらの何らかの組合せに基づいて選択されるとよい。2組目のコンタクトレンズ群からコンタクトレンズが選択される目的として、1組目のコンタクトレンズ群によって供与される患者の視認能力と比較して向上した視認能力を、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズを装着している患者に供与することが挙げられる。
【0022】
前述の方法において、1組目のコンタクトレンズ群は少なくとも2個のコンタクトレンズを含んでいる。例えば、1組目のコンタクトレンズ群は、2個、3個、4個、5個、6個、12個、30個、90個、または、2個以上のどのような個数のコンタクトレンズを備えていてもよいし、必須要素として含んでいてもよいし、構成要素の一部として含んでいてもよい。1組目のコンタクトレンズ群のうちのコンタクトレンズは各々が第1屈折力と第2屈折力を有している。第2屈折力は第1屈折力とは異なっている。例えばコンタクトレンズ装着者が自身の眼にコンタクトレンズを装着することにより、コンタクトレンズが患者の眼に設置されると、第2屈折力は遠近両方の視距離で患者に焦点ボケした網膜像を供与する。1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第1屈折力は、- 0.25から- 20.00ジオプターなどの負値の場合もあり、0.00ジオプターのようにフラット値の場合もあり、或いは、+ 0.25から+ 20.00ジオプターなどのように正値の場合もある。コンタクトレンズは、乱視を矯正するための既存のトーリックコンタクトレンズに付与されているように、円柱屈折力を有しているようにしてもよい。
【0023】
更に、前述の方法においては、2組目のコンタクトレンズ群は少なくとも2個のコンタクトレンズを含んでいる。2組目のコンタクトレンズ群は少なくとも2個の同じコンタクトレンズを含んでいる。例えば、2組目のコンタクトレンズ群は、2個、3個、4個、5個、6個、12個、30個、90個、または、2個以上のどのような個数のコンタクトレンズを備えていてもよいし、必須要素として含んでいてもよいし、構成要素の一部として含んでいてもよい。2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズは各々が、第1の屈折力および第2の屈折力を有している。第2の屈折力は第1の屈折力とは異なっている。例えばコンタクトレンズの装着者が自身の眼にレンズを装着することにより、コンタクトレンズが患者の眼に設置されると、第2屈折力は遠近両方の視距離で患者に焦点ボケした網膜像を供与する。近視焦点ボケ網膜像(すなわち、レンズ装着者の眼の網膜より前側に位置する焦平面)などのような焦点ボケした網膜像、または、遠視焦点ボケ網膜像(すなわち、レンズ装着者の眼の網膜より後側に位置する焦平面)は、患者の近視または遠視の進行を遅鈍するのに有効である。例えば、第2の屈折力が近視焦点ボケ像を供与するレンズを利用した場合、レンズは患者の近視の進行を遅鈍するのに有効である。同様に、第2の屈折力が遠視焦点ボケ像を供与するレンズを利用した場合、レンズは患者の遠視の進行を遅鈍するのに有効である。2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズは、1組目のコンタクトレンズ群のものとは異なる光学設計を有している。2組目のコンタクトレンズ群の第1屈折力は1組目のコンタクトレンズ群の第1屈折力と、2組目のコンタクトレンズ群の第2屈折力は1組目のコンタクトレンズ群の第2屈折力と、それぞれに、同じである場合もあれば異なっている場合もある。
【0024】
軸外し周辺焦点ボケのみを供与するものとして開示されているコンタクトレンズとは異なり、本発明の複数組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズは軸上焦点ボケを患者の眼に供与することができる。換言すると、1組目、2組目、または、1組目と2組目の両方のコンタクトレンズの第2屈折力が、患者の眼の中央視力軸線に沿って、または、中心窩で近視焦点ボケ像または遠視焦点ボケ像のいずれかを供与することができる。本発明のコンタクトレンズはまた、中心窩に比べて周辺網膜位置寄りで焦点ボケした網膜像を供与することができ、例えば、30度(入射角)、30度未満(入射角)、20度、10度、または、5度で焦点外れしたような網膜像を供与する。
【0025】
アイケアの従事者によって指定された期間にわたり1組目のコンタクトレンズを装着した後で、患者の屈折誤差の進行増進が年率で1年あたり25%を超えている場合、または、患者の屈折誤差が年率で1年あたり0.25を超えている場合、そのいずれが大きいにせよ、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズが選択される。
【0026】
発明を開示する目的で、本発明の一局面はコンタクトレンズを供与する工程を含んでいる方法であると理解することができるが、かかるコンタクトレンズは、1組のコンタクトレンズ群と2組のコンタクトレンズ群とを含んでおり、患者の眼のパラメータ、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズに対する患者の反応、眼用レンズによる視覚測定、または、これらの各種組合せに基づいて医療従事者が2組目のコンタクトレンズ1組目のコンタクトレンズ群によって供与される患者のコンタクトレンズを選択することで、1組目のコンタクトレンズによって供与される患者の視認性能と比較して、2組目のコンタクトレンズを装着している患者により高い視認性能をもたらすように図り、1組目のコンタクトレンズ群は少なくとも2個のコンタクトレンズを含んでおり、コンタクトレンズは各々が第1屈折力および第2屈折力を有しており、コンタクトレンズが患者の眼に設置されると、第2屈折力は遠近両方の視距離で患者に焦点ボケ網膜像を供与し、2組目のコンタクトレンズ群は少なくとも2組のコンタクトレンズを含んでおり、コンタクトレンズは各々が第1屈折力および第2屈折力を有しており、コンタクトレンズが患者の眼に設置されて患者の近視または遠視の進行を遅鈍させるのに有効となると、遠近両方の視距離で人に焦点ボケした網膜像を供与し、2組目のコンタクトレンズ群は1組目のコンタクトレンズ群とは異なる光学設計を有している。
【0027】
従って、前述の事柄に鑑みて、本発明の方法は2組以上のコンタクトレンズ群を供与する工程を含んでおり、かかる工程では、アイケアの従事者が2組目のコンタクトレンズ群から1個以上のコンタクトレンズを選択することができるようにし、2組目のコンタクトレンズ群が残余の組(1組または複数組)のコンタクトレンズ群とは異なる光学設計を有していることで、残余の組のコンタクトレンズのうちの1個により供与される視認性能に比べてより向上した視認性能を患者にもたらし、または、より向上した視覚反応を患者にもたらすように図っている。
【0028】
前述の方法では、供与する工程はコンタクトレンズ製造業者からコンタクトレンズ配給業者、コンタクトレンズ小売御者、アイケアの従事者、または、これらの各種組合せにコンタクトレンズを供与することを含んでいる。例えば、或る方法では、コンタクトレンズはコンタクトレンズ製造業者からコンタクトレンズ配給業者に供給される。また別な方法では、コンタクトレンズはコンタクトレンズ製造業者からコンタクトレンズ小売業者に供給される。更に別な方法では、コンタクトレンズはコンタクトレンズ製造業者からアイケアの従事者に供給されることもある。更にまた別な方法では、コンタクトレンズはコンタクトレンズ配給業者からアイケアの従事者に提供される。前述の方法は各々について、アイケアの従事者は前述の方法の工程を実施することはなく、従って、前述の方法は医学的治療の方法ではない。
【0029】
前述の方法のいずれについても、本発明は、患者が自身の眼にコンタクトレンズを設置するようにコンタクトレンズを患者に用意する更に別な工程を含んでいるようにしてもよい。例えば、コンタクトレンズは、コンタクトレンズ製造業者により供与され、コンタクトレンズ配給業者により供給され、コンタクトレンズ小売業者により提供され、または、アイケアの従事者により直接的に患者(すなわち、コンタクトレンズ装着者)に用意される。患者は、コンタクトレンズを受け取った後、自身の眼にコンタクトレンズを設置することで治療を施し、近視または遠視の進行を緩和する。
【0030】
前述の方法のいずれについても、2組目のコンタクトレンズ群を患者に処方するまた別な工程を含んでいるようにしてもよい。コンタクトレンズを処方するこのような工程は、コンタクトレンズ処方者によって実施される。幾多の状況で、コンタクトレンズ処方者は上述のアイケア従事者であることになる。
【0031】
前述の方法のいずれについても、2組目のコンタクトレンズ群からコンタクトレンズを選択するにあたっては患者の遠方屈折誤差の度合、患者の瞳寸法、患者の視力、患者の眼調節ラグ、患者の固視ずれ、患者の斜位、患者の眼球波面収差プロファイル、患者の周辺屈折、患者の眼軸長測定値、または、これらの各種組合せに基づいて行うとよい。上述の各種測定値は眼科学の臨床分野、すなわち、検眼ではアイケア従事者のよく知るところであり、従来の器具類と方法を使って測定される。従って、アイケア従事者は処方の変更、患者の眼球の軸長の変動、周辺屈折の変化、眼調節ラグの変動、視覚反応の変化、瞳寸法の変化、または、これらの各種組合せを判定することができる。
【0032】
臨床的に容認できる規範はいずれも、2組目のコンタクトレンズ群から1個または複数個のコンタクトレンズが選択されるべきか否かについて判断する目的で、1組目のコンタクトレンズの装着状況から得られた結果に基づいてアイケア従事者によって選択される。例えば視力測定値の測定は、具体的には、高コントラスト高輝度視力、多重像(遠視標距離、中間視標距離、近視標距離のいずれであれ)、立体視、または、これらの各種組合せがアイケア従事者によって測定される。
【0033】
単視力眼鏡レンズまたは単視力コンタクトレンズを装着している患者について決定されている基準から視力(高コントラストまたは低コントラストのいずれであれ)が0.5ライン(0.05 logMAR)を超える変動がある場合には、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズが選択される。本件で使用されているような「MAR」という語はMinimum angle Resolution すなわち解像度の最少角度を意味しており、アイケア従事者の知るところである。
【0034】
多重像の量が100点尺度を利用した基準から10点を超える変動を示している場合には2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズが選択されるが、この場合、基準は単視力眼鏡レンズまたは単視力コンタクトレンズを装着している患者について決定されたものである。
【0035】
立体視の量が基準から角度にして10秒を超える変動を示している場合には2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズが選択されるが、この場合、基準はアイケア従事者が2組目からコンタクトレンズを選択することを決定する過程で有用となる上記以外の規範としては、近眼進行の測定値が挙げられる。
【0036】
アイケア従事者が2組目からコンタクトレンズを選択することを決定する過程で有用となる上記以外の規範としては、近眼進行の測定値が挙げられる。
【0037】
屈折誤差の量が年率で少なくとも-0.25ジオプターまたはそれを超える分だけ変動している場合には2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズが選択される。そうでなければ、屈折誤差の量が年率で少なくとも-0.25ジオプターまたはそれを超える分だけの変動をした後で、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズが選択されるようにしてもよい。
【0038】
眼球軸長が年率で0.10 mmまたはそれを超える分だけ変動している場合には2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズが選択される。そうでなければ、眼球軸長が年率で0.10 mm以上変動した後で、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズが選択されるようにしてもよい。
【0039】
アイケア従事者が2組目からコンタクトレンズを選択することを決定する過程で有用となるもう1つ別の規範としては、眼調節誤差測定値が挙げられる。例えば、眼調節ラグが基準から0.25ジオプター またはそれを超える分だけ増大した場合には2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズが選択されるが、この場合、基準は単視力眼鏡レンズまたは単視力コンタクトレンズを装着している患者について決定されたものである。
【0040】
アイケア従事者が2組目からコンタクトレンズを選択することを決定する過程で有用となる更にもう1つ別の規範としては、周辺焦点ボケ測定値が挙げられる。例えば、1組目のコンタクトレンズが原因で生じる周辺焦点ボケが0.25ジオプター未満の近視焦点ボケである場合には2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズが選択される。
【0041】
アイケア従事者が2組目からコンタクトレンズを選択することを決定する過程で有用となるいまひとつの規範としては、文字判読能力が挙げられる。例えば、アイケア従事者はミネソタ研究所方式文字読取り視力検査における最大読取速度またはミネソタ研究所方式読取視力を判定し、読取速度が基準から0.5秒を超える分だけ変動した場合、または、読取視力が基準から0.5ラインを超える分だけ変動した場合には2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズが選択されるが、この場合、基準は単視力眼鏡レンズまたは単視力コンタクトレンズを装着している患者について決定されたものである。
【0042】
アイケア従事者が2組目からコンタクトレンズを選択することを決定する過程で有用となるいまひとつの規範としては、レンズの適合具合が挙げられる。例えば、アイケア従事者は、視力安定性、レンズの移動、角膜被度、セントレーション、レンズ密着性(従来のプッシュアップ検査を利用して判定されるような)、または、それらの何らかの組合せを測定する。患者が1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズを装着している場合に2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズが選択される条件としては、患者の視力がまばたきをするのと同時に変動する、レンズが眼の上で十分に移動しない、1組目のコンタクトレンズによる角膜被度が100%未満である、1組目のコンタクトレンズがいずれの方向であれ0.05 mmを超える偏芯を伴う場合、または、1組目のコンタクトレンズが臨床的に緩すぎるまたは臨床的に密着しすぎている場合が挙げられる。
【0043】
前述の方法のいずれについても、2組目のコンタクトレンズ群によって供与されるより向上した視認性能の具体例としては、より良好な視力、より良好な目視能、より良好な視認品質、1組目のコンタクトレンズを装着している場合には近視または遠視の進行の遅鈍を示していなかった患者の近視または遠視の進行のより良好な遅鈍、または、これらの各種組合せが挙げられる。向上した視認性能とは、アイケア従事者により判定されるような患者の視力の最小限の認知可能な改善であると解釈するとよい。視認性能の向上を判定するための方法および機器類は、当業者の知るところである。
【0044】
上述の方法においては、向上した目視能の具体例としては、多重像の緩和、コントラスト目視能の増大、または、これらの何らかの組合せが挙げられる。遠視標距離、中間視標距離、または、近視標距離における多重像の緩和は、100点尺度を利用した場合の基準点から10点を超える変動と定義される(基準点は単視力眼鏡レンズまたは単視力コンタクトレンズを装着している患者に基づいている)。コントラスト目視能の増大は、高コントラスト高輝度、低コントラスト高輝度、または、その両方を利用して判定されるとよい。コントラスト目視能の増大は基準から0.5ライン(0.05 logMAR)を超える変動と定義されるが、この場合、基準は、患者が単視力眼鏡レンズまたは単視力コンタクトレンズを装着している時に決定される。
【0045】
上述の方法のいずれについても、患者の眼のパラメータに基づいてアイケア従事者が2組目のコンタクトレンズ群からコンタクトレンズを選択することができるようにしてコンタクトレンズが供与されるが、眼のパラメータは1組目のコンタクトレンズを装着する前に測定されるか、または、1組目のコンタクトレンズを装着した後に測定される。眼のパラメータは瞳寸法、眼の形状、眼調節ラグ、周辺屈折、または、これらの各種組合せである。このような眼のパラメータの測定は、アイケア従事者の知るところである従来の機器類および方法を利用して実施される。例えば、1組目のコンタクトレンズによりもたらされる焦点ボケの量が0.75ジオプター未満である場合、または、1組目のコンタクトレンズに付随する周辺屈折が近視焦点ボケを示していない場合には、コンタクトレンズは2組目のコンタクトレンズから選択される。これに代わる例として、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズを少なくとも10分は装着した後で、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズに対する患者の反応に基づいてアイケア従事者が2組目のコンタクトレンズ群からコンタクトレンズを選択することができるようにしてコンタクトレンズが供給される。例えば、臨床環境では、患者が来院中に10分以上にわたって1組目のコンタクトレンズを装着してから、現在のレンズに対する望ましからざる反応ゆえに異なる光学設計のコンタクトレンズに対してはもっと良好な反応を示すかもしれないという評定をアイケア従事者が下す場合がある。例えば、アイケア従事者は目視能や眼調節誤差などを測定し、2組目のコンタクトレンズ群から選んだコンタクトレンズならより向上した視認性能を供与するだろうと判定するかもしれない。また別な実施形態においては、1組目のコンタクトレンズ群に対する患者の反応は、1組目のコンタクトレンズを少なくとも6カ月は装着した後で測定される。このような反応は、それが起こるまでには、アイケア従事者の診察を受けている時間よりもながくかかるのが普通であるような臨床効果に関連している場合がある。むしろ、このような反応がレンズ適合具合に関与しているため、レンズ装着者により良好な適合具合を提供するために、異なる基礎曲線、異なるレンズ径、または、異なるレンズ厚さのコンタクトレンズが選択される。より向上したレンズ適合具合はアイケア従事者の知るところである従来の機器類および技術を利用して判定することができ、また、より向上したレンズ適合具合にはより良好なレンズセントレーション、より良好なレンズの移動、または、その両方が含まれているため、2組目のコンタクトレンズ群の1個または複数個のコンタクトレンズの異なるレンズパラメータによって適合具合がより良好になった結果として、患者の視力が改善される。従って、アイケア従事者が測定する患者の反応には、眼調節反応、眼球軸伸長測定、屈折誤差矯正の進行測定、または、これらの各種組合せがある。
【0046】
本発明の方法で測定される各種反応は片目について測定することができ、両目について個別に測定することもでき、または、両目で同時に測定されてもよい。
【0047】
本発明の方法はまた、コンタクトレンズ装着者にとって適切なレンズを1揃いのコンタクトレンズから選択する方法についてアイケア従事者を指導する指示を供与する工程を含んでいるようにしてもよい。このような指示は、1揃いのレンズ群と一緒に供与されてもいし、または、レンズ群とは無関係または別個に供与されてもよい。
【0048】
本発明の方法はまた、コンタクトレンズ装着者の大凡の瞳寸法を判定する工程と、そのように判定された瞳寸法に基づいてコンタクトレンズ装着者に少なくとも1個のコンタクトレンズを選択する工程とを含んでいるようにしてもよい。
【0049】
前述の方法のいずれについても、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第2屈折力が第1焦点ボケ領域を規定し、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第2屈折力が第2焦点ボケ領域を規定する。第1焦点ボケ領域と比較して、第2焦点ボケ領域はレンズの異なる位置にあって、異なる寸法を有しており、異なる形状を呈しており、異なるジオプター値を示しており、2領域間の遷移が異なっており、領域の個数が異なっており、または、これらが各種組合わさった状態を呈している。
【0050】
また別な実施形態においては前述のいずれの方法についても、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第1屈折力は第1視力矯正領域を規定し、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第2屈折力が第1焦点ボケ領域を規定し、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第1屈折力は第2視力矯正領域を規定し、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第2屈折力が第2焦点ボケ領域を規定している。2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズは、第2視力矯正領域の第2焦点ボケ領域に対する面積比が、第1視力矯正領域の第1焦点ボケ領域に対する面積比とは異なっている。本件で使用されているように、第1屈折力と第2屈折力は各々がコンタクトレンズの非連続の複数領域に設けられており、その結果、これら複数領域の各々の面積を測定または定量化することができる。本発明の方法のレンズには視力矯正領域(1視力矯正領域の1面積の和または複数視力矯正領域の複数面積の和に一致する)と焦点ボケ領域(1焦点ボケ領域の1面積の和または複数焦点ボケ領域の複数面積の和に一致する)が設けられている。視力矯正領域を焦点ボケ領域と比較することで、面積比が得られる。上述のように、視力矯正領域と焦点ボケ領域の間の面積比は、2組目のコンタクトレンズについては1組目のコンタクトレンズの面積比と比べると異なっている。前者の面積比の方が大きい場合もあれば、小さい場合もある。例えば、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの視力矯正領域の焦点ボケ領域に対する面積比が50/50である場合(すなわち、1:1)、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの視力矯正領域の焦点ボケ領域に対する面積比が70/30である場合もあり、この比率は瞳を被覆しているコンタクトレンズの部分について多重像を低減するのに有効となる。
【0051】
前述の方法のいずれについても、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズと2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの各々が光学軸線を有している。光学軸線は、概ね、コンタクトレンズの幾何学的中心に一致している。コンタクトレンズは各々が、(i)光学軸線が通っており、個々のコンタクトレンズに第1屈折力を供与しており、中央域直径を呈している中央域と、(ii)中央域に隣接しているとともに中央域を包囲しており、コンタクトレンズに第2屈折力を供与している環状域とを備えている。2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの中央域径は、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの中央域径よりも短い。
【0052】
本発明の方法を利用して供与されるコンタクトレンズはソフトコンタクトレンズである場合もあれば、ハードコンタクトレンズである場合もあり、或いは、ハード/ソフト混成型コンタクトレンズである場合もあり、当業者のよく知るところである。本発明の方法で供与されるコンタクトレンズはソフトコンタクトレンズであるのが好ましい。本件で使用されているようなソフトコンタクトレンズは、レンズ装着者の眼に設置されるとレンズ装着者の眼の形状に概ね一致するような可撓性を有している。ソフトコンタクトレンズはまた、折り重ねても破損することがない。通例、ソフトコンタクトレンズは、剛性の気体透過性コンタクトレンズと比較して、ヒドロゲルコンタクトレンズと呼称される。本件で使用されているような「ヒドロゲルコンタクトレンズ」という語は、水を吸収して水を平衡状態に維持することができる能力を有している重合体レンズに言及したものである。本明細書の説明の文脈では、ヒドロゲルレンズはシリコーン含有成分を含んでいない重合体素材であってもよいし、シリコーン含有成分を含んでいる重合体素材であってもよい。シリコーンを含有していないヒドロゲルコンタクトレンズの大半が、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の各種単量体を含んでいる、重合化可能なレンズ配合物を主材料としている。ヒドロゲルコンタクトレンズ材の具体例としては、以下に列挙する合衆国公認物質名(USAN)を持つものがある。すなわち、エタフィルコンA、ネルフィルコンA、オキュフィルコンA、オキュフィルコンB、オキュフィルコンC、オキュフィルコンD、および、オマフィルコンAである(英名:順にetafilcon A、nelfilcon A、ocufilcon A、ocufilcon B、ocufilcon C、ocufilcon D、omafilcon A)。これに加えて、本発明のコンタクトレンズは、グリセリルメタクリレート(GMA)のみを含有、または、GMAをHEMAとの混合物として含有しているレンズ配合物を主材料としているヒドロゲルコンタクトレンズであってもよい。シリコーン含有ヒドロゲルコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと呼称されることが多い。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの大半は、シロキサンの各種単量体、各種低重量体、または、各種高分子単量体などの重合化可能なレンズ配合物を主材料としている。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ素材の具体例としては、以下に列挙する合衆国公認物質名の付いた物質がある。すなわち、アクアフィルコンA、バラフィルコンA、コムフィルコンA、エンフィルコンA、ガリフィルコンA、レネフィルコンA、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、および、セノフィルコンAである(英名:順にacquafilcon A または aquafilcon A、balafilcon A、comfilcon A、enfilcon A、galyfilcon A、lenefilcon A、lotrafilcon A、lotrafilcon B、senofilcon A)。
【0053】
本発明のコンタクトレンズは、1種類以上の親水性単量体、1種類以上の疎水性単量体、1種類以上のシリコーン含有単量体、1種類以上のシリコーン含有低重量体、1種類以上のシリコーン含有高分子単量体、1種類以上の重合体、または、これらの各種組合せなどからなる重合化可能な組成物の重合反応製品であるとよい。これに加えて、本発明のレンズを製造するのに使用される重合化可能な組成物の具体例としては、架橋結合剤、遊離基重合開始剤、着色剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。本発明のソフトコンタクトレンズは、前述の合衆国公認物質名(USAN)によって同定される前掲のコンタクトレンズ材料のうちのいずれかから構成されており、いずれかを必須要素として含んでおり、または、いずれかをその一部として含んでいる。本発明のレンズはオマフィルコンAから作成されていてもよい。本発明のレンズは、コムフィルコンAまたはエンフィルコンAから作成されているシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであってもよい。
【0054】
本発明のコンタクトレンズは、回転成形コンタクトレンズまたは注型成形コンタクトレンズなどのような成形コンタクトレンズであってもよいし、または、旋盤回転加工コンタクトレンズであってもよい。これら各種のコンタクトレンズはそれぞれの製造方法が原因で物理的特性が互いに異なっていることが分かる。「注型成形コンタクトレンズ」とは、2つのコンタクトレンズ鋳型断片を互いに接触させてコンタクトレンズ形状の空洞を形成することにより構成されているコンタクトレンズ型集成体から得られるコンタクトレンズのことである。これに加えて、本発明のコンタクトレンズの一部は、コンタクトレンズ形成後に研磨され、または、平滑にされる。例えば、注型成形または旋盤回転加工されたコンタクトレンズ、もしくは、注型成形と旋盤回転加工の両方が施されたコンタクトレンズは研磨されることで遷移領域を低減することができ、或いは、端縁形状を改善することができ、その結果として研磨処理されていないレンズに比べてより優れた快適さを供与することになる。
【0055】
本発明のコンタクトレンズは日別装着レンズまたは長時間装着するレンズである場合もある。本発明で使用されているような、長時間装着するコンタクトレンズとは、連続24時間を超える装着用に認可されたコンタクトレンズについて言及したものである。レンズ対をなすコンタクトレンズは各々が1日で使い捨てができるコンタクトレンズである(すなわち、人の眼に1回だけ装着されたきりで廃棄されるコンタクトレンズ)。これと比べて、当業者には分かることであるが、日別装着レンズは人の眼に装着されてから、洗浄されて少なくとももう1回だけ人の眼に装着される。日別装着コンタクトレンズおよび長時間装着コンタクトレンズと比較した場合、1日限りの使い捨てコンタクトレンズは物理的に異なっているか、化学的に異なっているか、または、物理的にも化学的にも異なっている。例えば、日別装着コンタクトレンズまたは長時間装着コンタクトレンズを作成するために使用される処方は、1日限りの使い捨てコンタクトレンズを作成するために使用される処方とは異なっているが、これは、かなり大量の1日限りの使い捨てコンタクトレンズを作成するにあたっての経済的要因と商業的要因のせいである。
【0056】
本発明の方法を実施することにより供与されるコンタクトレンズは、以下のような注型成形プロセスにより製造することができる。レンズ形成材の重合化可能な組成物が準備されてから、凹面が設けられている雌コンタクトレンズ型に分配されて、コンタクトレンズの前面を形成する。続いて、コンタクトレンズの背面を形成するための凸面が設けられている雄コンタクトレンズ型が雌コンタクトレンズ型に隣接して設置されて、コンタクトレンズ型集成体を形成する。重合化可能組成物を包含しているコンタクトレンズ型集成体は熱、可視光、紫外光、または、これら以外の形態の放射線に晒されて、重合化可能な組成物を重合化することで重合コンタクトレンズ製品を成形する。雄型または雌型のいずれかに置かれた重合コンタクトレンズ製品を取出すのに、コンタクトレンズ型集成体の型部材が分離される。ここで、重合コンタクトレンズ製品は雄型または雌型から分離されて、型から取外したコンタクトレンズ製品を得る。取外されたコンタクトレンズ製品はコンタクトレンズ梱包材に設置され、例えば、可塑材のブリスターパックまたはガラス瓶などの中に入れられる。梱包材中で、コンタクトレンズはコンタクトレンズ用梱包液中に入れられる。続いて、梱包材が封止されてから滅菌されることで、梱包済みコンタクトレンズが製造される。任意で、型から取外されたコンタクトレンズ製品は、梱包材に封入される前に、型から取外されたコンタクトレンズ製品から抽出可能な物質を除去する目的で洗浄されてもよい。洗浄は梱包材の内部で行われる場合もあれば、また別な洗浄ステーションで行われることもある。梱包済みのコンタクトレンズは他の梱包済みコンタクトレンズと一緒に、箱または容器などのような二次梱包材の中に入れられる。梱包済みコンタクトレンズは、通例では二次梱包材に入れられてから、本発明の方法に従って供与される。
【0057】
本件開示鑑みて、本発明の方法は、コンタクトレンズを製造する工程を含んでいることが分かる。かかる製造工程は、前段までに記載されている各製造工程のいずれを含んでいてもよいし、いずれを必須要件としていてもよいし、または、いずれから構成されていてもよい。コンタクトレンズを製造した後で、コンタクトレンズは本発明の方法に従って供与される。
【0058】
第1屈折力と第2屈折力は、もし付与されているのであればそれら以外の屈折力も同様に、コンタクトレンズの光学域に存在している。本件で使用されているような「光学域」という句は、眼の瞳を被覆しているコンタクトレンズの一部に言及したものである。通例は、光学域は円形であり、直径は9 mm未満である。コンタクトレンズが乱視を矯正するためのトーリック光学域を含んでいる場合は、トーリック光学域の主軸線は通例は11 mm未満となる。光学域の直径は約3 mmから11 mmである。コンタクトレンズの光学域は周辺域によって包囲されている。光学域と周辺域の間の境界は、裸眼で、拡大器具を使って、または、ゾノメーターなどのようなレンズ検査装置を利用して視覚的に同定され、または、フィゾー干渉計などのような屈折力プロファイル作成干渉計を利用して測定することができる。従って、本発明の説明の文脈では、はっきり見える目視能と焦点ボケは、コンタクトレンズの光学域によってもたらされる第1屈折力および第2屈折力によって供与される。1か所または複数個所の遷移領域または遷移面が光学域と周辺域との境界に設けられ、すなわち、第1屈折力を示す領域と第2屈折力を示す領域との間に設けられているのが分かる。遷移領域の表面曲率はそれらの隣接域の曲率とは異ならせることができ、かかる遷移領域は異なる領域間の非連続性を緩和する効果を有している。コンタクトレンズの遷移領域の寸法と屈折力プロファイルの相違は、相互に異なる複数組のコンタクトレンズ群などのような多様なコンタクトレンズを規定するには十分である。これに加えて、コンタクトレンズには、焦点ボケを供与する1つ以上のまた別な領域などのような別個の分離した領域が設けられている。
【0059】
一例として、本発明の方法で供与されるコンタクトレンズ群のコンタクトレンズは中央の円形域とかかる中央の円形域を包囲している1個以上の外接リングとを備えている。2組目のコンタクトレンズの光学設計が1組目のコンタクトレンズの光学設計とは異なっているせいで、中央の円形域の径、第1屈折力を有している1つまたは複数の領域の寸法、第2の屈折力を有している1つまたは複数の領域の寸法、または、このような直径と寸法の両方ともが、1組目のコンタクトレンズと2組目のコンタクトレンズとでは異なっている。本件で使用されているような「異なる光学設計」とは、同じ形状で異なる寸法の複数の視力形成域を有しているうえに、異なる形状で同じ寸法の視力矯正領域を有しているばかりか、領域数も異なっているコンタクトレンズについて言及しているのが分かる。
【0060】
コンタクトレンズの第1屈折力は0ジオプターまたは負値のジオプターである。レンズ装着者が近視者である場合、第1屈折力は患者の眼の遠方目視能を矯正するように選択され、この領域は、眼調節を行うことができる患者の能力を考慮して、近方視力について利用される。従って、コンタクトレンズの第1屈折力とは遠方光屈折力、遠屈折力、または、遠方視屈折力であると理解してもよい(英語で‘distance optical power’、‘distance power’、または、‘distance vision power’に対応)。第1の屈折力は0.00ジオプターから-10.00ジオプターである。本発明のレンズの第1屈折力はコンタクトレンズの1つ以上の領域で供与され、すなわち、第1屈折力を示す領域(単数または複数)の構成(寸法、形状、または、寸法と形状の両方)は、遠近両方の視距離で患者にはっきり見える視力を供与するように設定される。コンタクトレンズの第1屈折力は球面レンズ曲率、非球面レンズ曲率、またはこれらの各種組合せによってもたらされる。本件で使用されているように、第1の屈折力は実効単屈折力であることが分かる。すなわち、コンタクトレンズの第1屈折力は、コンタクトレンズ製造環境で使用されているとおりに頂点計または焦点距離計によって測定されると、単屈折力であるのが明らかとなる。しかしながら、第1屈折力はコンタクトレンズに2種類以上の屈折力を供与する球面(1つまたは複数)によっても供与されることがあり、但しその場合でも、コンタクトレンズは依然として実効単屈折力を呈している。
【0061】
本件で使用されているような「近距離」とは、見られている視標の患者からの距離が約60 cmかそれより短い視標距離のことを意味している。視距離は視標距離とも呼ばれる。近方視力は約40 cmで測定されることが多い。本件で使用されているような「遠距離(遠視標距離)」とは、視標までの距離が少なくとも400 cmある場合の視距離または視標距離を意味している。遠視標距離の具体例としては、少なくとも400 cm、少なくとも500 cm、および、少なくとも600 cmが挙げられる。本件で使用されているような「中間視距離(中間視標距離)」とは、近視標距離と遠視標距離との間の距離を意味している。例えば、中間視標距離とは、約60 cmから約400 cmまでの距離を意味しており、例えば、約80 cm、約100 cm、約120 cm、および、約140 cmなどの距離を含んでいる。
【0062】
上記に鑑みて、本発明のコンタクトレンズの第1屈折力は、約60 cm未満の視距離と約400 cmから無限遠までの遠距離で患者にはっきり見える視力を供与する屈折力を示すものと理解される。本発明のコンタクトレンズはまた、中間視標距離または中間視距離で患者にはっきり見える視力を供与する。
【0063】
近視焦点ボケまたは遠視焦点ボケのいずれかを供与する第2屈折力は、視力矯正領域の屈折力とは異なっている屈折力を示す。コンタクトレンズによって供与される第2屈折力は焦点ボケ像を供与するのに有効であるが、同時に、遠近両方の視距離で患者は第1屈折力によりはっきり見える目視能が供与される。上述のように、「近視焦点ボケ」とは、コンタクトレンズが患者の眼に装備された際に、コンタクトレンズによって一部または全部が網膜より前の位置に形成される焦点ボケ像のことを意味している。近視焦点ボケは、コンタクトレンズの作用時にコンタクトレンズによって生成される焦点ボケ像が眼の網膜の前側に置かれるという点で正であることが分かる。
【0064】
近視焦点ボケが第2屈折力によって供与されると、第2屈折力はコンタクトレンズの第1屈折力よりもマイナス寄りの程度が少ない。コンタクトレンズの第2屈折力は負値のジオプター、0ジオプター、または、正値のジオプターとなる。例えば、視力矯正領域のくっせる直は-10.0ジオプターであり、近視焦点ボケ領域の屈折力は約 -9.0ジオプター、約 -8.0ジオプター、約 -7.0ジオプター、約 -6.0ジオプター、約-5.0ジオプター、約 -4.0ジオプター、約 -3.0ジオプター、約 -2.0ジオプター、約 -1.0ジオプター、または、約0ジオプターとなる場合があり、むしろ、約 +1.0ジオプターまたは約 +2.0ジオプターになることすらある。第1屈折力は約0ジオプターから約 -10.0ジオプターの間となり、第2屈折力は約2.0ジオプターで、第1屈折力よりもマイナス寄りの程度が少ない。一例として、コンタクトレンズは +1.00ジオプターの第1屈折力と -1.00ジオプターの第2屈折力を有しているようにしてもよい。
【0065】
重要なのは、本発明のコンタクトレンズ(1個または複数個)を装備している患者は第1屈折力を利用して遠近両方の距離ではっきり見るせいで(患者の眼の調節のおかげで)、近視標距離ではっきり見えるようにするのに患者は第2屈折力を使用せず(市場で入手できる二焦点コンタクトレンズの近視域と比べて)、その代わりに、第2屈折力は遠近両方の距離でくっきりした像を患者に供与するのと同時に焦点ボケ像を患者に供与するのに有効である。
【0066】
第1屈折力、第2屈折力、または、その両方の屈折力は、各々が本件記載されているような単領域を備えており、必須要件として含んでおり、または、構成要素の一部としている。これに代わる例として、第1屈折力、第2屈折力、または、その両方の屈折力は、本件記載のような複数の二次領域を備えており、必須要件として含んでおり、または、構成要素の一部としているようにしてもよい。
【0067】
例示を目的として、図1は本発明の方法で供与されるコンタクトレンズの一例を図示している。レンズ10には視力矯正領域12と焦点ボケ領域14が設けられている。視力矯正領域12は第1屈折力を示し、近視焦点ボケ領域14は第2の屈折力を示し、これはここで説明してきたとおりである。視力矯正領域12および近視焦点ボケ領域14は、本件で説明されているように、コンタクトレンズ10の光学域16の境界を画定している。光学域16は非光学周辺域18によって包囲されており、かかる非光学周辺域18はレンズ10の光学域16の外側外辺部16から周端縁域20まで延びている。
【0068】
図1に例示されているコンタクトレンズにおいては、視力矯正領域12には中央域22が設けられている。本件に記載されているように、中央域22は遠距離屈折力を呈している。中央域22はレンズ10の光学軸線24の周囲で中央に配置されている。中央域22は円形または略円形であるように例示されている。コンタクトレンズの中央域の直径は2.0 mmよりも大きい。中央域22の直径は、コンタクトレンズの2次元正面平面図において光学軸線24を通って中央域22の互いに対向し合う外辺境界部までの直線距離を測定することにより判定される。コンタクトレンズはその中央域22が遠距離屈折力を呈しているとともに直径が少なくとも2.3 mmである場合がある。コンタクトレンズは中央域22が遠距離屈折力を呈しているとともに直径が少なくとも2.5 mmである場合もある。コンタクトレンズはその中央域22が遠距離屈折力を呈しているとともに直径が少なくとも3.3 mmであるようにしてもよい。コンタクトレンズはその中央域22が遠距離屈折力を呈しているとともに直径が4.0 mmを超えることもある。
【0069】
図1に例示されているコンタクトレンズ10は、中央の円形域22を包囲している環状リング域26を備えているものと解釈されてもよい。環状域26は単一屈折力の領域であり、その結果、光学機器で視認されると単一リングに見えるようにしてもよいし、或いは、多数の屈折力を呈する単一領域であり、環状領域26が複数の二次リングを有しているように見えるようにしてもよい。図1に例示されている実施形態では、環状領域26は複数の同心状に配置された二次リング26a、26b、26cを備えており、必須要件として含んでおり、または、構成要素の一部として含んでいる。従って、本発明の方法で供与されるコンタクトレンズにおいては、コンタクトレンズには近視焦点ボケ領域が設けられており、かかる近視焦点ボケ領域が円形の中央域22に隣接しているとともにこれを包囲している第1環状域を備えており、必須要件として含んでおり、または、構成要素の一部として含んでいることが分かる。これに代わる例として、または、これに加えて、図1に例示されているようなコンタクトレンズは、円形の中央域22を包囲している環状域26を備えており、かかる環状域26は同心状に配置された複数の環状の二次リング26a、26b、26cを含んでおり、これら二次リングのうちの少なくとも1つ、例えば二次リング26aは近視焦点ボケ領域14の一部となっており、また、二次リングのうちの少なくとも1つ、例えば二次リング26bは視力矯正領域12の一部となっている。本件の開示を目的として、二時リングの屈折力が視力矯正領域12の屈折力に近似している、または、同一である場合には二次リングは視力矯正領域12の一部であり、二次リングの屈折力が近視焦点ボケ領域14の屈折力に近似している、または、同一である場合には二次リングは近視焦点ボケ領域14の一部である。本件で使用されているような「近似」という語は一致している、または、似通っていることを意味し、例えば、プラス/マイナスいずれかで10%の偏差であるとか、0.25ジオプターの範囲内であるとかいったようなわずかな差異を除けば、同一であると解釈してもよい。図1の例示の実施形態においては、コンタクトレンズ10は二次リング26cを備えており、かかる二次リングは近視焦点ボケ領域14の一部である。
【0070】
図2Aおよび図2Bは2個のコンタクトレンズからなる1揃いの実施形態を例示している。第1レンズ10d(図2A)には、第1屈折力を呈しているくっきり見える視力域12dと第2屈折力を呈している焦点ボケ領域14dとが設けられている。本件で分かることであるが、視力矯正領域とはっきり見える視力域という表現は置換自在に使用されている。例えば、扁平視力矯正領域は、球面屈折矯正を必要としない患者にとってははっきり見える視力域であることが分かる。はっきり見える視力域12dと焦点ボケ領域14dはレンズ10dの光学域16dの境界を画定している。光学域16dは非光学周辺域18dによって包囲されており、かかる非光学周辺域18dはレンズ10dの光学域16dの外側外辺部から周端縁域20dまで延びている。同様に、第2レンズ10e(図2B)にははっきり見える視力域12eと焦点ボケ領域14eが設けられている。はっきり見える視力域12eと焦点ボケ領域14eはコンタクトレンズ10eの光学域16eの境界を画定している。光学域16eは非光学周辺域18eによって包囲されており、かかる非光学周辺域18eはレンズ10eの光学域16eの外側外辺部から周端縁域20eまで延びている。
【0071】
図2Aおよび図2Bにされている1揃いの2個のコンタクトレンズ10d、10eにおいては、はっきり見える視力域12dは中央の主領域22dを、はっきり見える視力域12eは中央の主領域22eを備えている。本件に記載されているように、主領域22d、22eは各々が遠屈折力を呈しており、この屈折力は同じ1揃いの中のもう一方のコンタクトレンズと同じである場合もあり、異なっている場合もある。代替例として、主領域22d、22eは各々が近屈折力を呈しており、この屈折力は同じ1揃いの中のもう一方のコンタクトレンズの近屈折力と同じである場合もあり、異なっている場合もある。主領域22dはレンズ10eの光学軸線24dの周囲で中央位置に配備されており、主領域22eはレンズ10e(図2B)の光学軸線24eの周囲で中央位置に配備されている。主領域22dと主領域22eは両方とも、円形または略円形であるものとして例示されている。本発明の方法においては、1揃いのコンタクトレンズ群のうちの少なくとも一方の主領域22の直径は2.0 mmよりも大きくなる場合がある。本発明のコンタクトレンズの光学域の直径が通例は約9.0 mmよりも小さいせいで、主領域(一方または複数)の最大径は9.0 mmよりも小さくなる。主領域それぞれの径が2.0 mmよりも大きいものと7.0 mmよりも小さいものになる場合がある。一実施例として、主領域それぞれの径は3.0 mmよりも大きいものと6.0 mmよりも小さいものになるようにしてもよい。
【0072】
一揃いのコンタクトレンズのうちの少なくとも一方の主領域22が遠屈折力を呈しているとともに直径が少なくとも2.3 mmであるようにしてもよい。同じ一揃いのコンタクトレンズの少なくとも一方の主領域22が遠屈折力を呈しているとともに直径が少なくとも2.5 mmになるようにしてもよい。同じ一揃いのコンタクトレンズの少なくとも一方の主領域22が遠屈折力を呈しているとともに直径が少なくとも3.3 mmになるようにしてもよい。同じ一揃いのコンタクトレンズの少なくとも一方の主領域22が遠屈折力を呈しているとともに直径が少なくとも4.0 mmになるようにしてもよい。
【0073】
同じ一揃いのコンタクトレンズの少なくとも一方の主領域22が近屈折力を呈しているとともに直径が少なくとも2.3 mmになるようにしてもよい。同じ一揃いのコンタクトレンズの少なくとも一方の主領域22が近屈折力を呈しているとともに直径が少なくとも2.5 mmになるようにしてもよい。同じ一揃いのコンタクトレンズの少なくとも一方の主領域22が近屈折力を呈しているとともに直径が少なくとも3.3 mmになるようにしてもよい。同じ一揃いのコンタクトレンズの少なくとも一方の主領域22が近屈折力を呈しているとともに直径が少なくとも4.0 mmになるようにしてもよい。
【0074】
図2Aに例示されているコンタクトレンズ10dは円形の主領域22dを包囲している環状域26dを備えており、図2Bに例示されているコンタクトレンズ10eは円形の主領域22eを包囲している環状域26eを備えている。環状域26d、26eは各々が単一屈折力の領域であり、光学機器を使って視認すると単一リングのように見えるようになっており、或いは、環状域は各々が複数の屈折力を呈しており、環状域26d、26eが個々に複数の二次リングを有しているように見えるようになっていてもよい。図2Aおよび図2Bに例示されている実施形態においては、レンズ10d(図2A)は環状域26d(図2B)を備えており、レンズ10eは環状域26eを備えているが、この場合、環状域26dは同心状に配置された複数の二次リング26f、26g、26hを備えており、必須要件として含んでおり、または、構成要素の一部として含んでおり、環状域26eは同心状に配置された複数の二次リング26i、26j、26kを備えており、必須要件として含んでおり、または、構成要素の一部として含んでいる。図2Aおよび図2Bのレンズ10dおよびレンズ10eでは、二次リングは互いに異なる直径、面積、直径と面積を呈しているように例示されている。従って、本発明の一揃いのコンタクトレンズ群においては、同じ一揃いのコンタクトレンズ群のうちの少なくとも1個が焦点ボケ領域を備えており、かかる焦点ボケ領域は、円形の主領域22に隣接しているとともにそこを包囲しているリング26fなどのような環状域である二次領域を備えており、有しており、必須要件として含んでおり、または、構成要素の一部として含んでいる。これに代わる例として、または、これに加えて、図2Aおよび図2Bに例示されているような一揃いのコンタクトレンズ群のうちの少なくとも1個は主領域22dを包囲している環状域26を備えており、かかる環状域は同心状に配備された複数の二次リング26f、26g、26hから構成されており、二次リング26fはコンタクトレンズの二次領域を含んでおり、二次リング26gはコンタクトレンズの三次領域を含んでおり、二次リング26hはコンタクトレンズの四次領域を含んでいる。図2Aおよび図2Bの例示の実施形態においては、レンズ10d(図2A)の二次領域は二次リング26hを含んでおり、かかる二次リングは近視焦点ボケ領域14dの一部である。
【0075】
図3Aから図3Dは、本発明の複数のレンズ組に従って本発明の方法を利用するものとして、複数組のコンタクトレンズの上記以外の実施形態を例示したものである。図3Aから図3Dにおいては、10個の個々のレンズ、すなわち、レンズ10f、レンズ10g、レンズ10h(以上、図3A)、レンズ10i、レンズ10j、レンズ10k(以上、図3B)、レンズ10l、レンズ10m(以上、図3C)、および、レンズ10n、レンズ10o(以上、図3D)が例示されている。これらの実施例では、レンズ10f、レンズ10g、レンズ10h(図3A)と、レンズ10i、レンズ10j、レンズ10k(図3B)とは各々の光学域が主領域、二次領域、三次領域、および、四次領域から構成されており、この場合、光学域は周辺域によって包囲されている。レンズ10lおよびレンズ10m(以上、図3C)は四次領域を備えていない。レンズ10nおよびレンズ10o(図3D)は三次領域または四次領域を備えていない。このような実施例では、主領域、二次領域、三次領域、および、四次領域の形状、寸法、広がり、および、位置は実質的に同一である(例えば、コンタクトレンズ10f、10g、10hは形状と寸法が類似している領域を含んでいる)。同様に、このような実施例では、レンズ10i、レンズ10j、レンズ10k(図3B)の主領域、二次領域、三次領域、および、四次領域の形状、寸法、広がり、および、位置は実質的に同一である(例えば、コンタクトレンズ10i、10j、10kは形状と寸法が類似している領域を含んでいる)。レンズ10f、レンズ10g、および、レンズ10h(図3A)は1組目のコンタクトレンズ群と定義され、レンズ10i、レンズ10j、および、レンズ10k(図3B)は2組目のコンタクトレンズ群と定義されるが、この場合、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズは1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズと比較して異なる光学設計を有している。特に、例示したように、中央域の直径は2組目のコンタクトレンズ群のほうが大きい。これに加えて、2組目のレンズの個々のリングは幅が1組目のレンズの対応するリングのものとは異なっている。同様に、レンズ10lおよびレンズ10m(図3C)とレンズ10nおよびレンズ10o(図3D)はもう1つ別な組のコンタクトレンズ群を表しており、上記の各組のコンタクトレンズ群と比べてリングの個数が異なっているうえに、光学域の寸法が異なっている。例示されているように、1個のコンタクトレンズのリングの数を変動させることにより、複数の互いに異なるレンズ組の間でコントラストの異なる像を生成することができるようになるとともに、より良好な視力向上を患者にもたらすことができるようになる。
【0076】
もう1つ別の実施形態においては、図3Aから図3Dに例示されているコンタクトレンズに関して、本発明による1組の少なくとも2個のコンタクトレンズからなるコンタクトレンズ群はレンズ10fおよびレンズ10iを含んでおり、かかる組の2個のレンズは各々が互いに異なるレンズ設計を有している。具体的にはかかる組の2個のレンズでは、この組のレンズ群はレンズ10gおよびレンズ10jを更に含んでおり、この場合、レンズ10gはレンズ10fの光学設計の実質上の複製レンズであり、レンズ10jはレンズ10iの光学設計の実質上の複製レンズである。この実施形態においては、レンズ10fとレンズ10g、および、レンズ10iとレンズ10jが実質上の正副対であるため、レンズ10fとレンズ10gとでそれぞれの主領域、二次領域、三次領域、および、四次領域が同じ機能を果たしており、また、レンズ10iとレンズ10jとでそれぞれの主領域、二次領域、三次領域、および、四次領域が同じ機能を果たしている(すなわち、はっきり見える視力域か焦点ボケ領域かという点で)。レンズ10fとレンズ10gとでそれぞれの主領域、二次領域、三次領域、および、四次領域が異なる機能を果たしており、また、レンズ10iとレンズ10jとでそれぞれの主領域、二次領域、三次領域、および、四次領域が異なる機能を果たしている(すなわち、はっきり見える視力域か焦点ボケ領域かという点で)図3Aから図3Dに例示されているレンズの更に別な実施形態として、同じ組のコンタクトレンズ群は、相互に異なるレンズ設計を有している4個の異なるレンズ10f、レンズ10g、レンズ10i、および、レンズ10jを含んでいる。図3Aから図3Dに例示されているレンズ群のもう1つ別な実施形態においては、1組のコンタクトレンズ群が4個のコンタクトレンズから成り、それらレンズ10fとレンズ10gそれぞれのはっきり見える視力域と焦点ボケ領域、および、レンズ10iとレンズ10jそれぞれのはっきり見える視力域と焦点ボケ領域が両方のレンズで同じ区域に配置されている(すなわち、主領域、二次領域、三次領域、および、四次領域)が、互いに異なる屈折率を示している。例えば、焦点ボケ領域は、レンズ10f、レンズ10g、レンズ10i、および、レンズ10jのそれぞれの二次領域であり、その場合、レンズ10fおよびレンズ10gの焦点ボケ領域の屈折力は互いに異なっており、レンズ10iおよびレンズ10jの焦点ボケ領域の屈折力も互いに異なっている。これに代わる例として、レンズ10f、レンズ10g、レンズ10h(図3A)と、レンズ10i、レンズ10j、レンズ10k(図3B)との間で、機能領域(はっきり見える視力域と焦点ボケ領域)、屈折力(はっきり見える視力域の屈折力と焦点ボケ領域の屈折力)、または、機能領域と屈折力の両方が異なっている実施形態では、かかる組のコンタクトレンズ群は一揃いで6個の個別のレンズ10f、レンズ10g、レンズ10h(以上、図3A)、レンズ10i、レンズ10j、レンズ10k(以上、図3B)を含んでいる。
【0077】
更に別な実施形態として、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズは第1非球面屈折力プロファイルを示し、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズは第1非球面屈折力プロファイルとは異なっている第2非球面屈折力プロファイルを示す。
【0078】
もう1つ別な実施形態として、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズも2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズも、複数の相互に異なる屈折力を有している領域と領域の間の遷移領域については互いに異なっているようにしてもよい。一例として、1組目のコンタクトレンズと2組目のコンタクトレンズは、同じ面積比を有する領域対を様々に異ならせることにより、異なる光学設計を有するようになる。
【0079】
更にまた別な実施形態として、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズは光学域の中心が第1屈折率を示しており、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズは光学域の中心が第2屈折率を示している。
【0080】
もう1つ別な実施形態として、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズは第1屈折力を有している領域と第2屈折力を有している領域との間の遷移領域が、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズに設けられている遷移領域と比較して異なっているようにしてもよい。
【0081】
更に別な実施形態においては、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第1屈折力のプロファイルが、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第1屈折力のプロファイルとは異なっている。これに加えて、または、これに代わる例として、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第2屈折力のプロファイルが、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第2屈折力のプロファイルとは異なっているようにしてもよい。
【0082】
また別な実施形態においては、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第2屈折力を示している各領域の焦点ボケの量が、1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第2屈折力を示している各領域の焦点ボケの量と比較して異なっている。
【0083】
更に別な実施形態においては、1組目のコンタクトレンズの多数の同心リングはそれぞれの屈折力が異なっているが、2組目のコンタクトレンズは1個の領域しか有していない。
【0084】
もう1つ別な実施形態においては、2組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズのレンズパラメータは1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズのものとは異なっている。例えば、異なる基準曲線、異なる厚さ、異なるレンズ径、または、これらの各種組合せにすることにより、患者の眼により良好に適合させ、患者の眼の中心により良好に位置決めし、または、その両方を実現することにより視力向上を図っている。
【0085】
本発明のコンタクトレンズは本件記載のように複数のレンズ組単位で供与することができるが、本発明の別な局面は、1個の梱包物中に複数組のコンタクトレンズ群が1組ごとに、または、複数組まとめて一緒に在るようにすることを目的としている。これら複数組のコンタクトレンズ群は二次梱包材の中に入れられ、かかる二次梱包材の中に本件で既に説明したように、個別梱包されたコンタクトレンズが包含されて供与されてもよい。レンズ組は、各組に含まれている個々のレンズごとについて特徴情報をリスト化したものを添えて供与され、かかる特徴情報のリストは各組のうちのどのレンズがコンタクトレンズ装着者に処方されたのかを判断するために使用される。一実施形態においては、組になったコンタクトレンズ群が第1レンズ中央域径および第2レンズ中央域径のリスト、第1レンズ面積比および第2レンズ面積比のリスト、または、これら両方のリストを更に含んでいる。また別な実施形態では、組になったコンタクトレンズ群は、第1コンタクトレンズおよび第2コンタクトレンズの各々に関連付けされたコンタクトレンズ装着者に提示する目的で、第1コンタクトレンズと第2コンタクトレンズの各々に関連付けされた大よその瞳寸法のリスト、所望の面積比のリスト、または、その両方のリストを更に含んでいる。
【0086】
本件開示は或る特定の実施形態について言及したものであるが、これらの実施形態は具体例として提示されてものにすぎず、限定するものではないと理解するべきである。前段までの詳細な説明の意図は、具体的な実施形態を説明してはいるが、これら実施形態の変更例、代替例、および、均等物の全ても網羅して、添付の特許請求の範囲に規定されているような本発明の真髄および範囲に入るようにしたものと解釈するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の近視または遠視の進行を遅鈍させる方法であって、
第1組のコンタクトレンズ群と第2組のコンタクトレンズ群を含んでいるコンタクトレンズ群について、患者の眼のパラメータ、第1組のコンタクトレンズ群のうちの或るコンタクトレンズに対する患者の反応、眼用レンズを利用した眼の測定値、または、これらの各種組合せに基づいて、第2組のコンタクトレンズ群から別なコンタクトレンズを専門家が選択することで、第1組のコンタクトレンズ群により供与される患者の視認性能と比較してより向上した視認性能を第2組から選択されたコンタクトレンズを装着している患者にもたらすことができるようにして、コンタクトレンズ群を供与する工程を含んでおり、
第1組のコンタクトレンズ群は少なくとも2個のコンタクトレンズを含んでおり、2個のコンタクトレンズは各々が第1屈折力および第2屈折力を有しており、患者の眼にコンタクトレンズが設置されている場合、第2屈折力は遠近両方の視距離で患者に焦点ボケした網膜像をもたらし、
第2組のコンタクトレンズ群は少なくとも2個のコンタクトレンズを含んでおり、2個のコンタクトレンズは各々が第1屈折力および第2屈折力を有しており、患者の眼にコンタクトレンズが設置されて患者の近視または遠視の進行を遅鈍させる実効性を示している場合、第2屈折力は遠近両方の視距離で患者に焦点ボケした網膜像をもたらし、第2組のコンタクトレンズ群は第1組のコンタクトレンズ群とは異なる光学設計を有していることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記供与する工程は、コンタクトレンズをコンタクトレンズ製造業者からコンタクトレンズ配給業者に供給すること、コンタクトレンズをコンタクトレンズ製造業者からコンタクトレンズ小売業者に配給すること、コンタクトレンズをコンタクトレンズ製造業者からアイケアの従事者に提供すること、または、これらの各種組合せを実施することを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者が自身の眼にコンタクトレンズを設置するように、コンタクトレンズを患者に用意することを更に含んでいる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2組のコンタクトレンズ群を患者に処方することを更に含んでいる、請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第2組のコンタクトレンズ群からコンタクトレンズを選択するにあたり、患者の遠方屈折誤差の度合、患者の瞳寸法、患者の視力、患者の眼調節ラグ、患者の固視ずれ、患者の斜位、患者の眼球波面収差プロファイル、患者のレンズ適合具合、または、これらの各種組合せに基づいて行われることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第2組のコンタクトレンズ群により供与される向上した視認性能の具体例としては、より良好な視力、より良好な目視能、より良好な視認品質、前記第1組のコンタクトレンズを装着している場合には近視または遠視の進行の十分な遅鈍を示していなかった患者の近視または遠視の進行のより良好な遅鈍、患者の眼とそこに設置されているコンタクトレンズにより示される向上した波面収差プロファイル、または、これらの各種組合せが挙げられることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記向上した視認品質の具体例としては、多重像の緩和、コントラスト目視能の増大、光源周辺の眩輝の低減、または、これらの何らかの組合せが挙げられることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
患者の眼のパラメータに基づいて前記第2組のコンタクトレンズ群からコンタクトレンズを専門家が選択することでコンタクトレンズ群が供与され、眼のパラメータは前記第1組のコンタクトレンズを装着する前に測定されるか、または、前記第1組のコンタクトレンズを装着した後で測定されることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記1組目のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズを少なくとも約10分は装着した後で、前記1組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズに対する患者の反応に基づいて専門家が前記第2組のコンタクトレンズ群から別なコンタクトレンズを選択することができるようにしてコンタクトレンズ群が供与されることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
患者の前記反応は、前記第1組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズを少なくとも6カ月は装着した後で測定される反応であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
患者の前記反応の具体例としては、眼調節反応、眼球軸伸長測定、屈折誤差矯正の進行測定、周辺屈折測定、または、これらの各種組合せが挙げられることを特徴とする、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
患者の前記反応は、片目のみについて測定され、両目について片側ずつ測定され、または、両目で同時に測定されることを特徴とする、請求項9から請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第1組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第2屈折力が第1焦点ボケ領域を規定し、前記第2組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第2屈折力が第2焦点ボケ領域を規定し、更に、第1焦点ボケ領域と比較して、第2焦点ボケ領域はコンタクトレンズの異なる位置にあり、異なる寸法を有しており、異なる形状を呈しており、異なるジオプター値を示しており、その焦点ボケ領域の個数が異なっており、または、これらが各種組合わさった状態を呈していることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記第1組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第1屈折力は第1視力矯正領域を規定し、前記第1組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第2屈折力が第1焦点ボケ領域を規定し、前記第2組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第1屈折力は第2視力矯正領域を規定し、前記第2組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの第2屈折力が第2焦点ボケ領域を規定しており、更に、前記第2組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズは、第2視力矯正領域の第2焦点ボケ領域に対する面積比が、第1視力矯正領域の第1焦点ボケ領域に対する面積比とは異なっていることを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記第1組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズと前記2組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの各々が光学軸線を有しており、コンタクトレンズは各々が、(i)光学軸線が通っており、第1屈折力を供与しているとともに、中央域径を呈している中央域と、(ii)中央域に隣接しているとともに中央域を包囲しており、第2屈折力を供与している環状域とを備えており、
前記第2組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの中央域径は、前記第1組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズの中央域径よりも短いことを特徴とする、請求項1から請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記第1組のコンタクトレンズ群は少なくとも2個の同一のコンタクトレンズ含んでいるか、または、前記第2組のコンタクトレンズ群は少なくとも2個の同一のコンタクトレンズを含んでいるか、もしくは、その両方が真であることを特徴とする、請求項1から請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記第2組のコンタクトレンズ群からコンタクトレンズを選択するにあたり、患者の高コントラスト目視能の変化または低コントラスト目視能の変化が少なくとも0.05 logMARであることに基づいて行われることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記第1組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズ、または、前記第2組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズ、または、これらのコンタクトレンズの組合せが、患者の眼の中心視軸線に沿って焦点ボケをもたらすことを特徴とする、請求項1から請求項17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記第1組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズ、または、前記第2組のコンタクトレンズ群のコンタクトレンズ、または、これらのコンタクトレンズの組合せが、患者の眼の網膜の中心窩の周辺の位置で焦点ボケをもたらすことを特徴とする、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公表番号】特表2013−501963(P2013−501963A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524708(P2012−524708)
【出願日】平成22年5月3日(2010.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/033416
【国際公開番号】WO2011/049642
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508316416)クーパーヴィジョン インターナショナル ホウルディング カンパニー リミテッド パートナーシップ (13)
【Fターム(参考)】