説明

送り螺子機構

【課題】螺子軸を短縮化でき、軽量、低コストで、かつ、省スペースな送り螺子機構を提供することである。
【解決手段】外周側に台形螺子山4を備えた螺子軸2と、螺子軸2に螺合される螺子ナット6と、螺子軸2の回転を抑制するスプライン10とを備えた送り螺子機構1において、スプライン10は、台形螺子山4の頂部4aに設けられるとともに軸方向に沿って並べて配置されて列を成す切欠5と、螺子軸2の外周に摺接するとともに切欠5内へ侵入する凸部11bを備えたスプラインナット11とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送り螺子機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種送り螺子機構は、たとえば、アクチュエータ等に具現化され、モータの回転運動を直線運動に変換する際に用いられている。具体的には、外周側に台形螺子山を備えた螺子軸と、螺子軸に螺合される螺子ナットとを備えており、螺子ナットをモータ等によって回転駆動すると、螺子軸が軸方向に直線駆動されるようになっている。
【0003】
このような送り螺子機構にあっては、螺子ナットを回転駆動することによって螺子軸を直線駆動させるが、螺子軸が螺子ナットとともに共回りしてしまうと螺子軸を直線駆動させることができないので、螺子軸の回転を防止する必要がある。
【0004】
そして、螺子軸の回転を防止するために、従来の送り螺子機構では、螺子軸の台形螺子山を避ける位置、具体的には、螺子軸の一端の外周に軸方向に沿うスプライン溝を形成して、当該スプライン溝に嵌合するスプラインナットを設けている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平07−285449号公報(図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の送り螺子機構にあっては、螺子軸の外周の異なる位置に台形螺子山とスプライン溝と別々に有しており、螺子ナットは、螺子軸の外周に装着されるスプラインナットから離れた位置に螺合されている。
【0006】
ここで、螺子軸を軸方向にストロークさせることを考えた場合、図6に示すように、螺子軸20の長さは、螺子ナット21およびスプラインナット22の長さおよびストローク長2Lに螺子ナット21とスプラインナット22との間の距離に等しい長さdを重畳した長さに設定しなくてはならず、螺子軸20における螺子ナット21とスプラインナット22との間の距離dに等しい長さは螺子軸20のストローク長に貢献しない無駄長さとなる。
【0007】
すなわち、従来の送り螺子機構にあっては、螺子ナット21とスプラインナット22とが螺子軸20上に離れて装着されているので、その分、無駄に螺子軸20の長さを確保しなくてならず、送り螺子機構の重量が嵩み、コスト高であり、加えて、螺子ナット21およびスプラインナット22を保持する筐体も大型となって無駄にスペースを消費していた。
【0008】
そこで、本発明は、上記の不具合を勘案して創案されたものであって、その目的とするところは、螺子軸を短縮でき、軽量、低コストで、かつ、省スペースな送り螺子機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、外周側に台形螺子山を備えた螺子軸と、螺子軸に螺合される螺子ナットと、螺子軸の回転を抑制するスプラインとを備えた送り螺子機構において、スプラインは、台形螺子山の頂部に設けられるとともに軸方向に沿って並べて配置されて列を成す切欠と、螺子軸の外周に摺接するとともに切欠内へ侵入する凸部を備えたスプラインナットとを備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の送り螺子機構によれば、螺子ナットが干渉しない切欠と、切欠に符合する凸部を備えたスプラインナットとでスプラインを構成して、螺子軸の外周に螺子ナットの螺合用の台形螺子溝とスプライン用の切欠とを共存させることができるので、螺子ナットとスプラインナットとを螺子軸上の至近に配置させることができる。
【0011】
すなわち、螺子ナットとスプラインナットとの間の距離を短く設定することができ、その分、螺子軸のストロークに寄与しない無駄部分を省いて螺子軸の長さを短縮することができる。
【0012】
したがって、送り螺子機構におけるストローク長を確保しつつ螺子軸の長さを短く設定することが可能であるので、送り螺子機構の重量を軽量にすることができるとともに、コストも低減でき、加えて、送り螺子機構を省スペース化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、一実施の形態における送り螺子機構の斜視図である。図2は、一実施の形態における送り螺子機構の螺子軸の側面図である。図3は、一実施の形態における送り螺子機構の螺子軸の断面図である。図4は、一実施の形態における送り螺子機構の螺子ナットの断面図である。図5は、一実施の形態における送り螺子機構のスプラインナットの平面図である。
【0014】
図1に示すように、一実施の形態における送り螺子機構1は、外周側に台形螺子山4を備えた螺子軸2と、螺子軸2に形成した台形螺子山4に螺合される螺子ナット6と、螺子軸2の回転を抑制するスプライン10とを備えて構成されている。
【0015】
また、スプライン10は、台形螺子山4の頂部4aに設けられた切欠5と、螺子軸2の外周に摺接するとともに切欠5内へ侵入する凸部11bを備えたスプラインナット11とを備えて構成されている。
【0016】
以下、詳細に説明すると、螺子軸2は、図1から図3に示すように、円柱状に形成されるとともに、その外周に螺旋状の台形螺子山4が設けられ、台形螺子山4間に台形螺子溝3が形成されている。さらに、この台形螺子山4の外周である頂部4aには、螺子軸2の軸線に沿って、すなわち、螺子軸2の直線運動方向に沿って、並べて配置されて列を形成する切欠5が、図示するところでは、螺子軸2の軸回りに等間隔をもって六列設けられている。また、切欠5は、台形螺子山4間の台形螺子溝3の底部に干渉しない台形螺子山4の頂部4aに設けられており、台形螺子山4の中間から頂部4aにかけて切り取ってできる形状とされ、切欠5の列の数および形状は、任意とされてよい。
【0017】
螺子ナット6は、図1および図4に示すように、筒体6aの内周に設けた螺子軸2の台形螺子溝3内に進入する螺旋状の台形螺子山6bと、台形螺子山6b間に形成されて螺子軸2の台形螺子山4の侵入を許容する台形螺子溝6cとを備えて構成されている。
【0018】
つづき、螺子軸2の回り止めとして機能するスプライン10におけるスプラインナット11は、図1および図5に示すように、螺子軸2の外周となる台形螺子山4の外周に摺接する筒体11aと、筒体11aの内周に設けられて切欠5内へ侵入する凸部11bとを備えて構成され、凸部11bは、切欠5の形状、詳しくは切欠5を軸方向から見た形状に符合する形状とされており、切欠5の列数と同数である6つ設けられている。
【0019】
したがって、スプラインナット11内に螺子軸2を挿入すると、螺子軸2の台形螺子山4の頂部4aに形成された各切欠5内にスプラインナット11の各凸部11bが侵入して、螺子軸2の周方向への回転が規制される。そして、螺子ナット6を螺子軸2に螺合させて、螺子ナット6をモータ等によって回転駆動すると、螺子軸2はスプライン10によって回転が規制されるので軸方向の直線運動を呈することになる。
【0020】
そして、この送り螺子機構1にあっては、螺子ナット6の台形螺子溝6bが干渉しない切欠5と、切欠5に符合する凸部11bを備えたスプラインナット11とでスプライン10を構成しているので、螺子軸2の直線運動時において騒音や振動を生じさせることが無く、送り螺子機構1の劣化を促進させてしまうことも無い。
【0021】
このように、螺子軸2の外周に螺子ナット6の螺合用の台形螺子山4とスプライン10用の切欠5とを共存させることができるので、騒音および振動の発生を防止しつつ、螺子ナット6とスプラインナット11とを螺子軸2上の至近に配置させることができる。
【0022】
すなわち、図1に示したように、螺子ナット6とスプラインナット11との間の距離hを短く設定することが可能となり、その分、螺子軸2のストロークに寄与しない無駄部分を省くことができるので、螺子軸2の長さを短縮することができる。
【0023】
したがって、送り螺子機構1におけるストローク長を確保しつつ螺子軸2の長さを短く設定することが可能であるので、送り螺子機構1の重量を軽量にすることができるとともに、コストも低減でき、加えて、送り螺子機構1を省スペース化することができる。
【0024】
さらに、螺子軸2の螺子ナット6とスプラインナット11との間に位置する部分は、螺子ナット6の回転駆動によって捩れが生じる部分であり、距離hが短くなればなるほど、捩れが生じる部分が短くなることになる。
【0025】
ここで、上記螺子軸2は、捩れによってバネ要素としても機能することから、捩れる区間が長くなるほど、螺子ナット6の回転に対する螺子軸2の直線運動の応答に時間がかかることになるが、上記したように、螺子ナット6とスプラインナット11とを至近に配置することで螺子軸2の捩れる区間を短くすることができるので、送り螺子機構1における直線運動の応答性が向上する。
【0026】
なお、台形螺子山4の頂部4aから台形螺子溝3の底部に達するようにスプライン用の切欠を設けてもよいが、本実施の形態のように切欠5が台形螺子山4間の台形螺子溝3の底部に干渉しない台形螺子山4の頂部4aに設けられることにより台形螺子山4の著しい強度低下を招かない点で有利となる。
【0027】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一実施の形態における送り螺子機構の側面図である。
【図2】一実施の形態における送り螺子機構の螺子軸の側面図である。
【図3】一実施の形態における送り螺子機構の螺子軸の断面図である。
【図4】一実施の形態における送り螺子機構の螺子ナットの断面図である。
【図5】一実施の形態における送り螺子機構のスプラインナットの平面図である。
【図6】従来の送り螺子機構の側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 送り螺子機構
2 螺子軸
3 台形螺子溝
4 台形螺子山
4a 台形螺子山における頂部
5 切欠
6 螺子ナット
6a 螺子ナットにおける筒体
6b 螺子ナットにおける台形螺子山
6c 螺子ナットにおける台形螺子溝
10 スプライン
11 スプラインナット
11a スプラインナットにおける筒体
11b スプラインナットにおける凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側に台形螺子山を備えた螺子軸と、螺子軸に螺合される螺子ナットと、螺子軸の回転を抑制するスプラインとを備えた送り螺子機構において、スプラインは、台形螺子山に設けられるとともに軸方向に沿って並べて配置されて列を成す切欠と、螺子軸の外周に摺接するとともに切欠内へ侵入する凸部を備えたスプラインナットとを備えてなることを特徴とする送り螺子機構。
【請求項2】
切欠は、台形螺子山間の台形螺子溝の底部に干渉しない台形螺子山の頂部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の送り螺子機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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