説明

送電線絶縁カバーおよびカバー取付工具

【課題】送電線への取付作業が容易かつ送電線の腐食を防ぐことができ、しかも、送電線と外部との間の絶縁性を高く維持することができる送電線絶縁カバーを提供することを目的とする。
【解決手段】送電線に取り付けられるカバーであって、筒状であって、その下端に軸方向に沿って連続する開口2aを有する本体部2と、本体部2の外面に設けられた複数の突起5を備えており、本体部2の開口2aは、カバーを送電線に取り付けた状態において、開口2aを形成する一対の端縁間に隙間が維持されるように形成されており、複数の突起5は、本体部2の中心軸2cを含み、かつ、本体部2の開口2aを通過する面である中心面1sの両側に、それぞれ設けられており、各突起5は、その全体が、上端が本体部2の上端よりも下方に位置するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線絶縁カバーおよびカバー取付工具に関する。さらに詳しくは、超高圧送電線における鳥害による地絡などを防ぐために使用される送電線絶縁カバーおよびカバー取付工具に関する。
【背景技術】
【0002】
架空送電線では、送電線Wが鉄塔T等の間に張られており、鉄塔T等の部分では、送電線Wと鉄塔T等との間の地絡を防ぐために、碍子Gを介して、鉄塔T等と送電線Wとの間が所定の距離を維持するように保持されている(図2参照)。
なお、図2に示すように、送電線Wは、一対の碍子G,Gによって保持されており、その一対の碍子G,G間の部分はジャンパ線Jと呼ばれる。
【0003】
しかるに、鉄塔T等には、鳥(主にカラス)が巣を設ける場合が多々あり、巣の形成に使用する材料が原因となって送電線Wと鉄塔部材との間で地絡故障が発生する場合がある。具体的には、鉄塔T等において送電線Wよりも上方の部分に巣が形成されると、その巣の材料が巣から下方に垂れ下がる場合があり、かかる材料が送電線Wに接触すると、この材料を介して鉄塔Tと送電線Wとの間で地絡が生じるのである。とくに、送電線Wのジャンパ線Jは鉄塔Tを構成する部材との距離が最も近くなるので、地絡が生じやすい。
【0004】
かかる地絡を防ぐ方法として、ジャンパ線Jにカバー等を取り付ける方法がある。この場合、カバーは、巣の材料とジャンパ線とが直接接触することを防ぐとともに、両者間の絶縁性を維持することができる形状とすることが必要である。
【0005】
上記のごとき機能を満たすカバーとして、比較的電圧の低い配電線(6,000ボルト程度)につけるカバーが種々開発されている(例えば、特許文献1、2)。
これらの技術では、配電線の周囲にシート状のカバーを巻きつけてカバーによって配電線を密封し、配電線を外部から絶縁する構造としている。
【0006】
しかるに、特許文献1、2のカバーを6万ボルト以上の高電圧である送電線Wに使用する場合、送電を継続したままでは取り付け作業を行うことができない。なぜなら、比較的電圧の低い配電線であれば、絶縁服や絶縁手袋を身に付けた作業者がカバーを直接手に持って直接カバーを配電線に巻きつける作業を行うことができるが、6万ボルト以上の高電圧である送電線Wでは、作業者がカバーを直接手に持って送電線Wに取り付ける作業を行うことは不可能だからである。その理由は、6万ボルト以上の高電圧であれば、絶縁服や絶縁手袋を身に付けても、送電線Wと作業者との距離がある程度以下になれば、地絡を防ぐことができないからである。
【0007】
上記の事情もあり、現状では、送電線Wにカバー取り付ける作業は、送電を止めた状態で行われるのが一般的であり、カバー取り付け作業のために様々な調整等を行わなければ成らず、非常に大変な作業となっている。
【0008】
作業者が絶縁服や絶縁手袋を身に付けた上で、作業者は送電線Wからある程度以上(数m以上)離れた位置から長尺な工具を使用して作業を行えば、送電を止めなくても送電線Wにカバーを取り付ける作業を行うことは可能である。
しかし、長尺な工具を使用して行う作業であり、しかも、送電線Wは非常に高い位置に設けられているので、作業者は動きが極度に制限された場所で作業をしなければならない。
よって、送電を継続した状態で、特許文献1、2に記載のカバーを送電線Wに巻きつけることは、実質的に不可能である。
【0009】
上記のごとき状況でも、かかる高電圧の送電線Wに取り付けることができるカバーが、特許文献3、4に記載されている。
特許文献3、4に記載されているカバーは、筒状のカバーの一部に、その軸方向に沿って開口が設けられたものであり、開口を開いてこの開口を送電線Wに被せるようにすることによってカバーを送電線Wに取り付けることができる。このため、特許文献3、4のカバーであれば、作業者は、送電線Wからある程度以上離れた位置から長尺な工具を使用しても、カバーを送電線Wに取り付ける作業を行うことができる。つまり、特許文献3、4に記載されているカバーを使用すれば、送電を止めなくても、カバー取り付け作業を行うことが可能である。
【0010】
ところで、送電線Wに取り付けたカバーは、その開口が塞がれ、外部と内部との間を遮断するように設けられていても、カバーの軸方向の端部と送電線Wとの間を完全に密封することはできない。具体的には、カバーの軸方向の端部と送電線Wとの間から水がカバー内に浸入してしまう。送電線Wは、その高電圧のため裸電線が用いられており、カバー内に水が浸入すると、その水によって送電線Wが腐食する可能性がある。送電線Wが腐食すると、腐食した部分を交換する作業が必要であるが、送電線Wは一続きのワイヤーであり、その交換作業は非常に大変かつ困難なものであるため、かかる送電線Wの腐食は避けなければならない。
【0011】
しかるに、特許文献3、4のカバーは、特許文献1、2のカバーと同様に、送電線Wを外部から密封することによって送電線Wの地絡を防ぐものであり、特許文献3、4のカバーを送電線Wに取り付けると、その開口が塞がれ、カバーの内部と外部との間を密封するような構造に形成されている。つまり、筒状のカバー内に送電線Wを密封する構造となっているので、カバー内に侵入した水を排出しにくくなっている。カバーに水抜き孔を設ければ、カバー内に浸入した水をある程度は抜くことができるものの、完全に水を抜くことは難しい。
よって、特許文献3、4のカバーでは、送電を止めなくてもカバー取り付け作業を行うことはできるが、送電線Wの腐食を防ぐことが難しい。
【0012】
現在のところ、送電線Wへの取り付けが容易でありながら、しかも、送電線Wの腐食を防ぐことができる送電線用のカバーは開発されておらず、かかるカバーが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−298838号公報
【特許文献2】特開2007−14123号公報
【特許文献3】特開2009−17689号公報
【特許文献4】特開2009−219326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事情に鑑み、送電線への取付作業が容易であり、かつ、水の滞留およびこの滞留による送電線の腐食を防ぐことができ、しかも、送電線と外部との間の絶縁性を高く維持することができる送電線絶縁カバーを提供することを目的とする。
また、本発明は、上記送電線絶縁カバーを送電線に容易に取り付けることができるカバー取付工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(送電線絶縁カバー)
第1発明の送電線絶縁カバーは、送電線に取り付けられるカバーであって、筒状であって、その下端に軸方向に沿って連続する開口を有する本体部と、前記本体部の外面に設けられた複数の突起を備えており、前記本体部は、前記開口を形成する一対の端縁が、前記カバーを送電線に取り付けた状態において、外部と連通される連通通路が形成される構造を有しており、前記複数の突起は、前記本体部の中心軸を含み、かつ、該本体部の開口を通過する面である中心面の両側に、それぞれ設けられており、各突起は、その全体が、上端が前記本体部の上端よりも下方に位置するように形成されていることを特徴とする。
第2発明の送電線絶縁カバーは、第1発明において、前記本体部の開口は、前記カバーを送電線に取り付けた状態において、該開口を形成する一対の端縁間に隙間が維持されるように形成されていることを特徴とする。
第3発明の送電線絶縁カバーは、第1または第2発明において、前記本体部には、その開口における一対の端縁から下方に延設された一対の延設片を備えていることを特徴とする。
(カバー取付工具)
第4発明のカバー取付工具は、筒状であってその軸方向に沿って連続する開口が形成された筒状部材と、該筒状部材の中心軸を含みかつ該筒状部材の開口を通過する面である中心面を挟んで両側に突起を有するカバーを送電線に着脱するために使用する工具であって、作業者が保持する棒状部材の先端が取り付けられるベースと、該ベースに設けられた一対の揺動片と、前記ベースにおける、互いに接近離間する方向に揺動可能な前記一対の揺動片間に設けられた、該一対の揺動片間で進退可能に設けられた押圧部材とを備えており、前記一対の揺動片は、互いに対向する面に、前記カバーの突起に係合し得るフック部を備えていることを特徴とする。
第5発明のカバー取付工具は、第4発明において、前記押圧部材を前記一対の揺動片間で進退させる進退機構を備えており、該進退機構は、前記棒状部材を回転させると、その回転によって前記押圧部材を進退させるものであることを特徴とする。
第6発明のカバー取付工具は、第4または第5発明において、前記カバーが、第1発明の送電線絶縁カバーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
(送電線絶縁カバー)
第1発明によれば、開口を開いて送電線に被せれば、本体部によって送電線を覆った状態で、送電線をカバーに取り付けることができる。また、本体部は、開口を形成する一対の端縁が、カバーを送電線に取り付けた状態において、外部と連通される連通通路が形成される構造を有している。よって、送電線をつたって水が本体部内に入っても、その水を本体部内から連通通路を通して確実に排水することができるから、カバー内への水の滞留やこの滞留に起因する送電線の腐食も防ぐことができる。さらに、本体部の外面には複数の突起が取り付けられており、その突起が本体部の上端よりも下方に位置している。すると、カバー上部に巣の材料が接触しても、巣の材料が接触した部分から本体部内に位置する送電線までの距離(以下、沿面距離という)を十分に取ることができる。よって、カバーに巣の材料が接触しても、この材料を介した送電線と鉄塔等との地絡が生じることを防ぐことができる。
第2発明によれば、本体部は、カバーを送電線に取り付けた状態において、開口を形成する一対の端縁間に隙間が維持されるように形成されているので、本体部内に入った水を本体部内から確実に排水することができる。そして、本体部に特別な排水手段を設けなくてもよいので、本体部の構造が簡単になる。
第3発明によれば、一対の延設片の分だけ、本体部表面と送電線との沿面距離をさらに長くすることができる。また、本体部の開口を開いたときに、一対の延設片同士の間も離間するが、その一対の延設片の下端間の距離は本体部の開口に形成される隙間より長くなるので、送電線を本体部の貫通孔に入れる作業が行いやすくなる。
(カバー取付工具)
第4発明によれば、カバーにおける筒状部材を、その開口と反対側の部分がベースに設けられている押圧部材の下方に位置するように配置すれば、一対の揺動片のフック部を、中心面を挟んで両側に設けられている突起にそれぞれ係合させることができる。この状態で、押圧部材の下方に(つまり、カバーに向けて)移動させれば、一対の揺動片が互いに離間するように揺動して筒状部材の開口を開かせることができる。また、押圧部材を上方に移動させれば、筒状部材の開口が閉じることができるし、一対の揺動片のフック部を突起から離脱させることもできる。つまり、一対の揺動片のフック部の係合離脱と、押圧部材の移動だけで、カバーの保持解放、また、筒状部材の開口の開閉を行うことができる。よって、高所において、棒状部材の先端に工具を取り付けて送電線にカバーの取り付ける作業を行っても、その作業を簡単かつ確実に、そして安全に行うことができる。
第5発明によれば、棒状部材を回転させるだけで押圧部材を進退させることができるので、カバーの開口を開かせる作業が容易になる。また、工具の構造を簡素化できるので、工具を軽量化でき、高所での作業性をより一層向上することができる。
第6発明によれば、第1発明の送電線絶縁カバーの取り付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は本実施形態の送電線絶縁カバー1を軸方向から見た概略説明図であり、(B)は図1の送電線絶縁カバー1を側方から見た概略部分断面図である。
【図2】(A)は送電線Wを取り付けている鉄塔Tの概略説明図であり、(B)は要部拡大図である。
【図3】本実施形態のカバー取付工具20の概略説明図であり、(A)は正面図であり、(B)は側面図である。
【図4】本実施形態のカバー取付工具20をカバー1に取り付ける状況の概略説明図である。
【図5】本実施形態のカバー取付工具20によって送電線Wにカバー1を取り付ける作業の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の送電線絶縁カバーは、鉄塔間に架設される送電線に取り付けられるカバーであって、鉄塔等と送電線との地絡を防ぐことができるものである。
とくに、本発明の送電線絶縁カバーは、6万ボルト以上の非常に高い電圧の電力を送電する裸電線からなる送電線において、この送電線を鉄塔に取り付ける一対の碍子間に位置するジャンパ線に取り付けるカバーに適したものである。
【0019】
(送電線絶縁カバー)
図1に示すように、本実施形態の送電線絶縁カバー1は、軸方向(図1(B)および図2では左右方向)に沿って延びた長尺な部材である。
具体的には、本実施形態の送電線絶縁カバー1は、その軸方向の長さは、1.5m程度に形成されているが、その長さはとくに限定されず、送電線絶縁カバー1が取り付けられるジャンパ線Jの長さよりもわずかに短ければよい。
なお、本実施形態の送電線絶縁カバー1の素材は、絶縁性を有しかつある程度の柔軟性を有する材料であればとくに限定されず、例えば、シリコーンゴムやEPDM、絶縁性のプラスチック類などを使用することができるが、これらに限定されないのは、いうまでもない。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の送電線絶縁カバー1は、筒状の本体部2と、この本体部2に設けられた一対の延設片3A,3Bと、本体部2の表面に設けられた複数の突起5A,5Bとを備えている。そして、送電線絶縁カバー1は、その断面形状が、本体部2の中心軸2cを含み、かつ、本体部2の開口2aの中央部を通過する面(以下、中心面1s)に対して対称であり、しかも、本体部2は、その重心が、後述するように、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jに取り付けたときに、このジャンパ線Jよりも下方に位置するように形成されている。
【0021】
なお、本実施形態の送電線絶縁カバー1は、必ずしも中心面1sに対して対称でなくてもよいが、その場合でも、その重心が、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jに取り付けたときに、このジャンパ線Jよりも下方に位置するように形成されていることが好ましい。
すると、送電線絶縁カバー1を、その本体部2の開口2aが常に下方を向いた状態としておくことができるし、風などを受けても送電線絶縁カバー1が回転しにくくなり、送電線絶縁カバー1がジャンパ線Jから脱落する等の問題が生じることを防ぐことができる。
【0022】
図1および図2に示すように、送電線絶縁カバー1の本体部2は、略筒状に形成されており、その軸方向を貫通する貫通孔2hを備えている。この本体部2の貫通孔2hは、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jに取り付けたときに、ジャンパ線Jを収容するための空間である。
【0023】
なお、本体部2の貫通孔2hの形状はとくに限定されず、例えば、円形でも四角形でもよく、とくに限定されない。
また、本体部2の貫通孔2hの大きさもとくに限定されず、ジャンパ線Jを内部に収容することができる程度の大きさであれなよい。例えば、本体部2の貫通孔2hの断面形状が円形の場合には、一般的なジャンパ線Jの素線径が約10〜25mmであれば、貫通孔2hの内径は約30mmであればよい。そして、本体部2の厚さは、貫通孔2h内のジャンパ線Jと本体部2の外面との間で、絶縁破壊しない程度の厚さであればよい。
【0024】
図1に示すように、本体部2には、その下端においてその軸方向に沿って連続した開口2aを備えている。この開口2aは、開口2aを形成する一対の端縁間の距離Dが数mm〜数cm程度となるように形成されている。つまり、本体部2は、とくに開口2aを閉じるように力を加えなければ、開口2aは常に開いた状態となるように形成されているのである。
なお、開口2aが常に開いた状態となるように本体部2を形成する理由は後述する。
【0025】
図1に示すように、開口2aを形成する一対の端縁には、それぞれ一対の延設片3A,3Bが接続されている。この一対の延設片3A,3Bは、本体部2の軸方向に沿って延びた略板状の部材であり、上端が開口2aを形成する一対の端縁に接続されている。
【0026】
また、図1に示すように、本体部2の外面には、複数の突起5A,5Bが設けられている。この複数の突起5A,5Bも、軸方向に沿って延びた略板状の部材であり、その基端が本体部2の外面に連結されている。
この複数の突起5A,5Bは、中心面1sを挟んで両側にそれぞれ設けられている。つまり、図1では、突起5Aは中心面1sに対して向かって右側、突起5Bは中心面1sに対して向かって左側、にそれぞれ設けられている。
しかも、複数の突起5A,5Bは、いずれも、その全体が本体部2の上端よりも下方に位置するように設けられている。
【0027】
(送電線絶縁カバー1の取り付け作業)
以上のごとき形状を有する本実施形態の送電線絶縁カバー1は、以下のごとき方法によってジャンパ線Jに取り付けることができる。
【0028】
まず、送電線絶縁カバー1の複数の突起5A,5Bをそれぞれ上方に持ち上げて、本体部2の開口2aが開くようにする。つまり、本体部2の開口2aにおける端縁間の距離Dが、通常の状態(複数の突起5A,5Bにこれらを持ち上げるように力を加えていない状態(図1(A)参照))に比べて広くなるようにする(図4(B)参照)。
なお、本体部2の開口2aが開くようにすると、一対の延設片3A,3Bもその下端同士が離間し、下端間の距離が大きくなるように移動する(図4(B)参照)。
【0029】
ついで、上記状態とした送電線絶縁カバー1を、この送電線絶縁カバー1を取り付けるジャンパ線Jの上方に配置し(図5(A)参照)、ジャンパ線Jの上方から送電線絶縁カバー1に被せる。すると、ジャンパ線Jは、一対の延設片3A,3Bの間を通り、本体部2の開口2aから本体部2の貫通孔2h内に収容される。
そして、送電線絶縁カバー1の複数の突起5A,5Bを元の状態に戻すと、ジャンパ線Jを本体部2の貫通孔2h内に収容した状態で、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jに取り付けることができる。言い換えれば、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jに吊り下げた状態とすることができるのである(図5(B)参照)。
【0030】
(送電線絶縁カバー1の作用効果)
以上のごとく、本実施形態の送電線絶縁カバー1では、本体部2の開口2aを開いてジャンパ線Jに被せれば、本体部2によってジャンパ線Jを覆った状態で、ジャンパ線Jに送電線絶縁カバー1を取り付けることができる。よって、ジャンパ線Jへの送電線絶縁カバー1の取り付けを簡単にかつ短時間で行うことができる。
【0031】
そして、本体部2には、中心面1sの両側に複数の突起5A,5Bが設けられており、その突起5A,5B全体が本体部2の上端よりも下方に位置している。このため、送電線絶縁カバー1の上部、つまり、本体部2の上部に巣の材料が接触しても、巣の材料が接触した部分(営巣材接触部)から本体部2内に位置するジャンパ線Jまでの距離(以下、沿面距離という)を十分に取ることができる。
【0032】
具体的には、営巣材接触部から本体部2内のジャンパ線Jとの間を電流が流れる場合には、必ず複数の突起5A,5Bの表面に沿って流れるので、突起5Aの分だけ、沿面距離を長くすることができる。すると、送電線絶縁カバー1の本体部2自体をそれ程大きくしなくても、また、本体部2の貫通孔2hの内部を外部(つまり、本体部2の表面)から密封しなくても、送電線絶縁カバー1に接触した巣の材料を介して、ジャンパ線Jと鉄塔等との間で地絡が生じることを防ぐことができる。
【0033】
例えば、営巣材接触部から、図1の形状の送電線絶縁カバー1では、その高さHがせいぜい100mm程度、複数の突起5A,5Bの基端から先端までの長さが60mm程度であっても、6万6千ボルトの電圧のジャンパ線Jが地絡することを防ぐことが可能である。
なお、かかる形状とすれば、送電線絶縁カバー1上部から内部のジャンパ線Jまでは沿面距離260mmとすることができる。すると、送電線絶縁カバー1の素材にEPDMの素材を使用した場合には、清浄・注水状態(つまり、カバー1の表面および内面が濡れている状態)であって、ジャンパ線Jの電圧が6万6千ボルトでも、良好な耐圧性能を得ることができる。
もちろん、複数の突起5A,5Bの上面や先端に営巣材接触部となっても、沿面距離を上記以上に取れるのであれば、地絡を防ぐことができるのは、いうまでもない。
【0034】
しかも、本体部2の開口2aは、開口2aを形成する一対の端縁間の距離Dが数mm〜数cm程度となるように形成されているので、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jに取り付けた状態においても、一対の端縁間には隙間、つまり、開口2aが開いた状態で維持される。
このため、ジャンパ線Jをつたって、本体部2内に水が入っても、その水を本体部2の開口2aから外部に排出させることができる。そして、本体部2の開口2aは、本体部2の軸方向に沿って連続するように設けられているので、本体部2の軸方向のどの位置からでも水を本体部2内から排出することができる。
よって、本体部2に水が入っても本体部2内から確実にその水を排水することができるので、本体部2内に水が滞留することを防ぐことができ、また、水の滞留に起因する送電線の腐食も防ぐことができる。そして、本体部2に特別な排水手段を設けなくてもよいので、本体部2の構造が簡単になる。
【0035】
なお、送電線絶縁カバー1が柔らかい素材で形成されている場合には、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jに取り付けた状態において、開口2aを形成する一対の端縁同士が一部接触する場合がある。この場合でも、一対の端縁同士が接触していない部分から本体部2の貫通孔2h内に入った水を排水することができる。
また、開口2aを形成する一対の端縁全体が接触したときに、一対の端縁間に貫通孔2h内部と外部とを連通し得る連通通路が形成される構造に一対の端縁が形成されていれば、一端縁同士全体が接触しても排水機能は維持することができる。例えば、一対の端縁に、両者が面接触したときに両者間に貫通孔2hと外部との間を連通し得る孔(または隙間)を形成する溝や切欠きなどを設けておけば、一端縁同士全体が接触しても排水機能は維持することができる。
【0036】
(複数の突起5A,5Bについて)
なお、複数の突起5A,5Bは、その上面は基端から先端に向かって下傾するように形成されていることが好ましい。この場合、送電線絶縁カバー1の断面の横幅をそれ程大きくしなくても、沿面距離を長くすることができるので、ジャンパ線Jに取り付けた状態における送電線絶縁カバー1の安定性を高くすることができる。しかも、送電線絶縁カバー1に降り注いだ雨等を送電線絶縁カバー1の上面から除去し易くなるし、鳥などの巣の材料も送電線絶縁カバー1の上から落下しやすくなる。
また、複数の突起5A,5Bの上面は、基端から先端に向かって下傾していない場合でも、その上面に降り注いだ雨等を排水できるようになっていることが好ましい。例えば、ジャンパ線Jに送電線絶縁カバー1に取り付けたときに、複数の突起5A,5Bの上面がその軸方向に沿っていずれかの軸方向の端部に向かって下傾するように形成しておけば、軸方向の端部から送電線絶縁カバー1に降り注いだ雨等を排水できる。また、複数の突起5A,5Bの軸方向における中間点などに排水用の溝などを設けておき、ジャンパ線Jに送電線絶縁カバー1に取り付けたときに、複数の突起5A,5Bの上面が排水用の溝に向かって下傾するように形成しておけば、この溝から降り注いだ雨等を排水できる。
【0037】
また、複数の突起5A,5Bは、その基端が、上下方向において、本体部2の貫通孔2hの中心軸2cと同等の高さ、または、中心軸2cよりも下方の位置で本体部2の外面に接続されていることが好ましい。すると、送電線絶縁カバー1において、本体部2内に収容されているジャンパ線Jよりも下方の部分の重量をより大きくすることができるから、送電線絶縁カバー1を安定した状態でジャンパ線Jに取り付けておくことができるという利点が得られる。
【0038】
さらに、図1では、複数の突起5A,5Bを、中心面1sの両側に2つずつ設けているが、突起5A,5Bを設ける数はとくに限定されない。しかし、突起5A,5Bを、上下方向に並ぶように複数形成すれば、本体部2の周方向の長さをそれ程大きくしなくても、沿面距離を長くすることができる。すると、絶縁性を高く維持しつつ、送電線絶縁カバー1をコンパクトにすることができるし、カバーが大型の場合に問題となる、風圧による送電線の損傷等の問題も防ぐことができる。
【0039】
(一対の延設片3A,3Bについて)
また、上記例では、開口2aを形成する一対の端縁に一対の延設片3A,3Bを設けた例を説明したが、一対の延設片3A,3Bは必ずしも設けなくてもよい。例えば、複数の突起5A,5Bだけで、本体部2の貫通孔2h内のジャンパ線Jと営巣材接触部との間の絶縁を維持できる程度の沿面距離が得られるのであれば、一対の延設片3A,3Bはとくに設けなくてもよい。
しかし、一対の延設片3A,3Bを設けておけば、沿面距離がより長くなるので、ジャンパ線Jと営巣材接触部との間の絶縁性をより高く維持することができる。とくに、図1に示すように、一対の延設片3A,3Bの内面に複数の突起3bを設けることができるので、沿面距離をさらに長くできるという利点が得られる。
【0040】
また、一対の延設片3A,3Bを設けた場合、ジャンパ線Jに送電線絶縁カバー1を取り付ける作業を容易にすることができる。具体的には、本体部2の開口2aを開いたときに、一対の延設片3A,3B同士の間も離間するが、その一対の延設片3A,3Bの下端間の距離は本体部2の開口2aに形成される隙間より長くなる。しかも、一対の延設片3A,3Bの内面が、ジャンパ線Jを本体部2の貫通孔2hに導入する案内面として機能する。よって、一対の延設片3A,3Bを設ければ、本体部2の開口2aに直接ジャンパ線Jを入れる場合に比べて、ジャンパ線Jを本体部2の貫通孔2hに容易に入れることができ、ジャンパ線Jに送電線絶縁カバー1の取り付ける作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0041】
さらに、一対の延設片3A,3Bを設けておけば、送電線絶縁カバー1の重心の位置をより下方にすることができるので、送電線絶縁カバー1をより安定した状態でジャンパ線Jに取り付けておくことができるという利点が得られる。
【0042】
(送電線絶縁カバー1の固定)
そして、一対の延設片3A,3Bを設けた場合には、送電線絶縁カバー1にジャンパ線Jに取り付けた状態において、一対の延設片3A,3Bが所定の間隔以上はなれないようにする機構、言い換えれば、本体部2の開口2aが一定以上開かないようにする機構を設けることができるという利点も得られる。
例えば、図1に示すように、延設片3Aに延設片3Bまで延びる係合片11aを備えた金具11を取り付けておき、延設片3Bに係合片11aに係合できる係合アーム12aを備えたロック器具12を設けておく。すると、ロック器具12のつまみ12bを回転させて係合アーム12aを出没させれば(図1(B)の矢印の方向に移動させれば)、係合アーム12aと係合片11aとを係合離脱させることができる。すると、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jに取り付けた状態において、係合アーム12aと係合片11aとを係合させておけば、送電線絶縁カバー1の本体部2の開口2aが一定以上開かないので、送電線絶縁カバー1がジャンパ線Jから外れてしまうことを防ぐことができる。また、係合アーム12aと係合片11aとを係合を解放すれば、送電線絶縁カバー1の本体部2の開口2aを大きく開くことができるから、ジャンパ線Jから送電線絶縁カバー1を取り外すことができる。
そして、係合アーム12aと係合片11aとの係合離脱はロック器具12のつまみ12bを回転させるだけであるから、高所やジャンパ線Jからある程度以上離れた位置からでも作業用工具を使用して簡単に操作することができる。
なお、一対の延設片3A,3Bにおいて、上述したような機構を設ける位置はとくに限定されず、例えば、一対の延設片3A,3Bの軸方向の両端部や中央部等に設けることができる。
【0043】
(カバー取付工具)
上述したように、本実施形態の送電線絶縁カバー1は、その本体部2の開口2aを開くことによって、ジャンパ線Jに取り付けたり、ジャンパ線Jから取り外したりすることができるが、本体部2の開口2aを開いたり閉じたりする作業は、作業者が、高所かつジャンパ線Jからある程度以上離れた位置から行わなければならない。
以下では、高所かつジャンパ線Jからある程度以上離れた位置において、作業者が、本実施形態の送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jに着脱する作業を行うのに適した工具を説明する。つまり、作業者から離れた位置にある送電線絶縁カバー1を、作業者が、本体部2の開口2aの開閉作業を簡単かつ確実に行うことができる工具を説明する。
【0044】
図3に示すように、本実施形態のカバー取付工具30は、ベース31と、ベースに設けられた一対の揺動片35,35と、押圧部材36と、進退機構40とを備えている。
【0045】
図3に示すように、ベース31は、進退機構40を介して、作業者が操作する棒状部材Bの先端に連結されるものであり、そのベースブロック31aには、進退機構40の昇降軸41や駆動軸42が連結されている。
なお、進退機構40の昇降軸41は、ベース31のベースブロック31aおよび後述するベースプレート31bを貫通して、その下端がベースブロック31aの下方に突出している。
【0046】
図3に示すように、ベースブロック31aの下面には、ベースプレート31bが固定されている。このベースプレート31は、その両端部が下方に屈曲した板状の部材であり、その両端間の距離は、送電線絶縁カバー1の幅(図1であれば突起5Aと突起5Bの先端間の距離)よりも短く形成されている。
【0047】
図3に示すように、ベースプレート31の屈曲した両端部には、一対の揺動片35,35が互いに対向した状態となるように取り付けられている。この一対の揺動片35,35は、その基端が、ヒンジ35aを介して、ベースプレート31の屈曲した両端部に連結されている。つまり、一対の揺動片35,35は、ヒンジ35aによって、互いに接近離間可能な方向に沿って揺動できるように設けられているのである。
また、図3に示すように、一対の揺動片35,35は、その下端が、内方、つまり、他方の揺動片35に向けて屈曲されており、この屈曲した部分によってフック部35fが形成されている。なお、フック部35fは、後述するように、送電線絶縁カバー1の突起5の先端と係合し得るような構造であればよく、その形状やフック部35fを形成する方法はとくに限定されない。
【0048】
なお、一対の揺動片35,35は、互いに離間する方向に沿って揺動させてその先端同士が最も離れた位置に配置されたときにおける先端間の距離が、送電線絶縁カバー1の幅よりも長くなるように形成されている。しかも、一対の揺動片35,35は、垂らした状態(図3)において、後述する押圧部材36の下端から揺動片35の先端までの距離Lが、送電線絶縁カバー1の上端から突起5の先端までの距離H(図1(A)参照)よりも長くなるように形成されている。かかる長さに一対の揺動片35,35が形成されている理由は、後述する。
【0049】
図3に示すように、前記ベースプレート31の両端部の間には、押圧部材36が設けられている。この押圧部材36は、昇降軸41の下端に取り付けられており、昇降軸41が軸方向に沿って移動すると昇降軸41とともに昇降するように設けられている。言い換えれば、進退機構40の昇降軸41が一対の揺動片35,35間で昇降すると、押圧部材36も一対の揺動片35,35間で昇降するように設けられている。
【0050】
また、進退機構40は、昇降軸41と駆動軸42とを備えている。
昇降軸41は、上述したように、ベース31のベースブロック31aおよびベースプレート31bを貫通して、その下端がベースブロック31aの下方に突出するように設けられている。そして、昇降軸41は、その軸方向に沿って移動できるように、ベース31のベースブロック31aに保持されている。
駆動軸42は、その先端部42cがベース31のベースブロック31aに回転自在に保持された部材であり、駆動軸42がその軸周りに回転すると、昇降軸41が昇降するように設けられている。例えば、先端部42cに歯車、昇降軸41にラックが設けられており、駆動軸42が回転すると、昇降軸41が軸方向に移動するような構造になっている。
そして、駆動軸42の基端には、作業者が使用する棒状部材Bの先端が取り付けられる取付部42aが設けられている。
【0051】
なお、駆動軸42において、先端部42cと取付部42aとの間に、取付部42aよりも細径の中間部42bを設けて、この中間部42bにバネ部材43を設けておいてもよい。つまり、取付部42aの先端とベースブロック31aとの間に、バネ部材43を若干圧縮した状態で配置しておけば、駆動軸42をベースブロック31aに対して回転させやすくなるという利点が得られる。
【0052】
(カバー取付工具30による送電線絶縁カバー1の取り付け作業)
カバー取付工具30が以上のごとき構造であるので、以下のようにすれば、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jに着脱することができる。
【0053】
まず、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jに取り付ける場合、カバー取付工具30における一対の揺動片35,35のフック部35fを、それぞれ送電線絶縁カバー1の突起5の先端に係合させる。
【0054】
ついで、駆動軸42を回転させると、昇降軸41が移動し、押圧部材36が送電線絶縁カバー1に向かって移動し、やがて、押圧部材36が送電線絶縁カバー1の上端に接触する。さらに、押圧部材36を下方に(送電線絶縁カバー1方向に)移動させると、押圧部材36によって送電線絶縁カバー1が押される。しかし、送電線絶縁カバー1はその突起5が一対の揺動片35,35のフック部35fに係合している。しかも、一対の揺動片35,35が上述したような長さになっているので、押圧部材36によって送電線絶縁カバー1が押されると、一対の揺動片35,35によって突起5が上方に引き上げられて送電線絶縁カバー1は変形する。つまり、送電線絶縁カバー1は、その本体部2の開口2aが開くように変形するのである(図4(B))。
【0055】
なお、送電線絶縁カバー1は、その軸方向においてある程度離間した位置を複数のカバー取付工具30によって保持し、上記のごとく本体部2の開口2aが開くように変形させれば、送電線絶縁カバー1の開口2aをその軸方向の全体で開口した状態とすることができる。
【0056】
送電線絶縁カバー1の開口2aをその軸方向の全体で開口した状態とすると、この送電線絶縁カバー1をその開口2aがジャンパ線Jの上方に位置するように配置する(図5(A))。
そして、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jの上方から降ろせば、ジャンパ線Jを開口2aから本体部2の貫通孔2hに入れることができる。このとき、カバー取付工具30は、送電線絶縁カバー1を保持する部分が送電線絶縁カバー1の上方にしか存在しない。よって、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jに着脱する作業中に、カバー取付工具30とジャンパ線Jとが接触する可能性を極力低くできるから、安全に送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jに取り付けることができる。
【0057】
ジャンパ線Jが本体部2の貫通孔2hに入れば、駆動軸42を回転させて、押圧部材36を送電線絶縁カバー1から離れる方向に移動させる。すると、一対の揺動片35,35によって上方に引き上げられていた突起5が、徐々に元の状態に戻るから、送電線絶縁カバー1は変形前の状態に戻る。
変形前の状態になれば、突起5から一対の揺動片35,35のフック部35fを外すことができる(図5(B))。つまり、送電線絶縁カバー1からカバー取付工具30を外すことができ、送電線絶縁カバー1のジャンパ線Jへの取り付けが終了する。
【0058】
逆に、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jから取り外す場合には、ジャンパ線Jに取り付けられている送電線絶縁カバー1における突起5の先端にカバー取付工具30における一対の揺動片35,35のフック部35fを係合させる。
ついで、駆動軸42を回転させると、昇降軸41が移動し、押圧部材36が送電線絶縁カバー1に向かって移動するから、送電線絶縁カバー1を、その本体部2の開口2aが開くように変形させることができる(図4(B)参照)。
そして、送電線絶縁カバー1の開口2aをその軸方向の全体で開口した状態として、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jの上方に持ち上げれば、ジャンパ線Jから送電線絶縁カバー1を取り外すことができる。
【0059】
以上のごとく、本実施形態のカバー取付工具30では、一対の揺動片35,35のフック部35fを送電線絶縁カバー1の突起5に係合離脱させる作業と、棒状部材Bを回転させる作業(つまり、押圧部材36を送電線絶縁カバー1に対して進退させる作業)だけで、カバー取付工具30による送電線絶縁カバー1の保持解放、および、本体部2の開口2aの開閉を行うことができる。
このため、高所において、棒状部材Bの先端にカバー取付工具30を取り付けてジャンパ線Jへの送電線絶縁カバー1の取り付けを行う作業であっても、その作業を簡単かつ確実に、そして安全に行うことができるのである。
【0060】
なお、上記例では、押圧部材36を進退させる進退機構として、棒状部材B、つまり、駆動軸42を回転させ昇降軸41を軸方向に移動させる構成を採用した場合を説明したが、押圧部材36を送電線絶縁カバー1に対して進退させることができる構成であれば、進退機構の構成はとくに限定されない。
しかし、上記のごとき構成とすれば、工具の構造を簡素化でき、工具を軽量化できるので、高所での作業性をより一層向上することができる。
【0061】
また、送電線絶縁カバー1をジャンパ線Jから取り外す場合において、送電線絶縁カバー1の突起5の先端にフック部35fを係合させるが、作業者から送電線絶縁カバー1までの距離が離れているので、突起5とフック部35fの係合状態を確認することが困難な場合がある。とくに、作業者を逆側に位置する突起5にフック部35fを係合する場合には、係合状態を確認がより困難になる。
そこで、係合状態を確認を容易にする上では、フック部35fの先端を着色したり、揺動片35の内面を鏡として使用できるような状態に加工しておくことが好ましい。
フック部35fの先端を着色した場合には、フック部35fの先端の位置が把握し易く、また、突起5の先端にフック部35fが係合すれば先端の着色が見えなくなるので、両者が係合できたか否かを容易に確認できるという利点が得られる。
また、揺動片35の内面を鏡として使用できるような状態に加工すれば、隠れている部分をそこに移った像によって確認できるので、作業が行い易くなるという利点が得られる。なお、揺動片35の内面が鏡として使用できるような状態に加工する方法はとくに限定されず、例えば、ステンレステープを貼り付けておく方法や、揺動片35の内面の表面粗さを小さくする方法などを挙げることができるが、これらに限定されないのは、いうまでもない。
【0062】
(他のカバーへの使用について)
なお、本実施形態のカバー取付工具30は、上述した本実施形態の送電線絶縁カバー1に限られず、他のカバーをジャンパ線Jに着脱する作業にも使用できる。
例えば、カバーが、筒状であってその軸方向に沿って連続する開口が形成された筒状部材(上述した送電線絶縁カバー1では本体部2に相当する)と、この筒状部材の中心軸を含みかつ筒状部材の開口を通過する面である中心面を挟んで両側に突起を有するような形状のものであれば、上述した送電線絶縁カバー1の取り付け作業とほぼ同じ作業によってカバーを送電線に取り付けたり取り外したりすることは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の送電線絶縁カバーは、超高圧送電線における鳥害による地絡などを防ぐカバーに適している。
【符号の説明】
【0064】
1 送電線絶縁カバー
1s 中心面
2 本体部
2a 開口
2h 貫通孔
3 延設片
5 突起
30 カバー取付工具
31 ベース
35 揺動片
35f フック部
36 押圧部材
40 進退機構
B 棒状部材
W 送電線
J ジャンパ線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線に取り付けられるカバーであって、
筒状であって、その下端に軸方向に沿って連続する開口を有する本体部と、
前記本体部の外面に設けられた複数の突起を備えており、
前記本体部は、
前記開口を形成する一対の端縁が、前記カバーを送電線に取り付けた状態において、外部と連通される連通通路が形成される構造を有しており、
前記複数の突起は、
前記本体部の中心軸を含み、かつ、該本体部の開口を通過する面である中心面の両側に、それぞれ設けられており、
各突起は、
その全体が、上端が前記本体部の上端よりも下方に位置するように形成されている
ことを特徴とする送電線絶縁カバー。
【請求項2】
前記本体部の開口は、
前記カバーを送電線に取り付けた状態において、該開口を形成する一対の端縁間に隙間が維持されるように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の送電線絶縁カバー。
【請求項3】
前記本体部には、
その開口における一対の端縁から下方に延設された一対の延設片を備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載の送電線絶縁カバー。
【請求項4】
筒状であってその軸方向に沿って連続する開口が形成された筒状部材と、該筒状部材の中心軸を含みかつ該筒状部材の開口を通過する面である中心面を挟んで両側に突起を有するカバーを送電線に着脱するために使用する工具であって、
作業者が保持する棒状部材の先端が取り付けられるベースと、
該ベースに設けられた、互いに接近離間する方向に揺動可能な一対の揺動片と、
前記ベースにおける前記一対の揺動片間に設けられた、該一対の揺動片間で進退可能に設けられた押圧部材とを備えており、
前記一対の揺動片は、
互いに対向する面に、前記カバーの突起に係合し得るフック部を備えている
ことを特徴とするカバー取付工具。
【請求項5】
前記押圧部材を前記一対の揺動片間で進退させる進退機構を備えており、
該進退機構は、
前記棒状部材を回転させると、その回転によって前記押圧部材を進退させるものである
ことを特徴とする請求項4記載のカバー取付工具。
【請求項6】
前記カバーが、請求項1記載の送電線絶縁カバーである
ことを特徴とする請求項4または5記載のカバー取付工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−120398(P2012−120398A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270280(P2010−270280)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【出願人】(592190545)テクノ・サクセス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】