説明

透過型光電センサの受光器

【課題】面実装型のフォトICを備えた透過型光電センサの受光器であって、小型かつ動作距離の長いものを提供する。
【解決手段】フォトIC4を用いた透過型光電センサの受光器1において、回路基板3をケース2の中心軸2a付近に配置すると共に、フォトIC4の受光部4aをケース2の中心軸2aから一の径方向にずれた位置に配置し、レンズ6のレンズ面6dの曲率中心6eをケース2の中心軸2aから上記一の径方向と同方向にずれた位置に配置し、さらに、レンズ面6dの曲率半径Rをケース2の内径以上にすることにより、レンズ面6dに入射した光が略全てフォトIC4の受光部4aに受光されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型光電センサの受光器に関する。
【背景技術】
【0002】
透過型光電センサは、検知領域を挟んで対向配置された投光器および受光器を含み、投光器−受光器間の光が遮光された際に、検知領域に物体が有ると判定するものである。
【0003】
近年、その透過型光電センサの受光器の小型化(小径化)が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。フォトトランジスタ等の砲弾型の受光素子を用いて小型の受光器を構成する場合、特許文献1の図14に示されるように、受光素子52は、その受光部が受光器(受光ヘッド)500の前端側を向くように配置される。
【0004】
しかし、砲弾型の受光素子を用いたのでは、小型化に限界がある。そこで、フォトIC等の表面実装型(チップ型)の受光素子を用いて、受光器のさらなる小型化を図る提案がされている。
【0005】
フォトICを用いた場合であって、受光器のケース内径が非常に小さい場合、フォトICの受光部を受光器の前端側に向けることができない。この場合、図7Aに示す如く、フォトIC24の受光部24aが径方向を向くように配置される。そして、外部からの入射光Lは、受光器21の前端に配置されたレンズ26によって集光され、ミラー27を介してフォトIC24の受光部24aに受光される。
【特許文献1】特開2006−236849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7Aに示す受光器21の場合、レンズ26の下半分から入射した光Lは、回路基板23やフォトIC24の側面に遮られるため、受光部24aに受光されない。つまり、図7Aの左側に示す如く、レンズ面26dの有効面は上半分(ハッチング部分)のみとなり、受光量が減少して光電センサの動作距離を長くすることができなかった。ここで、図7Aの受光器21であっても、フォトIC24および回路基板23の位置を受光器21の後端側(図の右側)へずらしていけば受光量を改善していくことができるが、それでもレンズ26に入射した光Lを全て受光部24aに受光させることはできなかった。
【0007】
また、受光量を確保するためには、フォトIC24の受光部24aの位置をケース22の中心軸22a付近に配置する必要があるが、そうすると、図7Bに示す如く、回路基板23は必然的にケース22の内壁付近に位置することになる。この場合、回路基板23をケース中心軸22a付近に配置する場合と比べて、回路基板の幅wを十分にとれないと共に、回路基板23とケース22の内壁との間の空間高さhが小さくなって、回路基板23下面への電子部品の配置が困難になるという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表面実装型のフォトICを備えた透過型光電センサの受光器であって、小型かつ動作距離の長いものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、フォトICと、前記フォトICを実装し駆動する回路基板と、円筒状のケースであって、前記フォトICの受光部が径方向を向くように前記回路基板を収納するケースと、前記回路基板上の回路に接続され、前記ケースの一方の開口部から延出するケーブルと、前記ケースの他方の開口部に配置され、外部からの入射光を前記フォトICの前記受光部近傍に集光するレンズと、前記レンズの焦点近傍に配置され、前記レンズによって集光された前記入射光を反射して前記フォトICの前記受光部に受光させるミラーと、を含んでなる透過型光電センサの受光器において、前記回路基板を前記ケースの中心軸付近に配置すると共に、前記フォトICの前記受光部を前記ケースの中心軸から一の径方向にずれた位置に配置し、前記レンズのレンズ面の曲率中心を前記ケースの中心軸から前記一の径方向と同方向にずれた位置に配置し、さらに、前記レンズ面の曲率半径を前記ケースの内径以上かつ前記ケースの内径の3倍以下にすることにより、前記入射光が略全て前記フォトICの前記受光部に受光されるようにしたことを特徴とする透過型光電センサの受光器を提供するものである。
【0010】
また本発明は、上記構成において、前記レンズは、前記ミラーに当接する位置までのびていることを特徴とする透過型光電センサの受光器を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる透過型光電センサの受光器は、フォトICが実装された回路基板が、ケースの中心軸付近、つまりケース内で最も幅のとれる位置に配置されている。よって、本発明にかかる受光器は、回路基板の幅が同じであれば、従来の受光器と比べてケースの内径をより小さくすることができる。
【0012】
また、回路基板がケースの中心軸付近に配置されることにより、従来のものと比べて回路基板の下面とケースの内壁との間隔が大きくなる。それゆえ、本発明の受光器によれば、回路基板の下面への電子部品の配置が容易になる。
【0013】
また、本発明の受光器は、ケースの中心軸に対して平行であってレンズ面に入射する光の略全てが、回路基板等によって遮光されることなく、焦点に集光されるようになっている。集光された光は、ミラーを介してもれなくフォトICの受光部に受光される。つまり、本発明の受光器は、レンズ面全体を有効面とすることができ、受光量を増大させることができる。それゆえ、本発明の受光器によれば、小型でありながら、動作距離の長い光電センサを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[構成]
以下、図面を参照して本発明の好ましい一実施形態につき説明する。
図1は本発明にかかる透過型光電センサの受光器の一例を示す斜視図であり、図2は図1の受光器のケースを省略した状態を示す斜視図である。図3は図1の受光器を示す断面図であり、図4は図1の受光器のケース、回路基板およびフォトICを示す正面図である。図5は図1の受光器におけるレンズの作用を説明するための図である。
【0015】
図1〜図4に示されるように、本実施形態にかかる透過型光電センサの受光器1は、円筒状のケース2と、ケース2内に収納された回路基板3と、回路基板3上の回路に接続されたフォトIC4およびケーブル5と、ケース2の前端に設けられたレンズ6と、フォトIC4の近傍に配置されたミラー7とから構成されている。
【0016】
ケース2は、金属製であり、図1に示す如く外周面にM5のネジが切られている。また、ケース2の内径は3.7mm程度になっている。
【0017】
回路基板3は、ケース2内に収容されるように、幅(短手方向の長さ)3mm、厚さ0.5mm程度に形成されている。回路基板3の上下面に形成された回路(不図示)上には、フォトIC4と、フォトIC4を駆動するための電子部品(不図示)とが、実装されている。
【0018】
フォトIC4が実装された回路基板3は、図3および図4に示す如く、ケース2の中心軸2a付近に配置される。それによって、回路基板3に実装されたフォトIC4は、ケース2の中心軸2aから径方向にずれた位置に配置される。
【0019】
フォトIC4は、図2に示す如く、回路基板3の幅と略同じ幅を有している。フォトIC4は、レンズ6およびミラー7を介して受光部4aに入射する光に応じ、受光信号を生成する。
【0020】
ケーブル5は、図2および図3に示す如く、一端が回路基板3の回路に接続され、他端がケース2後端の開口部から外方へのびている。ケーブル5とケース2との間には、ケーブルブッシュ5aが設けられ、ケース2後端の開口部が封じられる。なお、ケーブル5の他端は、外部機器(不図示)に接続され、フォトIC4による受光信号を当該外部機器に伝送する。
【0021】
レンズ6は、アクリル等の樹脂製であり、図3に示す如く、ケース2前端の開口部を閉じるように配置される。レンズ6は、ケース2内に収納される基部6aと、ケース2前端の開口部から突出する突出部6bとを有している。
【0022】
基部6aは、ケース2に嵌合されるように、その外径がケース2の内径と略同一に形成されている。また、基部6aは、ケース2内に配置された回路基板3上のフォトIC4の受光部4aの位置までのびている。基部6aはさらに、回路基板3の前端が挿入される凹部6cを有している。凹部6cに回路基板3の前端が挿入されることにより、レンズ6と回路基板3とが係合される。
【0023】
突出部6bは、その外径がケース2の内径よりやや大きくなっており、ケース2の前端面に当接する。突出部6bの前端面には、レンズ面6dが形成されている。
【0024】
レンズ面6dは、図3に示す如く、球面の一部からなっている。レンズ面6dの曲率中心6eは、ケース2の中心軸2aから径方向にずれた位置であって、フォトIC4のずれと同じ方向にずれた位置に配置されている。レンズ面6dの曲率半径Rは7.5mmになっており、ケース2の内径以上の大きさになっている。レンズ6の焦点Fは、フォトIC4の受光部4a近傍に配置され、レンズ面6dから焦点Fまでの距離は15mm程度になっている。
【0025】
レンズ6の曲率半径Rやレンズ面6dから焦点Fまでの距離は、図5に示す如く、ケース2の中心軸2aに対して平行であってレンズ6に入射する光Lの略全てが、回路基板3等によって遮光されることなく、焦点Fに集光されるように決定される。なお、レンズ6の曲率半径Rは、実質的に、ケース2の内径以上であって、ケース2の内径の3倍以下とされる。
【0026】
ミラー7は、図3に示す如く、フォトIC4の受光部4aの近傍であって、レンズ6の基部6aの後端に当接する位置に配置される。ミラー7は、図5に示す如く、レンズ6によって焦点Fに集光された入射光Lを反射する。その反射光LRは、フォトIC4の受光部4aにもれなく受光される。
【0027】
[使用態様]
上記のように構成された受光器1は、例えば図6に示すように、透過型光電センサ10の受光器1として使用される。図6に示す例では、ワークWがコンベアVで搬送される製造ラインの両側に配置されたブラケットB1,B2に、透過型光電センサ10の受光器1および投光器11が固定されている。投光器11は、LED等の発光素子(不図示)を備えた公知のものである。受光器1は、投光器11に対向し、かつ投光器11と同軸になるように配置される。受光器1および投光器11から延びるケーブル5,15はそれぞれ、例えばコンベアVの制御装置などの外部機器(不図示)に接続されている。
【0028】
光電センサ10では、投光器11から検出光DLが投光される。投光器11からの検出光DLが入射光Lとなり、受光器1のレンズ6およびミラー7を介してフォトIC4の受光部4aに受光されると、フォトIC4は受光信号を生成する。フォトIC4によって生成された受光信号は、ケーブル5を介して外部機器に伝送される。その外部機器は、ケーブル5を介して受信した受光信号のレベルに応じて、ワークWの有無を認識する。
【0029】
[効果]
以上のように、本発明にかかる受光器1は、図4に示す如く、フォトIC4が実装された回路基板3が、ケース2の中心軸2a付近、つまりケース2内で最も幅のとれる位置に配置されている。よって、受光器1は、回路基板3の幅が同じであれば、図7Bに示す従来の受光器21と比べて、ケース2の内径をより小さくすることができる。
また、同時に、従来のものと比べて回路基板3の下面とケース2の内壁との間隔が大きくなっているため、回路基板3の下面への電子部品の配置が容易になる。
【0030】
また、受光器1は、ケース2の中心軸2aに対して平行であってレンズ6に入射する光Lの略全てが、回路基板3等によって遮光されることなく、焦点Fに集光されるようになっている。集光された光は、ミラー7を介して、もれなくフォトIC4の受光部4aに受光される。つまり、受光器1によれば、図5の左側に示されるようにレンズ面6d全体を有効面(ハッチング部分)とすることができ、受光量を増大させることができる。それゆえ、受光器1によれば、小型でありながら、動作距離の長い光電センサを構成することができる。
【0031】
また、受光器1によれば、ケース2の中心軸2a付近に入射する光L(検出光DL)を有効に受光することができる。ケース2の中心軸2aは、対向配置される投光器11の中心軸に一致せしめられるものであるから、受光器1は、投光器11からの検出光DLの主要部分を有効に受光できることになる。それゆえ、受光器1によれば、物体検知精度を向上させることができる。
【0032】
また、受光器1によれば、レンズ6の後端がミラー7に当接する位置まで、つまりフォトIC4の受光部4a近傍までのびている。これにより、レンズ面6dの曲率半径Rが同じ状況において、焦点Fの位置を後方にずらすことができる。それゆえ、受光器1によれば、入射光Lが回路基板3等によって遮光されにくくすることができる。
【0033】
[変形例]
なお、上記実施形態では、樹脂製のレンズを用いたが、これに限定されるものではなく、ガラス製のレンズを用いることもできる。また、レンズ面の曲率半径は、ケース内径以上であって、好ましくはケース内径の3倍以下の範囲で、適宜選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかる透過型光電センサの受光器の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の受光器のケースを省略した状態を示す斜視図である。
【図3】図1の受光器を示す断面図である。
【図4】図1の受光器のケース、回路基板およびフォトICを示す正面図である。
【図5】図1の受光器におけるレンズの作用を説明するための図である。
【図6】図1の受光器を使用した透過型光電センサの一例を示す斜視図である。
【図7】従来の透過型光電センサの受光器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 受光器
2 ケース
2a ケースの中心軸
3 回路基板
4 フォトIC
4a 受光部
5 ケーブル
6 レンズ
6d レンズ面
6e レンズ面の曲率中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトICと、
前記フォトICを実装し駆動する回路基板と、
円筒状のケースであって、前記フォトICの受光部が径方向を向くように前記回路基板を収納するケースと、
前記回路基板上の回路に接続され、前記ケースの一方の開口部から延出するケーブルと、
前記ケースの他方の開口部に配置され、外部からの入射光を前記フォトICの前記受光部近傍に集光するレンズと、
前記レンズの焦点近傍に配置され、前記レンズによって集光された前記入射光を反射して前記フォトICの前記受光部に受光させるミラーと、
を含んでなる透過型光電センサの受光器において、
前記回路基板を前記ケースの中心軸付近に配置すると共に、前記フォトICの前記受光部を前記ケースの中心軸から一の径方向にずれた位置に配置し、前記レンズのレンズ面の曲率中心を前記ケースの中心軸から前記一の径方向と同方向にずれた位置に配置し、さらに、前記レンズ面の曲率半径を前記ケースの内径以上かつ前記ケースの内径の3倍以下にすることにより、前記入射光が略全て前記フォトICの前記受光部に受光されるようにした、
ことを特徴とする透過型光電センサの受光器。
【請求項2】
前記レンズは、前記ミラーに当接する位置までのびていることを特徴とする請求項1に記載の透過型光電センサの受光器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−170635(P2009−170635A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6696(P2008−6696)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000210425)竹中電子工業株式会社 (11)
【出願人】(000101318)株式会社タケックス研究所 (9)
【Fターム(参考)】