説明

通信ネットワーク及び通信装置

【課題】 運用状態において消費電力の低減を図ることができる、E−PONシステムのONUを提供する。
【解決手段】 ONUは、正常フレーム受信間隔(IFG)を監視する監視部を備えている。そして、正常フレーム受信間隔から捉えた受信レートが、フルレートから低下している度合いに応じて、ブリッジ処理部に与えるクロックの周波数を制御し、正常フレーム受信間隔が長いような状態で、ブリッジ処理部の処理速度を遅くさせて消費電力を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信ネットワーク及び通信装置に関し、例えば、1:n接続のようなE−PON(Ethernet(登録商標) Passive Optical Network)形のトポロジーを用いたネットワークにおける低消費電力を意図した通信に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、1:n接続の通信ネットワークのシステム形態を示すブロック図である。センタ側装置1と、n個のユーザ側装置2とは、光スプリッタ3を介して1:n接続されており、センタ側装置1及びユーザ側装置2間のインタフェースとしてE−PONインタフェースが適用されている。センタ側装置1は、OLT(Optical Line Terminal;光加入者線局内装置)4を備えている。センタ側装置1は、コアネットワーク5(のエッジルータやレイヤ2スイッチ(L2SW))と接続されており、OLT4及びコアネットワーク5間のNNI(Network Node Interface)としてEthernetインタフェースが適用されている。ユーザ側装置2は、OLT4と対向しているONU(Optical Network Unit;光加入者線宅内装置)6と、通信端末7(やLANケーブルを介したユーザネットワーク)とを備え、ONU6及び通信端末7間のUNI(User Network Interface)としてEthernetインタフェースが適用されている。
【0003】
以上のような1:n接続の通信ネットワークにおいて、ONUからの伝送効率を高める方法が、特許文献3に記載されている。すなわち、固定レートの伝送と、マルチレートとの伝送とが可能であり、マルチレートが選択されている場合において、伝送しようとするユーザデータの量が多い場合には、伝送レートを基本レート(固定レートと同じ)より高めて伝送効率を高めることが記載されている。伝送レートを高めた場合には、基本レートの伝送より消費電力は大きなものとなる。
【0004】
1:n接続の通信ネットワークにおける通信装置であるONUも、低消費電力が望まれている。従来、通信装置の低消費電力化方法として、特許文献1及び特許文献2に記載されたものが提案されている。特許文献1及び特許文献2の記載技術は、待機状態を検出して機能ブロック単位で消費電力の制御を行う方式であり、長期的に見て、低消費電力を図ったものである。
【0005】
特許文献1の記載技術は、1:n接続の通信ネットワークにおける通信装置での低消費電力方法であり、「局側装置との間で光信号を送受信する光送受信部と、局側装置との間の論理リンクの確立を制御する論理確立制御部と、物理層として機能する物理層機能部からなるPON装置(ONUに相当する)において、光信号の入力有無、PONリンクの有無を監視し、光入力なし、又はPONの論理リンクが確立されてないと判定した場合には、論理リンク確立制御部および物理層機能部の消費電力を制御し低消費電力化を図るもの」となっていた。
【0006】
また、特許文献2の記載技術は、「一般的な情報通信機器において、入力パケットを蓄積するパケットバッファの蓄積量を監視し、その空き時間をもとにパケットを処理する処理手段への電力を停止する低消費電力方法」となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−113193号公報
【特許文献2】特開2009−267546号公報
【特許文献3】特開2000−49823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の低消費電力方法はいずれも、待機状態でのみ低消費電力化が図られるが、運用状態において消費電力の低減を図ることができないものであった。
【0009】
そのため、運用状態において消費電力の低減を図ることができる通信ネットワーク及び通信装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明は、正常なフレームの通信時における最短のフレーム間隔が規定されている通信装置であって、受信したフレームをクロックに基づいて処理するフレーム処理手段を有する通信装置において、(1)正常なフレームの受信レートを監視するフレーム受信レート監視手段と、(2)上記フレーム処理部に与えるクロックを出力するクロック出力手段と、(3)上記フレーム受信レート監視手段の監視結果に応じ、上記最短のフレーム間隔で定まる基準のフレーム受信レートから、現在のフレーム受信レートの低下度合いを捉え、この低下度合いに応じて、上記クロック出力手段から出力されるクロックの周波数を決定する低消費電力制御手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2の本発明は、1個の親局通信装置とn個の子局通信装置とがスター状に接続されている1:n接続の通信ネットワークにおいて、上記各子局通信装置として、第1の本発明の通信装置を適用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、運用状態において消費電力の低減を図ることができる通信ネットワーク及び通信装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の通信装置(ONU)の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態の通信装置(ONU)における低消費電力の制御動作を示すフローチャートである。
【図3】実施形態の通信装置(ONU)におけるクロックレートの計算例を説明するための図面である。
【図4】1:n接続の通信ネットワークのシステム形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による通信ネットワーク及び通信装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。この実施形態の通信ネットワークは、上述した1:n接続形態の通信ネットワーク(E−PONネットワーク)である。
【0015】
(A−1)実施形態の構成
図1は、実施形態の通信装置(ONU)の構成を示すブロック図であり、他の構成要素との接続関係をも併せて示している。図1では、上述した図4との同一、対応部分に同一、対応符号を付して示している。
【0016】
実施形態の通信ネットワークも、図1に示すように、OLT4とn個のONU6−1〜6−nとが、幹線光ファィバ、光スプリッタ3、支線光ファイバを介して、スター状に接続されているものである。このようにOLT4とONU6−1〜6−nとの間が1:n接続されているE−PON方式では、伝送媒体は共有しているが、論理的にはポイントツーポイント構成でLLID(Logical Link ID)と呼ばれる論理リンク識別子により、LLID単位で送受制御を行っている。送受制御に関しては、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation;動的帯域割当て方法)により、通信量などに応じて、n個のユーザ(ONU)の割当て帯域幅を動的に変更しながら、通信を実行させている。以下では、コアネットワーク側からユーザネットワーク側へ送信される方向を下り方向、ユーザネットワーク側から上位ネットワーク側へ送信される方向を上り方向と呼ぶ。
【0017】
図1では、ONU6−1について内部構成を示しているが、他のONU6−2〜6−nも内部構成は同様である。以下では、ONU6−1の内部構成を例にして、ONUの構成を説明する。
【0018】
図1において、ONU6−1は、光送受信器10、PON終端部11、物理層処理部(図1では「PHY」と表記している)12とを有する。
【0019】
光送受信器10は、OLT4からの下り光信号を電気信号に変換してPON終端部11へ出力すると共に、PON終端部11からの上り電気信号を光信号に変換してOLT4に向けて出力するものである。
【0020】
PON終端部11は、OLT4側とのE−PON方式の伝送を終端処理するものであり、PONプロトコル処理部20、下りIFG(Inter−Frame Gap;正常フレーム受信間隔)監視部21D、上りIFG監視部21U、下りブリッジ処理部22D、上りブリッジ処理部22U、低消費電力制御部23及びクロック生成部24を有する。
【0021】
物理層処理部12は、ユーザネットワークとの間でレイヤ1(物理層)の通信処理を実行するものである。物理層処理部12は、下り方向については、PON終端部11の信号をEthernet信号に変換して10/100/1000BASE−Tの規格で出力し、上り方向についても同様に、10/100/1000BASE−Tの規格で入力された信号をPON終端部11へ出力するものである。物理層処理部12は、ユーザネットワーク側とのリンク情報を低消費電力制御部24に与えるものである。
【0022】
PON終端部11におけるPONプロトコル処理部20は、OLT4側との通信において、通信ネットワーク(E−PONネットワーク)が採用しているPONプロトコルに従った処理を実行するものである。
【0023】
PONプロトコル処理部20は、下り方向について、光送受信器10からの下り電気信号にIEEE802.3ahに規定された処理を実行し、OLT4との間においてMPCP(MultiPoint Control Protocol;マルチポイント制御プロトコル)やOAM(Operation Administration and Maintenance;保守/運用/管理)の論理リンクを確立すると共に、光送受信器10からの下り電気信号を下りIFG監視部21Dに与えるものである。
【0024】
PONプロトコル処理部20は、上り方向についても、上りブリッジ処理部22Uから与えられた上り信号に対して、IEEE802.3ahに規定された処理を実行して光送受信器10へ出力するものである。
【0025】
また、PONプロトコル処理部20は、確立されているリンク情報を低消費電力制御部24に与えるものである。
【0026】
下りIFG監視部21Dは、PONプロトコル処理部20から与えられた下り信号のフレーム(Ethernetフレーム)を最低でも2フレーム分だけバッファリングできるバッファメモリを内蔵し、PONプロトコル処理部20から与えられた下り信号をバッファリングして、下り方向の正常フレーム受信間隔を把握し得るものである。下りIFG監視部21Dは、バッファメモリから読み出した下り信号を下りブリッジ処理部22Dに与えるものである。
【0027】
下りブリッジ処理部22Dは、下りIFG監視部21Dから与えられた下り信号に対し、MAC学習やVLAN(Virtual LAN;仮想LAN)処理等のブリッジ処理を行い、物理層処理部12へ出力するものである。
【0028】
上りIFG監視部21Uは、物理層処理部12から与えられた上り信号のフレーム(Ethernetフレーム)を最低でも2フレーム分だけバッファリングできるバッファメモリを内蔵し、物理層処理部12から与えられた上り信号をバッファリングして、上り方向の正常フレーム受信間隔を把握し得るものである。上りIFG監視部21Dは、バッファメモリから読み出した上り信号を上りブリッジ処理部22Uに与えるものである。
【0029】
上りブリッジ処理部22Uは、上りIFG監視部21Uから与えられた上り信号に対してブリッジ処理を行い、PONプロトコル処理部20へ出力するものである。
【0030】
低消費電力制御部23は、PONプロトコル処理部20及び物理層処理部12からのリンク情報により、IFG監視部21D、21U、ブリッジ処理部22D、22U、物理層処理部12に対して低消費電力制御を実行するものである。また、低消費電力制御部23は、IFG監視部21D、21Uから正常フレーム受信間隔が通知され、その情報から導通レートを得てクロック生成部24へ送信し、クロック生成部24からブリッジ処理部22D、22Uへ与えるクロックの周波数を適宜低下させるような低消費電力制御を実行するものである。
【0031】
クロック生成部24は、ブリッジ処理部22D、22Uに与えるクロックを生成するものである。クロック生成部24は、図示は省略するが、基準クロックの生成部と、生成された基準クロックを、低消費電力制御部23から与えられた分周比情報の分周比で分周する分周部とを有し、与えられた導通レートに応じて、基準クロック、若しくは、分周クロックをブリッジ処理部22D、22Uに与えるものである。
【0032】
例えば、基準クロック周波数をAとした場合、クロック生成部24は、基準クロックを2分周した周波数がA/2の2分周クロックと、基準クロックを4分周した周波数がA/4の4分周クロックと、基準クロックを8分周した周波数がA/8の8分周クロックとを生成し得るものである。
【0033】
(A−2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有するONU6(6−1〜6−n)の動作、特に、低消費電力の制御動作を、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0034】
ONU6の低消費電力制御部23は、当該ONU6の電源がオンされると、図2に示す処理を開始し、まず、PON終端部11のIFG監視部21D、21Uや、ブリッジ処理部22D、22Uや、物理層処理部12を低消費電力モードで動作させ(ステップ100)、この低消費電力モードでの動作を、PONプロトコル処理部20がPONリンクを確立させるまで継続する(ステップ101)。なお、PONリンクがアップ(確立)していた状態からダウン(切断)状態に切り替わったときも、ステップ100に移行する。
【0035】
ここで、低消費電力モードで動作させる具体的方法は限定されないが、以下のような方法を例示することができる。該当する処理部をリセット状態に設定する。該当する処理部への電力供給を停止する。該当する処理部において主信号の経路を閉塞させ、後段が動作しないように遮断させる。
【0036】
低消費電力制御部23は、上述した低消費電力モードの動作状態において、PONプロトコル処理部20から、PON論理リンク(IEEE802.3ah規格上で規定されているMPCPやOAMのリンク)の確立が通知されると、PON終端部11のIFG監視部21D、21Uや、ブリッジ処理部22D、22Uや、物理層処理部12の低消費電力モードを解除し(ステップ102)、その後、物理層処理部12から、UNIのリンクが確立したという通知が与えられることを待ち受ける(ステップ103)。
【0037】
なお、PONリンクが確立した時点でOLT4とのデータ通信が可能となる。ここで、装置(ONUの種類)によっては、PONリンクが確立していない場合において、ユーザネットワーク側からのアクセスが必要な場合が考えられ、そのような装置では、物理層処理部12は常時低消費電力モードを解除しておく必要がある。例えば、ステップ100の低消費電力モードの対象から、物理層処理部12は情報外される。
【0038】
UNIとのリンクが確立すると、下り方向のEthernetフレーム、又は、上り方向のEthernetフレームの到来を待ち受ける(ステップ104D、104U)。下り方向のEthernetフレームが到来した以降の動作(ステップ104D〜112D)と、上り方向のEthernetフレームが到来した以降の動作(ステップ104U〜112U)は、ほぼ同様であるので、以下では、下り方向のEthernetフレームが到来したときの動作だけを説明する。
【0039】
UNIとのリンクの確立後、下り方向の最初の正常なEthernetフレームが到来したときには、下りIFG監視部21Dでバッファリングが開始され(ステップ105D)、その後、正常フレーム受信間隔の監視も開始され(ステップ106D)、次の正常なEthernetフレームの到来を待ち受ける(ステップ107D)。
【0040】
ここで、正常なEthernetフレームとは、MAC層においてエラーフレームでないフレームをいう。エラーフレームは、IEEE802.3規格上で、FCS(フレームチェックシーケンス)のチェックでエラーとなったフレームや、フレーム長が異常なフレームを指している。
【0041】
次の正常なEthernetフレームが到来すると、そのフレームのバッファリングを開始し(ステップ108D)、バッファリング後に、導通レートを計算すると共に、さらに、新たな正常フレーム受信間隔の監視を開始する(ステップ109D)。
【0042】
計算された導通レートは、低消費電力制御部23からクロック生成部24へ通報され(ステップ110D)、クロック生成部24では、その導通レートに応じて最適なクロック速度を決定し、その速度を有する基準クロック又は分周クロックを下りブリッジ処理部22Dへ供給する(ステップS111D)。その後は、次の正常なEthernetフレームの到来を待ち受ける。
【0043】
なお、このような処理中に、PONプロトコル処理部20によってPONリンクが切断(ダウン)されたと判断されたときには、上述したステップ100に戻り、PON終端部11のIFG監視部21D、21Uや、ブリッジ処理部22D、22Uや、物理層処理部12を低消費電力モードで動作させる。
【0044】
下りブリッジ処理部22Dに与えるクロックの速度(周波数)の制御方法の考え方は、以下の通りである。
【0045】
基本的には最大レートで下りブリッジ処理部22Dを動作させる。正常フレーム受信間隔(IFG)が空いた場合には、高速処理が不要なため、クロック速度を低下させることにより、下りブリッジ処理部22Dにおける電力の低減を図る。
【0046】
UNIとのリンクの確立後、上り方向の最初の正常なEthernetフレームが到来したときには、伝送方向は、上述とは逆であるが、同様な動作(ステップ104U〜111U)が実行される。その詳細説明は省略する。
【0047】
正常フレーム受信間隔(IFG)は、フレームの受信毎の監視でも良く(図2はこの場合である)、ある所定期間毎に算出した平均正常フレーム受信間隔による監視でも良いが、クロック周波数を低下させた後、急激にトラフィックが増加した場合でも追従させることを考慮すると、リアルタイム処理(フレームの受信毎の監視)の方が望ましい。なお、監視区間を大きくとると、クロック周波数を選択する周期も大きくなり、急激な入力トラフィック変化に追従できなくなるため、その場合、IFG監視部21D、21Uに実装されているバッファメモリを大きくして緩衝の役割(例えば、クロックを低減させたことによりブリッジ処理部22D、22Uの処理能力が落ちている状態で入力トラフィックが急激に増えると処理が間に合わなくなるため)を果たす必要がある。
【0048】
また、正常フレーム受信間隔が大きく空いたことにより大幅にクロックレートを低下させると、処理遅延が大きくなるため、システム全体の仕様を考慮した上でクロックレートを選択することが必要となる。
【0049】
図3は、クロックレートの計算例を説明するための図面である。図3では、100Mbpsのフル導通(ワイヤスピード)状態から、正常フレーム受信間隔が開いた場合を想定して示している。
【0050】
図3(A)は、物理速度100Mbpsで、IEEE802.3で規定されている最大フレーム長のEthernetフレームを、最短の正常フレーム受信間隔(IFG)で連続受信している場合を示しており、この状態がフル導通(ワイヤスピード)状態となっている。
【0051】
1つのフレーム(パケット)を通信するためには、8バイト(Preamble)+1514バイト(Ethernetフレーム)+4バイト(FCS)+12バイト(IFG)で合計1538バイト=12304ビットを転送するだけの時間が必要となる。そのため、100Mbpsワイヤスピードでは1秒間当たりのフレーム数は、次式のように、約8127フレーム/秒(pps)となる。
【0052】
100000000(ビット/秒)÷12304(ビット/パケット)
≒8127フレーム/秒(pps)
図3(B)は、図3(A)の場合より、正常フレーム受信間隔(IFG)が10倍開いた場合を示している。すなわち、正常フレーム受信間隔(IFG)が12バイトから120バイトに変化した場合を示している。この場合の1秒間当たりのフレーム数は、次式のように、約7576フレーム/秒(pps)となる。
【0053】
100000000(ビット/秒)÷13168(ビット/パケット)
≒7594フレーム/秒(pps)
すなわち、図3(A)の状態から図3(B)の状態へ導通状態が変化した場合、(1−7594/8127)*100=6.6%だけ導通レートがダウンしたことになる。上記実施形態では、この導通レートの変化(割合)に応じて、出力するクロックの周波数を低減させる。
【0054】
上記のように導通レートが6.6%低下した場合に、出力クロックの周波数を6.6%低下させるようにすることは、クロック生成部24が生成できる周波数が非常に多くなければならず、そのようなクロック生成部24を構成することは実際上できない。
【0055】
そのため、導通レートの低下率の範囲と、出力クロックとして適用する基準クロックや分周クロックの種類とを予め対応付けておき、そのときの導通レートの低下率が属する範囲によって、出力するクロックを選択することとした。例えば、導通レートの低下率が50%未満の場合には基準クロックを選択し、導通レートの低下率が50%以上75%未満のときは2分周クロックを選択し、導通レートの低下率が75%以上87.5%未満のときは4分周クロックを選択し、導通レートの低下率が87.5%以上のときは8分周クロックを選択する。
【0056】
(A−3)実施形態の効果
上記実施形態によれば、ONU内、IFG監視部を設けて導通レートを把握できるようにし、導通レートに応じて、ブリッジ処理部へ供給するクロック周波数を可変させるようにしたので、導通レートが低い状況では消費電力を低下させることができる。このような低消費電力化の構成を、上り方向、下り方向のそれぞれに設けたので、上り方向、下り方向毎に低消費電力の制御を行うことができる。
【0057】
以上のように、上記実施形態によれば、PON及びUNIのリンク確立中において(すなわち、運用中において)、リアルタイムに低消費電力制御を行うことができる。
【0058】
(B)他の実施形態
上記実施形態では、基準クロックに代えて出力するクロックが、基準クロックを分周したクロックであるものを示したが、基準クロックより周波数が低いクロックであれば良く、分周クロックに限定されるものではない。
【0059】
上記実施形態では、正常フレーム受信間隔に基づいた低消費電力化構成をONUに設けたものを示したが、低消費電力化構成をOLTに設けるようにしても良い。
【0060】
上記実施形態では、低消費電力化構成を、E−PONシステムを構成する通信装置に設けたものを示したが、正常なフレーム(通信システムによってパケットと呼ばれているものであっても良い)の通信時における最短のフレーム間隔が規定されている通信システムの通信装置であって下位レイヤ(例えばレイヤ2)におけるフレームの転送処理部を有する通信装置であれば、本発明の技術思想を適用することができる。フレームで転送されるデータの種類は問われないものであり、音声、映像などのデータであっても良い。
【0061】
ここで、その通信装置が中継機能を担っていない場合であれば、低消費電力の制御がなされる処理部は、フレームの受信処理部となる。
【符号の説明】
【0062】
3…光スプリッタ、4…OLT、6、6−1〜6−n…ONU、10…光送受信器、11…PON終端部、12…物理層処理部、20…PONプロトコル処理部、21D…下りIFG監視部、21U…上りIFG監視部、22D…下りブリッジ処理部、22U…上りブリッジ処理部、23…クロック生成部、24…低消費電力制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正常なフレームの通信時における最短のフレーム間隔が規定されている通信装置であって、受信したフレームをクロックに基づいて処理するフレーム処理手段を有する通信装置において、
正常なフレームの受信レートを監視するフレーム受信レート監視手段と、
上記フレーム処理部に与えるクロックを出力するクロック出力手段と、
上記フレーム受信レート監視手段の監視結果に応じ、上記最短のフレーム間隔で定まる基準のフレーム受信レートから、現在のフレーム受信レートの低下度合いを捉え、この低下度合いに応じて、上記クロック出力手段から出力されるクロックの周波数を決定する低消費電力制御手段と
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
当該通信装置が、E−PONシステムにおけるONUであり、上記フレームが、下り方向のEthernetフレームであり、上記フレーム処理手段が下り方向のブリッジ処理を行うものであることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
当該通信装置が、E−PONシステムにおけるONUであり、上記フレームが、上り方向のEthernetフレームであり、上記フレーム処理手段が上り方向のブリッジ処理を行うものであることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
1個の親局通信装置とn個の子局通信装置とがスター状に接続されている1:n接続の通信ネットワークにおいて、
上記各子局通信装置として、請求項1に記載の通信装置を適用したことを特徴とする通信ネットワーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−74430(P2013−74430A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211374(P2011−211374)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(503262509)株式会社オー・エフ・ネットワークス (62)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】