通信装置

【課題】回路的手段によらず、有効受信エリアを自由にかつ低コストで拡張して通過管理や位置管理を行うことができる通信装置を提供すること。
【解決手段】通信装置は、基地局1と携帯機2を備える。携帯機2は、基地局1から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で動作あるいはトリガ起動されて動作し、応答信号を基地局1に送信する。導電性部材3は、その一部が基地局1から送信される電磁波に電磁誘導結合するように、携帯機2の有効受信エリアA内に配設される。これにより、導電性部材3全体が携帯機2に対する基地局1側の送信アンテナとして機能し、基地局1から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機2を動作あるいはトリガ起動して動作させることができる。つまり、有効受信エリアを拡張することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関し、特に、基地局から送信される電磁波により携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができる有効受信エリアを容易に拡張して通過管理や位置管理を行うことができるようにした通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局と携帯機を備え、基地局から送信される電磁波の有効受信エリア内を携帯機が通過するとき、その通過を検知して携帯機、つまり携帯機を伴う人や物品の通過管理を行う通信装置が知られている。
【0003】
図16は、従来のLF帯やUHF帯の電磁波を用いて携帯機の通過管理を行う通信装置を示すブロック図である。この通信装置は、基地局1と携帯機2を備える。基地局1は、LF帯やUHF帯の電磁波を周期的に送信する。携帯機2は、基地局1から送信される電磁波の有効受信エリアA内を通過するとき、その電磁波を受信し、該電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で動作あるいはトリガ起動されて動作し、応答信号を送信する。基地局1は、携帯機2から送信される応答信号を受信して有効受信エリアA内を携帯機2が通過したことを知ることができる。つまり、基地局1は、有効受信エリアAを通過管理エリアとして携帯機2から送信される応答信号を受信することで携帯機2の通過管理を行うことができる。
【0004】
携帯機2の有効受信エリアAは、基地局1(送信アンテナ)から一定距離範囲内のエリアであり、携帯機2は、有効受信エリアA内で基地局1から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機2が動作することができる。
【0005】
携帯機には、パッシブ型携帯機とアクティブ型携帯機とがある。パッシブ型携帯機は、電池を内蔵せず、基地局から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流により生成される電力を動作エネルギとして動作し、応答信号を送信する。
アクティブ型携帯機は、電池を内蔵し、通常はスリープ状態であるが、基地局から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流でトリガ起動されて通常動作状態となり、内蔵する電池の電力を動作エネルギとして応答信号を送信をする。
【0006】
電磁誘導現象による誘導起電力や誘導電流の発生には、基地局から送信される電磁波の特に放射磁界が寄与する。すなわち、携帯機の有効受信エリアは、基地局から送信される電磁波が持つ放射磁界が有効なエリアであり、送信される電磁波の周波数(波長)と送信電力に応じた広さを有する。基地局(送信アンテナ)からの距離が電磁波の4分の1波長(λ/4)の範囲では電界より磁界が優勢であるが、電磁誘導現象による誘導起電力や誘導電流の発生には、電波法上における送信電力の制限を考慮すると、λ/1000程度の距離範囲内が有効となる。この距離範囲内が放射磁界が有効となるエリア、つまり、携帯機の有効受信エリアとなる。例えば、100kHzのLF(Low Frequency)帯の電磁波を使用する場合、基地局(送信アンテナ)から3m程度までの距離範囲内ならば基地局からの放射磁界を使用して携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができる。
例えば、基地局でLF帯を使用する場合とUHF(Ultra-Hight Frequency)帯を使用する場合の有効受信エリアAを比べるとする。LF帯は、UHF帯に比べて波長が100倍〜1000倍長いので、基地局が同一の送信電力を持つ場合、LF帯の有効受信エリアは、UHF帯の有効受信エリアよりはるかに広くなり、携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができるエリアが広いので有利であることがわかる。また、電波法上における送信電力の制限の点からも、LF帯の方がUHF帯よりも大きな送信電力を出力できるので有利である。しかし、携帯機の有効受信エリアが基地局(送信アンテナ)からλ/1000程度の距離範囲内に制限されることに変わりはない。
【0007】
通過管理を行う通信装置においてパッシブ型携帯機を用いるにしてもアクティブ型携帯機を用いるにしても、携帯機の有効受信エリアは、基地局から送信される電磁波、特に、放射磁界による電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができる、基地局(送信アンテナ)から一定距離範囲内のエリアに限られる。すなわち、有効受信エリアは、基地局の送信アンテナ近くの狭いエリア(LF帯の放射磁界の有効受信エリアは数m程度)に限定されていた。
【0008】
従来、基地局から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができる有効受信エリアを拡張するためには、基地局の送信機の出力、携帯機の受信機の受信感度、基地局の送信アンテナの送信効率、携帯機の受信アンテナの受信効率などを改善または増大するという、回路的手段の改良が図られてきた。
【0009】
基地局のエリアを拡げ、有効受信エリアを拡張するために、基地局側に複数の送信アンテナを配設するという手法もある。この手法を原理的に踏襲する例として、トンネル内などの特殊環境下で有効受信エリアを拡張するために使用する漏波ケーブルがある。この場合には、有効受信エリアを拡張するために、基地局の送信回路に送信アンテナを接続する代わりに、漏洩ケーブルをアンテナとして接続する。この手法では漏波ケーブルにインピーダンスマッチングさせてこれを駆動するための専用送信回路が必須となるが、原理的に見て複数の送信アンテナを配設することとなんら変わりはない。
【0010】
一般に、屋内や個別の部屋、建物などで通過管理を行う通信装置では、漏波ケーブルを敷設して有効受信エリアを拡張するようにしたケースはなく、携帯機の有効受信エリアの拡張は、上記したように、専ら基地局の送信回路や送信アンテナ、携帯機の受信回路や受信アンテナといった、回路的手段の改良により図られている。
従来より、通過管理システムと類似した装置として、自動車用キーレスエントリ装置、RFIDタグ装置、ICカード装置などが実用化されているが、これらの装置ではいずれも、基地局から送信される電磁波を携帯機で直接受信して、電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができるエリアを有効受信エリアとしている。
【0011】
非特許文献1には、LF信号を使用して携帯機を起動し、UHF信号を使用して携帯機から基地局へ応答信号を送信する入退室管理システムが記載されている。この入退室管理システムは、タグリーダ、外部アンテナおよびアクティブタグから構成される。ここで、タグリーダは、LF送受信アンテナ、LF送受信回路、UHFアンテナ、UHF受信回路、制御回路(CPU)を備え、外部アンテナは、LFアンテナおよびLF送信回路を備え、アクティブタグは、LF送受信アンテナ、LF送受信回路、UHFアンテナ、UHF送信回路、制御回路(CPU)および電池を備える。アクティブタグは、電池が消耗していなければ、タグリーダからのLF信号の起動パターンにより起動され、ID番号を含むUHF応答信号をUHF送信回路を通じてタグリーダに送信する。しかし、電池が消耗している場合、アクティブタグは、タグリーダからのLF信号により誘起される電力により動作し、LF送信回路から2値のFSK(Frequency Shift Keying)変調したLF信号をタグリーダへ送信し、タグリーダはLF受信回路でこのLF信号を受信する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】鍋嶋 秀夫 他著,"アクティブタグによるハンズフリー入退室管理システム" パナソニック電工技報(Vol.57 No.2),52-57頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の通過管理システムと類似した装置や入退室管理システムのように、基地局から送信される電磁波を携帯機で直接受信して、電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させる通過管理システムや位置管理システムでは、基地局から送信される電磁波の周波数を適当に選択するにしても、携帯機の有効受信エリアは、基地局の送信アンテナから放射磁界が有効となる一定距離範囲内という狭いものであるので、通過管理エリアがこのLF送信アンテナ付近に一義的に限定されるという課題がある。
【0014】
従来は、上述したように、基地局から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができる有効受信エリアを拡張するために、基地局の送信機の出力、携帯機の受信機の受信感度、基地局の送信アンテナの送信効率、携帯機の受信アンテナの受信効率などを増大するという、回路的手段の改良が図られている。しかし、このような手段に頼る場合には、規定された管理エリアの拡張を必要とする際に、通過管理システムを構成する回路的手段を全体的に見直す必要があり、結果としてコストを増大させるという課題がある。また、有効受信エリアは、基地局の送信アンテナから放射磁界が有効となる一定距離範囲内というものであり、自由にエリアの拡張をすることができないという課題もある。
【0015】
通過管理エリアおよび位置管理エリアを複数あるいは任意形状とすることは、通過管理エリアの形状に合わせた特別な送信アンテナを基地局側に設けることで実現することができる。しかし、この場合にはシステムの構成上だけでなく、各送信アンテナから電磁波を送信するタイミング制御などの動作上の複雑化を招き、さらにコスト増大を招く。基地局の送信回路に送信アンテナに代えて漏洩ケーブルを直接接続するという手法によって有効受信エリアを拡張する手法では、漏波ケーブルにインピーダンスマッチングさせてこれを駆動するための専用送信回路が必須となる上、漏洩ケーブルといった特別なケーブルを埋設する必要がある。このため、これは、実際にはトンネル内などの特殊環境下に限って採用されている手法である。
【0016】
本発明の目的は、導電性部材(具体的にはケーブルなど)を一部とする送信用磁界アンテナを用いることで、有効受信エリアを自由にかつ低コストで拡張して通過管理や位置管理を行うことができる通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明は、基地局と携帯機を備え、基地局から送信される電磁波を携帯機が受信することで通過管理や位置管理(通過管理と位置管理のいずれか一方あるいは双方)を行う通信装置において、基地局の送信アンテナから送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができる有効受信エリア内に、導電性部材の一部が含まれる位置関係で基地局の送信アンテナと導電性部材を配置して前記基地局の送信アンテナと導電性部材の一部を電磁結合させることにより、該導電性部材全体を携帯機に対する基地局側の送信アンテナとして機能させることを特徴としている。
ここで、さらに、前記導電性部材から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができる有効受信エリア内に他の導電性部材の一部を配置し、該導電性部材全体も基地局側の送信アンテナとして機能させることもできる。
このように、本発明は、基地局の送信アンテナに電磁誘導結合した送信用磁界アンテナを配置することにより、携帯機に対する基地局側の有効受信エリアを拡張することを基本的特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、本来の送信アンテナからの有効受信エリアに加えて、導電性部材を基準とする同等の有効受信エリアを構築することができるので、容易に受信有効エリアを拡張することができ、従来の漏波ケーブル方式のように、漏洩ケーブルといった特殊なケーブルを埋設し、漏波ケーブルにインピーダンスマッチングさせてこれを駆動するための専用送信回路を準備するというような必要がない。
【0019】
ここで、さらに、導電性部材から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができる有効受信エリア内に他の導電性部材の一部を配置し、この導電性部材全体も基地局側の送信アンテナとして機能させれば、更にエリアを拡張することができる(2次エリア形成によるエリアの拡張)。
【0020】
さらに、本発明で使用することができる導電性部材の配置や形状は任意であるので、有効受信エリアを自由に設定し、拡張することができる。また、これにより基地局の設置面および配置上の自由度を高めることもできる。
【0021】
導電性部材としては、銀線、銅線、アルミニウム線、鉄線、黄銅線、ステンレス線などの比較的容易に入手できる低抵抗の線材を使用することができ、有効受信エリアは、導電性部材に回路的に結合したアッテネータで調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る通信装置の実施形態を示すブロック図である。
【図2】基地局のLF送信アンテナとLF送信磁界アンテナの電磁誘導的結合の具体例を示す図である。
【図3】LF有効受信エリアが拡張される様子を示す図である。
【図4】導電性部材の経路を円形にした場合に形成されるドーナツ型の有効受信エリアを示す図である。
【図5】導電性部材の経路を円形にした場合に形成されるアンパン型の有効受信エリアの例を示す図である。
【図6】導電性部材の経路を方形にした場合に形成される口の字型の有効受信エリアを示す図である。
【図7】導電性部材の経路を方形にした場合に形成されるカステラ型の有効受信エリアを示す図である。
【図8】導電性部材により形成される分布定数回路の影響の説明図である。
【図9】本発明に係る通信装置の他の実施形態を示すブロック図である。
【図10】本発明で使用できる基地局およびLF送信磁界アンテナの実施形態を示すブロック図である。
【図11】本発明で使用できる携帯機の実施形態を示すブロック図である。
【図12】本発明に係る通信装置における基地局と携帯機間の送信および受信のタイミングの一例を示すタイムチャートである。
【図13】本発明に係る通信装置における基本的な動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明に係る通信装置の一利用形態を示すブロック図である。
【図15】本発明に係る通信装置が適用された具体例を示すブロック図である。
【図16】従来の通過管理を行う通信装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明を説明する。以下では、基地局から携帯機に送信される電磁波がLF帯の信号(LF信号)であり、携帯機から基地局に送信される電磁波がUHF帯の信号(UHF信号)であり、携帯機がアクティブ型携帯機である場合を例に挙げて説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る通信装置の実施形態を示すブロック図である。
【0025】
本実施形態の通信装置は、基地局1と携帯機2、さらに導電性部材3を備える。基地局1は、LF信号を周期的に送信し、これに応答して携帯機2から送信されるUHF応答信号を受信する。基地局1から送信されるLF信号は、携帯機2をトリガ起動するための起動パターンを含む。LF信号は、例えば、マンチェスタ符号化により符号化される。マンチェスタ符号化は、高電位から低電位への遷移で「1」が表現され、低電位から高電位への遷移で「0」が表現されるものであり、比較的簡単な回路構成で実現可能であるので、基地局1でのLF信号の符号化に好ましい。
【0026】
携帯機2は、基地局1から送信されるLF信号を受信し、電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流でトリガ起動されて動作し、UHF応答信号を基地局1に送信する。ここでは、携帯機2がアクティブ型携帯機であると想定しているので、携帯機2は、基地局1から送信されるLF信号の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流でトリガ起動され、内蔵する電池の電力で動作する。図示のエリアAは、基地局1のLF送信アンテナから送信される電磁波をそのまま携帯機2が受信し、電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流でトリガ起動される有効受信エリア、すなわち、基地局1のLF送信アンテナから送信される電磁波が持つ放射磁界が有効なエリア(放射磁界有効エリア)であり、これは、図16に示された従来の通信装置での有効受信エリアAと同じである。有効受信エリアAは、基地局1のLF送信アンテナから送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機2が動作することができるエリアであるが、電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流の発生には、電波法上の送信電力の制限を考慮すると、基地局から送信される電磁波の波長λの1/1000程度のエリア内の放射磁界が特に有効となるので、そのエリアを有効受信エリアAと考えればよい。もちろん基地局1の送信電力を増大させれば、それに応じて有効受信エリアAは広くなる。
【0027】
導電性部材3は、基地局1のLF送信アンテナと電磁誘導結合するように、その一部が有効受信エリアA内に含まれるが、他の部分は、有効受信エリアA外になるように配設される。導電性部材3は、基地局1のLF送信アンテナから送信される電磁波が持つ放射磁界内で電磁誘導による電磁結合を生じてLF送信用磁界アンテナとして機能すればよいので、表面部分が塗装されていても、絶縁体でコーテングされていても構わない。
【0028】
基地局1がLF信号を送信すると、電磁誘導現象により誘導起電力または誘導電流が有効受信エリアA内にある導電性部材3内に生じる。これにより、導電性部材3全体が基地局1側のLF送信用磁界アンテナとして機能する。すなわち、有効受信エリアが拡張される。図1では、拡張された有効受信エリアを網掛けで示している。以下でも同様に、拡張された有効受信エリアを網掛けで示すこととする。
【0029】
導電性部材3は、建築物の構造物として既に張り巡らされているものを活用してもよいし、有効受信エリアを拡張するために新たに張り巡したものでもよい。導電性部材3として活用できる建築物の構造物の例としては、鉄やアルミなどからなる金属性窓枠や出入口ドア枠、建築物の金属性基礎などがある。既に張り巡らされているものを導電性部材3として活用する場合には、導電性部材3がLF送信磁界アンテナのアンテナ線路の一部として機能するように接続、回路化して基地局1のLF送信アンテナと電磁誘導結合させる(図15に例を示す。)。導電性部材3は、LF送信用磁界アンテナの一部として機能するので、以下では、それをLF送信用磁界アンテナ3と称する。
【0030】
本実施形態では、基地局1のLF送信アンテナとLF送信用磁界アンテナ3の電磁誘導結合の効率を向上させるために、LF送信磁界アンテナ3の一部としてコイル4を使用し、このコイル4を基地局1のLF送信アンテナの直列共振回路または並列共振回路の一部であるコイルに対向させて配置している。
【0031】
図2は、基地局1のLF送信アンテナとLF送信磁界アンテナ3の電磁誘導結合の具体例を示す図である。なお、ATT5は、アッテネータである。図2では、基地局1のLF送信アンテナの共振回路のコイルにそれと同じコイル4を対向配置することにより基地局1のLF送信アンテナとLF送信磁界アンテナ3間に磁気回路を形成し、このコイル4を含めて導電性部材による経路を形成している。このコイル間の距離、巻き数比により電磁誘導の結合効率を容易に変化させることができる。また、ATT5により誘導電流を制御して、LF有効受信エリアを調整することができる。
【0032】
図3は、基地局1のLF送信アンテナとLF送信磁界アンテナ3の電磁誘導結合およびLF有効受信エリアが拡張される様子を示す図である。図3に示すように、基地局1のLF送信アンテナのコイルとLF送信磁界アンテナ3の一部を形成するコイル4を、例えば1cm以内に近づけ、両者を電磁誘導結合させれば、導電性部材の経路に沿って半径rのLF有効受信エリアが形成される。電磁誘導結合は、LF送信磁界アンテナ3の一部(コイル4)が基地局1から送信されるLF信号の有効受信エリアA内に存在すれば生じるが、基地局1の送信アンテナにLF送信磁界アンテナ3の一部(コイル4)をできるだけ近接させる方が効率上は好ましい。
【0033】
導電性部材を引き回す経路の形状は、方形に限られない。図4および図5は、導電性部材の経路を円形にした場合に形成されるLF有効受信エリアを示す。導電性部材の経路が円形の場合、一般的には、図4(a)〜(c)(斜視図、上面図,側面図)に示すように、中央に穴の開いているドーナツ型の有効受信エリアが形成される。図5は、導電性部材の経路長を短くした場合である。この場合には、図5(a)〜(c)(斜視図、上面図、側面図)に示すように、中央に穴の開いていないアンパン型の有効受信エリアが形成される。
【0034】
導電性部材の経路が方形の場合でも、同様に、中央に穴の開いている口の字型の有効受信エリアや中央に穴の開いていないカステラ型の有効受信エリアが形成される。図6((a)斜視図、(b)上面図、(c)側面図)は、導電性部材の経路が方形の場合に一般的に形成される口の字型の有効受信エリアを示し、図7((a)斜視図、(b)上面図、(c)側面図)は、導電性部材の経路長を短くした場合に形成される中央に穴の開いていないカステラ型の有効受信エリアを示す。
【0035】
さらに、図2に示すように、LF送信用磁界アンテナ3の経路にアッテネータ(ATT)を設ければ、LF送信用磁界アンテナ3内の誘導電流を絞ることができるので、結果としてLF送信用磁界アンテナ3からの磁界放射半径rを絞ることができる。このように、LF送信用磁界アンテナ3の経路にアッテネータ(ATT)を設けることにより、LF有効受信エリアの範囲rを変更できるだけでなく、LF有効受信エリアの形状を上記のアンパン型からドーナツ型へ、カステラ型から口の字型に、あるいはその逆に容易に変更することもできる。
【0036】
以下、本発明における作用効果を具体的数値を上げて説明する。
【0037】
直径0.9mm、長さ16m、電気抵抗5Ωの被覆鉄線により一辺4mの正方形を形成し、これをLF送信用磁界アンテナ3の経路の一部として用いれば、図7に示すように、中央に穴の空いていないカステラ型のLF有効受信エリアが形成される。
ここで、例えば、携帯機を所有する利用者が、このLF有効受信エリア内に入れば、携帯機は、LF電波を受信してトリガ起動され、IDなどのUHF応答信号を基地局側へ送信する。また、携帯機を所有する利用者が、このLF有効受信エリア外に出れば、携帯機は、LF電波を受信しないので、トリガ起動されなくなる。したがって、携帯機は、基地局へUHF応答信号を送信しない。
【0038】
このようにして拡張されたLF有効受信エリアを活用して、携帯機を所有する人や物の所在、位置を確認することができる。
【0039】
また、図2に示すように、LF送信用磁界アンテナ3の経路にアッテネータ(ATT)を設け、LF送信用磁界アンテナ3に流れる誘導電流を絞ることで、LF送信用磁界アンテナを形成する被覆鉄線からの放射する磁界の半径rを小さくすることができる。これにより、中央に穴の開いていないカステラ型のLF有効受信エリアから中央に穴の空いた口の字型のLF有効受信エリアに変更することができる(例えば、アッテネータの抵抗値を1kΩとすることで、放射される磁界の半径rを3mから半径1mに変更することができる)。
【0040】
このLF有効受信エリアの調節方法は、アッテネータで誘導電流を絞るだけであるので、基地局のLF送信回路のアンテナ部分にアッテネータを設ける場合に生じるようなLF周波数の変動やQ値の変化が発生しない。したがって、設置時に導電性部材3の長さを変えたり、形状を円形から方形に変えるなどの方法で、LF有効受信エリアの調整を行なっても、基地局1の送信回路でのインピーダンスの再マッチングが不要であるという点で優れている。
【0041】
実際の配置では、導電性部材は分布定数回路を形成するので、導電性部材を用いてLF送信用磁界アンテナ3の一部回路を形成する際には、導電性部材による経路と地面間および導電性部材の経路と建物間の容量性結合を考慮する必要がある。
【0042】
図8は、導電性部材により形成される分布定数回路の影響の説明図である。同図(a)に示すように、導電性部材が形成する分布定数回路は、レジスタンス成分(R)とキャパシタンス成分(C)とインダクタンス成分(L)を有する。
【0043】
基地局1のLF送信アンテナからの電磁誘導でLF送信用磁界アンテナ3に誘起された電磁界エネルギーは、この導電性部材の経路を経由する際に、この分布定数回路により高周波成分がグランド面に流れる。導電性部材から放射される磁界は、導電性部材が形成する分布定数回路により減衰し、それにより形成されるLF有効受信エリアの半径rも経路に沿って徐々に小さくなる。例えば、導電性部材の経路が図8(b)に示すように方形である場合、被覆鉄線からの放射される磁界の半径rは、同図(c)に示すように、経路に沿ってA>B,D>Cの関係になる。実用的で十分なLF有効受信エリアの半径rを得るには、使用する導電性部材の抵抗値と長さを例えば、20mと抵抗5Ωなどというように、適当に制約すればよい。導電性部材の周回抵抗が10KΩ程度以下ならば、導電性部材全体を送信アンテナとして機能させることができる。
【0044】
上記のようにして、図1に示した基地局1の有効受信エリアAが拡張されるので、携帯機2は、従来の有効受信エリアAを外れていてもLF送信用磁界アンテナ3の近くであるならば、基地局1から送信されるLF信号をLF送信用磁界アンテナ3を介して受信することができ、電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流でトリガ起動される。すなわち、有効受信エリアは、LF送信用磁界アンテナ3から半径rのエリアも含むように拡張され、携帯機2は、その有効受信エリア内であれば、基地局1から送信されるLF信号によりトリガ起動される。
【0045】
携帯機(アクティブ型)2は、基地局1から送信されるLF信号によりトリガ起動されると、内蔵する電池の電力で動作し、UHF応答信号を送信する。UHF応答信号は、通信だけのために基地局1に届けばよい電波であるので、携帯機2から基地局1への応答に際しては、電磁誘導による磁界の効果を必要としない。応答信号が届く距離の点からは、LF帯よりUHF帯の方が有利である。携帯機から送信されるUHF応答信号は、基地局1で受信される。
【0046】
図9は、本発明に係る通信装置の他の実施形態を示すブロック図である。図9において図1と同一あるいは同等部分には同じ符号を付している。本実施形態では、LF送信用磁界アンテナ3の経路に一部を、磁気シールド材を使用して接地シールドすることで、導電部材の経路に沿って形成されるLF有効受信エリアAを部分的に絞るようにしている。このように、シールド線という比較的入手性のよい部材を使用して接地することで、LF有効受信エリアを部分的に調節することが可能となり、さらにLF有効受信エリアを自由に形成することが可能となる。
【0047】
図10は、本発明で使用できる基地局およびLF送信磁界アンテナの実施形態を示すブロック図である。
【0048】
この実施形態の基地局およびLF送信磁界アンテナは、LF送信アンテナ21、出力調整ボリューム22、パワーアンプ23、LF送信回路24、基地局制御回路25、UHF受信回路26、UHF受信アンテナ27および電源28を備え、さらに、上記したように、LF送信用磁界アンテナ3を備える。LF送信アンテナ21、パワーアンプ23、LF送信回路24、基地局制御回路25およびUHF受信回路26は、電源28からの電力により動作する。出力調整ボリューム22は、出力調整減衰器であってもよい。
【0049】
LF送信回路24は、基地局制御回路25から送出される信号をデジタル化し、さらに変調してLF信号として送出する。LF信号は、携帯機をトリガ起動させるための起動パターンを含む。LF信号は、さらに認証用信号などの通信用LF信号を含んでもよい。LF送信回路24にLF信号を暗号化する機能を持たせてもよい。LF送信回路24から送出されるLF信号は、パワーアンプ3で増幅され、さらに出力調整ボリューム22でレベル調整された後、LF送信アンテナ21から送信される。出力ボリューム22は、LF送信アンテナ21から送信される出力レベルを調整するものであるが、省略することもできる。
【0050】
UHF受信アンテナ27とUHF受信回路26は、携帯機から送信されるUHF応答信号を受信するUHF受信手段として機能する。UHF受信回路26は、携帯機から送信されるUHF応答信号が暗号化されていれば、UHF応答信号を復号する機能も有する。UHF受信アンテナ27とUHF受信回路26で受信されたUHF応答信号は、基地局制御回路25へ送出される。
【0051】
基地局制御回路25は、UHF受信アンテナ27とUHF受信回路26で受信されたUHF応答信号に従って必要な制御、例えば、入退室管理装置の場合には、室入口ドアのロック開閉の制御を行う。このために、基地局制御回路25は、外部機器との間でデータをやり取りするインタフェースを備えている。本発明を通過管理や位置管理を行うシステムに利用する場合、携帯機のID認証結果に基づくイベント情報(携帯機の入退出などの情報)を、このインタフェースからロギングデータとしてログサーバなどへ出力すればよい。
【0052】
また、基地局制御回路25は、LF送信回路24とUHF受信回路26が動作するタイミングを制御する。このタイミングの制御については、後で詳細に説明するが、基地局がLF信号を送信するタイミングとUHF応答信号を受信するタイミングとが重ならないようにする。この際、LF信号の回り込みの空間的伝播遅延分も考慮する。
【0053】
図11は、本発明で使用できる携帯機の実施形態を示すブロック図である。
【0054】
この実施形態の携帯機は、LF受信アンテナ31、LF受信回路32、携帯機制御回路33、UHF送信回路34およびUHF送信アンテナ35を備える。ここではアクティブ型携帯機を想定しているので、携帯機は、さらに電池を内蔵するが、図示を省略している。LF受信回路32、携帯機制御回路33およびUHF送信回路34は、基地局(LF送信アンテナあるいはLF送信用磁界アンテナ)から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流でトリガ起動され、内蔵する電池の電力で応答動作する。
【0055】
LF受信アンテナ31およびLF受信回路32は、基地局から送信されるLF信号を受信し、受信したLF信号を復調する機能を有する。また、LF受信回路32は、基地局から送信されるLF信号が暗号化されていれば、その信号を復号する機能を有する。
【0056】
携帯機制御回路33は、LF受信回路26とUHF送信回路34が動作するタイミングを制御し、また、LF受信アンテナ31およびLF受信回路32を介して受信されたLF信号に従って携帯機内部の回路の起動や表示部の表示などの処理を行う。また、UHF送信回路34およびUHF送信アンテナ35を介して基地局に所定のコマンドやIDデータなどを含むUHF応答信号の送信を指示する。UHF送信回路34およびUHF送信アンテナ35は、この指示に従ってUHF応答信号を送信する。
【0057】
LF受信回路32とUHF送信回路34が動作するタイミング制御では、基地局と同様に、UHF応答信号を送信するタイミングとLF信号を受信するタイミングとが重ならないようにする。この際、UHF応答信号の回り込みの空間的伝播遅延分も考慮する。具体的には、携帯機制御回路33によるタイミング制御を、基地局制御回路25でのタイミング制御に対応して行う。このタイミング制御は、基地局から送信される信号が携帯機で受信されるタイミングに基づいて、例えば、カウンタを用いて制御することで実現することができる。
【0058】
図12は、本発明に係る通信装置における基地局と携帯機間の送信および受信のタイミングの一例を示すタイムチャートである。
【0059】
基地局は、LF送信タイミング(TSL)と休止を繰り返す。また、休止の期間内の予め設定された期間にUHF応答受信タイミング(TRU)を設定する。LF送信タイミングでは、携帯機へ起動パターンを含むLF信号を送信し、UHF応答受信タイミングでは、携帯機からのUHF応答信号を待つ。休止は、1つの周波数を継続して占有しないようにするために設けるものである(電波法の規定に従う)。
【0060】
携帯機は、LF受信タイミング(TRL)と休止を繰り返す。また、休止の期間内の予め設定された期間にUHF応答送信タイミング(TSU)を設定する。LF受信タイミング、休止、UHF応答送信タイミングはそれぞれ、基地局でのLF送信タイミング、休止、UHF応答受信タイミングに対応する。ただし、携帯機でのLF受信タイミング、休止の期間は、基地局のLF送信タイミング、休止の期間に対し遅延補正量τ1だけ遅らせ、基地局でのUHF応答受信タイミングは、携帯機のUHF応答送信タイミングに対し遅延補正量τ3だけ遅らせる。τ1、τ3は、LF信号、UHF応答信号の回り込みの空間的伝播遅延分に相当する時間以上に設定する。
【0061】
また、UHF応答送信タイミングの開始時点を、LF受信タイミングの終了時点より遅延補正量τ2だけ遅らせる。遅延補正量τ2は、携帯機側でUHF応答信号がLF信号の受信から影響されるのを確実に回避するために、例えば、LF信号(データ)の1ビット相当分などの値に設定する。さらに、基地局側は、LF送信とUHF受信を連続して動作させる際にも、携帯機からのUHF応答信号がLF送信回路側に回り込んで次のLF送信が妨害されないように、基地局側のLF送信タイミングの開始時点より前に間隔(例えば、数msec〜数十msec)をあけてUHF受信タイミングを終了できるように、携帯機側のUHF送信タイミングを設定する。このことにより、基地局においては、LF送信タイミングとUHF応答受信タイミングとの間に間隔を持つので、LF信号がUHF受信回路側に回り込むことによる妨害も生じない。
【0062】
携帯機は、LF受信タイミングで、基地局からLF送信タイミングで送信されるLF信号を受信してトリガ起動され、必要に応じて、UHF応答送信タイミング内にUHF応答信号を送信する。基地局は、携帯機から送信されるUHF応答信号をUHF応答受信タイミングで待つ。
【0063】
図12は、基地局からLF信号を2回繰り返して送信をする場合のタイムチャートを示しているが、実際には、基地局から携帯機にLF信号を送信し、該LF信号を受信してトリガ起動される携帯機からUHF応答信号を送信し、該UHF応答信号を基地局で受信するという動作を1回で終了させてもよいし、3回以上繰り返してもよい。
【0064】
図12に示すタイムチャートに示すように、基地局と携帯機間でのLF信号やUHF信号の送受信に際し、送受信タイミングに遅延補正量τ1、τ2、τ3を持たせることにより、基地局においては、LF送信アンテナから送信されるLF信号の電磁波が持つ放射磁界がUHF受信回路側へ回り込むことによる雑音、LF送信アンテナのアンテナループとUHF受信アンテナのアンテナループ相互間での導体パターン上に誘起する互いの電磁界によるアンテナ効果による雑音を抑制することができる。また、携帯機においては、UHF送信アンテナから送信されるUHF応答信号がLF受信回路側へ回り込むことによる雑音、LF受信アンテナのアンテナループとUHF送信アンテナのアンテナループ相互間での導体パターン上に誘起する互いの電磁界によるアンテナ効果による雑音を抑制することができる。
【0065】
基地局と携帯機間の通信に際してのセキュリティ性を確保するために、基地局および携帯機にその機能を持たせるのが好ましい。セキュリティ性の確保には、例えば、基地局と携帯機を個別に識別する方法とLF信号を暗号化する方法のいずれか一方あるいは両方を利用することができる。
【0066】
基地局と携帯機を個別に識別する方法では、予め基地局と携帯機それぞれに個別のIDを付与しておき、そのIDを基にグループ内での通信を可能にする。通信が可能なグループに属する基地局と複数の携帯機を識別するために、グループとなる基地局IDと複数の携帯機IDの組み合わせテーブルを基地局のメモリと携帯機のメモリにそれぞれ登録しておき、それらのIDを使用して基地局と携帯機を個別に識別する。
【0067】
具体的には、基地局から基地局IDを含むLF信号を送信する。携帯機は、受信したLF信号に含まれる基地局IDが自携帯機を含む通信可能なグループ内の基地局IDであれば、正常に起動して自携帯機IDを含むUHF応答信号を送信する。該当する基地局IDでない場合には、携帯機は応答しないので、不要なUHF電波を出力しない。基地局は、携帯機から送信されるUHF応答信号を受信し、それに含まれる携帯機IDが自基地局を含む通信可能なグループ内の携帯機IDであれば、正しいUHF応答信号と認識する。
【0068】
LF信号を暗号化する方法では、一般的なM系列カウンタを用いたローリングコード方式を採用することができる。送信するLF信号のデータ配列や有効データの配置・抽出において、グループに属する基地局と携帯機でユニークな対応関係と初期値を用い、単純なローリングコード方式とは異なる方法でLF信号の暗号化、復合化を行なうようにしてもよい。
【0069】
図13は、本発明に係る通信装置における基本的な動作を示すフローチャートである。ここでは、基地局と携帯機を個別に識別する方法を採用して、セキュリティ性を確保するようにしている。
【0070】
まず、基地局においてトリガが与えられたか否かを判定する(S11)。トリガは、基地局の電源がオンであれば、LF送信タイミング(TSL)が開始する各タイミングで与えられる。トリガが与えられなければ、トリガが与えられるまで待つ。トリガが与えられれば、LF送信タイミング(TSL)となり、基地局は、自基地局IDを含むLF信号を送信する(S12)。LF信号の送信は、LF送信タイミングの期間(TSL)中で継続して行われ、LF送信タイミングの期間(TSL)が経過すれば終了する。携帯機は、基地局から送信されたLF信号を受信してトリガ起動され、これによりLF受信回路、携帯機制御回路およびUHF送信回路が起動する(S13〜S15)。
【0071】
次に、携帯機は、基地局から送信されるIF信号に基づいて正当性認証を行う(S16)。ここで正当性が認証されれば、携帯機は、UHF応答信号を送信する(S17)。正当性認証は、具体的には、上述したように、グループを構成する基地局IDに基づいて行い、受信したLF信号に含まれる基地局IDが自携帯機を含む通信可能なグループ内の基地局IDであれば、正常に起動して自携帯機のIDを含むUHF応答信号を送信する。しかし、正当性が認証されなければ、ステップに戻る。
【0072】
携帯機は、UHF応答送信タイミングの期間(TSU)内においてUHF応答信号を送信する(S17)。このUHF応答信号は、自携帯機IDを含む。基地局は、UHF応答受信タイミングの期間(TRU)内においてUHF応答信号を受信する(S18)。ここでは、UHF応答信号に含まれる基地局IDにより携帯機の正当性認証も行う。その後、必要に応じてステップを繰り返す。
【0073】
図14は、本発明に係る通信装置の一利用形態を示すブロック図である。本利用形態は、通過管理や位置管理を行なうシステムに本発明に係る通信装置を2つ利用する場合の例であり、図14に示すように、図1の通信装置を2つ準備し、各通信装置の基地局1をログサーバCに接続している。本利用形態によれば、 それぞれの基地局1から定期的にLF信号(トリガ信号)を送出することで、一方の通信装置のLF有効受信エリア(ゾーンA)と他方の通信装置のLF有効受信エリア(ゾーンB)の内外に携帯機を持つ利用者が存在するか否かを判別することができ、利用者の位置管理や通過管理を詳細に行うことができる。
【0074】
具体的には、携帯機を所持した利用者が、一方の通信装置のLF有効受信エリア(ゾーンA)に入れば、ゾーンAの基地局1は携帯機の応答IDを受信するので、該基地局1から判定信号が得られるが、利用者がゾーンAから出れば判定信号が得られなくなる。また、携帯機を所持した利用者が、他方の通信装置のLF有効受信エリア(ゾーンB) に入れば、ゾーンBの基地局1は携帯機の応答IDを受信するので、該基地局1から判定信号が得られるが、利用者がゾーンBから出れば判定信号が得られなくなる。これにより利用者の所在を判別できる。
【0075】
この手法は、携帯機を所持した利用者が、自由に形成したゾーン内に居るか居ないかで判別するものであるので、従来の電波強度による所在の判別方式や複数の基地局を利用した3点測量による位置判定システムに比べ位置精度を飛躍的に向上させることができる。さらに、携帯機を所持した利用者がゾーンAからゾーンBに移動することを判別できるので、例えば、廊下の右と左にゾーンAとゾーンBを配置することで、利用者が廊下の右から左に移動したのか、左から右に移動したのかを、基地局1に接続したログサーバCのログデータだけで判定することができる。
【0076】
図15は、本発明に係る通信装置が適用された具体例を示すブロック図である。
【0077】
この具体例は、本発明に係る通信装置が、図15(a)に示す学校建築物の教室への人の入退出を管理するシステムに適用された場合の例であり、図15(b)に示すように、基地局1(LF送信アンテナ)から一定距離のエリアを携帯機の有効受信エリアAとしたとき、基地局1(LF送信アンテナ)は、有効受信エリアAが教室の金属性窓枠の一部を含むように配設される。一般に金属性窓枠には教室の前ドア枠および後ドア枠が金属性基礎により導電的に接続されている。前ドア枠および後ドア枠も金属からなり、導電性である。金属性窓枠に、LF送信アンテナの共振回路のコイルと結合するコイル4を設けることにより、効果的な電磁誘導結合を実現することができる。電磁誘導現象による誘導電流が流れる経路の周回抵抗が10KΩ程度以下であるならば、窓枠、前ドア枠、後ドア枠などの金属性部分の全体がLF送信用磁界アンテナとして機能する。このように、建築物の構造上、建物の窓枠やドア枠が金属性であり、それらが金属性基礎で導電的に接続されていれば、電磁誘導現象による誘導電流が流れる経路の周回抵抗は小さいので、それらの部材を金属で新たに接続して導電性を持たせることは不要である。なお、周回経路を形成しなくても、経路に接続された導電性部分は、その接続部とほぼ同電位と見ることができるので、この部分もLF送信用磁界アンテナ3として機能させることができる。
【0078】
以上の構成において、基地局1の送信アンテナからの放射磁界内にある金属性窓枠の一部がこの放射磁界と電磁結合する。金属性窓枠と前ドア枠と後ドア枠は全て導電性であり、それらは導電性の金属性基礎で電気的に接続されているので、金属性窓枠、教室の前ドア枠および後ドア枠の全体が基地局1側の送信アンテナ(アレイ)として機能する。すなわち、有効受信エリアAは、教室の前ドア枠および後ドア枠の近傍のエリアを含むように拡張される。
【0079】
ここで、携帯機を携えた人が教室の前ドアあるいは後ドアを通って入退室すると、携帯機が拡張された有効受信エリア内を通過することになる。したがって、アクティブ型携帯機は、基地局から送信されるLF信号を受信してトリガ起動され、内蔵する電池の電力で動作してUHF応答信号を基地局に送信する。基地局は、携帯機から送信されるUHF応答信号を受信することにより、教室への人の入退出を知ることができる。なお、携帯機を携えた人が窓から出入りした場合でも、携帯機は、基地局から送信されるLF信号を受信してトリガ起動されて動作し、UHF応答信号を基地局に送信するので、基地局ではそれを知ることができる。
実際の応用例としては、廊下側や窓側に設置された赤外線センサーや監視カメラなどと連携させて、携帯機を持たずに前ドア、後ドアや窓から出入りした場合に異常入退出と基地局側で判断して、警報を鳴らすなどの形で簡便に利用できる。
【0080】
以上実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、基地局から携帯機へ送信される信号がLF信号であり、携帯機から基地局へ送信される信号がUHF信号であるとしたが、基地局と携帯機間で送受信される信号の周波数帯は、それに限定されない。例えば、UHF帯のなかでも10MHzクラスと1GHzクラスとでは周波数が100倍異なり、電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流には、使用する周波数により差が生じる。一般に低周波側である10MHzクラスの周波数を選択すれば、1GHzクラスの周波数の場合より有効受信エリアの面で有利になるが、このような場合でも、導電性部材の配置により有効受信エリアをさらに拡張することができ、本発明は、基地局から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機を動作させる通信装置において、有効受信エリアを拡張する場合に適用することができる。
【0081】
また、携帯機は、アクティブ型携帯機に限らず、パッシブ型携帯機であってもよい。アクティブ型携帯機が内蔵する電池とは異なり、パッシブ型携帯機では、携帯機を動作させるのに十分な動作エネルギを放射磁界による電磁誘導で確保する必要があるが、基地局から送信される電磁波のみで携帯機を動作させることができる。また、本発明での携帯機の利用方法には、応答信号を基地局に送信せずとも、有効受信エリア内に携帯機があることをLEDを点灯させたり、液晶に文字表示させたり、ブザー音を鳴らすなどの方法で利用者に知らせる手段も有効である。
【0082】
また、本発明は、人の入退出などの通過だけでなく、物品に携帯機を添えておけば、物品の通過管理にも適用できる。また、携帯機から基地局に応答信号を送信することは必ずしも必要でない。例えば、前述のように基地局から送信される電磁波を受信した携帯機が点灯、表示、警報などを発生するようにしてもよい。
【0083】
さらに、赤外線センサなどの他のセンサを併用すれば、携帯機を携帯している人や物品の通過を許可し、携帯機を携帯していない人や物品の通過を許可しないなどといった通過管理システムも構成できる。これは、他のセンサの検知信号と携帯機から応答信号の両者が得られた場合、すなわち両信号のAND出力が出力された場合だけ通過を許可するようにすることで実現できる。
【符号の説明】
【0084】
1・・・基地局、2・・・携帯機、3,3-1〜3-3・・・導電性部材、4・・・コイル、5・・・アッテネータ、21・・・LF送信アンテナ、22・・・出力調整ボリューム、23・・・パワーアンプ、24・・・LF送信回路、25・・・基地局制御回路、26・・・UHF受信回路、27・・・UHF受信アンテナ、28・・・電源、31・・・LF受信アンテナ、32・・・LF受信回路、33・・・携帯機制御回路、34・・・UHF送信回路、35・・・UHF送信アンテナ、C・・・ログサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と携帯機を備え、基地局から送信される電磁波を携帯機が受信することで通過管理や位置管理を行う通信装置において、
基地局の送信アンテナから送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができる有効受信エリア内に、導電性部材の一部が含まれる位置関係で基地局の送信アンテナと導電性部材を配置して前記基地局の送信アンテナと導電性部材の一部を電磁誘導結合させることにより、該導電性部材全体を携帯機に対する基地局側の送信アンテナとして機能させることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
基地局の送信アンテナから送信される電磁波の波長をλとしたとき、λ/1000のエリア内に導電性部材の一部が含まれる位置関係で基地局の送信アンテナと導電性部材を配置することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記基地局の送信アンテナの共振回路を構成するコイルに対向して前記導電性部材に接続されたコイルを配置し、これにより前記基地局の送信アンテナと導電性部材の一部を電磁誘導結合させることを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記導電性部材を含んで形成される送信アンテナの経路に、アッテネータが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項5】
前記導電性部材を含んで形成される送信アンテナの経路の一部が、磁気シールド材を使用して接地シールドされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項6】
前記導電性部材から送信される電磁波の電磁誘導現象による誘導起電力または誘導電流で携帯機を動作あるいはトリガ起動して動作させることができる有効受信エリア内に、さらに他の導電性部材の一部を配置して該導電性部材全体も基地局側の送信アンテナとして機能させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項7】
前記基地局から前記携帯機にLF帯の信号が送信され、前記携帯機から前記基地局にUHF帯の信号が送信されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項8】
前記基地局から前記携帯機にUHF帯の信号が送信され、前記携帯機から前記基地局に異なるUHF帯の信号が送信されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項9】
前記基地局から送信される電磁波は、マンチェスタ符号化されたデジタル信号であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つの請求項に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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