説明

通報装置

【課題】設定データの登録時にのみ必要な回路やテンキーなどの設定専用のボタンを減少して装置全体の簡略化がなされているともに、併設電話機を接続する構成をとる必要がない通報装置を提供することにある。
【解決手段】異状状態を検知するためのセンサが検知した検知出力に対応して、予め登録された通報先にその異状状態を通報回線を介して自動通報するための通報装置である。前記通報回線とは異なる他の通信回線通に接続された任意の電話機から伝送される前記通報先等の情報として入力されるPB信号の受信可否を切替するモードスイッチがそのPB信号の受信可能状態にセットされたときに、PB信号を受信してそのPB信号に対応する設定データをメモリに記憶させておき、設定データに対応する通報先に異状状態が通報されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通報装置に関するものであり、特に、予め定めた異状状態を検知するために配置された操作ボタンを含む少なくとも一つのセンサが検知した検知出力に対応して、その異状事態発生の時に予め登録した通報先に自動通報を行う通報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の通報装置、例えば、非常通報装置では、非常事態が発生した時に非常通報装置に接続されている押しボタンや付属の無線ペンダントのボタン、または非常通報装置に設けてある緊急ボタンを押すだけで、予め登録された1箇所または2箇所以上の通報先に対して優先順位に従ってオートダイヤリングし、予め登録された音声メッセージまたはプッシュボタン信号を自動で電話回線を介して送出して非常通報を行なっている。また、非常通報装置に火災センサや防犯センサなどの各種センサを接続して各種センサからの非常事態発生を検出し、上記と同様に予め登録された通報先へ非常通報している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−187152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来の非常通報装置では、回線設定や通報先の電話番号等を予め設定しておく必要があるが、ディップスイッチで設定できない通報先の電話番号等を設定する時には、図4に示すように、非常通報装置1にテンキーなどの設定専用のボタン32を設け、このテンキーなどの設定専用のボタン32の各キーを適宜選択して押下して、その数値をボタン情報取得回路31を介してCPU21が取得して、設定データとして非常通報装置1内の不揮発性メモリ22に書き込んで登録していた。そのために、全体を制御するCPU21や設定データを保存する不揮発性メモリ22および非常通報に必要な回路のプッシュボタン信号送受信回路23,回線制御装置24,音声合成回路25,音声切り替え回路26,IO検出回路27の他に、テンキーなどの設定専用のボタン32およびボタン情報取得回路31が必要であった。
【0004】
また、設定専用のボタンを省略するために、図5で示すように、非常通報装置1に接続している併設電話機42のダイヤルボタンを押して併設電話機42から送出するプッシュボタン信号の値を接続装置41とプッシュボタン信号送受信回路23を介してCPU21が取得し、設定データとして非常通報装置1内の不揮発性メモリ22に書き込んで登録していた。そのために、全体を制御するCPU21や設定データを保存する不揮発性メモリ22および、非常通報に必要な回路のプッシュボタン信号送受信回路23,回線制御装置24,音声合成回路25,音声切り替え回路26,IO検出回路27の他に、プッシュボタン信号を送出する併設電話機42および併設電話機42を接続するための接続装置41が必要であった。
【0005】
このような非常通報装置は小型化および低価格化が求められているが、従来の技術ではCPUや不揮発性メモリおよび非常通報に必要な回路の他に、設定データの登録時にのみ必要なテンキーなどの設定専用のボタンやそのボタン情報を取得するボタン情報取得回路が必要であり、装置全体の複雑化に伴う大型化やコストアップになる問題があった。
【0006】
そこで、設定専用のボタンを省略した構成でも、CPUや不揮発性メモリおよび非常通報に必要な回路の他に設定データの登録時にのみ必要な併設電話機やその併設電話機を接続するためのインタフェース機能を有する回線制御装置が必要であり、さらにプッシュボタン信号が送出できる併設電話機を非常通報装置に接続する必要があるため、装置全体の複雑化に伴う大型化やコストアップになる問題があった。
【0007】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を除去し、設定データの登録時にのみ必要な回路やテンキーなどの設定専用のボタンを減少して装置全体の簡略化による小型化および低価格化されているともに、併設電話機を接続する構成をとる必要がない通報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明による通報装置は、異状状態を検知するために配置された操作ボタンを含む少なくとも一つのセンサが検知した検知出力に対応して、当該異状状態に対応するように予め登録された通報先に当該異状状態を通報回線を介して自動通報するための通報装置であって、
前記通報回線とは異なる他の通信回線に接続された任意の電話機から伝送される前記通報先等の情報として入力されるPB信号の受信可否を切替するモードスイッチと、
該モードスイッチが前記PB信号の受信可能状態にセットされたときに前記PB信号を受信して当該PB信号に対応する設定データをメモリに記憶させるデータ設定回路とを備え、
当該データ設定回路に記憶した該設定データのうちの少なくとも一つが前記異状状態に対応する通報先として登録されて前記異状状態が通報されるように構成されている。
【0009】
本発明が対象としている通報装置、例えば、非常通報装置は、火災,警備上の異状等の「非常通報」を発出する警備,防犯を目的として特定の事業所に配置されることが通例であるが、一般家庭用としても同様の火災,警備上の異状を検知するセンサ、または、高齢者等に携行させてその身体上の異状時に操作させて異状メッセージを出す押ボタン付ペンダントからの検知出力に対応した「異状通報」を発出する通報装置も実用化されている。いずれの場合においても、この場合の通報装置は、通信回線に接続された通報先に、その通信回線を介して「異状通報」を発出する発信専用機であって、非常通報装置自体には、通信回線からの着信に応答する機能は存在していない。これは、着信に応答することによって回線が使用状態となり、非常時に発信することができないという不都合を回避するためである。
【0010】
本発明は、通信回線からの着信応答機能が存在しなかった従来の通報装置にモードスイッチを設けて、このモードスイッチが操作されたときに、着信応答機能を動作させて、この通信回線から設定データを送り込んで非常通報装置内に通報先として登録させることができるように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
このような構成によれば、移動通信端末を電話回線を利用して通報装置と接続する構成を、設定データの設定用テンキーの代りに用いて、通報装置が「現用中」ではない「調整中」に、通報先の電話番号等の設定データの登録を行うことにより、設定データの登録時にのみ必要な回路やテンキーなどの設定専用のボタンを減少して、装置全体の簡略化による非常通報装置の小型化および低価格化を実現するとともに、数値設定のために併設電話機を非常通報装置に接続する必要がないといった作用効果がある。
すなわち、図4で示されている従来の装置におけるテンキーなどの設定専用のボタン32とボタン情報取得回路31が不要であり、図5で示されている併設電話機42とその併設電話機42を接続するための接続装置41が不要になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明による通報装置の具体例としての非常通報装置を含む通信系の構成例を示す装置構成例図である。非常通報装置1の正面パネルの右下に緊急時に押下する緊急ボタン7が配設され、緊急ボタン7の上には「通報」していることを音声メッセージやブザーで知らせるスピーカ8が配設されている。
非常通報装置1の正面パネルの左下には、「通報」を取り消すための取消ボタン9が配設され、取消ボタン9の上側には「通報中」の表示や「通報」の履歴を表示するLED10が配設されている。
【0013】
11は火災センサ防犯センサ等の各種センサを接続する端子部であり、端子部11には「通常動作モード」と着信待ちである「設定動作モード」とを切り替えるモードスイッチ12があり、端子部11にあるモジュラーコネクタ13に電話回線2が接続されている。3は電話回線交換局、4は移動通信交換局、5は移動通信基地局、6は移動通信端末である。R1,R2,R3は消防署,警察署,市役所などの任意に登録された通報先を示す。
【0014】
図2は非常通報装置1の機能ブロック図である。非常通報装置1は各種演算および制御を実行するためのCPU21であり、CPU21には各種制御プログラムを格納するためのROM21−1や各種データを記憶するためのRAM21−2が内蔵されている。さらに、登録データDが消去可能な状態で書き込まれている不揮発性メモリ22、通報先へのオートダイヤリング時におけるプッシュボタン信号を生成するとともに電話回線2からのプッシュボタン信号を受信するプッシュボタン信号送受信回路23、電話回線2に接続するためのインターフェース機能を有する回線制御装置24、音声メッセージM1や各種音声情報M2を出力可能な音声合成回路25、音声合成回路25からの出力を非常通報装置1に設けてあるスピーカ8または回線制御装置24を介して電話回線2に出力するように切替える音声切り替え回路26、非常通報装置1に設けてある緊急ボタン7や取消ボタン9および各種センサ29の状態を検出するIO検出回路27、電話回線2からの着信を検出する着信検出回路28を備える。
なお、着信検出回路28は、モードスイッチ12の操作により、回線制御装置24から切り離すことができる。
【0015】
次に、非常通報装置1の使用方法および動作について、図1および図2を参照して説明する。「非常事態」の発生により、緊急ボタン7が押された場合を想定する。これにより、IO検出回路27が緊急ボタン7の押し下げを検出し、回線制御装置24は登録された通報先R1,R2,R3に対し、優先順位に従って順次オートダイヤリングを実行する。この際に、送出するダイヤル信号はプッシュボタン信号送受信回路23が生成する。「非常通報動作」を実行していることを知らせるために、音声切り替え回路26は音声合成回路25の出力をスピーカ8側に接続し、予め登録された音声メッセージM1を音声合成回路25からスピーカ8に出力する。また、非常事態の種類に対応したLED10を点滅する。
【0016】
そこで、通報先R1が応答した時に音声合成回路25は一旦音声メッセージM1を停止し、音声切り替え回路26は音声合成回路25を電話回線2側に接続して、音声合成回路25から電話回線2を介して通報先R1,R2,R3へ予め登録された音声情報M2、すなわち「非常事態」の旨を出力して通報先へ知らせる。
なお、上記動作において、電話回線の着信を検出する着信検出回路28は、モードスイッチ12の手動又は自動操作により、回線制御装置24から切り離されている。
【0017】
次に、本発明による非常通報装置1における登録データDの設定動作の手順を図3のフローチャートにより説明する。なお、このときには、非常通報装置1は、「現用中」ではなく「調整中」である。
【0018】
まず、非常通報装置1のモードスイッチ12を「設定モード」に操作する(ステップS1)。このS1での操作により、着信検出回路28は回線制御装置24に接続されて着信待ちの状態となる(ステップS2)。また、「着信待ち」であることをLED10の点灯により知らせる。移動通信端末6により電話回線2の電話番号をダイヤリングした時(ステップS3)、非常通報装置1は着信検出回路28により電話回線2からの呼出し信号を検出し、着信応答する(ステップS4)。非常通報装置1は設定する項目選択のためにスピーカ8から音声メッセージを送出する(ステップS5)。設定する項目を選択する場合には、項目に対応した回数だけ緊急ボタン7を押す(ステップS6)。このとき緊急ボタン7を押す毎に非常通報装置1のLED10を順次点灯して、設定する項目がその点灯したLEDより判断できるようにする。緊急ボタン7を押下してから一定時間緊急ボタン7を離したら項目を決定したと判断し、そのとき選択していた項目の設定処理に移行する。非常通報装置1はデータ入力のためにスピーカ8から音声メッセージを送出する(ステップS7)。現在設定されているデータを削除する場合には、取消ボタン9を押してCPU21は不揮発性メモリ22のステップ6にて選択された項目の登録データDを削除する(ステップS8)。移動通信端末6から登録するデータをダイヤリングしてプッシュボタン信号を送出する(ステップS9)。非常通報装置1は移動通信端末6から受信したプッシュボタン信号を登録データDとして不揮発性メモリ22に書き込み、登録したデータを確認するためにスピーカ8から登録データDを音声メッセージにて送出する(ステップS9)。
【0019】
別の項目を設定する場合には、再度ステップS5より実行する。全ての項目を設定した時に、非常通報装置1のモードスイッチ12を「通常動作モード」に設定する(ステップS11)。このステップS11により、着信検出回路28は回線制御装置24から切り離される(ステップS12)。非常通報装置1は電話回線2を開放して通常動作モードへ移行する(ステップS13)。
【0020】
以上は移動通信端末6を用いる場合を説明したが、この移動通信端末6は非常通報装置1が接続された回線2とは別の回線に接続されているので、これと同様に回線2とは別の回線に接続された任意の電話機を移動端末6の代わりに用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、特定の事業所に火災,警備,防犯を目的として配置することの外に、一般家庭においても同様の火災,警備,防犯とともに、高齢者の身体上の異状を報知する介護サービスを目的とする場合にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による通報装置を含む通信系の構成例を示す装置構成例図である。
【図2】本発明による通報装置の機能例を示すブロック図である。
【図3】本発明による通報装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】従来の通報装置例を示すブロック図である。
【図5】従来の通報装置例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0023】
1 非常通報装置
2 電話回線
3 電話回線交換局
4 移動通信交換局
5 移動通信基地局
6 移動通信端末
7 緊急ボタン
8 スピーカ
9 取消ボタン
10 LED
11 端子部
12 モードスイッチ
13 モジュラーコネクタ
21 CPU
22 不揮発性メモリ
23 プッシュボタン信号送受信回路
24 回線制御装置
25 音声合成回路
26 音声切り替え回路
27 IO検出回路
28 着信検出回路
29 各種センサ
31 ボタン情報取得回路
32 テンキーなどの設定専用のボタン
41 接続装置
42 併設電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異状状態を検知するために配置された操作ボタンを含む少なくとも一つのセンサが検知した検知出力に対応して、当該異状状態に対応するように予め登録された通報先に当該異状状態を通報回線を介して自動通報するための通報装置であって、
前記通報回線とは異なる他の通信回線に接続された任意の電話機から伝送される前記通報先等の情報として入力されるPB信号の受信可否を切替するモードスイッチと、
該モードスイッチが前記PB信号の受信可能状態にセットされたときに前記PB信号を受信して当該PB信号に対応する設定データをメモリに記憶させるデータ設定回路とを備え、
当該データ設定回路に記憶した該設定データのうちの少なくとも一つが前記異状状態に対応する通報先として登録されて前記異状状態が通報されるように構成された
通報装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−163479(P2006−163479A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349642(P2004−349642)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【出願人】(300046485)岩通アイセック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】