説明

通帳類取扱装置及び印字制御方法

【課題】印字ヘッドのワイヤに折損が発生した場合にも印字動作を継続することができるようにした通帳類取扱装置を得る。
【解決手段】通帳類取扱装置が持つ印字ヘッドのワイヤに折損の発生を印字パターンの読み取り結果、あるいは、オペレータによる目視により検出した後、印字パターンから印字ヘッドのどの位置のワイヤが折損したかを検出し、折損したワイヤを別のワイヤで代用可能かを判別し、代用可能な別のワイヤを選択し、このワイヤを折損ワイヤの代わりに使用して、印字処理を続ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通帳類取扱装置及び印字制御方法に係り、特に、銀行等の金融機関においてオペレータにより使用され、通帳・帳票・伝票等の処理を行う印字機構を備えた通帳類取扱装置及び印字制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、銀行等の金融機関において使用され、通帳・帳票・伝票等の処理を行う通帳類取扱装置の印字機構は、印字ヘッドとしてワイヤドット式のものが用いられ、印字ヘッドを、印字行に沿って一方向に、あるいは、往復移動させながらワイヤを選択駆動し、インクリボンを介してワイヤにより印字面を叩くことにより印字を行うものである。印字ヘッドを構成するワイヤは、経年疲労等により折損することがあり、この場合、印字機構は、正常な印字を行うことができなくなる。すなわち、ワイヤ折損が発生した場合、字体の一部が欠落し、文字構成ができなくなり、このため、欠損箇所によっては文字と認識できなくなる。
【0003】
このようなワイヤの折損への対応方法としては、印字ヘッドの交換が必要になるが、交換は、保守員コールによるものであり、ワイヤが折損した印字機構を備えた通帳類取扱装置は、長時間の稼働中止となり、業務上の支障を生じさせることになる。
【0004】
前述したような印字ヘッドのワイヤの折損が生じた場合にも、正常な印字を行うことができるようにした印字機構に関する従来技術として、例えば、特許文献1等に記載された技術が知られている。この従来技術は、折損したワイヤの折損長さを光学的または電気的に検知し、その結果を元にワイヤの駆動クロックを変更することにより、当該ワイヤの駆動距離を変更して折損したワイヤを使用するというものである。
【0005】
また、他の従来技術として、例えば、特許文献2等に記載された技術が知られている。この従来技術は、ワイヤの折損を目視により確認後、ワイヤ駆動用電極のコネクタを差し替えることにより、使用していないワイヤを使用可能とするというものである。
【特許文献1】特開昭62−208953号公報
【特許文献2】特開2001−191562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1に記載の従来技術は、ワイヤ折損が発生した場合にも、ワイヤが折損した印字機構を備えた通帳類取扱装置の使用を継続させるようにすることができるが、折損したワイヤをそのまま使用するため、折損したワイヤの先端に折損によるバリ等の発生があった場合に、そのバリ等によりインクリボンの破れ、ほつれ等の二次的不良を発生させる懸念があり、また、折損した長さが変更可能な駆動距離より長い場合は、対処ができないこともあるという問題点を有している。また、特許文献2に記載の従来技術は、折損したワイヤを使用しないため、前述のような問題点が生じることはないが、別のワイヤへの切替えを自動で行うことができず、保守員コールにより対処しなければならず、長時間の装置稼働中止が必要になるという問題点を有している。
【0007】
本発明の目的は、前述したような従来技術の問題点を解決し、印字ヘッドのワイヤに折損が発生した場合にも印字動作を継続することができるようにした通帳類取扱装置及び印字制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば前記目的は、金融機関等で使用され、印字を行うワイヤにより構成される印字ヘッドと、該印字ヘッドのワイヤにより印字された印字文字の字体を読み取るイメージスキャナと、制御手段とを備えた通帳類取扱装置において、前記制御手段が、前記印字ヘッドにワイヤの折損箇所が判別できるある特定な印字パターンを印字させ、印字された印字字体を前記イメージスキャナに読み取らせ、その読み取り情報に基づいて、前記印字ヘッドのワイヤの折損の有無及び箇所を判別し、ワイヤの折損を検出したとき、折損したワイヤに代わる別のワイヤを選択し、折損したワイヤを前記別のワイヤに代替することにより達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印字ヘッドのワイヤに折損が発生した場合にも、インクリボンの破れ等の危険性を排除して、通帳類取扱装置の稼働を停止させることなく稼働を続けさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明による通帳類取扱装置の実施形態及び印字制御方法を図面により詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態による通帳類取扱装置の構成例を説明する図であり、図1(a)は通帳類取扱装置の側面図、図1(b)は印字ヘッドの側面図、図1(c)は印字ヘッドのワイヤの配置例を示す図である。
【0012】
通帳類取扱装置は、図1(a)に示すように、通帳等の媒体を挿入する挿入口1、通帳等の媒体を所定の位置に搬送する搬送路2、媒体の搬送を行う搬送ローラ3、媒体の所定の頁に印字するために頁捲りを行う頁替機構部4、捲られたページに印字を行う印字ヘッドを有する印字機構部5、媒体に印字された行や文字等を読み取るイメージスキャナ6、それらを制御する制御回路7を具備して構成される。
【0013】
前述したように構成される通帳類取扱装置において、通帳等の媒体が挿入口1より挿入されると、媒体は、搬送ローラ3により搬送されて搬送路2内をイメージスキャナ6の位置まで搬送され、イメージスキャナ6により印字行等の読み取りが行われる。読み取りの結果、媒体の頁捲りが必要と判断されれば、媒体は、頁替機構部4の位置まで搬送されて、頁捲りが行われた後、媒体への印字を行うために、搬送路2内を所定の印字位置まで搬送され停止する。その後、印字機構5は、印字ヘッド8を駆動して媒体上に所定の印字を行う。印字が行われた媒体は、搬送路2を通って挿入口1より排出される。
【0014】
印字機構部5に備えられた印字ヘッド8は、図1(b)に示すように、複数のワイヤのそれぞれを駆動するコイルを収納する本体部81と、複数のワイヤを収納するワイヤ部82とにより構成される。そして、ワイヤ部82には、図1(c)に示すように、印字を行う媒体に対向する向きにワイヤの先端部が向くように複数のワイヤ9が配置されている。ワイヤ9の配置としては、種々のものが知られているが、図1(c)に示す例は、複数のワイヤ9を菱形となるように配置した例である。印字機構部5は、該印字機構部に備えられた印字ヘッド8のワイヤ9を個個に制御することにより、複数のワイヤ9を通帳等の媒体の規定の位置に打ち付け、ワイヤ9による媒体上のドットが文字の字体を構成するように印字を行う。
【0015】
図2は本発明の実施形態による通帳類取扱装置で印字された文字の字体構成の例を示す図であり、図2(a)は正常な「2」の文字の例、図2(b)は、ワイヤ折損により「2」の文字の横線が欠落した例、図2(c)、図2(d)は本発明の実施形態により折損したワイヤの代りに別のワイヤを使用した場合の「2」の文字の例である。
【0016】
図2に示した例から判るように、図1に示す通帳類取扱装置は、文字「2」を例とすれば、正常な状態で、図2(a)に示すような正常な文字「2」を印字するが、文字を構成するワイヤ9の1つが折損した場合、例えば、図2(b)に示す例のように、「2」の文字の横線が欠落する。この場合、文字として認識することが不可能となり、通帳類取扱装置の稼働を停止せざるを得ないことになる。
【0017】
本発明の実施形態では、折損したワイヤの代わりとして別のワイヤを使用し、折損したワイヤのドットが抜けた箇所を、2度目の印字(往復印字)により印字することにより、または、折損したワイヤのドットが抜けた位置とは別の位置に横線を構成することにより、文字としての認識を行うことが可能となるようにしている。図2(c)、図2(d)に示す例は、文字「2」の横線を本来の位置の上部、下部に構成するようにした例である。
【0018】
前述したような本発明の実施形態では、折損したワイヤの特定や折損したワイヤの代わりとなる別ワイヤの選定が必要となるが、このための処理は、通帳類取扱装置を制御する制御回路7により行われる。
【0019】
制御回路7は、CPU、プログラム等を格納したROM等を含んで構成されるが、搬送ローラ3、頁替機構部4、印字機構部5、イメージスキャナ6等の制御に対する制御方法については、従来から行われている方法でよいので、次に、折損したワイヤの特定、折損したワイヤの代わりとなる別ワイヤの選定を行うための折損対応プログラムの構成と、その処理動作を説明する。
【0020】
図3は折損対応プログラムによる折損したワイヤを特定し、折損したワイヤの代わりとなる別ワイヤの選定を行う処理動作を説明するフローチャート、図4は折損対応プログラムの構成を示す図であり、次に、これらについて説明する。
【0021】
図3に示すフローを説明する前に折損対応プログラム41の構成について説明する。折損対応プログラム41は、図4に示すように、折損箇所判別処理42と、代替可否判別選定処理43とにより構成される。この折損対応プログラム41は、制御回路7内に設けられるROM等に格納されていてもよく、また、通帳類取扱装置の上位システムに格納されていてもよい。そして、このプログラムは、CPUにより実行される。
【0022】
ワイヤ折損に対する対応は、装置稼働前にワイヤ折損の有無を確認して行う方法と、装置稼働中にワイヤ折損が発生した場合に行う方法とがある。
【0023】
まず、図3に示す制御フロー1により、装置稼働前にワイヤの折損の有無を確認して行う方法について説明する。
【0024】
(1)オペレータは、装置稼働前に、通帳類取扱装置のROMまたは該装置の上位システムに保持されている折損対応プログラムを簡易な操作で起動させ、挿入口1より媒体を挿入する。折損対応プログラム41は、ワイヤの折損箇所が判別できるある特定な印字パターンを印字機構部5に印字させる(ステップ301、302)。
【0025】
(2)その後、その印字結果を通帳類取扱装置が備えているイメージスキャナ6により読み取らせる(ステップ303)。
【0026】
(3)折損対応プログラム41の折損箇所判別処理42は、その読取り結果を基にワイヤの折損の有無を判別し、折損有りと判断した場合、折損箇所を判別する処理を行う。そして、ワイヤに折損があったか否かを判別し、ワイヤに折損がなかった場合、通帳類取扱装置の運用を通常のように開始する(ステップ304〜306)。
【0027】
(4)ステップ305の判定で、ワイヤに折損があった場合、代替可否判別選定処理43は、ステップ304の処理で判別した折損ワイヤの箇所が別のワイヤで代替可能か否かを判定し、折損ワイヤの箇所が別のワイヤで代替可能であった場合、別のワイヤを選定して、印字機構部5での制御を変更させ、その後、印字ヘッドの別ワイヤを使用して、通帳類取扱装置の運用を開始する(ステップ307、308)。
【0028】
(5)ステップ307の判定で、折損ワイヤの箇所が別のワイヤで代替不可能であった場合、印字ヘッド交換のメッセージをディスプレー等に表示し、保守員等による対応を依頼する(ステップ309)。
【0029】
次に、図3に示す制御フロー2により、装置稼働中にワイヤ折損が発生した場合の処理動作について説明する。
【0030】
(1)装置稼働中のワイヤの折損は、オペレータがワイヤ折損による文字の字体構成について文字と認識できないと判断したときに検知される。オペレータは、ワイヤの折損を検知すると、通帳類取扱装置のROMまたは該装置の上位システムに保持されている折損対応プログラムを簡易な操作で起動させ、挿入口1より媒体を挿入する。折損対応プログラムは、ワイヤの折損箇所が判別できるある特定な印字パターンを印字機構部に5に印字させる(ステップ310、312)。
【0031】
(2)その後、その印字結果を通帳類取扱装置が備えているイメージスキャナ6により読み取らせる(ステップ313)。
【0032】
(3)折損対応プログラム41の折損箇所判別処理42は、その読取り結果を基にワイヤの折損の有無を判別し、折損有りと判断した場合、折損箇所を判別する処理を行う。そして、ワイヤに折損があったか否かを判別し、ワイヤに折損がなかった場合、ワイヤに折損がなく、印字文字が識別不能であるので、印字ヘッドに別の不具合があるものとして、印字ヘッド交換のメッセージをディスプレー等に表示し、保守員等による対応を依頼する(ステップ314〜316)。
【0033】
(4)ステップ315の判定で、ワイヤに折損があった場合、代替可否判別選定処理43は、ステップ314の処理で判別した折損ワイヤの箇所が別のワイヤで代替可能か否かを判定し、折損ワイヤの箇所が別のワイヤで代替可能であった場合、別のワイヤを選定して、印字機構部5での制御を変更させ、その後、印字ヘッドの別ワイヤを使用して、通帳類取扱装置の運用を開始する(ステップ317、318)。
【0034】
(5)ステップ317の判定で、折損ワイヤの箇所が別のワイヤで代替不可能であった場合、印字ヘッド交換のメッセージをディスプレー等に表示し、保守員等による対応を依頼する(ステップ309)。
【0035】
前述した本発明の実施形態での各処理は、プログラムにより構成し、本発明が備えるCPUに実行させることができ、また、それらのプログラムは、FD、CDROM、DVD等の記録媒体に格納して提供することができ、また、ネットワークを介してディジタル情報により提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
通帳等の媒体を扱う装置で、印字を行う場合に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態による通帳類取扱装置の構成例を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態による通帳類取扱装置で印字された文字の字体構成の例を示す図である。
【図3】折損対応プログラムによる折損したワイヤを特定し、折損したワイヤの代わりとなる別ワイヤの選定を行う処理動作を説明するフローチャートである。
【図4】折損対応プログラムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 挿入口
2 搬送路
3 搬送ローラ
4 頁替機構部
5 印字機構部
6 イメージスキャナ
7 制御回路
8 印字ヘッド
9 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金融機関等で使用され、印字を行うワイヤにより構成される印字ヘッドと、該印字ヘッドのワイヤにより印字された印字文字の字体を読み取るイメージスキャナと、制御手段とを備えた通帳類取扱装置において、
前記制御手段は、前記印字ヘッドにワイヤの折損箇所が判別できるある特定な印字パターンを印字させ、印字された印字字体を前記イメージスキャナに読み取らせ、その読み取り情報に基づいて、前記印字ヘッドのワイヤの折損の有無及び箇所を判別し、ワイヤの折損を検出したとき、折損したワイヤに代わる別のワイヤを選択し、折損したワイヤを前記別のワイヤに代替することを特徴とする通帳類取扱装置。
【請求項2】
前記選択される別のワイヤは、ワイヤの折損により抜けた印字ドット箇所を二度目の印字で印字可能なワイヤ、または、抜けたドット箇所の上下左右方向のドットにより近似の字体を構成可能なワイヤであることを特徴とする請求項1記載の通帳類取扱装置。
【請求項3】
金融機関等で使用され、印字を行うワイヤにより構成される印字ヘッドと、該印字ヘッドのワイヤにより印字された印字文字の字体を読み取るイメージスキャナと、制御手段とを備えた通帳類取扱装置における印字制御方法において、
前記制御手段は、前記印字ヘッドにワイヤの折損箇所が判別できるある特定な印字パターンを印字させ、印字された印字字体を前記イメージスキャナに読み取らせ、その読み取り情報に基づいて、前記印字ヘッドのワイヤの折損の有無及び箇所を判別し、ワイヤの折損を検出したとき、折損したワイヤに代わる別のワイヤを選択し、折損したワイヤを前記別のワイヤに代替することを特徴とする印字制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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