説明

通気性靴底を有する靴

【課題】少なくとも通気性、防水性および撥水性を有し、足のむれ防止を容易に実現できる通気性靴底を有する靴を提供する。
【解決手段】本発明に係る靴は、靴の大底2に複数の貫通孔8が形成され、前記貫通孔8の上方に、少なくとも通気性、防水性および撥水性を有する通気調整布材5が配置されている。前記通気調整布材5は、少なくとも通気性を有する防水布からなる第1の布材6と、撥水布からなる第2の布材7とを局所的に接着して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性、防水性および撥水性を有する通気調整部材が配置されている、足のむれ防止が可能な通気性靴底を有する靴に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、靴内の足のむれ防止を図るものとして、足の発汗を靴内で一部蒸発させるために、靴の大底(靴外底:アウトソール)に複数の貫通孔を有し、その貫通孔に防水性で湿気(水蒸気)を通す透湿性をもつ薄膜を被せてなる、防水性で透湿性タイプの靴用ソールを備えた靴などが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記従来の靴では、防水性で透湿性の薄膜材料として、例えばゴアテックス(登録商標)などが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−539513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の靴では、透湿性を有するものの、通気性を有しないため、靴内で足のむれを十分に軽減するに至らず、足のむれ防止を実現するのが困難となるという問題があった。
【0006】
その一方、従来の通気性を有する靴は、水が靴内に浸入しやすく、防水性が十分でないという問題があった。
【0007】
本発明は、前記課題を解決して、少なくとも通気性、防水性および撥水性を有し、容易に足のむれ防止を実現できる通気性靴底を有する靴を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係る通気性靴底を有する靴は、靴の大底に複数の貫通孔が形成され、前記貫通孔の上方に、少なくとも通気性、防水性および撥水性を有する通気調整布材が配置されている。
【0009】
前記構成によれば、大底に形成された貫通孔の上方に、少なくとも通気性、防水性および撥水性を有する通気調整布材が配置されているので、従来の透湿防水性靴底と異なり、撥水性により防水性の機能を高めながら通気性を有するから、容易に足のむれ防止を実現できる。
【0010】
好ましくは、前記通気調整布材は、少なくとも通気性を有する防水布からなる第1の布材と、撥水布からなる第2の布材とを局所的に接着して形成されている。したがって、第1の布材と第2の布材を局所的に接着しているので、通気調整布材は第1の布材の通気性を保持することが可能となる。
【0011】
前記通気調整布材の厚みが0.5mm以上であることが、成形性向上のために好ましい。また、前記貫通孔の内径が1.5〜4.5mmの範囲内であることが、靴底の通気性を保ち、小石等の異物の混入を防ぐことから好ましい。靴の大底に下方に突出した複数の凸部が設けられ、前記凸部の接地面から前記貫通孔の底部までの高さは、1.5mm以上であることが、貫通孔の磨耗を防止して、靴底への異物混入を軽減することから好ましい。
【0012】
前記第1の布材は、通気性のある透湿防水布であることが、通気性、防水性および撥水性に加えて、透湿性を得ることから好ましい。また、前記通気調整布材を、靴の中底の下部に配置しても、靴の大底内に配置してもよい。靴の大底内に配置した場合、通気調整布材と接地面の距離が近くなって、通気調整布材に異物が当たりやすくなる反面、足裏との間の距離が遠くなって、足がむれにくくなる。
【0013】
好ましくは、前記靴の大底は、前記貫通孔の上部に連通し、貫通孔の孔径よりも大きい溝幅の溝部を有し、前記溝部の内壁の一部に、前記貫通孔の上方を部分的に蓋するように内方に突出する内方突出部が形成されている。したがって、水や異物などが直接的に中底部材に当たることを防ぎ、汚れや浸水を軽減させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、靴の大底に形成された貫通孔の上方に、少なくとも通気性、防水性および撥水性を有する通気調整布材が配置されているので、従来の透湿防水性靴底と異なり、撥水性により防水性の機能を高めながら通気性を有するから、足のむれ防止を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る通気性靴底を有する靴を示す底面側から見た斜視図である。
【図2】図1の通気性靴底を有する靴を示す底面図である。
【図3】図1の靴を構成する大底の前部を上面側から見た斜視図である。
【図4】(A)は図2のA−A断面図、(B)は図2のB−B断面図である。
【図5】第2実施形態における通気性靴底を有する靴について、(A)は図2のA−A断面図、(B)は図2のB−B断面図、(C)は図2のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る通気性靴底を有する靴1を示す底面から見た斜視図であり、図2はその底面図である。図1において、この靴1は、大底(靴外底:アウトソール)2およびその上部に取り付けられた甲被(アッパー)3を備えており、靴内底には中底(インソール)4が設けられている(図4)。大底2には、例えばEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)、ポリウレタン等が使用される。中底4には、例えばEVAスポンジ、ポリブタジエンスポンジ、ポリウレタン等が用いられる。
【0017】
図2のように、靴の大底2の底面には、複数の凹凸が形成されており、その前足部位(前部)に、複数の凸部10とともに、各凸部10の前後方向に隣接して上下方向に貫通する複数の貫通孔8が形成されている。この貫通孔8の内径が1.5〜4.5mmの範囲内であることが好ましい。これにより、靴底の通気性を保ち、小石等の異物の混入を防ぐことができる。前記凸部10の接地面から貫通孔8の底部までの高さは、1.5mm以上であることが好ましい。これにより、貫通孔8の磨耗を防止して、靴底への異物混入を軽減することができる。
【0018】
図3の大底2の前部の上面から見た斜視図に示すように、靴の大底2の前部には、前記貫通孔8の上部に連通し、貫通孔8の孔径よりも大きい溝幅の溝部11が設けられている。この例では、溝部11は横方向に延びる横溝12からなり、前後方向に複数の横溝12−1〜12−5が設けられて、各貫通孔8は、横列ごとにその上部で各横溝12−1〜12−5と連通している。なお、横溝12に代えて、複数の貫通孔8ごとに複数の溝部11を個別に設けてもよい。
【0019】
図4(A)は図2のA−A断面図、(B)は図2のB−B断面図である。通気調整布材5は、靴の大底2の貫通孔8および横溝12の上方で、中底4の下部にメッシュ9を介してほぼ水平に配置されている。
【0020】
通気調整布材5は、通気性防水布からなる第1の布材6と撥水布からなる第2の布材7とを局所的に接着(点接着)して形成されている。この例では、通気調整布材5は、通気性防水布6の下に撥水布7が、例えばホットメルトまたはポリウレタン(PU)系溶剤などによる点接着により接着されて積層されている。撥水布7は水分率0で、綿布のような毛細管現象が起こりにくく、成形性と通気性を持たせた素材を組み合わせたものである。撥水布7は、完全な撥水性を有するものではなく、その撥水性により通気性防水布6の防水性の機能を高めるとともに、通気性防水布6が汚れることによる透湿性の低下を防ぐものであり、小石等の異物で通気性防水布6が破れるのを防止する。
【0021】
前記通気防水布5は、耐水圧が800mmHO以上であることが好ましく、900mmHO以上であることがより好ましい。その透湿度は塩化カルシウム法で3000g以上であることが好ましく、4000g以上であることがより好ましい。その通気性はガーレ法で1sec/100cc以上であることが好ましく、1.5sec/100cc以上であることがより好ましい。その撥水性は、JIS L1092 5.2による撥水度試験において50以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましい。
【0022】
前記通気調整布材5の厚みが0.5mm以上であることが好ましい。これにより、通気調整布材5の成形性を向上することができる。
【0023】
なお、前記第1の布材6を通気性のある透湿防水布としてもよい。この場合、耐水圧、透湿度および通気性が上記通気性防水布よりもいずれも高い、例えばポリウレタン(PU)多孔膜が使用される。これにより、通気性、透湿性を向上させながら、より良い防水性能を得ることができる。
【0024】
このように、大底2に形成された貫通孔8の上方に、少なくとも通気性、防水性および撥水性を有する通気調整布材5が配置されているので、従来の透湿防水性靴底と異なり、撥水性により防水性の機能を高めながら通気性を有するから、容易に足のむれ防止を実現できる。また、通気調整布材5は、少なくとも通気性を有する防水布からなる第1の布材6と、撥水布からなる第2の布材7とを局所的に接着して形成されているので、第1の布材6の通気性を保持することが可能となる。
【0025】
第2実施形態における通気性靴底を有する靴について、図5(A)は図2のA−A断面図、(B)は図2のB−B断面図、(C)は図2のC−C断面図である。第2実施形態は、第1実施形態と同様に、各貫通孔8は、横列ごとにその上部で横溝12と連通し、前後方向に各横列ごとに複数の横溝12が設けられているが、第1実施形態と異なり、横溝12の内壁の一部に、貫通孔8の上方を部分的に蓋するように内方に突出する、つまり貫通孔8の仮想孔8aの一部分を塞ぐ内方突出部14が形成されている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0026】
この例では、内方突出部14は、各横溝12の後方の内壁を前方に突出させているが、各横溝12の前方の内壁を後方に突出させてもよい。横溝12の内方突出部14は、側面視で傾斜部15と直線部16とを有し、直線部16に対する傾斜部15の傾斜角度は、110°〜160°の範囲内である。この内方突出部14により、貫通孔8から水や異物などが直接的に通気調整布材5に当たることを防ぎ、汚れや浸水を軽減させることができる。
【0027】
なお、前記各実施形態では、通気調整布材5を中底4の下部に配置しているが、通気調整布材5を靴の大底2内、つまり中底4の下部と貫通孔8の上部との中間位置にあたる溝部11(横溝12)に横断状に配置してもよい。この場合、通気調整布材5を横溝12における任意の上下位置に配置することができ、横溝12の下部と貫通孔8の上部の間に配置してもよい。これにより、通気調整布材5と接地面の距離が近くなって、通気調整布材5に異物が当たり傷付きやすくなるが、中底4上の足裏と通気調整布材5との間の距離が大きくなって、足がむれにくくなる。
【0028】
なお、前記各実施形態では、通気調整布材5は第1の布材6と撥水布からなる第2の布材7とが積層されているが、第2の布材7を省略して、第1の布材6に通気性を保持するように撥水加工してもよい。
【0029】
また、通気調整布材5を2枚の布材6、7の積層に加えて、さらに同種または異種の布材を1枚または2枚以上を積層させて形成してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1:通気性靴底を有する靴
2:大底(アウトソール)
3:甲被
4:中底(インソール)
5:通気調整布材
6:第1の布材
7:第2の布材
8:貫通孔
10:凸部
11:溝部
14:内方突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の大底に複数の貫通孔が形成され、
前記貫通孔の上方に、少なくとも通気性、防水性および撥水性を有する通気調整布材が配置されている、通気性靴底を有する靴。
【請求項2】
請求項1において、
前記通気調整布材は、少なくとも通気性を有する防水布からなる第1の布材と、撥水布からなる第2の布材とを局所的に接着して形成されている、通気性靴底を有する靴。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記通気調整布材の厚みが0.5mm以上である、通気性靴底を有する靴。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記貫通孔の内径が1.5〜4.5mmの範囲内であり、
靴の大底に下方に突出した複数の凸部が設けられ、前記凸部の接地面から前記貫通孔の底部までの高さは、1.5mm以上である、通気性靴底を有する靴。
【請求項5】
請求項2において、
前記第1の布材が通気性のある透湿防水布である、通気性靴底を有する靴。
【請求項6】
請求項1または2において、
前記通気調整布材を靴の中底の下部に配置している、通気性靴底を有する靴。
【請求項7】
請求項1または2において、
前記通気調整布材を靴の大底内に配置している、通気性靴底を有する靴。
【請求項8】
請求項1または2において、
前記靴の大底は、前記貫通孔の上部に連通し、貫通孔の孔径よりも大きい溝幅の溝部を有し、前記溝部の内壁の一部に、前記貫通孔の上方を部分的に蓋するように内方に突出する内方突出部が形成されている、通気性靴底を有する靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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