説明

通船ゲート

【課題】本発明は、構造がシンプルで、必要に応じて水中に退避させることができる通船ゲートを提供する。
【解決手段】横長の形状に形成され中空の内部10に給排気可能な可撓性を有する筒状の浮沈式フロート8を設け、浮沈式フロート8の全長にわたり、重錘を備えたスカート部9を吊設し、浮沈式フロート8の両端部にはそれぞれ、水面からの沈下距離を規制する規制フロート18、19が、通船幅Wに相当する間隔を保持して連結索20、21により連結し、浮沈式フロート8の規制フロート18、19間には長手方向に沿って芯材22を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾やダム湖などにおいて水面に浮かべて設置される汚濁防止装置やオイルフェンスまたは流木止めなどに設けられる通船ゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
以前から知られている通船ゲートとして、下端部で相互に連結されている左右一対の門柱がフロートを装着されて水面に浮かんだ状態で設置されており、各門柱に左右一対の門扉がそれぞれ取り付けられている両開き戸の構成を備えた通船ゲートがある。当該通船ゲートには、門扉が不用意に開くことを防止するための施錠装置が設けられており、船が通行する際、門扉に設けられている施錠装置の操作部に舳先を押し当てることで開錠できるようになっている。
【0003】
即ち、施錠装置は、一方の門扉において上下方向に回転可能となるように一端部で支持されている閂部材と、他方の門扉に設けられている閂部材が係合可能な閂受部と、閂部材と閂受部との係合を解除することができる操作部とを主な構成として備えている。操作部は、門扉を貫通し門扉に対して直交する方向に往復移動が可能なスライドアームと、スライドアームに固定され上面にV型の傾斜面が形成されているブイプレートと、ブイプレートの上面に下端部が当接しブイプレートの移動に伴って上下動する押上部材とからなる。押上部材は、閂受部に形成されている閂部材の係合溝に一方の開口部を臨ませて上下方向に貫通するガイド孔に挿入されており、このガイド孔に沿って上下動する。そして、船の舳先が操作部に押し当てられると、スライドアームが後退するのに伴い押上部材がブイプレートの上面に沿って上昇し、その上端部がガイド孔から突出して閂部材を係合溝から押し上げることにより、施錠装置が開錠される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3757201号公報(第5および6頁、第2〜7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような通船ゲートは次のような問題点がある。
(1)常時水面に浮かんだ状態であるため、ダム湖において使用した場合、渇水などにより水位が低下すれば湖底と接触して転倒し、破損するおそれがある。また、悪天候による強風や高波などの被害を受けやすい。
(2)構造が複雑であるためメンテナンスに手間がかかる。
(3)通船時以外は扉が自動的に閉じる構造になっているため、二つの水域間で継続的に水を流通させることがしづらい面がある。
【0005】
そこで本発明は、構造がシンプルで、必要に応じて水中に退避させることができる通船ゲートの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の通船ゲートは、水域を二つに仕切るフロート部材の一部を通じて船の通行を可能にする通船ゲートであって、横長の形状に形成され中空の内部に給排気可能な可撓性を有する浮沈式フロートを設け、当該浮沈式フロートの全長にわたって、重錘を備えたスカート部を吊設し、前記浮沈式フロートの両端部には、水面からの沈下距離を規制する規制フロートが、通船幅に相当する間隔を保持して連結索により連結し、前記浮沈式フロートの前記規制フロート間には長手方向に沿って芯材を配設することを特徴としている。
【0007】
この請求項1に係る通船ゲートによれば、前記浮沈式フロートの内部から気体を排出して浮力を低下させると前記浮沈式フロートが水中に沈下し、前記汚濁防止装置などによって仕切られた二つの水域が連通した状態になり船の通行が可能になる。前記浮沈式フロートの前記規制フロート間には前記芯材が配設されているため、前記浮沈式フロートの弛みによる前記通船幅の減少が生じず、しかも前記規制フロートによって水深が一定に保たれるため、開放時において常に所定の通船スペースが形成されることになり、スムーズな通船を行うことができる。また、必要に応じて水中に沈下させることができるため、一時的に水中に退避させ悪天候などによる被害を避けることができるとともに、仕切られた前記水域間で継続的に水を流通させることも可能である。このように、前記浮沈式フロートの浮沈によりゲートの開閉を行う構造であるため、従来の通船ゲートに比べて構造がシンプルになる。
【0008】
なお、前記フロート部材とは、汚濁防止装置やオイルフェンス、流木止めなどのフロート部材のことを意味しており、前記スカート部としては、汚濁の拡散を防止する透水性の幕体や流出した油の拡散を防止する非透水性の幕体、流木などを捕集する網状の幕体などを含み、前記汚濁防止装置などとはオイルフェンスや流木止めが含まれている。
【0009】
請求項2の通船ゲートは、芯材に、水に沈む材料を用いることを特徴としている。この請求項2に係る通船ゲートによれば、前記規制フロート間の前記浮沈式フロートの沈下を促進することができるため、ゲートの開放を素早く行うことができる。
【0010】
請求項3の通船ゲートは、水域を二つに仕切るフロート部材の一部を通じて船の通行を可能にする通船ゲートであって、当該通船ゲートは、横長の形状に形成され中空の内部に給排気可能な可撓性を有する浮沈式フロートの一部として設け、前記浮沈式フロートの全長にわたって、重錘を備えたスカート部が吊設されており、当該浮沈式フロートに、水面からの沈下距離を規制する一対の規制フロートを、通船幅に相当する間隔を保持して連結索により連結し、前記浮沈式フロートの前記規制フロート間には長手方向に沿って芯材を配設して、前記規制フロート間において前記重錘の重さを重くするか、または前記芯材に水に沈む材料を用いるかの少なくともいずれか一方とすることを特徴としている。
【0011】
この請求項3に係る通船ゲートによれば、前記浮沈式フロートの内部から気体を排出すすることで浮力が低下し、前記重錘を重くするかまたは前記芯材に水に沈む材料を用いることによって沈下促進が図られている、前記浮沈式フロートの前記規制フロート間が、他よりも先に水中に沈下する。これにより、前記汚濁防止装置などによって仕切られた二つの水域が連通した状態になり船の通行が可能になる。なお、前記浮沈式フロートから排出する気体の量は、前記規制フロート間のみが沈下する程度に設定される。
【0012】
水中に沈下した前記浮沈式フロートの前記規制フロート間は、前記芯材が配設されているため、前記浮沈式フロートの弛みによる前記通船幅の減少が生じず、しかも前記規制フロートによって水深が一定に保たれるため、開放時において常に所定の通船スペースが形成されることになり、スムーズな通船を行うことができる。また、必要に応じて前記通船ゲートを含む前記浮沈式フロートの全長を水中に沈下させることができるため、一時的に水中に退避させ悪天候などによる被害を避けることができるとともに、仕切られた前記水域間で継続的に水を流通させることも可能である。このように、前記浮沈式フロートの浮沈によりゲートの開閉を行う構造であるため、従来の通船ゲートに比べて構造がシンプルになる。
【0013】
請求項4の通船ゲートは、浮沈式フロートの長手方向端部の一方に給排気口を設け、前記浮沈式フロートの内部に、一端部が前記給排気口に連結され他端部が前記給排気口と反対に位置する端部まで延長されている可撓管を配設し、当該可撓管の外周面に複数の通気孔を散在して設けることを特徴としている。
【0014】
この請求項4に係る通船ゲートによれば、前記給排気口を前記浮沈式フロートの両端部のいずれか一方に設けることで構造を簡素化することができ、また前記浮沈式フロート内の気体の残留による沈下不足を回避することができる。即ち、前記浮沈式フロートから排気すると徐々に浮力が低下し、前記浮沈式フロートは次第に水中に沈下する。水中に沈下した前記浮沈式フロートは、気体が抜けるにしたがって水圧で押し潰された状態になり、内部において気体が流通しにくくなる。これが原因で、気体が抜けにくい前記給排気口の反対に位置する端部に気体の残留が生じやすい。そこで、前記可撓管を配設することにより、前記浮沈式フロートが水圧で押し潰された状態になっても、内部の気体を排出することが可能になるからである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る通船ゲートは、1)構造がシンプルであるため設計製作に手間がかからず、またメンテナンスがしやすい。2)浮沈式フロートの規制フロート間は芯材が設けられ、かつ規制フロートで沈下深さが一定に保たれるために、水面に波が立っているなど条件の悪いときでも所定の通船スペースが確保され、常時スムーズな通船を行うことができる。3)悪天候などによる被害を受けにくいため耐久性が向上し、長期間にわたり使用することができる。4)必要に応じて二つの水域間で継続的に水の流通を図ることができるため、例えばダム湖において用いれば、平時において上流の河川から流入した清水をせき止めることなく下流側に流すことができる。5)水中に沈下させた状態にしておくことができるため、汚濁防止装置など(例えば、オイルフェンスや流木止めが含まれる)が不要になれば他のフロートと共に水中に沈めて保管することができる。
【0016】
請求項2に係る通船ゲートは、芯材に水に沈む材料を用いることで、規制フロート間の浮沈式フロートの沈下が素早く行われ、通船を短時間で完了させることができ、汚濁や浮遊物などの流出を抑えることができる。
【0017】
請求項3に係る通船ゲートは、上記請求項1に係る通船ゲートの効果の他に、既存の浮沈式のフロート部材の一部を改良して設けることもできるため、低コストでかつ手間を要することなく通船ゲートの設置が行える。
【0018】
請求項4に係る通船ゲートは、構造を簡略化できるためコストを抑えることができ、かつ浮沈式フロートにおける規制フロート間が確実に沈下するため、常時スムーズな通船が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明に係る通船ゲートの実施形態について図面1〜11を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は、通船ゲート1が設けられている汚濁防止装置2の部分拡大図であって水面に設置した状態を示しめした正面図である。汚濁防止装置2は、防水布からなる横長のカバー3に円柱形状の複数の発泡スチロール4を横向きに順次収納した固定式フロート(フロート部材)5と、固定式フロート5の全長にわたり吊設されている汚濁防止幕(スカート部)6とで構成されている。汚濁防止幕6は透水性の布材を矩形状に縫製し、対向する一対の辺の一方の縁部に重錘用のチェーン7を装着して他方の縁部で固定式フロート5の下端部に連結されている。この汚濁防止装置2は、固定式フロート5を水面に浮かべ水域を二つに仕切った状態で設置されて、汚濁水の流出入や拡散を防止している。
【0021】
通船ゲート1は、ゴム製の浮沈式フロート8を用いて構成されており、この浮沈式フロート8には固定式フロート5と同様汚濁防止幕9が吊設されている。
【0022】
浮沈式フロート8は、横長の形状に形成されており、長手方向と直交する断面形状が円環状になっていて中空の内部10を備えており、この中空の内部10には給排気が可能になっている。そして、その長手方向の両端部でそれぞれ固定式フロート5に連結されている。長手方向の一端部には、第2図に示すように、給排気口11が設けられてエア配管12が接続されている。エア配管12からは排気用の短い配管が分岐されており、この分岐配管13にはエアバルブ14が介設されている。なお、図中の符号15は、エアバルブ14を作動させるための圧縮空気を供給する制御用エア配管である。一方、第3図に示すように、給排気口11が配設されている方と反対側の端部にも別の給排気口16が設けられているが、この給排気口16はストップバルブ17が取り付けられ閉塞されている。このように、給排気を一方の給排気口11のみから行うようにすることで、構造の簡素化を図っている。しかしながら、例えば、浮沈式フロート8の全長が長く給排気に時間を要するような場合には、両方の給排気口11、16を使用することで給排気を迅速に行える利点がある。その実施形態を第4図に示す。なお、給排気口16側の構成は給排気口11側と同一にしているため、各構成要素について同じ符号で示すとともに重複を避けるため説明は省略する。
【0023】
汚濁防止幕9は、固定式フロート5に吊設されているものと同一であり、両側端部で固定式フロート5に吊設されている汚濁防止幕6と連結されている。また、下端部には固定式フロート5の汚濁防止幕6と同様の重錘用のチェーン17が装着されている。
【0024】
浮沈式フロート8の両端部にはそれぞれ、水面からの沈下距離を規制する規制フロート18、19が、通船幅Wに相当する間隔を保持して連結索20、21により連結されている。これらの規制フロート18、19は硬質樹脂で出来ており、円筒状の胴部の両端開口部を半球殻状の蓋で閉塞した形状に形成され、内部に空気が密封されている。連結索20、21は、沈下した浮沈式フロート8が通船を阻害することなく、かつ短時間で浮上できるようにでるだけ沈下する水深が浅くなるように長さが設定されている。これらの規制フロート18、19間における浮沈式フロート8には、芯材22が浮沈式フロート8の長手方向に沿って配設されている。
【0025】
芯材22は、硬質樹脂で形成されている矩形や円形などの断面形状を有する棒状部材が用いられ、浮沈式フロート8に内蔵させたり、外側面に固定したりして設けられている。芯材22の材料としては、繊維強化したプラスチックや金属材料、木材などを用いることもできる。特に、水に沈む材料を用いることで錘にもなるため、浮沈フロート8の沈下を促進することができ、迅速な通船が可能になる。
【0026】
次に、通船ゲート1の作用について第5図に基づいて説明する。第5図(a)に示すように、通船が行われないあいだは、浮沈式フロート8は水面に浮上した状態になっており、汚濁水や浮遊物の流出を防止している。そして、通船のために船を通船ゲート1に接近させ、図示しないリモコンで通船ゲート1の開放操作をするか、または無線で監視搭に通船ゲート1の開放を要求すると、エアバルブ14に制御用エア配管15から圧縮空気が供給され、エアバルブ14が開いて分岐配管13から浮沈式フロート8の内部10の空気が徐々に排出される。内部10から空気が排出されると浮力が次第に失われ、第5図(b)に示すように、浮沈式フロート8は水中に沈下する。そして、沈下深さが連結索20、21の長さに達すると、浮沈式フロート8は一対の規制フロート18、19によって水中に吊られた状態になり、沈下が停止する。沈下の完了は、規制フロート18、19がその長手方向を縦向きにして水面に浮かんだ状態になることで確認することができる。つまり、連結索20、21とは長手方向の一端部で連結されているため、浮沈式フロート8が沈下すれば連結索側の端部が下を向くようになるからである。
【0027】
沈下した浮沈式フロート8は芯材22を設けたことにより規制フロート18、19間で弛みが生じず、規定した通船幅Wが確保されるとともに、規制フロート18、19によって一定の水深で保持さるため、開放時において常に所定の通船スペースが形成される。これによって、水面に波が立っている場合などの悪条件下でも、船は通船ゲート1をスムーズに通過することができる。一方、芯材22を設けていない場合は、第11図に示すように、通船幅W’が減少して通船スペース狭くなり通船を妨げる。通船が終了すれば、リモコンで通船ゲート1を閉鎖する操作を行うか、或いは監視塔に閉鎖の要求をする。すると、制御用エア配管15を通じてエアバルブ14に圧縮空気が供給され、分岐配管13が閉栓される。次に、エア配管12を通じて給排気口11から浮沈式フロート8の内部10に空気が供給される。空気が供給されると次第に浮沈式フロート8の浮力が増し、水面に向かって浮上をし始める。浮沈式フロート8が完全に水面に浮上すれば空気の供給が停止され、通船ゲート1は再び閉鎖された状態になる。
【0028】
この通船ゲート1において、浮沈式フロート8の内部10に空気が残留することを防止するため、第6図に示すように、外周面に複数の通気孔24を散在して設けた可撓管23を内部10に配設することができる。可撓管23は耐圧性のゴムホースなどが用いられ、一端部を給排気口11と連通させ(第6図(a)参照)、他端部を給排気口11と反対に位置する端部まで延長して設ける(第6図(b)参照)。これにより、浮沈式フロート8が水中に沈下し水圧で押しつぶされた状態になっても、可撓管23を通じて内部10の空気を排出することができるため、内部10に空気が残留することがなく、浮沈式フロート8を確実に水中に沈めることができる。
【0029】
本願発明に係る通船ゲート1’は長尺の浮沈式フロート8の一部として設けることができる。以下、上記の通船ゲート1と同一または相当する構成については同一の符号で表すとともに、重複を避けるため説明は省略する。第7図に示す汚濁防止装置2’は、複数の浮沈式フロート8を順次連結し、各浮沈式フロート8にそれぞれ汚濁防止幕9を吊設した構成を備えている。浮沈式フロート8にはそれぞれ、複数の補助フロート25が所定の間隔で連結索26により連結されている(第10図参照)。補助フロート25は硬質樹脂を用いて樽型に形成されており、内部には空気が密封されている。これらの補助フロート25により、沈下した浮沈式フロート8が所定の水深以下にならないように規制している。補助フロート25の各連結索26は、規制フロート18、19の連結索20、21に比べて長く設定している。
【0030】
通船ゲート1’は浮沈式フロート8の1つに設けられており、通船ゲート1’となる箇所に一対の規制フロート18、19が通船幅Wの間隔を設けた状態で連結索20、21により連結されている(第8図参照)。そして、規制フロート18、19間における浮沈式フロート8には、その長手方向に沿って棒状の芯材22’が配設されている。この芯材22’の材質は鉄であるため、浮沈式フロート8における規制フロート18、19間の沈下を促進し、規制フロート18、19間を他よりも先に沈下させることができる。芯材22’は、鉄以外でも水に沈む材料であれば用いることができる。また、規制フロート18、19間の汚濁防止幕9の重錘の重量を重くしても同様の作用を得ることができる。
【0031】
このように一部が通船ゲート1’となっている浮沈式フロート8は、構造の簡素化を図るために、前述の実施形態と同様一方の給排気口のみを用いて給排気を行っている。
【0032】
次に、上記通船ゲート1’の作用について説明を行う。この汚濁防止装置2’の通船ゲート1’から通船を行う場合は、浮沈式フロート8の内部10から空気を所定量だけ排出する。そうすると、浮沈式フロート8において芯材22’が設けられている規制フロート18、19間が他よりも先に沈下をしはじめ、規制フロート18、19の連結索20,21によって設定した水深まで達すると、規制フロート18、19によって水中に吊られた状態になり沈下が停止する。そして、規制フロート18、19が縦向きになり浮沈式フロート8の沈下が完了したことを確認したら、空気の排出を停止して開放された通船ゲート1’から通船を行う。通船を終えたら浮沈式フロート8の内部に空気を供給し、浮沈式フロート8を再び水面に浮上させ通船ゲート1’を閉鎖する。
【0033】
なお、汚濁防止装置2’のように通船ゲート1’が設けられている浮沈式フロート8の全長が比較的長い場合、両方の給排気口から給排気を行うことで、浮沈式フロート8を迅速に浮沈させることができるため、通船に要する時間を短縮することができる。
【0034】
また、汚濁防止装置2’は大規模な出水が発生した場合や、台風などの悪天候の影響による高波等で被害が予想される場合は、各浮沈式フロート8の内部10から空気を排出して水中に退避させることができる。水中に沈下した各浮沈式フロート8は、第11図に示すように補助フロート25によって水中で吊下げられた状態になり、水流で煽られないようになっている。そして、天候が回復すれば各浮沈式フロート8の内部10に空気を供給して再び水面に浮上させる。
【0035】
上記実施形態では、通船ゲート1’を浮沈式フロート8の一つにのみ設けているが、他の浮沈式フロート8にも設けることもできるし、浮沈式フロート8の全長が長い場合などは、一つの浮沈式フロート8に通船ゲート1’を複数箇所設置することもできる。
【0036】
以上に説明した通船ゲート1、1’は、常時水中に沈下した状態にしておくことができるため、汚濁防止装置が不要になれば他のフロートと共に水中に沈めて保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る通船ゲートを備えた汚濁防止装置の正面図における部分拡大図。
【図2】第1図に示した通船ゲートの一部であって浮沈式フロートの長手方向一端部の部分拡大図。
【図3】第2図に示した浮沈式フロートの他端部の部分拡大図。
【図4】第3図に示した浮沈式フロートの他端部における別の実施形態を示す部分拡大図。
【図5】第1図に示す通船ゲートの開放過程を示す状態図であり、(a)は通船ゲートが閉塞されている状態を示す汚濁防止装置の正面図の部分拡大図、(b)は通船ゲートの開放途中の状態を示す汚濁防止装置の正面図の部分拡大図、(c)は通船ゲートの開放状態を示す汚濁防止装置の正面図の部分拡大図。
【図6】第1図に示す通船ゲートの浮沈式フロート内部に空気の残留を防止するための可撓管を設けた実施形態を示す汚濁防止装置の正面図の部分拡大図であり、(a)は浮沈式フロートの長手方向の一端部を示す部分拡大図、(b)は他端部を示す部分拡大図。
【図7】本発明に係る別の通船ゲートを備えた汚濁防止装置の正面図における部分拡大図。
【図8】第7図における通船ゲートが設けられている箇所の部分拡大図。
【図9】第7図に示す通船ゲートの開放過程を示す状態図であり、(a)は通船ゲートが閉塞されている状態を示す汚濁防止装置の正面図の部分拡大図、(b)は通船ゲートの開放途中の状態を示す汚濁防止装置の正面図の部分拡大図、(c)は通船ゲートの開放状態を示す汚濁防止装置の正面図の部分拡大図。
【図10】第7図に示した汚濁防止装置において全ての浮沈式フロートを水中に沈めた状態を示す正面図の部分拡大図。
【図11】浮沈式フロートから芯材を除いた通船ゲートの開放状態を示す汚濁防止装置の正面図の部分拡大図。
【符号の説明】
【0038】
1 通船ゲート
2 汚濁防止装置
3 カバー
4 発泡スチロール
5 固定式フロート
6 汚濁防止幕
7 チェーン
8 浮沈式フロート
9 汚濁防止幕
10 内部
11 給排気口
12 エア配管
13 分岐配管
14 エアバルブ
15 制御用エア配管
16 給排気口
17 ストップバルブ
18 規制フロート
19 規制フロート
20 連結索
21 連結索
22 芯材
23 可撓管
24 通気孔
25 補助フロート
26 連結索
1’ 通船ゲート
2’ 汚濁防止装置
22’芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域を二つに仕切るフロート部材の一部を通じて船の通行を可能にする通船ゲートであって、
横長の形状に形成され中空の内部に給排気可能な可撓性を有する浮沈式フロートを備え、当該浮沈式フロートの全長にわたって重錘を備えたスカート部が吊設されており、前記浮沈式フロートの長手方向の両端部には、水面からの沈下距離を規制する規制フロートが、通船幅に相当する間隔を保持して連結索により連結され、前記浮沈式フロートの前記規制フロート間に長手方向に沿って芯材が配設されていることを特徴とする通船ゲート。
【請求項2】
前記芯材に、水に沈む材料が用いられていることを特徴とする請求項1記載の通船ゲート。
【請求項3】
水域を二つに仕切るフロート部材の一部を通じて船の通行を可能にする通船ゲートであって、
当該通船ゲートは、横長の形状に形成され中空の内部に給排気可能な可撓性を有する浮沈式フロートの一部として設けられており、前記浮沈式フロートの全長にわたって、重錘を備えたスカート部が吊設され、当該浮沈式フロートに、水面からの沈下距離を規制する一対の規制フロートが、通船幅に相当する間隔を保持して連結索により連結されており、前記浮沈式フロートの前記規制フロート間に長手方向に沿って芯材が配設され、前記規制フロート間において前記重錘の重さが重くなっているか、または前記芯材に水に沈む材料が用いられているかの少なくともいずれか一方であることを特徴とする通船ゲート。
【請求項4】
前記浮沈式フロートの長手方向両端部の一方に給排気口が設けられており、前記浮沈式フロートの内部に、一端部が前記給排気口に連通し他端部が前記給排気口と反対に位置する端部まで延長されている可撓管が配設され、当該可撓管の外周面には複数の通気孔が散在して設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の通船ゲート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−95851(P2010−95851A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265135(P2008−265135)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(593066634)海和テック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】