説明

連続混合装置の洗浄方法

【課題】銀イオン含有液を供給する供給管と有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液を供給する供給管とを、それらの軸が混合排出管の軸に一致するように接続した混合装置を、分解することなく、特別な洗浄装置を使用することなく、混合装置を大きくすることなく、洗浄に特別な技術を必要とせず、時間を掛けずに洗浄する洗浄方法の提供。
【解決手段】有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液を供給する少なくとも1本の第1供給管と、銀イオン含有溶液を供給する少なくとも1本の第2供給管との軸とそれを混合排出する混合排出管の軸とが1箇所において軸が一致する様に、前記第1供給管と前記第2供給管及び前記混合排出管が接続された連続混合装置の洗浄方法において、少なくとも前記第1供給管から温度70〜90℃、濃度0.01〜5mol/Lのアルカリ性洗浄液を供給し前記混合排出管から排出することを特徴とする連続混合装置の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性原料とアルカリ性原料とを別々の供給管より供給し、これらの供給管の接合点で混合し、接合点に繋げられた混合排出管から反応物を排出し回収する連続混合装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、近年の医療情報のデジタル化により、医療診断用画像はMRI(magnetic resonance imaging)、CT(computed tomography)、CR(computed radiography)等の手法が主流となり、画像出力には各種方式の医療画像用ドライイメージャシステムが使用されてきている。又、印刷製版の分野でも、同様なデジタル化とドライ化が進展している。
【0003】
この様な社会・市場動向に伴い、レーザ・イメージャーやレーザ・イメージセッターの様な効率的な露光が可能で、且つ高解像度で鮮明な画像を形成することが出来る光熱写真ドライイメージング材料の重要性が増し、当該材料の一層の改良技術が必要とされてきている。
【0004】
上記光熱写真ドライイメージング材料に係る技術として、例えば、D.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely)による米国特許第3,152,904号、同3,487,075号又はD.H.クロスタベール(Klosterboer)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials,Marcel Dekker,Inc.第48頁、1991)等に記載されている様に、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子及び銀イオン還元剤を含有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料が知られている。
【0005】
これらの銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、感光性層中に設置された感光性ハロゲン化銀粒子を光センサーとし、有機銀塩を銀イオンの供給源とし、内蔵された還元剤によって通常80〜140℃にて熱現像することにより画像を形成させ、定着を行わないことを特徴としている。
【0006】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いる銀供給体としての有機銀塩は、カブリを抑え、単分散で微細であることが要求されており、これらの要求を満たす有機銀塩の製造方法として特開2005−157190号公報に、銀イオン含有液を供給する供給管と有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液を供給する供給管とを、それらの軸が混合排出管の軸に一致するように接続した混合装置を用いて、前記2液を配管中で混合し有機銀塩粒子を連続的に生成させる方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、同公報に開示されている混合装置を使用し1バッチを連続生産した場合に次の課題が挙げられる。
1)1バッチ生産を行った後、供給管及び混合排出管に異物が付着する。特に、混合排出管内に異物が付着するため、放置した場合、送液量が安定しなくなったり、送液量の不安定に伴い有機銀塩の性能が安定しなくなるため、1バッチ生産を行った後、混合装置を洗浄することが必要となる。
2)洗浄方法としては混合装置を分解し、ブラシで付着物をこすり落とす物理的手段で付着物を除去し、純水で洗浄した後、混合装置を組み立てる方法で行っているが、混合装置の組み立て・分解に時間が掛かり作業効率を低下させる原因の一つになっている。
【0008】
本発明は、特開2005−157190号公報に開示されている混合装置の洗浄方法に関するものである。
【0009】
この様な配管に付着した付着物を除去する方法はこれまでに、各種製造業で検討されている。例えば、配管中に洗浄液を噴出するノズルを挿入し螺旋状に旋回させることで配管中を洗浄する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。配管中を一対のピグを使用し、ピグ間に洗浄液を充填し、ピグを移動することで洗浄する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。2種類の液を一定の混合比率で混合するように各々の液を個別流路で混合室へ供給し、混合する装置の洗浄を、混合室から混合液を圧縮エアにより装置外に排出した後、混合室内及び混合室下流の流路を第1液用洗浄液により洗浄し、次に第2液用洗浄液と圧縮エアの供給を交互に繰り返して洗浄を行い、最後に第1液用洗浄液を混合室内及び混合室下流の流路に充填させて洗浄する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に記載の洗浄方法では配管中に洗浄用の部材を挿入し、部材を操作することにより配管中を洗浄するため、専用の洗浄用装置と、部材の移動を制御する技術も必要となり、装置全体が大きくなると共に装置のコストも上がり、洗浄用装置の管理も加わり作業効率の低下することが懸念される。
【0011】
又、特許文献3に記載の洗浄方法は、2液硬化型水性塗料を混合する装置の洗浄に関するものであり、本発明にそのまま適用することは出来ない。
【0012】
この様な状況から、特開2005−157190号公報に開示されている様な銀イオン含有液を供給する供給管と有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液を供給する供給管とを、それらの軸が混合排出管の軸に一致するように接続した混合装置を、分解することなく、特別な洗浄装置を使用することなく、混合装置を大きくすることなく、洗浄に特別な技術を必要とせず、時間を掛けずに洗浄する洗浄方法の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2005−131589号公報
【特許文献2】特開2006−95495号公報
【特許文献3】特開2005−40680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は、銀イオン含有液を供給する供給管と有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液を供給する供給管とを、それらの軸が混合排出管の軸に一致するように接続した混合装置を、分解することなく、特別な洗浄装置を使用することなく、混合装置を大きくすることなく、洗浄に特別な技術を必要とせず、時間を掛けずに洗浄する洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0015】
1.少なくとも水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合物を溶媒として調製する有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液を供給する少なくとも1本の第1供給管と、少なくとも水、又は水と有機溶媒との混合物を溶媒として調製する銀イオン含有溶液を供給する少なくとも1本の第2供給管との軸とそれを混合排出する混合排出管の軸とが1箇所において交差し、交差点において軸が一致する様に、前記第1供給管と前記第2供給管及び前記混合排出管が接続された連続混合装置の洗浄方法において、少なくとも前記第1供給管から温度70〜90℃、濃度0.01〜5mol/Lのアルカリ性洗浄液を供給し前記混合排出管から排出することを特徴とする連続混合装置の洗浄方法。
【0016】
2.前記第2供給管から温度70〜90℃、濃度0.01〜5mol/Lの酸性洗浄液を供給し前記混合排出管から排出することを特徴とする前記1に記載の連続混合装置の洗浄方法。
【0017】
3.前記第1供給管に供給するアルカリ性洗浄液の線速度が1m/sec〜10m/secであることを特徴とする前記1又は2に記載の連続混合装置の洗浄方法。
【0018】
4.前記第2供給管に供給する酸性洗浄液の線速度が1m/sec〜10m/secであることを特徴とする前記1又は2に記載の連続混合装置の洗浄方法。
【0019】
5.前記第1供給管から供給されたアルカリ性洗浄液を混合排出管の中に5分〜60分間貯留した後、混合排出管から排出することを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載の連続混合装置の洗浄方法。
【0020】
6.前記第2供給管から供給された酸性洗浄液を混合排出管の中に5分〜60分間貯留した後、混合排出管から排出することを特徴とする前記1〜4に記載の連続混合装置の洗浄方法。
【0021】
7.前記混合排出管は振動付与手段を有していることを特徴とする前記1〜6の何れか1項に記載の連続混合装置の洗浄方法。
【発明の効果】
【0022】
銀イオン含有液を供給する供給管と有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液を供給する供給管とを、それらの軸が混合排出管の軸に一致するように接続した混合装置を、分解することなく、特別な洗浄装置を使用することなく、混合装置を大きくすることなく、洗浄に特別な技術を必要とせず、時間を掛けずに洗浄する洗浄方法を提供すること特別な洗浄装置を使用することなく洗浄する洗浄方法を提供することが出来、作業効率の向上が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態を図1〜図6を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
図1は有機銀塩粒子の製造装置の模式図である。図1(a)はアルカリ性原料を供給する第1供給管と、酸性原料を供給する第2供給管と、混合排出管とから構成される連続混合装置を有する有機銀塩粒子の製造装置の模式図である。図1(b)は図1(a)のTで示される部分の拡大概略図である。
【0025】
図中、1は製造装置を示す。製造装置1は、第1調製タンク11と、第2調製タンク12と、連続混合装置13と、第1熱交換器14aと、第2熱交換器14bと、貯蔵タンク15とを有している。第1調製タンク11では、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合物を溶媒として有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液が調製される。11aは温度調整用のジャケットを示し、11bは攪拌機を示す。第2調製タンク12では、少なくとも水、又は水と有機溶媒との混合物を溶媒として銀イオン含有溶液が調製される。12aは温度調整用のジャケットを示し、12bは攪拌機を示す。
【0026】
第1調製タンク11で調製された有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液は、送液ポンプ11cで流量検知機11dと、第1熱交換器14aとを介して静的混合装置13に送られる。送液ポンプ11cは流量検知機11dからの測量結果に応じて流量を制御することが可能となっている。第2調製タンク12で調製された銀イオン含有溶液は、送液ポンプ12cで流量検知機12dを介して連続混合装置13に送られる。送液ポンプ12cは流量検知機12dからの測量結果に応じて流量を制御することが可能となっている。
【0027】
連続混合装置13は、第1調製タンク11から送られてくる有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液の第1供給管13aと、第2調製タンク12から送られてくる銀イオン含有溶液の第2供給管13bと、これらの2液が混合され有機銀塩粒子が生成された混合液を排出する混合排出管13cとを有している。13dは混合排出管13cの周囲に配設された振動付与手段を示す。
【0028】
振動手段13dとしては混合排出管13cに、混合排出管内に付着した異物の振動、分散、剥離等を考慮し、10〜1000kHzの振動を付与出来れば特に限定はない。これらの中で、周波数25〜100kHzの超音波発信装置が、洗浄性の面から特に好ましい。連続混合装置13は第1供給管13aと第2供給管13bとの軸と、混合排出管13cの軸とが1箇所において交差し、交差点Pにおいて軸が一致する様に供給管13aと供給管13bと混合排出管13cとが接続されている。
【0029】
連続混合装置13では、第1調製タンク11から送液管11eを介して第1供給管13aに送られてくる有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液と、第2調製タンク12から送液管12eを介して第2供給管13bに送られてくる銀イオン含有溶液とが、第1供給管13aと第2供給管13bと混合排出管13cとの接合箇所(交差点)で、これら2液が衝突混合し、有機銀塩粒子(有機酸銀粒子とも言う)が生成される。生成された有機酸銀粒子は混合排出管13cの出口に繋げられた送液管13eにより第2熱交換器14bを介して貯蔵タンク15に送られる。
【0030】
連続混合装置13は、複数の反応溶液を混合する際、複数の溶液が互いに初めて接触し混合される初期の期間において、攪拌装置により物理的攪拌を意図的にせず(第1供給管13aと第2供給管13bと混合排出管13cの内部には動的混合装置は配設されていない)に、連続的に混合する静的混合装置を言う。
【0031】
本図に示す様に連続混合装置13内で銀イオン含有溶液と有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液を混合することにより、第1供給管13aと第2供給管13bと混合排出管13cとの接合箇所(交差点)及び混合排出管13cの内側で異物の付着が発生する。異物としては、有機銀塩粒子、未反応の有機酸、及びこれらの混合物、酸化物、副反応物等が挙げられる。
【0032】
本発明は、連続混合装置13の第1供給管13aと第2供給管13bと混合排出管13cとの接合箇所(交差点)及び混合排出管13cの内側に付着した異物を除去する洗浄方法に関するものである。
【0033】
貯蔵タンク15では第2熱交換器14bで設定された温度に冷却された有機銀塩粒子を含む懸濁液が6〜8℃で貯蔵される。15aは貯蔵タンク15の温度を調整するためのジャケットを示し、15bは有機銀塩粒子の沈降を防止するための攪拌機を示す。貯蔵タンク15は所定量の有機銀塩粒子が製造され貯められた後、製造された有機銀塩粒子は、濾過、水洗工程(不図示)、乾燥工程(不図示)を経て有機銀塩粒子が製造される。
【0034】
次に、連続混合装置13の構造に付き説明する。第1供給管13aと第2供給管13bと混合排出管13cとの内径の比は、反応液の混合性を考慮し、1:1:1が好ましい。混合排出管13cの内径は、送液速度、混合性、生産性、配管内の圧力損失等を考慮し1mm以上100mm以下が好ましい。第1供給管13aと第2供給管13bとからの送液量から適宜適切な内径を選択することが重要である。
【0035】
第1供給管13a及び第2供給管13bの長さは、3〜30cmが好ましい。
【0036】
混合排出管13cの内側の長さLは下記A式による計算から得られる長さ以上の長さであることが好ましい。
【0037】
A式:L=k・D−N
ここで、L:混合排出管の内側の長さ[mm]、k:定数(=69.907)、D:内径[mm]、及びN:定数(=11.682)を表す。
【0038】
ここで、「混合排出管の内側の長さ」とは、混合排出管の軸と第1供給管13aの軸と、第2供給管13bの軸とが1箇所において交差した交差点Pにおいて軸が一致する一致点から、第1供給管13aと第2供給管13bとを通った2液が混合排出管から排出されるまでの長さを言う。A式による計算については、構造解析及び流体シミュレーションソフト(COSMOS Floworks)を用いたシミュレーション結果に基づき計算することが可能である。具体的には、静的混合器の完全混合条件(2液が混合排出管内で完全混合する長さ)を混合排出管の内径と排出管の長さによる関係から求めることが可能である。
【0039】
第1供給管13aと第2供給管13bとの軸と、混合排出管13cの軸とが1箇所において交差し、交差点Pにおいて軸が一致するとは、全ての管の軸が1箇所に集結し、一つの交差点において軸が一致すると言う望ましい態様に限られず、接続される管の内の最も太い管の内径の10%以内の軸間ずれがあるものが含まれる。
【0040】
第1供給管13aと第2供給管13bと混合排出管13cとの接合は、上述の如く、全ての管の軸が1箇所に集結し、一つの交差点において軸が一致する様であれば特に限定はないが、特に好ましい接合としては、第1供給管13aと第2供給管13bとの軸と混合排出管13cとの軸とが同一平面上にあって、且つ混合排出管13cの軸に対称に、ほぼ一点で交差する様な接合の形態が挙げられる。
【0041】
本図は第1供給管13aと第2供給管13bと混合排出管13cとの軸が同一平面上にある場合を示している(図2の(a)に示される連続混合装置を参照)。上述の如く、全ての管の軸が1箇所に集結しこの時、第1供給管13aと第2供給管13bとの軸間角度θ1は、混合排出管13c内の混合性、粒子形成時の完全反応までの混合距離の長さ、カブリ核の形成、流体の圧損、流量バランスの維持等を考慮し、90°以上で180°未満であることが好ましい。
【0042】
又、第1供給管13aと第2供給管13bとの何れか一方の軸と混合排出管13cの軸間角度θ2については90°以上135°以下にすることが好ましく、混合排出管13cから後の配管設計に応じて角度を任意に調製して最適な角度を選択出来る。尚、角度θ1及び角度θ2は内角を表す。
【0043】
第1調製タンク11で調製される有機酸アルカリ金属塩の溶液又は懸濁液の濃度は、液粘度、生産性、等を考慮し、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。又、粘度は、送液性、混合性、反応性、等を考慮し、1〜100mPa・sが好ましい。
【0044】
有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液は第1調製タンク11中での結晶化、固化を避けるために60℃以上に保つことが好ましいと考えられている。しかしながら、有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液を高温(70℃〜100℃)から低温(30℃〜60℃)へ第1熱交換器14aにより急冷することで結晶化、固化することなく、粘度を低下させることが可能である。第1熱交換器14aは高温(70℃〜100℃)から低温(30℃〜60℃)へ温度が下げることが出来れば特に限定されない。例えば、多管円筒型熱交換器、ヒートパイプ型熱交換器、二重管式熱交換器、コイル式熱交換器、カスケード式熱交換器、プレート式熱交換器、渦巻き板式熱交換器、水冷熱交換器を使用することが出来る。
【0045】
第2調製タンク12で調製される銀イオン含有溶液は硝酸銀が使用される。銀イオン含有溶液の銀イオン濃度は、液粘度、生産性等を考慮し0.1〜40質量%が好ましい。より好ましくは1〜30質量%である。又、粘度は、送液性、混合性、反応性、等を考慮し、1〜10mPa・sが好ましい。温度は、反応性、混合性、写真性能、等を考慮し、10〜80℃が好ましい。
【0046】
供給される銀イオン含有溶液の供給量と有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液の流量は、遊離脂肪族カルボン酸を脂肪族カルボン酸銀塩に対して3〜10モル%含有する様にすることが好ましい。特に好ましくは、4〜8モル%含有する様にすることである。脂肪族カルボン酸銀塩の比率が低い方が画像保存性等の観点から好ましい。
【0047】
連続混合装置13内で銀イオン含有溶液と有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液を混合する際の温度は、反応性、副反応の抑制等を考慮し、35℃以上70℃以下であることが好ましい。更には40℃以上65℃以下であり、より好ましくは40℃以上60℃以下である。
【0048】
図2は図1で示される連続混合装置の一例を示す概略斜視図である。尚、本図は供給管と混合排出管との接合状態を示すため混合排出管に配設された振動付与手段13d(図1を参照)は省略してある。
【0049】
(a)に示される連続混合装置は第1供給管13aと第2供給管13bと混合排出管13cとの軸が同一平面にあって、且つ混合排出管13cの軸に対称に、ほぼ一点で交差する様な接合した構造(図1に示される連続混合装置が該当する)となっている。
【0050】
(b)に示される連続混合装置は第1供給管13aと第2供給管13bとの軸が同一平面にあって、混合排出管13cが他の面にある場合を示している。但し、第1供給管13aと第2供給管13bとの軸は、混合排出管13cの軸に対称にほぼ一点で交差する様な接合した構造となっている。第1供給管13aと第2供給管13bとの軸とのなす角度は(a)に示される静的混合装置の場合と同じである。
【0051】
(c)に示される連続混合装置は、ほぼ水平な混合排出管13cに対して、第1供給管13aと第2供給管13bとの軸が同一平面にある状態で、且つ第1供給管13aと第2供給管13bとの軸が混合排出管13cの軸に対称にほぼ一点で交差する様な接合した構造を示している。第1供給管13aと第2供給管13bとの軸とのなす角度は(a)に示される連続混合装置の場合と同じである。本図に連続混合装置の一例を示したが、これらの中で最も好ましい形態としては(a)に示される形態が挙げられる。次に図1、図2に示される連続混合装置の洗浄方法に付き図3〜図6に示す概略フロー図で説明する。
【0052】
アルカリ性洗浄液及び酸性洗浄液を供給する供給管については、その後の洗浄水による洗浄を十分に行えば特に指定はないが、洗浄液によるコンタミ影響を低減する目的では、アルカリ性洗浄液は、第1供給管から、酸性洗浄液は、第2供給管から供給することが好ましい。
【0053】
図3は、アルカリ性洗浄液による連続混合装置の洗浄の概略フロー図である。
【0054】
S1では、第1供給管から有機酸アルカリ金属塩の溶液又は懸濁液と、第2供給管から銀イオン含有溶液を連続的に同時供給し、混合排出管でこれらの2つの溶液を混合し有機酸銀を連続生産した後の異物が付着した連続混合装置が準備される。
【0055】
S2では、第1供給管からアルカリ性洗浄液が供給され、混合排出管から排出し第1供給管と混合排出管との洗浄を行う。第1供給管に供給するアルカリ性洗浄液の温度は70〜90℃である。70℃未満の場合は、洗浄性が低下し、洗浄不良となる場合があるため好ましくない。90℃を超えた場合は、液の沸騰などにより、取り扱い性、安全性などの観点から好ましくない。
【0056】
第1供給管に供給するアルカリ性洗浄液の濃度は、洗浄性を考慮し、0.01〜5mol/Lであることが好ましい。0.01mol/L未満の場合は、洗浄性が低下し、洗浄不良となる場合があるため好ましくない。5mol/Lを超える場合は、ランニングコストの観点から好ましくない。
【0057】
第1供給管に供給するアルカリ性洗浄液の線速度は、洗浄性を考慮し、1m/sec〜10m/secが好ましい。アルカリ性洗浄液を供給する時間は、送液圧力のモニター等により付着物が除去されたことを確認した後に停止することが好ましい。
【0058】
S3では、アルカリ性洗浄液を所定の線速度で供給し、混合排出管から排出した後、洗浄水を第1供給管、第2供給管から供給し混合排出管から排出し連続混合装置の洗浄が終了する。洗浄水の温度は、洗浄性を考慮し、30〜60℃が好ましく、洗浄水の供給する時の線速度は、洗浄性を考慮し、1m/sec〜10m/secが好ましい。又、洗浄水の供給は、混合排出管から排出される洗浄水のpHを測定し、中性であることが確認された時点で止めることが好ましい。
【0059】
図4は図3に示すアルカリ性洗浄液による洗浄に続き酸性洗浄液による連続混合装置の洗浄の概略フロー図である。
【0060】
S′1では、図3に示す概略フロー図に従って、アルカリ性洗浄液により洗浄された連続混合装置が準備される。
【0061】
S′2では、第2供給管から酸性洗浄液を供給し混合排出管から排出し、第2供給管と混合排出管との洗浄を行う。酸性洗浄液の温度は、洗浄性、取り扱い性、安全性等を考慮し、70〜90℃が好ましい。
【0062】
第2供給管に供給する酸性洗浄液の濃度は、洗浄性、ランニングコストを考慮し、0.01〜5mol/Lであることが好ましい。
【0063】
第2供給管に供給する酸性洗浄液の線速度は、洗浄性を考慮し、1m/sec〜10m/secが好ましい。アルカリ性洗浄液を供給する時間は、送液圧力のモニター等により付着物が除去されたことを確認した後に停止することが好ましい。
【0064】
S′3では、洗浄水を第2供給管から供給し混合排出管から排出し連続混合装置の洗浄が終了する。洗浄水の温度は、洗浄性を考慮し、30〜60℃が好ましく、洗浄水の供給する時の線速度は、洗浄性を考慮し、1m/sec〜10m/secが好ましい。又、洗浄水の供給は、混合排出管から排出される洗浄水のpHを測定し、中性であることが確認された時点で止めることが好ましい。
【0065】
図5はアルカリ性洗浄液による他の方法による連続混合装置の洗浄の概略フロー図である。
【0066】
S″1では、第1供給管から有機酸アルカリ金属塩の溶液又は懸濁液と、第2供給管から銀イオン含有溶液を連続的に同時供給し、混合排出管でこれらの2つの溶液を混合し有機酸銀を連続生産した後の異物が付着した連続混合装置が準備される。
【0067】
S″2では、第1供給管からアルカリ性洗浄液を供給し、混合排出管内に貯留し、第1供給管と混合排出管との洗浄を行う。尚、本図で示される洗浄方法の場合、アルカリ性洗浄液を混合排出管内に一定時間貯留するため、混合排出管の出口に開閉バルブを配設する必要がある。混合排出管内とは、第1供給管と、第2供給管と、混合排出管とが接合されている箇所から混合排出管の出口迄を言う。尚、貯留している間もアルカリ性洗浄液の温度を一定に保つが好ましく、このため連続混合装置、又は混合排出管にヒータ等の保温手段を配設することが好ましい。
【0068】
第1供給管から供給し、混合排出管内に貯留している間のアルカリ性洗浄液の温度は、洗浄性、取り扱い性、安全性等を考慮し、70〜90℃が好ましい。混合排出管内に貯留している間の温度に早く到達させるために、第1供給管から供給するアルカリ性洗浄液の温度を貯留している間の温度に合わせることが好ましい。又、アルカリ性洗浄液の濃度は、洗浄性を考慮し、0.01〜5mol/Lであることが好ましい。
【0069】
第1供給管より供給されたアルカリ性洗浄液は、混合排出管内に、洗浄性を考慮し、5分〜1時間貯留することが好ましい。又、混合排出管内にアルカリ性洗浄液を貯留している間、振動付与手段(超音波発信装置を使用)により混合排出管に振動を付与し続けることが好ましい。超音波発信装置による振動は、洗浄性を考慮し、25〜100kHzが好ましい。
【0070】
S″3では、混合排出管からアルカリ性洗浄液を排出した後、図3のS3に示される洗浄水による洗浄が行われ連続混合装置の洗浄が終了する。
【0071】
図6は、図5に示すアルカリ性洗浄液による洗浄に続き、酸性洗浄液による連続混合装置の洗浄の概略フロー図である。
【0072】
S″′1では、図5に示す概略フロー図に従って、アルカリ性洗浄液により洗浄された連続混合装置が準備される。
【0073】
S″′2では、第2供給管から酸性洗浄液を供給し、混合排出管内に一定時間貯留する。酸性洗浄液の温度は、洗浄性を考慮し70〜90℃が好ましい。混合排出管内に酸性洗浄液を貯留している間の酸性洗浄液の温度も、洗浄性を考慮し、70〜90℃が好ましい。第2供給管に供給する酸性洗浄液の濃度は、洗浄性を考慮し、0.01〜5mol/Lであることが好ましい。
【0074】
第2供給管より供給された酸性洗浄液は、混合排出管内に、5分〜60分間貯留することが好ましい。又、混合排出管内に酸性洗浄液を貯留している間、振動付与手段(超音波発信装置を使用)により混合排出管に振動を付与し続けることが好ましい。超音波発信装置による振動は、洗浄性を考慮し、25〜100kHzが好ましい。
S″′3では、混合排出管から酸性洗浄液を排出した後、図3のS3に示される洗浄水による洗浄が行われ連続混合装置の洗浄が終了する。
【0075】
尚、図3〜図6に示した洗浄方法てに使用する洗浄水とは、井水、イオン交換水、蒸留水、等であるが、これらの内、井水で洗浄後、イオン交換水又は蒸留水でリンスすることが洗浄水削減の観点から特に好ましい。図3〜図6に示される連続混合装置の洗浄方法は図1に示す連続混合装置に繋げられた送液管13e及び第2熱交換器14bの洗浄にも適用することが可能である。
【0076】
連続混合装置の洗浄に使用する酸性洗浄液又はアルカリ性洗浄液に付き説明する。
【0077】
(酸性洗浄液)
酸性洗浄液は、塩酸(塩化水素)、クエン酸、酢酸、シュウ酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、無水酢酸、硫酸、リン酸などの水溶液であるが、この内硝酸又は塩酸の水溶液が好ましい。酸性洗浄液の濃度は、0.01〜5mol/Lの範囲で汚れ具合に応じて適宜選択すればよい。一般的に濃度が高い方が汚れに対する効果は高くなるが、ランニングコストなどの点から0.25〜1mol/Lが好ましい。
【0078】
(アルカリ性洗浄液)
アルカリ性洗浄液は、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)、ホウ酸ナトリウム(四ホウ酸ナトリウム,ホウシャ,ホウ酸ソーダ)、無水炭酸カリウム(炭酸カリウム)などの水溶液であるが、この内水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムの水溶液が好ましい。アルカリ性洗浄液の濃度は、0.01〜5mol/Lの範囲で汚れ具合に応じて適宜選択すればよい。一般的に濃度が高い方が汚れに対する効果は高くなるが、ランニングコストなどの点から0.25〜1mol/Lが好ましい。
【0079】
以下、図1、図2に示す連続混合装置に使用する銀イオン含有溶液及び有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液の調製に使用される材料に付き説明する。
(銀イオン含有溶液)
銀イオン含有溶液は硝酸銀を水、又は水と有機溶媒との混合物を溶媒として調製され溶液が使用される。
【0080】
(有機酸)
有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液に使用される有機酸アルカリ金属塩に付き説明する。有機酸アルカリ金属塩とは有機酸とアルカリ金属とにより形成される有機酸アルカリ金属塩を言う。有機酸とは、酸性を示す有機化合物を言う。例えば、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、フェノール、エノール、チオール、酸イミド、オキシム、スルホンアミドなど酸性の官能基を持つ化合物が挙げられる。これらの内、本発明においては、カルボン酸が好ましい。特に、脂肪族カルボン酸、即ち、脂肪酸が好ましい。更には、長鎖脂肪族カルボン酸が好ましく、炭素数は、好ましくは10〜30,より好ましくは10〜26であり、例えば、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等が好適な長鎖脂肪族カルボン酸として挙げられる。有機酸は、単一組成又は混合組成のどちらでもよい。混合組成の場合には、混合物中に占める主組成の割合は好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。
【0081】
一方、現像後の画像の保存性等の観点からは、脂肪族カルボン酸銀塩の原料である脂肪族カルボン酸の融点が50℃以上、好ましくは60℃以上である脂肪族カルボン酸の銀塩の含有比率が50%以上、好ましくは、70%以上、更に好ましくは、80%以上であることが好ましい。この観点からは、具体的には、ベヘン酸銀の含有率が高いことが好ましい。
【0082】
(アルカリ金属化合物)
有機酸アルカリ金属塩を作るのに使用出来るアルカリ金属化合物の種類の例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。これらの内の1種類のアルカリ金属化合物、例えば、水酸化カリウムを用いることが好ましいが、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを併用することも好ましく、併用比率としてはモル比が10:90〜75:25の範囲であることが好ましい。脂肪族カルボン酸と反応して脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩となった時に上記の範囲で使用することで、反応液の粘度を良好な状態に制御することが可能である。
【0083】
(有機酸アルカリ金属塩)
有機酸アルカリ金属塩は、上述した有機酸に上述したアルカリ金属化合物を添加することによって調製される。この時、アルカリ金属化合物の量を有機酸の等量以下にして、未反応の有機酸を残存させることが好ましい。この場合の、残存有機酸量は全有機酸に対し1〜50モル%であることが好ましく、より好ましくは1〜30モル%である。又は、アルカリを所望の量以上に添加した後に、硝酸、硫酸等の酸を添加し、余剰のアルカリ分を中和することによって調製してもよい。
【0084】
(有機銀塩粒子(有機酸銀塩粒子))
本発明に係わる図2に示す連続混合装置により製造された有機銀塩粒子(有機酸銀塩粒子)は、銀塩を形成していない遊離脂肪族カルボン酸と脂肪族カルボン酸銀塩の混合物となっている。
【実施例】
【0085】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0086】
実施例1
《有機銀塩粒子の調製》
図2(a)に示す連続混合装置を使用した図1に示す様な有機銀塩粒子の製造装置を使って以下に示す方法で有機銀塩粒子としてベヘン酸銀塩粒子を製造した。
【0087】
(有機酸アルカリ金属塩溶液(ベヘン酸カリウム塩溶液)の調製)
第1調製タンクに純水35150gを計量し、80℃に昇温を行い温度の安定したところでベヘン酸1850gを溶解した。その後、5モル/L−KOH水溶液1034mlを添加して有機酸アルカリ金属塩溶液としてベヘン酸カリウム溶液を得た。
【0088】
(銀イオン含有溶液の調製)
第2調製タンクに純水38295gを計量し、硝酸銀878.6gを溶解して銀イオン含有溶液として硝酸銀水溶液を得た。硝酸銀水溶液は60℃に保温した。
【0089】
(付着物付き連続混合装置の準備)
連続混合装置に、第1供給管から準備したベヘン酸カリウム溶液と、第2供給管から準備した硝酸銀水溶液とを同時に供給・混合し、混合排出管から反応物を含む溶液を排出し貯蔵タンクに蓄えながら第1供給管及び第2供給管への送液圧力が上がった時点(初期送液圧力は0.2MPaであったのが、0.5MPaへと変化した時点)で第1供給管及び第2供給管への送液を中止し、付着物付き連続混合装置とした。送液圧力は、送液ポンプ出側に設置した圧力計により測定した。
【0090】
尚、付着物付き連続混合装置は洗浄試験を行うたびに同じ条件で準備した。尚、連続混合装置に供給時の硝酸銀水溶液の温度は60℃、ベヘン酸カリウム溶液の温度は60℃とした。(80℃から60℃へ20℃/minの速度で急冷し)硝酸銀水溶液の供給量は3.55L/min、ベヘン酸カリウム溶液の供給量は10L/min、ベヘン酸カリウム溶液の供給量は10L/minで一定流量で同時にレイノルズ数(Re)=6000で添加した。尚、レイノルズ数(Re)は、混合排出管で測定した値を示す。
【0091】
第1供給管、第2供給管は内径5mm、内側の長さ55mmとした。混合排出管は内径5mm、内側の長さ85mmとした。第1供給管と第2供給管との軸間角度θ1は120°、第2供給管と混合排出管との軸間角度θ2は120°とした。
【0092】
供給管の内側の長さとは、混合排出管の軸と硝酸銀水溶液用供給管の軸と、ベヘン酸カリウム溶液用供給管の軸とが1箇所において交差した交差点において軸が一致する一致点までの長さを言う。又、混合排出管の内側の長さとは、混合排出管の軸と硝酸銀水溶液用供給管の軸と、ベヘン酸カリウム溶液用供給管の軸とが1箇所において交差した交差点において軸が一致する一致点から、硝酸銀水溶液用供給管の軸と、ベヘン酸カリウム溶液用供給管とを通った2液が混合排出管から排出されるまでの長さを言う
(付着物付き連続混合装置の洗浄)
アルカリ性洗浄液として、表1に示す様な温度、濃度の異なる水酸化ナトリウム溶液を第1供給管から線速度を表1に示すように変えて20分間供給し混合排出管から排出した後、温度40℃のイオン交換水を線速度3m/secで第1供給管から供給し、混合排出管から排出した洗浄水のpHが7〜8になった時点で準備した付着物付き連続混合装置の洗浄を終了とし、洗浄済み連続混合装置No.101〜119とした。洗浄水のpHは、東亜ディーケーケー株式会社製pHメーターで測定した。
【0093】
評価
準備した洗浄済み連続混合装置No.101〜119を使用し、付着物付き連続混合装置の準備と同じ条件で第1供給管から準備した硝酸銀水溶液と、第2供給管から準備したベヘン酸カリウム溶液とを同時に供給・混合し、洗浄回復率を評価した結果を表2に示す。尚、洗浄回復率は下記の計算式より算出し、洗浄回復率100%を付着物が着く前の状態とした。送液圧力は、送液ポンプ出側に設置した圧力計により測定した。
【0094】
洗浄回復率=100−(送液圧力−0.2)/(0.5−0.2)×100
【0095】
【表1】

【0096】
尚、試料No.105は洗浄回復率は良好な結果を得たが、アルカリ性洗浄液の温度が高いため、取り扱い性、安全性の観点から実用化は難しいと判定した。試料No.114は洗浄回復率は良好な結果を得たが、コストが掛かり過ぎるため経済性の面から実用化は難しいと判定した。本発明の有効性が確認された。
【0097】
実施例2
《有機銀塩粒子の調製》
図2(a)に示す連続混合装置を使用した図1に示す様な有機銀塩粒子の製造装置を使って以下に示す方法で有機銀塩粒子としてベヘン酸銀塩粒子を製造した。
【0098】
(有機酸アルカリ金属塩溶液(ベヘン酸カリウム塩溶液)の調製)
第1調製タンクに実施例1と同じ方法、同じ条件で有機酸アルカリ金属塩溶液としてベヘン酸カリウム溶液を得た。
【0099】
(銀イオン含有溶液の調製)
第2調製タンクに実施例1と同じ方法、同じ条件で銀イオン含有溶液として硝酸銀水溶液を得た。硝酸銀水溶液は60℃に保温した。
【0100】
(付着物付き連続混合装置の準備)
準備したベヘン酸カリウム溶液と、銀イオン含有溶液とを使用し、実施例1と同じ条件で連続混合装置に、第1供給管から準備したベヘン酸カリウム溶液と、第2供給管から準備した硝酸銀水溶液とを同時に供給・混合し、混合排出管から反応物を含む溶液を排出し貯蔵タンクに蓄えながら第1供給管及び第2供給管への送液圧力が上がった時点(初期送液圧力は0.2MPaであったのが、0.5MPaへと変化した時点)で第1供給管及び第2供給管への送液を中止し、付着物付き連続混合装置とした。送液圧力は実施例1と同じ方法により測定した。付着物付き連続混合装置は洗浄試験を行うたびに同じ条件で準備した。尚、連続混合装置に供給時の硝酸銀水溶液及びベヘン酸カリウム溶液の温度、供給量、レイノルズ数(Re)は実施例1の条件と同じとした。又、使用した連続混合装置も実施例1と同じ連続混合装置を使用した。
【0101】
(付着物付き連続混合装置の洗浄)
アルカリ性洗浄液として、濃度0.01mol/Lの水酸化ナトリウム洗浄液を、温度70℃、線速度3m/secで第1供給管から20分間供給し混合排出管から排出した後、温度40℃のイオン交換水を線速度4m/secで第1供給管から供給し、混合排出管から排出した洗浄水のpHが7〜8になった時点でイオン交換水による洗浄を終了とした。引き続き、酸性洗浄液として、表2に示すように温度、濃度の異なる硝酸溶液を第2供給管から線速度を表2に示すように変えて20分間供給し混合排出管から排出した後、温度40℃のイオン交換水を線速度3m/secで第2供給管から供給し、混合排出管から排出した洗浄水のpHが7〜8になった時点で準備した付着物付き連続混合装置の洗浄を終了とし、洗浄済み連続混合装置No.201〜219とした。又、酸性洗浄液による洗浄を行わないで洗浄を終了とし洗浄済み連続混合装置No.220とした。洗浄水のpHは実施例1と同じ方法で測定した。
【0102】
評価
準備した洗浄済み連続混合装置No.201〜220を使用し、実施例1と同じ方法で第1供給管から実施例1と同じ条件で準備したベヘン酸カリウム溶液と、第2供給管から実施例1と同じ条件で準備した硝酸銀水溶液とを同時に供給・混合し、洗浄回復率を評価した結果を表2に示す。洗浄回復率は、実施例1と同じ方法により送液圧力を測定し、計算で求めた。
【0103】
【表2】

【0104】
本発明の有効性が確認された。
【0105】
実施例3
《有機銀塩粒子の調製》
図2(a)に示す連続混合装置を使用した図1に示す様な有機銀塩粒子の製造装置を使って以下に示す方法で有機銀塩粒子としてベヘン酸銀塩粒子を製造した。
【0106】
(有機酸アルカリ金属塩溶液(ベヘン酸カリウム塩溶液)の調製)
第1調製タンクに実施例1と同じ方法、同じ条件で有機酸アルカリ金属塩溶液としてベヘン酸カリウム溶液を得た。
【0107】
(銀イオン含有溶液の調製)
第2調製タンクに実施例1と同じ方法、同じ条件で銀イオン含有溶液として硝酸銀水溶液を得た。硝酸銀水溶液は60℃に保温した。
【0108】
(付着物付き連続混合装置の準備)
連続混合装置に、第1供給管から準備したベヘン酸カリウム溶液と、第2供給管から準備した硝酸銀水溶液とを同時に供給・混合し、混合排出管から反応物を含む溶液を排出し貯蔵タンクに蓄えながら第1供給管及び第2供給管への送液圧力が上がった時点(初期送液圧力は0.2MPaであったのが、0.5MPaへと変化した時点)で第1供給管及び第2供給管への送液を中止し、付着物付き連続混合装置とした。送液圧力は実施例1と同じ方法により測定した。付着物付き連続混合装置は洗浄試験を行うたびに同じ条件で準備した。尚、連続混合装置に供給時の硝酸銀水溶液及びベヘン酸カリウム溶液の温度、供給量、レイノルズ数(Re)は実施例1の条件と同じとした。又、使用した連続混合装置も実施例1と同じ連続混合装置を使用した。
【0109】
(付着物付き連続混合装置の洗浄)
アルカリ性洗浄液として、表3に示す様な濃度の異なる水酸化ナトリウム溶液を第1供給管から貯留する温度に合わせた温度で線速度3m/secで供給し、混合排出管内に表3に示す様に時間と温度を変えて貯留した後、混合排出管から排出した。この後、温度40℃のイオン交換水を線速度5m/secで第1供給管から供給し、混合排出管から排出した洗浄水のpHが7〜8になった時点で準備した付着物付き連続混合装置の洗浄を終了とし、洗浄済み連続混合装置No.301〜314とした。洗浄水のpHは実施例1と同じ方法で測定した。混合排出管内に貯留する間のアルカリ性洗浄液の温度は、混合排出管にヒータを取り付け、温度を保持する様にした。
【0110】
評価
準備した洗浄済み連続混合装置No.301〜314を使用し、実施例1と同じ方法で第1供給管から実施例1と同じ条件で準備したベヘン酸カリウム溶液と、第2供給管から実施例1と同じ条件で準備した硝酸銀水溶液とを同時に供給・混合し、洗浄回復率を評価した結果を表3に示す。洗浄回復率は、実施例1と同じ方法により送液圧力を測定し、計算で求めた。
【0111】
【表3】

【0112】
本発明の有効性が確認された。
【0113】
実施例4
《有機銀塩粒子の調製》
図2(a)に示す連続混合装置を使用した図1に示す様な有機銀塩粒子の製造装置を使って以下に示す方法で有機銀塩粒子としてベヘン酸銀塩粒子を製造した。
【0114】
(有機酸アルカリ金属塩溶液(ベヘン酸カリウム塩溶液)の調製)
第1調製タンクに実施例1と同じ方法、同じ条件で有機酸アルカリ金属塩溶液としてベヘン酸カリウム溶液を得た。
【0115】
(銀イオン含有溶液の調製)
第2調製タンクに実施例1と同じ方法、同じ条件で銀イオン含有溶液として硝酸銀水溶液を得た。硝酸銀水溶液は60℃に保温した。
【0116】
(付着物付き連続混合装置の準備)
準備したベヘン酸カリウム溶液と、銀イオン含有溶液とを使用し、実施例1と同じ条件で連続混合装置に、第1供給管から準備したベヘン酸カリウム溶液と、第2供給管から準備した硝酸銀水溶液とを同時に供給・混合し、混合排出管から反応物を含む溶液を排出し貯蔵タンクに蓄えながら第1供給管及び第2供給管への送液圧力が上がった時点(初期送液圧力は0.2MPaであったのが、0.5MPaへと変化した時点)で第1供給管及び第2供給管への送液を中止し、付着物付き連続混合装置とした。送液圧力は実施例1と同じ方法により測定した。付着物付き連続混合装置は洗浄試験を行うたびに同じ条件で準備した。尚、連続混合装置に供給時の硝酸銀水溶液及びベヘン酸カリウム溶液の温度、供給量、レイノルズ数(Re)は実施例1の条件と同じとした。又、使用した連続混合装置も実施例1と同じ連続混合装置を使用した。
【0117】
(付着物付き連続混合装置の洗浄)
アルカリ性洗浄液として、濃度0.8mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を、温度80℃、線速度4m/secで第1供給管から供給し、混合排出管内に温度80℃、30分間貯留した後、排出した。その後、温度40℃のイオン交換水を線速度5m/secで第1供給管から供給し、混合排出管から排出した洗浄水のpHが7〜8になった時点でイオン交換水による洗浄を終了とした。引き続き、酸性洗浄液として、表4に示すように濃度の異なる硝酸溶液溶液を第2供給管から貯留する温度に合わせた温度で供給し、表4に示すように混合排出管内に温度と時間かを変えて貯留した後、排出した。この後、温度40℃のイオン交換水を線速度5m/secで第2供給管から供給し、混合排出管から排出した洗浄水のpHが7〜8になった時点で準備した付着物付き連続混合装置の洗浄を終了とし、洗浄済み連続混合装置No.401〜415とした。洗浄水のpHは実施例1と同じ方法で測定した。
【0118】
評価
準備した洗浄済み連続混合装置No.401〜415を使用し、実施例1と同じ方法で第1供給管から実施例1と同じ条件で準備したベヘン酸カリウム溶液と、第2供給管から実施例1と同じ条件で準備した硝酸銀水溶液とを同時に供給・混合し、洗浄回復率を評価した結果を表4に示す。洗浄回復率は、実施例1と同じ方法により送液圧力を測定し、計算で求めた。
【0119】
【表4】

【0120】
本発明の有効性が確認された。
【0121】
実施例5
(付着物付き連続混合装置の準備)
実施例1と同じ条件で付着物付き連続混合装置を準備した。尚、付着物付き連続混合装置は洗浄試験を行うたびに同じ条件で準備した。
【0122】
(付着物付き連続混合装置の洗浄)
アルカリ性洗浄液として、濃度1mol/Lの水酸化カリウム溶液を第1供給管から温度70℃で線速度3m/secで供給し、混合排出管内に温度70℃、30分間貯留している間、混合排出管の周囲に配設した超音波振動装置により表5に示すように混合排出管に振動を与えた後、排出した。この後、温度40℃のイオン交換水を線速度5m/secで第1供給管と第2供給管から供給し、混合排出管から排出した洗浄水のpHが7〜8になった時点で準備した付着物付き連続混合装置の洗浄を終了とし、洗浄済み連続混合装置No.501〜505とした。洗浄水のpHは実施例1と同じ方法で測定した。混合排出管内に貯留する間のアルカリ性洗浄液の温度は、混合排出管にヒータを取り付け供給時の温度を維持する様にした。
【0123】
評価
準備した洗浄済み連続混合装置No.501〜505を使用し、付着物付き連続混合装置の準備と同じ条件で第1供給管から実施例1と同じ条件で準備したベヘン酸カリウム溶液と、第2供給管から実施例1と同じ条件で準備した硝酸銀水溶液とを同時に供給・混合し、洗浄回復率を評価した結果を表5に示す。洗浄回復率は、実施例1と同じ方法により送液圧力を測定し、計算で求めた。
【0124】
【表5】

【0125】
本発明の有効性が確認された。
【0126】
実施例6
(付着物付き連続混合装置の準備)
実施例1と同じ条件で付着物付き連続混合装置を準備した。尚、付着物付き連続混合装置は洗浄試験を行うたびに同じ条件で準備した。
【0127】
(付着物付き連続混合装置の洗浄)
アルカリ性洗浄液として、濃度0.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を第1供給管から温度80℃で線速度3m/secで供給し、混合排出管内に温度70℃、30分間貯留している間、混合排出管の周囲に配設した超音波振動装置により50Hzで混合排出管に振動を与えた後、排出した。この後、温度40℃のイオン交換水を線速度5m/secで第1供給管から供給し、混合排出管から排出した洗浄水のpHが7〜8になった時点で終了とした。この後、酸性洗浄液として、濃度0.8mol/Lの硝酸溶液を第2供給管から温度80℃で供給し、混合排出管内に温度80℃、40分間貯留している間、表6に示すように混合排出管の周囲に配設した超音波振動装置により混合排出管に振動を与えた後、排出した。この後、温度40℃のイオン交換水を線速度5m/secで第1供給管と第2供給管から供給し、混合排出管から排出した洗浄水のpHが7〜8になった時点で準備した付着物付き連続混合装置の洗浄を終了とし、洗浄済み連続混合装置No.601〜605とした。洗浄水のpHは実施例1と同じ方法で測定した。混合排出管内に貯留する間の酸性洗浄液の温度は、混合排出管にヒータを取り付け供給時の温度を維持する様にした。
【0128】
評価
準備した洗浄済み連続混合装置No.601〜605を使用し、付着物付き連続混合装置の準備と同じ条件で第1供給管から準備したベヘン酸カリウム溶液と、第2供給管から準備した硝酸銀水溶液とを同時に供給・混合し、洗浄回復率を評価した結果を表6に示す。洗浄回復率は、実施例1と同じ方法により送液圧力を測定し、計算で求めた。
【0129】
【表6】

【0130】
本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】有機銀塩粒子の製造装置の模式図である。
【図2】図1で示される連続混合装置の一例を示す概略斜視図である。
【図3】アルカリ性洗浄液による連続混合装置の洗浄の概略フロー図である。
【図4】図3に示すアルカリ性洗浄液による洗浄に続き酸性洗浄液による連続混合装置の洗浄の概略フロー図である。
【図5】アルカリ性洗浄液による他の方法による連続混合装置の洗浄の概略フロー図である。
【図6】図5に示すアルカリ性洗浄液による洗浄に続き、酸性洗浄液による連続混合装置の洗浄の概略フロー図である。
【符号の説明】
【0132】
1 製造装置
11 第1調製タンク
12 第2調製タンク
13 連続混合装置
13a 第1供給管
13b 第2供給管
13c 混合排出管
13d 振動付与手段
14a 第1熱交換器
14b 第2熱交換器
15 貯蔵タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合物を溶媒として調製する有機酸アルカリ金属塩溶液若しくは懸濁液を供給する少なくとも1本の第1供給管と、少なくとも水、又は水と有機溶媒との混合物を溶媒として調製する銀イオン含有溶液を供給する少なくとも1本の第2供給管との軸とそれを混合排出する混合排出管の軸とが1箇所において交差し、交差点において軸が一致する様に、前記第1供給管と前記第2供給管及び前記混合排出管が接続された連続混合装置の洗浄方法において、
少なくとも前記第1供給管から温度70〜90℃、濃度0.01〜5mol/Lのアルカリ性洗浄液を供給し前記混合排出管から排出することを特徴とする連続混合装置の洗浄方法。
【請求項2】
前記第2供給管から温度70〜90℃、濃度0.01〜5mol/Lの酸性洗浄液を供給し前記混合排出管から排出することを特徴とする請求項1に記載の連続混合装置の洗浄方法。
【請求項3】
前記第1供給管に供給するアルカリ性洗浄液の線速度が1m/sec〜10m/secであることを特徴とする請求項1又は2に記載の連続混合装置の洗浄方法。
【請求項4】
前記第2供給管に供給する酸性洗浄液の線速度が1m/sec〜10m/secであることを特徴とする請求項1又は2に記載の連続混合装置の洗浄方法。
【請求項5】
前記第1供給管から供給されたアルカリ性洗浄液を混合排出管の中に5分〜60分間貯留した後、混合排出管から排出することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の連続混合装置の洗浄方法。
【請求項6】
前記第2供給管から供給された酸性洗浄液を混合排出管の中に5分〜60分間貯留した後、混合排出管から排出することを特徴とする請求項1〜4に記載の連続混合装置の洗浄方法。
【請求項7】
前記混合排出管は振動付与手段を有していることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の連続混合装置の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−328151(P2007−328151A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159519(P2006−159519)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】