説明

連続鋳造用浸漬ノズルおよびこれを用いた連続鋳造方法

【課題】浸漬ノズルの閉塞を抑制することができる連続鋳造用浸漬ノズル、およびこの浸漬ノズルを用いた連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】スピネルグラファイト耐火物を少なくとも内面に配した連続鋳造用浸漬ノズルであって、前記スピネルグラファイト耐火物が、mass%で、C:11〜45%、MgO:6〜25%、Al23:40〜80%およびCaO:1〜7%を含有することを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズル。前記連続鋳造用浸漬ノズルを用いて鋳型に溶融金属を注入する鋳片の連続鋳造方法であって、前記連続鋳造用浸漬ノズルに電極を設け、前記スピネルグラファイト耐火物を通じて溶融金属に通電しながら鋳造することを特徴とする連続鋳造方法。前記スピネルグラファイト耐火物を陰極とし、前記溶融金属内に陽極となる対極を浸漬し、通電時の平均電流密度を1〜30mA/cm2とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼等の高融点金属の連続鋳造に用いられる浸漬ノズル、およびこの浸漬ノズルを用いた高融点金属の連続鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼等の高融点金属の連続鋳造において、溶融金属はタンディッシュから浸漬ノズルを介して鋳型内に注入される。その際、浸漬ノズルは、アルミナに代表される高融点非金属介在物が内面に付着することによって閉塞するおそれがある。浸漬ノズルの閉塞は、操業および鋳片の品質に大きな影響を及ぼす問題である。
【0003】
従来、浸漬ノズルの閉塞の防止については様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1では、浸漬ノズルを構成する耐火物として、スピネル−ペリクレース−黒鉛系耐火物が開示されている。同文献では、この耐火物は、鋳造中の高温下における化学反応によって緻密な内面を形成するため、溶鋼中の介在物が付着しにくいとされている。
【0004】
特許文献2には、浸漬ノズルを構成する耐火物として、低融点の緑柱石を含有し内面に半溶融層を形成するマグネシア−黒鉛、スピネル−黒鉛またはマグネシア−スピネル−黒鉛系の耐火物が開示されている。同文献では、緑柱石は、高温の溶鋼と接触することによりその一部が溶融し、低融点物の被膜を耐火物の表面に形成するため、溶鋼中の介在物が耐火物の表面に付着しにくいとされている。
【0005】
しかし、本発明者らの検討によると、これらの文献に記載の耐火物では浸漬ノズルの閉塞の抑制は十分でなかった。
【0006】
また、本発明者らは、特許文献3において、アルミナグラファイトに微量(0.5〜7質量%)のCaO等を含有させた耐火物で浸漬ノズルの内壁を構成し、この浸漬ノズルに所定の流速の溶鋼を通過させることにより、浸漬ノズルの閉塞を防止する方法を提案している。アルミナグラファイトに微量のCaOを含有させることにより、耐火性を確保しながら、浸漬ノズルの溶鋼と接する部分に半溶融状態のガラス層を形成することができる。半溶融状態のガラス層が形成されると、介在物が耐火物に付着しにくくなる。この方法では、通電を併用することにより、浸漬ノズルの閉塞防止効果を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3358989号公報
【特許文献2】特開2002−35904号公報
【特許文献3】特開2010−201504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、本発明者らは特許文献3で浸漬ノズルの閉塞を防止する方法を提案している。しかし、この浸漬ノズルには、閉塞防止効果に改善の余地があることがわかった。
【0009】
本発明は、この問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、浸漬ノズルの閉塞をより抑制することができる連続鋳造用浸漬ノズル、およびこの浸漬ノズルを用いた連続鋳造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、浸漬ノズルを構成する耐火物の表面へのアルミナ介在物の付着について実験と考察を重ねた。その結果、耐火物原料であるアルミナ粒子の表面では、アルミナ介在物の付着や、溶融金属からのアルミナ介在物の析出が容易に生じることを知見した。
【0011】
また、耐火物は溶鋼と濡れにくいほどアルミナ介在物が付着しやすいため、溶鋼との濡れ性を向上させて非金属介在物の付着を抑制する技術においては、溶鋼との濡れ性に劣るアルミナを耐火物原料として使用することに限界があることを知見した。
【0012】
これらのことから、耐火物の表面への介在物の付着を一層抑制するには、耐火物原料に必要とされる特質を適正に見極める必要がある。
【0013】
そこで、本発明者らは、アルミナに代わる耐火物基礎原料として、まずマグネシアについて検討した。マグネシアは、アルミナと同様に高い融点(約2800℃)を有し、アルミナよりも溶鋼との濡れ性に優れていることから、アルミナに代わる耐火物基礎原料として有望視されていた。しかし、熱膨張率が大きいことが熱衝撃への耐性の点で不利であり、実用化には困難を伴うことがわかった。また、マグネシアには、微量のCaOを含有させても固溶してしまい、連続鋳造時に低融点の液相は生じない。そのため、マグネシアを使用した浸漬ノズルでは、溶鋼と接する部分に半溶融状態のガラス層を形成させることによって介在物が付着しにくくすることができない。
【0014】
これらのことを踏まえると、新しい耐火物基礎原料に要求されるのは以下の6点である。
1.結晶構造が、アルミナのコランダム構造とは異なること。
2.溶鋼との濡れ性が、アルミナよりも優れていること。
3.十分に高融点であること。
4.熱膨張率がマグネシアより小さく、好ましくはアルミナと同程度であること。
5.微量のCaOを含有することによって連続鋳造時に低融点の液相が生じること。
6.工業的に容易に入手できること。
ここで、融点に関し、「低融点」とは約1700℃以下であることをいい、「高融点」とは約1900℃以上であることをいう。また、CaOの含有について「微量」とは、含有率が約5質量%以下であることをいう。
【0015】
本発明者らは、以上の6点を満足する耐火物基礎原料としてスピネルを選定した。スピネルは、結晶構造がコランダム構造とは異なるスピネル型結晶構造である。また、スピネルはMgOとAl23とからなる物質であり、アルミナと同様に、微量のCaOを含有させることによって、連続鋳造時に低融点の液相を生じる。さらに、スピネルは工業的に原料が容易に入手できる。
【0016】
さらに、本発明者らは、スピネルにグラファイトおよび微量のCaOを含有させた耐火物(スピネルグラファイト)を使用した浸漬ノズルについて検討した。その結果、このスピネルグラファイトを特定の組成とし、浸漬ノズルの少なくとも内面に配することにより、溶鋼と接する内面に限定して少量の液相を生成する浸漬ノズルが得られることを知見した。この浸漬ノズルは、内面が溶鋼との濡れ性に優れているためアルミナ介在物が付着しにくい。また、連続鋳造時には、内面が半溶融状態かつ平滑な状態であり、アルミナ介在物の付着を促進する溶鋼流の乱れが生じないことから、介在物の付着を抑制することができる。
【0017】
また、連続鋳造時において、このような微量なCaOを含有したスピネルグラファイトを通して溶鋼に通電すると、通電に伴って電子やイオンの物質移動がスピネルグラファイトの溶鋼との界面において生じ、スピネルグラファイトの濡れ性を向上させるため、介在物の付着の抑制効果を向上させることができることも知見した。
【0018】
本発明は、以上の検討結果および知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)の連続鋳造用浸漬ノズル、ならびに(2)および(3)の連続鋳造方法を要旨としている。
【0019】
(1)スピネルグラファイト耐火物を少なくとも内面に配した連続鋳造用浸漬ノズルであって、前記スピネルグラファイト耐火物が、mass%で、C:11〜45%、MgO:6〜25%、Al23:40〜80%およびCaO:1〜7%を含有することを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズル。
【0020】
(2)前記(1)に記載の連続鋳造用浸漬ノズルを用いて鋳型に溶融金属を注入する鋳片の連続鋳造方法であって、前記連続鋳造用浸漬ノズルに電極を設け、前記スピネルグラファイト耐火物を通じて溶融金属に通電しながら鋳造することを特徴とする連続鋳造方法。
【0021】
(3)前記スピネルグラファイト耐火物を陰極とし、前記溶融金属内に陽極となる対極を浸漬し、通電時の平均電流密度を1〜30mA/cm2とすることを特徴とする前記(2)に記載の連続鋳造方法。
【0022】
以下の記述において、鋼および耐火物の成分組成を表す「mass%」を、単に「%」とも表記する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の連続鋳造用浸漬ノズルによれば、連続鋳造における介在物によるノズル閉塞を抑制することができる。また、本発明の連続鋳造方法によれば、浸漬ノズルの介在物による閉塞を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の連続鋳造方法を適用できる連続鋳造装置の概略を示す図である。
【図2】試験に用いた浸漬ノズルの縦断面図であり、同図(a)は内面にCaOを含有するスピネルグラファイト耐火物を配した本発明例、同図(b)は内面にCaOを含有しないスピネルグラファイト耐火物を配した比較例、同図(c)はスラグラインを除く全体にアルミナグラファイトを使用した比較例の浸漬ノズルである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.連続鋳造用浸漬ノズルの構成
本発明の連続鋳造用浸漬ノズルは、スピネルグラファイト耐火物を少なくとも内面に配し、前記スピネルグラファイト耐火物が、C:11〜45%、MgO:6〜25%、Al23:40〜80%、CaO:1〜7%を含有することを特徴とする。スピネルグラファイト耐火物を浸漬ノズルの少なくとも内面に配するとは、浸漬ノズルの内面の溶鋼と接する部分に配置することを意味する。このようにスピネルグラファイト耐火物を配置した例を後述する図1(a)に示す。このようにスピネルグラファイト耐火物を配することにより、浸漬ノズルの内面へのアルミナ介在物の付着の抑制効果を得ることができる。
【0026】
浸漬ノズルは、内面だけでなく、全体を上述のスピネルグラファイト耐火物で構成してもよい。また、スピネルグラファイト耐火物の原料には、耐火物原料として一般に使用されているスピネル原料を特に制約なく使用することができる。
【0027】
次に、本発明の浸漬ノズルにおいて、スピネルグラファイト耐火物の組成を上述のように規定した理由について説明する。
【0028】
2.スピネルグラファイト耐火物の組成
C:11〜45%
グラファイトの主成分であるC(カーボン)の含有率が11%未満であると、スピネルグラファイトが熱衝撃に弱くなる。また、45%を超えるとスピネルグラファイトが酸化や侵食に弱くなる。そのため、C含有率は11〜45%と規定した。Cの含有率は、15〜40%が好ましい。
【0029】
MgO:6〜25%
Al23含有率とのバランスにもよるものの、MgO含有率が6%未満であると、スピネルグラファイトの組成がコランダム相領域との境界に近づき、安定したスピネルを維持することが困難となる。さらに、MgO含有率が過度に低いと、スピネルの有する優れた耐食性が損なわれる。逆に、MgO含有率が25%を超えると、スピネルグラファイトが熱衝撃に弱くなる。そのため、MgO含有率は6〜25%と規定した。MgO含有率は8〜20%が好ましい。
【0030】
CaO:1〜7%
CaO含有率が1%以上の場合には、CaOによって浸漬ノズル内面の溶鋼と接する部分に平滑で緻密な半溶融耐火物の層が形成される。CaO含有率が1%未満であると、この効果が得られない。逆にCaO含有率が7%を超えると、耐食性の悪化が顕著に生じる。そのため、CaO含有率は1〜7%と規定した。CaO含有率は2〜5%が好ましい。
【0031】
Al23:40〜80%
Al23は、MgOとともにスピネルの構成要素であり、かつ本発明の浸漬ノズルに用いられるスピネルグラファイトの主成分である。Al23含有率が40%未満であると、相対的にもう一方のスピネル構成要素であるMgOの含有率が高くなりすぎるため、スピネルグラファイトの組成がMgO相領域との境界に近づき、安定したスピネルを維持することが困難となる。そのため、Al23含有率は40〜80%と規定した。Al23含有率は、51〜70%が好ましい。
【0032】
MgO/Al23:0.10〜0.65
安定したスピネルを維持する観点から、スピネルグラファイトに含有されるMgOとAl23は、質量比でMgO/Al23が0.10〜0.65を満たすことが好ましい。
【0033】
3.連続鋳造方法
図1は、本発明の連続鋳造方法を適用できる連続鋳造装置の概略を示す図である。
【0034】
タンディッシュ4には、取鍋1から溶鋼2が供給される。タンディッシュ4から上ノズル3、スライディングゲート5および浸漬ノズル6を経て、浸漬ノズル6の吐出口13から鋳型14内に注入された溶鋼2は、鋳型14およびその下方の図示しない二次冷却スプレーノズルから噴射されるスプレー水により冷却され、凝固殻15を形成して鋳片16となる。鋳型14内の溶鋼2の表面にはモールドパウダー17が配置される。
【0035】
浸漬ノズル6を構成するスピネルグラファイト耐火物を通じて溶鋼2に通電しながら鋳造する場合には、電源装置10を設けた連続鋳造装置を使用する。この電源装置10にはケーブル9aおよび9bの一端が接続されている。ケーブル9aの他端は浸漬ノズル6の上部の外周に設けられた電極7に接続されており、ケーブル9bの他端は対極8の一端に接続されている。対極8はアルミナグラファイト質からなり、タンディッシュ4内の溶鋼2に他端が浸漬されている。対極8とタンディッシュ4との間には絶縁用耐火物12を配置し、絶縁を確保する。浸漬ノズル6とスライディングゲート5との間にも絶縁用耐火物11を配置し、絶縁を確保する。
【0036】
アルミナグラファイトに比べて溶鋼に濡れやすく、アルミナ介在物が付着しにくいという、スピネルグラファイトが有する性質は、通電することによって向上する。これは、通電に伴って電子やイオンの物質移動がスピネルグラファイトと溶鋼との界面において生じ、この物質移動に伴って生じた化学反応によっていわゆる反応濡れ現象が生じるからである。
【0037】
溶鋼2に通電しながら鋳造する場合には、通電する際には電極7を陰極とすること、すなわちスピネルグラファイト耐火物を陰極とすること、および浸漬ノズル6における平均電流密度は1〜30mA/cm2とすることが好ましい。
【0038】
スピネルグラファイト耐火物を陰極とすることによって、スピネルグラファイト耐火物を構成するグラファイトの酸化によるCOガスの発生を防止してスピネルグラファイトを維持する作用と、COガスによる溶鋼中のAlの酸化によってAl23が生成するのを防止する作用の、2つの作用が得られる。また、平均電流密度が1mA/cm2未満では、通電による物質移動を生じさせる効果が小さすぎ、30mA/cm2を超える大電流を流すには、通電用ケーブルや電源装置が大型化して操業上の困難が生じる。
【0039】
浸漬ノズル6における平均電流密度とは、電源装置10を用いて電圧を浸漬ノズル6と対極8との間に印加した場合に、浸漬ノズル6と溶鋼2との間に流れる電流の平均値を、浸漬ノズル6の溶鋼2と接する部分の総面積で除した値である。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明の効果を確認するために行った連続鋳造試験について説明する。
【0041】
1.試験方法
連続鋳造試験には、前記図1に示す構成の連続鋳造装置を使用した。鋳型は、厚さが0.3m、幅が1.2〜1.6mのものを使用した。試験には、組成がC:0.05%、Si:0.01%、sol.Al:0.05%であるアルミキルド低炭素鋼を1200t使用し、鋳造速度は非定常部を除いて2m/minとした。
【0042】
表1に、浸漬ノズルに用いた耐火物の組成を示す。耐火物A〜Cは、いずれも微量(2%〜4%)のCaOを含有するスピネルグラファイトであり、本発明の規定を満たす組成の耐火物である。耐火物DはCaOを含有しないスピネルグラファイト、耐火物Eは一般的なアルミナグラファイトであり、いずれも本発明の規定を満たさない。耐火物Fは一般的に浸漬ノズル外面のスラグラインに用いられるジルコニアグラファイトである。
【0043】
【表1】

【0044】
図2は、試験に用いた浸漬ノズルの縦断面図であり、同図(a)は内面にCaOを含有するスピネルグラファイト耐火物を配した本発明例、同図(b)は内面にCaOを含有しないスピネルグラファイト耐火物を配した比較例、同図(c)はスラグラインを除く全体にアルミナグラファイトを使用した比較例の浸漬ノズルである。
【0045】
図2(a)の浸漬ノズルは、内面(斜線部)が耐火物A、スラグライン(横線部)が耐火物Fで構成され、それ以外の部分(白色部)は耐火物Eで構成される。同図(b)の浸漬ノズルは、内面(黒色部)が耐火物Dで構成されていること以外は同図(a)の浸漬ノズルと同じ構成である。同図(c)の浸漬ノズルは、スラグライン(横線部)が耐火物Fで構成され、それ以外の部分(白色部)は耐火物Eで構成される。
【0046】
表2に個別の試験条件を示す。試験番号1〜3は図2(a)の浸漬ノズルを用いた本発明例である。試験番号1では、浸漬ノズルと溶鋼との間に通電を行わなかった。試験番号2では、浸漬ノズルを陽極とし、平均電流密度を10mA/cm2として通電を行った。試験番号3では、浸漬ノズルを陰極とし、平均電流密度を10mA/cm2として通電を行った。試験番号4は同図(b)の浸漬ノズル、試験番号5は同図(c)の浸漬ノズルを用いた比較例であり、いずれも浸漬ノズルと溶鋼との間に通電を行わなかった。
【0047】
【表2】

【0048】
2.試験結果
表2には、試験条件と併せて、評価項目として浸漬ノズル内面への付着物の平均厚さを示す。付着物の厚さは、1200tの溶鋼が連続して通過した後の浸漬ノズルにおいて測定した。付着物の厚さの測定範囲は、前記図1(a)に示す、浸漬ノズルの上端から620mmまでの区間とし、この範囲での厚さの平均値を付着物の平均厚さとして算出した。
【0049】
表2に示すように、本発明例である試験番号1では付着物の平均厚さが、比較例である試験番号4および5と比較して小さかった。このことから、本発明で規定する組成のスピネルグラファイト耐火物を使用した浸漬ノズルでは、アルミナを主体とする介在物の付着を抑制できることがわかる。試験番号4は、浸漬ノズルの内面にスピネルグラファイト耐火物が使用されていたものの、CaOを含有しないため、試験番号1よりも介在物の付着抑制効果が小さかった。試験番号5は、浸漬ノズルの内面にアルミナグラファイトが使用されていたため、最も介在物が付着しやすかった。
【0050】
さらに、試験番号2および3から、連続鋳造時に通電を併用することにより、介在物の付着を抑制する効果が向上し、特に浸漬ノズルを陰極とすると効果がより向上することがわかる。
【0051】
また、本発明者らは、前記図2(a)に示す浸漬ノズルにおいて、耐火物Aに代えて耐火物BまたはCを使用した場合も同様に、介在物の付着を抑制する効果が得られたことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の連続鋳造用浸漬ノズルによれば、連続鋳造における介在物による閉塞を抑制することができる。また、本発明の連続鋳造方法によれば、浸漬ノズルの介在物による閉塞を抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
1:取鍋、 2:溶鋼、 3:上ノズル、 4:タンディッシュ、
5:スライディングゲート、 6:浸漬ノズル、 7:電極、 8:対極、
9a:ケーブル、 9b:ケーブル、 10:電源装置、 11:絶縁用耐火物、
12:絶縁用耐火物、 13:吐出口、 14:鋳型、 15:凝固殻、 16:鋳片、
17:モールドパウダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピネルグラファイト耐火物を少なくとも内面に配した連続鋳造用浸漬ノズルであって、
前記スピネルグラファイト耐火物が、mass%で、C:11〜45%、MgO:6〜25%、Al23:40〜80%およびCaO:1〜7%を含有することを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の連続鋳造用浸漬ノズルを用いて鋳型に溶融金属を注入する鋳片の連続鋳造方法であって、
前記連続鋳造用浸漬ノズルに電極を設け、前記スピネルグラファイト耐火物を通じて溶融金属に通電しながら鋳造することを特徴とする連続鋳造方法。
【請求項3】
前記スピネルグラファイト耐火物を陰極とし、前記溶融金属内に陽極となる対極を浸漬し、通電時の平均電流密度を1〜30mA/cm2とすることを特徴とする請求項2に記載の連続鋳造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−210647(P2012−210647A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77831(P2011−77831)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】