説明

進捗管理支援装置、進捗管理支援方法、および進捗管理支援プログラム

【課題】不確定要素を考慮した繰り返し型開発モデルによる効果的な進捗管理を支援する。
【解決手段】サーバ装置10は、アジャイル開発モデルを適用したプロジェクトにおける4つのイテレーションの後に設けられ、全てのイテレーションのいずれにおいても消費可能なバッファの消費率の実績値および必要日数または必要時間に基づいて、バッファの消費率予測値を計算するバッファ消費予測計算部106と、プロジェクト全体における進捗に対するバッファの消費率の実績値および消費率予測値と消費率予測値についての警告レベルとを表すバッファ傾向グラフを生成し、警告レベルに応じてバッファの消費を推奨するか否かの内容を含む推奨アクションを決定するバッファ傾向グラフ生成部107と、バッファ傾向グラフと推奨アクションとを表示部109に表示させる表示制御部108とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進捗管理支援装置、進捗管理支援方法、および進捗管理支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクト管理手法の中で、CCPM(Critical Chain Project Managemaent)が注目されている(例えば、非特許文献1参照)。このCCPMは、不確定要素が多いプロジェクト型業務において、プロジェクト全体の納期を守ること、または短縮することを目的として、TOC(Theory Of Constraints)の基本原理を適用したプロジェクト管理手法である。CCPMは、プロジェクトの各工程における余裕日数または余裕時間(バッファ)をなくす代わりに、プロジェクトバッファと呼ばれるプロジェクト全体共通のバッファを確保し、そのプロジェクトバッファの消費量にしたがって、プロジェクトの進捗状況を把握し管理する仕組みを取り入れている。
【0003】
従来、CCPMは、主にウォーターフォール型開発モデルを適用して開発を行うプロジェクトに取り入れられてきた。ウォーターフォール型開発モデルとは、プロジェクトを時系列の複数の工程に分割し、原則として現工程が終了しないと次工程を開始させないという制約条件を設けた開発モデルである。すなわち、ウォーターフォール型開発モデルは、計画重視型の開発モデルである。
【0004】
また近年、いわゆる適応型の開発モデルであるアジャイル開発モデルが注目されている。アジャイル開発モデルとは、イテレーション(スプリントとも言う。)と呼ばれる短期の開発を複数計画し、また、開発対象(例えばソフトウェア)を複数の機能に分割し、一つのイテレーションにおいて一つの機能を開発しリリースするサイクルを繰り返すことにより、機能を順次追加して開発を完成させる開発モデルである。このアジャイル開発モデルは、不確定要素を考慮した繰り返し型開発モデルの一種である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】西原隆著、栗山潤著、「TOC/CCPM標準ハンドブック クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント入門」、株式会社秀和システム、2010年7月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、CCPMをアジャイル開発モデル等の繰り返し型開発モデルにそのまま適用することには問題がある。例えば、アジャイル開発モデルでは、一つのイテレーションの期間は1週間から4週間程度であり、比較的小規模の開発期間であるため、イテレーションごとにプロジェクトバッファを設けることは非効率的である。また、イテレーションごとにプロジェクトバッファを管理することは、管理コストの上昇につながる。さらに、イテレーションごとのプロジェクトバッファは、少ない日数または時間にならざるを得ず、大きな不確定要素(例えば、開発上の大きなトラブル)が発生した場合に、その不確定要素を吸収しきれないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、不確定要素を考慮した繰り返し型開発モデルによる効果的な進捗管理を支援する、進捗管理支援装置、進捗管理支援方法、および進捗管理支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である進捗管理支援装置は、繰り返し型開発モデルを適用したプロジェクトにおける複数のイテレーションの後に設けられ、前記複数のイテレーションのいずれにおいても消費可能な余裕期間であるバッファの消費実績値および消費要求期間に基づいて、前記バッファの消費予測値を計算するバッファ消費予測計算部と、前記プロジェクト全体における進捗に対する前記バッファの前記消費実績値および前記消費予測値と前記消費予測値についての警告レベルとを表すバッファ傾向グラフを生成し、前記警告レベルに応じて前記バッファの消費を推奨するか否かの内容を含む推奨アクション情報を生成するバッファ傾向グラフ生成部と、前記バッファ傾向グラフと前記推奨アクション情報とを提示する提示部と、を備えることを特徴とする。
[2]上記[1]記載の進捗管理支援装置において、前記バッファ傾向グラフ生成部は、前記バッファ傾向グラフのグラフ領域を複数の領域に区分した警告ゾーンを設け、前記複数の領域において前記消費予測値を含む領域に応じて前記警告レベルを表す、ことを特徴とする。
[3]上記[2]記載の進捗管理支援装置において、前記バッファ傾向グラフ生成部は、前記警告ゾーンを、前記バッファの消費の少ない領域から順に第1領域と第2領域と第3領域とに区分し、前記消費予測値が前記第1領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成し、前記消費予測値が前記第2領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨せず、次または先のイテレーションにおいて実行することを推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成し、前記消費予測値が前記第3領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨せず、現行のイテレーションにおいて実行することを推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成する、ことを特徴とする。
【0009】
[4]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である進捗管理支援方法は、繰り返し型開発モデルを適用したプロジェクトにおける複数のイテレーションの後に設けられ、前記複数のイテレーションのいずれにおいても消費可能な余裕期間であるバッファの消費実績値および消費要求期間に基づいて、バッファ消費予測計算部が、前記バッファの消費予測値を計算するバッファ消費予測計算ステップと、バッファ傾向グラフ生成部が、前記プロジェクト全体における進捗に対する前記バッファの前記消費実績値および前記消費予測値と前記消費予測値についての警告レベルとを表すバッファ傾向グラフを生成し、前記警告レベルに応じて前記バッファの消費を推奨するか否かの内容を含む推奨アクション情報を生成するバッファ傾向グラフ生成ステップと、提示部が、前記バッファ傾向グラフと前記推奨アクション情報とを提示する提示ステップと、を有することを特徴とする。
[5]上記[4]記載の進捗管理支援方法において、前記バッファ傾向グラフ生成ステップは、前記バッファ傾向グラフ生成部が、前記バッファ傾向グラフのグラフ領域を複数の領域に区分した警告ゾーンを設け、前記複数の領域において前記消費予測値を含む領域に応じて前記警告レベルを表す、ことを特徴とする。
[6]上記[5]記載の進捗管理支援方法において、前記バッファ傾向グラフ生成ステップは、前記バッファ傾向グラフ生成部が、前記警告ゾーンを、前記バッファの消費の少ない領域から順に第1領域と第2領域と第3領域とに区分し、前記消費予測値が前記第1領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成し、前記消費予測値が前記第2領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨せず、次または先のイテレーションにおいて実行することを推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成し、前記消費予測値が前記第3領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨せず、現行のイテレーションにおいて実行することを推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成する、ことを特徴とする。
【0010】
[7]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である進捗管理支援プログラムは、コンピュータを、繰り返し型開発モデルを適用したプロジェクトにおける複数のイテレーションの後に設けられ、前記複数のイテレーションのいずれにおいても消費可能な余裕期間であるバッファの消費実績値および消費要求期間に基づいて、前記バッファの消費予測値を計算するバッファ消費予測計算部と、前記プロジェクト全体における進捗に対する前記バッファの前記消費実績値および前記消費予測値と前記消費予測値についての警告レベルとを表すバッファ傾向グラフを生成し、前記警告レベルに応じて前記バッファの消費を推奨するか否かの内容を含む推奨アクション情報を生成するバッファ傾向グラフ生成部と、前記バッファ傾向グラフと前記推奨アクション情報とを提示する提示部と、として機能させる。
[8]上記[7]記載の進捗管理支援プログラムにおいて、前記バッファ傾向グラフ生成部は、前記バッファ傾向グラフのグラフ領域を複数の領域に区分した警告ゾーンを設け、前記複数の領域において前記消費予測値を含む領域に応じて前記警告レベルを表す。
[9]上記[8]記載の進捗管理支援プログラムにおいて、前記バッファ傾向グラフ生成部は、前記警告ゾーンを、前記バッファの消費の少ない領域から順に第1領域と第2領域と第3領域とに区分し、前記消費予測値が前記第1領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成し、前記消費予測値が前記第2領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨せず、次または先のイテレーションにおいて実行することを推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成し、前記消費予測値が前記第3領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨せず、現行のイテレーションにおいて実行することを推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不確定要素を考慮した繰り返し型開発モデルによる効果的な進捗管理を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態において示す事例における、第1開発の概略の工程表である。
【図2】同事例における、第2開発の概略の工程表である。
【図3】同事例における、第3開発の概略の工程表である。
【図4】同事例における、第4開発の概略の工程表である。
【図5】同実施形態である進捗管理支援装置を適用した進捗管理支援システムの概略の全体構成図である。
【図6】同実施形態において、サーバ装置における進捗管理支援装置の機能構成を表すブロック図である。
【図7】同実施形態において、クライアント端末における個人進捗管理装置の機能構成を表すブロック図である。
【図8】第1開発に対応するイテレーションおよび第2開発に対応するイテレーションについての、プロジェクト開始前におけるイテレーション計画表の具体例である。
【図9】第3開発に対応するイテレーションおよび第4開発に対応するイテレーションについての、プロジェクト開始前におけるイテレーション計画表の具体例である。
【図10】線グラフを含まないバッファ傾向グラフを表す図である。
【図11】線グラフを含むバッファ傾向グラフを表す図である。
【図12】第1開発に対応するイテレーションおよび第3開発に対応するイテレーションについての、プロジェクト開始後におけるイテレーション計画表の具体例である。
【図13】プロジェクトの開始後において、サーバ装置が実行する処理手順を表すフローチャートである。
【図14】プロジェクトの開始後において、サーバ装置が実行する処理手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、プロジェクト管理者と、その管理下にある4人の開発担当者(以下、単に“担当者”と言う。)との開発チームが、繰り返し型開発モデルの一種であるアジャイル開発モデルにしたがってアプリケーションソフトウェアを開発する場合のプロジェクト管理(ここでは、特に進捗管理)を事例として挙げて説明する。
【0014】
本事例では、アプリケーションソフトウェアのリリースを4つの段階に分け、段階ごとに機能を追加しながらリリースすることとする。各リリースのための開発を第1〜第4開発と呼ぶ。また、各開発に対応するイテレーションをイテレーション1〜4と呼ぶ。
【0015】
まず、図1〜図4を参照して、本事例における第1開発〜第4開発の工程を説明する。
図1は、本事例における第1開発の概略の工程表である。同図(図2〜図4も同様である。)の工程表は、ガントチャート形式で表されたものである。図1に示すように、第1開発は、2011年1月11日に開始して2011年1月24日に終了する予定の開発である。
第1開発は、担当者Aにより順次作業される機能F1,F2,F5と、機能F1の終了後に担当者Bにより順次作業される機能F3,F4とによって計画されている。ここでいう“機能”とは、当該開発において開発されるアプリケーションソフトウェアの機能を指す。各機能の開発には、例えば、要件定義、設計、プログラミング、テスト等の工程が含まれる。
機能F1,F2,F5(同図における網掛け表示された機能)は、第1開発におけるクリティカルチェーンであり、そのリードタイムは3日+4日+3日=10日である。よって、イテレーション1の期間は10日となる。
【0016】
なお、本実施形態では、土曜日、日曜日、および日本国の祝日(2011年2月11日)を除いて作業日を設定している。
【0017】
図2は、本事例における第2開発の概略の工程表である。同図に示すように、第2開発は、2011年1月25日に開始して2011年2月8日に終了する予定の開発である。
第2開発は、担当者Aにより順次作業される機能F6,F7と、機能F7の終了後に担当者Cにより作業される機能F10と、機能F6の終了後に担当者Bにより順次作業される機能F8,F9とによって計画されている。
機能F6,F7,F10(同図における網掛け表示された機能)は、第2開発におけるクリティカルチェーンであり、そのリードタイムは4日+4日+3日=11日である。よって、イテレーション2の期間は11日となる。
【0018】
図3は、本事例における第3開発の概略の工程表である。同図に示すように、第3開発は、2011年2月9日に開始して2011年2月24日に終了する予定の開発である。
第3開発は、担当者Cにより順次作業される機能F11,F12,F16と、機能F11の終了後に担当者Bにより順次作業される機能F13,F15と、機能F11の終了後に担当者Dにより作業される機能F14とによって計画されている。
機能F11,F12,F16(同図における網掛け表示された機能)は、第3開発におけるクリティカルチェーンであり、そのリードタイムは3日+4日+4日=11日である。よって、イテレーション3の期間は11日となる。
【0019】
図4は、本事例における第4開発の概略の工程表である。同図に示すように、第4開発は、2011年2月25日に開始して2011年3月10日に終了する予定の開発である。
第4開発は、担当者Cにより順次作業される機能F17,F18と、機能F18の終了後に担当者Bにより作業される機能F20と、機能F17の終了後に担当者Dにより順次作業される機能F19,F21と、機能F21の終了後に担当者Cにより作業される機能F22とによって計画されている。
機能F17,F19,F21,F22(同図における網掛け表示された機能)は、第4開発におけるクリティカルチェーンであり、そのリードタイムは3日+3日+2日+2日=10日である。よって、イテレーション4の期間は10日となる。
【0020】
本実施形態においては、時系列最後のイテレーションの直後に、全てのイテレーションのいずれにおいても消費可能なリリースバッファ(“共通バッファ”とも言い、以下、単に“バッファ”と言う。)を設ける。このバッファは、プロジェクト全体の余裕日数または余裕時間等の余裕期間を意味するものである。バッファの総容量(総期間)は、例えば、全てのイテレーションの合計期間の50%の期間である。このバッファの総容量は、例えばプロジェクト管理者によって任意に変更可能である。また、本実施形態においては、イテレーションの期間はプロジェクトの計画時に固定される。
本事例では、イテレーション1〜4の各期間は、10日、11日、11日、10日であるため、バッファの総容量はイテレーションの合計期間の50%である21日である。よって、本事例におけるアプリケーションソフトウェアの総開発許容期間は、42日+21日=63日である。
【0021】
以上説明した事例を具体例として、本発明の一実施形態について説明する。
図5は、本実施形態である進捗管理支援装置を適用した進捗管理支援システムの概略の全体構成図である。同図に示すように、進捗管理支援システム1は、プロジェクト管理者Xが操作するサーバ装置10と、担当者A,B,C,Dがそれぞれ操作するクライアント端末20a,20b,20c,20dとが、コンピュータネットワークであるネットワーク30を介してそれぞれ接続された構成を有する。
なお、以下の説明において、クライアント端末20a,20b,20c,20dそれぞれを指してクライアント端末20と呼ぶこともある。
【0022】
サーバ装置10は、本実施形態である進捗管理支援装置を実現する装置である。サーバ装置10は、進捗管理支援装置の機能を実現するための進捗管理支援プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録しておき、この記録媒体に記録された進捗管理支援プログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行することによって、進捗管理支援装置の機能を実現する。
【0023】
コンピュータシステムは、OS(Operating System)や周辺装置のハードウェアを含むものである。
また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに内蔵される磁気ハードディスク、ソリッドステートドライブ等の記憶装置である。さらに、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、インターネット等のコンピュータネットワークや電話回線等の回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、コンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持するものを含む。
【0024】
なお、進捗管理支援プログラムは、コンピュータシステムにすでに記録されている他のコンピュータプログラム、例えば後述する個人進捗管理プログラムとの組み合わせによって進捗管理支援装置の機能を実現するものであってもよい。
【0025】
サーバ装置10は、進捗管理支援プログラムを実行することにより、アジャイル開発モデルによるプロジェクトの管理を支援する。例えば、サーバ装置10は、担当者A,B,C,Dによって開発されるアプリケーションソフトウェアの、各作業の進捗管理を支援する。
【0026】
具体的には、プロジェクトの開始前(本事例では、2011年1月11日以前)に、サーバ装置10は、プロジェクト管理者Xの操作にしたがって、当該プロジェクトにおけるイテレーションごとのイテレーション計画表を作成し、作成した全てのイテレーション計画表を登録する。イテレーション計画表は、開発における機能ごとの、実行計画と進捗状況(ステータス)と必要日数(残日数)と推奨アクション情報とを表すデータテーブルである。イテレーション計画表のデータ構成については後述する。
【0027】
また、サーバ装置10は、登録された全てのイテレーション計画表に基づいて、バッファ傾向グラフ(線グラフがないもの)を生成し、このバッファ傾向グラフを登録する。バッファ傾向グラフとは、プロジェクト全体における進捗に対してバッファの消費の実績値(消費実績値)と予測値(消費予測値)とを打点して線グラフ化したものである。このバッファ傾向グラフには、警告ゾーンが設けられる。この警告ゾーンは、プロジェクト全体における進捗に対するバッファの消費予測についての警告レベルを表すものである。バッファ傾向グラフの詳細については後述する。
また、サーバ装置10は、登録したイテレーション計画表をクライアント端末20a,20b,20c,20dそれぞれに送信する。
【0028】
プロジェクトの開始後(本事例では、2011年1月11日以降)において、サーバ装置10は、担当者A,B,C,Dによってそれぞれ操作されたクライアント端末20a,20b,20c,20dから送信される各タスクデータを受信すると、これらテスクデータを取り込んで記憶する。タスクデータは、担当者個人の作業の進捗状況と、作業停止または作業遅延が生じた場合に回復に要する必要日数または必要時間とを有する進捗報告情報である。
サーバ装置10は、プロジェクト管理者Xの操作にしたがい、記憶したタスクデータに基づいて、進捗状況と必要日数または必要時間とをイテレーション計画表に書き込む。
【0029】
サーバ装置10は、書き込んだ進捗状況と必要日数または必要時間とに基づいてバッファの消費率予測値を計算し、すでに登録してあるバッファ傾向グラフにその消費率予測値を予測ポイントとして打点して表示部に表示させる。
また、サーバ装置10は、バッファ傾向グラフにおける予測ポイントの警告レベルに応じた推奨アクション情報をイテレーション計画表に書き込み、このイテレーション計画表を表示部に表示させる。
また、サーバ装置10は、プロジェクト管理者Xによって更新されたイテレーション計画表を、クライアント端末20a,20b,20c,20dそれぞれに送信する。
【0030】
すなわち、サーバ装置10は、クライアント端末20a,20b,20c,20dから供給され取り込んだ担当者A,B,C,Dのタスクデータに基づいて進捗を管理し、進捗状況と必要日数または必要時間とに基づくバッファの消費率の予測を提示するとともに、バッファ傾向グラフによる警告レベルに応じた推奨アクションを提示する。
これにより、プロジェクト管理者Xは、提示されたバッファの消費率の予測と推奨アクションとを勘案して次のアクションを決めることができる。
【0031】
クライアント端末20a,20b,20c,20dは、担当者A,B,C,Dによってそれぞれ操作される個人進捗管理装置である。クライアント端末20は、例えばコンピュータ装置により実現される。クライアント端末20は、個人進捗管理装置の機能を実現するための個人進捗管理プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録しておき、この記録媒体に記録された個人進捗管理プログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行することによって個人進捗管理装置の機能を実現する。
【0032】
なお、個人進捗管理プログラムは、コンピュータシステムにすでに記録されている他のコンピュータプログラム、例えば進捗管理支援プログラムとの組み合わせによって個人進捗管理装置の機能を実現するものであってもよい。
【0033】
クライアント端末20は、個人進捗管理プログラムを実行することにより、担当者個人の作業の進捗状況を管理する。
【0034】
具体的には、プロジェクトの開始前に、クライアント端末20は、サーバ装置10から送信された全てのイテレーション計画表を受信して取り込み記憶する。
プロジェクトの開始後において、クライアント端末20は、サーバ装置10から送信される更新後のイテレーション計画表を受信すると、そのイテレーション計画表を取り込んで記憶する。クライアント端末20は、イテレーション計画表を表示部に表示させる。
クライアント端末20は、担当者の操作によって入力される、担当者個人の作業の進捗状況と作業停止または作業遅延が生じた場合に回復に要する必要日数または必要時間とを、タスクデータとしてサーバ装置10に送信する。担当者がクライアント端末20を操作するタイミングは、例えば、毎日における任意のとき、またはプロジェクト進行中に問題が生じたとき等である。
【0035】
図6は、サーバ装置10における進捗管理支援装置の機能構成を表すブロック図である。同図に示すように、サーバ装置10は、データベース部101と、操作部102と、ネットワーク制御部103と、計画表作成部104と、進捗状況指定部105と、バッファ消費予測計算部106と、バッファ傾向グラフ生成部107と、表示制御部108と、表示部109とを備える。
【0036】
データベース部101は、イテレーション計画表とバッファ傾向グラフとを記録する。データベース部101において、イテレーション計画表を記憶する部分はイテレーション計画表記憶部であり、バッファ傾向グラフを記憶する部分はバッファ傾向グラフ記憶部である。データベース部101は、例えば磁気ハードディスク等の記憶装置により実現される。
操作部102は、オペレータ(例えば、プロジェクト管理者X)の操作により各種情報を入力する操作系インタフェースである。操作部102は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置により実現される。
ネットワーク制御部103は、クライアント端末20a,20b,20c,20dや、ネットワーク30を介して接続される他のネットワーク装置(図示省略)との間で通信するネットワークインタフェースである。
【0037】
計画表作成部104は、オペレータによる操作部102の操作にしたがって、イテレーションごとのイテレーション計画表を作成し、これら作成されたイテレーション計画表をデータベース部101に記録させる。例えば、図1〜図4に示した第1〜第4開発の工程表や図示しないパート図、開発計画書等にしたがい、プロジェクト管理者Xによる操作部102の操作によって実行計画に関する情報が入力されることにより、計画表作成部104は、四つのイテレーション1〜4を定義し、各イテレーションについてのイテレーション計画表を作成して、これら四つのイテレーション計画表をデータベース部101に記録させる。
【0038】
なお、計画表作成部104は、ネットワーク30に接続された他のネットワーク装置、例えばコンピュータ装置から供給されるデータ、つまり実行計画に関する情報を、ネットワーク制御部103を介して取り込み、その情報に基づいてイテレーション計画表を作成するようにしてもよい。
【0039】
進捗状況指定部105は、クライアント端末20a,20b,20c,20dから送信される各タスクデータを、ネットワーク制御部103を介して取り込んで記憶領域に記憶させる。この記憶領域は、進捗状況指定部105が有する図示しない記憶部の記憶領域であってもよいし、データベース部101が有する記録領域の一部であってもよい。そして、進捗状況指定部105は、オペレータによる操作部102の操作にしたがって、記憶領域に記憶されたタスクデータに基づき、進捗状況と必要日数または必要時間とをデータベース部101に記録されたイテレーション計画表に書き込む。
【0040】
バッファ消費予測計算部106は、バッファの総容量と、イテレーション計画表における進捗状況および必要日数または必要時間と、バッファ傾向グラフにおける最新のバッファ消費率の実績値とに基づいて、バッファの消費率予測値を計算し、この消費率予測値をバッファ傾向グラフ生成部107に供給する。バッファ消費予測計算部106によるバッファの消費率予測値の計算方法については後述する。
【0041】
プロジェクトの開始前において、バッファ傾向グラフ生成部107は、データベース部101に記録された全てのイテレーション計画表に基づいて、バッファ傾向グラフ(線グラフがないもの)を生成し、このバッファ傾向グラフをデータベース部101に記録させる。
プロジェクトの開始後において、バッファ傾向グラフ生成部107は、バッファ消費予測計算部106から供給されるバッファの消費率予測値を取り込む。そして、バッファ傾向グラフ生成部107は、データベース101に記録されたバッファ傾向グラフにその取り込んだ消費率予測値を予測ポイントとして打点し、そのバッファ傾向グラフをデータベース部101に記録させる。
また、バッファ傾向グラフ生成部107は、予測ポイントに対応する警告レベルに応じて推奨アクション情報を生成し、この推奨アクション情報をデータベース部101に記録されたイテレーション計画表に書き込む。
【0042】
表示制御部108は、データベース部101からイテレーション計画表を読み込み、この読み込んだイテレーション計画表を画像信号に変換して表示部109に供給する。また、表示制御部108は、データベース部101からバッファ傾向グラフを読み込み、この読み込んだバッファ傾向グラフを画像信号に変換して表示部109に供給する。
表示部109は、例えば液晶表示ディスプレイにより実現され、表示制御部108から供給される画像信号によりイテレーション計画表およびバッファ傾向グラフまたはいずれか一方を表示する。
表示制御部108と表示部109とは、提示部を構成する。
【0043】
図7は、クライアント端末20における個人進捗管理装置の機能構成を表すブロック図である。同図に示すように、クライアント端末20は、計画表記憶部201と、操作部202と、ネットワーク制御部203と、タスクデータ登録部204と、タスクデータ記憶部205と、表示制御部206と、表示部207とを備える。
【0044】
計画表記憶部201は、ネットワーク制御部203を介してサーバ装置10から取得するイテレーション計画表を記憶する。
操作部202は、オペレータ(例えば、担当者A,B,C,D)の操作により各種情報を入力する操作系インタフェースである。操作部202は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置により実現される。
ネットワーク制御部203は、サーバ装置10やネットワーク30を介して接続される他のネットワーク装置(図示省略)との間で通信するネットワークインタフェースである。
【0045】
タスクデータ登録部204は、オペレータ(例えば、担当者A)による操作部202の操作にしたがって、担当者個人(担当者A)の作業の進捗状況と、作業停止または作業遅延が生じた場合に回復に要する必要日数または必要時間とを有するタスクデータを生成し、このタスクデータをタスクデータ記憶部205に記憶させる。
【0046】
タスクデータに含まれる進捗状況は、例えば、完了、進行中、停止中、および未着手を表す文字、数字、記号、またはそれらの組み合わせによる情報である。完了は、当該機能の作業が完了したことを示す。進行中は、当該機能の作業が現在進行していることを示す。停止中は、当該機能がなんらかの問題が発生して停止していること、または、大幅に遅延していることを示す。未着手は、当該機能の作業に未着手であることを示す。
【0047】
なお、タスクデータ登録部204は、ネットワーク30に接続された他のネットワーク装置、例えばコンピュータ装置から供給されるデータ、つまり進捗状況と必要日数または必要時間との情報を、ネットワーク制御部203を介して取り込み、そのデータに基づいてタスクデータを生成するようにしてもよい。
タスクデータ記憶部205は、タスクデータ登録部204が生成したタスクデータを記憶する。
計画表記憶部201とタスクデータ記憶部205とは、例えば磁気ハードディスクや半導体メモリ等の記憶装置により実現される。
【0048】
表示制御部206は、計画表記憶部201からイテレーション計画表を読み込み、この読み込んだイテレーション計画表を画像信号に変換して表示部207に供給する。また、表示制御部206は、タスクデータ記憶部205からタスクデータを読み込み、この読み込んだタスクデータを画像信号に変換して表示部207に供給する。
表示部207は、例えば液晶表示ディスプレイにより実現され、表示制御部206から供給される画像信号によりイテレーション計画表およびタスクデータまたはいずれか一方を表示する。
【0049】
次に、イテレーション計画表のデータ構成を説明する。
図8は、第1開発に対応するイテレーション1および第2開発に対応するイテレーション2についての、プロジェクト開始前におけるイテレーション計画表の具体例である。同図において、上段の表は、図1に示した第1開発の工程表に対応するイテレーション1についてのイテレーション計画表であり、下段の表は、図2に示した第2開発の工程表に対応するイテレーション2についてのイテレーション計画表である。これら二つのイテレーション計画表は、サーバ装置10の計画表作成部104が作成した時点のものである。
【0050】
図8に示すように、イテレーション計画表は、「機能名」と、「担当者名」と、「計画開始日」と、「計画終了日」と、「計画日数」と、「残日数」と、「ステータス」と、「推奨アクション」との項目を対応付けて有するデータテーブルである。「機能名」は、前述したとおりの機能の名称や略称の項目である。「担当者名」は、機能名が示す機能を実施する担当者の氏名、担当者コード等の個人を識別する情報の項目である。「計画開始日」および「計画終了日」は、機能名が示す機能の作業開始予定日および作業終了予定日の項目である。「計画日数」は、作業開始予定日および作業終了予定日から得られる作業日数または作業時間の項目である。「残日数」は、作業停止または作業遅延が生じた場合の、回復に要する必要日数または必要時間、言い換えると消費要求期間の項目である。「ステータス」は、担当者名が示す担当者による作業の進捗状況の項目である。「推奨アクション」は、バッファ傾向グラフにおける予測ポイントの警告レベルに応じて生成される、推奨のアクション情報を示す項目である。
イテレーション計画表において、「機能名」と「担当者名」と「計画開始日」と「計画終了日」と「計画日数」との項目が実行計画を表す。
【0051】
図9は、第3開発に対応するイテレーション3および第4開発に対応するイテレーション4についての、プロジェクト開始前におけるイテレーション計画表の具体例である。同図において、上段の表は、図3に示した第3開発の工程表に対応するイテレーション3についてのイテレーション計画表であり、下段の表は、図4に示した第4開発の工程表に対応するイテレーション4についてのイテレーション計画表である。これら二つのイテレーション計画表は、サーバ装置10の計画表作成部104が作成した時点のものである。
【0052】
図10は、線グラフを含まないバッファ傾向グラフを表す図である。同図に示すように、バッファ傾向グラフ50は、プロジェクト全体における進捗日数(横軸)に対するバッファの消費率(縦軸)を示すグラフである。バッファ傾向グラフ50には、後で具体的に説明するように、バッファ消費率の実績値および予測値を打点した線グラフが示される。
なお、バッファ傾向グラフ50の横軸は、プロジェクト全体における進捗率であってもよいし、プロジェクトの計画期間における日付または時刻であってもよい。また、バッファ傾向グラフ50の縦軸は、バッファの消費量、すなわち消費日数または消費時間であってもよい。
【0053】
バッファ傾向グラフ50のグラフ領域内には、安全ゾーン(第1領域)51と注意ゾーン(第2領域)52と危険ゾーン(第3領域)53とに区分される警告ゾーンが設けられる。この警告ゾーンは、プロジェクト全体における進捗に対するバッファの消費予測についての警告レベルを表すとともに、その警告レベルに応じて推奨アクションを決定するための領域である。
【0054】
安全ゾーン51は、バッファを消費することに問題がないことを表すとともに、バッファの使用を推奨アクションとして決定するための領域である。
注意ゾーン52は、バッファの消費に注意を要することを表すとともに、バッファを使用せず、次のイテレーションまたはその先のイテレーションに機能を移行して実行することを推奨アクションとして決定するための領域である。
危険ゾーン53は、バッファの消費は避けるべきであることを表すとともに、次以降のイテレーションにおける機能追加も避けるべきであることを表し、現時点でのイテレーションにおいて、担当者を追加、交替させる等の対応をとって機能の開発を実行することを推奨アクションとして決定するための領域である。
【0055】
ここで、バッファ傾向グラフ生成部107によるバッファ傾向グラフの生成処理について説明する。
プロジェクトの開始前において、計画表作成部104により全てのイテレーションについてのイテレーション計画表が作成されてデータベース部101に記録されると、バッファ傾向グラフ生成部107は、イテレーション計画表における計画日数に基づいてバッファ傾向グラフ50を生成する。例えば、本実例において、バッファ傾向グラフ生成部107は、イテレーション1〜4の合計期間である42日分の進捗日数を横軸にとり、イテレーションの合計期間の50%の期間である21日を100%としたバッファ消費率を縦軸にとったバッファ傾向グラフ50を生成する。
【0056】
バッファ傾向グラフ生成部107は、生成したバッファ傾向グラフ50に、安全ゾーン51と注意ゾーン52と危険ゾーンとに区分される警告ゾーンを設定する。バッファ傾向グラフ生成部107は、例えば、縦軸(バッファの消費率)の二つの切片と横軸(プロジェクト全体における進捗日数)に対する傾きとを指定して2本の直線を設けることにより警告ゾーンを区分する。
なお、注意ゾーン52を区分する境界の2本の直線の傾きは同一であってもよいし、例えば、注意ゾーン52と危険ゾーン53とを区分する境界の直線の傾きが、注意ゾーン52と安全ゾーン51とを区分する境界の直線の傾きよりも大きくてもよい。
【0057】
バッファ傾向グラフ生成部107は、警告ゾーンを区分するための縦軸の二つの切片と横軸に対する傾きとの一種類または複数種類のデータセットを記憶領域にあらかじめ記憶させている。この記憶領域は、バッファ傾向グラフ生成部107が有する図示しない記憶部の記憶領域であってもよいし、データベース部101が有する記録領域の一部であってもよい。サーバ装置10は、例えば、プロジェクトにおけるイテレーションの数に応じて、全てのイテレーションの合計日数に応じて、担当者の人数に応じて、開発対象の種類に応じて等の条件に対応させて、複数種類のデータセットを記憶しておく。
バッファ傾向グラフ生成部107は、オペレータによる操作部102の操作にしたがって記憶領域から所望のデータセットを読み込み、このデータセットに基づいて警告ゾーンを区分する。
【0058】
図11は、線グラフを含むバッファ傾向グラフを表す図である。同図に示すように、バッファ傾向グラフ60は、安全ゾーン51と注意ゾーン52と危険ゾーン53とに区分される警告ゾーンが設けられたグラフ領域に、過去のバッファの消費率値(実績値)とバッファの消費率予測値62とを打点し、横軸において隣り合う打点を実線および破線で結線した線グラフを重ね合わせたものである。同図におけるバッファ傾向グラフ60は、プロジェクト開始後22日間分のバッファの消費率の実績値と、23日目のバッファの消費率の予測値とを表すものである。
【0059】
図11に示すように、バッファ傾向グラフ生成部107は、過去のバッファの消費率値同士を、例えば実線で結線し、過去のバッファの消費率値のうち最新の消費率値61と消費率予測値62とを、例えば破線で結線する。このように結線することにより、実績値と予測値との見分けが容易になる。
なお、バッファ傾向グラフ生成部107は、実線と破線のように線種を変えて実績値と予測値とを区分してもよいし、線の色や打点されたポイントの色を変えて区分してもよい。また、消費率予測値62のみ結線しないようにしてもよい。さらには、全て結線せず、ポイントのみを示すようにしてもよい。
【0060】
図12は、第1開発に対応するイテレーション1および第3開発に対応するイテレーション3についての、プロジェクト開始後におけるイテレーション計画表の具体例である。同図において、上段の表はイテレーション1についてのイテレーション計画表であり、下段の表はイテレーション3についてのイテレーション計画表である。これら二つのイテレーション計画表は、プロジェクトの開始後に、サーバ装置10のバッファ傾向グラフ生成部107が更新した時点のものである。
【0061】
同図に示すイテレーション1についてのイテレーション計画表は、図1に示した第1開発の工程表における2011年1月19日(プロジェクト開始後7日目)に、バッファ傾向グラフ生成部107が更新した時点のものである。このイテレーション計画表によれば、その時点では、機能F1が完了し、機能F2が進行中であり、機能F3が完了し、機能F4がなんらかの問題が生じて停止または大きく遅延し、機能F5が未着手であることがステータスにより示され、機能F4については必要日数である残日数が1日であることが示されている。また、このイテレーション計画表によれば、2011年1月19日時点でのバッファの消費率予測値が安全ゾーン内にあるため、バッファの使用を推奨することが推奨アクションにより示されている。
【0062】
また、図12に示すイテレーション3についてのイテレーション計画表は、図3に示した第3開発の工程表における2011年2月10日(プロジェクト開始後23日目)に、バッファ傾向グラフ生成部107が更新した時点のものである。このイテレーション計画表によれば、その時点では、機能F11がなんらかの問題が生じて停止または大きく遅延し、機能F12〜F16が未着手であることがステータスにより示され、機能F11については残日数が3日であることが示されている。また、このイテレーション計画表によれば、2011年2月23日時点でのバッファの消費率予測値が注意ゾーン内にあるため(図11における消費量予測値62)、機能F11の次開発以降への移行を推奨することが推奨アクションにより示されている。
【0063】
次に、本実施形態である進捗管理支援装置を適用したサーバ装置10の動作について説明する。
図13および図14は、プロジェクトの開始後において、サーバ装置10が実行する処理手順を表すフローチャートである。なお、図14のフローチャートは、図13のフローチャートに続くものである。
プロジェクトの開始後、クライアント端末20から送信されるタスクデータを、進捗状況指定部105が、ネットワーク制御部103を介して取り込んで記憶領域に記憶させた後に、図13に示すフローチャートの処理が開始される。
【0064】
まず、図13のステップS101において、表示制御部108は、データベース部101から当該プロジェクトに関する全てのイテレーションについてのイテレーション計画表を読み込んで表示部109に表示させる。具体的には、表示制御部108は、データベース部101からイテレーション1〜4についてのイテレーション計画表を読み込んで画像信号に変換して表示部109に供給する。そして、表示部109は、表示制御部108から供給された画像信号によりイテレーション計画表を表示する。
【0065】
次に、ステップS102において、表示制御部108は、データベース部101からバッファ傾向グラフを読み込んで表示部109に表示させる。ただし、この時点でのバッファ傾向グラフは、線グラフが表されないものか、バッファの消費率値の実績値のみが線グラフとして表されたものかのいずれかである。具体的には、表示制御部108は、データベース部101からバッファ傾向グラフを読み込んで画像信号に変換して表示部109に供給する。そして、表示部109は、表示制御部108から供給された画像信号によりバッファ傾向グラフを表示する。
【0066】
次に、ステップS103において、オペレータ(例えば、プロジェクト管理者X)によって、記憶領域に記憶されたタスクデータに含まれる進捗状況が操作部102から入力されると、進捗状況指定部105は、その進捗状況を、データベース部101に記録されたイテレーション計画表の項目「ステータス」に書き込む。
【0067】
次に、ステップS104において、進捗状況指定部105は、ステータスに書き込んだ進捗状況が“停止中”であると判定した場合はステップS105の処理に移り、ステータスに書き込んだ進捗状況が“停止中”以外(“完了”、“進行中”、または“未着手”)であると判定した場合は、このフローチャートの処理を終了させる。
【0068】
ステップS105において、オペレータによって、記憶領域に記憶されたタスクデータに含まれる必要日数または必要時間が操作部102から入力されると、進捗状況指定部105は、その必要日数または必要時間を、データベース部101に記録されたイテレーション計画表の項目「残日数」に書き込む。
【0069】
次に、ステップS106において、バッファ消費予測計算部106は、バッファの総容量と、イテレーション計画表における必要日数または必要時間と、バッファ傾向グラフにおける最新のバッファの消費率の実績値と、に基づいてバッファの消費率予測値を計算し、この消費率予測値をバッファ傾向グラフ生成部107に供給する。例えば、バッファの総容量Sが21日、必要日数Nが2日、最新のバッファの消費率の実績値Bが0.2(実績として、バッファの総容量の20%を消費していることを意味する。)である場合、バッファ消費予測計算部106は、バッファの消費率予測値P(単位は%)を下記の式1により計算する。
【0070】
[式1]
P={(S×B+N)/S}×100
【0071】
次に、ステップS107において、バッファ傾向グラフ生成部107は、バッファ消費予測計算部106から供給される消費率予測値を取り込む。次に、バッファ傾向グラフ生成部107は、データベース101に記録されたバッファ傾向グラフにその取り込んだ消費率予測値を予測ポイントとして打点し、そのバッファ傾向グラフをデータベース部101に記録させる。
次に、バッファ傾向グラフ生成部107は、バッファ傾向グラフにおける予測ポイントに対応する警告レベルを取得する。具体的には、バッファ傾向グラフ生成部107は、バッファ傾向グラフにおいて、予測ポイントを含む領域(安全ゾーンと注意ゾーンと危険ゾーンとのうちいずれかの領域)を識別し、その識別結果を警告レベルとして取得する。
【0072】
次に、ステップS108において、表示制御部108は、データベース部101からバッファ傾向グラフを読み込んで表示部109に表示させる。具体的には、表示制御部108は、データベース部101からバッファ傾向グラフを読み込んで画像信号に変換して表示部109に供給する。そして、表示部109は、表示制御部108から供給された画像信号によりバッファ傾向グラフを表示する。
【0073】
次に、図14のステップS109において、ステップS107の処理において取得した警告レベルが安全ゾーンに対するものであるか否かを判定する。警告レベルが安全ゾーンに対するものである場合はステップS110の処理に移り、警告レベルが安全ゾーンに対するものでない場合、すなわち、警告レベルが注意ゾーンまたは危険ゾーンに対するものである場合はステップS111の処理に移る。
【0074】
ステップS110において、バッファ傾向グラフ生成部107は、バッファの使用を推奨アクションとして決定し、この推奨アクション情報をデータベース部101に記録されたイテレーション計画表の項目「推奨アクション」に書き込む。
次に、表示制御部108は、イテレーション計画表の項目「推奨アクション」を表示部109に表示させる。表示部109に表示される推奨アクションの表示内容は、例えば、“バッファ使用”や“Stack to the Buffer”等である。
【0075】
ステップS111において、ステップS107の処理において取得した警告レベルが注意ゾーンに対するデータであるか否かを判定する。警告レベルが注意ゾーンに対するものである場合はステップS112の処理に移り、警告レベルが注意ゾーンに対するものでない場合、すなわち、警告レベルが危険ゾーンに対するものである場合はステップS113の処理に移る。
【0076】
ステップS112において、バッファ傾向グラフ生成部107は、バッファを使用せず、次のイテレーションまたはその先のイテレーションに機能を移行して実行することを推奨アクションとして決定し、この推奨アクション情報をデータベース部101に記録されたイテレーション計画表の項目「推奨アクション」に書き込む。
次に、表示制御部108は、イテレーション計画表の項目「推奨アクション」を表示部109に表示させる。表示部109に表示される推奨アクションの表示内容は、例えば、“次開発以降”や“Stack to the next or onward Iteration”等である。
【0077】
ステップS113において、バッファ傾向グラフ生成部107は、現時点でのイテレーションにおいて機能を実行することを推奨アクションとして決定し、この推奨アクション情報をデータベース部101に記録されたイテレーション計画表の項目「推奨アクション」に書き込む。
次に、表示制御部108は、イテレーション計画表の項目「推奨アクション」を表示部109に表示させる。表示部109に表示される推奨アクションの表示内容は、例えば、“現行開発”や“Stack to the current Iteration”等である。
【0078】
以上詳述したとおり、本発明の一実施形態である進捗管理支援装置を適用した進捗管理支援システム1によれば、サーバ装置10は、クライアント端末20から取得したタスクデータに基づいてバッファ傾向グラフにバッファの消費率予測値を打点して表示部109に表示させる。タスクデータは、前述したとおり、担当者個人の作業の進捗状況と、作業停止または作業遅延が生じた場合に回復に要する必要日数または必要時間とを有する進捗報告情報である。それとともに、サーバ装置10は、バッファ傾向グラフにおいて消費率予測値が打点された警告ゾーンの領域(安全ゾーン、注意ゾーン、または危険ゾーン)に応じて、次にとり得るアクションを推奨する内容の推奨アクション情報を生成して表示部109に表示させる。
【0079】
言い換えると、安全ゾーンにバッファの消費率予測値が打点される場合、サーバ装置10は、現時点での進捗に問題はないと判断し、バッファの使用を推奨する。また、注意ゾーンにバッファの消費率予測値が打点される場合、サーバ装置10は、今後の進捗には注意を要し、最終的な納期遅れの危険性を考慮して対策をとるべきと判断し、バッファを使用せず次または先のイテレーションにおいて機能を実行することを推奨する。また、危険ゾーンにバッファの消費率予測値が打点される場合、サーバ装置10は、現時点での進捗は問題があり、バッファの残容量を回復するための対策をとるべきと判断し、バッファを使用せず、現行のイテレーションにおいて機能を実行することを推奨する。
【0080】
よって、サーバ装置10の管理者であるプロジェクト管理者Xは、サーバ装置10が提示するバッファ傾向グラフの予測と推奨アクションとを勘案して、次にとるべきアクションを決定することができる。
【0081】
以上詳述したとおり、本実施形態である進捗管理支援装置を適用した進捗管理支援システム1によれば、アジャイル開発モデルを適用し、且つ複数のイテレーションの後にこれら全てのイテレーションによって消費可能なバッファを設けたプロジェクトにおいて、効果的な進捗管理を支援することができる
【0082】
なお、上述した本発明の一実施形態では、プロジェクトの開始後、サーバ装置10の進捗状況指定部105は、クライアント端末20から送信されたタスクデータを取り込んで記憶領域に記憶させた後、プロジェクト管理者Xによる操作部102の操作にしたがって、その記憶領域に記憶されたタスクデータに基づいて、進捗状況と必要日数または必要時間とをイテレーション計画表に書き込むようにした。
これ以外にも、サーバ装置10の進捗状況指定部105は、クライアント端末20から送信されたタスクデータを取り込んで記憶領域に記憶させた後、その記憶領域に記憶されたタスクデータに基づいて、進捗状況と必要日数または必要時間とをイテレーション計画表に書き込むようにしてもよい。
また、担当者A,B,C,D自らが、クライアント端末20a,20b,20c,20dを操作することによるネットワーク30経由で、または、サーバ装置10を操作することによって、データベース部101に記録されたイテレーション計画表に、タスクデータに基づく進捗状況と必要日数または必要時間とを書き込むようにしてもよい。
【0083】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はその実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 進捗管理支援システム
10 サーバ装置
20a,20b,20c,20d クライアント端末
30 ネットワーク
101 データベース部
102,202 操作部
103,203 ネットワーク制御部
104 計画表作成部
105 進捗状況指定部
106 バッファ消費予測計算部
107 バッファ傾向グラフ生成部
108,206 表示制御部
109,207 表示部
201 計画表記憶部
204 タスクデータ登録部
205 タスクデータ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し型開発モデルを適用したプロジェクトにおける複数のイテレーションの後に設けられ、前記複数のイテレーションのいずれにおいても消費可能な余裕期間であるバッファの消費実績値および消費要求期間に基づいて、前記バッファの消費予測値を計算するバッファ消費予測計算部と、
前記プロジェクト全体における進捗に対する前記バッファの前記消費実績値および前記消費予測値と前記消費予測値についての警告レベルとを表すバッファ傾向グラフを生成し、前記警告レベルに応じて前記バッファの消費を推奨するか否かの内容を含む推奨アクション情報を生成するバッファ傾向グラフ生成部と、
前記バッファ傾向グラフと前記推奨アクション情報とを提示する提示部と、
を備えることを特徴とする進捗管理支援装置。
【請求項2】
前記バッファ傾向グラフ生成部は、前記バッファ傾向グラフのグラフ領域を複数の領域に区分した警告ゾーンを設け、前記複数の領域において前記消費予測値を含む領域に応じて前記警告レベルを表す、
ことを特徴とする請求項1記載の進捗管理支援装置。
【請求項3】
前記バッファ傾向グラフ生成部は、前記警告ゾーンを、前記バッファの消費の少ない領域から順に第1領域と第2領域と第3領域とに区分し、前記消費予測値が前記第1領域に含まれる場合は、前記バッファの使用を推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成し、前記消費予測値が前記第2領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨せず、次または先のイテレーションにおいて実行することを推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成し、前記消費予測値が前記第3領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨せず、現行のイテレーションにおいて実行することを推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成する、
ことを特徴とする請求項2記載の進捗管理支援装置。
【請求項4】
繰り返し型開発モデルを適用したプロジェクトにおける複数のイテレーションの後に設けられ、前記複数のイテレーションのいずれにおいても消費可能な余裕期間であるバッファの消費実績値および消費要求期間に基づいて、バッファ消費予測計算部が、前記バッファの消費予測値を計算するバッファ消費予測計算ステップと、
バッファ傾向グラフ生成部が、前記プロジェクト全体における進捗に対する前記バッファの前記消費実績値および前記消費予測値と前記消費予測値についての警告レベルとを表すバッファ傾向グラフを生成し、前記警告レベルに応じて前記バッファの消費を推奨するか否かの内容を含む推奨アクション情報を生成するバッファ傾向グラフ生成ステップと、
提示部が、前記バッファ傾向グラフと前記推奨アクション情報とを提示する提示ステップと、
を有することを特徴とする進捗管理支援方法。
【請求項5】
前記バッファ傾向グラフ生成ステップは、前記バッファ傾向グラフ生成部が、前記バッファ傾向グラフのグラフ領域を複数の領域に区分した警告ゾーンを設け、前記複数の領域において前記消費予測値を含む領域に応じて前記警告レベルを表す、
ことを特徴とする請求項4記載の進捗管理支援方法。
【請求項6】
前記バッファ傾向グラフ生成ステップは、前記バッファ傾向グラフ生成部が、前記警告ゾーンを、前記バッファの消費の少ない領域から順に第1領域と第2領域と第3領域とに区分し、前記消費予測値が前記第1領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成し、前記消費予測値が前記第2領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨せず、次または先のイテレーションにおいて実行することを推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成し、前記消費予測値が前記第3領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨せず、現行のイテレーションにおいて実行することを推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成する、
ことを特徴とする請求項5記載の進捗管理支援方法。
【請求項7】
コンピュータを、
繰り返し型開発モデルを適用したプロジェクトにおける複数のイテレーションの後に設けられ、前記複数のイテレーションのいずれにおいても消費可能な余裕期間であるバッファの消費実績値および消費要求期間に基づいて、前記バッファの消費予測値を計算するバッファ消費予測計算部と、
前記プロジェクト全体における進捗に対する前記バッファの前記消費実績値および前記消費予測値と前記消費予測値についての警告レベルとを表すバッファ傾向グラフを生成し、前記警告レベルに応じて前記バッファの消費を推奨するか否かの内容を含む推奨アクション情報を生成するバッファ傾向グラフ生成部と、
前記バッファ傾向グラフと前記推奨アクション情報とを提示する提示部と、
として機能させるための進捗管理支援プログラム。
【請求項8】
前記バッファ傾向グラフ生成部は、前記バッファ傾向グラフのグラフ領域を複数の領域に区分した警告ゾーンを設け、前記複数の領域において前記消費予測値を含む領域に応じて前記警告レベルを表す、
請求項7記載の進捗管理支援プログラム。
【請求項9】
前記バッファ傾向グラフ生成部は、前記警告ゾーンを、前記バッファの消費の少ない領域から順に第1領域と第2領域と第3領域とに区分し、前記消費予測値が前記第1領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成し、前記消費予測値が前記第2領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨せず、次または先のイテレーションにおいて実行することを推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成し、前記消費予測値が前記第3領域に含まれる場合は、前記バッファの消費を推奨せず、現行のイテレーションにおいて実行することを推奨する内容を含む前記推奨アクション情報を生成する、
請求項8記載の進捗管理支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−146126(P2012−146126A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3954(P2011−3954)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)