説明

運動障害の予防および/または治療剤

【課題】アデノシンA2A受容体拮抗作用を有する運動障害の予防および/または治療剤の提供。
【解決手段】下記式(I)で表されるトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。


[式中、R1は置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、R2は水素原子、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、R3は水素原子、ハロゲンまたは−WR4(式中、Wは−O−または−S−を表し、R4は置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)を表し、Q1は水素原子または3,4−ジメトキシベンジルを表す]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動障害の予防および/または治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
運動障害(movement disorders)は、運動の欠如、減少もしくは失調、または不随意運動(例えば振戦、ジスキネジア、コレア、バリズム、ジストニア、アタキシア、アカシジア、アテトーゼ、チック、ミオクローヌス等)を特徴とする神経障害であり、運動障害を呈する代表的な疾患としては、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、本態性振戦、遅発性ジスキネジア、レストレス・レッグス症候群、トゥーレット症候群、進行性核上性麻痺、痙性斜頚等がある(メルク・インデックス第17版,14章;日本臨床,1993年,第51巻,p.2816−2822)。
【0003】
運動神経系は、延髄の錐体を経て大脳皮質と脳幹および脊髄の下位運動中枢とを結ぶ皮質脊髄路、大脳皮質へと出力を向ける基底核ならびに運動協調の中心である小脳から構成されており、これらのひとつまたはそれ以上の構成要素が障害されることによって異常な運動パターン(運動障害)が現れる。運動障害の病因には神経変性疾患に限らず、精神疾患、薬物の作用、心理作用等が関与しており、障害の内容は様々である。WHOの国際疾病分類第10版(ICD−10)によると、運動障害は「錐体外路障害および異常行動」または「小児<児童>期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害」として位置付けられており、薬剤誘発性のものや心因性のものから基底核の神経変性に起因するものまで幅広く含まれる。
【0004】
運動障害を呈する代表的な疾患であるパーキンソン病は、年齢とともに徐々に進行する神経変性疾患である。特徴的な症状は、例えば安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害等であり、これらはパーキンソン病の4大症状といわれる。病理学的には、錐体外路系の一部である黒質から線条体へ投射するドパミン性神経細胞の変性・脱落およびレビー小体の出現が見られ、線条体ドパミン含量の顕著な低下が認められる。有病率は日本では人口10万人当たり100〜150人、欧米では100〜200人と推測され、発症年齢は50〜65歳に多く、高齢になるほど発病率が増加する(日本臨床,2004年,第62巻,p.1603−1607;日本臨床,1997年,第55巻,p.9−15)。また、パーキンソン病に見られるような錐体外路症状のいくつかが出現する疾患群をパーキンソニズム(パーキンソン症候群)と呼び、これらは例えば脳血管障害、薬剤、中毒、腫瘍、外傷等により二次的に起こる場合や、パーキンソン病以外の種々の神経変性疾患に伴う場合もある。パーキンソニズムの原因となる薬剤としては、例えばドパミン受容体遮断作用を有するベンザミド誘導体(例えば抗精神病薬、抗うつ薬、消化管運動調節薬等)、フェノチアジン・ブチロフェノン系抗精神病薬、カルシウム拮抗薬、抗不整脈薬、ドパミン枯渇薬等があげられる(内科,2004年,第93巻,p.648−652)。
【0005】
パーキンソン病の治療は、不足したドパミンを補うL−DOPA補充療法が基本となっており、ドパミン作動薬やMAO−B(モノアミン酸化酵素B)阻害剤、COMT(カテコール−O−メチル転移酵素)阻害剤、抗コリン剤、アマンタジン等を併用する場合が多い(臨床神経学,2002年,第42巻,p.421−494)。しかしながら、L−ドーパ(L−DOPA)補充療法においてL−DOPAを長期服用すること(L−DOPA療法)により、例えばジスキネジア、ジストニア等の不随意運動、ウェアリング・オフ現象、オン・オフ変動等の運動合併症等を生じることが問題となっている(メルク・インデックス第17版,14章;日本臨床,2004年,第62巻,p.1594−1749)。運動合併症は、通常一旦発症するとL−DOPAまたは他のドパミン作動薬による治療では対処できない。ジスキネジアは舞踏運動を主とし、口・顎・舌等の顔面から、四肢に至るまで全身性に生じることもあり、部分的に生じることもある。ジストニアは起床時に起こりやすく、足趾の屈曲を伴う内反・尖足を呈し、痛みを伴うことが多い。その原因に関しては十分に解明されていないが、ドパミン神経変性の進行に伴ってL−DOPAの濃度を一定に保てなくなることが一因と考えられている(日本臨床,2004年,第62巻,p.1711−1715)。ジスキネジアへの対処としては、L−DOPAを減量することが原則であり、効果が得られない場合はアマンタジンを追加する。一方、ジストニアに対してはドパミンアゴニスト、L−DOPA、MAO−B阻害剤等の追加が行われている。これらの症状は進行期によく出現するため、薬剤の減量はパーキンソン病症状を悪化させて日常生活動作(ADL)に影響することも多い(臨床神経学,2002年,第42巻,p.421−494;日本臨床,2004年,第62巻,p.1711−1715)。また、L−DOPA等のドパミン系薬剤の投与によるドパミン刺激によって悪心、嘔吐、起立性低血圧、精神症状等の副作用を起こすことも問題となっており、ドパミン系薬剤に替わる新しい治療法が期待されている。
【0006】
一方、アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体としては、例えば[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン誘導体、[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体等の多くの化合物が知られている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8等参照)。また、錐体外路障害、ジストニア、レストレス・レッグス症候群等の治療にアデノシンA2A受容体拮抗作用を有する化合物が有効であることが知られている(特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第98/42711号パンフレット
【特許文献2】国際公開第00/17201号パンフレット
【特許文献3】国際公開第99/43678号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/92264号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/69464号パンフレット
【特許文献6】国際公開第03/48156号パンフレット
【特許文献7】国際公開第03/32996号パンフレット
【特許文献8】国際公開第03/48163号パンフレット
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0138235号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、例えばアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する運動障害の予防および/または治療剤等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の(1)〜(28)に関する。
(1) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する不随意運動の予防および/または治療剤。
(2) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、
は置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
は水素原子、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
は水素原子、ハロゲンまたは−WR(式中、Wは−O−または−S−を表し、Rは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)を表し、
は水素原子または3,4−ジメトキシベンジルを表す]
で表される化合物である上記(1)記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
(3) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が式(II)
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、
1Aは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、
2Aは水素原子、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、
n1およびm1は同一または異なって0〜4の整数を表し、
1Aは水素原子または3,4−ジメトキシベンジルを表し、
は水素原子、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基または−CR(式中、R、RおよびRは同一または異なって水素原子、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表すか、またはRとRが隣接する炭素原子と一緒になって置換もしくは非置換の炭素環を形成する)を表し、
は水素原子、ハロゲン、ヒドロキシまたは置換もしくは非置換の低級アルキルを表す]
で表される化合物である上記(1)記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【0014】
(4) Rが−CR7A8A9A(式中、R7Aはヒドロキシ、ヒドロキシ低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシまたはイミダゾ[1,2−a]ピリジルを表し、
8AおよびR9Aは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表すか、またはR8A9Aが隣接する炭素原子と一緒になって置換もしくは非置換の炭素環を形成する)である上記(3)記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
(5) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が式(III)
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、
10は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換の低級アルカノイルを表し、
11は置換もしくは非置換の複素環基を表し、
12は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
は単結合、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−または−NR13−(式中、R13は水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)を表し、
Xは=N−または−CR14−(式中、R14は水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)を表す]
で表される化合物である上記(1)記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
(6) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が式(IV)
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、
Bはフリルまたはチエニルを表し、
は単結合、−O−または−S−を表し、
Zは水素原子、ハロゲンまたは置換もしくは非置換の低級アルキルを表し、
n2は0〜5の整数を表す)
で表される化合物である上記(1)記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
(7) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が式(V)
【0019】
【化5】

【0020】
[式中、
15は置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
16は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
は酸素原子、硫黄原子またはNR17(式中、R17は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表す)を表し、
Aは隣接する2個の炭素原子と一緒になって置換もしくは非置換の炭素環または置換もしくは非置換の複素環を形成する]
で表される化合物である上記(1)記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
(8) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が、式(VI)
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、
18は置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、
19は置換もしくは非置換の低級アルキルを表し、
は単結合または−C(=O)−を表す)
で表される化合物である上記(1)記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
(9) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が、式(VI−A)
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、
18は前記と同義であり、
n3は1〜4の整数を表し、
20は置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)
で表される化合物(例えば5−アミノ−2−(2−フリル)−7−(2−{4−[4−(2−メトキシエトキシ)フェニル]ピペラジニル}エチル)ピラゾロ[4,3−e]−1,2,4−トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン等)である上記(1)記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
(10) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が、式(VII)
【0025】
【化8】

【0026】
(式中、
21は置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
は単結合または−C(=O)−を表し、
22は置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)
で表される化合物である上記(1)記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
(11) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が、式(VII−A)
【0027】
【化9】

【0028】
(式中、
21は前記と同義であり、
n4は1〜4の整数を表し、
23は置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)
で表される化合物(例えば5−アミノ−2−(2−フリル)−7−(2−{4−[4−(2−メトキシエトキシ)フェニル]ピペラジニル}エチル)ピラゾロ[4,5−e]−1,2,4−トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン等)である上記(1)記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【0029】
(12) 不随意運動が、パーキンソン病治療における運動合併症である上記(1)〜(11)のいずれかに記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
(13) 不随意運動が、パーキンソン病治療におけるジスキネジアである上記(1)〜(11)のいずれかに記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
(14) 不随意運動が、パーキンソン病のL−DOPAおよび/またはドパミン作動薬治療におけるジスキネジアである上記(1)〜(11)のいずれかに記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【0030】
(15) 不随意運動が、振戦、ジスキネジア、コレア、バリズム、ジストニア、アタキシア、アカシジア、アテトーゼ、チックおよびミオクローヌスからなる群より選ばれる不随意運動である上記(1)〜(11)のいずれかに記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
(16) 不随意運動が、ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、コレア、バリズム、ジストニア、遅発性ジストニア、アタキシア、アカシジア、アテトーゼ、チックおよびミオクローヌスからなる群より選ばれる不随意運動である上記(1)〜(11)のいずれかに記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
(17) 不随意運動が、ジスキネジアおよび遅発性ジスキネジアからなる群より選ばれる不随意運動である上記(1)〜(11)のいずれかに記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【0031】
(18) 上記(1)〜(11)のいずれかに記載のアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するパーキンソン病のL−DOPAおよび/またはドパミン作動薬治療におけるL−ドーパの使用量を減量させるための薬剤。
(19) 上記(1)〜(11)のいずれかに記載のアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する運動障害の予防および/または治療剤。
(20) 上記(1)〜(11)のいずれかに記載のアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する不随意運動を特徴とする運動障害の予防および/または治療剤。
【0032】
(21) 不随意運動の予防および/または治療剤の製造のためのアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の使用。
(22) パーキンソン病のL−DOPAおよび/またはドパミン作動薬治療におけるL−ドーパの使用量を減量させるための薬剤の製造のためのアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の使用。
(23) 運動障害の予防および/または治療剤の製造のためのアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の使用。
(24) 不随意運動を特徴とする運動障害の予防および/または治療剤の製造のためのアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の使用。
【0033】
(25) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする不随意運動の予防および/または治療方法。
(26) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とするパーキンソン病のL−DOPAおよび/またはドパミン作動薬治療におけるL−ドーパの使用量を減量させる方法。
(27) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする運動障害の予防および/または治療方法。
(28) アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする不随意運動を特徴とする運動障害の予防および/または治療方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、例えばアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する運動障害の予防および/または治療剤等が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明で予防および/または治療される運動障害としては、運動の欠如、減少もしくは失調、不随意運動(例えば振戦、ジスキネジア、コレア、バリズム、ジストニア、アタキシア、アテトーゼ、アカシジア、チック、ミオクローヌス等)およびこれらの組み合わせの症状を特徴とする障害等があげられる。中でも、不随意運動を特徴とする運動障害が好適に予防および/または治療される。また、上記に加えて、例えばパーキンソン病治療(例えばパーキンソン病のL−DOPAおよび/またはドパミン作動薬治療等)における運動合併症(例えばジスキネジア、オン・オフ変動、ウェアリング・オフ現象等)等の不随意運動を特徴とする運動障害も好適に予防および/または治療される。
【0036】
また、本発明で予防および/または治療される不随意運動としては、上記で例示した不随意運動等があげられる。中でも、振戦、ジスキネジア、コレア、バリズム、アカシジア、チック、ミオクローヌス等が好適に予防および/または治療される。
上記運動障害を呈する疾患としては、例えばハンチントン舞踏病、本態性振戦、遅発性ジスキネジア、遅発性ジストニア、トゥーレット症候群、進行性核上性麻痺、痙性斜頚等があげられる。
【0037】
一方、アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体としては、アデノシンA2A受容体への結合、またはアデノシンのアデノシンA2A受容体への結合を妨害もしくは予防的に阻害することにより、アデノシンが関与する生理作用の少なくともひとつを阻害、抑制または停止させる作用等を有するトリアゾロピリミジン誘導体があげられる。例えば国際公開第98/42711号パンフレット、国際公開第00/17201号パンフレット、国際公開第99/43678号パンフレット、国際公開第01/92264号パンフレット、国際公開第00/69464号パンフレット、国際公開第03/48156号パンフレット、国際公開第03/32996号パンフレット、国際公開第03/48163号パンフレット等に記載のトリアゾロピリミジン誘導体があげられる。具体的には、例えば上記の式(I)〜(VII)、(VI−A)および(VII−A)で表される化合物(以下、それぞれ化合物(I)〜(VII)、(VI−A)および(VII−A)という)等があげられる。中でも化合物(I)、(II)、(VI)または(VI−A)等が好ましく、特に化合物(II)または(VI−A)等が好ましい。
【0038】
式(I)〜(VII)、(VI−A)および(VII−A)の各基の定義において、
低級アルキル、ヒドロキシ低級アルキル、低級アルコキシおよび低級アルカノイルの低級アルキル部分としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜6のアルキルがあげられ、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等があげられる。
【0039】
低級アルケニルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜6のアルケニルがあげられ、具体的にはビニル、アリル、メタクリル、クロチル、3−ブテニル、2−ペンテニル、4−ペンテニル、2−ヘキセニル、5−ヘキセニル等があげられる。
低級アルキニルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜6のアルキニルがあげられ、具体的にはエチニル、プロパルギル、2−ブチニル、3−ブチニル、2−ペンチニル、4−ペンチニル、2−ヘキシニル、5−ヘキシニル、4−メチル−2−ペンチニル等があげられる。
【0040】
シクロアルキルとしては、例えば炭素数3〜8のシクロアルキルがあげられ、具体的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等があげられる。
シクロアルケニルとしては、例えば炭素数4〜8のシクロアルケニルがあげられ、具体的にはシクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル等があげられる。
【0041】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を意味する。
アリールとしては、例えば炭素数6〜14のアリールがあげられ、具体的にはフェニル、ナフチル、アントリル等があげられる。
芳香族複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性芳香族複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性芳香族複素環基等があげられ、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキソピリダジニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、シンノリニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、チエニル、フリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、オキソオキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、2−オキソベンゾイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、プリニル、ジベンゾフラニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル等があげられる。
【0042】
複素環基としては、例えば前記芳香族複素環基の定義であげた基に加え、脂環式複素環基があげられる。脂環式複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性脂環式複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性脂環式複素環基等があげられ、具体的にはピラニル、チオピラニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、モルホリノ、モルホリニル、チオモルホリノ、チオモルホリニル、ホモピペリジノ、ホモピペラジニル、テトラヒドロピリジニル、ジヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキソオキサゾリジニル、オキサジアゾリニル、オキシラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロベンゾフラニル、オキソピペラジニル、2−オキソピロリジニル、ジオキソラニル、ベンゾジオキソラニル、ベンゾジオキシニル、ベンゾジオキセピニル、ベンゾピラニル、ベンゾジヒドロピラニル、ペルヒドロジアゼピニル、ペルヒドロジアゾシニル、ペルヒドロジアゾニニル等があげられる。
【0043】
隣接する2個の炭素原子と一緒になって形成される複素環としては、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性複素環、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性複素環等があげられ、具体的にはピロール、ピラン、チオピラン、ピリジン、チアゾール、イミダゾール、ピリミジン、トリアジン、インドール、キノリン、ベンゾチアゾール、ピロリン、テトラヒドロピリジン、テトラヒドロピラジン、テトラヒドロキノリン、テトラヒドロイソキノリン等があげられる。
【0044】
隣接する2個の炭素原子と一緒になって形成される炭素環としては、例えば炭素数4〜8のシクロアルケン等があげられ、具体的にはシクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等があげられる。
隣接する炭素原子と一緒になって形成される炭素環としては、例えば炭素数4〜8のシクロアルカン、シクロアルケン等があげられ、具体的にはシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等があげられる。
【0045】
置換低級アルキル、置換低級アルコキシ、置換低級アルカノイル、置換低級アルケニルおよび置換低級アルキニルにおける置換基(A)としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の、具体的にはヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルバモイル、アミノ、ベンジルオキシ、フェニルオキシ、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、シクロアルキル、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基等があげられる。
【0046】
置換基(A)の例示であげたハロゲン、シクロアルキル、アリールおよび複素環基はそれぞれ前記と同義であり、低級アルコキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルアミノおよびジ低級アルキルアミノの低級アルキル部分は前記低級アルキルと同義であり、ジ低級アルキルアミノの2個の低級アルキル部分は同一でも異なっていてもよい。
【0047】
置換基(A)の例示であげた置換アリールおよび置換複素環基における置換基としては、後記の置換基(C)の例示であげる置換基等があげられ、置換低級アルコキシにおける置換基(a)としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の、具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アジド、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル等があげられる。置換基(a)の例示であげたハロゲンは前記と同義であり、低級アルコキシおよびは低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分は前記低級アルキルと同義である。
【0048】
置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、隣接する炭素原子と一緒になって形成される置換炭素環、隣接する2個の炭素原子と一緒になって形成される置換炭素環、置換アリール、置換複素環基、置換芳香族複素環基および隣接する2個の炭素原子と一緒になって形成される置換複素環における置換基(C)としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の、具体的には低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アラルキル、アラルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、低級アルカノイル、低級アルカノイルオキシ、アロイル、アロイルオキシ、アリールアルカノイルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルカルバモイル、ジ低級アルキルカルバモイル、スルホ、低級アルコキシスルホニル、低級アルキルスルファモイル、ジ低級アルキルスルファモイル等があげられる。
【0049】
置換基(C)の例示であげた低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、低級アルカノイル、低級アルカノイルオキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルカルバモイル、ジ低級アルキルカルバモイル、低級アルコキシスルホニル、低級アルキルスルファモイルおよびジ低級アルキルスルファモイルの低級アルキル部分は、前記低級アルキルと同義であり、ハロゲン、低級アルケニルおよび低級アルキニルはそれぞれ前記と同義である。ジ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルカルバモイルおよびジ低級アルキルスルファモイルの2個の低級アルキル部分は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。アリールおよびアリールオキシのアリール部分は前記アリールと同義であり、アラルキルおよびアラルキルオキシのアラルキル部分としては、例えばベンジル、フェネチル等があげられる。アロイルおよびアロイルオキシのアロイル部分としては、例えばベンゾイル、ナフトイル等があげられる。アリールアルカノイルオキシのアリールアルキル部分としては、例えばベンジル、フェネチル等があげられる。
【0050】
置換基(C)の例示であげた置換低級アルコキシにおける置換基(c)としては、前記置換基(a)の例示であげた置換基等があげられる。
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体の薬理学的に許容される塩としては、例えば薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等があげられる。
【0051】
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体の薬理学的に許容される酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩があげられ、薬理学的に許容される金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられ、薬理学的に許容されるアンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、薬理学的に許容される有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、薬理学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、リジン、グリシン、フェニルアラニン等の付加塩があげられる。
【0052】
化合物(I)〜(VII)、(VI−A)および(VII−A)ならびにそれらの薬理学的に許容される塩は、それぞれ例えば国際公開第98/42711号パンフレット、国際公開第00/17201号パンフレット、国際公開第99/43678号パンフレット、国際公開第01/92264号パンフレット、国際公開第00/69464号パンフレット、国際公開第03/48156号パンフレット、国際公開第03/32996号パンフレット、国際公開第03/48163号パンフレット等に開示された方法でまたはそれらに準じて製造することができる。各製造法における目的化合物は、有機合成化学で常用される精製法、例えば濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。
【0053】
化合物(I)〜(VII)、(VI−A)、(VII−A)等のアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体の塩を取得したいとき、化合物(I)〜(VII)、(VI−A)、(VII−A)等のアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られる場合には、化合物(I)〜(VII)、(VI−A)、(VII−A)等のアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて塩を形成させればよい。
【0054】
また、化合物(I)〜(VII)、(VI−A)、(VII−A)等のアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体およびその薬理学的に許容される塩は、水または各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これら付加物も本発明の運動障害の予防および/または治療剤等に用いることができる。
化合物(I)〜(VII)、(VI−A)、(VII−A)等のアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体の中には光学異性体等の立体異性体が存在し得るものもあるが、全ての可能な立体異性体およびそれらの混合物も本発明の運動障害の予防および/または治療剤等に用いることができる。
【0055】
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体の具体例を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
以下に試験例により本発明の効果を具体的に説明する。
試験例1:パーキンソン病モデルラットにおける抗パーキンソン作用
ドパミン神経毒である6−ヒドロキシドーパミン(6−hydrozydopamine;以下6−OHDAと称する)を用いて脳の片側の黒質−線条体ドパミン神経細胞を破壊することにより、6−OHDA処置ラット(パーキンソン病モデルラット)を作製した。本モデルでは、L−DOPAおよび/またはドパミン作動薬の投与により、破壊側と反対側への回転行動(逆側回転行動)を生じることが知られており、この逆側回転行動は抗パーキンソン活性の指標として用いられている(アクタ・サカイアトリカ・スカンジナビカ・サプルメント(Acta Psychiatrica Scandinavica Supplement),1971年,第367巻,p.69−93)。
試験方法:
試験には、SD系雄性ラット(6週齢、日本チャールズ・リバー)を用いた。ペントバルビタール麻酔下で脳定位固定装置(SR−6、成茂、東京)にラットを固定し、左側内側前脳束(A−2.5,L1.8,V−8.9mm from bregma)に、マイクロインジェクションポンプ(CMA/100、Carnegie Medicine,Stockholm,Sweden)を用いて、6−OHDA(8μg/2μL;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)を注入した。6日以上の術後期間を置いた後、アポモルフィン塩酸塩0.5水和物(apomorphine hydrochloride hemihydrate;以下apomorphineと称する、0.1mg/kg;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)を皮下投与し、逆側回転行動が見られたラットのみを以後の実験に使用した。
【0058】
逆側回転行動の確認および逆側回転行動の回転数の測定は、床敷きを敷いたバケツ内(高さ28cm、内径21cm)で行った。試験における皮下投与または経口投与は、ラットを該バケツに入れて約1時間馴化させた後に行った。回転数の測定は、測定器(自作)およびカウンター(御殿場製作所、静岡)を用いて、180度の回転を1カウントとして計測した。
逆側回転行動の確認から6日以上経過した後、再度apomorphine(0.1mg/kg)を皮下投与し、投与後120分間に500−1100カウントの回転数を示すラットを選択して、総カウント数の平均値がほぼ等しくなるように群分けを行った。
【0059】
群分け後、6日以上の休薬期間を置き、L−DOPA誘発回転行動に対する試験化合物の作用を検討した。L−DOPAと試験化合物(併用投与群)またはL−DOPAと0.5重量/容量%のメチルセルロースを含有する注射用水(0.5%MC溶液)(単独投与群)をそれぞれ経口投与し、3時間の総回転数を測定した。各群の回転数は、1個体あたりの3時間の総カウント数の平均値±標準偏差として算出した。L−DOPAはベンセラジド(benserazide)との混合剤(いずれも協和発酵工業製、投与比4:1)として使用した。L−DOPAおよび試験化合物は、それぞれ0.5%MC溶液に懸濁させた。L−DOPA、0.5%MC溶液および試験化合物は、それぞれ0.25mL/kgの容量で経口投与した。
【0060】
その結果を表2および表3に示す。各表のpの値はL−DOPA(10mg/kg)+0.5%MC溶液の投与群に対する有意差を表す。
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
結果:
上記の結果より、以下のことが判明した。化合物1および化合物2は、パーキンソン病モデルラットにおけるL−DOPA誘発回転行動、すなわち抗パーキンソン活性を有意に増強した。L−DOPA 10mg/kgと化合物1または化合物2を併用投与したときに得られる抗パーキンソン活性は、L−DOPA 20mg/kgを単独投与したときに得られるものと同程度であった。
【0064】
つまり、アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体を投与することにより、パーキンソン病のL−DOPA治療において運動合併症を引き起こす原因となるL−DOPAの量を減量できることが判明した。また、運動合併症の原因となるL−DOPAの量を減量できるということから、運動合併症の誘発を遅らせるまたは抑制することができると示唆される。
【0065】
試験例2:ジスキネジア等の不随意運動モデルラットにおける作用
試験例1に記載した方法で作成されるパーキンソン病モデルラットにL−DOPAを反復投与すると、異常不随意運動(abnormal involuntary movements;AIMs)を発現することが知られており、該処置ラットはジスキネジア等の不随意運動のモデルとして用いられている。AIMsは、(1)軸性AIMs(axial AIMs):頭、首、胴体における脳の破壊側と反対の側への反れまたはねじれ、(2)四肢AIMs(limb AIMs):脳の破壊側と反対の側の主に前肢の動き(垂直方向への屈曲もしくは伸展または水平・前後方向への運動、指の開閉等)、(3)口舌AIMs(orolingual AIMs):顎の動き、顔の歪み、舌の突出(破壊側と反対側の前肢の毛、皮膚に対する噛みつき行動を伴う)、(4)自発運動性AIMs(locomotive AIMs):逆側回転行動の4種類に分類されている。これらのうちlocomotive AIMsは、ジスキネジアを起こしにくいブロモクリプチン(bromocriptine)等のドパミン作動薬により惹起され、かつアマンタジン(amantadine)等の抗ジスキネジア活性をもつ薬物により抑制されない。これらのことから、locomotive AIMsは抗パーキンソン作用により改善された正常な運動を反映したものであると報告されている(ニューロバイオロジー・オブ・ディジーズ(Neurobiology of Disease),2002年,第10巻,p.165−86;ユーロピアン・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス(European Journal of Neuroscience),2002年,第15巻,p.120−132)。
【0066】
AIMsの観察および判定:
透明なアクリルゲージ内にラットを入れて、薬物投与後から10分毎に1個体につき1分間ずつ、1日あたり3時間、AIMsの観察を行った。上記4種類のAIMsの頻度を0−4点までスコア付けした(0点:症状なし、1点:観察時間の50%未満に出現、2点:観察時間の50%以上に出現、3点:症状が持続し、強い感覚刺激により妨害される、4点:症状が持続し、強い感覚刺激で妨害されない)。また、axial AIMsとlimb AIMsについては、その振幅を1−4点までスコア付けした(axial AIMs;1点:頭、首の反れが30度未満、2点:頭、首の反れが30度以上60度未満、3点:頭、首、上部胴体の反れやねじれが60度以上90度未満、4点:頭、首、胴体の反れやねじれが90度以上でバランスを失う、limb AIMs;1点:肢および遠位前肢の小刻みな動き、2点:低振幅だが遠位・近位両方の肢の目に見える移動、3点:目に見える肩の筋肉の収縮を伴う肢の移動、4点:最大振幅の肢と方の強力な動き)。
【0067】
試験方法:
試験には、SD系雄性ラット(6週齢、日本チャールズ・リバー)を用いた。試験例1に記載した方法に準じて、パーキンソン病モデルラットを作製した。6日以上の術後期間を置いた後、1日あたりL−DOPA20mg/kgを1または2回、経口で反復投与し、ジスキネジア等の不随意運動のモデルラットを作製した。
【0068】
L−DOPA反復投与開始から12−14日目にAIMsの観察を行い、総スコアの平均値がほぼ等しくなるように群分けした。なお、L−DOPA反復投与から1週間以上経過してもAIMsがほとんど認められない個体は除外した。群構成は、L−DOPA20mg/kgと0.5%MC溶液の投与群(単独投与群)、L−DOPA 10mg/kgと試験化合物の投与群(併用投与群)とした。試験化合物は試験例1と同じ用量を用いることにより、単独投与群と併用投与群がともに同程度の抗パーキンソン活性を示す条件を設定した。
【0069】
群分け後、L−DOPA 20mg/kgと0.5%MC溶液およびL−DOPA 10mg/kgと試験化合物をそれぞれ経口で反復投与した。投与の1−3日目および8−10日目にそれぞれAIMsの観察を3日間行い、試験化合物の効果を検討した。投与終了後、3日間の休薬期間を置いてL−DOPA20mg/kgを投与し、このときのAIMsスコアをpost値とした。各群のAIMsスコアは、1個体あたりで1日あたりの総AIMsスコアの平均値±標準偏差として算出した。
【0070】
L−DOPAはベンセラジド(benserazide)との混合剤(いずれも協和発酵工業製、投与比4:1)として使用した。L−DOPAおよび試験化合物は、0.5%MC溶液に懸濁させた。L−DOPA、0.5%MC溶液および試験化合物は、それぞれ0.25mL/kgの容量で経口投与した。
その結果を表4および表5に示す。各表のpの値はL−DOPA(20mg/kg)+0.5%MC溶液の投与群に対する有意差を表す。
【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
結果:
上記の結果から、以下のことが判明した。L−DOPA 10mg/kgと化合物1または化合物2を併用投与することにより、L−DOPA 20mg/kgを単独投与したときに得られる抗パーキンソン病活性と同程度の活性を有したまま、L−DOPA 20mg/kgを単独投与したときと比較して、有意なジスキネジア発現の抑制が認められた。
【0074】
つまり、アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体を投与することにより、パーキンソン病のL−DOPA治療において運動合併症を引き起こす原因となるL−DOPAの量を減量し、かつ運動合併症のひとつであるジスキネジアの誘発を遅らせるまたは抑制できることが判明した。
以上の試験例の結果から、アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩は、不随意運動(例えば振戦、ジスキネジア、コレア、バリズム、ジストニア、アタキシア、アテトーゼ、チック、ミオクローヌス等)およびこれらの組み合わせの症状、これらのいずれかひとつ以上の症状を特徴とする運動障害[例えばパーキンソン病のL−DOPAおよび/またはドパミン作動薬治療等における運動合併症(例えばジスキネジア、オン・オフ変動、ウェアリング・オフ現象等)、ハンチントン舞踏病、本態性振戦、遅発性ジスキネジア、遅発性ジストニア、トゥーレット症候群、進行性核上性麻痺、痙性斜頚等]の予防および/または治療に有効であると示唆される。
【0075】
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩はそのまままたは各種の製薬形態で使用することができる。本発明の製薬組成物は、活性成分として、有効な量のアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を薬理学的に許容される担体と均一に混合して製造できる。これらの製薬組成物は、例えば経口または非経口(皮下、静脈内および筋肉内を含む)等の投与に対して適する単位服用形態にあることが望ましい。
【0076】
経口服用形態にある組成物の調製においては、何らかの有用な薬理学的に許容される担体が使用できる。例えば懸濁剤およびシロップ剤のような経口液体調製物は、水、シュークロース、ソルビトール、フラクトース等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を使用して製造できる。粉剤、丸剤、カプセル剤および錠剤は、ラクトース、グルコース、シュークロース、マンニトール等の賦形剤、でん粉、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の表面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いて製造できる。錠剤およびカプセル剤は、投与が容易であるという理由で、最も有用な単位経口投与剤である。錠剤やカプセル剤を製造する際には固体の製薬担体
が用いられる。
【0077】
また、注射剤は、蒸留水、塩溶液、グルコース溶液または塩水とグルコース溶液の混合物等から成る担体を用いて調製することができる。この際、常法に従い適当な助剤を用いて、溶液、懸濁液または分散液として調製される。
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩は、上記製薬形態で経口的にまたは注射剤等として非経口的に投与することができ、その有効用量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、症状等により異なるが、1〜100mg/60kg/日、好ましくは1〜20mg/60kg/日を一日一回または数回に分けて投与するのが適当である。
【0078】
また、アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩は、例えばL−DOPA、ドパミン作動薬、MAO−B阻害剤、COMT阻害剤等から選ばれる1つ以上の薬剤と併用して用いることもできる。
以下に、実施例によって本発明の態様を説明する。
【実施例1】
【0079】
錠剤
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。
化合物1の40g、ラクトース286.8gおよび馬鈴薯でん粉60gを混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液120gを加える。この混合物を常法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム1.2gを加えて混合し、径8mmの杵を有する打錠機(菊水社製RT−15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり活性成分20mgを含有する)を得る。
【0080】
処方 化合物1 20 mg
ラクトース 143.4mg
馬鈴薯でん粉 30 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
200 mg
【実施例2】
【0081】
カプセル剤
常法により、次の組成からなるカプセル剤を調製する。
化合物2の200g、アビセル995gおよびステアリン酸マグネシウム5gを常法により混合する。この混合物をカプセル充填機(Zanasi社製、LZ−64型)により、ハードカプセル4号(1カプセルあたり120mg容量)に充填し、カプセル剤(1カプセルあたり活性成分20mgを含有する)を得る。
【0082】
処方 化合物2 20 mg
アビセル 99.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
120 mg
【実施例3】
【0083】
注射剤
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。
化合物1の1gを精製ダイズ油100gに溶解させ、精製卵黄レシチン12gおよび注射用グリセリン25gを加える。この混合物を常法により注射用蒸留水で1000mLとして練合・乳化する。得られた分散液を0.2μmのディスポーザブル型メンブランフィルターを用いて無菌濾過後、ガラスバイアルに2mLずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分2mgを含有する)を得る。
【0084】
処方 化合物1 2 mg
精製ダイズ油 200 mg
精製卵黄レシチン 24 mg
注射用グリセリン 50 mg
注射用蒸留水 1.72mL
2.00mL
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明により、例えばアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する運動障害の予防および/または治療剤等が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項2】
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が式(I)
【化1】

[式中、
は置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
は水素原子、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の
アリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
は水素原子、ハロゲンまたは−WR(式中、Wは−O−または−S−を表し、Rは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)を表し、
は水素原子または3,4−ジメトキシベンジルを表す]
で表される化合物である請求項1記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項3】
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が式(II)
【化2】

[式中、
1Aは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、
2Aは水素原子、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、
n1およびm1は同一または異なって0〜4の整数を表し、
1Aは水素原子または3,4−ジメトキシベンジルを表し、
は水素原子、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基または−CR(式中、R、RおよびRは同一または異なって水素原子、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表すか、またはRとRが隣接する炭素原子と一緒になって置換もしくは非置換の炭素環を形成する)を表し、
は水素原子、ハロゲン、ヒドロキシまたは置換もしくは非置換の低級アルキルを表す]
で表される化合物である請求項1記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項4】
が−CR7A8A9A(式中、R7Aはヒドロキシ、ヒドロキシ低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシまたはイミダゾ[1,2−a]ピリジルを表し、R8AおよびR9Aは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表すか、またはR8AとR9Aが隣接する炭素原子と一緒になって置換もしくは非置換の炭素環を形成する)である請求項3記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項5】
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が式(III)
【化3】

[式中、
10は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換の低級アルカノイルを表し、
11は置換もしくは非置換の複素環基を表し、
12は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
は単結合、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−または−NR13−(式中、R13は水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)を表し、
Xは=N−または−CR14−(式中、R14は水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)を表す]
で表される化合物である請求項1記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項6】
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が式(IV)
【化4】

(式中、
Bはフリルまたはチエニルを表し、
は単結合、−O−または−S−を表し、
Zは水素原子、ハロゲンまたは置換もしくは非置換の低級アルキルを表し、
n2は0〜5の整数を表す)
で表される化合物である請求項1記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項7】
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が式(V)
【化5】

[式中、
15は置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
16は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
は酸素原子、硫黄原子またはNR17(式中、R17は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表す)を表し、
Aは隣接する2個の炭素原子と一緒になって置換もしくは非置換の炭素環または置換もしくは非置換の複素環を形成する]
で表される化合物である請求項1記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項8】
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が、式(VI)
【化6】

(式中、
18は置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、
19は置換もしくは非置換の低級アルキルを表し、
は単結合または−C(=O)−を表す)
で表される化合物である請求項1記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項9】
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が、式(VI−A)
【化7】

(式中、
18は前記と同義であり、
n3は1〜4の整数を表し、
20は置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)
で表される化合物である請求項1記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項10】
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が、式(VII)
【化8】

(式中、
21は置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、
は単結合または−C(=O)−を表し、
22は置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)
で表される化合物である請求項1記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項11】
アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体が、式(VII−A)
【化9】

(式中、
21は前記と同義であり、
n4は1〜4の整数を表し、
23は置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)
で表される化合物である請求項1記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項12】
不随意運動が、パーキンソン病治療における運動合併症である請求項1〜11のいずれか1項に記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項13】
不随意運動が、パーキンソン病治療におけるジスキネジアである請求項1〜11のいずれか1項に記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項14】
不随意運動が、パーキンソン病のL−DOPAおよび/またはドパミン作動薬治療におけるジスキネジアである請求項1〜11のいずれか1項に記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項15】
不随意運動が、振戦、ジスキネジア、コレア、バリズム、ジストニア、アタキシア、アカシジア、アテトーゼ、チックおよびミオクローヌスからなる群より選ばれる不随意運動である請求項1〜11のいずれか1項に記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項16】
不随意運動が、ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、コレア、バリズム、ジストニア、遅発性ジストニア、アタキシア、アカシジア、アテトーゼ、チックおよびミオクローヌスからなる群より選ばれる不随意運動である請求項1〜11のいずれか1項に記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項17】
不随意運動が、ジスキネジアおよび遅発性ジスキネジアからなる群より選ばれる不随意運動である請求項1〜11のいずれか1項に記載の不随意運動の予防および/または治療剤。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するパーキンソン病のL−DOPAおよび/またはドパミン作動薬治療におけるL−ドーパの使用量を減量させるための薬剤。
【請求項19】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する運動障害の予防および/または治療剤。
【請求項20】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のアデノシンA2A受容体拮抗作用を有するトリアゾロピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する不随意運動を特徴とする運動障害の予防および/または治療剤。

【公開番号】特開2013−56911(P2013−56911A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−244147(P2012−244147)
【出願日】平成24年11月6日(2012.11.6)
【分割の表示】特願2007−520141(P2007−520141)の分割
【原出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】