説明

運転条件決定装置およびプログラム

【課題】 動電式振動試験装置における省電力、静音、精度向上、出力可能速度の増大などの運転関連値に注目し、振動発生機の動作限界を考慮しつつ、注目した運転関連値が所定の条件を満足するために最適な運転条件を算出する装置を提供する。
【解決手段】 最適な運転条件を見出すため、想定特性算出手段34は、励磁コイル4に与える励磁電流を基準値から変えた想定励磁電流における想定特性を算出する。想定駆動電流算出手段36は、要求される加振力特性を実現するためには駆動コイル10にどのような想定駆動電流を与えればよいかを、想定励磁電流毎に、想定特性に基づいて算出する。想定温度算出手段38は、冷却ブロア16の想定冷却能力を変えて、各想定励磁電流と各想定駆動電流とによって振動発生機1を動作させた各場合の励磁コイル4、駆動コイル10の温度を推定する。運転条件選択手段40は、温度条件を満足するもののうち、注目した運転関連値に基づく最適な運転条件の選択を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動試験の目的や状況に応じて、振動発生機の適切な運転条件を決定することのできる運転条件決定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に、動電式振動発生機1の内部構造を示す。磁気回路2の内部には励磁コイル4が設けられている。中央部には、可動部6が、エアーサスペンション8によって、上下動可能なように保持されている。可動部6の上部は、振動試験を行う対象である供試体を固定できるようになっている。可動部6の下部には、駆動コイル10が設けられている。
【0003】
励磁コイル4に直流電流を流すことにより、空隙部12に直流磁場を形成する。この空隙部12に駆動コイル10が設けられており、駆動コイル10に交流電流を流すことによって、可動部6を上下に振動させる。これにより、可動部6の上部に取り付けた供試体を振動させる。
【0004】
なお、磁気回路2の下部にはダクト14が設けられ、その先には冷却ブロア16が取り付けられている。冷却ブロア16を回転させることにより、ダクト14を介して空気を吸引し、磁気回路2上部の空気孔18から空気を内部に導くことができる。これにより、励磁コイル4、駆動コイル10を冷却することができる。なお、ここでは空冷式の場合を例にとって説明を行うが、冷却装置の消費電力や発生騒音に着目すれば、水冷式の場合にも同様に本発明を適用することができる。
【0005】
図2に、図1の振動発生機1を用いて構成した振動試験システムのブロック図を示す。振動発生機1の可動部6には供試体20が固定される。励磁コイル4に対しては、励磁電源26から励磁電流が供給される。冷却ブロア16に対しては、ブロア電源28から電流が供給される。供試体20に与えたい振動の周波数スペクトルを振動制御器22に設定する。振動制御器22からの駆動信号は、アンプ24によって増幅され、駆動コイル10に与えられる。これによる振動は、可動部6に設けられた加速度センサ30によって計測され、振動制御器22に与えられる。これを受けた振動制御器22は、計測された振動波形をフーリエ変換し、その周波数スペクトルを算出する。そして、振動波形の周波数スペクトルと、設定された所望の周波数スペクトルとの違いに基づいて、駆動信号の周波数スペクトルを算出する。そして、駆動信号の周波数スペクトルを逆フーリエ変換して、駆動信号を算出し、アンプ24に出力する。このようにして、目的とする周波数スペクトルを有する振動を、供試体に与えることができる。
【0006】
なお、上記のように目的とする振動の周波数スペクトルを与えて行う試験(ランダム試験)の他、周波数を時間的に掃引した正弦波振動を与えて行う試験(掃引試験)や、瞬間的に先鋭なパルス状の振動を与える試験(ショック試験)なども行われている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−13033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来の振動試験システムでは、励磁コイル4のための励磁電源26の励磁電流値は、最大加振力に合わせて決められて出荷され、オペレータが使用時にこれを変更することはできなかった。したがって、小さな加振力しか必要でない場合であっても、励磁電流を小さくして総消費電力を抑えるというような調整をオペレータが行えるようにはなっていなかった。
【0009】
仮に、オペレータが励磁電流を変更可能であるとしても、励磁電流を変更した場合の影響を予測するためには、専門的知識が必要であり簡単ではなかった。たとえば、目的とする加振力を得るという前提のもとでは、励磁電流を小さくすると、これに対して駆動電流を大きくしなければならない。したがって、励磁電流と駆動電流のバランスによっては、励磁電流を小さくしたからと言って必ず、全体としての消費電力が節減できるとは限らないからである。
【0010】
特許文献1には、必要とする加振力が小さい場合に、励磁電流を小さくすることによって励磁電力を節約する手法が開示されている。しかし、励磁電力が節約されたとしても、その結果、それ以上に駆動電力が増加すれば、システム全体としては省電力という結果を得ることができない。
【0011】
特許文献1では、これに加えて、静音目的を達成するため、要求される加振力が小さい場合には、冷却ブロアの回転数を小さくする点が開示されている。しかし、これも、励磁コイルにのみ着目して発熱の問題を解決しようとしているため、静音目的は達成できたとしても、駆動コイルの発熱量増加によって限界温度を超えてしまうという問題を解決できなかった。
【0012】
この発明は、上記のような問題点を考慮して、省電力、静音、精度向上、出力可能速度の増大などの運転関連値に注目し、振動発生機の動作限界を考慮しつつ、注目した運転関連値が所定の条件を満足するための運転条件を算出する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る運転条件決定装置のいくつかの側面を以下に述べる。
【0014】
(1)この発明に係る運転条件決定装置は、静磁場を生成する励磁コイルと、前記励磁コイルによって生成された静磁場に設けられ、電磁力により駆動される駆動コイルと、前記駆動コイルの駆動を供試体に伝えるための可動部と、前記励磁コイルおよび駆動コイルを冷却するための冷却器とを備えた振動発生機の運転条件を決定するための運転条件決定装置であって、可動部に供試体を装着し、基準励磁電流/電圧によって駆動させた時の、駆動電流/電圧の周波数と加速度の関係を示す駆動電流/電圧・加速度周波数特性を基準特性として取得する基準特性取得手段と、励磁電流/電圧の値を基準励磁電流/電圧から変化させた場合に、それぞれの想定励磁電流/電圧における駆動電流/電圧・加速度周波数特性を、前記基準特性に基づいて、想定特性として算出する想定特性算出手段と、前記想定特性に基づいて、それぞれの想定特性のもとで、要求される加速度特性を得るために必要な想定駆動電流/電圧の周波数特性を算出する想定駆動電流/電圧算出手段と、冷却器の冷却能力を想定冷却能力にて動作させた場合に、それぞれの想定冷却能力のもとで、前記想定励磁電流/電圧を励磁コイルに与えた場合の励磁コイルの想定温度、および想定駆動電流/電圧を駆動コイルに与えた場合の駆動コイルの想定温度を算出する想定温度算出手段と、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、当該組み合わせにて振動発生機を運転させたとした場合に、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えず、かつ、注目する運転関連値が所定の条件を満足するような組み合わせを運転条件として選択する運転条件選択手段と、選択した運転条件を出力する運転条件検出力手段とを備えている。
【0015】
したがって、温度条件を満足しつつ、注目する運転関連値が所定の条件を満たすような運転条件を決定することができる。
【0016】
(2)この発明に係る運転条件決定装置は、運転条件選択手段が、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えておらず、かつ、想定励磁電流/電圧における想定励磁電力と、想定駆動電流/電圧における想定駆動電力と、想定冷却能力を得るための想定冷却電力の合計電力が最小となる条件を満足する組み合わせを運転条件として選択することを特徴としている。
【0017】
したがって、システム全体としてみた場合の消費電力が最小となるような運転条件を設定できる。
【0018】
(3)この発明に係る運転条件決定装置は、運転条件選択手段が、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えておらず、かつ、冷却騒音が最小となる条件を満足する組み合わせを運転条件として選択することを特徴としている。
【0019】
したがって、システム全体としてみた場合の冷却騒音が最小となるような運転条件を設定できる。
【0020】
(4)この発明に係る運転条件決定装置は、基準特性取得手段が、少なくとも電圧または電流の異なる2以上の基準励磁電流/電圧について、2以上の基準特性を取得し、想定特性算出手段は、前記2以上の基準特性に基づいて想定特性を算出することを特徴としている。
【0021】
したがって、より正確に想定特性を推定することができる。
【0022】
(10)この発明に係る運転条件決定装置は、静磁場を生成する励磁コイルと、前記励磁コイルによって生成された静磁場に設けられ、電磁力により駆動される駆動コイルと、前記駆動コイルの駆動を供試体に伝えるための可動部と、前記励磁コイルおよび駆動コイルを冷却するための冷却器とを備えた振動発生機の運転条件を決定するための運転条件決定装置であって、前記振動発生機によって時間とともに加振周波数を変えて供試体に振動を与えるものであり、可動部に供試体を装着し、基準励磁電流/電圧によって駆動させた時の、駆動電流/電圧の周波数と加速度の関係を示す駆動電流/電圧・加速度周波数特性を基準特性として取得する基準特性取得手段と、前記基準特性に基づいて、要求される加速度特性を実現するために必要な駆動電流/電圧を加振周波数毎に算出し、最も大きな駆動電流/電圧を必要とする加振周波数を見いだす注目加振周波数算出手段と、励磁電流/電圧の値を基準励磁電流/電圧から変化させた場合に、それぞれの想定励磁電流/電圧における駆動電流/電圧・加速度周波数特性を、前記基準特性に基づいて、想定特性として算出する想定特性算出手段と、前記想定特性に基づいて、それぞれの想定特性のもとで、前記注目加振周波数に固定して加振したと仮定した場合に、当該注目加振周波数において要求される加速度特性を得るために必要な第1想定駆動電流/電圧を算出する第1想定駆動電流/電圧算出手段と、冷却器の冷却能力を想定冷却能力にて動作させた場合に、それぞれの想定冷却能力のもとで、前記想定励磁電流/電圧を励磁コイルに与えた場合の励磁コイルの想定温度、および想定駆動電流/電圧を駆動コイルに与えた場合の駆動コイルの想定温度を算出する第1想定温度算出手段と、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、当該組み合わせにて振動発生機を運転させたとした場合に、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えず、かつ、注目する運転関連値が所定の条件を満足するような組み合わせにおける想定励磁電流/電圧を励磁運転条件として選択する励磁運転条件選択手段と、励磁運転条件における想定励磁電流/電圧での駆動電流/電圧・加速度周波数特性に基づいて、時間とともに加振周波数を変えて振動させたとした場合に、要求加速度を満たすための第2想定駆動電流/電圧の時間的変化を算出する第2想定駆動電流/電圧算出手段と、冷却器の冷却能力を想定冷却能力にて動作させた場合に、それぞれの想定冷却能力のもとで、前記励磁運転条件による想定励磁電流/電圧を励磁コイルに与えた場合の励磁コイルの想定温度、および想定駆動電流/電圧を駆動コイルに与えた場合の駆動コイルの想定温度の時間的変化を算出する第2想定温度算出手段と、各想定冷却能力にて振動発生機を運転させたとした場合に、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えず、かつ、注目する運転関連値が所定の条件を満足するような想定冷却能力を冷却運転条件として選択する冷却運転条件選択手段と、前記励磁運転条件と前記冷却運転条件を運転条件として出力する運転条件出力手段とを備えている。
【0023】
したがって、掃引試験のように、時間的に加振周波数が変化するような場合においても、温度条件を満足しつつ、注目する運転関連値が所定の条件を満たすような運転条件を決定することができる。
【0024】
(11)この発明に係る運転条件決定装置は、運転条件選択手段が、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えておらず、かつ、想定励磁電流/電圧における想定励磁電力と、想定駆動電流/電圧における想定駆動電力と、想定冷却能力を得るための想定冷却電力の合計電力が最小となる条件を満足する組み合わせを運転条件として選択することを特徴としている。
【0025】
したがって、システム全体としてみた場合の消費電力が最小となるような運転条件を設定できる。
【0026】
(12)この発明に係る運転条件決定装置は、励磁運転条件選択手段が、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えておらず、かつ、想定励磁電流/電圧における想定励磁電力と、想定駆動電流/電圧における想定駆動電力と、想定冷却能力を得るための想定冷却電力の合計電力が最小となる条件を満足する組み合わせを運転条件として選択することを特徴としている。
【0027】
したがって、システム全体としてみた場合の冷却騒音が最小となるような運転条件を設定できる。
【0028】
(13)この発明に係る運転条件決定装置は、基準特性取得手段が、少なくとも電圧または電流の異なる2以上の基準励磁電流/電圧について、2以上の基準特性を取得し、想定特性算出手段は、前記2以上の基準特性に基づいて想定特性を算出することを特徴としている。
【0029】
したがって、より正確に想定特性を推定することができる。
【0030】
この発明において、「基準特性取得手段」は、実施形態においてはステップS2がこれに対応する。
【0031】
「想定特性算出手段」は、実施形態においてはステップS4がこれに対応する。
【0032】
「想定駆動電流/電圧算出手段」は、実施形態においてはステップS5がこれに対応する。なお、この明細書を通じて、「電流/電圧」は、電流または電圧またはその双方を意味する。
【0033】
「想定温度算出手段」は、実施形態においてはステップS9がこれに対応する。
【0034】
「運転条件選択手段」は、実施形態においてはステップS13やS15がこれに対応する。
【0035】
「プログラム」とは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソース形式のプログラム、圧縮処理がされたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む概念である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
一.第1の実施形態
1.全体的構成
この発明による運転条件決定装置100を用いた振動試験システムの構成を図3に示す。運転条件決定装置100は、目的に合致する好ましい運転条件を決定し、これに基づいて可変励磁電源26、可変ブロア電源28を制御する。この実施形態は、所望の周波数スペクトルを有する振動を供試体に与えて試験を行うランダム振動試験に適しているが、もちろん周波数を掃引して行う試験にも適用することができる。
【0037】
図4に、運転条件決定装置100の機能ブロック図を示す。基準特性取得手段32は、振動発生機1の可動部6に測定対象である供試体20を固定し、基準励磁電流/電圧を励磁コイル10に与えた時に、駆動電流/電圧の周波数と加速度の関係を示す駆動電流/電圧・加速度周波数特性を基準特性として取得する(図5AのH0参照)。
【0038】
既に基準特性がわかっており記録されている供試体20であれば、それを読み出すことによって取得する。
【0039】
また、基準特性がわかっていない供試体20であれば、振動制御器22に指令を与え、振動制御器22から基準特性を取得する。振動制御器22は、供試体20を固定した状態で、ホワイトノイズ相当のスペクトルを有する駆動電流/電圧を駆動コイルに与え、その時の振動を加速時センサ30によって応答信号として計測する。振動制御器22は、この応答信号の周波数スペクトルに基づいて、駆動電流/電圧の周波数と加速度の関係を示す駆動電流/電圧・加速度周波数特性を算出する。運転条件決定装置100は、振動制御器22が算出した駆動電流/電圧・加速度周波数特性を基準特性として取得する。
【0040】
想定特性算出手段34は、励磁電流/電圧を基準励磁電流/電圧から変えた想定励磁電流/電圧における、駆動信号・加速度周波数特性を予想し、想定特性として算出する。基準励磁電流が20Aであるとした場合に、たとえば、19A、18A・・・というように、1A刻みで想定励磁電流を決定し、それぞれの想定励磁電流について、基準特性をもとに、想定特性を計算する(図5AのH1、H2参照)。
【0041】
想定駆動電流/電圧算出手段36は、励磁コイル4に想定励磁電流/電圧を与えた場合について、想定特性に基づいて、要求される加速度特性(図5B参照)を実現するために、どのような駆動電流/電圧を与えればよいかを、想定励磁電流/電圧ごとに算出する。図5Cに、このようにして算出された想定駆動電流の周波数特性を示す。想定駆動電流I0は基準特性H0に対応し、想定駆動電流I1は基準特性H1に対応し、想定駆動電流I2は基準特性H2に対応している。
【0042】
想定温度算出手段38は、冷却器である冷却ブロア16の想定冷却能力を前提として、各想定励磁電流/電圧と各想定駆動電流/電圧によって振動発生機1を動作させた場合の、励磁コイル10、駆動コイル4の温度を推定する。想定温度算出手段38は、想定冷却能力を変えて、上記の温度推定を行う。
【0043】
運転条件選択手段40は、図6Aに示すように、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力を変えたときの、想定温度のテーブルを作成する。なお、このようなテーブルは、励磁コイル10、駆動コイル4のそれぞれについて作成される。さらに、図6Bに示すように、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力を変えたときの、励磁コイル4、駆動コイル10、冷却ブロア16での合計消費電力のテーブルを作成する。その上で、温度条件を満足し、注目する運転関連値が最もよい組み合わせを選択する。たとえば、静音性に着目するのであれば、温度条件を満足するもののうち、ブロア回転数が最も小さくなる想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の組み合わせを選択する。消費電力に着目するのであれば、温度条件を満足するもののうち、消費電力が最も小さくなる想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の組み合わせを選択する。
【0044】
運転条件出力手段42は、このようにして選択した運転条件に基づいて、可変励磁電源26、可変ブロア電源28を制御し、運転条件に示された励磁電流(電圧)の大きさ、冷却ブロア16の回転数を設定する。このような運転条件の下で、振動制御器22が、目標加速度と応答加速度とを比較して目標加速度が実現されるようにアンプ24に与える駆動信号を自動的に調整し、アンプ24からの出力によって試験要求が満たされるように振動発生機1を作動させる。これにより、消費電力や静音性などの注目する運転関連値を達成しつつ、要求される加速度特性を実現するように、振動試験を行うことが可能となる。
【0045】
2.ハードウエア構成
図7に、運転条件決定装置100をCPUを用いて実現した場合のハードウエア構成を示す。CPU54には、ディスプレイ50、メモリ52、ハードディスク56、キーボード/マウス58、CD−ROMドライブ59が接続されている。また、CPU54は、I/Oポート(図示せず)を介して、振動制御器22との信号のやりとりが可能となっている。また、I/Oポートを介して、可変励磁電源26、可変ブロア電源28を制御する事ができるようになっている。
【0046】
ハードディスク56には、オペレーティングシステム(OS)60、運転条件決定プログラム62が記録されている。OS60および運転条件決定プログラム62は、CD−ROM64に記録されていたものを、CD−ROMドライブ59を介して、ハードディスク56にインストールしたものである。運転条件決定プログラム62は、OS60と協働して、その機能を達成する。なお、OS60を用いずに、運転条件決定プログラム62だけで、その機能を発揮するようにしてもよい。
【0047】
3.運転条件決定プログラムの処理
図8に、運転条件決定プログラム62のフローチャートを示す。まず、ステップS1では、CPU54は、オペレータが振動制御器22に対して設定した要求加速度PSDを、振動制御器22から取得する。要求加速度である要求加速度PSDは、各周波数においての要求される加速度スペクトルを表したものであり、たとえば、図5Bのように示される。縦軸の単位は(m/s22/Hzである。mは長さの単位(メートル)、sは時間の単位(秒)、Hzは周波数の単位(ヘルツ)である。
【0048】
次に、CPU54は、振動制御器22に対し、基本特性を送信するように問い合わせる。これを受けた振動制御器22は、振動発生機1の可動部6に測定対象である供試体20を固定した状態で、基準励磁電流/電圧を励磁コイル10に与えた時に、駆動電流/電圧の周波数と加速度の関係を示す駆動電流/電圧・加速度周波数特性Hi(f)およびHe(f)を基準特性として取得する。CPU54は、この基準特性を振動制御器22から受けて、ハードディスク56に記録する(ステップS2)。基準特性は、たとえば、図5AのH0として示される。Hi(f)の縦軸の単位は、(m/s2)/Aである。Aは(駆動)電流の単位(アンペア)である。He(f)の縦軸の単位は、(m/s2)/Vである。Vは(駆動)電圧の単位(ボルト)である。
【0049】
次に、CPU54は、励磁電流を基準励磁電流よりも所定値変動させた想定励磁電流について、上記の基準特性に基づいて、想定特性を算出する(ステップS4)。この想定特性の算出は、以下のようにして行う。
【0050】
i(f)およびHe(f)に基づいて、ドライブコイルのインピーダンスZ(f)を、次の関係を使って計算する:
【0051】
【数1】

【0052】
励磁電流をIfをIf’に変化させたときの磁束密度B’を、下式によって求める:(なお、下式は実験によって予め算出しておいたものである)
【0053】
【数2】

【0054】
上式においてIは励磁電流(アンペア)であり、Bは磁束密度(テスラ)である。
【0055】
想定励磁電流条件下でのH’i(f)を、基本特性Hi(f)を使って、上記2式により算出する:
【0056】
【数3】

【0057】
このようにして、想定励磁電流のもとでの駆動電流・加速度周波数特性(定電流特性ともいう)H’i(f)を算出することができる。なお、駆動電流によって発生する力はBに比例するので、他の条件が同じであればHiはBに比例する。
【0058】
次に、想定励磁電流での磁束密度B’下でのドライブコイルのインピーダンスZ’(f)を計算する:
有効長lの駆動コイルに流れる駆動電流によって静磁場Bの中を運動する質量mの可動部(振動子と供試体)のモーショナルインピーダンスZmは、
【0059】
【数4】

【0060】
と表すことができる。ここにmは可動部の動的な質量であって複素数で表される量である。駆動コイル10の直流抵抗をR、インダクタンスをLとすると、この可動部の全インピーダンスZは、下記のように表わされる:
【0061】
【数5】

【0062】
これをmについて解くことにより、He(f)とHi(f)とを測定した運転状態における可動部の動的質量が計算できる:
【0063】
【数6】

【0064】
新しいB'のもとでのインピーダンスZ'を求めるには、上記で求まったmの値を使って、(A-5)式のBの代わりにB'を用いた次式を計算すればよい:
【0065】
【数7】

【0066】
(A-1)式の関係を使って、想定励磁電流下での駆動電圧・加速度周波数特性(定電圧特性ともいう)H’e(f)を、次式によって算出する:
【0067】
【数8】

【0068】
CPU54は、以上のようにして、基準特性に基づいて、想定励磁電流における想定特性(駆動電流・加速度周波数特性および駆動電圧・加速度周波数特性)を算出する。たとえば、想定特性は、図5AのH1やH2のように表される。
【0069】
次に、CPU54は、要求加速度PSDと想定特性に基づいて、必要な想定駆動電流および想定駆動電圧の周波数特性を算出する(ステップS5)。たとえば、図5CのI1やI2のように表される。ランダム振動の場合、縦軸は、想定駆動電流の場合にはA2/Hzであり、想定駆動電圧の場合にはV2/Hzである。CPU54は、想定駆動電流および想定駆動電圧のそれぞれについて、周波数に亘って積分を行い、実効値を求める。
【0070】
続いて、CPU54は、算出した想定駆動電流および想定駆動電圧の実効値が、アンプ24の限界内に収まっているかどうかを判断する。いずれか一方または両方が限界を超えている場合には、次の想定励磁電流についての検討に移る。
【0071】
想定駆動電流および想定駆動電圧の実効値が、いずれもアンプ24の限界内に収まっていれば、CPU54は、冷却ブロア16の回転数を変動させた場合の消費電力および温度の算出を行う。冷却ブロア16の回転数を、基準回転数から所定周波数毎に変化させた想定回転数のそれぞれの場合について、消費電力・温度を算出する。
【0072】
CPU54は、まず、基準回転数を対象回転数Vとして検討する。想定励磁電流If、回転数Vの時の、駆動コイル4での消費電力Pd、励磁コイル10での消費電力Pf、冷却ブロア16での消費電力Pbは、以下の式によって算出できる。
【0073】
Pd = Rd0[ 1 + cd( Tin - Td0 ) ] Id2/( 1 - Rd0 cd Id2 kd Vαd )

Pf = Rf0[ 1 + cf( Tin - Tfo ) ] If2/( 1 - Rf0 cf If2 kf Vαf )

Pb= Pb0(V/ V0)3

CPU54は、総消費電力PtをPd,Pf,Pbの和として算出する。
【0074】
上式は、以下のようにして導かれるものである。駆動コイル10に発生する単位時間当たりのジュール熱(消費電力)をPd[W]、駆動電流をId[A]と書くと、
Pd = Rd Id2 (B-1)
ここにRdは駆動コイルの温度Td[K]における直流抵抗であって、基準温度Td0における値をRd0と書けば、駆動コイルの電気抵抗の温度係数をcdと書いて、次式で与えられる;
Rd = Rd0[ 1 + cd( Td - Td0 ) ] (B-2)
一方、駆動コイルの温度Tdはさまざまな要因に複雑に影響されて定まるのであろうが、最も基本的には、駆動コイルでの消費電力Pdに比例するであろう。また、冷却風を発生するブロアの回転数Vには反比例するであろう、と考えられる。そこで、実験的に決めるパラメータ(kdd)を使って、次式が成り立つと仮定する:
Td - Tin = kd Pd/Vαd (B-3)
ここに、Tinは、冷却空気の空気取り入れ口における温度である。
【0075】
上記の3本の式から、電流Idとブロア回転数Vの関数として消費電力Pd を与える次の式を得る:
Pd = Rd0[ 1 + cd( Tin - Td0 ) ] Id2/( 1 - Rd0 cd Id2 kd Vαd ) (B-4)
まったく同様にして、励磁コイルについても、上記に相当する下式が得られる:
Pf = Rf If2 (B-5)
Rf = Rf0[ 1 + cf( Tf - Tf0 ) ] (B-6)
Tf - Tin = kf P/Vαf (B-7)
Pf = Rf0[ 1 + cf( Tin - Tf0 ) ] If2/( 1 - Rf0 cf If2 kf Vαf ) (B-8)
ブロアの消費電力をPbと書くと、ブロアの定格回転数をV0[Hz]、定格消費電力をPb0として、回転数をVに落とした場合の消費電力は、概ね下記のように表わされる:
Pb= Pb0(V/ V0)3 (B-9)
ある条件で振動発生機を稼動させるために必要な消費電力をPtと書くと、Ptは以上の消費電力の総和として表わされる:
Pt = Pd + Pf + Pb (B-10)
なお、上記では駆動コイルと励磁コイルの間の相互作用を無視した式を掲げたが、より一般的にはこれを勘定に入れることが必要であり、その場合式(B-3)および式(B-7)の関係は次式のように書ける:
Td = T1 - Tin = kdd Pd/Vαdd + kdf Pf/Vαdf
Tf = T2 - Tin = kfd Pd/Vαfd + kff Pf/Vαff (B-3A)
すなわち、Td Tfは、連立方程式(B-3A)の解として定まることになるが、ここでは説明の簡略化のため、簡略化した式(B-3)および式(B-7)に基づいて説明を行う。
【0076】
CPU54は、算出した総消費電力Ptを、ハードディスク56のテーブル(図6B)の、想定励磁電流と冷却ブロア回転数によって決まる該当部分に記録する。
【0077】
次に、CPU54は、当該想定励磁電流、冷却ブロア回転数における、励磁コイル4、駆動コイル10の温度を下式により計算する(ステップS9)。
【0078】
Tf = kf Pf/Vαf + Tin
Td = kd Pd/Vαd + Tin
これらの式は、前述の(B-3)(B-7)式より算出されたものである。
【0079】
続いて、CPU54は、算出した励磁コイル温度Tf および駆動コイル温度Td が、制限温度以内にあるかどうかを判断する(ステップS10)。いずれか一方でも、制限温度を超えている場合には、次のブロア回転数についての検討に移る。この際、CPU54は、算出した総消費電力Pt、励磁コイル温度Tf および駆動コイル温度Td を、ハードディスク56のテーブル(図6A、B)の、想定励磁電流と冷却ブロア回転数によって決まる該当部分に記録するとともに、運転不可能であることを示すマーク(NGなど)を併せて記録する。
【0080】
双方とも制限温度内であれば、CPU54は、算出した総消費電力Pt、励磁コイル温度Tf および駆動コイル温度Td を、ハードディスク56のテーブル(図6A、B)の、想定励磁電流と冷却ブロア回転数によって決まる該当部分に記録する(ステップS11)。
【0081】
次に、CPU54は、検討すべきブロア回転数が残っているかどうかを判断する(ステップS12)。想定した全てのブロア回転数についての検討が終わっていなければ、次の想定ブロア回転数を対象として、ステップS7以下を再び実行する。これにより、図6A、Bのテーブルの欄が縦に埋められることになる。
【0082】
全ての想定ブロア回転数についての検討を終えると、次の想定励磁電流を対象として、ステップS3以下を再び実行する。これを繰り返すことにより、図6A、Bのテーブルが全て埋められることになる。
【0083】
全ての想定励磁電流とブロア回転数の組み合わせについての検討を終えると、CPU54は、このテーブルを参照して最適条件の検索を行う。たとえば、省エネルギーに注目するモードであれば、図6Aのテーブルにおいて(NG)が記載されていない(温度条件を満足している)もののなかで、図6Bのテーブルによって最も消費電力が小さいものを、運転条件として選択する(ステップS13)。CPU54は、選択した運転条件を、図9Aに示すようにディスプレイ50に表示する。基準励磁電流を用いた場合との消費電力の比較を算出して表示することにより、その効果をオペレータが理解しやすいようにしている。
【0084】
続いて、オペレータがキーボード/マウス58から、この運転条件での運転を指示すると、CPU54は、選択した想定励磁電流となるように可変励磁電源26を制御し、選択した想定ブロア回転数となるように可変ブロア電源28を制御する。この状態にて、試験が実行される。
【0085】
たとえば、低騒音に注目するモードであれば、図6Aのテーブルにおいて(NG)が記載されていない(温度条件を満足している)もののなかで、図6Bのテーブルによって最もブロア回転数が小さいものを、運転条件として選択する(ステップS15)。CPU54は、選択した運転条件を、図9Bに示すようにディスプレイ50に表示する。基準励磁電流を用いた場合とのブロアの比較を算出して表示することにより、その効果をオペレータが理解しやすいようにしている。
【0086】
続いて、オペレータがキーボード/マウス58から、この運転条件での運転を指示すると、CPU54は、選択した想定励磁電流となるように可変励磁電源26を制御し、選択した想定ブロア回転数となるように可変ブロア電源28を制御する。この状態にて、試験が実行される。
【0087】
なお、上記のモード切換は、オペレータがキーボード/マウス58によって指定できるようになっている。また、省エネルギーモードによる計算と、低騒音モードによる計算の双方をディスプレイに表示し、オペレータに選択させるようにしてもよい。
【0088】
4.その他の実施形態
上記実施形態では、振動制御器22が基準特性を算出するようにしている。しかし、運転条件決定装置100自身が、基準特性を算出するようにしてもよい。
【0089】
上記実施形態では、CPU54は、最適の条件のものを選択するようにしている。しかし、所定の基準を満たす(たとえば、消費電力が所定電力以下、ブロア回転数が所定回転数以下など)ものを全て選択して表示し、オペレータに選ばせるようにしてもよい。また、消費電力、ブロア回転数の双方を考慮して運転条件を選択するようにしてもよい。この場合、消費電力、ブロア回転数ともに規格化し、それぞれにウエイト付けを行って、点数の最も高い(低い)ものを選択するようにすればよい。
【0090】
上記実施形態では、図6Aの予想温度が制限温度内のものから選択を行っている。しかし、予測誤差を考慮して、予想温度が制限温度の所定割合以内(たとえば、9割以内)に収まっているものから選択を行うようにしてもよい。
【0091】
上記実施形態では、消費電力、ブロア回転数に着目して適切な運転条件を選択するようにした。しかし、振動制御器22からアンプ24に与えられる駆動信号が、アンプ24によって最も歪みが小さく増幅される範囲内にあるかどうかも条件の一つとしてもよい。この場合、振動制御器22からの駆動信号の大きさを見てもよいが、アンプ24から出力される駆動信号の大きさを見て判断することもできる。
【0092】
上記実施形態では、冷却能力すなわりブロア回転数によって冷却騒音(冷却装置の運転によって生じる騒音)を推定しているが、冷却騒音を直接測定するようにしてもよい。
【0093】
上記の変形例は、第二の実施形態にも適用することができる。
【0094】
二.第二の実施形態
1.全体的構成
この発明による運転条件決定装置100を用いた振動試験システムの第二の実施形態を図3に示す。運転条件決定装置100は、目的に合致する好ましい運転条件を決定し、これに基づいて可変励磁電源26、可変ブロア電源28を制御する。この実施形態は、周波数を時間とともに変化させて行う試験に適しているが、所望の周波数スペクトルを有する振動を供試体に与えて試験を行うランダム振動試験にも適用することができる。
【0095】
この実施形態による運転条件決定装置100のブロック図を図10に示す。基準特性取得手段52は、振動発生機1の可動部6に測定対象である供試体20を固定し、基準励磁電流/電圧を励磁コイル10に与えた時に、駆動電流/電圧の周波数と加速度の関係を示す駆動電流/電圧・加速度周波数特性を基準特性として取得する(図5AのH0参照)。
【0096】
既に基準特性がわかっており記録されている供試体20であれば、それを読み出すことによって取得する。また、基準特性がわかっていない供試体20であれば、第1の実施形態と同じようにして、実測により駆動電流/電圧・加速度周波数特性を算出する。
【0097】
第1想定特性算出手段56は、励磁電流/電圧を基準励磁電流/電圧から変えた想定励磁電流/電圧における、駆動電流/電圧・加速度周波数特性を予想し、想定特性として算出する。基準励磁電流が20Aであるとした場合に、たとえば、19A、18A・・・というように、1A刻みで想定励磁電流を決定し、それぞれの想定励磁電流について、基準特性をもとに、想定特性を計算する(図5AのH1、H2参照)。
【0098】
注目加振周波数算出手段54は、基準特性に基づいて、要求される加速度特性を実現するために必要な駆動電流/電圧を加振周波数毎に算出し、最も大きな駆動電流/電圧を必要とする注目加振周波数を見いだす。
【0099】
第1想定駆動電流/電圧算出手段58は、各想定励磁電流/電圧における想定特性のもとで、注目加振周波数に固定して加振したと仮定した場合に、その注目加振周波数において要求される加速度特性を得るために必要な第1想定駆動電流/電圧を算出する。これにより、掃引周波数のうちで最も厳しい条件の周波数で連続的に振動をさせた場合の、想定駆動電流/電圧が想定励磁電流/電圧ごとに算出される。
【0100】
想定温度算出手段60は、冷却器である冷却ブロア16の想定冷却能力を前提として、各想定励磁電流/電圧と各想定駆動電流/電圧によって振動発生機1を動作させた場合の、励磁コイル10、駆動コイル4の温度を推定する。想定温度算出手段60は、想定冷却能力を変えて、上記の温度推定を行う。
【0101】
励磁運転条件選択手段62は、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力を変えたときの、想定温度のテーブルを作成する。なお、このようなテーブルは、励磁コイル10、駆動コイル4のそれぞれについて作成される。さらに、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力を変えたときの、励磁コイル4、駆動コイル10、冷却ブロア16での合計消費電力のテーブルを作成する。その上で、温度条件を満足し、注目する運転関連値が最もよい組み合わせを選択する。たとえば、静音性に着目するのであれば、温度条件を満足するもののうち、ブロア回転数が最も小さくなる想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の組み合わせを選択する。消費電力に着目するのであれば、温度条件を満足するもののうち、消費電力が最も小さくなる想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の組み合わせを選択する。励磁運転条件選択手段62は、このようにして選択した組み合わせにおける想定励磁電流/電圧を、励磁運転条件として決定する。
【0102】
第2想定駆動電流/電圧算出手段64は、決定された想定励磁電流/電圧における駆動電流/電圧・加速度周波数特性に基づいて、要求に従って時間とともに加振周波数を変えて振動させたとした場合に、要求加速度を満たすための第2想定駆動電流/電圧の時間的変化を算出する。
【0103】
第2想定温度算出手段66は、冷却器の冷却能力を複数想定し、それぞれの冷却能力のもとで、前記想定励磁電流/電圧を励磁コイルに与えた場合の励磁コイルの想定温度、および第2想定駆動電流/電圧を駆動コイルに与えた場合の駆動コイルの想定温度の時間的変化を算出する。
【0104】
冷却運転条件選択手段68は、それぞれの想定冷却能力にて振動発生機を運転させたとした場合に、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えず、かつ、注目する運転関連値が所定の条件を満足するような想定冷却能力を冷却運転条件として選択する。
【0105】
運転条件出力手段70は、励磁運転条件選択手段62の選択した励磁運転条件と、冷却運転条件選択手段68の選択した冷却運転条件を、運転条件として出力する。
【0106】
2.ハードウエア構成
ハードウエア構成は、図7に示す第一の実施形態と同様である。ただし、この実施形態では、ハードディスク56に記録された運転条件決定プログラム62が異なっている。
【0107】
3.運転条件決定プログラムの処理
図11に、運転条件決定プログラム62のフローチャートを示す。ここでは、図12に示すように時間とともに加振周波数が変化する試験(掃引試験)を行う場合の運転条件の設定について説明する。図12から分かるように、この試験では、開始周波数から振動周波数を徐々に上げていき所定の周波数に達すると、今度は周波数を徐々に下げて開始周波数に戻ってゆく動作を行うか(図12A)、あるいは直ちに再び開始周波数に戻って同じ掃引動作を繰り返すようになっている(図12B)。
【0108】
まず、ステップS51では、CPU54は、オペレータが振動制御器22に対して設定した要求加速度レベルデータを、振動制御器22から取得する。たとえば、図13に示すように、振動周波数と加速度との関係として要求加速度レベルデータが与えられる。縦軸の単位はm/s2である。mは長さの単位(ミリメートル)、sは時間の単位(秒)、Hzは周波数の単位(ヘルツ)である。
【0109】
次に、CPU54は、振動制御器22から、基本励磁電流の下における基本特性を取得する(ステップS52)。基本特性の取得処理については、第一の実施形態と同様である。CPU54は、振動制御器22から受けた基本特性を、ハードディスク56に記録する。基準特性は、たとえば、図5AのH0として示される。Hi(f)の縦軸の単位は、(m/s2)/Aである。Aは駆動電流(アンペア)である。He(f)の縦軸の単位は、(m/s2)/Vである。Vは駆動電圧(ボルト)である。
【0110】
次に、CPU54は、基本励磁電流の下における基本特性に基づいて、要求加速度レベルを達成するために必要な駆動電流を各振動周波数毎に算出する。たとえば、図14に示すような駆動電流の周波数特性が得られる。続いて、CPU54は、得られた駆動電流の周波数特性に基づいて、最も大きな駆動電流を必要とする振動周波数f0を見いだす(ステップS53)。
【0111】
このようにして、掃引試験において最も条件の厳しい(駆動電流が大きく発熱が大きくなる可能性が高い)振動周波数f0を決定する。
【0112】
次に、CPU54は、当該振動周波数f0にて定常的に加振したと仮定し、第一次最適化処理を実行する(ステップS54)。第一次最適化処理の詳細を図15に示す。この第一次最適化処理は、第一実施形態における図8のステップS3以下と基本的に同じである。ただし、第一実施形態では、ステップS4において想定励磁電流に基づいて想定特性を周波数特性として算出したが、本実施形態のステップS82においては、上記振動周波数f0のみの想定特性を算出すれば十分である。また、第一実施形態では、ステップS5において必要駆動電流のパワースペクトル密度からRMS値を算出しているが、本実施形態でのステップS83では、振動周波数f0における必要駆動電流のRMS値のみを算出すればよい。その他の処理は、第一実施形態におけるステップS3以下と同様である。
【0113】
第一次最適化処理により、たとえば注目する運転関連値が消費電力である場合、温度条件を満足しつつ最も消費電力の少ない運転条件が得られる。CPU54は、この運転条件に含まれる想定励磁電流If1を、励磁運転条件として記録する(ステップS91)。
【0114】
注目する運転関連値が騒音である場合、同様にして、温度条件を満たしつつ最も騒音が少なくなるような想定励磁電流If1が励磁運転条件として選択される。
【0115】
上記のようにして、掃引を行わず振動周波数f0にて定常的に加振したと仮定した場合における、最適な励磁電流If1を得ることができる。
【0116】
次に、CPU54は第二次最適化を行う(図11のステップS55以下)。つまり、励磁運転条件として選択した想定励磁電流If1のもとで、掃引試験を行ったと仮定した場合につき、温度条件を満たしつつ注目する運転関連値が最適になる条件を探し出す。
【0117】
まず、想定励磁電流If1の下での加振器の想定特性を、基本特性に基づいて算出する(ステップS55)。これは、第一実施形態のステップS3と同じ方法によって求めることができる。次に、CPU54は、要求加速度レベルデータと想定特性とに基づいて、想定駆動電流の周波数特性を算出する。掃引試験であるから、この周波数特性は時間的変化に対応している。そして、CPU54は、想定駆動電流Id(t)の時間的変化に基づいてRMS値を算出する(ステップS56)。
【0118】
続いてCPU54は、想定ブロア回転数を変化させて、それぞれの場合において温度条件を満足するかどうかを検討する(ステップS57〜60)。まず、前述の運転条件中のブロア回転数にて、第一実施形態にて用いた温度計算モデル(図8のステップS9参照)にしたがって、想定励磁電流If1とし、想定駆動電流Id(t)が時系列として印加されたときの、励磁コイルの温度推定値Tf(t)および駆動コイルの温度推定値Td(t)を算出する(ステップS58)。励磁コイルの温度推定値Tf(t)および駆動コイルの温度推定値Td(t)は時系列データとして得られる。
【0119】
CPU54は、時系列である励磁コイルの温度推定値Tf(t)から最も高い温度Tfを選択する。同様に、時系列である駆動コイルの温度推定値Td(t)から最も高い温度Tdを選択する(ステップS59)。
【0120】
次に、このようにして選択した最高温度Tfdが、それぞれ制限温度以内であるかどうかを判断する(ステップS60)。双方とも制限温度以内であれば、ブロア回転数を低下させて、ステップS57以下を実行する。
【0121】
いずれか一方または両方が制限温度を超えていれば、ブロア回転数を増加させてステップS57以下を実行する。
【0122】
以上の処理を繰り返し、制限温度内であって最もブロア回転数の小さいものを選択する。このようにして、最適なブロア回転数が冷却運転条件として得られる。
【0123】
CPU54は、ステップS54において算出した励磁運転条件における励磁電流と、ステップS61において算出した冷却運転条件におけるブロア回転数を、運転条件として出力する。また、第一の実施形態と同じように、この時の消費電力を出力する。
【0124】
三.その他の実施形態
上記実施形態では、省電力、静音など一つの運転関連値に着目して運転条件を選択している。しかし、複数の運転関連値を組み合わせて運転条件を選択するようにしてもよい。たとえば、基本励磁電流・基本ブロア回転における電力からの省電力割合(減少%)と、基本ブロア回転からの回転数低下割合(減少%)の合計値が最も大きいものを選択するようにしてもよい。また、それぞれの運転関連値にウエイトを付して選択するようにしてもよい。
【0125】
上記実施形態では、空冷による振動試験装置について説明したが、水冷による振動試験装置についても適用することができる。
【0126】
また、発熱量に比べて冷却能力が十分である場合には、温度条件を考慮せずに所望の運転関連値(消費電力やブロア回転数)を達成できる条件を選択するようにすればよい。
【0127】
また、上記各実施形態では、励磁コイルがあって励磁電流を変化できる場合について説明したが、永久磁石によって励磁するような振動試験機にも適用することができる。この場合には、駆動電流と冷却能力の組み合わせの最適値を求めることになる。
【0128】
上記各実施形態によって算出した運転条件によって実際に運転を行っている際に、駆動コイルおよび励磁コイルの温度を測定し、実測温度と推定温度(運転条件決定時に計算した値)との差を求め、この差が所定値を超えた場合には、運転条件を変更するようにしてもよい。
【0129】
この際、駆動コイルの実測温度は、センサなどを設けて測定してもよいが、実測した駆動電流と実測した駆動電圧によって算出するようにしてもよい。励磁コイルについても同様である。
【0130】
上記各実施形態では、励磁・駆動コイルの温度を運転条件選択のための制約条件としている。しかし、これに加えて(あるいは単独で)、想定励磁電流/電圧の電流値または電圧値が限界値を超えていないこと、および/または、想定駆動電流/電圧の電流値または電圧値が限界値を超えていないことを、制約条件としてもよい。
【0131】
上記各実施形態では、励磁電流を変化させたうえで、最適な運転条件を探し出すようにしている。このような考え方は、ショック試験(瞬発的に大きな加速度を与える試験)にも適用することができる。大きな加速度を得るためには、励磁電流を大きくした方が有利である。しかし、目標とする加速度波形が表す運動が要求している速度が非常に大きい場合には、大きな励磁電流によって磁気回路空隙に大きな磁束密度が生じるため、その中を運動するコイルに発生する逆起電力が大きくなり、それに打ち勝って駆動電流を流すために大きな駆動電圧が必要になるが、アンプ定格の制限によりこれが不足することがある。このような場合には、逆に、加速度要求の許す範囲で標準値よりも小さな励磁電流を設定して、アンプの駆動電圧の不足を解決して、標準設定では不可能であった加振実施を可能にすることができる場合がある。すなわち、上述してきた例では最適化の過程は消費電力や発生騒音を最小化することについて述べたが、ここに述べた例のように、実現する加振状態が要求する速度要求に合わせて励磁電流の最適化を行うこともできる。
【0132】
上記各実施形態では、励磁電流、励磁電圧に着目して運転条件を決定しているが、励磁電圧、駆動電圧に着目しても同様の決定を行うことができる。
【0133】
上記各実施形態では、図4、図10の各機能をCPUを用いて実現したが、その一部または全部をハードウエア回路のみによって実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】動電式振動発生機(空冷式)の構造を示す図である。
【図2】従来の振動試験システムの構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による振動試験システムの構成を示す図である。
【図4】第一実施形態による運転条件決定装置の機能ブロック図である。
【図5】図5Aは、基本特性、想定特性を示すグラフである。図5Bは、要求加速度を示すグラフである。図5Cは、必要な駆動電流を示すグラフである。
【図6】運転条件を判定するためのテーブルである。
【図7】運転条件決定装置のハードウエア構成である。
【図8】運転条件決定プログラム62のフローチャートである。
【図9】運転条件設定の効果を示す画面の表示例である。
【図10】第二実施形態による運転条件決定装置の機能ブロック図である。
【図11】運転条件決定プログラム62のフローチャートである。
【図12】掃引試験における経過時間と加振周波数との関係を示すグラフである。
【図13】要求加速度レベルを示すグラフである。
【図14】要求加速度を実現するための駆動電流を示すグラフである。
【図15】第一次最適化処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0135】
32・・・基準特性取得手段
34・・・想定特性算出手段
36・・・想定駆動値算出手段
38・・・想定温度算出手段
40・・・運転条件選択手段
42・・・運転条件出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場を生成する励磁コイルと、前記励磁コイルによって生成された静磁場に設けられ、電磁力により駆動される駆動コイルと、前記駆動コイルの駆動力を供試体に伝えるための可動部と、前記励磁コイルおよび駆動コイルを冷却するための冷却器とを備えた振動発生機の運転条件を決定するための運転条件決定装置であって、
可動部に供試体を装着し、基準励磁電流/電圧によって駆動させた時の、駆動電流/電圧の周波数と加速度の関係を示す駆動電流/電圧・加速度周波数特性を基準特性として取得する基準特性取得手段と、
励磁電流/電圧の値を基準励磁電流/電圧から変化させた場合に、それぞれの想定励磁電流/電圧における駆動電流/電圧・加速度周波数特性を、前記基準特性に基づいて、想定特性として算出する想定特性算出手段と、
前記想定特性に基づいて、それぞれの想定特性のもとで、要求される加速度特性を得るために必要な想定駆動電流/電圧の周波数特性を算出する想定駆動電流/電圧算出手段と、
冷却器の冷却能力を想定冷却能力にて動作させた場合に、それぞれの想定冷却能力のもとで、前記想定励磁電流/電圧を励磁コイルに与えた場合の励磁コイルの想定温度、および想定駆動電流/電圧を駆動コイルに与えた場合の駆動コイルの想定温度を算出する想定温度算出手段と、
想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、当該組み合わせにて振動発生機を運転させたとした場合に、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えず、かつ、注目する運転関連値が所定の条件を満足するような組み合わせを運転条件として選択する運転条件選択手段と、
選択した運転条件を出力する運転条件検出力手段と、
を備えた運転条件決定装置。
【請求項2】
請求項1の運転条件決定装置において、
前記運転条件選択手段は、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えておらず、かつ、想定励磁電流/電圧における想定励磁電力と、想定駆動電流/電圧における想定駆動電力と、想定冷却能力を得るための想定冷却電力の合計電力が最小となる条件を満足する組み合わせを運転条件として選択することを特徴とする運転条件決定装置。
【請求項3】
請求項1の運転条件決定装置において、
前記運転条件選択手段は、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えておらず、かつ、冷却騒音が最小となる条件を満足する組み合わせを運転条件として選択することを特徴とする運転条件決定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの運転条件決定装置において、
前記基準特性取得手段は、少なくとも電圧または電流の異なる2以上の基準励磁電流/電圧について、2以上の基準特性を取得し、
前記想定特性算出手段は、前記2以上の基準特性に基づいて想定特性を算出することを特徴とする運転条件決定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの運転条件決定装置を備え、当該運転条件決定装置によって決定された運転条件に基づいて、振動発生機の運転を制御する運転制御装置。
【請求項6】
静磁場を生成する励磁コイルと、前記励磁コイルによって生成された静磁場に設けられ、電磁力により駆動される駆動コイルと、前記駆動コイルの駆動力を供試体に伝えるための可動部と、前記励磁コイルおよび駆動コイルを冷却するための冷却器とを備えた振動発生機の運転条件を決定するための運転条件決定装置をコンピュータによって実現するための運転条件決定プログラムであって、
可動部に供試体を装着し、基準励磁電流/電圧によって駆動させた時の、駆動電流/電圧の周波数と加速度の関係を示す駆動電流/電圧・加速度周波数特性を基準特性として取得する基準特性取得手段と、
励磁電流/電圧の値を基準励磁電流/電圧から変化させた場合に、それぞれの想定励磁電流/電圧における駆動電流/電圧・加速度周波数特性を、前記基準特性に基づいて、想定特性として算出する想定特性算出手段と、
前記想定特性に基づいて、それぞれの想定特性のもとで、要求される加速度特性を得るために必要な想定駆動電流/電圧の周波数特性を算出する想定駆動電流/電圧算出手段と、
冷却器の冷却能力を想定冷却能力にて動作させた場合に、それぞれの想定冷却能力のもとで、前記想定励磁電流/電圧を励磁コイルに与えた場合の励磁コイルの想定温度、および想定駆動電流/電圧を駆動コイルに与えた場合の駆動コイルの想定温度を算出する想定温度算出手段と、
想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、当該組み合わせにて振動発生機を運転させたとした場合に、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えず、かつ、注目する運転関連値が所定の条件を満足するような組み合わせを運転条件として選択する運転条件選択手段と、
選択した運転条件を出力する運転条件検出力手段と、
をコンピュータによって実現するための運転条件決定プログラム。
【請求項7】
請求項6の運転条件決定プログラムにおいて、
前記運転条件選択手段は、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えておらず、かつ、想定励磁電流/電圧における想定励磁電力と、想定駆動電流/電圧における想定駆動電力と、想定冷却能力を得るための想定冷却電力の合計電力が最小となる条件を満足する組み合わせを運転条件として選択することを特徴とする運転条件決定プログラム。
【請求項8】
請求項7の運転条件決定プログラムにおいて、
前記運転条件選択手段は、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えておらず、かつ、冷却騒音が最小となる条件を満足する組み合わせを運転条件として選択することを特徴とする運転条件決定プログラム。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかの運転条件決定プログラムにおいて、
前記基準特性取得手段は、少なくとも電圧または電流の異なる2以上の基準励磁電流/電圧について、2以上の基準特性を取得し、
前記想定特性算出手段は、前記2以上の基準特性に基づいて想定特性を算出することを特徴とする運転条件決定プログラム。
【請求項10】
静磁場を生成する励磁コイルと、前記励磁コイルによって生成された静磁場に設けられ、電磁力により駆動される駆動コイルと、前記駆動コイルの駆動力を供試体に伝えるための可動部と、前記励磁コイルおよび駆動コイルを冷却するための冷却器とを備えた振動発生機の運転条件を決定するための運転条件決定装置であって、
前記振動発生機によって時間とともに加振周波数を変えて供試体に振動を与えるものであり、
可動部に供試体を装着し、基準励磁電流/電圧によって駆動させた時の、駆動電流/電圧の周波数と加速度の関係を示す駆動電流/電圧・加速度周波数特性を基準特性として取得する基準特性取得手段と、
前記基準特性に基づいて、要求される加速度特性を実現するために必要な駆動電流/電圧を加振周波数毎に算出し、最も大きな駆動電流/電圧を必要とする加振周波数を見いだす注目加振周波数算出手段と、
励磁電流/電圧の値を基準励磁電流/電圧から変化させた場合に、それぞれの想定励磁電流/電圧における駆動電流/電圧・加速度周波数特性を、前記基準特性に基づいて、想定特性として算出する想定特性算出手段と、
前記想定特性に基づいて、それぞれの想定特性のもとで、前記注目加振周波数に固定して加振したと仮定した場合に、当該注目加振周波数において要求される加速度特性を得るために必要な第1想定駆動電流/電圧を算出する第1想定駆動電流/電圧算出手段と、
冷却器の冷却能力を想定冷却能力にて動作させた場合に、それぞれの想定冷却能力のもとで、前記想定励磁電流/電圧を励磁コイルに与えた場合の励磁コイルの想定温度、および想定駆動電流/電圧を駆動コイルに与えた場合の駆動コイルの想定温度を算出する第1想定温度算出手段と、
想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、当該組み合わせにて振動発生機を運転させたとした場合に、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えず、かつ、注目する運転関連値が所定の条件を満足するような組み合わせにおける想定励磁電流/電圧を励磁運転条件として選択する励磁運転条件選択手段と、
励磁運転条件における想定励磁電流/電圧での駆動電流/電圧・加速度周波数特性に基づいて、時間とともに加振周波数を変えて振動させたとした場合に、要求加速度を満たすための第2想定駆動電流/電圧の時間的変化を算出する第2想定駆動電流/電圧算出手段と、
冷却器の冷却能力を想定冷却能力にて動作させた場合に、それぞれの想定冷却能力のもとで、前記励磁運転条件による想定励磁電流/電圧を励磁コイルに与えた場合の励磁コイルの想定温度、および想定駆動電流/電圧を駆動コイルに与えた場合の駆動コイルの想定温度の時間的変化を算出する第2想定温度算出手段と、
各想定冷却能力にて振動発生機を運転させたとした場合に、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えず、かつ、注目する運転関連値が所定の条件を満足するような想定冷却能力を冷却運転条件として選択する冷却運転条件選択手段と、
前記励磁運転条件と前記冷却運転条件を運転条件として出力する運転条件出力手段と、
を備えた運転条件決定装置。
【請求項11】
請求項10の運転条件決定装置において、
前記励磁運転条件選択手段は、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えておらず、かつ、想定励磁電流/電圧における想定励磁電力と、想定駆動電流/電圧における想定駆動電力と、想定冷却能力を得るための想定冷却電力の合計電力が最小となる条件を満足する組み合わせを運転条件として選択することを特徴とする運転条件決定装置。
【請求項12】
請求項10の運転条件決定装置において、
前記運転条件選択手段は、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えておらず、かつ、冷却騒音が最小となる条件を満足する組み合わせを運転条件として選択することを特徴とする運転条件決定装置。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかの運転条件決定装置において、
前記基準特性取得手段は、少なくとも電圧または電流の異なる2以上の基準励磁電流/電圧について、2以上の基準特性を取得し、
前記想定特性算出手段は、前記2以上の基準特性に基づいて想定特性を算出することを特徴とする運転条件決定装置。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれかの運転条件決定装置を備え、当該運転条件決定装置によって決定された運転条件に基づいて、振動発生機の運転を制御する運転制御装置。
【請求項15】
静磁場を生成する励磁コイルと、前記励磁コイルによって生成された静磁場に設けられ、電磁力により駆動される駆動コイルと、前記駆動コイルの駆動力を供試体に伝えるための可動部と、前記励磁コイルおよび駆動コイルを冷却するための冷却器とを備えた振動発生機の運転条件を決定するための運転条件決定装置をコンピュータによって実現するための運転条件決定プログラムであって、
前記振動発生機によって、前記供試体に対し時間とともに加振周波数を変えて供試体に振動を与えるものであり、
可動部に供試体を装着し、基準励磁電流/電圧によって駆動させた時の、駆動電流/電圧の周波数と加速度の関係を示す駆動電流/電圧・加速度周波数特性を基準特性として取得する基準特性取得手段と、
前記基準特性に基づいて、要求される加速度特性を実現するために必要な駆動電流/電圧を加振周波数毎に算出し、最も大きな駆動電流/電圧を必要とする加振周波数を見いだす注目加振周波数算出手段と、
励磁電流/電圧の値を基準励磁電流/電圧から変化させた場合に、それぞれの想定励磁電流/電圧における駆動電流/電圧・加速度周波数特性を、前記基準特性に基づいて、想定特性として算出する想定特性算出手段と、
前記想定特性に基づいて、それぞれの想定特性のもとで、前記注目加振周波数に固定して加振したと仮定した場合に、当該注目加振周波数において要求される加速度特性を得るために必要な第1想定駆動電流/電圧を算出する第1想定駆動電流/電圧算出手段と、
冷却器の冷却能力を想定冷却能力にて動作させた場合に、それぞれの想定冷却能力のもとで、前記想定励磁電流/電圧を励磁コイルに与えた場合の励磁コイルの想定温度、および想定駆動電流/電圧を駆動コイルに与えた場合の駆動コイルの想定温度を算出する第1想定温度算出手段と、
想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、当該組み合わせにて振動発生機を運転させたとした場合に、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えず、かつ、注目する運転関連値が所定の条件を満足するような組み合わせにおける想定励磁電流/電圧を励磁運転条件として選択する励磁運転条件選択手段と、
励磁運転条件における想定励磁電流/電圧での駆動電流/電圧・加速度周波数特性に基づいて、時間とともに加振周波数を変えて振動させたとした場合に、要求加速度を満たすための第2想定駆動電流/電圧の時間的変化を算出する第2想定駆動電流/電圧算出手段と、
冷却器の冷却能力を想定冷却能力にて動作させた場合に、それぞれの想定冷却能力のもとで、前記励磁運転条件による想定励磁電流/電圧を励磁コイルに与えた場合の励磁コイルの想定温度、および想定駆動電流/電圧を駆動コイルに与えた場合の駆動コイルの想定温度の時間的変化を算出する第2想定温度算出手段と、
各想定冷却能力にて振動発生機を運転させたとした場合に、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えず、かつ、注目する運転関連値が所定の条件を満足するような想定冷却能力を冷却運転条件として選択する冷却運転条件選択手段と、
前記励磁運転条件と前記冷却運転条件を運転条件として出力する運転条件検出力手段と、
をコンピュータによって実現するための運転条件決定プログラム。
【請求項16】
請求項15の運転条件決定プログラムにおいて、
前記励磁運転条件選択手段は、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えておらず、かつ、想定励磁電流/電圧における想定励磁電力と、想定駆動電流/電圧における想定駆動電力と、想定冷却能力を得るための想定冷却電力の合計電力が最小となる条件を満足する組み合わせを運転条件として選択することを特徴とする運転条件決定プログラム。
【請求項17】
請求項15の運転条件決定プログラムにおいて、
前記運転条件選択手段は、想定励磁電流/電圧と想定冷却能力の複数の組み合わせのうち、励磁コイルおよび駆動コイルの想定温度が所定温度を超えておらず、かつ、冷却騒音が最小となる条件を満足する組み合わせを運転条件として選択することを特徴とする運転条件決定プログラム。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれかの運転条件決定プログラムにおいて、
前記基準特性取得手段は、少なくとも電圧または電流の異なる2以上の基準励磁電流/電圧について、2以上の基準特性を取得し、
前記想定特性算出手段は、前記2以上の基準特性に基づいて想定特性を算出することを特徴とする運転条件決定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−121890(P2009−121890A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294687(P2007−294687)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【特許番号】特許第4263229号(P4263229)
【特許公報発行日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000100676)IMV株式会社 (17)