説明

道路の除雪融雪方法

【課題】圧雪や氷盤を生じさせない。春の雪解け時の状態を冬期全期間を通じて人工的に再現させる。
【解決手段】一部の車に水槽6を積みその水をエンジン1廃熱を利用した熱交換器3で温めて路上に落下8させる。残りの車では路上の温水が冷えて再凍結するのを防止する為にタイヤが巻き上げる路上の水をエンジン廃熱を利用した熱交換器で温めて路上に落下させる。路上の水が流出しないように路面の勾配をほぼ水平にし且つ路側に土手を設ける。これにより路面の水浸し状態が形成・維持され、着地後直ちにシャーベット雪化した降雪を通行車両のタイヤが踏み潰し路側に跳ね飛ばし除去することにより圧雪や氷盤を生じさせない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路の除雪融雪の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の道路の除雪融雪の方法は除雪車を用いたり、電熱で融雪したりのエネルギーを消費するものである。除雪車作業は低速走行である為に、除雪車が出動すると交通渋滞が発生する。
【0003】
電力によるロードヒテーィングは電気料金が膨大になり道路管理者が負担しきれない。
【0004】
ヒートパイプによる地熱汲み上げ方法はヒートパイプのコストが長年の努力にも拘わらず下がらない為に普及に限界が有る事が確定しているようである。
【0005】
塩化カルシウム等の融雪剤の散布は環境保全上問題がある。木から得る酢酸等の有機塩類は環境保全上あまり問題は無いが高価である。
【0006】
消雪用に地下水を汲み上げて散布する方法は地盤沈下の問題があって規制が有る。
【0007】
【特許文献1】第2609864号
【非特許文献1】自動車技術会;研究論文集、1998。Vol29、No3、P73〜80
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
降雪を多数の通行車両が踏むことにより庄雪が生ずる。更に、庄雪が蓄積されて氷盤が形成されるとタイヤはスリップし、硬い氷盤は除雪車による除雪作業が困難である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】
雪に水を与えシャーベット雪に変化させると雪の強度は急減するという雪氷学の原理を応用したものである。シャーベット雪の強度は乗用車のタイヤの接地庄(2kg/平方センチ)以下であるから、通行車両のタイヤで踏み潰されて圧雪にならない。更に、シャーベット雪はタイヤで跳ね飛ばされて路面に残らないから氷盤が形成されない。春の雪解け時の状態を冬期全期間を通じて道路上に人工的に再現させるのである。
【0011】
雪を処理する一番簡単な方法は熱を与えて融かすことであるが氷の融解熱が大きいのでエネルギー効率の点で他の機械的方法が実用化されている。ところがわが国の如き高密度交通量の道路上にはエンジン廃熱が多量に存在し、降雪融解に必要な熱量とそのエンジン廃熱を比較する熱収支計算を行うとエンジン廃熱は降雪融解必要熱量を殆どの降雪日において上回ることが証明されている(前記非特許文献1)。
【0012】
エンジン廃熱は道路上の至る所に存在するから熱の配送が不要であり、勿論エネルギーコストはゼロである。
【0013】
車に水槽を積みその水をエンジン廃熱で温めて路上に落下させる。大型トラックは車体の床下に大きな余積があり水槽を搭載するのは容易である。
【0014】
路上の温水が冷えて再凍結するのを防止する為にタイヤが巻き上げる路上の水をエンジン廃熱で温めて路上に落下させる。多数を占める乗用車では余積が少ない為にこの方法が向いている。
【0015】
路上の水が流出しないように路面の勾配をほぼ水平にし且つ路側に土手を設ける。これにより路面の水浸し状態が形成・維持され、着地後直ちにシャーベット雪化した降雪を通行車両のタイヤが踏み潰し路側に跳ね飛ばし除去することにより庄雪や氷盤を生じさせない。勿論シャーベット雪の跳ね飛ばしは道路の中心方向にもなされるがその量は1/2である。次の通行車両がその1/2つまり1/4を路側に跳ね飛ばす。これが繰り返されるから全ての雪は路側に運ばれることになる。
【0016】
この土手は緩い勾配と1mほどの長さの土手斜面を有し、通行車両が跳ね飛ばしたシャーベット雪を受け留めて土手の斜面に残すが、水は雪から抜け落ちて路面に戻り、路面の水浸し状態を維持させる。土手の斜面に残った、水がかなり抜け落ちた雪は再凍結する前に適当なタイミングで除雪車で除雪する。
【0017】
土手を設ける余地が狭い場合は急勾配の斜面として、跳ね跳んできたシャーベット雪が滑落しないように階段を設ける。但し、その階段は除雪の際の障害にならないように水平方向に同一の断面形状とする。
【0018】
夜間等の気温の低下時の路上の水の再凍結を防ぐ為に土手に適当な間隔で排水口を設け必要な時に開き、再凍結の可能性が消えれば閉じる。
【0019】
雪は毛細管現象によりある小さな場所の水をその付近の積雪全体に行き渡らせる性質があるから、道路に多数の保水用の小さな隙間を設ければ、あるいは多孔質の舗装材料を用いて、それらの隙間あるいは孔に溜まった水を路上の積雪全体に行き渡らせることができる。坂道では土手を設けても冠水状態を形成できないので本方法が向いている。最近透水舗装が普及しているがこの透水舗装の底面を水を漏らさない構造にしたようなものである。タールマカダム舗装の底面を水を漏らさない構造にしてもよい。
【0020】
路面の勾配を従来のままにしておいても、設けた土手により路側に水が溜まり、その溜まり水は同じく雪の毛細管現象により道路の中心方向にある程度行き渡り、それらの部分の雪はシャーベット化する。シャーベット雪は通行車両により左右に跳ね飛ばされるが道路の中心方向に跳ね飛ばされたシャーベット雪により結局道路全体に水が行き渡ることになる。
【0021】
【発明の効果】
【0022】
上述したように本発明の道路の除雪融雪方法は石油や電力を消費することなく、ブルドーザ等の除雪機械を使用することなく道路の除雪融雪を行うので冬期の道路交通を無雪期の降雨時と同じに確保てきる。
【0023】
石油や電力を消費しないから炭酸ガスを放出しない。
【0024】
必要な投資は、自動車に水槽等を積む程度の安価な装置の追加であり、道路側では路側に土手を設けるという安価な追加で済み、エンジン廃熱を利用するので運行コストはタダであり、大雪日以外は自動車が自力走行できる道路交通方法を提供できる。
【0025】
秋田県等の日本海側地域の人口減少が危惧されている。冬期の道路交通が雪の為に危険でありそれを嫌がる若い層、特に若い女性層の太平洋側への流出が引き金となっているようである。某自動車メーカーのクルマの学校でのアンケート調査によれば女性のドライバーの88.3%は雪道の運転に不安を感じている。交通事故は加害者被害者とも人生を破滅させるものであり、若い女性は逃げ出せるものなら逃げ出したいと考えるのが当然である(産経新聞平成18年2月18日19頁)。北陸高速道路にはトンネルが7本短い距離で連続する個所が有る。ドライバーはその都度タイヤチエーンの着脱を行わねばならない。これでは高速道路の意味をなさない。これらの問題の一対策になる。
【0026】
自動車教習所の教習生の大半は大学卒業を控えた若者であるから、大学が休みになる2〜3月に教習所に通うが、この時期は北国の自動車教習所は除雪コスト負担を避けて閉校するところが多く、これも若者の太平洋側への流出の一因となっておりそれを防止できる。
【0027】
通行車両1台当りの路側への雪の跳ね飛ばし量は少量である。車間距離として前の車と自分の車の間の数十メートル、時間にして十数秒の間の降雪を自分の車が処理するだけであるからその降雪量は1ミリメートル以下である。
【0028】
国土の均衡ある利用は基本方針であり日本海側の過疎化防止策として本方法は大きな効果を有する。
【0029】
雪は全部融かす必要はない。例えば、保水率20%のシャーベット雪は容易にタイヤで踏み潰し得る。与えた温水プラス雪が融けた水でもって保水率20%に至らせる訳で、それに必要な熱量は雪を全部融かす場合の約1割で済む。省エネ効果が大きい方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0031】
図1においては、水槽を搭載したトラックを示す断面図であるが、1はエンジンで、2のエンジン冷却液が循環する管を経由して高温のエンジン冷却液が、3の熱交換器に送られる。4のポンプで吸い出された、6の水槽の水が、5の水槽水を流す管を経由して、3の熱交換器にて加温されて、7の温水排出管を経由して、8の落下する温水となる。
【0032】
以下上記構成の動作を説明する。1のエンジンからの高温のエンジン冷却液が、2のエンジン冷却液が循環する管を経由して3の熱交換器に送られる。4のポンプで吸い出された、6の水槽の水が、5の水槽水を流す管を経由して、3の熱交換器にてエンジン冷却液の熱を奪い加温されて、7の温水排出管を経由して、8の落下する温水となる。落下した温水が雪をシャーベット化させる。トラックは車体の下に大きな空間を有し大型の水槽を搭載するのは容易である。
【0033】
図2においては、タイヤが巻き上げる路上の水を用いる乗用車の前半分を示す断面図であるが、1はエンジンで、2のエンジン冷却液が循環する管を経由して高温のエンジン冷却液が、3の熱交換器に送られる。9のホイルハウスで集められた、11のタイヤが巻き上げる、10の路上の水が、3の熱交換器にて加温されて、7の温水排出管を経由して、8の落下する温水となる。
【0034】
以下上記構成の動作を説明する。1のエンジンからの高温のエンジン冷却液が、2のエンジン冷却液が循環する管を経由して3の熱交換器に送られる。9のホイルハウスで集められた、11のタイヤが巻き上げる、10の路上の水が、3の熱交換器にてエンジン冷却液の熱を奪い加温されて、7の温水排出管を経由して、8の落下する温水となる。落下した温水が雪をシャーベット化させる。図1においてはエンジン冷却液の熱を奪う熱媒体は搭載した水槽の水であったが、ここでは熱媒体は路上の水である。乗用車は水槽を搭載するほどの空間スペースを有していない為にこの方法が必要である。路上の水は泥やゴミを含んでおり熱交換器において目詰まりを発生させるデメリットが有るが、水が無限に得られるというメリットのほうが大きい。
【0035】
図3においては、路面に水を溜める為のほぼ水平な勾配の路面と土手を示す断面図であるが、12の土手を設けることにより、及び13のほぼ水平な勾配の路面を組み合わせて、14の溜まり水が路面上に得られる。気温の低下時はその溜まり水が再凍結するので、それを防止する為に、15の土手の排水口を設けて必要な時に排水する。
【0036】
以下上記構成の動作を説明する。図1及び図2の通行車両が路面に温水を絶え間なく供給する。従来の道路では路面に水を溜めない為に路面に勾配を設けて路側に排水していたが、本発明では逆に路面に水を溜める為に、12の土手を設けること、及び13のほぼ水平な勾配の路面を組み合わせることにより、14の溜まり水が路面上に得られる。この水は通行車両により常時熱を与えられ温水になっている。これにより降雪はただちにシャーベット化して機械的強度が急減する為に通行車両のタイヤで踏み潰されて圧雪にならず、同時に通行車両のタイヤで跳ね飛ばされて路上から無くなるので氷盤が発生しない。いはば、春の雪解け状態を冬期全期間を通じて人工的に再現させる。気温の低下時はその溜まり水が再凍結するので、それを防止する為に、15の土手の排水口を設けて必要な時に排水する。
【0037】
図4においては、急勾配の土手に設けた雪の滑落防止用の階段を示す断面図であるが、16の雪の滑落防止用の階段を12の土手に設けたものである。
【0038】
以下上記構成の動作を説明する。図3の如き緩い勾配の土手は広いスペースを必要とするので、それが不可能な場所では土手を急勾配とせざるを得ないが、それでは跳ね飛ばされたシャーベット雪が滑落して土手の底部に溜まり水分を内部に保持したままとなり、路面に水を放出することができない。雪は土手上に残し水分だけを路上に戻す為に16の雪の滑落防止用の階段を土手に設ける。
【0039】
図5においては、土手による溜水が不可能な坂道での保水用の多数の細い隙間を有する道路の断面図であるが、17の保水用の多数の細い隙間を13の道路に設けたものである。
【0040】
以下上記構成の動作を説明する。坂道では土手による溜水が不可能であるから、保水用の多数の細い隙間を道路に設ける。最近、路面上の水によるハイドロプレーニング現象を防止する為に透水舗装が普及し出している。このような多孔質の構造を道路に与えて坂道での保水能力を保証しようとするものである。17の保水用の多数の細い隙間を13の道路に設ける。但し、17の隙間内の水が底の土に吸い取られないように17の隙間の底部は閉じる。
【実施例】
【0041】
例えば、北国の自動車教習所における実施が考えられる。教習所の構内道路に上記の工事を施す。教習車は車のトランクが空いているので一部の教習車にはここに水槽を搭載する。残りの教習車にはタイヤが巻き上げる路面の水を加温する装置を取り付けてコストを抑える。教習用のトラックは空いていることが多いのでこれに除雪ブレードを取り付けて、道路の土手部分に溜まった雪を排除する。数人の教習が終わる度に教習車の水槽に水を補給する。教習車は構内道路から路外教習時以外は出て行かないので水の補給は問題無い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
一般道路に適用すれば大雪の日以外の9割前後の日は自動車が中速ながら自力走行できる。春の雪解け時の走行状態と同じである。自然現象を相手とするのであるから、一日当たりの降雪量分布のABC分析のAとBまでをこの方法で対処しようというのである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態を示すものの内の、水槽を搭載したトラックを示す断面図
【図2】同じく、タイヤが巻き上げる路上の水を用いる乗用車の前半分を示す断面図
【図3】同じく、路面に水を溜める為のほぼ水平な勾配の路面と土手を有する道路を示す断面図
【図4】同じく、急勾配の土手に設けた雪の滑落防止用の階段を示す断面図
【図5】同じく、土手による溜水が不可能な坂道での保水用の多数の細い隙間を有する道路の断面図
【符号の説明】
【0044】
1 エンジン
2 エンジン冷却液が循環する管
3 熱交換器
4 ポンプ
5 水槽水を流す管
6 水槽
7 温水排出管
8 落下する温水
9 ホイルハウス
10 タイヤが巻き上げる路上の水
11 タイヤ
12 土手
13 ほぼ水平な勾配の路面
14 溜まり水
15 土手の排水口
16 雪の滑落防止用の土手の階段
17 道路の保水用の多数の細い隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上に温水を供給する手段としての、水槽を搭載しその水をエンジン廃熱で加温し道路上に落下させる自動車。道路上の温水を再加温する手段としての、タイヤが巻き上げる道路上の水をエンジン廃熱で加温し道路上に落下させる自動車。道路上の水を排水しないで路面に保ち冠水状態を維持する手段としての、路面の勾配がほぼ水平であり且つ必要に応じて開閉する排水口を持つ土手を路側に有するか、あるいは土手の斜面に階段を有する土手を路側に有するか又は路面に多数の保水用の小さな隙間を有する道路。これらの3者を組合せて道路の除雪融雪を行う方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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